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思索 電子回路 論評等 byホロン commux@mail.goo.ne.jp

対策不可能(再発防止)

2007-10-19 21:40:09 | 安全・品質
すべての事故に再発防止対策が可能かと問えば、答えはノーです。むしろ確実な対策を立て得ることの方が少ないかも知れません。このことは品質問題よりも、安全において多く言えることです。事故は常に想定外の出来事として発生します。明らかに危険がともなう行為や場所では事故は起こりにくく、一見、危険であると思えない時や場所で事故が起こるのは世の通念であり、実は極めて危険な要因があるにも関わらず、そうと思わず何気ない行動をとったときが最も危険です。

一例が、かの花火大会での歩道橋です。歩道橋が人で過密になり過ぎた。そのこと自体は将棋倒しが起きる直前まで多くは危険と感じなかったが、危ないと思い始めた頃、誰かがバランスを崩し事は起こりました。工事現場でも、10mを超える高所からの転落事故は少なく、最も多いのが2m以下の高さからの転落です。これらは、事故は想定外の所で発生することを明示していますが、この危険想定が個々人で異なることが問題を難しくしています。

というのも、ある場所で危険意識が働くのも危険を想定できるのも、過去にその場所で事故に遭遇した経験のある者に限られるからです。危険意識は事故に遭遇することによってのみインプットされ、時間と共に薄れていくということは、あまり知られていない事実です。よって、意識喚起をしているからとか、危険予知訓練をしているからといって安心してはいられません。それらは事故予防としての大きな効果を期待することはできないといえます。(むしろ、まったく効果がないと捉えていた方が安全でしょう)

だからこそ、不幸にも事故が発生した場合には、確実な再発防止対策を行わなければならないのです。事故の当事者でさえ、危険意識は時とともに薄らいでいくのですから。危険意識がほとんど無くても事故を発生させない対策は、フールプルーフとフェイルセーフ以外にありません。フールプルーフとは例えば階段や高所作業場における手すりや進入防止柵、フェイルセーフとは安全帯や墜落防止ネットです。

とはいえ、文頭に記したように、どうにも再発防止対策を講じることができない事例も多数あります。例えば、普段多くの人が何気なく通行している通路や階段で、けつまづいて転び怪我をした場合、そしてその頻度が極めて小さい場合は、これに対する再発防止を講じることは非常に困難です。このような事例報告については、対策欄に「検討中」と書いて放置し続けるよりも、「現時点では対策不可能」と明確に記すべきです。前者は何らかの対策が可能?と思わせる雰囲気が漂いますが(何もしないと言っているのに等しいにもかかわらず)、後者は対策できないものはできないと明確に言い切っています。

社用文書においては時として曖昧表現が有効であることもあるのでしょうが、こと再発防止対策においては、意味は限りなく明確でなければなりません。実際には対策不可能であるにもかかわらず、対策ができているように錯覚することが最も危険だからです。

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