ある産婦人科医のひとりごと

産婦人科医療のあれこれ。日記など。

産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡で県産婦人科医会 (朝日新聞)

2006年10月20日 | 地域周産期医療

コメント(私見):

分娩経過中の妊婦さんが、けいれん、意識障害、高血圧などの症状を呈した場合は、『分娩時子癇』と判断するのが普通だと思います。

高次医療機関で発症した場合は、直ちに、関係する多くの専門医を招集し、血液検査、脳CT、MRI検査などを実施して、産科医、新生児科医、脳外科医、放射線科医、麻酔科医などが集まって診断、治療方針を協議し、チームでの治療を開始することになります。

1次施設で発症した場合は、とにかく一刻も早く高次医療機関に母体搬送することを考えなければなりません。搬送先病院がなかなか決まらなくて、救急車が病院を出発するまでにこんなに時間がかかるとは誰にも予測できなかったと思います。

転送拒否続き妊婦が死亡 分娩中に意識不明

奈良県警が業務上過失致死容疑で捜査へ 妊婦死亡問題

****** 朝日新聞、2006年10月19日

産婦人科医会「主治医にミスなし」 奈良・妊婦死亡

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、分娩(ぶんべん)中に重体となった妊婦(当時32)が県内外の19病院に搬送を断られ、出産後に死亡した問題について、同県医師会の産婦人科医会(約150人)は19日、同県橿原市内で臨時理事会を開き、「主治医の判断や処置にミスはなかった」と結論づけた。

 妊婦は脳内出血を起こし、意識不明となったが、主治医らは妊娠中毒症の妊婦が分娩中にけいれんを起こす「子癇(しかん)」と診断し、CT(コンピューター断層撮影)検査をしなかったとされる。

 理事会後、記者会見した同医会の平野貞治会長は「失神とけいれんは、子癇でも脳内出血でも起こる症状で、見分けるのは困難。妊婦の最高血圧が高かったこともあり、子癇と考えるのが普通だ」と説明。「CTを撮らなかったのは妊婦の搬送を優先したためで、出席した理事らは『自分も同じ診断をする』と話している」とも述べた。

 県警が業務上過失致死容疑で捜査を始めた点については、「このようなケースで警察に呼ばれるのなら、重症の妊婦の引き受け手がなくなってしまう」と懸念を示した。

(朝日新聞、2006年10月19日)

****** 共同通信、2006年10月19日

病院の判断「問題ない」 妊婦死亡で県産婦人科医会

 奈良県大淀町立大淀病院で分娩中に意識不明になった妊婦が、19病院に次々と受け入れを断られた末に大阪府内の病院で死亡した問題で、同県産婦人科医会は19日、臨時の会議を開き、大淀病院の判断に問題はなかったと確認した。

 再発防止のため、今回受け入れを打診しなかった県内の病院にも救急時の協力を要請するとともに、奈良県に対し救急体制の整備を申し入れることなどで合意した。

 会議では大淀病院の院長から事情を聴いた同医会の平野貞治会長が経過を報告。その結果、妊婦の異常を分娩時のけいれんと診断した大淀病院の対応に問題はなかったとの意見で、大筋で一致したという。

 大淀病院によると今年八月、分娩中の○○○○さん(32)が頭痛を訴え意識不明になったが、主治医はけいれんと判断しコンピューター断層撮影装置(CT)にかけなかった。妊婦は脳内出血で死亡。病院側は17日の記者会見で、脳内出血を疑わなかったことについて「結果的に判断ミスだった」と認めている。

(共同通信、2006年10月19日)

****** 読売新聞、2006年10月19日

奈良の妊婦死亡 大淀病院を捜査

 奈良県大淀町立大淀病院で8月、出産の際に意識不明になった○○○○さん(当時32歳)が相次いで転院を断られ、搬送先の病院で死亡した問題で、同県警は大淀病院から高崎さんのカルテの任意提出を受けるなど、業務上過失致死容疑で捜査を始めた。病院側は、出産直前の診断に判断ミスがあったと認めており、県警は主治医や看護師から当時の状況を聞く。当初、同病院は転院を断られたのは18病院としていたが、その後の調査で19とわかった。

 同病院によると、○○さんは8月8日、出産のため入院していた同病院で頭痛を訴え、意識不明になった。産科医は妊娠中毒症による発作と診断、嘔吐(おうと)など脳内出血の症状がみられたにもかかわらず、コンピューター断層撮影法(CT)を行わなかったという。

(読売新聞、2006年10月19日)

****** 産経新聞、2006年10月19日

奈良・妊婦死亡 強制捜査も視野

 奈良県大淀町の町立大淀病院で8月、同県五條市の○○○○さん(32)が分娩(ぶんべん)中に脳内出血のため意識不明となり、19病院から満床などで受け入れを拒否された末、転送先の病院で男児出産後に死亡した問題で、県警は業務上過失致死容疑で捜査を始めた。

 遺族から事情を聴く一方、大淀病院からカルテなど関係資料の任意提出を受けており、関係先病院の家宅捜索など強制捜査を視野に、慎重に捜査を進めるとみられる。

 関係者などによると、県警は18日、捜査員を○○さんの夫、△△さん(24)ら遺族のもとに派遣し、約2時間にわたって面会。○○さんが大淀病院に入院した8月7日から容体が急変し相次いで転院を断られた翌8日の状況や、死亡した16日までの様子など一連の経過について説明を受けた。19日以降も引き続き事情を聴くとみられる。

 また、大淀病院からもこれまでに、○○さんのカルテや当時の看護記録など関係資料の任意提出を受けるとともに、原育史院長から事情説明を受けたという。

 県警は今後、主治医らからも事情を聴くとみられる。

 病院側は、○○さんが8月8日未明に意識不明となり、脳の異状が疑われたにもかかわらず、産科医が妊婦の「子癇(しかん)発作」と判断し、CT撮影しなかったことについて、「判断ミスがあった」と認めている。

(産経新聞、2006年10月19日)

****** 毎日新聞、2006年10月19日

「周産期医療、整備を」 知事に要請文提出 共産党など

 大淀町立大淀病院で今年8月、分娩中に意識不明になった妊婦が、緊急転送された大阪府の病院で死亡した問題で、共産党県委員会は18日、柿本善也知事あての要請文を県に提出した。

 要請文は、「奈良県では周産期医療体制の不十分さから、集中治療が必要なハイリスク妊婦の約4割が県外へ搬送されている。県内で対応できる体制をつくることが緊急に求められている」としたうえで、▽県立医大に総合周産期母子医療センターの整備を進める▽産婦人科医、小児科医不足解消のための実態調査を行い、医師確保に取り組む----と明記している。

 また、奈労連と県医労連も同日、柿本知事あてに、問題の原因究明と再発防止を求める緊急要請文を提出。「県の周産期死亡は5・3と全国ワースト10となっている」と指摘し、「痛ましい死を無駄にしないためにも、県は再発防止への対応と周産期医療体制の拡充を行うべきだ」と強く求めた。【曽根田和久】

(毎日新聞、2006年10月19日)