紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

久しぶりにオケをバックにしたアルバムです…マイルス・デイヴィス~ポーギー&ベス

2008-01-09 23:04:02 | マイルス・デイヴィス
ガーシュインの名作オペラ「ポーギー&ベス」に、帝王「マイルス・デイヴィス」と名アレンジャー「ギル・エヴァンス」&「ヒズ・オーケストラ」がバックとして挑んだ意欲的な名演・名盤がこいつです。

アルバムタイトル…ポーギー&ベス

パーソネル…マイルス・デイヴィス(tp)
      ギル・エヴァンス(arr、cond)
    他 キャノンボール・アダレイ(as)
      ジミー・コブ(ds)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ポール・チェンバース(b)              等

曲目…1.禿鷹の歌、2.ベスよお前は俺のもの、3.ゴーン、4.ゴーン・ゴーン・ゴーン、5.サマー・タイム、6.ベスよ、何処に、7.祈り、8.漁夫と苺と悪魔蟹、9.マイ・マンズ・ゴーン・ナウ、10.ご自由に、11.ほら、蜂蜜売りだよ、12.愛するポーギー、13.ニューヨークへボートが

1958年7月22日、29日、8月4日、18日 NYにて録音

原盤…米コロムビア  発売…SONY Records
CD番号…SRCS-9107

演奏について…正直、今日紹介していて、こう言うと何だけど、非常に中途半端な立ち位置のアルバムである事は否めないんですぅ。
クラシックのオペラを素材としていて、バックはストリング・レスのオーケストラがこなしている。
本来歌手が歌うメロディを「マイルス」が吹いてくれるんだけど、この楽器編成が、吉と出るか?凶と出るか?ちと微妙な感じですね。
クラシックを全く聴かない人、映画音楽なんかが好きな人には、絶対的にお薦めしたいけど…クラシックに精通している人にとっては、かなり物足りない印象も抱くと予測されます。

また、本格的なジャズ好きな人にとっても物足りないかも?って思う部分も多い。
何故なら、ジャズの本質、面白さは、やはりアドリブが多勢を占めるからなんですね。
このアルバムには、アドリブ・パートが少なくて、かなりBGM的な演奏が多くなっているので、この辺りの評価も分かれる部分でしょう。

但し、超A級のBGM、映画音楽として理解できるのなら、是非聴いて欲しい。
「マイルス」と「ギル」の、非常に高尚で知的な音楽芸術のエッセンスが、ギューッと凝縮されて、パンパンに詰っている…この感覚は他のアーティストには、決して真似できない代物なんです。

それでは、各パートの詳細について少し述べましょう。

5曲目「サマー・タイム」…超名曲だが、「マイルス」は非常に原曲に忠実に、ミュート・トランペットでメロディを吹き上げる。
バックのホーン群もとてもデリカシーの有るお上品な演奏です。
リリカルで、「竹久夢二」の女性画のように、繊細でちょっぴりクールな感覚が堪んない魅力です。
とても紳士的にリズムを刻む、「マイルス」親衛隊の「チェンバース」のベースと「コブ」のブラッシュ・ワークが良い仕事をしています。

12曲目「愛するポーギー」では、バックのブラス演奏が、静けさを演出していて、「マイルス」も(音楽的)情景に同化して、非常にクラシカルな雰囲気のBGMを創り出している。
しかし、「マイルス」の音は、いつ聴いてもとても寒色系の音でとにかく知的ですね。

7曲目「祈り」…一言で言うと「マイルス」芸術の極み的な演奏。
「マイルス」のクールなトランペットと、バックのオーケストラが作り出す高尚なアートです。
「マイルス」…帝王はやっぱり何を演っても絵になるし、カッコイイですね。
ここでの「マイルス」の祈りは、音色こそいつも通りだが、音楽の芯は珍しく男性的でマッシブに感じる。

オープニング曲「禿鷹の歌」…一寸エキゾティックな雰囲気の曲調に合わせてホーン・セクションと「マイルス」がクールに決め!の演奏ポーズを取る。
ビッグ・バンド系には不釣合いなぐらい、ニューヨーカーのダンディズムを見事に表現している演奏です。
渋く仕事を演る「チェンバース」と、ホーン群ではチューバを吹く「ビル・バーバー」の名演に思わず拍手!です。

13曲目「ニューヨークへボートが」…極上のミュージカルのラストを飾る様な、誠にゴージャスな雰囲気のブロード・ウェイのショウ・タイムにドンピシャはまるラスト・ナンバー。
「コブ」が、アルバムのエンディングらしく、結構派手にドラムを敲いてくれるのもgoodです。

2曲目「ベスよ~」では、叙情性を豊かに「マイルス」とホーン群が、緩楽章での美演をやります。
とても優しげで、ほのかに温かい…初春の木漏れ日をイメージさせるんです。
うぅーん、聴いていて、とにかく気持ち良い~!!

3曲目「ゴーン」…この演奏の肝は、この曲と4&9曲目だけ参加し、太鼓(ドラム)を敲きに来ている?「フィリー・ジョー」の独壇場的な、超絶ドラム演奏が最高です。
「フィリー・ジョー」は相変わらず、テク&スピリット共に最高ランクの演奏で、強烈なドライブ力をバックにして、「マイルス」も気持ち良くペットを吹き通す。

10曲目「ご自由に」…静けさと、都会的な曲調が見事に同化した、好トラック。
ブルース的に進行する、(ソー・ホワットかブルー・セヴンみたいだ)リズムを従えて、「マイルス」が最高にカッコイイ、ダンディな演奏を演ってくれます。
「マイルス」のブルース…土臭くないアーバナイズの極めのブルースで、この曲では、アドリブも満載です。
これが、ニューヨークのブルースだ!これが東海岸のジャズだ!!
このアルバム中でナンバー1のベスト・トラックだ!!!

8曲目「漁夫と苺と~」…この演奏も美しい。
このトラックは、「マイルス」的な演奏と言うよりも、どちらかと言うと、フリューゲル・ホーンを演っている「アート・ファーマー」の様な感じの演奏です。
最後の方で、音色を捻る?、一寸小細工する所は「マイルス」らしいんですけどね。(大笑い)。

4曲目「ゴーン・ゴーン・ゴーン」…「マイルス」のソロに合わせて、ホーン・セクションが極上のサポート演奏で応援するトラックです。

ライヴ・イン・ニュー・ヨーク~マイルス・デイヴィス&ジョン・コルトレーン

2007-12-16 23:59:15 | マイルス・デイヴィス
今日もまたまた、全盛期?の「マイルス」&「コルトレーン」の史上に名だたる名コンボのライブアルバムを紹介しましょう。
ブラック・ライオンからの名盤コレクションで、この盤も音質は悪いですが、ジャズ・バンドとしては最高峰のメンバーでの録音で有り、演奏曲も名曲ばかりなので、楽しんで頂ける事と思います。

アルバムタイトル…ライヴ・イン・ニュー・ヨーク

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ウィントン・ケリー(p)※6曲目のみ参加
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ジミー・コブ(ds)※6曲目のみ参加

曲目…1.バイ・バイ・ブラックバード、2.フォア、3.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド、4.ウォーキン、5.マイルストーンズ、6.ソー・ホワット

1958年 1959年 NYにて録音

原盤…Bandstand  発売…徳間ジャパン
CD番号…TKCB-30458

演奏について…オープニング曲「バイ・バイ~」…ノッケからテーマでは無く、「マイルス」が、アドリブ演奏からの序奏をミュート・プレイで吹き始める。
いきなりの「マイルス・ワールド」へトリップすると、「コルトレーン」が受けて、シーツ・オブ・サウンドの原型的な、未だ一寸垢抜けしきれていない演奏だが、とても一所懸命に吹く事が好感が持てる。
その後の「エヴァンス」のソロは、未だ、彼の天衣無縫の天才的な煌きは影を潜めて入る物の、好フレーズを演じている。
オープニングとして、かなり良いトラックだと思う。

2曲目「フォア」…「マイルス」のオープン・トランペット演奏からスタートするが、気持ち良く朗々と鳴らすトランペットの音が…「マイルス」っぽく無いね。
何か「マイルス」にしては、明る過ぎる感じがしないでもない。
受ける「コルトレーン」は、前曲と同様、フレーズを選んでる節が有るが、かなり速射砲的な吹き方が身に付いて来た感じがします。
最後のユニゾン演奏は、かっこいいです。

3曲目「イット・ネヴァー~」…このアルバム全曲中、「マイルス」の演奏からすれば、断然のベスト1でしょう。
因みに、「コルトレーン」はこの演奏には参加していない。
名作の、プレスティッジ・マラソン・セッション4部作での、リリカルなスーパー名演には若干及ばないかもしれないが、ライヴ演奏と言う事と、ピアニストが「エヴァンス」と言うプラス点が有るので、甲乙付け難いくらいの名演奏だと思います。
やはり「マイルス」のミュートでのバラード・プレイは、前人未踏の境地ですね。

4曲目「ウォーキン」…「マイルス」がオープン・トランペットで、しかし知的な志でテーマを吹く。
「コルトレーン」は、大分リラックスして来たのか、かなりフリーキーに、シャウト系のテナー演奏をかまして来る。
かなり、後の大物感を予感させる演奏です。
「エヴァンス」も、大分慣れて来たのか、絶好調になって来て、素晴らしいアドリブ・フレーズを連発して、才能を見せ始めます。
それから、「チェンバース」が十八番のボウイングで、ギコギコ演ってくれます。
「チェンバース」のほのぼのトーンを聴くと、いつでも癒されますね。
本当に良い人だなぁ。

5曲目「マイルストーンズ」…多分このコンサートで、コンボの中では一番力を入れた演奏だろう。
何故なら、演奏時間が9分半と、他と比べてかなり長い事や、序奏を「マイルス」「コルトレーン」の2トップのユニゾンから演って、その後「マイルス」がフル・トーンでバリバリと思い切りアドリブを演ってくれるからです。
「コルトレーン」も、それ以上にブイブイ行って、特に音のシャワーを頻繁に出してくれて、この後のスーパー・スターへと駆け上がっていく事を充分に予測させてくれる、ヴェリー・ハードなプレイをしてくれます。
このアルバム演奏の中で、こと「コルトレーン」の演奏に限って言えば、断トツでこの演奏が一番良い出来です。
「エヴァンス」もこのトラックの出来はずば抜けて良いです。
華麗に、知的に鍵盤を、左右の手指が疾走し、テクニックと、クールなエモーションが同居して、「エヴァンス」の独自世界を見せ付けるんです。
「エヴァンス」の演奏…まじに超カッコイイですよ。
最後に、海賊版的なアルバムなので、「フィリー・ジョー」の超絶ドラミングが、かなりオフ・マイクで、しっかり録られていないのが、残念!斬りっ!!!

ラストの1曲「ソー・ホワット」…例に洩れず、「チェンバース」のベース進行から、曲が始まり、「マイルス」がクールなソロをバッチリ決めてくれます。
しかし、何回聴いても、違う演奏を聴いても、「マイルス」の「ソー・ホワット」はインテリジェンスでカッコイイですね。
「コルトレーン」の演奏も、力は5曲目の方が入っている感じがするが、テクニック、精神の高さからすると、(マイルストーンズ)から比較して、約1年後の演奏なだけに、こちらの方が優れているかも知れませんね。
「ケリー」は、「エヴァンス」には及ばないのは先刻承知の助ですが、ファンキーで、且つ哀愁を散りばめたプレイで、この曲をキッチリ飾り付けてくれます。
「マイルス」が再登場してからは、彼の独壇場ですね。
本当にクール・ビューティ(な演奏)とは、彼の事を言うのだろうね。
それから、ドラムがしっかり録れていないと、「フィリー・ジョー」の時に言いましたが、「チェンバース」のベース音はしっかり収録されていて、この演奏が重厚感溢れる名演になった重要な要因になっている事を、上げておきましょう。

マイルス・イン・ベルリンと同様のコンセプト…フォア・アンド・モア~マイルス・デイヴィス

2007-12-09 23:17:32 | マイルス・デイヴィス
エネルギッシュで且つアコースティック・サウンド演奏した(された)「マイルス」が好きな諸氏には堪らない魅力のアルバムを紹介しましょう。

先日紹介したアルバム、「マイルス・イン・ベルリン」と略同時期に録音されており、(実際は、この録音の方が半年ほど前ですね)コンセプト的にも近いライブ・アルバムなのですが、テナー・サックスが「ジョージ・コールマン」で演奏されています。
しかし、ハードで見るからに硬派な「マイルス」の演奏にも魅力が一杯ですので、どうぞご賞味あれ!

アルバムタイトル…フォア・アンド・モア

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョージ・コールマン(ts)
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

1964年2月12日録音

原盤…米コロムビア 発売…CBS SONY
CD番号…CSCS-5145

演奏について…オープニング曲は、やはりと言うべきか、「ソー・ホワット」からスタートする。
「カーター」のベースに導かれて、全員戦闘体勢に入る。
「マイルス」も最初からエンジン全開で、オープン・トランペットで、ぶいぶい言わせる。
しかし、最もエキサイティングなのは、「トニー・ウィリアムス」である。
タイム感覚抜群で、ドラ・テクも完璧な事に加えて、このクインテットを充分過ぎるほどの強力な推進力で煽り捲る。
「ハンコック」はいつも通り、ややクールな目線で伴奏をし、アドリブ・ソロの場面でも、クール・ビューティな演奏をして、カッコイイんですよ。
テナーの「コールマン」は、とにかく真面目に一心不乱に吹く事に専念していて、好感が持てます。
スタートから、モード・ジャズのカッコ良さを全面的に押出した名演奏です。

2曲目「ウォーキン」も「マイルス」の代名詞的な曲で、「マイルス」が声高らかにテーマを吹いて序奏がなされて、ヨーイドンとなる。
この曲でも1曲目同様、リズム・セクションの「ウィリアムス」と「カーター」の推進力が半端じゃない。
その中でも「ウィリアムス」は稀代のテクニシャン、若き天才らしく、皆を推進していながらも、ドラムのおかずの使い方、変拍子の使用等のセンスも抜群で、特にアドリブ・ソロに入ると、空間の魔術師の様に時を止めたり、動かしたりと…完全に時間を司っています。
その後で「コールマン」が気合の入ったアドリブを演ってくれます。
「ハンコック」は、この曲では華麗なアドリブを見せて、クール・ビューティが少し血を通わせた様な演奏になります。
終盤にもう一度テーマ演奏に戻ると、全員の掛け合いでフィニッシュとなって、場内は感動です。

3曲目「ジョシュア・ゴーゴー」…この曲も「マイルス」のハードな音量、音質の演奏からスタートして、1小節目から全員に緊張感が伝わる。
この曲でも「カーター」、「ウィリアムス」の二人は、1、2曲目と変わらず、エンジン・フル・パワーで疾走するスポーツ・カーの様です。
「コールマン」も持てる力を出し切る様にテナーに魂を込めた演奏が見て取れますし、演奏自体もとても好調です。
しかし、この曲は良く出来ていて、8ビートのジャズでありながら、緩小節の部分も有って、個人のアドリブ・メロディの美しさを見せられるパートが多く存在しているので、その辺も聴き所の一つでしょう。
とにかく一言で言えば、「カッコイイ演奏」と言うことにつきる演奏です。

4曲目「フォア」…マーチ調のリズムに、「ハンコック」の知的なピアノと、「マイルス」のフルトーン・トランペットが絡み付く様な序奏からKOされそうです。
「コールマン」は、この曲では幾分思索気味のアドリブを吹いています。
「コールマン」は、演奏技術もしっかりしているし、音色も魅力的なテナー奏者ですが、何せ彼以外の全メンバーが天才アーティストで囲まれているので、考えて見れば、「コールマン」がとても可哀そうです。
しかし、このアルバム全曲での「コールマン」のプレイは好演してるのは事実です。

5曲目「天国への七つの階段」…例に漏れず、最強リズム・セクションの3人に導かれて、「マイルス」「コールマン」のユニゾンでのテーマ演奏から曲が始まる。
「マイルス」、「コールマン」とも、それぞれ魅力あるアドリブを演ってくれますが、ここでも最も聴衆を沸かすのは「ウィリアムス」のドラム・ソロの場面です。
あまりの素晴らしさに、皆、口をあんぐり状態で聴いているんでしょう。
終盤での「ハンコック」の流麗なアドリブも良いですね。

ラスト・ナンバーの「ゼア・イズ~」…ここで、「マイルス」が伝家の宝刀「ミュート・プレイ」を演ってくれます。
やっぱり、「マイルス」はミュートが良いよね。
とにかく、クールでインテリジェンスで、超カッコイイんです。
フル・トーンだと、どうしても「クリフォード・ブラウン」とか、「リー・モーガン」なんかの方が上手の様な気がします。
しかし、「マイルス」は、ミュート・プレイは唯一例外の「チェット・ベイカー」を除けば、絶対的な存在のアーティストですよね。
その「チェット」との比較にしても、音質、音色、そしてプレイ・スタイルとも全く異なっていて、ガチンコで真っ向から比較すべく対象では無いですしね。
この曲では「コールマン」は割かし伸び伸びと、リラックスして吹いています。
コンサートも最終コーナーのバック・ストレートに入ったので、緊張感から解放されたのかな?
「ハンコック」…終始変わらず、固めのタッチで、知的に冷静に曲を調理してくれて…完璧な料理を客に提供してくれます。
最後も「マイルス」の緊張感たっぷりなミュートで曲が締め括られて、アナウンスに全員が紹介されて、真にカッコヨスのライブが終わります。
ブラボー!!!

最後に…「モード」のこの時代、「コルトレーン」は精神の極みの演奏を成し遂げ、「ドルフィー」は命を削って演奏を続けた。
そして「マイルス」は、とにかくクールでカッコ良さの代名詞的演奏で、ジャズのダンディズムを追求した感じがします。
私からすれば、「モード・マイルス」で完成形と言えるほどカッコヨスなので、70年代のブラック・ファンク的な「電気マイルス」は、…必ずしも必要ではなかったと思います。。。

今日はマイルスのライブ・アルバムだ!マイルス・イン・ベルリン~マイルス・デイヴィス

2007-12-04 23:50:36 | マイルス・デイヴィス
昨日は「コルトレーン」のモード演奏アルバムだったので、今日は「マイルス・デイヴィス」のモード演奏のライヴアルバム紹介で行きまっしょい!
メンバー的にも申し分ないですし、「電気マイルス」の様な賛否両論の演奏では無い、ピュアでアコースティックな「マイルス」演奏に、素晴らしい魅力を発見できるでしょう。

アルバムタイトル…マイルス・イン・ベルリン

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ウェイン・ショーター(ts) 
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.マイルストーンズ、2.枯葉、3.ソー・ホワット、4.ウォーキン、5.テーマ

1964年9月25日 ベルリン フィルハーモニック・ホールにてライヴ録音

原盤…米コロンビア  発売…CBS SONY
CD番号…32DP-519

演奏について…オープニングの1曲目から、「マイルス」の代名詞的な曲「マイルストーンズ」によって、このクインテットが疾走する。
「マイルス」は、彼にしては最初からブリリアントなトーンで、全開バリバリに吹き進む。
「トニー・ウィリアムス」の高速ドラミングと、「ロン・カーター」の的確なベース・ラインで、「マイルス」のソロをガッツリサポートして盛り立てます。
その後、「ショーター」が、珍しくいきり立つ様に、激しいテナー・ブロウで、「マイルス」とのバトル対決へと突入して行くのです。
ここでのソロ演奏は、いつもの「ショーター」より、かなり危なく、危険な香りがするのは??、やはりライヴ演奏ならではなのか?
いずれにせよ、手に汗を握るアドリブ演奏がカッコ良いんですよ。
ここで嘶く様に吹く様が、「コルトレーン」が旧「マイルス」楽団にいた頃をどことなく彷彿させるんです。
それから、新「マイルス」楽団の超優等生「ハンコック」が、若者らしからぬモード・ピアノをガンガン弾き捲ります。
「ビル・エヴァンス」に匹敵するくらいに知的なピアニズムだが、黒人なだけに「ビル」との違いも明白で、その辺りが素晴らしい個性だと思う。
いずれにせよ、スタートから抜群の名演で、掴みはベリーOK(オッケー)です。

2曲目「枯葉」…こいつもすごいぜ!
50年代の黄金のカルテット時代の「マイルス」の演奏が…未だ健在なり!!
リリシズムとクール&インテリジェンスが突出した、超絶的なミュート・プレイによって青白い炎が燃え上がる。
「ウィリアムス」は、ペタッと張り付く様なブラッシュ・ワークで「マイルス」の伴奏を務め上げて、良い仕事を見せてくれます。
この雰囲気…絶対に「マイルス」じゃないと出せない世界ですよね。
これに触発されてか、「ショーター」も、ここではアヴァンギャルドではなく、一寸クールなテナー・ソロを決めるんです。
ブイブイ吹く感じじゃなくて、音は少なめにして、しかし効果有る一音(フレーズ)を的確にセレクトして吹くんだよね。
「ハンコック」は、まるで賢者が繰り出す様なブロック・コードをカツンカツンと決めます。
こいつのセンスは、化物級だね。
生来の天賦の才を極限まで「マイルス」に磨きぬかれて、正しく天空からのピアノを奏でてくれます。
音量やパワーで言ったら、圧倒的な感じじゃないけれども、張り詰めた緊張感、集中力と言ったら、すさまじい。
正に極限的な名演奏でしょう。
「キャノンボール盤」が、「エヴァー・グリーンな枯葉」の名演なら、この演奏は
「マイルス芸術」の極地的な、通好みの超名演と言ったら良いでしょう。

3曲目「ソー・ホワット」…この曲も「マイルス」の代名詞と言って、誰も異論は無いでしょう。
ここで、「マイルス」は、またまたオープン・トランペットによって、1曲目同様のハードなプレイに戻ります。
「ショーター」は何となくだが、少し大人びた印象のアドリブを吹く様になった気がします。
同日でも「マイルス」から様々な音楽的ファクターを吸収しているかの如く、何となく上手くなっているようで…。
テナー・サックス奏者として、大分上級になったかなって素直に感じますね。
「ウィリアムス」「カーター」はモード演奏のリズム・セクション、サポート演奏としては完璧で、言う事は有りません。
終盤での「ハンコック」のハイ・センスのソロもgoodです。
言い換えれば、「ハンコック・トリオ」としても充分に聴けるレベルの名演奏と化しています。

4曲目「ウォーキン」…この曲もプレスティッジ時代に超名演(名盤)が存在していますが、新時代のモード演奏での「ウォーキン」も悪くないですね。
「ウィリアムス」が早めのテンポ、もはや4ビートでは無く、8ビートで突き進むんですが、若造のくせに(失礼)、ドラ・テクは半端じゃなく、バカ上手(ウマ)なんですよ。
変速リズムでも、高速リズムでも、変調でも何でも来い!状態で、「マイルス」も安心してリズム・セクションを任せていたのが、手に取る様に分かります。
終盤の「ショーター」の演奏は、硬さも随分取れて来て、結構マイ・パターンのフレーズも出てきた感じがして、乗ってきたなと思います。
「ハンコック」はゴーイング・マイ・ウェイですが、クールさは全く変わらず、むしろ更に冷ややかに、4人のメンバーを見ながら、遠隔コントロールしている感さえ有るんです。
この冷静さ…むしろ怖いぐらいだね。
「マイルス」のこのコンボで、20歳そこそこのピアニストとドラムスの天才二人…まじにすごい才能で、「ハンコック」と「ウィリアムス」のデュオ的なバトルは筆舌し難い名演奏で、聴き所です。

5曲目の「テーマ」…「カーター」のベース・ソロから導入され、「マイルス」と「ウィリアムス」が、煽り気味に、不気味にテーマを演奏する。
わずか2分弱の短い曲だが、とても奥深く印象に残ります。

とにかく全曲全てが、名曲・名演で、「マイルス」芸術の最高峰の一つと言って良いでしょう。
モード演奏とは何か?の答を出してくれる、アルバム(演奏)であり、有名曲ばかりなので、初心者の方でも、いきなり究極のモード演奏に出会えます。

マイルス・デイヴィス・ニュー・クインテット~サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム

2007-05-05 20:04:31 | マイルス・デイヴィス
かつて、マイルス・デイヴィスが「このアルバムに解説は必要ない」と明言した、超名盤で、実際にアナログ盤の裏面にもマイルスのスナップ写真だけで、解説は掲載していなかった。

マイルス・デイヴィス・ニュー・クインテットの演奏は勿論素晴らしいが、この盤の本当の主役は、1曲目と5曲目に演奏に加わった「ジョン・コルトレーン」に間違いない。
やはりこの年代ぐらいになると、「時代の寵児、コルトレーン」は、師匠の一人である「帝王、マイルス」でさえももはや凌駕していて、このアルバムで、彼の天才ぶりを聴くことができる。
ある意味、「モブレイ」がとても可愛そうなアルバムでもある。

では、詳細を…

アルバムタイトル…「サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム」

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ハンク・モブレイ(ts)※1
      ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      ジミー・コブ(ds)
      ジョン・コルトレーン(ts)※2

曲目…1.サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム(いつか王子様が)、2.オールド・フォークス、3.プフランシング、4.ドラッド・ドッグ、5.テオ、6.アイ・ソート・アバウト・ユー

※1…5曲目で抜ける。 ※2…1曲目&5曲目で加わる。

録音…1&2曲目・1961年3月20日、3&4曲目・1961年3月7日、
5&6曲目・1961年3月21日 いずれもニューヨークにて録音

演奏について…このアルバムの聴き処は大まかに二つある。コルトレーン参加の1曲目&5曲目のモーダルな演奏を聴く事と、マイルスの甘くなりすぎないミュートを中心とするバラッド曲を聴く事である。

コルトレーン参加の2曲においては、曲の有名さととっつき易さは圧倒的に1曲目「いつか~」の方であり、ここではモブレイのベテランらしいテナーと、トレーンのモーダルなテナーの両方が聴ける。
が、しかしお薦めは「モブレイ抜き」の5曲目が白眉で、来るべき「トレーン時代」のすごさが改めて分かる名演です。
トレーンを受けるマイルスのモーダルなプレイも秀逸。
マイルスの素晴らしさが体感できるのは、まず6曲目「アイ~」です。
ここでの渾身のミュートプレイは、「This is Miles」と言って良い演奏だろう。
短いがモブレイのアドリブも結構行けてます。
2曲目「オールド~」もマイルスのリリカルなプレイが聴けてOKです。
そして、3曲目「プフランシング」マイルス作曲のブルースの演奏と言えば、曲を聴く前からもうイメージ湧きまくりですね。

マイルスの言っていた、「解説の必要なし」は揺ぎ無い事実です。


      

満を持して「帝王」登場!モダンジャズ史上最高の名盤の一つ「カインド・オブ・ブルー」

2007-04-06 22:14:54 | マイルス・デイヴィス
私がブログを始めてから3ヶ月近くなりますが、未だ帝王「マイルス・デイヴィス」のアルバムを紹介していませんでした。
そこで、今日は「帝王;マイルス」の数多あるレコーディングの中でも、屈指の名盤、「カインド・オブ・ブルー」を紹介します。

まぁ知っている人は知っているのですが、この時参加している「ミュージシャン」を見て、卒倒しそうな「豪華メンバー」が、モードジャズを演っているんです。

では詳細について紹介しましょう。

アルバムタイトル…「カインド・オブ・ブルー」

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(as)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ポール・チェンバース(b)
      ジミー・コブ(ds)

   ★2曲目から、ウィントン・ケリー(p)が、エヴァンスに替わる。
   ★3曲目で、キャノンボールが抜ける。

曲目…1・ソー・ホワット、2.フレディ・フリーローダー、3.ブルー・イン・グリーン、4.オール・ブルース、5.フラメンコ・スケッチ

録音…1.2.3.…1959年3月2日、4.5.…1959年4月22日

演奏(曲)について…今回登場の各演奏者については、何度と無く紹介しているので、個別の説明はもはや要らないでしょう。
ですので、演奏曲(推薦曲)のみ紹介させて頂きます。
まずは、モード・ジャズ・ブルースの極地とも言える、マイルスオリジナル曲の「オール・ブルース」が一番の推薦曲です。
曲の有名度からすると、冒頭曲の「ソー・ホワット」の方が上位だと思いますが、ピアニストが「ケリー」よりは、やはり「エヴァンス」でしょう。
勿論、ケリーも好ピアニストなのですが、やはりピアニストとしての、人気・実力・知名度・カリスマ性のどれを取っても、「エヴァンス」が何枚も上の存在なので、「ケリー、ごめんなさい」。っと言うことで、「オール~」が「ナンバー1曲」です。
そして「ソー~」が必然的に「ナンバー2」でしょう。
後は、静寂のバラッド演奏がなされる、「3&5曲目」の両方も佳曲です。
★個人的には、ナンバー1&2曲目よりも、「3&5」の方が好きなんですけど、一般常識を考慮するとこうなるのかなぁ。