紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

バルネ・ウィランが綴るフランス映画音楽…ふらんす物語~バルネ・ウィラン・ウィズ・マル・ウォルドロン

2008-05-21 00:28:09 | ジャズ・テナー・サックス
フランスが生んだ偉大なサックス奏者「バルネ・ウィラン」と、名ピアニスト「マル・ウォルドロン」の素晴らしいコンビネーションが、今日紹介する名盤を作り上げました。

曲の題材は、全てフランス映画音楽で、「バルネ」のサックスと「マル」のブラッキーなピアノが素晴らしいパフォーマンスを織り成します。

今宵はセンス抜群のアルバムをご堪能下さい。

アルバムタイトル…ふらんす物語(バルネ・ウィラン・ウィズ・マル・ウォルドロン)

パーソネル…リーダー;バルネ・ウィラン(ts、ss)
      マル・ウォルドロン(p)
      スターフォード・ジェイムス(b)
      エディ・ムーア(ds)

曲目…1.男と女、2.死刑台のエレベーター、3.シェルブールの雨傘、4.危険な関係のブルース、5.黒いオルフェ、6.殺られるのテーマ、7.オータム・リーブス、8.クワイエット・テンプル

1989年10月2、3日 オランダにて録音

原盤…ALFA JAZZ 発売…アルファ・ミュージック
CD番号…ALCB-9514

演奏について…1曲目「男と女」…「バルネ・ウィラン」のメイン・テーマをあえて崩さないで、かなり忠実に原曲を歌い上げる序奏から曲が始まり、「マル・ウォルドロン」は、かなり寛いで落ち着いたイメージでブロック・コードを合わせて行く。
映画「男の女」のアンニュイな雰囲気そのもののスターティングである。
しかし「マル」のソロに入ると…面白いぐらいに「マル」節全開で、インプロヴァイズして行くのが笑えるぐらいいかしてます。
ベース「スターフォード・ジェイムス」のビンビンにハードな音色のサポートと、ドラムス「エディ・ムーア」のタイム・キーピングもセンス溢れてます。
最後はもう一度「バルネ」が余裕のテーマ吹きで、ピシッと〆ます。

2曲目「死刑台のエレベーター」…知っている人は知ってますねぇ。
正に「バルネ・ウィラン」が青年の時の日本でのデビュー・アルバムが、「マイルス・デイヴィス」のこのタイトル名盤なんですね。
ここでの「バルネ」は、ソプラノ・サックスで非常に叙情的に、原曲に忠実に曲を仕上げて、若い時のデジャヴを蘇らせているみたい。
「マイルス」レスでも、しっかりとあの盤を彷彿させる仕上げがgood jobです。
その後を受ける「マル・ウォルドロン」…訥々と音を切りながら?、敢えて音の数を少なく絞って、思索的に…そしてハイセンスに曲を修飾します。
終盤、、もう一度「バルネ」が流麗にソプラノで決めて来ます。
暗闇に消え入る様なエンディング(フェード・オフ)に痺れそうです。

3曲目「シェルブールの雨傘」…もう、私の大好きな曲で、「バルネ」は渋く低音域をメインにアドリブを展開して行きます。
サイドではベース「ジェイムス」が、ガッツリのベース演奏で太刀持ちをして、ドラムス「ムーア」のかなり激しいドラミングで、「バルネ」を露払いで支えます。
「マル」は「バルネ」と対峙する様に、センス抜群のピアノ・ソロで応戦します。
「マル」は「マル」流に曲を解剖し、「マル」が「マル」で有るが如く調理して行くのがえぐいねぇ!
この「マル」のカデンツァ…いかにもって感じで、以前聴いた事がある節、テンコ盛りなんだけど…そこが又行けてるんです。
「マル」はやっぱり、こうでなくっちゃね!
その後、「ジェイムス」と「ムーア」もそれぞれの持ち味を活かしたソロを執って、以外に彼らがサポーターとしてだけでなく、ソロのかっこ良さに満足させられちゃいます。
4人が渾然一体になった、ベストなチューンです。
エンディングの仕上げも、超カッコイイ!!

4曲目「危険な関係のブルース」…「バルネ」のシンプル・イズ・ベストのサックス・バウトも素敵だけども、ここではとにかく「スターフォード・ジェイムス」の硬派なベース演奏が最高に行けていてグッと来ます。
とにかく、唸るぐらいに重低音で、一音一音に魂がこもっていますぜ!
それを聴いた「マル」が、じゃぁ俺も…ってな感じでかっこ良いアドリブをバシバシと決め捲くり、演奏を華美にして行きます。
そうすると、やっぱり「エディ・ムーア」も3曲目同様に、出て来るんです。
シンプルだが、決めのフレーズで一発演ってくれます。
3曲目の「シェルブール…」から、4人のエンジンが全開になったのか?
元祖「デューク・ジョーダン」の「危険な関係…」とは、かなりイメージが違うけど、この演奏もかなり行けます。

5曲目「黒いオルフェ」…いつも言ってますが、私のブログ名の礎になっている曲だけに、マイ・フェイヴァリットの本命的な曲ですけど、ここでは「バルネ」が、又ソプラノ・サックスに持ち替えて、エモーショナルに曲を描いて行きます。
特に中間部でのカデンツァの叙情性は抜群で、シンプルにバックに徹する3人がより一層「バルネ」のソロを際立ててくれます。
その後「マル」がソロを執るんですが、最初はチョイ弾き気味?のソロが、逆にとても良い味を出すんです。
その後、「マル」もトランス状態になってきて、ここからは「マル」節全開で、全部有りっ丈に出し切ってくれて…「マル」…本当にありがとう。
そして、もう一度「バルネ」のソロが移ると、中近東風のアラビックなアドリブ・ソロに仕上げて行って更に曲にスパイスを効かせてくれて…ウルトラgoodです。
4曲目と双璧の名演です。

6曲目「殺られるのテーマ」…非常にシンプルな仕上げのブルーズ曲で、「バルネ」はともかくとして、「マル」は普段の「マル」の個性から離れた感じがして…言い換えれば新鮮な感覚が有りますねぇ。
シングル・トーンで連続した伸ばすフレ-ズを多用して…ある意味「マル」らしくないのが楽しい?です。
後半には「ジェイムス」がベースを良く歌わせるソロ・フレーズをかまして、アドリブを決めて来ます。
真に大人で男っぽい1曲が出来上がりました。

7曲目「オータム・リーブス」…まず、一寸疑問…邦題なのに何故か「枯葉」ではなくて「オータム・リーブス」なんですね。
曲は勿論、「枯葉」です。
「マイルス」の様な究極の演奏では勿論無いけれども…この「バルネ」の演奏も悪くは無いですね!
今までの曲とは、アプローチを変えていて、序奏から早めにアドリブ・コードにチェンジして行きます。
「バルネ」も原曲の美しさは大事にしつつも、今回は少しばかり遊んで見たくなったんでしょうか?
続いて「マル」は、前曲の演奏とは異なり、「マル」節をノッケから出し捲くって、聴いていて笑えるぐらいに「マル」しちゃってます。
これも「バルネ」に触発されたのかなぁ?
そして、そのまま「マル」特急…終点まで加速して突き進むんです。
ラストでは「ジェイムス」が一発ソロを演り、「バルネ」とのコンフュージョンでフィニッシュします。

ラスト曲「クワイエット・テンプル」…ラストはフレンチ映画らしく、派手で盛り上がる、所謂上げ上げの曲で〆ず、静かに…かなり根暗な曲&演奏で終わるのが、いかにもフランスらしい?いや、「バルネ」らしいですね。
とにかく抑制した、静寂のバラッド演奏で、「バルネ」も極力音を小さくして、渋いテナー・サックスをじっくりと吹いて行きます。
「マル」も音数を削って、シンプルにブロック・コードで伴奏をして、「ムーア」のブラッシュ・ワークもとても上品で、二人をアシストしていますね。
終盤「マル」がソロを執りますが、節はやっぱり「マル」節?なのですが、非常に思索的で、音を一音、一音選んで、とにかく音数を削って、幻想的に仕上げて行きます。
ラストはもう一度テーマに戻り、序奏のアンニュイで静寂さを全面に押し出した大人のバラッド演奏を、静かに、そしてじっくりと「バルネ」が吹き上げて〆ます。

全8曲…一寸俗的かも知れませんが、所謂名曲の名演で、万人向けです。         

若かりし巨匠がスタンダードをブロウする…ソニー・ロリンズ~ワークタイム

2008-03-23 23:07:32 | ジャズ・テナー・サックス
かの、「ソニー・ロリンズ」が売り出し始めた頃に、豪快なブロウでスタンダードを題材にアドリブを演りまくった痛快なアルバムがこれなんです。
バックのメンバーも最高で、ワンホーン・カルテットの魅力に溢れた名盤ですね。

アルバムタイトル…ワークタイム

パーソネル…リーダー;ソニー・ロリンズ(ts)
      レイ・ブライアント(p)
      ジョージ・モロウ(b)
      マックス・ローチ(ds)

曲目…1.ショウほど素敵な商売はない、2.パラドックス、3.レインチェック、4.ゼアー・アー・サッチ・シングス、5.イッツ・オールライト・ウィズ・ミー

1955年12月2日 NYにて録音

原盤…prestige LP-7020  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDJ-1607

演奏について…オープニング曲「ショウほど素敵な商売はない」ですが、「マックス・ローチ」のタイム感覚抜群のドラミングに導かれて、「ロリンズ」が豪快にブロウする痛快な1曲です。
この演奏で特筆すべきなのは、「ローチ」以上のドライヴィング力で、「ロリンズ」さえも引っ張っていくベースの「モロウ」のハードな仕事振りに耳を奪われますね。
勿論、触発された「ロリンズ」も負けじと豪快に吹いて返してますけどね…。
「ブライアント」は、曲調に合わせて、かなり早弾きしていますが、彼にはもっと叙情的に弾いて欲しいと言う願望が有るので、個人的にはチョイマイナスかな?
ラストでは、「ローチ」がスーパー・ドラミングを演ってくれて、オープニングに相応しく、掴みはOKの好演となっています。

2曲目「パラドックス」…ラテン調のリズムで、軽快に進行する「ロリンズ」オリジナル曲です。
テーマ・メロディは分かり易く単純に作っており、「ロリンズ」は、真骨頂のアドリブ満載で、ぶいぶいと演ってくれます。
それを受けての「レイ・ブライアント」のピアノ・アドリブですが、1曲目とは違って、シングル・トーンでロマンティックに仕上げてくれて…そうです。
こうでなくちゃ「ブライアント」は駄目ですよね?
後半に入ると、またまた「ローチ」がテクニック満載に、「ロリンズ」とのデュオ的な掛け合いも見事で、ビーバップから発展した初期のハード・バップの最良の演奏がされていて…goodです。

3曲目「レインチェック」…「ビリー・ストレイホーン」作曲の古典的な名曲なのですが、「ロリンズ」は、ここでもフル・トーンで、豪放にテナーを吹き捲ります。
豪放と言っても流石は「ロリンズ」、歌心は全く失わず、聴き良いアドリブですし、例に漏れず?「ローチ」が、スゴテクのドラム・ソロを雨霰の様に、時に激しく、時に繊細に敲き捲くります。
「ブライアント」のソロも、短い物の魅惑的ですねぇ。
ところで、「ローチ」のドラムが、「雨切符」の「雨」の役目なんでしょうか?
私は、そう思うのですが???果たして真相は????

4曲目「ゼア・アー・サッチ・シングス」…この「フランク・シナトラ」の十八番曲の一つの曲を演ってくれる「ロリンズ」の演奏は、まじで最高ですよ~!!
やはり、歌心が必要不可欠なバラッド曲を吹かせたら、「ロリンズ」の右に出る人はいないでしょう?
バックの3人はとても控えめに、「ロリンズ」の演奏を際立たせるサポートをしていますが、逆にそれが魅力アップになっています。
何と言っても名人3人がバックに徹しているので、「レイ・ブライアント」のバラード・プレイは言うまでも無く秀逸ですし、ソロ・パートのシングル・トーンでの演奏も行けてます。
勿論「ローチ」のブラッシュ・ワークは当然の如く名人芸ですし、「モロウ」の的確なベース・プレイ&ソロも言うこと無しです。
ラストでの「ロリンズ」のアドリブ・ソロも感涙物です。
このアルバム中、ベスト・プレイはこの1曲でしょう。

ラスト・ナンバー「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」…前曲がベスト1と言っておきながら、私的にはこの曲が大好きなので、実は甲乙付け難いんです。
魅惑的なテーマ・メロディを活かしつつ、「ロリンズ」が展開するアドリブ演奏に思わず体がリズムを刻むんです。
とにかく、この曲&演奏での「ローチ」&「モロウ」のリズムの推進力は半端じゃないですね。
「ブライアント」のソロも勿論素晴らしいし、終盤、お決まりの「ロリンズ」と「ローチ」の掛け合いバトルも拍手喝さいしたいですよねぇ。
余りにもお決まり過ぎるけど、やっぱり「水戸黄門」や「渡鬼」マニアはいるんだから、ワンパターンだって、こちとらは、もはや待ってましたですよ!
ドラマなら見て安心だけど、レコード(CD)だったら、聴いて安心な1曲です。

全5曲、「ロリンズ」と名人バック3人の、素晴らしいパフォーマンスが堪能できる1枚ですね。
ズバリ、万人にお薦めです。

最強のインプロヴァイザーによる、夢の共演…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

2008-03-10 11:40:49 | ジャズ・テナー・サックス
今日の2枚目は、グレートな2人のスーパー・スターの夢の共演、そしてバックのメンバーもスター揃いで…正しくドリーム・マッチの王道とも言うべき、企画のアルバムです。

アルバム・タイトル…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

パ-ソネル…リーダー;スタン・ゲッツ(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ロン・カーター(b)1,2,3,7,8,11曲目
      リチャード・デイヴィス(b)4,5,6,9,10曲目
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ナイト・アンド・デイ、2.バッド・ビューティフル、3.ファンカレロ、4.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、5.メリンダ、6.グランド・ファザーズ・ワルツ、7.カーペットバガーのテーマ(未発表曲)、8.WNEWテーマ・ソング(未発表曲)、9.マイ・ハート・ストゥッド・スティル(別テイク)、10.グランド・ファーザーズ・ワルツ(別テイク)、11.ナイト・アンド・デイ(別テイク)

1964年5月5日、6日 ニューヨークにて録音、7~11曲はMonaural録音

原盤…Verve  発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-1829

演奏について…1曲目「ナイト・アンド・デイ」…「コール・ポーター」のスタンダード曲だが、一音目から「ゲッツ」が魅惑的な音色で、テナーを決めて、「エルヴィン」が、ポリリズムを活かしたドラミングで高揚させて、「ビル・エヴァンス」は知性の塊の様な、ソフィストケイトされたアドリブを演る。
この3人のインプロヴィゼーションが堪らない魅力で、ヘヴィー級ボクサーのバトル・ロイヤルの如く「競演」に、ガッツリはまるんです。
演奏終盤で、「ゲッツ」と「エヴァンス」の知的さに対抗して、「エルヴィン」が吼え捲って、ガンガン叩き、「カーター」もハードなベース・プレイでかっこつけて演るソロの所なんて、最高じゃん!
オープニング曲からすごすぎです。

2曲目「バッド・ビューティフル」…「エヴァンス」と「ゲッツ」が、リリカルで且つインテリジェンスに富んだ、都会の大人のバラード演奏を決めます。
「エルヴィン」のブラッシュ・ワークも高水準で、二人のロマンティックな世界を優しくサポートしてくれます。
それにしても、この曲での「エヴァンス」バラッド・アドリブ演奏…良いですね。
「エヴァンス」的なエッセンスを余す所無く伝えて、しかし決して他のスーパー・ミュージシャンの個性を消すような下種な演奏にはしない。
真に叙情的な一曲です。

3曲目「ファンカレロ」…「ビル・エヴァンス」の代表的な作品の一つですが、流石に「エヴァンス」のアドリブは堂の入った素晴らしい出来栄えです。
知性溢れるブロック・トーンと、センシティブなシングルトーンの交錯した「エヴァンス」流が最高潮に輝いています。
「エヴァンス」に触発されたのか?「ゲッツ」のブローイングも抜群で、熱くなり過ぎないギリギリにシャウトが、ヴェリー・グッド・ジョブです!!
「カーター」のズンズン突き進むベースと「エルヴィン」のすさまじいドラミングが二人の天才を更に煌かさせます。
でも、でも…何と言う贅沢なワン・ホーン・カルテットでしょうね。
白人テナーの最高峰と、ジャズ・ピアニストの最高峰に、「マイルス・バンド」のベーシスト、「コルトレーン・バンド」のドラムス…まじでまじで夢の競演です。

4曲目「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」…この曲からベーシストが「リチャード・デイヴィス」に変わるが、この人も硬派ベーシストなので、演奏は何ら変わらず高水準を保つ。
いや、むしろハードな演奏と言う面では「デイヴィス」は「カーター」を凌駕しているので、むしろ緊張感はアップしている。
「ゲッツ」は余裕の吹きっぷりで、「エヴァンス」は、熟考された?かの様な、シングル・トーンでのソロ・プレイが魅力的です。
終盤、二者によるバトル演奏が、蒼く燃えていて、ピーンと緊張が走っています。
そして、「エルヴィン」が煽ってくると…静かなはずの「ゲッツ」が、熱く燃えてきて、火傷しそうなブローイング・セッションで〆られるんです。
青白く燃えているのが、紅蓮に燃え上がる変化が堪りませんねぇ。

5曲目「メリンダ」…とても抑えていてクールな音色ですが、知性をたっぷり音に込めて「ゲッツ」が会心の一発を演ります。
「エヴァンス」のピアノは冴え捲り、「エルヴィン」と「デイヴィス」のリズム・セクションも相当インテリ度が高くなっています。
とてもハイセンスな叙情的なバラッド演奏に、酔わされる…いや、酔わないで、KO負けを喰らうでしょう。
冬の富士山の様に、外見はとても美しいが、実際に登山は出来ない厳しさの様な、芯が頑固な戒律が有る演奏です。

6曲目「グランド・ファーザーズ・ワルツ」…のっけから、とても美しいメロディアスなフレーズを、ワルツお得意?の「エヴァンス」が、シンプルに…且つセンシティブに情景を描き切る。
「ゲッツ」も、肩肘張らない余裕と暖色系の優しい音色で、夢の様な心温まる良い気持ちにさせる演奏をする。
「エルヴィン」も優しく、「デイヴィス」もさりげなく…4人が好々爺にでもなったのであろうか?
怒る事なんか、もはや有り得ない、優しい優しいおじいちゃんの心情が表現されています。

7曲目「カーペットバガーのテーマ」…この曲からは、本来LPで出た時には収録されていなかった、追加トラックと別テイクとなる。
この曲は変拍子で、「ゲッツ」が別の例のコンボ…「ポール・デズモンド」がテナーに持ち替えた様なウォーム&クールな演奏がgoodです。

8曲目「WNEWテーマソング」…このWNEWとは、アメリカのFM曲の事だそうで、相も変わらず「ゲッツ」は余裕吹き、「エヴァンス」は知的に…のフォームは崩さない。
この二人…やはり音楽的頑固者(マエストロ)ですよ。(笑)

9曲目「マイ・ハート~」(別テイク)…オリジナルよりも、かなり急速調で、「ゲッツ」が、かなりぶいぶい言わせる。
単演奏なら、こっちの方が面白いけど、アルバムの統一性を考慮して、オリジナル・テイクが採用されたんでしょう。
「エヴァンス」も彼にしては、遊び心が感じられるアドリブ・フレーズと、タッチが有るし、「デイヴィス」のドライヴ力抜群の力演も聴き所です。
勿論、こう言う展開になると、「エルヴィン」もガツンガツンに演っちゃってくれますよ。
今までのストレス?を発散させるように?敲き捲ります。
このコンボにしては、結構燃えているし、ファイトしていて…とにかく楽しい演奏ですよ。
ボツにする必要は無かったよね?

10曲目「グランド・ファーザーズ~」(別テイク)…この演奏も良い!
センスや崩しから言えば、オリジナルよりもこっちの方が上?だと思いますが…。
「ゲッツ」が、かなりよれた様なイメージで、トータル・バランスからして、編成側が、崩し過ぎと判断したんでしょうか?
十分にレコーディングに値する演奏です。

11曲目「ナイト・アンド・デイ」(別テイク)…この演奏も遊び心が加味された印象が強くなっています。
「エルヴィン」のラテンっぽい太鼓も良い感じだし、「ゲッツ」もダンディズムから、一寸遊び人風な感じで…遠山の金さん?ってイメージでしょうか?
「エヴァンス」のピアノは、それでもやはり…クール・ビューティで冴えています。
今さら言うのもおこがましいですが、この人はまじですごい。
「エヴァンス」流には永遠に不滅で、刃こぼれはしません。
 

昨日の続き…ハンク・モブレー・クインテット

2008-02-27 23:18:17 | ジャズ・テナー・サックス
さくさくと、昨日の続きいっちゃいましょうね。

4曲目「スターティン・フロム・スクラッチ」…本作品中、一番「モブレー」がブロウして、気合が乗るトラック。
「ブレイキー」のザクザク、ドカンと煽りの入ったドラムスも燃える。
二人に触発されて、「ファーマー」のトランペットもかなり激しい演奏で、こいつも珍しく燃えていやがる。
挙句にサイド演奏では、「シルヴァー」まで、廻りをファイトさせて、自らのソロに入ると早弾きのタッチで自分自身を鼓舞する。
でも、でも…やっぱりこう言う演奏になると、「ブレイキー」は最高だね!
この人のスティック捌きで、周りが用意ドンで爆発するんですよ。
激しい演奏に乾杯したいね!

5曲目「ステラ・ワイズ」…非常にオーソドックスな4ビートで序奏がなされ、「シルヴァー」のアドリブ演奏と、バックサポートの「ブレイキー」のブラッシュが、格調高く冴えています。
「モブレー」のソロは、ここでもかなり良い出来で、吼え過ぎない、丁度良い頃合でシャウト&ブロウするのが、通好みの彼らしい所以でしょう。
礼節を重んじる「ファーマー」のトランペット…彼もシャウトギリギリで寸止めしてくれるので…かなりハイセンスですねぇ。
このメンツは、下品と上品の境目を熟知していて、決して下世話に成り下がらないギリを分っていて演奏するんです。
燻し銀の演奏家達です。

ラスト曲「ベース・オン・ボールズ」…表題通り、ベースをフューチャーしている曲で、序奏は渋く渋~く「ワトキンス」のベース・ソロ演奏から始まる。
受けるのは「シルヴァー」で、ブルース臭さぷんぷんの、十八番的な演奏で曲を飾り付けてくれます。
「モブレー」もとてもブルージーな雰囲気を醸し出していて、うねるフレーズを効果的に使って、ブルースとはこんなもんだよと、主張する。
「ファーマー」は抑制した、お得意の自己表現で、見事なサポートぶりを発揮するんです。
最後までしっかりと良い仕事をやってくれる方々です。

余談ですが、このアルバムのオリジナル盤(LP)は、ブルーノート1500番台の中で、最も高額な相場で取引がなされているとの事らしいです。
当時、余り売れなかったんでしょうが、本当に良い物は、時が経ってから分るんでしょうねぇ。
通には堪らない魅力の好アルバムなんですね。

この1枚も渋いでしょう…ハンク・モブレー・クインテット

2008-02-26 22:10:52 | ジャズ・テナー・サックス
今日もまたまたブルー・ノートの渋い1枚を紹介しちゃいましょう。
リーダーの「ハンク・モブレー」の作品と言うよりは、バックに入る演奏陣の「ジャズ・メッセンジャーズ」メンバーの演奏を聴くアルバムと言った方が良いかもしれない。
それぐらいバックのメンバーの演奏が行けてるんです。

アルバムタイトル…ハンク・モブレー・クインテット

パーソネル…リーダー;ハンク・モブレー(ts)
      アート・ファーマー(tp)
      ホレス・シルヴァー(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      アート・ブレイキー(ds)

曲目…1.ファンク・イン・ディープ・フリーズ、2.ワム・アンド・ゼイア・オフ、3.情事の終わり、4.スターティン・フロム・スクラッチ、5.ステラワイズ、6.ベース・オン・ボールズ

1957年3月8日録音

原盤…BLUE NOTE 1550  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6487

演奏について…1曲目「ファンク・イン・ディープ・フリーズ」…いかにものブルー・ノート特有のマイナー・チューンで、各人のユニゾン演奏から、全員が戦闘モードに入る。
トップ・バッターは「アート・ファーマー」だが、彼にしては中々鋭いトーンでキチッとしたアドリブを演っていて…やや燻しを加えた「リー・モーガン」の様な演奏が、まんまBNの世界感を表現している。
その後、「シルヴァー」がファンキー臭さぷんぷんの、待ってましたのアドリブを演ってくれて全員の乗りも佳境へと進む。
「ダグ・ワトキンス」のソロも決まり物だし、ラスト近くで、リーダー「モブレー」の暖系のトーンで渋く吹き通すソロも聴き応え充分です。
勿論は〆は全員でまたまたユニゾン演奏で纏めます。
1曲目からブルー・ノートの桃源郷へようこそです!!

2曲目「ワム・アンド・ゼイア・オフ」…ノッケから「モブレー」が早めのパッセージですいすいと吹く。
相変わらず歌心溢れる、優しいフレーズのソロが魅力的です。
受ける「ファーマー」のソロも素敵で、とてもリリカルで、スウィンギーな感覚にセンスを感じます。
ところで、この2曲まで、自己主張を殆どせずに、敢えてバックに徹する「ブレイキー」の推進力抜群のドラミングが、裏聴き所ナンバー1です。

3曲目「情事の終わり」…タイトルもエロいが、曲&演奏は最高!!!
倖田來未じゃないけど、正にエロカッコイイいいんです。このアルバムぴか一の出来栄えです。
何と言っても「モブレー」の男の色香、哀愁、そうです、「ダンディズム」がぷんぷんの、スターティングでのアドリブ・ソロが最高なんです。
それにも増して「ファーマー」の渋い、ややクールでインテリジェンスぱしぱしのソロもすごいです。
「シルヴァー」のソロも情緒的で秀逸。
正しく最高のバラード演奏です。

後半3曲は明日紹介します。
お楽しみに………。。。

参加メンバー最高!60年代BNでのラストアルバム…ジョー・ヘンダーソン~モード・フォー・ジョー

2008-02-25 22:04:41 | ジャズ・テナー・サックス
ブルー・ノートの看板アーティスト達が多数参加した、「ジョー・ヘンダーソン」の60年代でのBNラスト・アルバム。

後に85年に「ザ・ステイツ・オブ・テナー」vol1&vol2を発表するんだけど。

究極のモード・ジャズを今宵は堪能して下さい。

アルバムタイトル…モード・フォー・ジョー

パーソネル…リーダー;ジョー・ヘンダーソン(ts)
      リー・モーガン(tp)
      カーティス・フラー(trb)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      シダー・ウォルトン(p)
      ロン・カーター(b)
      ジョー・チェンバース(ds)

曲目…1.ア・シェイド・オブ・ジェイド、2.モード・フォー・ジョー、3.ブラック、4.カリビアン・ファイア・ダンス、5.グランテッド、6.フリー・ホイーリン

1966年1月27日録音

原盤…BLUE NOTE ST-84227  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6628

演奏について…オープニング曲「ア・シェイド・オブ・ジェイド」…いかにもBNらしいマイナー・チューンのユニゾンから序奏が始まり、すぐさま「ヘンダーソン」のざらついた音色のテナー・サウンドでスケールの大きいアドリブを吹く。
勿論、「モーガン」、「ハッチャーソン」の演奏もバッチリ決まっています。
その後、「シダー・ウォルトン」がセンスと雰囲気満点のモード・ピアノをガンガンと弾き捲る。
ドライヴする、「カーター」のベースと、「ジョー・チェンバース」のハイ・ハットがいかしてます。

2曲目「モード・フォー・ジョー」…タイトル曲でも有るんですが、「ヘンダーソン」が変則的に、音を切りながら吹くアドリブ演奏が個性的で面白い。
しかし、変則的で有りながら、歌心が溢れていて、エモーショナルなフレーズは、とても好ましい。
次いで「ハーチャーソン」のソロに入るのだが、「ハッチャーソン」にしては、ぶっ飛んではいないメロディアスな演奏です。
「フラー」は、もう「フラー」の世界をフル・オープンにしていて…ほのぼの系の音色で、とても優しい気持ちにさせられる優しい調べを演ってくれます。
終盤で、とっても渋~いソロを演く「ロン・カーター」が、楔のワン・ポイントになっていて…気持ち良~い!!
最後の終わり方が、「A列車で行こう」っぽいのもお洒落です。

3曲目「ブラック」…この曲は「ヘンダーソン」の演奏とフレーズにピッタリですねぇ。
非常に都会的で、カッコイイ曲だし、「ヘンダーソン」節もこの曲の展開にバッチリはまっています。
受ける「モーガン」のソロの出来も抜群で、とてもブリリアントな音色で、思い切り吹き捲る「モーガン」が彼の十八番と言えるぐらいの演奏です。
「ウォルトン」のソロは華麗で、きらびやかな感覚がグー!
後半の「ヘンダーソン」のシャウト&ブロウも〆に持って来いで、混然一体となったスーパー・アーティスト達の宴に乾杯!ですね!!

4曲目「カリビアン・ファイア・ダンス」…曲名の通り、カリブを感じさせる熱いダンシング・サウンドで、「ヘンダーソン」はうねる様なフレーズで、カリブの熱い夜を見事に表現する。
その後にソロを取る「フラー」の出来が抜群の出来栄えで、彼には珍しいぐらいに熱を帯びた熱いサウンド&フレーズで曲を盛り上げる。
「ハッチャーソン」のソロもいかにもってな感じで…ヴァイブの幻想的な響きがこれ程カリビアン・ナイトに合うとは…新しい発見か?(ちと大袈裟)
ドラムス「ジョー・チェンバース」のエキゾチックなドラミングもgoodです。

5曲目「グランテッド」…ハード・バピッシュな1曲で、「フラー」「ヘンダーソン」の順番でソロを取るんですが、「ヘンダーソン」がまた、一音一音切る様に、個性的なフレーズを演るかと思えば、思い切り吹くブロウイングとの組合せも有って、彼の多くの引き出しが表れます。
「ハッチャーソン」、「ウォルトン」と続くセンス抜群のそれぞれのアドリブも聴き所で言う事無しですね。

ラスト「フリー・ホイーリン」…「リー・モーガン」のオリジナル曲らしく、この曲では「モーガン」のソロがピカ1の出来です。
6拍子の変調ブルーズなのですが、流石のアドリブを演ってくれます。
「フラー」も短いですが、燃えたイメージのアドリブで、「ハッチャーソン」も小洒落たソロを演ってくれて…〆の全員でのユニゾンもピタッと決まります。

決してA級の名盤ではないかもしれないですが、ひっそりと聴きたい愛すべきB(C)級名盤に1枚ですね!!

ロリンズ名義だけれども、実はサプライズが…?ソニー・ロリンズ~ソニー・ロリンズ・プレイズ

2008-02-23 11:30:38 | ジャズ・テナー・サックス
皆様、お久しぶりです。
私事で恐縮ですが、仕事と家庭と適当に忙しくて、ブログ更新し難い状況です。

さて、今日は(も)、かつては幻の名盤として君臨していた一枚のアルバムを紹介します。

リーダー名義はタイトルの通り「ソニー・ロリンズ」なんですが、収録曲、全6曲の演奏の内、「ロリンズ」がリーダー・セッションとしてテナー・サックスを吹いている演奏曲は、半分の3曲だけで、残りの半分(3曲)は、リーダーが「サド・ジョーンズ」のコンボ演奏なんですよ~!

まぁ、下衆の勘繰りですが、シンプルに考えるならば、「サド・ジョーンズ」名義よりは、「ロリンズ」名義の方が明らかに《売れる》と制作側(レコード会社)が判断して、そうしたと言うのが本音ではないでしょうか?

いずれにせよ、「ロリンズ」、「サド・ジョーンズ」とも名演奏ですし、細かい揚げ足などに捉われず、普通に聴けば良いと思います。

アルバムタイトル…ソニー・ロリンズ・プレイズ

パーソネル…1~3曲目
      リーダー;ソニー・ロリンズ(ts)
      ジミー・クリーブランド(trb)
      ギル・コギンズ(p)
      ウェンデル・マーシャル(b)
      ケニー・デニス(ds)

      4&5曲目
      リーダー;サド・ジョーンズ(tp)
      フランク・フォスター(ts)
      ジミー・ジョーンズ(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      ジョー・ジョーンズ(ds)

      6曲目
      リーダー;サド・ジョーンズ(tp)
      ヘンリー・コッカー(trb)
      フランク・ウエス(ts)
      トミー・フラナガン(p)
      エディ・ジョーンズ(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ソニームーン・フォー・トゥ、2.ライク・サムワン・イン・ラヴ、3.悲愴のテーマ(チャイコフスキー)、4.ラスト・フォー・ライフ、5.アイ・ガット・イット・ザット・エイント・バッド、6.バラード・メドレー

録音…1957年11月4日①~③、1956年12月24日④&⑤
   1957年1月6日⑥

原盤…ピリオド  発売…ヴィーナスレコード㈱
CD番号…TKCZ-79506

演奏について…巷で名演の誉れ高い1曲目「ソニームーン・フォー・トゥ」…テーマの序奏を「ロリンズ」、「クリーブランド」のユニゾンで宣誓し、その後、野太いテナー・サウンドで「ロリンズ」がアドリブを朗々と歌わせて決めます。
受けて「クリーブランド」が、情緒的且つ鋭さも兼ね備えた、素晴らしいアドリブで「ロリンズ」に対抗します。
その後、「ギル・コギンズ」のシングル・トーンを活かしたピアノ・アドリブも魅力抜群で…曲に彩を添えます。
ベースの「マーシャル」のソロ・パートも有って、全体的に非常にオーソドックスで、実直なハード・バピッシュなセッションに仕上がりました。
曲後半の「ロリンズ」がぶいぶい言わすアドリブ演奏は、「サキソフォン・コロッサス」の流れを汲む、まじで気持ちの良い吹きっぷりです。
1曲目から、名演バシバシです。

2曲目「ライク・サムワン・イン・ラヴ」…言わずと知れたスタンダード・ナンバーですが、ここでの「ロリンズ」は原曲をあまり崩さないんですけど、アドリブ・パートに移行してからのフレーズがとても魅惑的です。
いつも通りのゆったりとした雄大なテナー・サウンドを吹いてくれます。
それから「コギンズ」のピアノ演奏…この人は相当の実力者ですね!
素晴らしいソロも勿論ですが、その演奏の端々にハズシや遊びも垣間見せて、「ロリンズ」へのサポート演奏が冴えています。

3曲目「悲愴のテーマ」…クラシックの超巨匠「チャイコフスキー」の最高傑作、交響曲第6番のメインとなる主題を題材にして、「ロリンズ」がバラード曲として仕上げている。
非常に高尚な演奏で、決してクラシカル・ジャズの俗っぽい雰囲気は皆無です。
演奏自身は、原曲をリスペクトして、崩しは少ないのですが、「ロリンズ」の熱い(厚い)テナーが、ものすごく朗々と歌ってくれて…甘くない大人のバラッド演奏を構築しているんです。
素材はクラシックだが、完全に1ジャズ・バラード曲として存在していて、「コギンズ」の可憐なソロも素敵だし、サポート演奏に徹する「クリーブランド」、「マーシャル」、そしてブラシ・メインの「デニス」のドラム演奏も「ロリンズ」をバッチリ、後押ししてくれてます。 

4曲目「ラスト・フォー・ライフ」…打って変って、「サド・ジョーンズ」カルテットのお出ましです。
ちょっぴり不可思議なテーマで奏でられる「サド・ジョーンズ」のオリジナル曲。
序盤を引っ張るのが「フランク・フォスター」のテナーで、渋みを効かせた大人のテナーで吹きます。
それから「ジミー・ジョーンズ」、「サド・ジョーンズ」が、煌びやかなアドリブを演って、曲を盛り上げてくれます。
皆を煽る「ジョー・ジョーンズ」の演奏も、勿論良い仕事をしてますよ。
ビ・バップの香りが漂う懐かしい演奏です。

5曲目「アイ・ガット・イット~」…いかにもブルースを得意とする「サド・ジョーンズ」らしく、彼のソロ演奏が一際輝きを増しています。
「サド」以外では、この演奏でも、パパ「ジョー・ジョーンズ」のドラムが良いですねぇ。
そして、終盤「ワトキンス」の分厚いベースとデュオ的に奏でる、とても華麗な「ジミー・ジョーンズ」のピアノ・アドリブが抜群に行けてます。

ラストの「バラード・メドレー」…「フラミンゴ」を奏でるピアノの「トミー・フラナガン」…普通にテーマを弾いているだけなのに、何て素敵なんだぁ!
「イフ・ユー・ワー・マイン」を渋く、カッコよく決める「フランク・ウエス」、「アイム・スルー・ウィズ・ラヴ」を、やや悲しげに、情緒たっぷりに歌わす「ヘンリー・コッカー」のトロンボーンもお気に入りです。
最後のバラード曲「ラヴ・ウォークト・イン」を朴訥と…シンプルに感情を込めて吹く「サド・ジョーンズ」…いずれの曲、演奏とも奇を衒わず、しかし歌心充分で、感情移入も素晴らしい、「サド・ジョーンズ」の演奏曲3曲の中では、ナンバー1の評価です。

2つのコンボのそれぞれの名演を是非聴き比べて下さい。    

ドーハム、アンドリュー・ヒルも参加…ジョー・ヘンダーソン~アワ・シング

2008-01-18 23:14:19 | ジャズ・テナー・サックス
こんばんわ。
つい最近ですが、近所の大型レコード店が、突然閉店になるとの事で、今月末までに、店頭にある在庫品の殆どを20%引きして販売する事になって、射幸心を煽り捲られて、ブルー・ノートの諸作品をまとめ買い(大人買い)してしまいました。
その中の一枚が、今日紹介するアルバムです。

アルバムタイトル…アワ・シング

パーソネル…リーダー;ジョン・ヘンダーソン(ts)
      ケニー・ドーハム(tp)
      アンドリュー・ヒル(p)
      エディ・カーン(b)
      ピート・ラロカ(ds)

曲目…1.ティーター・トッター、2.ペドロズ・タイム、3.アワ・シング、4.バック・ロード、5.エスカペード

1963年9月9日録音

原盤…BLUE NOTE 84152  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6646

演奏について…とてもお気に入りの一曲は…2曲目の「ケニー・ドーハム」作曲の「ペドロズ・タイム」
いかにも「ドーハム」作品らしく、哀愁タップリのハード・バップ佳曲で、聴いていると、心にじんわりと染み入ってくる。
序奏の「ドーハム」のトランペット…朴訥で有りながらも、好フレーズを入れてくれるので、曲の良さにとても合っています。
「ヘンダーソン」のソロは、もう「ヘンダーソン」節が全面に出されていて、まだデビュー初期の頃とは思わせない程、貫禄充分です。
それから、ピアニスト「アンドリュー・ヒル」の参加と好演が大役を担っていて、哀愁と危ういさと、新主流派としての新しい感性が、煌くアドリブ・サウンドを演奏してくれて、素晴らしい効果を上げています。
ベースの「カーン」も、ほんのお披露目のソロを見せてくれて…最後はデヴュー作品、「ページ・ワン」の「ブルー・ボッサ」を彷彿させる、メロディで〆て、聴いている私たちの気分は上々です。

3曲目のタイトル曲「アワ・シング」…序奏から「ヘンダーソン」が、彼にしてはかなり過激なトーン&フレーズでブロウします。
変則的で、小洒落たコードで伴奏する「ヒル」と、変幻自在に曲を動かし、リズムにアクセントを付ける「ラロッカ」が、カッコイイサポート演奏をしてくれます。
その後の「ヒル」のアドリブが、また良いんですぅ。
「ラロッカ」のリズムと、あえてずらして、少しタイムラグをさせた弾き方をしたりして、曲にハイセンスの息を吹き込んでくれます。
「ドーハム」のアシストに徹した演奏も○ですね。

5曲目「エスカペード」…この時代特有の、2管ユニゾン演奏から曲が始まる。
ファンキーで、モードで、少しセンチメンタルで…このメロディを聴くだけで、もうぞくぞくきちゃうもんね。
「ヘンダーソン」のアドリブ・ソロ…ラスト・ナンバーらしく、クールでニヒルな彼の個性を活かしつつも、一寸だけ情感が見える所が粋だね。
「ドーハム」は、やっぱり「ドーハム」の世界観が確立されているねぇ。
決して吼えたり、叫んだりはしないけれども、伝えたい情熱はハッキリと伝わる。
野球の例えで悪いが、球速は145kmだが、体感速度が速く、打者を詰らせたり、空振りを奪う、読売ジャイアンツの「上原投手」のピッチングみたいですね。
つまり、見た目は派手じゃないけど、結果はすごい!完璧な仕事を成し遂げるているんですよ。
チームにとっては最も頼りになる男なのです。

オープニング曲「ティーター・トッター」…モード時代らしい、(当時の)時代の先端を行く雰囲気の曲調で、「ヘンダーソン」のセンス抜群のアドリブ・プレイは魅力たっぷり。
それに付随して、「ヒル」、「カーン」、「ラロッカ」のリズム・セクション3人のプレイも相当良いですねぇ。
完璧に乾いていて、そしてクールなリリシズムのオーラを放って、決してセンチメンタリズムには陥らない演奏です。
3人の中でも、その代表格は、やはり「アンドリュー・ヒル」でしょう。
音数は少なめなんですが、鋭い感性のフレーズとブロック・コードを的確に叩き込むんです。
テーマの途中、突然に終わるエンディングも…新主流派らしいです。(大笑)

4曲目「バック・ロード」は、少し古典的なファンキー・バップ・チューンです。
「ヘンダーソン」は、ここでもソー・スマートなブローイングで、カッコをつけます。
「ドーハム」は、ファンキーなんだけど、渋くて渋くて、名脇役、助演男優賞の演奏を見せます。

ズートが贈る、ワンホーン・ライブ・アルバム…ズート・シムズ・イン・パリ

2008-01-15 22:57:01 | ジャズ・テナー・サックス
今日は白人系のワンホーンアルバムで行きましょう。
それも西海岸的なサウンドが聴きたいなぁ~って事で、「ズート・シムズ」のライブ盤で行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ズート・シムズ・イン・パリ

パーソネル…リーダー;ズート・シムズ(ts)
      アンリ・ルノー(p)
      ボブ・ホイットロック(b)
      ジャン・ルイヴィアール(ds)

曲目…1.ズートのブルース、2.スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト、3.ワンス・イン・ア・ホワイル、4.ジーズ・フーリッシュ・シングス、5.オン・ジ・アラモ、6.トゥー・クロース・フォー・コンフォート、7.ア・フラット・ブルース、8.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド、9.サヴォイでストンプ

1961年 ライブ録音

原盤…Liberty 15013  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5408

演奏について…オープニング曲「ズートのブルース」…ブルースだが、いかにも白人が奏でるらしい曲&演奏で、恨み、辛み、悲しみ等とは全く無縁のライトな感覚のブルースで、終始演奏される。
「ズート」はアドリブ・パートにも冴えを見せて、バック3人との絡み合いも好調のgoodなトラックです。

4曲目「ジーズ・フーリッシュ~」…「ズート」演奏の真骨頂、一寸辛口の大人のテナー・サウンドが煌く、ストレートなバラッド演奏です。
「ルノー」のちょっぴりセンチメンタルなピアノ・アドリブも良いし、ブラッシュ・ワークで脇役、アシストに徹する「ルイヴィアール」の演奏もかなり良いんですぅ~。
この中庸の美学…流石「ズート」だ!

2曲目「スプリング・キャン~」…短曲ですが、この演奏も、大人が演るバラード演奏で、非常にストレートな音色と、節回しで「ズート」が吹き切る。
奇を衒わず、シャウトしすぎも無く、だが余裕タップリで演っている訳では無い。
一本ピシッと芯は通っていて、優しき男が背中で語るテナー演奏です。

8曲目「ユー・ゴー・トゥ~」…ライブも終盤になってか?幾分、余裕を持った「ズート」がスロー・バラッドを渾身の演奏で、テナーで吹き通します。
「ズート」にピッタリ伴奏で合わせる「ルノー」とのコンビネーションもバッチリ決まって、取分け中盤で「ルノー」が弾くアドリブの美しさ…とても感傷的で…そしてきれいの一言です。
一寸、乙女チックな感じも否めませんが、アルバム全曲中、一番しおらしくて、可憐で…魅力タップリな1トラックだと思います。
私的には、一番のお気に入り演奏です。

9曲目、名曲「サヴォイでストンプ」…レスター派の「ズート」がお得意なアドリブ重視の展開で、バックの3人もタイトに、集中して「ズート」をアシストする。
何気に目立たないが、実直にぶんぶんベースを生真面目に弾く「ホイットロック」が良い味を出しています。
「ズート」は、まじで好アドリブ・フレーズを次々と繰り出して、ラストナンバーをバッチリ決めて、やってくれますよ。

5曲目「オン・ジ・アラモ」…こう言った、ミドル・アップ・テンポで、寛ぎの演奏を奏でられるのも、バラッド以外の「ズート」のもう一つの魅力部分です。
かと言って演奏自体は、遊び心が満載と言う訳ではないし、逆に生真面目すぎる事も無い。
しかし、その中庸さが、カッコよくて、どことなく味わいが有るんです。
「ズート」は、「コルトレーン」や「ロリンズ」の様な大御所、スーパー・スターでは、決して無いかもしれないが、彼等には無い、普通っぽく、そしてチョビッとニヒルな所が最大のセールス・ポイントなのでしょう。

3曲目「ワンス・イン~」では、「ズート」のブロウに若干余裕が見て取れます。
影の如く、張り付く様に「ズート」に合わせるドラムス、「ルイヴェール」のブラッシュ・ワークが冴え渡ります。
シングル・トーンで軽やかに、そして可憐にアドリブを演る「ルノー」と、ベース職人に従事する「ホイットロック」の真面目な演奏も○ですよ!

6曲目「トゥ・クロース~」も、5曲目同様、早めの4ビートで「ズート」が余裕綽々に決めます。
ペタっと張り付く様にブラシ・ワークに順ずる「ルイヴィアール」と中間で好フレーズのアドリブを演る「ルノー」の仕事も中々良い。

「ズート」が奏でる、ワンホーンのライブでの演奏…渋くてカッコイイです。

フリー・ジャズの本丸的演奏…アーチー・シェップ~ママ・トゥー・タイト

2008-01-04 16:18:00 | ジャズ・テナー・サックス
今日、紹介するアルバムは、先回の「ゴールデン・サークルのO.コールマン」以上に、フリー・ジャズの毛色の濃いアルバム、「アーチー・シェップ」の「ママ・トゥー・タイト」で行きましょう。
正しく、フリー・ジャズの本丸作品の一つです。

年末から、何かフリー系ジャズばっかりでごめんなさい!
一部の閲覧者の方からは、評価して頂いているのは分っていますが、あまり一般的で無いので、フリー系の紹介は、今日で一回止め時ましょう。
別にフリー系ジャズの紹介自体を止める訳では有りませんので、悪しからず。

明日以降は、ラテンや4ビート・ジャズ、クラシックを中心に、聴き易いアルバムを全面に押出した以前のスタイルに戻す予定です。

アルバムタイトル…ママ・トゥー・タイト

パーソネル…リーダー;アーチー・シェップ(ts)
      トミー・タレンタイン(tp)
      ラズウェル・ラッド(tb)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ビーヴァー・ハリス(ds)

曲目…1.ア・ポートレート・オブ・ロバート・トンプソン a)プレリュード・トゥ・ア・キッス、b)ザ・ブレイク・ストレイン、c)デム・ベーシズ、2.ママ・トゥー・タイト、3.アーニーのテーマ、4.バッシャー

1966年8月19日 録音

原盤…impulse A-9134  発売…MCAビクター
CD番号…MVCI-23079

演奏について…まず、オープニングの組曲風、大作「ア・ポートレート~」ですが、aの「プレリュード~」の序奏から、これぞフリー・ジャズだと言わんばかりに、「シェップ」の絶叫テナーに追従して、「タレンタイン」のトランペットと、「ラッド」のトロンボーンが、壊れた?万華鏡の様に、3管が絡む合う、壮絶な演奏から始まる。
取分け、「シェップ」と「ラッド」の二人の出来が良く、高音の「シェップ」、低音の「ラッド」が、フリーキーに吼え捲るんです。
ある種、異種格闘技の殴り合いの画を想像させるほどに、激しいシャウトでバウトしてくれます。
ドラムスの「ハリス」は、陰ながら彼等を渋く煽り、「ヘイデン」は演奏に重厚感を与えるべく、腰を据えた骨太ベースを弾いて、アシストしてくれます。

bの「ザ・ブレイク~」に入ると、曲は一転して、かなり静かな曲調に変わりますが、ホーン群の3人は、それでもパートパートで、シャウトをした演奏で、曲を飾り付けるんですが、この曲で吹いているメロディの所々が、どことなく「ミンガス・グループ」で過去に演奏されているフレーズに似ていて、やはり、3管ぐらいのカルテットやセクステットの編成になると、コンボ演奏の音に重厚さを出すには、「ミンガス」の解釈は必要不可欠な要素なのかなぁと、改めて考えさせられます。

cの「デム・ベーシズ」になると、aと同様、再度「シェップ」を中心とした3管が絶叫とシャウトで、激しい盛り上がりを見せて、「ハリス」もガツン、ドカンとドラムを敲き捲って、廻りを煽り捲ります。
「シェップ」と「ラッド」は、動物的な、ゾウや羊や馬の様に「グヮオーン」とか「ギャーッ~」と言う感じで嘶くのですが、曲の終盤に入ると、非常にクラシカルでメロディアスなマーチ曲になって、この起承転結?な感覚が、シュールさと面白さが同居していて、…正しくこの感じが「フリー・ジャズ」なんでしょう。

2曲目、表題曲「ママ・トゥー・タイト」…とても親しみ易いメロディから始まり、(「ハンコック」の「ウォーター・メロン・マン」のメイン・メロディに酷似した雰囲気なんですよ)これを聴く限り、フリー・ジャズと言うより、バピッシュなファンキー・チューンなんだけど、私は嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きですねぇ。
「タレンタイン」が、てとも開放的で、楽しげなオープン・トランペットを吹いて、「ラッド」もベース的な役割で、トローンボーンの音を重ねてくれるんですが、大将「シェップ」だけは、自由奔放にテナーをぶいぶい言わします。
フリー嫌いな人は、このトラック(表題曲)だけでも、聴いてみて頂戴!!

3曲目「アーニーのテーマ」…とてもアンニュイな雰囲気の妖しいメロディに、2管(ペットとトロンボーン)のユニゾンに対して、「シェップ」も攻撃的だが、知己に富んだアドリブで、テナーで絡んで行く。
リズム二人は、とてもアーバナイズされた、乾いた曲調で、何かとても不思議な雰囲気の曲ですね。

ラストの「バッシャー」…ビッグ・バンドのテーマ風に、3管でテーマを吹いた後、ユニゾン演奏を軸にしながら徐々にホーン・セクションが疾走を始める。
やはり、曲を推進する旗手は、「シェップ」であり、それを受けて「タレンタイン」と「ラッド」もブロウをするのだが、後輩?がシャウトをすると、それを倍返しするのが「シェップ」なんだ。
しかし、4分すぎに突然曲調が静かになって、「タレンタイン」の独演的なソロ演奏になる。
とてもメロディアスで、魅惑的なアドリブ・フレーズで、聴いていてとても気持ち良い~。
だが、この静かなバラード的な演奏は、あくまでも一時的な物で、また「シェップ」と「ラッド」が、ジャングルの鳥類の様に騒ぎ出すと、演奏が激しくなってくる。
ホーンは戦慄いているが、この曲をカッツリと〆ているのは、微動だにしない「ヘイデン」のヘヴィーなベースである。
ホーン3人プラス「ハリス」のドラムは、煽りに煽って、どこまでも飛翔するとするのだが、「ヘイデン」は勝手にはさせず、例えが悪いかもしれないが、鵜飼の鵜匠の様に、天空に行きそうな4人を、最終的には上手く掌中に戻る様に、抜群の裁量でコントロールしているんです。
流石、「ヘイデン」ですね。

優しきツイン・テナーが炸裂する…ブック・クックス~ブッカー・アーヴィン

2007-12-15 17:00:20 | ジャズ・テナー・サックス
今日紹介の2枚目は、テキサス・テナーのタフなヤツ「ブッカー・アーヴィン」がリーダーで、サプライズ・ゲストとして「ズート・シムズ」を向い入れた、贅沢なツイン・テナー・アルバムです。
この二人をサポートする、バックのメンツも良いジャズ・メンが揃っていて、聴き応え充分な出来栄えです。

アルバムタイトル…ブック・クックス

パーソネル…リーダー;ブッカー・アーヴィン(ts)
      ズート・シムズ(ts)
      トミー・タレンタイン(tp)
      トミー・フラナガン(p)
      ジョージ・タッカー(b)
      ダニー・リッチモンド(ds)

曲目…1.ザ・ブルー・ブック、2.ギット・イット、3.リトル・ジェーン、4.ブック・クックス、5.ラルゴ、6.プア・バタフライ

1960年6月 NYにて録音

原盤…BETHLEHEM  発売…日本コロムビア
CD番号…COCY-75726

演奏について…まずタイトル曲「ブック・クックス」ですが、私の表題通り、「アーヴィン」と「シムズ」のツイン・テナーが、心地良く炸裂する好トラックです。
炸裂と言っても「アーヴィン」は同時代のカリスマ・テナー「コルトレーン」の呪縛?から唯一逃れた?独自のスタイルを築いたミュージシャンなだけに、純粋に音楽を楽しんで吹く事に専念した、二人のテナー・チェイシング・トラックとなっています。
とにかく、中盤から終盤にかけての、絡み合いと好フレーズの吹き合いは、最高レベルのバトルで、この演奏に惹き込まれる事は間違い有りません。
ベーシスト「タッカー」とドラムス「リッチモンド」のドライヴィング力も万全ですし、特に「タッカー」の力感抜群のガッツリ・ベースが最高潮です。
逆に「トミ・フラ」は、伴奏に専念して、ホーン3人のアタックを優しく見守っている感じです。
前半部の「タレンタイン」のスイング感有るトランペットも良い味を出してます。
バトル系ジャズを堪能したい方には、まじにお薦めの一曲です。
このバトルで面白いのが、「テキサス・テナー」と白人の「ウェスト・コースト・テナー」なのに、音色、フレーズとも別物では無く、どことなく統制がとれていて、決して水と油の演奏では無い事です。
裏を返せば、非常にマッチングしていると言えます。

後に「アーヴィン」が、又、再演奏する機会が増える、自作オープニング曲の「ザ・ブルー・ブック」…正統的な4ビートのチョイ・ファンキー節のテイストが入った、ブルース・チューンです。
序奏からベーシスト「タッカー」の野太い重低音のベース・ラインが、この曲の礎を作り、そこに「フラナガン」のピアノが枝葉と彩を添えていく。
更にその上から真打のツイン・テナーがメインの紅葉?を着けていく。
すごくシンプルな演り方だけど…これがジャズの王道なんですよ。
余計な事は要らないんだよ。
太く重いベースとドラムスの音域に、ピアノのダイナミズムが加わり、その上にハイトーンの管楽器が乗っかる。
所謂、ピラミッド・バランスの聴き易い音で、オーディエンスは極上の一時を満喫出来るんです。
「タッカー」…変人らしいが、ベース職人としては、一流だぜ!!

5曲目「ラルゴ」…このバラッドもすごーく行けてます~っ!
とても抑制された、バラッド演奏なのだが…しっかりと一本太い芯は通っている。
ロマンティックな「フラナガン」のピアノ伴奏が、またまたこの曲に、スーパー・アシスト…サッカーで言うなら、キラー・パスをピンポイントで通しやがるんです。
相変わらず「タッカー」の重厚感抜群のベースにも興味が湧くし、あまり目立たないけど、「リッチモンド」のブラッシュ・ワークもとても渋くて、ス・テ・キ…。
甘くなり過ぎないけど、とても美しいバラード・チューンです。

唯一のスタンダード曲が6曲目の〆を飾る「プア・バタフライ」なんだけど、この「アーヴィン」の演奏も、寛ぎと余裕が有って、良いねぇ。
「ぶいぶいハードに吹く事だけが、ジャズじゃないよ。」と暗に示しているみたいです。
しかし、私は一体性が無い人間ですね。(大笑)
「コルトレーン」が死ぬほど?好きなのに、それを否定?している「アーヴィン」の演奏も推薦して…。
でも良い物は、やっぱり良いんですよ。

2曲目「ギット・イット」…「アーヴィン」が比較的ハードに吹く、楽しいナンバー。
皆が遊び心を持って、ソロを執って、各々のアドリブ・センスを競い合います。
ここでは、渋く決めていた「リッチモンド」が、ようやく限定解除?と相成って、華麗なソロを演ってくれます。

3曲目「リトル・ジェーン」…どちらかと言うと、ブルー・ノート・レーベルではなかろうか?と思う様な、3管のユニゾンからテーマを吹いて、展開して行くトラックで、「アーヴィン」「タレンタイン」と続いて、それぞれ素晴らしいアドリブを奏でてくれて、その後の「シムズ」が、それ以上の貫禄のソロを決めてくれます。
とにかく、ここでの「シムズ」の演奏…カッコイイ!!
更に続く「フラナガン」のソロも、とても魅惑的で、惹かれます。

全曲楽しめる、好アルバムですよ。

オルガン・トリオとのワンホーンです…ジョーズ~エディ・ロック・ジョウ・デイビス&シャーリー・スコット

2007-12-11 22:17:21 | ジャズ・テナー・サックス
とてもライトなブルース・フィーリングに満ち溢れた、「エディ・ロックジョウ・デイビス」のオルガン・トリオをバックに従えた、ワンホーン・アルバムを紹介しましょう。
曲目もスタンダードばかりで、聴き易い事受けあいです。

アルバムタイトル…ジョーズ

パーソネル…リーダー;エディ・ロックジョウ・デイビス(ts)
      リーダー;シャーリー・スコット(org)
      ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
      アーサー・エッジヒル(ds)

曲目…1.アイ・レット・ア・ソング・ゴー・アウト・オブ・マイ・ハート、2.
アイル・ネヴァー・ビー・ザ・セイム、3.夢から醒めて、4.オールド・デヴィル・ムーン、5.トゥー・クロース・フォー・コンフォート、6.ボディ・アンド・ソウル、7.バット・ノット・フォー・ミー、8.タンジェリン

1958年9月12日録音

原盤…prestige 7154  発売…ビクターエンタテインメント
CD番号…VICJ-2180

演奏について…オープニング「アイ・レット~」…非常に馴染み易い、4ビートのリズムで、「ロックジョウ」が割と抑え目ながら、良いフレーズのアドリブを演ってくれて、「スコット」他、サイドのメンバーも手堅くまとめて、ブルース・ジャズの真髄(ちょっと大袈裟?)が見れますよ。
「スコット」は、とても軽やかで、ブルース臭さをあまり感じさせませんが、それが持ち味の一つでしょう。

2曲目「アイル・ネヴァー~」…この演奏は良いね!
「ロックジョウ」…ブルース・バラッド行けるねぇ。
男臭いが、ハード過ぎはしないで、女性が安心出来る「男臭さ」…つまり危険な香りでは無く、「釣り馬鹿」の「浜ちゃん」的なお人好しさが有るんです。
「スコット」がこの曲では、少し音質を、にごり系にして、ブルース・バラッドの重さを表現してくれます。
私的に、この演奏がこのアルバムでのベスト・トラックでは無いかと思います。

3曲目「夢から醒めて」…この曲では何と言っても中盤以降の「スコット」のごきげんなノリでのアドリブ演奏がぴか一で聴き物ですね。
しかし、それ以上に光るのが、実は「エッジヒル」のプレイでしょうか?
ブラッシュ・ワークとシンバルを活かしたドラミングなんですが、軽く敲いているにも拘らず、とてもドライヴィング力が有って、皆を引っ張ってくれます。
序盤の「ロックジョウ」のアドリブも好演です。

4曲目「オールド・デヴィル・ムーン」…非常に変則的な入りで、ラテン・リズムに乗せて、皆が演ってくれるのだが、とにかくとても面白い。
この曲にオルガンって楽器が正直合うのかなぁって思いますが、何か不思議系のサウンドで、合っているんだが、無いんだか?良く分からんけど、何でも有りならOKですよ。
個人的には「エッジヒル」の出来が素晴らしいと思うが、「スコット」の馬鹿ノリと、ガッツリ真面目に弾き続けるベースの「デュヴィヴィエ」も良い味を出しているね。

5曲目「トゥー・クロース~」安心して聴いていられる、ノリ良い4ビート・リズムに乗って「ロックジョウ」が、ぶいぶい言わせてくれますよ。
「スコット」も相変わらず、絶好調!
この人のオルガンって良く言えば、跳ねて踊る感じ…悪く言えばとてもライトで、軽いサウンドなんだよね。
特に「ジミー・スミス」なんかに比べると、音(音量・音質)が半分以下じゃないかと思うくらいです。
ライトに気兼ねなく聴きたい人には、goodなサウンドでしょう。

6曲目「ボディ・アンド・ソウル」…こいつはヘヴィな演奏に限る…って思っていたら、この重くない演奏も有りなんだよね。
かと言って「ロックジョウ」は、充分に重厚さも加味された、音質と音量で吹いてくれるんですけど。
但し、先ほど同様「スコット」の演奏が、かなりライトなんで、少し物足りないかも知れないなぁ。
でも「ロックジョウ」は全曲中、一番汗を額からたらしながら、熱演しているのは、間違い無いです。
ここでの「ロックジョウ」の演奏には痺れます。

7曲目「バット・ノット~」…この曲も有名曲なので、皆様が普通に?想像した演奏からすると、ちと違う感じがするかも…。。。
でも「ロックジョウ」は、この曲ぐらいまで来ると、テナー・マンとしての本性が全面的に出て来て、かなりシャウトをしてくれて…良い感じですよ。
「スコット」は、軽やかながら、アドリブ・メロディとイマジネーションの出来は、相当行けてます。
「デュヴィヴィエ」のバツーンと重々しいベースが、「スコット」の軽さを良くフォローした感じがします。

ラスト「タンジェリン」…こう言う、ライトな感じの曲は、このコンボにガッツリはまる気がします。
「ロックジョウ」と「スコット」の掛け合い、丁々発止が一番の聴き所でしょう。
やっぱり、この二人はお互いに触発されて、溌剌とした演奏をしてくれる仲間なんでしょうね。

全体的に少しライトな感じは否めませんが、ブルージー過ぎない、オルガン入りジャズ、(コンボ)を楽しむのには、お薦めの一枚です。

リトル・ジャイアントのデビュー盤…ジョニー・グリフィン~JG

2007-12-08 12:34:45 | ジャズ・テナー・サックス
小柄な体格ながら、豪快にぶいぶい言わすテナー演奏で人気を博し、「リトル・ジャイアント」と親しまれた「ジョニー・グリフィン」のデビュー・アルバムが、この「JG」です。

デビュー作品とは思えない程、「リトル・ジャイアント」の名に恥じぬ豪快なブロウを決めてくれる好作品です。

バックを担う「ジュニア・マンス」トリオのサポート演奏も、聴き応えが有って、魅力を増加させてくれます。

アルバムタイトル…JG

パーソネル…リーダー;ジョニー・グリフィン(ts)
      ジュニア・マンス(p)
      ウィルバー・ウェア(b)
      バディ・スミス(ds)

曲目…1.アイ・クライド・フォー・ユー、2.サテン・ラップ、3.イエスタデイズ、4.リフ・ラフ、5.ビー・イーズ、6.ザ・ボーイ・ネクスト・ドア、7.ジーズ・フーリッシュ・シングス、8.ロリーポップ

1956年 シカゴにて録音

原盤…ARGO-624  発売…MCAビクター
CD番号…MVCR-20058

演奏について…まずオープニング曲「アイ・クライド~」では、「グリフィン」がとても丁寧に吹いて淡々と序奏が始まるが、少し慣れて来てからは「グリフィン節」も時々出し始めます。
「マンス」…転がす様なとてもお洒落系のシングル・トーンでアドリブを弾いて、「グリフィン」を、強力に後押ししてくれます。
スタート・ダッシュはまずまず成功でしょう。

2曲目「サテン・ラップ」…「グリフィン」がブルージーなテーマを吹いた後、「ウェア」と「マンス」のデュオ的でバトルっぽいアドリブを経てから、もう一度「マンス」が豪快に再アドリブで参入してくれる、劇的な感じの1曲。

3曲目「イエスタデイズ」…こう言うスタンダード曲が大好きな私には、堪えられないトラックです。
「グリフィン」のアドリブは、音色が魅力的なだけでなく、ここでは男の色香をぷんぷん放って…こりゃ雌には堪らん演奏ですね。
色気と言っても男芸者ではなく、まじにハードボイルドで、「ゴルゴ13」の様な漢っぽさなんですよ。
「グリフィン」最高!!!

4曲目「リフ・ラフ」でも、当然の事ながら「グリフィン」が豪快に吹き切るんですが、中間での「マンス」のアドリブ・ソロがそれ以上に、乗っていて素晴らしいですし、「ウェア」の渋~いベース・ソロ…カッコイイ!!
「スミス」は、地味派手にバックに徹しています。

5曲目「ビー・イーズ」はミドルテンポの4ビートで、あまり肩肘張らずに「グリフィン」がさりげなく流す様に吹きます。
と言っても、強く吹くトーンでは、ガツーンと来てくれますし、「マンス」の冴えも相変わらずに抜群です。
「グリフィン」の演奏は全面に渡って良い出来だけれども、「マンス」トリオでも行ける程、このバックのピアノ・トリオ演奏は秀逸ですね。
最後の方で「スミス」がおかず付きのソロ演奏もチョコッと見せてくれます。

6曲目「ザ・ボーイズ~」…とてもリラックスした雰囲気の4ビート・チューンですが、所々で「グリフィン」がぶいぶいと吹いてくれて…気分が良いですね。
「スミス」のブラッシュ・ワーク、「ウェア」の厚い音量のベースが好サポートしてくれて…「マンス」のブロック・コードでの伴奏と、終盤での魅惑的なシングル・トーンを駆使してのアドリブが、えも言えぬ幸せを感じさせます。

7曲目「ジーズ・フーリッシュ~」…このバラード曲の出来もすこぶる良いですね。
「グリフィン」…デビュー時から、こんなに大人びた演奏を出来るアーティストだったんだなぁ。
一音一音が、ハッキリ・クッキリと冴えを見せて、低音域からグワォーンと持ってくる独特の「グリフィン節」もやってくれるし、「グリフィン」がバラードを吹いても一流のテナー・マンだと言うことを認識させてくれるトラックです。

ラスト曲「ロリーポップ」…ポップス曲「ロリポップ」とは同名異曲ですが、かなりスウィング力が有る、グルーヴィなナンバーです。
「マンス」が一寸「モンク」的なフレーズをかましてくれて、アクセントをつけますし、「スミス」が1小節だけ、豪快にドラムスをぶっ敲くところもgoodです。

全8曲…「グリフィン」の豪快なテナー演奏と、「マンス」トリオの絶妙なサポート演奏で作られた好アルバムですよ。
 

面白可笑しくて…こう言うジャズも有って良い。サム・ブテラ~ザ・ビッグ・ホーン

2007-11-27 15:33:03 | ジャズ・テナー・サックス
今日3枚目のアルバム紹介と行きましょう。

さて、前作は相当ヘヴィーな内容で、歴史的な意義の有るアルバムでしたので、今回のは、飛切りハッピーで脳天気なのを行っちゃいましょう。

テナー・サックス奏者「サム・ブテラ」が、ホーンセクションをバックに、ロックンロール(古い8ビート)リズムに乗って、スタンダード曲、ポップスを楽しく吹き捲るアルバムがこれなんです。

アルバムタイトル…ザ・ビッグ・ホーン

パーソネル…サム・ブテラ(ts) 他

曲目…1.ラ・ヴィアン・ローズ、2.オール・ザ・ウェイ、3.テネシー・ワルツ、4.ラヴ・イズ・ア・メニー・スプレンダード・シング、5.トゥー・ヤング、6.アラウンド・ザ・ワールド、7.スリー・コインズ・イン・ザ・ファウンテン、8.アイ・ラヴ・パリス、9.オン・ザ・ストリート・ホエア・ユー・リヴ、10.ヘイ・ゼア、11.ザ・ソング・フロム・ムーラン・ルージュ、12.ロッカ・バイ・ユア・ベイビー・ウィズ・ア・デキシー・メロディ

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6303

演奏について…正直に言って、この曲がベスト演奏…等と解説を入れる様な類の演奏では無いんです。
「ブテラ」が楽しくサックスを吹く事に意義が有ると言っても良いんです。
全曲ほぼ良く知られた、スタンダードやポップス曲なので、「ブテラ」の演奏に追いて行って、鼻歌でもハミングでも歌ったらOKでしょう。

でもその中で、解説して見たいと思います。

オープニングの「ラ・ヴィ・アン~」…低音をアクセントに、陽気にぶいぶいと「ブテラ」が吹いてくれます。
名前が分かりませんが、ドラムスが「ブテラ」の次に乗っていて、演奏を盛り上げます。
最後の「ブテラ」の一啼きも絶妙です。

2曲目「オール・ザ・ウェイ」では、エレキ・ギターと「ブテラ」の掛け合いが寛ぎ系で好感が持てます。
中間からアクセントをもたらす為に、「ブテラ」が急速調に吹く所がお洒落です。

3曲目「テネシー・ワルツ」…普通のワルツではなく、何と言うかブグウギ調で、派手で、陽気で、まじに楽しい。
アホかと言いたいくらいに楽しんで、アドリブを演ってくれる「ブテラ」に感謝!
メロディをあまり変えずに、極限まで楽しくいじった名演?です。

4曲目「ラヴ・イズ~」…日本での50年代に流行った演歌ポップス調のリズムが面白い。
中間から、ドラムスとデュオで煽る様に高速で吹いて…うぅーん楽しいねぇ。

5曲目「トゥー・ヤング」…ピアノ・トリオをメイン・バックにして「ブテラ」が吹きます。
所々でホーン・セクションがワンポイントで、合いの手を入れてくれます。

6曲目「アラウンド・ザ・ワールド」…ラテン・リズムかな?
いや、途中で中国の曲に変わった。
と思ったら、今度はマーチング・バンド調に………。
そうか、これで「ワールド」を意識付けている訳なのか?

8曲目「アイ・ラヴ・パリス」…こう言う下品な演奏…嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きだ!
バックのホーンは、「ウェスト・サイド・ストーリー」を彷彿させる、都会的なリズムに乗って、「ブテラ」がとにかくお下品に悪乗りで吹くんです。
正にぶいぶい言わしているんです。

9曲目「オン・ザ・ストリート~」…「ブテラ」…未だ絶好調てな感じで、ワンパターンは変えずに、とにかく楽しくシャウトしてくれて、期待を裏切らないです。

11曲目「ザ・ソング~」…このアルバムらしくラテン調のリズムに乗って、「ブテラ」が気持ち良く吹き切るんです。
ホーン群が下流のゴージャスさを見せ付け?3流のジャズ演奏って言うのを、あえて見せびらかして…ここまで来ると決して下品じゃないねぇ。
だって、「ブテラ」は分かっていて(計算していて)演ってるんだから…。

全曲に渡って、そうポップ調の50年代の女性ジャズ・ボーカルにホーン版と言ったら分かり易いかな?
つまり、コマーシャリズムに染まっているけど、聴いたら間違いなく楽しくて、はまっちゃうイメージなのかな?

ソウル・ジャズなんだけど都会的でカッコ良い~フレッド・ジャクソン~フーティン・ン・トゥーティン

2007-11-12 00:08:22 | ジャズ・テナー・サックス
ブルーノートの定番の一種…ソウル・ジャズ…かなり泥臭い、まんまブルース・フィーリング満載のアルバムも多いのだが、このアルバムはかなり都会的な雰囲気を持っているね。

ニューヨーカーの昼の顔と夜の顔?が交錯している様な印象を持ちますよ。
昼は有能なビジネス・マンだが、夜は黒服に身を包んだ…???

まぁ、センス有るアルバムには違い無いので、一聴をお薦めします。

アルバムタイトル…フーティン・ン・トゥーティン

パーソネル…リーダー;フレッド・ジャクソン(ts)
      ウィリー・ジョーンズ(g)
      アール・ヴァン・ダイク(p、org)
      ウィルバート・ホーガン(ds)

曲目…1.ディッピン・イン・ザ・バッグ、2.サザン・エクスポジャー、3.プリーチ・ブラザー、4.フーティン・ン・トゥーティン、5.イージン・オン・ダウン、6.ザッツ・ホエア・イッツ・アット、7.ウェイ・ダウン・ホーム

演奏について…オープニング曲「ディッピン~」…ユニゾンのテーマからして、都会的なブルーズで、聴く物を惹き付ける。
「ジャクソン」もあまりこねくり廻さずに、割とストレートにテーマ&アドリブを吹く。
続くギター「ジョーンズ」が、かなり良いアドリブ・ソロを奏でる。
ブルージーでいながら、泣きのエッセンスも入れていて、センス抜群なんです。
しかし、この二人以上に良い出来は、オルガンの「ヴァン・ダイク」なんですよ。
伴奏に終始しているんだけど、合間に合間に奏でる、ブロック・コードが一寸過激で、自己主張しているんです。

2曲目「サザン・エクスポジャー」…これはかなり黒いイメージのブルースだな。
「ジャクソン」は飾り気無しで、ストレートに真っ向から、テーマを吹いて、「ホーガン」は所々で、おかずを入れてアクセントを付ける。
ここでも「ヴァン・ダイク」のオルガンが冴えを魅せて、「ジャクソン」以上に燃えて、魂を込めたアドリブが胸を討つんです。
漢達が、戦争(出陣)前の、最後の一夜を祝う?様な、心の奥底で泣いている様に思わせる、奥深いブルース演奏です。

3曲目「プリーチ・ブラザー」…一聴して「ナット・アダレイ」作曲の名曲「ワーク・ソング」を彷彿させるテーマが印象に残る。
「ジャクソン」は、余り重くならない様に、サラリとさりげなくテーマを吹いて、続いての「ジョーンズ」も、かなりシンプルなアドリブなんですが、ここでもオルガン「ヴァン・ダイク」が、バリバリにやってくれますよ。
何かこのコンボ…実はリーダーが「ヴァン・ダイク」なんじゃないか?と思うぐらいにどの曲でも力の入った良い演奏を弾いてくれて、まじめに気持ちが良いです。

タイトル曲「フーティン~」は、「ジャクソン」が割とアーシーに、そして丁寧に吹き始める。
ギター「ジョーンズ」のアドリブ・ソロは、大人しいんだけど、センスが有って宜しいんではないでしょうか?
更にドラム「ホーガン」と、「ジャクソン」のデュオ的なバトルはこの曲中、随一の聞き所で…「ホーガン」が燃えてますよ。。。
オルガンの「ヴァン・ダイク」は、いつも通り、ノッケからソウルフルに、そしてアヴァンギャルドに弾き捲ります。
この曲の終盤は、全員がストレイト・アヘッドなジャズで吹き通します。

5曲目「イージン・オン~」は、「ジャクソン」が男の色気を出しつつも、渋めに決めて、吹いてくれるのが堪らないですね。
バックのメンバーは、「ジャクソン」を全面的に出した、一聴すると控えめの演奏をしている様なのですが…実は違う。
ドラムスの「ホーガン」はタイム・キーピングしながらも静かに燃えているのが分かるし、「ヴァン・ダイク」は相変わらず、アドリブ・ソロに入ると、限定解除して、ビンビンにオルガンを弾き捲ります。
「ヴァン・ダイク」の演奏…カッコ良いですよ。
彼に煽られて、「ジャクソン」も終盤には、パワフルに変身して来ます。
都会的なセンス溢れる名演です。

6曲目「ザッツ・ホエア~」…シンプリで分かり易いテーマのリフレイン演奏から曲が始まり、特に「ジャクソン」はこのアルバム全編に渡って、とにかくテーマをこねくり廻さずに、ストレートに吹く所が、好感が持てますね。
何か、こう言うコンセプトも有りだよね。
常に、アグレッシブにアドリブをぶいぶい言わすだけがジャズじゃないって強烈にアンチ・テーゼを放っている様に思えて来た。
このアルバム全体がソウル・ジャズにも拘らず、アーバナイズされている様に思うのは、このシンプルさが、多分起因しているんだろうな。

ラストの「ウェイ・ダウン~」は、4ビートの正統的なブルーズ・ジャズで進行する。
「ジャクソン」…最後の最後まで「シンプル・イズ・ベスト」を貫き通す吹き方で、これぞ一本気の男の代表ってな感じだよ。
ドラムの「ホーガン」は、かなり派手にやってくれていて、これはこれで良いんだよ。
ギター「ジョーンズ」も、「ジャクソン」同様に、自己のスタイルは変えないで、ごてごてには、アドリブをやらない。
しかし、ここでも「ヴァン・ダイク」は過激に、そして思い切り良くアドリブ・弾き捲り。
中途で他の曲「インター・プレイ」のテーマをチョイと弾いたりして、ほくそえむんですよ。
最終的な結論なんだけど、ストレートにテーマを演じる「ジャクソン」&「ジョーンズ」組VSアドリブ・おかず満載の「ヴァン・ダイク」「ホーガン」組の対決アルバムなんだな。

結果は、判定で「ヴァン・ダイク」組の勝ちと思うけど、あえてシンプルに終始吹き切る「ジャクソン」も真面目に捨て難いぜ!!!