紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

またまたHIROMIです。…上原ひろみ~スパイラル

2007-09-29 17:07:51 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
いやー閲覧している皆さん、ごめんなさい。
今週は、「上原ひろみ」ウィークになってしまいました。
と言う訳で、今日も「上原」いっちゃいましょう。
ちなみに、CDの帯解説には、「元気が出るピアノ」と書いてありましたが、私の聴いた印象は、全然違います。
このアルバムの「上原」は非常にクラシカルで、知的で、どちらかと言うとオーソドックスな、ピアノ・トリオ演奏に従事しており、「元気なピアノ」と言うよりは、彼女には珍しく?、女性的で繊細なピアノ演奏です。
過去の巨匠で言うと、このアルバムの演奏は「ビル・エヴァンス」や「キース・ジャレット」に近い感じがします。

アルバムタイトル…スパイラル

パーソネル…リーダー;上原ひろみ(p、key)
      トニー・グレイ(b)
      マーティン・ヴァリホラ(ds)

曲目…1.スパイラル(ミュージック・フォー・スリー・ピース・オーケストラ)、2.オープン・ドア/チューニング/プロローグ、3.デジャ・ヴ、4.リヴァース、5.エッジ、6.古城~川のほとり~深い森の中、7.ラヴ・アンド・ラフター、8.リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン、9.ビッグ・チル

2005年5月28日~31日 ナッシュビルにて録音

原盤…TELARC CDー83631 発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCTー1145 

演奏について…オープニングの1曲目「スパイラル~」は、物静かなシングルトーン、そう、ショパンのノクターンの様な雰囲気で序奏が始まり、あれ?いつもの「上原」と違うぞって、イメージを覆す入り方なんです。
その後、「上原」は、幻想的なアドリブ・ソロに入って、「グレイ」の重厚なベースの伴奏も的を射ていて、夢の中へと誘い、私は、益々幻想空間の渦(スパイラル)へと迷い込む。
淡々と同リズムでドラムを敲く「ヴァリホラ」が、迷いこんだ私の、唯一平常心を保つ支えとなっている。
その後の「上原」は、まんま「ビル・エヴァンス」が憑依した様な、知的でハイセンスのアドリブ・フレーズを弾きまくる。
ここからのソロは、まじに聴き惚れるほどの聴き所です。
1曲目から、いきなりミサイルをぶっぱなされた様な(名)演奏が来たっああ!!

2曲目「オープン・ドア~」では、ここでも曲の入り方が、ショパンの幻想曲の様で、とても美しい。
静寂の?ピアノ・トリオ演奏が、モノクローム映画の回想シーンの様に、心を揺さぶる。
「上原」のソロは、哀愁を帯びたロマンス溢れる名旋律を紡いで、私の魂を浄化させる。
中途から曲調が、メジャーへと移ると、そこから見えるのは明るい未来と希望か?
ここからのソロでは、「キース・ジャレット」が「上原」に憑依した様に、高音域を流麗に、品良く駆け巡る指先が奏でる音に、身も心も溶けそうだ。
1曲目と双璧の名演奏です。
このアルバム…全て「上原」のオリジナル曲で、スタート2曲で、正直タップしそうなくらいに、やられちまってる。
この女性(ヒト)恐るべきコンポーザーでも有る…。。

6曲目「古城~」…正しく題名通り、とても絵画的な1曲だが、非常にメロディアスながらも、テンポがミドル・ハイでかなり推進力が効いている。
やや、ラテン調のリズムも「上原」の推進力を煽り、ピアノ・トリオが疾走を始める。
3人とも、テクニック出しまくりの演奏には、もはやKO寸前です。
中間…多分題名からすると「川のほとり」のパートか?
流麗でスケールの大きいフォルテシモの「上原」と、非常に繊細で女性美煌めくピアニシモの「上原」の二面性アドリブ・ソロに圧倒される。
1&2曲目と御三家を形成する名演です。

3曲目「デジャ・ヴ」も静けさを活かした、ピアノ・トリオ演奏です。
ゲスト参加?のエレキ・ギターもうつろな夢空間を上手に演出している。
デジャ・ヴの記憶を呼び戻すのには、何が必要なのか?
「上原」のピアノがそれを模索して、記憶の間を行き来しているようだ。
題名に相応しい、不可思議な気持ちにさせられる1曲です。

4曲目「リヴァース」は、低音域を活かした重厚な作品で、音のマトリックスを見るようで、5曲目「エッジ」も同じく低音域を活かし、魂を揺さぶるハード・ボイルド・タッチの曲。
この2曲は、いつものぶっ飛び「上原」がリターンして来て、「上原」ファンにはスカッとする曲だろう。
「ヴァリホラ」のすごテクドラムの迫力も必聴物です。

8曲目「リターン~」は、「上原」のシンセ演奏で、4&5曲目同様、普段の彼女の得意なぶっ飛び演奏に戻るんです。
カンフーをイメージした、とても東洋的なメロディだが、この曲には確かに「上原」の「元気パワー」が全面に宿っている。
タイトなドラムスを演る「ヴァリホラ」が、宇宙空間的な「上原」ワールドと、現実の世界、つまり地上を唯一結んでいる。
宇宙まで飛んで行く蝶が、「ヴァリホラ」の花に最後は戻って来るんですよ。

日本盤CDのボーナス・トラックの9曲目「ビッグ・チル」は、正統的なブルーズ風ピアノ・トリオ演奏。
しかし、「上原」のピアノ(シンセ)の素晴らしさには、もはや解説は入らないと思うが、バックの二人も「上原」の意図を完全に理解していて、トリオが完璧に機能した演奏をしている所に感心させられる。
「グレイ」と「ヴァリホラ」は、もはや「上原・トリオ」に欠かせない、ベスト・マッチ・プレイヤーになっている。
      

カフェ・モンマルトルでの壮絶ライヴ…J・マクリーン&D・ゴードン~ザ・ミーティング

2007-09-28 23:40:41 | ジャズ・アルト・サックス
ジャズ界のビッグ・ネーム・サックス奏者、「ジャッキー・マクリーン」と「デクスター・ゴードン」が、コペンハーゲンのモンマルトルで競演した、伝説的なライヴ・アルバムがこれです。

年代に多少差がありこそすれ、二人とも「チャーリー・パーカー」直系のブロー派サックス吹きにカテゴリーとして、入るだろう。

アルバムタイトル…ザ・ミーティング

パーソネル…リーダー;ジャッキー・マクリーン(as)
      デクスター・ゴードン(ts)
      ケニー・ドリュー(p)
      ニールス・ペデルセン(b)
      アレックス・リール(ds)

曲目…1.イントロダクション、2.オール・クリーン、3.リュー・ドゥ・ラ・アルプ、4.コーリン、5.サン・セット、6.オン・ザ・トレイル

1973年7月20日、21日 コペンハーゲン、モンマルトルにてライヴ録音

原盤…Steeple Chase 発売…ビデオ・アーツ・ミュージック
CD番号…VACE-3016

演奏について…冒頭の2曲目「オール・クリーン」から、必聴に値する名演。
「ゴードン」の豪快なテナー、「マクリーン」の切れ味鋭いアルト、バッピシュな「ドリュー」のピアノ、深々とした重厚な低音でソロをぶちかます「ペデルセン」
と、ソロを取る何れのプレイヤーも、聴かせ所を的確に演奏して、期待通りの出来栄えです。

3曲目「リュー・~」…「サハブ・シハブ」が作曲したバップ・ナンバーだが、序奏から「マクリーン節」全開で、「マクリーン」が熱いアルトを吹き切る。
「ケニー・ドリュー・トリオ」たる、バックの3人も、ハード・ドライヴィングで、強烈に「マクリーン」をアシストする。
特にドラムス「リール」の、回転系?ドラムでの推進力は、この演奏のエンジン役を担っている。
後半にアドリブを吹く「ゴードン」は、味わい深い、そして豪快なテナーで「マクリーン」のソロを受ける。
5人が渾然一体となった、ハード・バップ満開の演奏です。

5曲目「サン・セット」は、「ドリュー」のオリジナル曲で、やはり、「ドリュー」らしい、メロディアスなフレーズのバラッド佳曲。
冒頭の「ゴードン」と「マクリーン」のユニゾン&掛け合いから、耳を奪われる。
中途からは、二人のソロが始まって、「マクリーン」は、彼独特の塩辛いトーンで、アドリブをぶいぶい吹き捲る。
センチメンタリズム満載の「ドリュー」の伴奏ソロも、勿論センス抜群で、「マクリーン」を援護する。
後半に出てくる「ゴードン」のアドリブは、余裕と貫禄の、正に大人吹きで、「マクリーン」の演奏を、ガッチリ胸で受け止める。
「リール」のブラッシュ・ワークも、とても真面目な演奏で、好感が持てます。
アルバム中で、最も気に入った1曲です。

6曲目「オン・ザ・トレイル」…クラシック作曲家「グローフェ」の、組曲「グランド・キャニオン」から、通称「山道を行く」と言われている、組曲中での1曲がこれです。
「ドリュー」「ペデルセン」のリズム・セクションに引っ張られて、「マクリーン」「ゴードン」とも、魅力たっぷりのソロを吹いて、アルバムのラストを飾るに相応しい名演奏で盛り上がる。
しかし、この二人のソロ…言葉で言うなら、「渋カッコいい」で決まりかな?

今日、もう一枚紹介したいアルバムが有るんです。尾花毅~バヒア・ダンス

2007-09-28 00:39:23 | ラテン・インストゥルメンタル
今日は、もう一枚是非紹介したいアルバムが有るんです。

「尾花毅」と言う、アマチュア(セミ・プロ)が、インディーズで出版した「バヒア・ダンス」と言う、ラテン系(ボサ・ノヴァ)アルバムなんです。
全曲「尾花毅」のオリジナル曲なんですが、とにかく、佳曲、佳演が揃っていて素晴らしい仕上がりです。

アルバムタイトル…バヒア・ダンス

パーソネル…尾花毅(g、e-g、perc、b)
      尾花賢(key)
      小澤敏哉(pandeiro)

曲目…1.バヒア・ダンス、2.ブルドッグ、3.マリサ、4.ソンハー、5.アマゾンの浸水林、6.サンバ・ファンク、7.エスカンダルーサ、8.メイシーズ・ハウス

原盤…MYMレコード  CD番号…MYM0002

演奏について…ぴか一のお薦め、2曲目「ブルドッグ」は、物すごく哀愁感が漂う、涙ちょちょ切れ物のマイナー調佳曲。
おいらの琴線触れ捲りなんだけど、素晴らしいボサ・ノヴァ・メロディが、貴方の心も揮わせる。
アルバムの中で一番好きな曲だな。多分。。。

5曲目「アマゾンの~」…これも良いねぇ。
本当に悲しくて、切なくて、孤独で絶望に苛まれた私が、一人アマゾン川にカヌーを漕いで、静かな水面を見つめていた時、ひっそりと、しかし、水中に(大地)に根を降ろした浸水林の強さと直向さに、生きる勇気を与えてもらう…。
最後は消え入るようなボサ・ノヴァリズムで音は消えて行きますが、私は希望で一杯になる。優しくて、芯の強い素晴らしい名曲です。
アルバム中のベスト・トラックでしょうね。

6曲目「サンバ・ファンク」は、「尾花」の多重録音が生かされた演奏で、元祖「デパペペ」みたいな演奏は◎でしょう。とてもセンスが良いんです。

アルバム・タイトルの1曲目「バヒア・ダンス」は、サンバ・リズムに乗って、「尾花」が軽快にアコースティック・ギターをかき鳴らす。
何か、春先のサイクリングを連想させる、軽やかな、そしてスピーディな雰囲気のメロディが気持ち良いですね。
中間では、泣きのギター・フレーズも有って、セミ・プロらしからぬ?、中々のテクニックで、壷を押さえた演奏がgoodです。

3曲目「マリーサ」は、心寛ぐ、癒し系メロディのボサ・ノヴァ。

7曲目「エスカンダローサ」は、かなり重厚な曲調にプラスして、ゲスト・プレイヤーの「小澤」のパンデーロが、幻想的な異次元の世界を演出する。

4曲目「ソンハー」は、元気が出るメジャー調子のメロディで、聴いているだけで、明るく陽気な気持ちになります。

8曲目「メアリーズ~」は、正統的なボサ・ノヴァ・サウンド&メロディが、エンディングを飾るのに相応しい。
ラテン好きな方々が、聴き終わった後、安心して眠りに就く事を想定している様な曲ですね。

しかし、こんな才能を埋もらせておくのは、余りにももったいないなぁ。
「尾花毅」…いつかはメジャーな世界に出てきて欲しい、アーティストです。

爆裂グルーヴなファンク&ロック・ジャズだ!ビッグ・オルガン・トリオ

2007-09-27 23:44:31 | ジャズ・コンボ
昨日紹介の「上原ひろみ」は、日本が生んだ正統的ジャズ・ピアニストだが、今日紹介する、ア-ティストは本場USで、ハモンドB3のオルガンをベースに、ビンビンに行けてるサウンドで、人気もうなぎ上りの、ファンク&ロックなジャズ・バンド、「ビッグ・オルガン・トリオ」で行きましょう。

アルバムタイトル…ビッグ・オルガン・トリオ

パーソネル…ビッグ・オルガン・トリオ
      マイク・マンガン(org…ハモンドB3)
      バーニー・バウアー(b)
      ブレット・マッコーネル(ds、perc)

曲目…1.ディーヴァ・モード、2.ナンバー・ナイン、3.ホーリー・ローラー、4.ダウン・アンド・ダーティ、5.アースクェイク、6.オルガン・グラインダー、7.ディム・ザ・ライツ、8.ショウタイム、9.クラウン・ボーイ、10.ロード・レイジ、11.ダウン・アンド・ダーティ(ライヴ・ヴァージョン)

原盤…velour music 発売…Pヴァイン・レコード
CD番号…PVCP-8250

演奏について…個人的には6曲目「オルガン・グラインダー」…大好きですね。
グルーヴ感覚、ラテンチックなリズム、フルートの参加、そして、ぐんぐんと皆をリードするベース「バウアー」の中心の編成と雰囲気が、「カルロス・サンタナ」の一連のサウンドや、「ヴィレッジ・ゲイトのハービー・マン」を彷彿させる。

1曲目「ディーヴァ・モード」…昨日の「上原ひろみ」張りに、1曲目から、このコンボ(バンド)「ビッグ・オルガン・トリオ」参上~!!の声を高らかに、派手に決意表明がなされた、とにかくグルーヴ感びんびんのハードな曲にまいっちまう。
とにかく、オルガン「マンガン」の派手弾きと、ベースの「バウアー」のハード・ドライヴィングが、このコンボの生命線だ。
本来、私はそれ程フュージョンは好きじゃないのだが、この推進力はクセになりそう。

3曲目「ホーリー・ローラー」…うーん良いねぇ。「EL&P」が、緩小節で弾くような、グルーブ感を保ちながらも、寛ぎと慈愛に満ちた軽めのブルース調の曲がとにかく良い。
中途から、曲の速度がハイになって、またここでハードなグルーヴィングの曲に変調する。この疾走感覚が、たまんねぇ!

4曲目「ダウン・アンド・ダーティ」では、ドラムス「マッコーネル」が、タイトな音色のドラムを敲き、曲をカッツりと締める。
「マンガン」も敢えて濁り気味の音色のオルガンをガンガン弾く。
オルガンの洪水サウンドがシャワーの如く振り注ぐ。
曲調は単純だが、逆に覚え易く、正しくシンプル・イズ・ベストな1曲。
11曲目のこの曲のライヴ・ヴァージョンも勿論goodですよ。

7曲目「ディム・ザ・ライツ」ダーティな曲調に、低音ガッツリの「バウアー」のベースが映える。
アルバム中、最も重厚感に溢れた佳曲。
こう言った、低音が分厚く、中音域がびんびんで、高音がスカっと抜ける、所謂ピラミッド・バランスの曲って、聴いていて、とても安心感があるよね。

10曲目「ロード・レイジ」は、とてもファンキー&グルーヴィな曲で、とっても行け行けよ。
特に「マッコーネル」のパーカッションが冴え渡ります。
「マンガン」のオルガンはジェット機の音の様に天空を飛び回り、とにかく「マンガン」のノリが半端じゃない。
中途の「バウアー」のベース・ソロも見せ所で、3人のスゴテクが堪能できます。

2曲目「ナンバー・ナイン」…一言で言うと、現代版の「ザ・キャット」だな。

衝撃!上原ひろみのデビュー盤…アナザー・マインド

2007-09-24 22:01:18 | ジャズ・ピアノ・コンボ
前回は「上原ひろみ」のセカンド・アルバム「ブレイン」を紹介しましたが、今日は彼女のデビューアルバムを紹介しましょう。
とにかく、オープニングの1曲目「XYZ」から、一聴しただけでぶっ飛びます。

アルバムタイトル…アナザー・マインド

パーソネル…上原ひろみ(p、key)
      ミッチ・コーン(b)
      デイヴ・ディセンゾ(ds)
      アンソニー・ジャクソン(b)
      ジム・アドグレン(as)
      デイヴ・フュズィンスキー(g)

      アーマッド・ジャマル、リチャード・エヴァンス(プロデュース)

曲目…1.XYZ、2.ダブル・パーソナリティ、3.サマー・レイン、4.ジョイ、5.010101(バイナリー・システム)、6.トゥルース・アンド・ライズ、7.ダンサンド・ノ・パライーゾ、8.アナザー・マインド、9.トムとジェリー(ボーナス・トラック)

2002年9月16日~18日 NYC アヴァター・スタジオにて録音

原盤…TERARC 発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCT-1077

演奏について…まず、冒頭の「XYZ」から、非常にパワフルでパーカッシブな、正しく「打楽器」としてのピアノの音楽性能を最大限に引き出した、超絶名演にKOを喰らいそうだ。
デビュー盤のノッケからこれかよ!すげぇ。まじすげぇ。
ドラム、ベースもガチンコまじ弾きで、うら若き女性アーティストなどと言う冠は全く不必要で、圧倒的なパフォーマンスを見せ付ける。

2曲目「ダブル・パーソナリティ」…不思議なイメージの序奏から、ギターの「フュズィンスキー」とベースの「ジャクソン」、そしてサックスの「アドグレン」が、とても都会的なサウンドでハイテンポにグングンと突き進む。
「上原」は割りとクールな目線で、客観的に彼等のサウンドをアシストする。
中途からは、ドラムの「ディセンゾ」が、緩急自在のシンバル・ワークで、リズム空間を占領し、他のミュージシャンを傘下に治める。
すると、曲は急展開を見せて、「上原」がラフマニノフの曲の様な、技巧高らかなピアノ・アドリブ・ソロをがんがんと弾き天に君臨する。
最後はその「上原」のピアノをメインに全員でフィニッシュ。
天晴れ!「上原ひろみ」。すごい才能のアーティストの誕生(登場)です。

3曲目「サマー・レイン」…「上原」のオリジナル曲だが、一聴して、とてもメロディアスで良い曲だ。
特にサックス「アドグレン」の吹くメロディラインはかなりの名調子で、「上原」のコンポーザーとしての技量、才能を感じずにはいられない。
中間奏でのグランド・ピアノの大きさが分かる様な、「上原」のスケール大きいアドリブ・ソロも抜群です。

4曲目「ジョイ」では、ラグタイム調の、お洒落で遊び心と寛ぎが感じられるピアノ演奏に、ハードでは無く、別のソフトな「上原」を見つけれる。
しかし、途中からは、ブルージーな雰囲気を持ちつつ、またまた叩きつける様なハードなピアノの指捌きが、とにかくすごい。
マッチョでハードなリズムサイドメン達が、多分顔色を変えて演奏しているんだろうと思わずにはいられません。
若いのにとても懐が深く、引き出しも多いアーティストですね。

5曲目「010101」では、「上原」は摩訶不思議なメロディ・ラインをキーボードで弾く。
この感じ…ジャズでは無くて、他のジャンルで聴いた事がある感じがする…。
はて、何だったかなぁ? 
そうだ、「イエス」とか、「EL&P」の、プレグレのシンセサイザーの雰囲気なんだ。
そして、もう一つ面白いのは、左手ではアコースティック・ピアノの低音域を、重厚感溢れるようにガツンと弾いて、右手ではシンセでそのメロディを弾いている。
そんな弾き方だったら、窮屈な演奏になりそうだが、彼女は元気がばりばり沸いて来る様な、躍動感が満ち満ちた演奏なんですよ。
とても不思議な異空間のピアノ・トリオ演奏です。

6曲目「トゥルース・アンド・ライズ」は、正統的なアコースティックピアノ・トリオ演奏で、ここでも非常にメロディアスなラインを、まるで「キース・ジャレット」の様に弾いてくれます。
この演奏では、迫力が有ると言うよりは、高音域を活かした(右手中心の)とても流麗なピアノソロを味わえるんですよ。
こいつ…ピアノ曲なら、何でも弾けるんだなぁ。
ロマンティストの私は、この曲は好きですね。

7曲目「ダンサンド~」…高速で「上原」が疾走する序奏からしてすごい!
しかし、これだけの早弾きでも、しっかりとメロディを弾いているので、とても心地良い。
バックの二人も「上原」にしっかりと追従して、高速調の曲だがバラバラにならずに、ピアノ・トリオとして機能している。
中間ではドラム「ディセンゾ」が抜群のテクでアドリブを聴かせてくれます。

8曲目「アナザー・マインド」も低音域を充分に活かした左手主導型の曲で、とても重厚な曲に仕上がっている。
どことなく深海を泳ぐシーラカンスをイメージさせる。
こう言った、劇的な曲も難なくこなして演奏できる、「上原」のピアノ演奏技術の高さに舌を巻くぜ。

ボーナス・トラックの「トムとジェリー」もラグタイムっぽくて、とても遊び心が活かされた演奏。
一聴では、あのアニメの名曲「トムとジェリー」って分からないくらい飛んでます。
コロコロ転がすメロディの時は、往年の大ジャズ・ピアニスト「アート・テイタム」が、一瞬脳裏に浮かびます。
グリコじゃないけどおまけも楽しめます。

20世紀最高の指揮者が残した遺産…アルトゥーロ・トスカニーニ~レスピーギ、ローマ3部作

2007-09-24 19:33:43 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
巷では、20世紀最高の指揮者と言えば、「フルトヴェングラー」か、今日紹介する「トスカニーニ」を挙げる人が多いと思う。
時代は悲劇を生んだのか、この二人、活躍した時期も同時期で、尚且つ引退&他界した状況から、ステレオ盤をこの世に遺していない。うーぅーん、残念!!
もしも、ステレオ期だけで言ったら、20世紀最高の指揮者は、やはり「カラヤン」なんだろうなぁ。
しかし、帝王「カラヤン」でさえも、この二人の域には到達していないと思う。
それほど、この二人は図抜けた巨匠(マエストロ)だと思います。
まぁ、そんな事はどうでも良いんだけど、何を言いたいかと言うと、録音の貧弱さ(悪さ)を除けば、「フルヴェン」「トスカニーニ」の残した芸術は永遠不滅なんだよね。
そこで、今日は「トスカニーニ」の代表的なレコード(CD)を一枚紹介しましょう。

アルバムタイトル…レスピーギ作曲
         交響詩「ローマの松」、交響詩「ローマの噴水」、交響詩「ローマの祭り」 ※所謂、「ローマ3部作」

指揮…アルトゥーロ・トスカニーニ~NBC交響楽団

曲目…交響詩「ローマの松」 ①ボルゲーゼ荘の松(2:35)
              ②カタコンブ付近の松(6:36)
              ③ジャニコロの松(6:48)
              ④アッピア街道の松(4:53)
   交響詩「ローマの噴水」①夜明けのジュリアの噴水(3:52)
              ②朝のトリトンの噴水(2:45)
              ③昼のトレヴィの噴水(3:07)
              ④たそがれのメディチ荘の噴水(5:23)
   交響詩「ローマの祭り」①チェルチェンセス(4:48)
              ②50年祭(6:55)
              ③10月祭(7:08)
              ④主題祭(4:47)

録音…ローマの松・1953年3月17日
   ローマの噴水・1951年12月17日
   ローマの祭り・1949年12月12日 全てカーネギー・ホールにて

原盤…RCA 発売…BMGジャパン
CD番号…BVCG-9935

演奏について…まず、演奏(指揮)していた時の「トスカニーニ」の年齢だが、ローマの噴水の時で82歳、ローマの噴水の時だと、ほぼ86歳と言う(失礼ながら)かなりの高齢である。
しかしながら、一言で言うと「トスカニーニ」の演奏は、若々しいなどと言うより、そう、血が脈々と通っている(血が滾る)熱い演奏なのである。
大指揮者が、貫禄や威厳でコンダクトしているのでは無く、例を挙げると、80歳台半ばになっても、全く衰えていないイタリアンの総料理長が、3つ星シャフクラスの弟子達がいる現場で、味見の最終チェックをしている様な感じなんだろう。
つまり、「トスカニーニ」の前で、腕利きのソロイスト達が、非常なる緊張感を持って、しかし情熱的に演奏に終始している。
その演奏には、妥協や遊びは一切無いので、正直面白みは全く無いが、研ぎ澄まされたオーケストレーションにて、しかし決して冷徹でクール等ではなく、熱く血が燃えている演奏なんです。

ローマの松では、特に緩楽章の「ジャニコロの松」では、甘すぎないが適度にロマンティックで、自然美を活かした演奏がなされ、「アッピア街道の松」では一転して華美なオーケストレーションで、華やかさを表現する。
最晩年の演奏(指揮)とは思えない程、演奏が自発的な情熱で満ち満ちている。

ローマの噴水は、3曲の中では一番微音をメインにしている曲だが、この微音の表現も、弱弱しくはなく、音は小さくともピシッっと一本筋が通っている。
大先生の前で、楽団員は本当は緊張していただろうが、その演奏にはもはや緊張を超越して、純粋に音楽を追及し邁進している。
「トスカニーニ」…の棒には魔力が宿っているのか?

ローマの祭りはとても華やかな曲だが、演奏は華美なだけでなく、血の通った「即物主義」の原点的な演奏です。

最後にもう一言…冒頭で録音が悪い(モノーラル)だと言ったのだが、正直この時代の録音の中では、かなり音は良くて、聴き難くは無いんです。
「トスカニーニ」の芸術性のすごさを充分に堪能できるレベルに有ります。
是非、ご一聴を…。。。

女優、ジェニファー・ロペスが送るラテン・ポップス第2弾~J.LO

2007-09-23 23:51:08 | ラテン・ヴォーカル
今日は一寸毛色の変わったアルバムを紹介しましょう。
ハリウッド人気女優にして、ラテン・ポップ歌手としても不動の地位を築いた、「ジェニファー・ロペス」が世に出した、セカンド・アルバムがそれです。
飛切りポップな歌に踊って下さい。

アルバムタイトル…J.LO

シンガー…ジェニファー・ロペス(vo)

曲目…1.Love Don’t Cost A Thing、2.I’m Real、3.Play、4.Walking On Sunshine、5.Ain’t Funny、6.Carino、7.Come Over、8.We Gotta Talk、9.That’s Not Me、10.Dance With Me、11.Secretly、12.I’m Gonna Be Alright、13.That’s The Way、14.Dame(Touch Me)、15.Si Ya Se Acabo、16.I’m Waiting

原盤…SME Records 発売…ソニー・ミュージック・エンタテインメント
CD番号…SRCS-2341

曲について…ラテン大好きな私がお薦めするのは、やはりポピュラー畑の曲よりも、絶対的にラテンの香りがぷんぷんする曲になりますね。
それと当然、ジャジーな感じのする曲があれば、それも迷わずにお薦めします。
個人的な主観が大半占めると思いますが、ご勘弁ください。

さて、その様な前置きの中で、推薦したい曲(歌)ですが、14曲目「Dame」は、モロ・ラテンでググッと来る、いけいえの佳曲です。
男性歌手「Chayanne」とのデュエット曲で、題名を連呼すると、「ダメ」「ダメ」と聴こえて、とても印象的なスペイン語で歌われる、エロティシズムがぷんぷんの色香漂うメロディが堪らん魅力。

次いで15曲目「Si Ya~」も、フラメンコチックなアコースティックばりばりの演奏に導かれて、「ロペス」が、お色気有る、甘い歌声で歌ってくれます。
やはり、女優だけあってその歌声は、正しく女豹の様にしなやかです。

5曲目「Ain’t~」…「マドンナ」の名作アルバム「トゥルー・ブルー」に収められた名曲「ライスラボニータ」そっくりな佳曲で、私の琴線くすぐり捲り。
更に言えば「ロペス」の方が、歌声の色香は「マドンナ」よりも無いけれど、歌自体は上手いので、バックのアコスティック・ギターの名伴奏にも負けていない。
是非聴いて欲しい1曲です。

6曲目「Carino」…これも私的に、ど真ん中の直球ストライク!!
男性陣が「カリーニョ」と言うフレーズをコーラスして、バックではパーカッションが熱演し、そして「ロペス」を高揚させる。
「ロペス」もそれに応えて、彼女としては相当の熱唱をしている。
中途のトランペットのソロなども、ラテンの規範的な演奏でグッと来ます。

11曲目「Secretly」は、ピアノだけによる伴奏で、とてもジャジーなそしてポエム調の雰囲気を作り出した演奏(歌)で、「ロペス」の甘い声に、正に胸キュン物ですね。
アルバム中最も女性美が活かされた歌唱でしょう。

8曲目「We Gotta~」は、アップテンポで歌われているのだが、アコースティック・ギターがしっかり追従して、見事に「ロペス」に伴奏をつけている。
タイトなリズムを刻む、ドラム、ベース、サイド(エレキ)ギターの伴奏もgoodですね。

9曲目「That’s~」では、(エレクトリック)ハープシコードと、スパニッシュ・ギターの伴奏が、とても心地よいサウンドを生んで、「ロペス」も気持ちよく歌いきる。
後半になると、ピアノソロや、女性陣の多重コーラスも入って、この曲に更に素晴らしい効果を生んで、名演に仕上げている。

12曲目「I’m~」…ラテンチックでは無いですが、曲自体のメロディがすごく良いので聴いていてとても気持ちが良いです。

7曲目「Come~」は、モロにラテンサウンドでは無いが、ギターとパーカッション、&打ち込みが繰り広げる、独特の幻想的な音世界に、「ロペス」がアンニュイな歌唱で終始歌っていて、とても印象に残る。

オープニング曲「Love~」は、ラテン・ポップス曲では無く、一言で言うと、R&Bです。
「ジャネット・ジャクソン」が、パフォーマンスする世界に類似しているんですが、「ロペス」は、こう言う「ブラ・コン」サウンドも上手く(歌って)こなしていますね。

4曲目「Walking~」は、打ち込みサウンド曲だが、「マドンナ」の声のような、脱力感があって、ちょっと語りかけるヴォイスで歌われているのが良いね。
やはり、美人はパワフルに歌わなくて良いので得ですね。

飛切りポップなフュージョン…ジョージ・ベンソン~ブリージン

2007-09-22 23:55:55 | フュージョン
デビュー時は、我が愛するジャズ・ギタリスト、「ウェス・モンゴメリー」の後継者として、ジャズ界に新星として華々しく出てたのが、今日紹介の「ジョージ・ベンソン」です。

しかしながら、60年代末にジャズ界に出てきたミュージシャンの多くは、ロック&ポップ・チューンに、「マイルス」が多大な影響を与えた事から、「コルトレーン」に傾倒し、或いは「セシル・テイラー」や「オーネット・コールマン」を追従した、若きミュージシャン達、つまり「フリー・ジャズ」を追求していった者達以外は、よりポピュラーな世界へと、鞍替えして行きました。

そのポップミュージックへと移った多くのミュージシャンの代表が、この「ジョージ・ベンソン」であり、他には「アース・ウィンド&ファイヤー」の「モーリス・ホワイト」等、後のビッグ・ネームが、所謂「ブラック・コンテンポラリー」と言うジャンルに属する音楽の礎を作って行ったのです。

ところで、この「ジョージ・ベンソン」のアルバムは、「ブラコン」の開祖としてのポップさだけでなく、ジャズ畑の一流ギタリストとしてのテク&ソウルも充分に堪能できる名盤に仕上がっています。

アルバムタイトル…ブリージン

パーソネル…ジョージ・ベンソン(g、vo)
      フィル・アップチャーチ(rhy-g)
      ロニー・フォスター(el-p)
      ジョージ・ダルト(p)
      スタンリー・バンクス(b)
      ハーヴィ・メイソン(ds)
      ラルフ・マクドナルド(perc)

曲目…1.ブリージン、2.マスカレード、3.シックス・トゥ・フォー、4.私の主張、5.これが愛なの?、6.愛するレディ

1976年1月6、7、8日 ハリウッド・キャピタル・レコードにて録音

原盤…ワーナー・ブラザース 発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…20P2-2061

演奏について…このアルバムを最も有名にしたトラックは、何と言っても「ベンソン」のギターとヴォーカルをフューチャーした、2曲目「マスカレード」である。
自らのギターとアコースティック・ピアノの伴奏から始まる序奏で、「ベンソン」は抜群にかっこいいスキャットでかっ飛ばす。
その後メロディを歌うと、実に歌が上手い。
しかし、黒人歌手ってなんで、皆こんなに良い声をしてるのかねぇ。
「ベンソン」の声だけど、やや低音(バリトン)になった「ライオネル・リッチー」って言えば分かり易いかな?
中間からは、またまたスキャットしながら、本家のギターでもぶいぶい言わせる。
その後アドリブソロを見せるピアノ「ダルト」の華麗な演奏もgoodです。
この曲について判定すると、「カーペンターズ」とも引き分けの好勝負です。

表題曲である1曲目「ブリージン」の出来もすこぶる良く、この曲は様々な音楽や映画などの媒体で、誰でも聴いた事が一度はあるはずです。
ここでは、「フィルアップチャーチ」が、サイドギターとして、見事に「ベンソン」のソロ・ギターを支える、素晴らしい演奏をしている。
都会的なハイセンスの中に、チョットエキゾティックな香りがして、澄んだ秋空の様な気持ち良いサウンドです。

アルバム唯一の「ベンソン」のオリジナル曲である5曲目、「これが愛なの?」では、流石「ウェス」の後継者と言われた事があると、思わず納得のスゴテクギターを「ベンソン」がかき鳴らす。
「ベンソン」と対比するかの様に伴奏をつける「ロニー・フォスター」のエレクトリック・ピアノも名演です。
しかし、「ベンソン」が、高音を弾いている時、ふと「ウェス」の面影がよぎるのには、背筋がゾクっとします。(音色が似てるんですよ。)

4曲目「私の主張」…良いねぇ。好きだ。大好きな曲だ。
パーカッシブなラテンのリズムに乗って、「ベンソン」が幾分暗めの音色で、哀愁を帯びた名フレーズのソロを弾く。
バックのストリングスも嘗ての「ウェス」の後期諸作を彷彿させて、感涙物。
中途からは、メジャーコードになって、各人がそれぞれ楽しく皆を煽り合い、「フォスター」のエレピが全く負けちゃいない。
後半は全員の気合が、見事に一本に集結しつつフィニッシュとなる。

「ロニー・フォスター」が書いたエンディングの「愛するレディ」…とてもロマンティックな曲で、ドライブのBGMには持って来いの軽快なサウンドです。
「フォスター」、「ベンソン」ともとても寛いだ演奏で、聴き手をハッピーにしてくれます。
「マクドナルド」の的を射たパーカッションも良い味を出してるよ。

3曲目「シックス~」は「フィルアップチャーチ」が書いたアップテンポでファンキーなポップナンバー。
80年代以降主流をなした、ドライヴィング・サウンド、フュージョンの原型の様な軽やかで、ハイセンスな佳曲です。
この中では、ドラムスの「メイソン」が、印象に残る良い演奏です。

50年代中期のワンホーン、モダンジャズ傑作…ダディ・プレイズ・ザ・ホーン~デクスター・ゴードン

2007-09-21 23:24:02 | ジャズ・テナー・サックス
正統派のモダン・ジャズ、黄金の50年代の中でも屈指の名盤、このアルバムに形容詞を付ければ、枚挙に暇は無いでしょう。

セッションのリーダーは、テナーの「デクスター・ゴードン」。
バックを司るメンバーも、ピアニストに「ケニー・ドリュー」、ベースは「ルロイ・ヴィネガー」、そしてドラムスは、「ラリー・マラブル」と言う渋めだが、名人の好いメンツに恵まれている。

アルバムタイトル…ダディ・プレイズ・ザ・ホーン

パーソネル…リーダー;デクスター・ゴードン(ts)
      ケニー・ドリュー(p)
      ルロイ・ヴィネガー(b)
      ラリー・マラブル(ds)

曲目…1.ダディ・プレイズ・ザ・ホーン、2.コンファメーション、3.ダーン・ザット・ドリーム、4.ナンバー・フォー、5.ニューヨークの秋、6.ユー・キャン・ディペンデント・オン・ミー

1955年9月 LAにて録音

原盤…BETHLEHEM RECORDS BCP-36 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-62026

演奏について…5曲目「ニューヨークの秋」…季節的には今日の残暑だと、もう一ヶ月後くらいに聴いてみたい気がするが、豪快&男の色香がぷんぷんで思い切り吹き切る「ゴードン」の名演に酔わされる。
また、このバラード曲には、繊細で哀愁タップリの「ドリュー」のシングルトーンを活かしたピアノ・アドリブはジャスト・フィット。
豪快な「ゴードン」を、繊細な「ドリュー」が喰ってしまうぐらい存在感あるピアノ演奏が最高!です。
しかしエンディングでの「ゴードン」の〆一発のフレーズが決まって、かっこいいです。
アルバム中、ベスト演奏に挙げたい、正にストレート・アヘッドな1曲です。

オープニングのアルバムタイトル曲「ダディ~」は、明るめのブルース曲で、「ゴードン」の自作曲。
「ゴードン」は、ユーモアと余裕を併せ持った、寛ぎのフレーズを吹く捲る。
大音量でぶいぶいベースを弾く「ヴィネガー」のハード・パフォーマンスも痺れます。
中盤からは、ブルージーな雰囲気一杯の「ドリュー」とハイハット・シンバルをメインに演奏する「マラブル」のマン・トゥー・マンの対決が面白い。
この「ゴードン」抜きのピアノ・トリオ演奏も、実はすごい実力で聴き所なんです。

2曲目「コンファメーション」は、「C・パーカー」作で有名な曲。
「ゴードン」は、ビ・バップとハード・バップの過渡期にあった、いかにもこの時代らしく、両方の良い部分を行き来する、豪快なアドリブをかましてくれる。
「ドリュー」のソロも「ゴードン」同様、一瞬「バド・パウエル」かな?って思えちゃう程、ビ・バップ・フィーリング充分なソロを弾いてくれます。
「ミラブル」の聴かせ所のあるソロパート部分も用意?されていて、曲が曲だけに、アルバム随一のビ・バッパー継承曲に仕上がっています。

6曲目「ユー・キャン~」では、ややアップテンポな曲調で、「ゴードン」が最初からエンジン全開で、ぶいぶい言わせてます。
「ドリュー」は、幾分遊び心の入った、ハズシ調のお洒落なソロで応戦して、その後をウォーキング・ベースの「ヴィネガー」が、大人し目ながら、存在感十分のベースを弾くんです。
最後は「マラブル」のチョイ派手なドラムアドリブと、「ゴードン」のバトル・チェイスの様な、掛け合いが最高の聴き物になってます。

3曲目「ダーン・ザット~」…男の背中に見せる哀愁を、「ゴードン」が幾分渋めに、そしてストレートにメロディをテナーで、最初から最後まで吹き通す、好トラック。
バックの3人は、極力音を排除して、「ゴードン」の吹くワン・ホーンを際立たせているのも、とても素敵!!

4曲目「ナンバー・フォー」では、リフを中心に「ゴードン」は豪快にテナーを鳴らす。
メンバー中では、淡々とブロックコードを刻む「ドリュー」と、おかず満載の派手ドラムを敲く「マラブル」が、好調です。

いずれにせよ、主役「ゴードン」と準主役「ドリュー」を見事にサポートする、バックス(脇役)二人、「ヴィネガー」「マラブル」の名人級演奏が、このアルバムの裏聴き所であるのは、間違い無いでしょう。

若い頃のコルトレーンが参加したブローイング・セッション…インフォーマル・ジャズ~エルモ・ホープ

2007-09-20 23:42:04 | ジョン・コルトレーン
今日は、プレスティッジ所属だったが、アーティストとしては過小評価されている、ピアニストの「エルモ・ホープ」がリーダーとして残したアルバムの紹介です。

「ホープ」自体は、我々日本人には、無名かもしれませんが、このアルバムに参加しているメンバーは、「すごいメンツ」なので、聴く価値は充分にありますよ。

アルバムタイトル…インフォーマル・ジャズ

パーソネル…リーダー;エルモ・ホープ(p)
      ドナルド・バード(tp)
      ハンク・モブレイ(ts)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ウィージャ、2.ポルカ・ドッツ・アンド・ムーン・ビームス、3.オン・イット、4.アヴァロン

1956年5月7日

原盤…Prestige  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23753

演奏について…ハードバップの1曲目「ウィージャ」では、「エルモ・ホープ・セクステット」登場…の自己紹介的な派手目の演奏がなされる。
「ホープ」の品あるソロ、「モブレー」の温かみがある朴訥なアドリブメロディ、「バード」は煌びやかなソロを吹き、「コルトレーン」はソロを思索しながらも、割とストレートなアドリブを演奏する。
中途では、「チェンバース」の渋い、ボウイング・ソロが入り、「フィリー・ジョー」は所々で、超絶テクのドラムをぶっ敲く。
各人の良い部分を露にした名演奏です。

2曲目「ポルカ~」は、この曲の主役は、誰が何と言っても「バード」が吹き切るバラードの美演奏につきる。
ブリリアントだが、情感もたっぷりと表現して、ある意味、若者らしくない大人が演奏する、バラッドに酔わされる。
伴奏系では、勿論、アルバムリーダーの「ホープ」の知性的なピアノが、聴き所でしょう。

3曲目「オン・イット」では、バック3人「フィリー・ジョー」、「チェンバース」、「ホープ」のスウィング感覚バリバリのリズム・セクションがとにかく素晴らしい。
「バード」は2曲目程吹き切ってはいないが、知的なフレーズを吹く。
この曲のもう一組の主役は、交互に吹く「モブレイ」と「トレーン」だ。
この時代プレスティッジで流行った、交互に吹き合う、所謂テナーバトル演奏が良いねぇ。
この時代の「コルトレーン」のソロには、神掛かったオーラは全く無いが、非常に生真面目にテナーと向き合い、朴訥ながら一生懸命に吹いている事に共感を覚える。

4曲目「アヴァロン」は、急速調の4ビートで、序盤はコロコロ転がす様なシングルトーンでピアノアドリブを弾く「ホープ」と、ブラシでカッツリリズムを刻み続ける「フィリー・ジョー」、そしてこれまた実直ベースの「チェンバース」が主翼エンジンとなって、皆をぐんぐんとドライヴィングして行く。
中間になると、「モブレー」から次々続くアドリブソロも、短目だが、それぞれの才能が溢れていてgoodな演奏になっている。
そして全員でのフィニッシュも決まり、渋い好アルバムが一丁上がりです。
朴訥トレーンも悪くは無いよ!!

ジャズ、クラシックの枠を越えたピアニスト…ディープ・ブルー~松居慶子

2007-09-19 23:49:00 | ジャズ・ピアノ・コンボ
松居慶子…全米スムース・ジャズ賞を受賞した、ジャンルボーダーレスのピアニストであり、彼女の中でも評価が高いアルバムが、通算13枚目の、このアルバムです。
些少ですが、ジャンルはジャズ・ピアノにしましたが、私的には「イージー・リスニング」の方が良いのでは?と思います。

アルバムタイトル…ディープ・ブルー

パーソネル…松居慶子(p)  他

曲目…1.ディープ・ブルー、2.ウォーター・フォー・ザ・トライブ、3.アクロス・ザ・サン、4.トゥリーズ、5.メディテラニアン・アイズ、6.ローズ・イン・モロッコ、7.ムーン・フラワー、8.クレセント・ナイト・ドリームス、9.トゥ・ジ・インディアン・シー、10.ミスティック・ダンス、11.ミッドナイト・ストーン、12.ディープ・ブルー(pソロ)

2001年録音

PLANET JOY RECORDS 
CD番号…PJCD1002

演奏について…アルバムタイトル曲「ディープ・ブルー」は、とてもセンチメンタルなメロディの佳曲で、「松居」は「間」を上手く使い、グランドピアノを弾く。
バックのリズムは「打ち込み」のシンセがメインだが、とても絵画的な編曲で、映画音楽を連想させる。

2曲目「ウォーター~」も、リリカルな美音で、「松居」がテーマを弾いて、このメロディ…胸が張り裂けそうなくらい、深く美しい曲です。
中途からは、バックのベースが重厚にサウンドを形作ると、「松居」は華麗に、そしてどっしりと大地に根を生やした様に、グランドピアノの低音域を活かしたアドリブが、goodです。
カッ、カッと切れ味良く、決め手くれるパーカションの伴奏もとても効果抜群です。

3曲目「アクロス~」は、かつて流行ったフュージョン、「シャカタク」を彷彿させる、ラテンリズムにメランコリックなメロディを、華美にピアノの音符を飾りつけるサウンド・センスに脱帽する。
バックはエレクトリックベースとドラムスで、カチッとリズムを切れよく刻む。

ここまでの3曲、とても女性らしいジャズ世界を構築していて、私は大いに気に入っております。
ただ女性的に繊細なだけでなく、しっかりとスウィングしているのも買いでしょう。

4曲目「トゥリーズ」…癒し系環境音楽の様な、編曲・構成の曲に、心地よくピアノのソロがシンクロする夢想音楽世界で、あたかも蝶が舞うが如くの演奏です。
貴方も是非、「癒されて」下さい。

5曲目「メディテレニアン~」は、ギター・デュオ「デ・パペペ」が弾く軽やかでさわやかな音世界を、「松居」はピアノで演じていて、好感が持てる。
中途からは、リズムセクションが陽気に囃し立て、「松居」もそれを受けて、一層軽やかに鍵盤を跳ねる様に弾くのです。

6曲目「ローズ~」…異国情緒たっぷりの(モロッコ)の街中のバックセッションの合間を、ベールで顔を隠した東洋女性「松居」が、闊歩しているかの様な演奏。
中間からは、華麗にそして鍵盤上を縦横無尽に指先が舞う「松居」のアドリブの独壇場と化す。

7曲目「ムーン・フラワー」では「松居」の優しさを知り、8曲目「クレセント~」では、「松居」のハイ・ソサエティを堪能する。

そして9曲目「トゥ・ジ~」では、「松居」の慈愛に全てを委ねる事になる。
「尺八」と「シンセ」の異次元空間に、ダイナミズムを利かした「松居」のアドリブ・ソロと、メロディラインの美しさが眩しい演奏です。
ネオ・ジャポネスク・ジャズ(フュージョン)の誕生を見ることになる。

10曲目「ミスティック~」…いつまでも聴いていたい、とても美しいメロディ。
この甘さ、切なさ、美しさ、そして悲しみは、一体どこへ行こうとしているのか?
しかし、終盤にこの答がやって来る。
「松居」の奏でるメロディは、女々しくはなく、とても芯の強い愛だ。
ロシアの大地に咲く、一輪のバラの様だ。

11曲目「ミッドナイト・ストーン」のピアノソロ…狂おしい愛に飢えた男が、街を徘徊し、己の愚かさに、怒り、揮えて、凶器を手に持ってしまう…。
その後には、惨劇が起こり、男は自虐し呆然と立ち尽くす…。
眼を閉じると、愛ゆえに悲しい結末を迎えてしまう、モノクローム映画が眼前に浮かぶ。
美しさと悲しさが同居した、美演奏です。

12曲目…タイトル曲のソロなので、この演奏も間違い無い!!

「松居慶子」…ピアノで映画を作る、アーティストです。

今日は一寸、「ナオさん」」のポエムの世界が入っちゃいました。
「ナオさん」の様にはとても書けませんが、たまにはこう言うのも良いかもしれませんね。
でも、「ナオさん」の大変さ…身に沁みて、苦労が偲ばれます。
いつも本当にお疲れ様です。

ブルーノートの新スタイルピアニスト、アンドリュー・ヒル…ジャッジメント

2007-09-18 23:59:03 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ブルーノート出身で、空間をすごく上手く使うピアニストが、今日紹介の「アンドリュー・ヒル」です。

そして、このアルバムに参加したメンバーも、彼の作り出す世界にジャストフィットする、ヴァイブの「ボビー・ハッチャーソン」と、スーパー硬派のベーシスト「リチャード・デイヴィス」、そして、これまた「デイヴィス」の相棒の兄貴キャラ「エルヴィン・ジョーンズ」と言う申し分ないメンツです。

メンバー構成を聞いただけで、もう演奏が分かりそうな感じで、よだれ物です。

アルバムタイトル…ジャッジメント

パーソネル…リーダー;アンドリュー・ヒル(p)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.シエト・オチョ、2.フレア・フロップ、3.ヨカダ・ヨカダ、4.アルフレッド、5.ジャッジメント、6.リコンリエーション

1964年1月8日

原盤…BLUE NOTE 84159 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4159

演奏について…まず、全曲「ヒル」のオリジナル曲であり、革新的なヴァイブ奏者「ハッチャーソン」が加わった事によって、「ヒル」の空間的な「間」とセンスを活かした演奏が、より一層輝きを増すのである。
リズムの二人は、これ以上に無いバリバリ硬派であり、硬派と言っても不良学○じゃないし、ましてヤ○ザでもチン○ラでも無い。
もっと怖い右○団体のボスか、逆にロ○アK○Bぐらいの過激さを持つ、超大物二人である。
この二人にガッチリ基礎を支えられて、「ヒル」と「ハッチャーソン」は、自由気ままに大空を舞うのである。

さて、お薦め曲だが、全曲変拍子のリズムが多く、個性的な曲ばかりなのだが、その中で逆に毛色が変わっているのは、変拍子では無くてオーソドックスなリズムで、沈静化されたリリシズムがとても品が良く、趣を感じさせる4曲目「アルフレッド」が抜群に良い出来だ。
その名の通り、名プロデューサー「アルフレッド・ライオン」に捧げられた曲であり、「ヒル」が単なる物珍しいピアニストでは無く、恐るべき才能を持っている(コンポーザー)だと言う事を思い知らされる。
この中の主役は、ピッチカートベースで分厚く引き続ける「デイヴィス」と、間を活かす「ヒル」の二人だ。
「ハッチャーソン」も、所々で伴奏をつけて、名演に色を添える。

5曲目、表題曲の「ジャッジメント」も抜群に良い演奏だ。
この曲では、何と言っても中途でソロをとる「エルヴィン」がカッコイイ。
「ハッチャーソン」も、優れたアドリブをびんびんに敲き、「デイヴィス」は完全にわが道を突き進むが如く、骨太ベースをガッツリ弾き通す。
ここでは「ヒル」は伴奏に終始する程、3人が熱く燃えている。

寛ぎ調の6曲目「リコンシリエーション」…序奏は変則拍子の「モダン・ジャズ・カルテット」的に始まるが、すぐにこの新主流派の世界にトリップをする。
ここでもベースの「デイヴィス」がすごい!!凄すぎる。
「エルヴィン」は、ブラッシュ・ワークだが、やはり硬派だ。
「ヒル」は素晴らしく出来が良く、半音をとても上手く使って曲を印象派的に描ききる。
彼の個性が良い方に全面的に出た演奏だ。
「ハッチャーソン」は、エンディングで一発参加して、聴かせる。

1曲目「シエト・オチョ」…その名の通り7/8拍子なのだが、「ヒル」が雨だれの様に煌めいたソロを取り、「ハッチャーソン」もそれに合わせて、ハイセンスのアドリブをかます。
「デイヴィス」「エルヴィン」の二人は、ハードにリズムをキープして、彼等をアシストする。
しかし「エルヴィン」のドラムソロ、パワフルで超絶技巧で、流石の一言。
やはりこのリズム二人は、化物だぜぃ。

前日の続きを書きましょう。ユセフ・ラティーフ~ジャズ・ムード

2007-09-18 23:12:08 | ジャズ・フルート他(ホーン)
1曲目…「メタファ」はこのアルバムのコンセプト通りの楽曲です。
インディア的なメロディテーマの序奏の後で「ラティーフ」は、「モンク」調のハズシ気味のメロディーを、やや過激なアドリブでフルートを用いて奏でる。
昨日、プチ紹介したが、どことなく、いや、かなり「ドルフィー」が見え隠れするソロだ。多分フルートと言う楽器で、アヴァンギャルドに演奏すると、無条件反射的に「ドルフィー」が脳裏を掠めるんでしょうね。
「ラティーフ」の後で、「フラー」がいつもよりはハードに、ピアノの「ローソン」ベースの「ファロウ」、名人「ヘイズ」のバック3人は、非常にクラシカルなトリオ演奏で、フロント二人をサポートする。
過激な「ラティーフ」とのギャップが、この演奏の隠し味になっている。

2曲目「ユセフズ・ムード」は、過激と言うよりは、もろにファンキーだ。
ファンキーと来れば、このメンツではジャズテットの勇士、「フラー」の出番だ。
「ラティーフ」は、この曲ではテナーサックスで、「モブレー」が吹いた様な、割と正統的に吹く。
中途で絡む「フラー」が、同じフレーズを淡々と吹くのだが、アドリブでぶいぶい言わす「ラティーフ」よりも目立ってしまうのは、何故だろう?
やはり、曲調が「フラー」にピッタリ合うので、聴き手が「フラー」の勝ちを判定してしまうんだろう。
かと言って、「ラティーフ」のソロは、悪い訳では無いので、ご安心を…。
特に終盤は、ガンガン吹いて盛り上げてくれますぜ!!

3曲目「ザ・ビギニング」は、短曲だが「ラティーフ」が、沈静なテナーアドリブを吹いて、何か後期の「コルトレーン」が、神聖なバラッドを吹いている所がオーヴァーラップするようだ。
低音域を効果的に弾く「ローソン」が良い味を出してます。

4曲目「モーニング」…序奏のパーカッション「ワトキンス」が、ノッケから異国情緒たっぷりに皆を煽ると、「ラティーフ」「フラー」のユニゾンが、それに続く。
ここでの「ラティーフ」は、渋くむせび泣く様な、サックスを吹く。
「ローソン」は、モード調のピアノで応戦するが、その間でも「ファロウ」はピッチカート奏法で、「ワトキンス」も、延々と締った音色のパーカッションを単調に、しかしハードコアに引き続ける。
単調と言っても、全く飽きさせず、むしろ「フラー」「ラティーフ」のアドリブを際立たせているのが、素晴らしい。
私的に、1曲目と双璧の名演奏と思うし、是非推薦したい曲です。

5曲目「ブルース~」も、エキゾチックなテーマメロディに導かれて、「ラティーフ」が登場!
ここで漢っぷり充分なテナーソロを吹くと、「ヘイズ」もシンバル&ブラシで皆を高揚して行く。
「ローソン」は、お洒落目のシングルトーンで、ハードバップ全開。
受ける「フラー」は「フラー節」全開で、これまた良いねぇ。
「フラー」に限って言えば、このアルバムで一番良い演奏でしょう。
「ファロウ」のソロも朴訥調で、好感が持てる。
最後のユニゾンフィニッシュも、曲の締め括りに相応しい。

アバンギャルドと言っても、フリーじゃないので、聴き易いアルバムです。

アヴァンギャルドなマルチリード奏者…ユセフ・ラティーフ~ジャズ・ムード

2007-09-17 23:56:33 | ジャズ・フルート他(ホーン)
皆さん、お久しぶりのブログ更新です。
色々と訳ありまして、これから毎日ブログ更新するのは、非常に厳しそうです。
今日は、「エリック・ドルフィー」的な匂いのする、マルチ・リード・ミュージシャンの「ユセフ・ラティーフ」を紹介します。

「ドルフィー」的とは言っても、実際はこの録音の方が「ドルフィー」の録音群よりも、3年程古いので、「ラティーフ」の方が、いち早くアバンギャルドな演奏を実践していた、ミュージシャンと言う事になります。
まぁ「ドルフィー」の演奏(生き方)は、唯一無二に様な、稀有な存在のミュージシャンですから、後追いと言っても「ドルフィー」が、「ラティーフ」をパクッた等とは100%有り得ない話でしょう。
ところで、時間の関係上、今日はアルバム名の紹介だけになります。ごめんなさい!
詳細な解説は、明日に持ち越しと言う事で、後勘弁を…。。。

アルバムタイトル…ジャズ・ムード

パーソネル…リーダー;ユセフ・ラティーフ(ts、fl、他)
      カーティス・フラー(tb)
      ヒュー・ローソン(p)
      アーニィ・ファロウ(b)
      ルイス・ヘイズ(ds)

曲目…1.メタファ、2.ユセフズ・ムード、3.ザ・ビギニング、4.モーニング、5.ブルース・イン・スペース

1957年4月9日録音

原盤…SAVOY MG12103 発売…日本コロムビア
CD番号…COCY-75931

演奏について…



トランペットの貴公子、晩年のアルバム…チェット・ベイカー~ブロークン・ウィング

2007-09-14 23:58:22 | ジャズ・トランペット
若かりし頃は、リリカルで繊細なプレイ&シングと、「ジェームス・ディーン」ばりの「イケメン」ルックスで、絶大な人気を誇った、白人トランペッター&シンガーの、「チェット・ベイカー」の晩年(中年期)のアルバムです。

アルバムタイトル…ブロークン・ウィング

パーソネル…リーダー;チェット・ベイカー(tp、vo)
      フィル・マーコヴィツ(p)
      ジャン・フランソワ・ジェニー・クラーク(b)
      ジェフ・ブリリンガー(ds)

曲目…1.ブロークン・ウィング、2.ブラック・アイズ、3.オー・ユー・クレイジー・ムーン、4.ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン、5.ブルー・ジル、6.ブラック・アイズ(別テイク)、7.ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン(別テイク)

1978年12月28日 パリにて録音

原盤…エマーシー 発売…ビクターエンタテインメント
CD番号…UCCMー3003

演奏について…このアルバムの演奏&歌は、「チェット」の10代~20代の頃の非常にリリカルでナイーヴな演奏では勿論ないが、「アート・ファーマー」的な、ほのぼの系のトーンで、また優しげな歌声の歌唱は、若い頃を充分に思い出させる出来である。

特にほのぼのトーンのトランペットが聴ける演奏、5曲目「ブルー・ジル」は、まんま「ファーマー」の吹くそれだ。
バックは、ブラッシュの「ブリリンガー」、かっちり締ったベースで曲の輪郭を作る「ジェニー・クラーク」の二人の出来は良い。
そしてそれ以上に素晴らしい出来なのは、ピアノの「マーコヴィッツ」で、音を極力排除して、少ない音で空間と間を活かした極上のサポート演奏をしている。
いずれも「チェット」のナイーヴな演奏表現を、しっかりと支えている、ハイセンスなリズムセクション演奏である。
「チェット」には、申し訳無いが、トランペットレスの、ピアノ・トリオで演奏する中盤から後半部分は特に聴き物で、各人が一級の冴えを見せる。
この中では、「クラーク」のソロ、カデンツァが聴き応え抜群です。

冒頭のタイトル曲「ブロークン・ウィング」では、「チェット」による「マイルス」ばりの優れたミュート・プレイが印象的だ。
若い時の「チェット」は、リリカルでありながら、どこか憂いと、若者らしいナイフの様な鋭利さが演奏に同居していたが、晩年(50代で死んだので、実際は中年)では、当然鋭利さは無くなったが、渋さと哀愁は増しているので、「チェット」のプレイの新たな魅力が発見できて大変趣がある。
この曲でもバックの3人の出来はとても良く、「チェット」のミュートと素晴らしく一体感が取られたバラードプレイで、ワンホーン・カルテットの醍醐味が味わえる。

2曲目「ブラック・アイズ」…センス抜群のラテンリズムにのって、「チェット」が、幾分明るめのフリューゲルホーンの様な音色で、トランペットを気持ちよく吹く。
「クラーク」のガッツリベースのパワフルな音に支えられて、「ブリリンガー」はシンバルメインに、皆を煽り始める。
「マーコヴィッツ」は、やや半音を多めに使用して、「モンク」程では無いが、ハズシの和音を上手に使用して、大人の伴奏を行う。
しかし、「クラーク」のベースは良いね。
このベース、誰かとにてるのだが…わ、分かった。
第二次「ビル・エヴァンス・トリオ」のベーシスト、「エディ・ゴメス」にくりそつなんだ。
だから、良い音で、アドリブもセンス抜群なんだな。
この曲を含めて、上記3曲が、このアルバムの3大聴き物(演奏)でしょう。

3曲目…「オー・ユー~」では…昭和歌謡の様なイントロ部分から、退廃的なムードたっぷりの「チェット」のヴォーカルが堪能できる。
老いたとはいえ、リリカルな面影は残っていて、中途のトランペット・プレイにも、まだまだ繊細さを持ち合わせている。
この曲ではピアノの「マーコヴィッツ」は、「デューク・ジョーダン」の様なクラシック的な正統的なピアノソロを取り、ベース「クラーク」とのインタープレイには、痺れますよ。
「チェット」のスキャットは…グリコのおまけみたいな物かなぁ。

4曲目「ハウ・ディープ~」…この演奏も序奏は、似非「ファーマー」的な演奏ですが、しかし、この音色、アドリヴ…嫌いじゃないですね。
むしろ好きでさえある。
中盤からは、カルテット4人の演奏に力が入り、「チェット」にしては、かなりブリリアントで、パワー充分のアドリブを吹いて、とても気持ち良い演奏です。
ピアノは殴る様なブロックトーンで、ドラムも全曲中、一番バスドラを効かす演奏で、ベースもぶいぶい言わせるので、ここでの演奏は一言で言うと「硬派」です。

いずれにしても晩年の「チェット・ベイカー」も悪くは無いです。