紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ジャズ界屈指のテクニシャンが送るピアノ・トリオ…フィニアス・ニューボーンJr.~ハーレム・ブルース

2008-05-05 18:40:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ジャズ・ピアニストの中で屈指のテクニシャンは?と言えば、必ず名前が挙がるのが、今日、紹介するピアニスト、「フィニアス・ニューボーンJr.」です。

まぁ、世間一般的に言って、ジャズ・ピアニストの超絶技巧3人衆は、1に「アート・テイタム」…(この人は別格で、「ヴラジミール・ホロヴィッツ」でさえ、ライヴに聴きに行った事があるんですね)それから、2に「オスカー・ピーターソン」、そして3に、この「フィニアス・ニューボーンJr.」を挙げる人が多い様です。

このアルバムは、そんなテクニシャン「フィニアス」が、コンテンポラリー・レーベルに残した代表的な1枚で、聴き易いスタンダード曲が多いのに加えて、バックの二人もグレートなビッグ・ネームなので、非常に人気が有る盤なんです。
何とベースが「レイ・ブラウン」、そしてドラムスが「エルヴィン・ジョーンズ」なんです。
どうですか?生唾ゴックン物で、今すぐに聴きたくなるでしょう?

それでは紹介して行きましょう。

アルバムタイトル…ハーレム・ブルース

パーソネル…リーダー;フィニアス・ニューボーンJr.(p)
      レイ・ブラウン(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ハーレム・ブルース、2.スウィート・アンド・ラヴリー、3.リトル・ガール・ブルー、4.レイズ・アイディア、5.ステラ・バイ・スターライト、6.テンダリー、7.クッキン・アット・ザ・コンチネンタル

1969年2月12日、13日 L.A.にて録音

原盤…CONTEMPORARY S7634  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23564

演奏について…オープニング曲にしてタイトル曲の「ハーレム・ブルース」…この強烈バック二人をして、いきなりブギウギ調の軽快なブルースで始まる。
「ブラウン」は強固な音色でビンビンにベースを弾くが、「エルヴィン」は、シンバル・ワークをメインにしているものの、余り煽りはやっていない。
まずは「フィニアス」のお手並み拝見と言った所でしょうか?
「フィニアス」は、高速の指捌きで、アドリブを色取り取りに修飾して行って、おかずを着け捲くる。
一方、テーマ・メロディを演る時は、低音を強調して、ブルーズの重みもちょっぴり出したりして、やることが憎いですねぇ。

2曲目「スウィート・アンド・ラヴリー」…スタンダード曲で、ゆったりと大人の時を過ごせる様に、「フィニアス」が華麗な指使いと、知的なスピリットで、リズムにアクセントを付けながらじっくりと仕上げていくナンバーです。
このリズムの変化でも「エルヴィン」は、スゴ・テクでピッタリと「フィニアス」に合わせて、ブラッシュと太鼓のポリリズムを対比させながら、職人芸を披露する。
「ブラウン」は、この演奏ではブルージーに渋く決めて、余り自己主張はしない。
「フィニアス」の技巧もすごいんだけど、とにかく、この曲での「エルヴィン・ジョーンズ」の演奏が、ものすごくて、皆完敗しちゃいますよ。
一押しのトラックです。

3曲目「リトル・ガール・ブルー」…これもスタンダード・ナンバーで、「リチャード・ロジャーズ」の作品ですが、「フィニアス」はアドリブで、かなり繊細に、そしてセンシティヴに演じて行きます。
この演奏では、一寸聴くと地味なんだけど「レイ・ブラウン」のパワフルなベース演奏がすごく良いんですよ。
カラフルな音色で、曲をキラキラ飾る「フィニアス」とは、正に対極に有って、渋く、野太く、縁の下の力持ちに徹していて…このgood jobで、より一層「フィニアス」の煌きが映えるんですねぇ。
「レイ・ブラウン」…流石です。

4曲目「レイズ・アイディア」…「レイ・ブラウン」が、自ら書いたビバップ・ナンバーとのことですが、この演奏は3人のトリオ演奏が高水準で纏まっていて、3人の技術を含んだ力量が合致しているこそのパフォーマンスが形成されています。
テクニシャン「フィニアス」のピアノをメインにフューチャーするのも、ピアノ・トリオとして有りですけど、渾然一体となって、マッシブにバトルを繰り広げて、三位一体となったピアノ・トリオも、また有りな訳で…この演奏は正しく後者なんですよ。
3人のアイ・コンタクトが完璧な1曲です。

5曲目、超名曲「ステラ・バイ・スターライト」…序奏からテーマ演奏に加えて、もはやカデンツァと言うべき、超絶のピアノ・ソロ演奏をする「フィニアス」の演奏から曲が始まります。
このカデンツァだけでも必聴物ですが、その後のトリオ演奏もすごいんです。
「コルトレーン・カルテット」時代を思わせる「エルヴィン」の硬派で、火傷しそうに熱いドラミングもえぐいし、「ブラウン」は抑え目な物の、やはり硬派なサウンドで「フィニアス」をバック・サポートします。
この二人の(スゴテク)演奏にも耳を奪われつつ、やはりこの演奏では「フィニアス・ニューボーンjr.」が、半端じゃない出色の出来で、4曲目とは全く逆の仕上げで…あくまでもスーパー・ピアニストを全面に押し立てたトリオ演奏で、終始進行します。
「フィニアス」を聴くと言うのであれば、この演奏の出来が最も素晴らしいですし、この演奏&曲こそ、正しく「フィニアス」のためのピアノ・トリオ演奏と言って良いベストトラックでしょう。

6曲目「テンダリー」…この曲では、今度は「レイ・ブラウン」の締まっていて、重厚なベース・ソロから曲が始まる。
非常にパワフルで、それでいて(ベースの)歌心十分に、かなり長めのアドリブを決めてくれます。
中盤から華麗に「フィニアス」が加わり、曲は劇的になってくる。
渋く、ピラミッドの様に安定した重厚な「レイ・ブラウン」のベース音を、「フィニアス」は、上から見下ろす猛禽類(大鷲)の様に舞う姿の対比がとても美しい。

ラスト7曲目「クッキン・アット・ザ・コンチネンタル」…ラストを飾るに相応しい疾走系のナンバーで、「エルヴィン」が、シャンシャン、バリバリ、ガンガンとドラムを敲き、「ブラウン」はすばやく堅実に(それに)ベースを合わせる。
「フィニアス」は、高速で運指して、ラスト・スパートで直線を捲くります。
兵たちが、まとめてゴール・インします。

「フィニアス」は、その力量からすると、(日本では)かなり過小評価されている様に思います。
って、言うか、日本人はテクニシャンのジャズ・ピアニストは、正直言ってあまり好きじゃないよね。
前述の3人とも「テータム」「ピーターソン」そして「ニューボンjr.」ファン投票をやったら、好きなジャズ・ピアニスト10人には多分入らないでしょうから。
※「ピーターソン」は、もしかしたら入る可能性が有るけど…。
日本人はシングル・トーンの哀愁系が、とにかく好きなんです。(私もしかり)

もしも好きなジャズ・ピアニスト、ベスト10をやったら、「ビル・エヴァンス」「キース・ジャレット」「ソニー・クラーク」「トミー・フラナガン」「ウィントン・ケリー」「ホレス・シルヴァー」「デューク・ジョーダン」「チック・コリア」「ハービー・ハンコック」なんかの哀愁系と知的系が上位独占すると思います。
でも、この「フィニアス」…とっても良いと思うよ!!!

レイ・ブライアントが初めて日本でレコーディングしたのが、このオール・マイン…アンド・ユアーズ

2008-05-04 15:07:02 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
本日3枚目の視聴&紹介です。
「レイ・ブライアント」…この厳つい?顔に似合わず、ジャズ界屈指のロマンティックで、センチメンタリズムで、可憐なピアノ演奏をする男です。
そう言う私も、実は「レイ・ブライアント」は大好きなピアニストでして、この初の彼の日本レコーディング盤…とても期待できますね。

曲目は全曲、「ブライアント」のオリジナルで、その辺も注目したいです。

アルバムタイトル…オール・マイン…アンド・ユアーズ

パーソネル…リーダー;レイ・ブライアント(p)
      ルーファス・リード(b)
      ウィナード・ハーパー(ds)

曲目…1.ウォーラス・ウォーク、2.ダーリン・マーリン、3.アデリア、4.リフレクション、5.アイ・ドント・ケア、6.ナッツ・アンド・ボルツ、7.パウン・チケット、8.ビッグ・バディ

1989年10月19日、20日 日本での録音

原盤…EmArcy  発売…日本フォノグラム  CD番号…EJD-13

演奏について…何と言っても一押しは、2曲目「ダーリン・マーリン」で決定!
序奏から「レイ・ブライアント」が作った超名曲「ゴールデン・イヤリングス」を彷彿させる、可憐で繊細で哀愁たっぷりのテーマ・メロディが心を揺さぶる。
その後、ラテン調のスティック・ワークで「ハーパー」が調子を刻み、渋く決めるベースの「リード」の二人がガッチリ脇を固めて、それに乗って「ブライアント」が魅惑のアドリブ・メロディを紡ぎ続ける。
曲は徐々に軽快に走り出して、アクティブな印象に変わってくるが、「ブライアント」の繊細な指捌きは煌くばかりで、「リード」の野太いベース・ソロとのコンビネーションが、聴き応えを増させます。
この珠玉の1曲だけでも買いですね。

次いで抜群なのは、4曲目「リフレクション」で、どこかで聴いたと思ったら、以前「フィニアス・ニューボーン」が「ウィー・スリー」で演っていた佳曲じゃないですか?
ヨーイ・ドンで「ハーパー」がリズムを始動すると、「ブライアント」が哀愁たっぷりのテーマ・メロディを演ってくれて、その後のアドリブ・パートが、またまた美しいんです。
どこまでも可憐で、菜の花畑を柔らかく飛ぶ紋白蝶の様に、軽やかで美しい。
これは、ここまで来ると「ブライアント節」そのものですね。
「リード」のベースは、逆に非常に男っぽい厚い音色で、彼女(踊り子)をサポートする、ラテン・ダンサーの様です。
この1曲も堪んねぇな!

3曲目「アデリア」…この曲もリズムはラテン調で、「ハーパー」が淡々と、「リード」が重厚にリズム・キープをして、「ブライアント」が煌びやかに曲を飾り付けていく。
当たり前なのだが、「ブライアント」の左手の和音が低音部ででんと構えて、高音部の右手が軽やかに舞い上がる。
このバランス感覚が絶妙なんですね。

5曲目「アイ・ドント・ケア」…これも実は名曲で、「ブライアント」自身の吹き込みは始めてなのですが、今迄何人かのジャズ・ミュージシャンが録音しているとのことで、(解説「児山紀芳」氏の解説より)耳に馴染むマイナー聴ブルースのテーマがとても心地良いです。
その後は、ブルーズの王道らしい、アドリブを「ブライアント」が弾いて、これがまた、出来が良いんですよ。
奇は全く衒わず、音階コードに忠実にアドリブ進行をするので、聴いていると、懐かしい印象さえ持ちます。
しかし、決して懐古趣味ではないですよ。
とにかく心地良いピアニズムが、この曲に溢れています。

オープニング曲「ウォーラス・ウォーク」…3/4拍子で演奏される、マイナー・ワルツで、表題は「せいうちが歩く様」の事らしい。
でもまぁ、どっしりとしてはいるけど、そんなに鈍重ではなく、渋い感じのワルツ(雰囲気はブルースだね)に仕上がってます。
3人(トリオ)の一体感を最も感じさせるプレイ・ワークです。

7曲目「パウン・チケット」…都会をイメージさせるコード展開で、「ブライアント」が、かなり能動的にアドリブを演ってずんずんと進んで行く楽しいナンバー。
終盤「リード」がカッコイイ、ベース・ソロを魅せて、ダンディズムを表現する。
個人的にはオープニング曲辺りで、お客の掴みに使いたい感じがしますね。

6曲目「ナッツ・アンド・ボルツ」…ドラムスをフューチャーしたトラックで、ブラッシュとスティックで、「ハーパー」が華麗にソロを展開する。
「ブライアント」はブロック・コードで「ハーパー」をアシストして、新人を盛り上げる。

ラスト「ビッグ・バディ」…フィニッシュに相応しい疾走系のブルーズ曲で、3人ともノリノリ、上げ上げでスポーティさ抜群ですよ。
これもライナー・ノーツからですが、リハ無しの一発録音したトラックとの事で、そう言われてみると、(スタジオにも拘らず)ライヴの様な緊張感がある様な気がします。
「ハーパー」の出来も良くて、ドライヴィング力が溢れているし、「リード」の推進力もえぐいぜ!
「ブライアント」の意図が見事にはまった1曲です。

伝統的なピアノ・トリオの原型を見せてくれる1枚ですね。

黒いマルの真骨頂…オール・アローン~マル・ウォルドロン

2008-05-01 22:59:36 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
「マル・ウォルドロン」…(ブラック・ミュージシャン)黒人であると言う事を、最も感じさせてくれるピアニストがこの人である。
このアルバムは、その「マル」が、特に個性を発揮した最右翼のアルバムだと思う。

作曲は全編、「マル」の作品であり、演奏も(誰にも束縛されない)ソロ演奏である。

とにかく彼の黒々さが全編に渡り発揮され、アフリックと言うか、アフロと言うか、とにかくネイティブな黒さが堪能出来るんです。

今日は、「マル・ウォルドロン」の姿を楽しんで下さい。

アルバムタイトル…オール・アローン

パーソネル…マル・ウォルドロン(p)ソロ

曲目…1.オール・アローン(映画「マンハッタンの哀愁」より、2.デュー・トリ、3.ルーカの眺め、4.ブルー・サマー、5.イフ・ユー・シンク・アイム・リックト、6.スリー・フォー・シッシ、7.モスク・レイド、8.忘却のワルツ

1966年3月1日 ミラノにて録音

原盤…GTA LP-1004  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDJ-1565

演奏について…1曲目「オール・アローン」…序奏から「マル」の男の哀愁たっぷりに黒く美しい世界へと誘う。
ややはずし気味のブロック・コードを用いた、マイナー・メロディを訥々と弾いて、「マル・ワールド」に身を委ねたくなってしまう。
しかし、良く聴いてみると…何かを思い出す。
そう、「マル」がグレート・シンガー「ビリー・ホリデー」に捧げた名曲、「レフト・アローン」に似ているのだ。
何故なら、実は姉妹曲なんですね。
この哀愁…一度聴いたら忘れませんぜ!

2曲目「デュー・トリ」…非常に個性的なブルース曲だが、ここでも「マル節」が随所に出てきて感激!
曲は段々速くなって行き、「マル」がそれに乗って弾き捲くる。
しかし、左手の低音部は、同様のリズムと和音を刻み、ブルージーで且つ、重厚感を表現していて、とても構築がしっかりした作品です。
一言で言うと、ゴツゴツした岩石の様な曲で、無骨な漢にはジャスト・フィットなんですね。

3曲目「ルーカの眺め」…タイトル曲に匹敵するロマンティックで、ナイーブなマイナー・チューンで、これも聴いたら涙チョチョ切れものですね。
「マル」が、暗い影を落としたマイナー曲を弾く時、世界が変わるんです。
例えが余りにも悪いが、吸血鬼「ドラキュラ」が出陣?する時の様な…空気の流れが急変して…漆黒の闇夜が現れる。
「マル」は決して悪人ではなく、血も吸わないが…暗黒砦の鬼門番?みたいです。
しかし、顔は強面だが、実は心優しい鬼門番なんですよ。
この曲を聴いて心を洗ってください。

4曲目「ブルー・サマー」…この曲もはて?どこかで聴いた様な気がする…。
「悠 雅彦」氏のライナー・ノーツに書いて有るのを読んで?!!…分かりました。
そうです、「マイルス」の「オール・ブルース」に似ているんです。
このシンプルなブルーズ曲が、「マル」の個性と感性にジャスト・フィットして、独自の世界観を表現しているんです。
この4曲目まで、個性(マル節)が全開ですけど、曲調が変化していて、飽きさせませんね。
流石、「マル・ウォルドロン」です。

5曲目「イフ・ユー・シンク~」この曲にも似たのがありますよ。
ずばり「ブルーベック」の「テイク・ファイヴ」です。
と言っても、似ているのはリズムだけなんですけど…こいつも5/4拍子なんで、リズムが必然的に似ちゃうんです。
しかし、いかにも白人然とした「ブルーベック」と「マル」では、リズム以外は全く似ませんよね。
感性しかり、演奏方式しかり。
そして、正しく演奏されている曲の色が白と黒で正反対ですね。
ジャズを介して、オセロ・ゲームの対決みたいですな!

6曲目「スリー・フォー・シッシ」…とても美しいワルツ曲で、ブロック・コードで仕上げていく曲に、彼「マル」がサイド・メンとして参加している「エリック・ドルフィー」の「ファイヴ・スポット」のライブ・アルバムの「ファイアー・ワルツ」が、思わず眼に浮かぶ。
1曲目、3曲目と並んで、このアルバムの御三家と言って良いでしょう。
美しいメロディに、影になっているが…このマイナー曲の物悲しさに心震わずには居られません。

7曲目「モスク・レイド」…モスクの名が付くことから連想出来る様に、アラビア風の曲…なんだけど、実際は「マル」の先祖がエチオピア出身なので、それをイメージして作ったらしい。
つまり「アラビック」では無く「アフリック」なんですね。
でも、そんな細かいことはどうでも良いです。
非常にスケールの大きな、大地をイメージさせる…やっぱりアフリカ大陸なんだろうねぇ?
個性溢れる1曲です。

8曲目「忘却のワルツ」…おいおい!このワルツ曲もすごーく良いじゃないか?
きれいで、美しい曲だけど…良く聴くとやっぱり、ドス黒い!
やはり「マル」だ!
「マル」の曲だ!「マル」以外の何者でも無い!
でも…でも…でも「マル」はやっぱり良いぜい!
最後の最後まで「マル」節で押し通すんだ!
誰が何と言おうと、究極のワン・パターンだ。

ぶっちゃけ…魅惑の「マル・ワールド」の旅は快適ですよ。
是非、行ってくださいね!!!

ジャズ・ソロ・ピアノ演奏のベスト1?…キース・ジャレット~ザ・ケルン・コンサート

2008-04-05 23:54:09 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日、紹介するアルバム(演奏)は、かつては、自動車メーカー、ホンダのレジェンドのコマーシャルにも使用された事があって、ある程度の年齢の方なら、この演奏・曲だとは気付かないまでも、多分一度は耳にした事がある有名なフレーズ・序奏から、このケルン・コンサートは始まる。

ロマンティックで、哀愁たっぷりで、時には軽やかにスウィングし、時にはクラシカルにしっとりと…ジャズ・ピアノと言うよりは、もはやピアノと言う楽器の様々な演奏テクニックとスピリットの全てのエッセンスが凝縮された様な演奏で…正にジャズ・ピアノ演奏の最高峰では無いかと思わざるを得ない。

「キース・ジャレット」と言う、これまたジャズ・ピアノ史上でも最高位に位置する、ジャズ・ピアニスト界のカリスマが、全身全霊をかけて、己の持てる全てのありったけを出し切った演奏なんですよ。

勿論、トランス状態になり、超ハイになった時には、「キース」お得意の「うなり声」も沢山録音されています。
ライブ録音なんだから、これはしょうがないし、クラシックで言えば、奇才「グレン・グールド」も有名な得意技ですよね?
まぁ、その辺りは気にしないで、聴いて下さい。
こんな素晴らしい演奏、本当に無いですよ。
究極に突き詰めて聴けば、実は怖いぐらい研ぎ澄まされた演奏なんだけど、耳ざわりの良い、メロディアスでロマンティックな演奏&曲調から、(恐れ多くも)BGMとして聴いてもバッチリ、フィットするのも、ある意味不思議な感じです。

今夜はお疲れの諸氏に、このアルバムを捧げましょう!

アルバム・タイトル…ザ・ケルン・コンサート

パーソネル…キース・ジャレット(p)ソロ

曲目…1.ケルン、1975年1月24日パートⅠ(26:02)、2.ケルン、1975年1月24日パートⅡa(14:54)、3.ケルン、1975年1月24日パートⅡb(18:12)、4.ケルン、1975年1月24日パートⅡC(6:56)

録音1975年1月24日 ケルン、オペラ劇場にてライブ録音

原盤…ECM  発売…ポリドール㈱
CD番号…J33J-20185

演奏について…全体的な演奏についての印象、総評は、今日は冒頭の序説で結論を述べてしまったので、割愛させて頂こう。
それから、次に着目して頂きたいのが、この日演奏された曲名で、パートⅠとパートⅡの3部作の違いは有っても、曲名は全て「ケルン、1975~」である。
「キース・ジャレット」にとっては、ピアノ演奏のインプロビゼーション、即興が
全てあって、曲名などはどうでも良いことだと言うのが人目で理解できる。

さて、その演奏についてだが、個人的には、やはり一番有名で、長大な作品である「ケルン、1975年~パートⅠ」がお薦めであり、お気に入りである。
前半~中盤過ぎまで、とにかく、エモーショナルで、ロマンティックで、まるで恋愛物の映画音楽の様である。
いつまでも聴いていたい演奏&曲であり、このままずーっと終わらないで欲しいと思わず願いたくなる演奏である。
独身男性なら、彼女を部屋に招待した時に「決め」の1曲にしても良いと思う。
超ロマティックな、ジャズ・ソロ・ピアノ演奏…間違いなくセンス抜群な人だと認識してもらえるでしょう。
終盤は一転して、ポップス的で、早めのテンポ、リフレインを多くとって、アクティブなイメージで締め括る。
単語で言うなら、「ロマンス」&「アクティブ」でしょうか?

次いで、「パートⅡa」だが、この演奏&曲は、審美的で「ドビュッシー」をポピュラー化した様なイメージである。
とても高尚な感覚で、湖に落ちた一輪の花を起点として、水面に水輪が拡がって行く様なイメージをしてもらうと、感覚的に理解できると思う。
言葉なら、これはずばり「幻想」と「静寂」でしょう。

「パートⅡb」では、同じようなフレーズが、ほんの少しずつ変化を遂げるアドリブが展開される。
イメージを考えるなら、刻々と燃える、暖炉の炎かなぁ?
まぁ、炎の様に熱い感じではないけど、演奏&曲自体は、どちらかと言えばクールな感じなんだけど…。
火は同じように燃えてはいても、炎の形は微妙に違うし、燃えている木も、刻々と形を変える。
劇的に変わる訳ではないが、微妙に変化をしている。
火の燃え方も、段々強くなって行き、最後は消えて行く…その様な微妙な変化を表現した演奏なのです。
そして、「キース」の心はどんどんと深く奥底に入って行って、彼の深層心理は何を求めているのか?
しかし、曲の終盤では、明るめの曲調に変わってくるので、苦悩して考えた挙げ句に、前向きな結論に達したっていう感じなんだと思います。
生みの苦しみってやつかな?
単語で言うと、「輪廻」、「誕生」が相応しいでしょう。

ラストの「パートⅡC」ですが、この曲はコンサートのアンコールで弾かれた曲で…と言う事は、壮大な曲としては、「パートⅡb」までで終了しているんだね。
このアンコールの曲&演奏は、「パートⅠ」的な軽やかで、ロマンス溢れる佳曲で、「キース」がポップス曲的に仕上げています。
小さな滝から発生した水滴が、チョロチョロと注ぎ、やがてきれいな小川へと変わって行く…そんな感じがします。
単語なら、在り来たりですが、「希望」と「平和」と言うイメージでしょうか?

「キース・ジャレット」が、ライブで皆へ送った、ピアノと言う楽器を使っての究極の愛のメッセージを、是非、聴いて下さい。

心を浄化したい方に送ります…サンジェルマン・デ・プレ~ジョン・ルイス・ソロ・アット・チャーチ

2007-12-08 13:28:00 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日の2枚目ですが、「ジョン・ルイス」のソロ・アルバムを紹介しましょう。

「ジョン・ルイス」…ジャズ界ではMJQのリーダーにして、クラシックとしても「JS・バッハ」に造詣が深い、稀有なアーティスト。

このアルバムは「ルイス」が最も自己の概念を出し易い、ソロ・ピアノ演奏を教会にて録音した物であり、静かに聴いて?心を浄化させるには、丁度良いのではないでしょうか?

作品的には「ルイス」が傾倒している「JS・バッハ」風の曲から、良く知られたスタンダード曲ばかりで、そう言う面からも、とても聴き易いアルバムに仕上がっています。

アルバムタイトル…サンジェルマン・デ・プレ~ジョン・ルイス・ソロ・アット・チャーチ

アーティスト…ジョン・ルイス(p)

1990年9月 NY、アセンション教会にて録音

曲目…1.サンジェルマン・デ・プレ、2.オープニング・ビット、3.ダウン・トゥ・スペーズ、4.モーニング・イン・パリ、5.ミラノ、6.アフタヌーン・イン・パリ、7.ドント・ブレイム・ミー、8.ジェミナイ、9.ラウンド・ミッドナイト、10.ミッドナイト・イン・パリ

原盤…Polygram  発売…日本フォノグラム
CD番号…PHCE-5025

演奏について…1曲目「サンジェルマン~」…メロディが賛美歌の「もみの木」に似たフレーズの「ルイス」オリジナル曲ですが、展開部から非常にスウィング感溢れるジャジーな雰囲気の曲に変わって…この曲調の変化に趣が有ります。
いかにも「ルイス」らしい、バッハ風とブルース風の融合バランスが絶妙です。

2曲目「オープニング・ビッド」…これも「ルイス」オリジナル曲だが、「JS・バッハ」への畏敬の念が如実に感じ取れる名曲。
どこからどう聴いても、「JS・バッハ」の曲にしか聴こえない…ぐらい酷似している名旋律です。
しかし、只の「似非バッハ」では無くて、中間からジャジーな曲に変わって…※ジャズ・バッハ演奏に様変わりして…流石「ルイス」と思わせる説得力が有ります。
いずれにせよ、個人的には、アルバム中大のお気に入りの1曲です。

3曲目「ダウン・トゥ~」も「JS・バッハ」へ讃歌し、傾倒した1曲。
「インベンションとシンフォニア」調で、とてもクラシカルな曲に仕上がっています。
この曲もジャズ・バッハその物と言える、ジャズとクラシック(バッハ)の完全融合態ですね。

4曲目「モーニング・イン・パリ」…「ルイス」の曲では無いが、作曲者「デュハメル」が「シューマン」を彷彿させる曲だと言ったとか?
とにかく、非常に哀愁が有って、しかしセンチンタリズムにびっしりと染まってはいない、この寸止め?センスは素晴らしいです。
「ルイス」のピアニストとしての優れた部分を最高に発揮できる曲では無いでしょうか?
パリの朝は爽やかで清々しく、一寸ライトなお洒落感覚さが充分に表現されています。
「ルイス」も名旋律に乗って、気持ち良く弾き切ります。

5曲目「ミラノ」…原曲名は「ファッツ・ナヴァロ」から取った「ナヴァライズ」ですが、「ルイス」はとても鎮静的で知的な解釈の演奏で、この曲のナイーヴな面を前面に押し出して来ます。
本当にロマンティックで、心がとろけそうになります。
しかし、そこは曲がりなりにも?ジャズ・ピアニストであり、所々でラグ・タイム風やブルース・フィーリングが見え隠れする、テンポの変速や、フレーズを入れて遊び心を見せてくれます。

6曲目「アフタヌーン・イン~」は、「ルイス」作曲の、もはや古典的なスタンダードですが、この演奏は思い切りラグ・タイム調にアレンジ&デフォルメしていて、ピアノ演奏(編曲)の楽しさを見せ付けます。

7曲目「ドント・ブレイム~」では、「ルイス」がピアノ演奏に対する、多彩なヴァリエーションを駆使して曲を飾り付ける。

8曲目「ジェミナイ」…「ルイス」オリジナル作曲の、ブルース・チューンですが、流石に「ルイス」が弾くブルースだけに、土臭くは無くて、どこか都会的な風情が有る。

9曲目「ラウンド・ミッドナイト」…「ルイス」の先輩であり、ライバル?でもある「セロニアス・モンク」の超代表作だが、「ルイス」はこの曲がお気に入りらしく、度々取り上げて演奏をしている。
ここでは、寛いだ雰囲気で「モンク」の闇の世界をサラリと受け流す?
いや、原曲に敬意を表して、あえて辛辣には弾かなかったと見るべきだろう。
「モンク」としても、こう言うアッサリ系の「ラウンド・アバウト~」が有っても良いと感じるはずです。

ラスト「ミッドナイト・イン・パリ」…この曲も名曲ですね。
クラシカルさとジャジーな頃合の良い融合感が堪らない魅力です。
「ルイス」が両方のジャンルに精通していて、且つ両ジャンルとも優劣が付けられない程、愛しているのが再認識できます。
曲の緩急の付け方、装飾音譜の付け方、緩小節での情感の豊かさなど、最高です。

「ルイス」&「バッハ」&「ジャズ」万歳、万々歳!!

硬派の女流ピアニスト…大西順子~ビレッジ・バンガードⅡ

2007-11-15 23:36:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
女性ならではの繊細なタッチと表現力も勿論兼ね備えてはいるのだが、とにかくパーカッシブでパワフルな、敲くように弾き切るパワー系ピアニストが、今日紹介する「大西順子」である。

今をときめく「上原ひろみ」等よりも10年以上前に衝撃のデビューを果たし、一世を風靡した頃のアルバムがこれなんです。

ビレッジ・バンガードのパートⅠ演奏も良いんだけれど、あえてⅡを選んだのは、選曲の楽しさ、取分け日本人にしか弾けないであろう「りんご追分」のジャズ番が一番の聴き(弾き)所だと思うので、この曲が入っている事でしょうか。
それ以外にも「モンク」作曲の「ブリリアント・コーナーズ」や「ジジ・クライス」作曲のオープニング曲「ハウス・オブ・ブルーライツ」など、一癖も二癖も有る曲ばかりで、大いに興味を持ってしまいます。

是非「順子」のテクとスピリットを是非堪能して下さいませ。

アルバムタイトル…ビレッジ・バンガードⅡ

パーソネル…リーダー;大西順子
      レジナルド・ヴィール(b)
      ハーラン・ライリー(ds)

曲目…1.ハウス・オブ・ブルーライツ、2.ネヴァー・レット・ミー・ゴー、3.ブリリアント・コーナーズ、4.りんご追分、5.ティー・フォー・トゥー

1994年5月6日~8日 NYビレッジ・バンガードにてライヴ録音

原盤…somethin’else 5572  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5572

演奏について…冒頭で述べたが、このアルバム収録曲で、演奏の白眉は、ズバリ「りんご追分」です。
何故なら、この曲を題材として、原曲のメロディやスピリットを生かしつつ、しっかりとジャズ作品に仕上げられるのは、日本人ジャズ・メンしかいないし、取分け男性的にパワー系で弾ききれる「大西順子」にとって、非常に料理しがいの有る具財として申し分無い選曲だと言えるでしょう。
序奏からして非常に面白い導入がなされる。
「ライリー」の敲くメロディはラテン調のリズムなんだが、「ヴィール」はボウイングを絡めた珍しいリズムサポートを見せる。
大将の「大西」は、ここでもクラシック曲の様な、スケールの大きいゆとりあるアドリブ・ソロを魅せ付ける。
「りんご追分」と言う曲が、交響詩の様に聞こえる程、スケール・アップさせた解釈が趣深くて、良いんですよ。
雨だれが流れる様に聴かせるアドリブ・ソロは、まるで「ラフマニノフ」の前奏曲の様に…艶やかだが重厚な演奏なんです。
そして7分過ぎからのカデンツァに入ってからの「大西」はすごいの一言。
「ライリー」「ヴィール」とも煽ったか煽られたか?燃えるサイド・メンに変身して、一方の「大西」はガツンガツンと圧巻のソロを弾き捲る。
その後10分ぐらいで、またまた深い静寂が訪れる。…闇夜を縫って真夜中に聴こえるのは、重厚な「ヴィール」のベース音…まるでパワフルな「琵琶法師」が奏でているように不気味だ…。
「ジミー・ギャリソン」が後期の「コルトレーン・クインテット」で聞かせてくれる様な野太いサウンドでのソロ…最高に痺れますぜ!
その後は「ライリー」がとても空間的なアドリブ・ソロ…いやこれも「ドラム・カデンツァ」と言った方が良いぐらいの、圧倒的なアドリブに、雷を食らった様な衝撃的感動を味わえる。
このトリオ…本当に半端じゃねぇな。
最後はリズムは序奏通りラテン調だが、「大西」は、メロディに忠実に「りんご追分」を弾いて終わる…口笛ピューピューで、万歳!スタンディング・オベーション確実な名演ですね。

収録の1曲目「ザ・ハウス~」…前衛的な「大西」のアドリブ導入フレーズから、気持ちをグイッと惹かれる。
その後のメロディから、「大西」のセンシティブなソロ・トーンと迫力あるブロック・コードの硬軟取り混ぜた演奏と、「ライリー」の軽快なドラム&シンバル…そして「ヴィール」の実直なベースが三位一体となって、見事なピアノ・トリオ演奏として集結するんです。
中でも「大西」の縦横無尽に鍵盤を駆け抜け、且つ広大なシンフォニーを想像させる重厚なアドリブ・パート・ソロは最高の聴き所と言えるでしょう。

2曲目「ネヴァー・レット~」では、「大西」の静寂のピアニシモから序奏がなされる。
何か一寸「ドビュッシー」的な雰囲気で…アンニュイさも有って…この曲では、本当に女性美溢れる演奏が終始なされて、「大西」にもこう言うセンスと繊細さが有ったのか?(失礼!)と改めて、別の魅力を再発見したりなんか出来ますよ。
彼女のピアノを更に繊細にサポートする、「ライリー」の静かな静かなシンバル・ワークも良い味を出しています。
中盤以降では、「大西」は微音を上手く使いながらも、サロン的な小洒落たフレーズも織り交ぜて、この曲の繊細美を極限まで高めています。
さりげなく咲く「カスミソウ」の様な、可憐な1曲です。

3曲目「モンク」作曲の「ブリリアント・コーナーズ」…またまた「大西」から新たな魅力を発見!
でも、「モンク」の曲を弾く中では、逆に演奏が上手すぎるかも?
「大西」心はやっぱり「大西順子」だ!!
しかし、こう言うビルトオーゾの「モンク」も当然有りだろう。
中間からは「大西ワールド」へと、「モンク」の曲もステージを変えて、「大西」が自分の曲の様に消化した解釈で、この曲を料理する。
おかず満載のアドリブ・ソロをかます「ライリー」が、とても面白いですねぇ。
逆に「ヴィール」は、相変わらず実直に、とにかく真面目にベース・ラインを刻み続ける…この男、相当の堅物か、馬鹿が付くほど真面目なんだろうなぁっと思ったら、曲の7分過ぎからやってくれます。
「チェンバース」が乗り移ったかの様な、素晴らしい「ボウイング・ソロ」を思う存分弾き捲るんです。
やはり、奥の手を隠し持っていやがった。
こりゃ一本取られました。(大爆笑!)

寛ぎのフレンチ・エスプリ…パリ・ジャズ・ピアノ~ミシェル・ルグラン

2007-11-03 13:58:16 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
皆さん、こんにちわ。
ブログが余り更新出来ない、えりっく$Φです。ゴメンナサイ。

さて、今日は一見飛び切りお洒落なジャズ・ピアノ・トリオですが、良く聴くとかなりディープな奥深さが有るこのアルバムで行きましょう。

正統的な?ジャズ・ピアノ・トリオ好きな方からは、何かご意見を賜りそうな予感(悪寒・笑)がしますが…。

全曲、代名に「パリ」が付いている曲orパリの関する曲だけで、構成されており、演奏するのは、フランスの至宝「ミシェル・ルグラン」で、彼のとても若い頃に録音されたアルバムです。

アルバムタイトル…パリ・ジャズ・ピアノ

パーソネル…リーダー;ミシェル・ルグラン(p)
      ギ・ペデルセン(b)
      ガス・ウェイルズ(ds、bgo)

曲目…1.パリの橋の下、2.パリの夜もすがら、3.パリの四月、4.パリの空の下、5.パリ・カナイユ、6.我が愛するパリ、7.アイ・ラブ・パリ、8.ザ・ラスト・タイム・アイ・ソウ・パリ、9.ムーランルージュの歌、10.バラ色の人生

1959年10月~11月 パリにて録音

原盤…Emarcy  発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCM-4023

演奏について…全てパリ絡みの名曲ばかりで作られたアルバムなんですが、「ルグラン」の繊細でお洒落な表現が随所に散りばめられて、楽しめる演奏が目白押しです。

オープニングの「パリの橋の下」では、高速4ビートに乗せて、「ルグラン」が転がす様なシングルトーンを駆使して、縦横無尽に鍵盤を泳いでいるかの様な、お洒落な演奏がなされています。

2曲目「パリの夜もすがら」では、ブロック・コードとレガートを効果的に使って、明るく華やかな風情を感じる演奏です。
ブラシメインの「ウェイルズ」も品が良く、ベースの「ペデルセン」は、とても実直で手堅い演奏に終始しています。

3曲目「パリの四月」…多くのジャズ・メンが取り上げている、ジャズとしてもかなりのスタンダード曲でしょう。
※何と言っても「バド・パウエル」の名演がピカ1なんでしょうけど。
「ルグラン」は、情感たっぷりに、しつこくならないギリギリの線で、素晴らしい表現を見せる。
さすが、若いながらも、後に映画音楽のマエストロたる片鱗を見せ付けます。
とてもロマンティックで、上級の赤ワインの様な芳醇な演奏です。
アルバム1の演奏でしょう。

私の大大好きな4曲目「パリの空の下」…は、演奏は超一級の演奏なのですが、何故か2分弱くらいの極小の時間が悔しいんだなぁ。
このまま、あと5分くらいは聴きたい。
本当に聴きたい…「ルグラン」の意地悪うぅー。

5曲目「パリ・カナイユ」は、軽快なメロディに軽快なアドリブが、ピタッと決まります。

6曲目「我が愛するパリ」では、「ルグラン」が疾走するピアノ演奏と、「ウェイルズ」の超絶技巧のボンゴとのデュオ演奏が最高にカッコイイ。
まじ「ウェイルズ」のボンゴ…良いんですぅ。
アフリカン・ミュージシャンとか、ラテン系のミュージシャンが敲いているみたいです。
私は気に入りましたね。
このアルバム中、一番の「裏名演」でしょう。

7曲目「アイ・ラブ・パリ」もジャズ名演が多いですね。
ここでは、正しくフランス人による、フランス人のための、フランス人的ジャズ・ピアノ・トリオ演奏がなされております。

8曲目「ザ・ラスト~」は、「ルグラン」がかなりアドリブを活かした遊び心を入れた演奏をしてくれます。

9曲目「ムーラン・ルージュの歌」では、ベース「ペデルセン」のチョイ・ソロが有ったりして、このトリオも最高に乗って来たかな?って感じですね。

ラスト「バラ色の人生」…若い頃に弾いた演奏&アルバムなのに、何か人生を達観した様な平穏さがピアノに込められていて憎いね!
これがディープな部分の正体かな?
フランス人気質って…皮肉屋って言う学者さん、確かいたよね?

寛ぎのフレンチ・ジャズと言いましたが、お洒落で軽薄だけじゃない、隠れたエッセンスが曲中に収められているのが分かります。
面白いアルバムですね。

このアルバム&ジャケット良いべぇ?…エンジェル・アイズ~デューク・ピアソン

2007-10-27 18:41:17 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
まず、最初に一言、「パソコン環境復旧」しました。
皆様、長らくご迷惑をおかけして、すみませんでした。

結局、自分で埒が明かず、詳しい友人にやってもらいました。(トホホ。。。)
まぁ、治れば良いんです。
実はモデムの速度を速めただけなんだけど、設定がワイヤレス環境だったために、セキュリティが効いていて、中々インターネットにアクセス出来ない状況になっていました。

何とか出来る様になったので、まずは、めでたしめでたしです。

ところで、二日間、皆様のご期待に副えなかった?ので、今日は飛切りgoodなアルバム行っちゃいましょうかね?

多分、このブログを閲覧されている、常連さんには絶好球のアルバムの一つだと、自負していますよ。

まず、ジャケットですが、非常に魅惑的なラベンダー色一色に映える美人の写真がとにかく目を惹きますね。

それは…

アルバムタイトル…エンジェル・アイズ

パーソネル…リーダー;デューク・ピアソン(p)
      トーマス・ハワード(b)
      レックス・ハンフリーズ(ds)

曲目…1.バグス・グルーヴ、2.ル・カルーセル、3.エンジェル・アイズ、4.アイム・アン・オールド・カウ・ハンド、5.ジニー、6.セイ・ユア・マイン、7.エクソダス、8.ル・カルーセル(別テイク)、9.アイム・アン・オールド・カウ・ハンド(別テイク)、10.セイ・ユア・マイン(別テイク)
 
1961年8月1日、1962年1月12日

原盤…JAZZ LINE 発売…徳間ジャパン・コミュニケーションズ
CD番号…TKCB-71289

演奏について…まず、全体的に言えることだが、「ピアソン」らしい、マイナーメインのシングルトーンと、的確なブロック・コードで、どの曲も仕上げており、ピアノ・トリオ好きには堪らない魅力盤になっています。

オープニング「バグス・グルーヴ」…「マイルス」よりも更にあっさりした感じで、泥臭くない演奏ですね。
とてもお洒落なピアノ・トリオでの演奏に、この曲の新たな魅力が発見できます。

2曲目「ル・カルーセル」…私大好きなラテン・リズムで、ドラムス「ハンフリーズ」が大活躍!
「ピアソン」も、ノリの良いブロック・コードを頻繁に駆使して、気持ち良い一曲に仕上げています。

3曲目「エンジェル・アイズ」では、「ピアソン」の魅惑的なソロ・ピアノ演奏が最高の聴き物。
あまり、アドリブを弾いてはいませんが、逆にセンスが良く、本当にピアノの音が、天使の眼で見つめられている様に、貴方を誘惑しますよ。

4曲目「アイム・アン~」は、「ピアソン」が軽快に、そう、「ガーランド」に似た感じの、チョイ、ファンキーで、ビ・バップで、ジャズピアノの王道的な演奏が心地良いです。

5曲目「ジニー」…冒頭のメロディから、惹き付ける魅力のフレーズが連発されて、聴いていると、ついつい乗っちゃうね。
締ったベースの「ハワード」が、早めの4ビートでグイグイとドライヴィングして行って、「ハンフリーズ」のシンバル・ワークも、皆を煽るのに一役買っています。
3人が一体となった、ピアノ・トリオ演奏の規範の様な演奏ですね。

6曲目「セイ・ユア~」…この曲もテーマがマイナー調の佳曲で、冒頭の演奏から「ピアソン」のピアノの魔術に縛られる。
もはや、これはピアノ演奏と言うより、「呪縛」ですね。
この魅力的な「呪縛」からは、逃げようにも逃げられない。
美人の詐欺師に引っ掛けられて、散財する男の気持ちが分かるようです。
ここでのシングルトーンから繰り出される、さりげないアドリブ・ソロは……「ピアソン」の真髄です。
このアルバム中でベスト・トラックですね。

7曲目「エクソダス」…この曲も良いんです。
ベース「ハワード」がカチっと引き締まった、漢ベースでリズムを作り、「ピアソン」は、正反対に女性的な、控えめのシングルトーン演奏がおしとやかで良い。
この「ハワード」は、ベスト・プレイでしょう。

8曲目「ル・カルーセル」の別トラですが、こちらの演奏の方が「ハンフリーズ」のノリは良いようですが、「ピアソン」のリリカルさが、採用トラックよりは、少し欠けているかなぁって感じでしょうか。

9曲目「アイム・オン」の別トラ、10曲目「セイ・ユア~」の別トラとも、採用トラックと、それ程遜色は無いんですが、どちらも採用トラックに比べると、若干演奏が華美過ぎるかなぁって思いますね。
普通のジャズ・ピアニストが演奏しているのであれば、この演奏も最初からGOなんですけど、「ピアソン」のピアノ・トリオ演奏と言う事を考慮すると、ナイーヴさや、慎ましさや、リリカルさが、ファンキーやノリの中にも、スパイスとして、より効いている方のトラックを、優先させたのかもしれません。

ジャズ・ピアノとフラメンコ・ギターの出会いに…ミシェル・カミロ&トマティート~スペイン

2007-10-23 23:20:17 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日は、私の大好きなアルバムを紹介しましょう。
ジャズ・ピアノとフラメンコ・ギターの出会いに、何を思うでしょう。
何を聴くでしょう。
とにかく、素晴らしいんです。
ラテン好き、ジャズ好き、どちらかのジャンルが好きな方には、間違い無くお薦めできるアルバムです。
私にとっては、ど真中のストライク、所謂、ホームラン・ボール、絶好球です。

アルバムタイトル…スペイン

パーソネル…ミシェル・カミロ(p)
      トマティート(flamenco guitar)

曲目…1.スペイン・イントロ、2.スペイン、3.ベサメ・ムーチョ、4.わが息子ホセへ、5.「あなたに逢いたくて」より愛のテーマ、6.トロイとサルガンのために、7.ラ・ヴァシローナ、8.タンゴのムード

1999年8月 スタンフォード・キャリッジ・ハウス・スタジオにて録音

原盤…Verve  発売…ビクターエンターテインメント
CD番号…POCJ-1487

演奏について…まず、全部の曲が聴き応え充分であり、一つとて駄演は無い。
カリブの生んだ超絶技巧ピアニスト「ミシェル・カミロ」と、同じくフラメンコ・ギターの名人「トマティート」の奏でる音楽だけに、テクニックは言うに及ばず、情感、表現力も寸分の隙が無い。
ラテンの血が滾り、心も、演奏するお互いの運指も、全てが燃え上がっています。

まず、オープニング曲「スペイン・イントロ」は、言うなれば「アランフェス協奏曲」のメロディ演であり、この二人にとっては、正しくお手の物。
スペインの郷愁が、見事に表現されています。
ギター「トマティート」は、クラシックのスタンダードの様に弾き、オーケストラ・パートの部分を「カミロ」が華麗に、煌びやかに演奏するんです。

2曲目、タイトル曲の「スペイン」…「チック・コリア」の作品だが、見事にこの二人の掌中に曲が有ります。
高速調のリズムで曲は進むが、二人の高い演奏技術が、完璧なデュオ演奏として表裏一体の様に重なり合い、全く隙が有りません。
「カミロ」のペダルを随所に効果的に活かした音の広がりに、「トマティート」の締った、フラメンコ・ギターがペルシャ・ジュータンの様に紡がれます。
二人のアドリブ演奏、カデンツァのすごさに驚嘆します。
知情意全てのバランスも良い、超名演ですね。

3曲目「ベサメ・ムーチョ」…良いねぇ。
まず、序奏はラテン・メロディ、リズムながら、とても女性的だ。
まぁ、作曲者「ベラスケス」は女性なので、当然と言えば当然かもしれないが、ここで「トマティート」は、泣きのギター・ソロを展開し、「カミロ」は鍵盤の上から下まで全部使用したみたいに、ピアノの出せる音域を使いきって、泣きのギターを劇的に盛り上げる。
中間から、「カミロ」のアドリブに入るが、ここも女性的な可憐なピアノ・ソロで、この曲が愛らしさを、目一杯表現している。
最後の「トマティート」のギター・フレーズも、ごくスタンダードな解釈で、全く奇をてらってはいないが、そこがとても品が良く、聴かせ所になっています。
また、一つ「ベサメ・ムーチョ」の名演が完成したね。

4曲目「わが息子ホセへ」…ラテンの土着性を見事に演じきって、二人のパッションが燃える。
ギターのボディーを敲きながら、「トマティート」が、フラメンコ・ギターの真髄を見せれば、「カミロ」は割と低音重視の重厚な伴奏に務めて威厳を見せつける様に返す。
その後、「カミロ」が高音を華麗にさばき始めると、「トマティート」もギターを更にかき鳴らし、二人のバトルの様に、火花が散り演奏が進んでいく。
闘牛士の様な、熱い1曲です。

5曲目「あなたに逢いたくて~」…今までと一転して、静かな静かな1曲。
例の有名ドラマ「冬ソナ」に出て来そうな、透明感が有って、どちらかと言うと白いイメージの曲なんですが、ラテンなので寒々しくは無く、ほんのり温かい印象を持ちます。
しかし、何て優しいメロディに、優しい演奏なんでしょう。
このデュオ…激しいラテン気質丸出しの脳天気野郎達じゃないね。
こんな高貴なイマージの曲も、完全に自分達の物にしているんです。

6曲目「トロイとサルガンのために」…序奏は高速のボサ・ノヴァで始まり、その後、タンゴ風のリズムになると、「トマティート」、「カミロ」とも跳ねる様に、敲く様にパワフルに奏でる。
そして最後は、「トマティート」の哀愁タップリのソロに、重厚な「カミロ」の伴奏を絡ませながら、フィニッシュとなる。
緩急自在の「トマティート」のフラメンコ・ギターのバカテクに圧倒される事に異論は有りません。

7曲目「ラ・ヴァシローナ」…かなり早めのリズムに乗って、二人の紡ぐ音楽が目くるめく様に重なり合い、スーパー・デュオ演奏が形成される。
ここでは「カミロ」が、いつになくアグレッシブなピアノアドリブを決めてくる。
受ける「トマティート」は正しく、フラメンコ・ギターの王道的なソロを華麗に決め返します。
二人が洪水の様に、次々と魅惑的なアドリブを出してきて、ここでの音の絵巻は、本当にすごいんです。
演奏テクニックだけで言えば、いやスピリットを加味して、このアルバム屈指の名演と言えるでしょう。

8曲目「タンゴのムード」は、寛ぎ…うぅーん、どちらかと言うと哀愁のラテンかな?
「トマティート」のギター、「カミロ」のピアノとも、慈愛に溢れていて、聴いているだけで、うるうると来てしまう。
悲しいの?それとも優しいの?いや、両方なんだな。
優しすぎて、悲しくなる時ってあるよね?
幸せ過ぎて怖いって言うのも、ある意味同義語かなぁ?
曲の緩急の付け方、つまり劇的な表現が、嫌味にならないギリギリの線で演奏されていて、この辺りセンスと感性が抜群に良いんです。
ラストに相応しい演奏です。

カム・バックしたビ・バップ期の名ピアニスト…ドド・ママローサ~ドドズ・バック!

2007-10-10 21:59:33 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
本来ならば、「バド・パウエル」や「アル・ヘイグ」等と並び称される程の名ピアニストが、今日紹介する「ドド・ママローサ」なので有る。
しかしながら、「ママローサ」は、非常に過小評価されていて、この録音の後の消息も不明との事。
全盛期には、「チャーリー・パーカー」との共演も多数有り、加えてこの素晴らしい演奏(アルバム)を残したのに、評価されてないなんて…「信じられな~い!」

このアルバムを聴いて見ると、ピアノ・トリオ・バップの、極みの様な演奏が目白押しで、また、「ママローサ」の演奏テクニックも、実に素晴らしいんです。
機会があったら、是非聴く事、そして手に入れる事をお薦めします。

アルバムタイトル…ドドズ・バック!

パーソネル…リーダー;ドド・ママローサ(p)
      リチャード・エヴァンス(b)
      マーシャル・トンプソン(ds)

曲目…1.メロー・ムード、2.コテージ・フォー・セール、3.エイプリル・プレイド・ザ・フィドル、4.エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー、5.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート、6.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー?、7.アイ・ソート・アバウト・ユー、8.ミー・アンド・マイ・シャドウ、9.トレイシーズ・ブルース、10.ユー・コール・イット・マッドネス

1961年5月9日、10日

原盤…ARGOー4012  発売…ビクター・エンターテインメント
CD番号…MVCR-20057

演奏について…各曲の詳細を書いたのに、最後に今日も投稿ミスをしてしまった。
全部、記事が消失です。
しかし最近、体調が悪いのかなぁ?
こんな野暮な事が続くなんて…。
ですから、各曲の詳細を書くのは今回は諦めます。

「ドド・ママローサ」…「バド・パウエル」程、ぶっ飛びの天才では無いが、どちらかと言えば「レッド・ガーランド」に近い、ジャズ・ピアニストらしいミュージシャンなんですが、シングル・トーンとブロック・コードの配分、バランスがとても良いのが特徴です。

また、バラード演奏における表現が、甘すぎないで、「ビル・エヴァンス」の様な冷静さと知的さを見せ付ける部分が所々有るんです。

さて、全曲の解説はもう出来ないので、特に聴いて欲しい曲を記載しておきます。

まず、4曲目「エヴリシング~」の、スローな4ビートバラッドでの、甘過ぎない、しかしクール過ぎない、中庸のウェル・バランスのピアノ演奏…良いですよ。
こう言う演奏って、実は真の実力者しか、出来ない気がするんですよ。
「ドドママ」のバラードパフォーマンスの素晴らしさを堪能して下さい。

9曲目「トレイシーズ~」では、良い意味でも、或いは悪い意味でも?毒気が薄らいだ?「バド・パウエル」の全盛期の様な演奏がなされる。
「ドドママ」の演奏するピアノのタッチやアドリブのフレーズが、「パウエル」に良く似た感じなんですが、「バド」の様にぶっ飛んではいないんです。
また、バックの二人、ベース「エヴァンス」とドラムス「トンプソン」のアドリブ・パートも中々センスがあって、アルバム中での「トリオ演奏」としての完成度は、このトラックが一番高いと思います。

7曲目「アイ・ソート~」も4曲目と同様に、とても高貴な、甘ったるくはないけど、思索過ぎてもいない、絶妙なバランスの感じのピアノ演奏が聴けます。

2曲目「コテージ~」…「ドドママ」の人間的な寛大さ、懐の深さが垣間見れる、寛ぎのブルーズ・バラッド。
メロディの崩し方や間の置き方等、つまりアドリブのセンスが抜群でして、何か聴いているとジャズ・ピアノ演奏の規範って感じで、納得する演奏なんです。

5曲目「オン・グリーン~」の演奏は、「ガーランド」っぽい感じのノリが、聴いていて気持ちいい。
「ドドママ」が、ブロック・コードをガンガン弾いて、対抗する「エヴァンス」のベースもかなり高揚して、二人がバウトしております。
おかずを付けて、ラテン・リズムを刻む「トンプソン」の演奏も○です。


これ以外の曲も、goodな演奏が多いので、絶対に聴いて(買って)損はしないです。

またまたHIROMIです。…上原ひろみ~スパイラル

2007-09-29 17:07:51 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
いやー閲覧している皆さん、ごめんなさい。
今週は、「上原ひろみ」ウィークになってしまいました。
と言う訳で、今日も「上原」いっちゃいましょう。
ちなみに、CDの帯解説には、「元気が出るピアノ」と書いてありましたが、私の聴いた印象は、全然違います。
このアルバムの「上原」は非常にクラシカルで、知的で、どちらかと言うとオーソドックスな、ピアノ・トリオ演奏に従事しており、「元気なピアノ」と言うよりは、彼女には珍しく?、女性的で繊細なピアノ演奏です。
過去の巨匠で言うと、このアルバムの演奏は「ビル・エヴァンス」や「キース・ジャレット」に近い感じがします。

アルバムタイトル…スパイラル

パーソネル…リーダー;上原ひろみ(p、key)
      トニー・グレイ(b)
      マーティン・ヴァリホラ(ds)

曲目…1.スパイラル(ミュージック・フォー・スリー・ピース・オーケストラ)、2.オープン・ドア/チューニング/プロローグ、3.デジャ・ヴ、4.リヴァース、5.エッジ、6.古城~川のほとり~深い森の中、7.ラヴ・アンド・ラフター、8.リターン・オブ・カンフー・ワールド・チャンピオン、9.ビッグ・チル

2005年5月28日~31日 ナッシュビルにて録音

原盤…TELARC CDー83631 発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCTー1145 

演奏について…オープニングの1曲目「スパイラル~」は、物静かなシングルトーン、そう、ショパンのノクターンの様な雰囲気で序奏が始まり、あれ?いつもの「上原」と違うぞって、イメージを覆す入り方なんです。
その後、「上原」は、幻想的なアドリブ・ソロに入って、「グレイ」の重厚なベースの伴奏も的を射ていて、夢の中へと誘い、私は、益々幻想空間の渦(スパイラル)へと迷い込む。
淡々と同リズムでドラムを敲く「ヴァリホラ」が、迷いこんだ私の、唯一平常心を保つ支えとなっている。
その後の「上原」は、まんま「ビル・エヴァンス」が憑依した様な、知的でハイセンスのアドリブ・フレーズを弾きまくる。
ここからのソロは、まじに聴き惚れるほどの聴き所です。
1曲目から、いきなりミサイルをぶっぱなされた様な(名)演奏が来たっああ!!

2曲目「オープン・ドア~」では、ここでも曲の入り方が、ショパンの幻想曲の様で、とても美しい。
静寂の?ピアノ・トリオ演奏が、モノクローム映画の回想シーンの様に、心を揺さぶる。
「上原」のソロは、哀愁を帯びたロマンス溢れる名旋律を紡いで、私の魂を浄化させる。
中途から曲調が、メジャーへと移ると、そこから見えるのは明るい未来と希望か?
ここからのソロでは、「キース・ジャレット」が「上原」に憑依した様に、高音域を流麗に、品良く駆け巡る指先が奏でる音に、身も心も溶けそうだ。
1曲目と双璧の名演奏です。
このアルバム…全て「上原」のオリジナル曲で、スタート2曲で、正直タップしそうなくらいに、やられちまってる。
この女性(ヒト)恐るべきコンポーザーでも有る…。。

6曲目「古城~」…正しく題名通り、とても絵画的な1曲だが、非常にメロディアスながらも、テンポがミドル・ハイでかなり推進力が効いている。
やや、ラテン調のリズムも「上原」の推進力を煽り、ピアノ・トリオが疾走を始める。
3人とも、テクニック出しまくりの演奏には、もはやKO寸前です。
中間…多分題名からすると「川のほとり」のパートか?
流麗でスケールの大きいフォルテシモの「上原」と、非常に繊細で女性美煌めくピアニシモの「上原」の二面性アドリブ・ソロに圧倒される。
1&2曲目と御三家を形成する名演です。

3曲目「デジャ・ヴ」も静けさを活かした、ピアノ・トリオ演奏です。
ゲスト参加?のエレキ・ギターもうつろな夢空間を上手に演出している。
デジャ・ヴの記憶を呼び戻すのには、何が必要なのか?
「上原」のピアノがそれを模索して、記憶の間を行き来しているようだ。
題名に相応しい、不可思議な気持ちにさせられる1曲です。

4曲目「リヴァース」は、低音域を活かした重厚な作品で、音のマトリックスを見るようで、5曲目「エッジ」も同じく低音域を活かし、魂を揺さぶるハード・ボイルド・タッチの曲。
この2曲は、いつものぶっ飛び「上原」がリターンして来て、「上原」ファンにはスカッとする曲だろう。
「ヴァリホラ」のすごテクドラムの迫力も必聴物です。

8曲目「リターン~」は、「上原」のシンセ演奏で、4&5曲目同様、普段の彼女の得意なぶっ飛び演奏に戻るんです。
カンフーをイメージした、とても東洋的なメロディだが、この曲には確かに「上原」の「元気パワー」が全面に宿っている。
タイトなドラムスを演る「ヴァリホラ」が、宇宙空間的な「上原」ワールドと、現実の世界、つまり地上を唯一結んでいる。
宇宙まで飛んで行く蝶が、「ヴァリホラ」の花に最後は戻って来るんですよ。

日本盤CDのボーナス・トラックの9曲目「ビッグ・チル」は、正統的なブルーズ風ピアノ・トリオ演奏。
しかし、「上原」のピアノ(シンセ)の素晴らしさには、もはや解説は入らないと思うが、バックの二人も「上原」の意図を完全に理解していて、トリオが完璧に機能した演奏をしている所に感心させられる。
「グレイ」と「ヴァリホラ」は、もはや「上原・トリオ」に欠かせない、ベスト・マッチ・プレイヤーになっている。
      

帝王マイルスに多大な影響を与えた男…アーマッド・ジャマル~カウント・エム88

2007-09-01 23:55:26 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
かの、「マイルス」(キャノンボール)の枯葉のイントロは、「アーマッド・ジャマル」が弾いていたイントロを、「マイルス」が参考(拝借)した事は有名だが、
今日は、その「ジャマル」が初期に残した代表的なアルバムを紹介しましょう。

アルバムタイトル…カウント・エム88

パーソネル…リーダー;アーマッド・ジャマル(p)
      イスラエル・クロスビー(b)
      ウォルター・パーキンス(ds)

曲目…1.ヴォルガの舟乗り、2.グリーン・ドルフィン・ストリート、3.ハウ・アバウト・ユー、4.アイ・ジャスト・キャント・シー・フォー・ルッキン、5.スプリング・ウィル・ビー・アー・リトル・レイト・ディス・イヤー、6.ビート・アウト・ワン、7.マリアム、8.イージー・トゥ・リメンバー、9.ジム・ラヴ・スー

原盤…CHESS PRODUCING CORP? 発売…ユニバーサル・ビクター
CD番号…MVCJ-19181

1956年9月27日、10月4日 録音

演奏について…オープニングの「ヴォルガの舟乗り」…「エイコーラ」で有名な節(1小節)を、ラテン・リズムで演奏しているため、一聴するとチョット分かり難い所がミソですね。
しかし、良く聴くと繰り返し、「エイコーラ」を演っていて、オープニングに相応しい、とてもリラックスムードの、とても楽しい曲に仕上げています。

2曲目は、名曲「グリーン・ドルフィン・ストリート」…「レッド・ガーランド」が弾いていると錯覚しそうな、転がす様なシングル・トーンと的を射たブロック・コードを駆使して、「ジス・イズ・ピアノ・トリオ」の規範的な演奏がなされる。

3曲目「ハウ・アバウト・ユー」も2曲目と同様の演奏。
しかし、「ガーランド」は、我国で人気があり、とても評価されているのに、どうして「ジャマル」は過小評価されてしまったピアニストなんだろう。
こうして、聴いてみると日本人の琴線に触れる、素晴らしいアーティストである事が改めて分かる。
それから、バックの二人も「ジャマル」の考えを良く理解しており、ブラシをメインにセンス抜群のリズムを生む「パーキンス」と、ラインに忠実に、実直に伴奏をする「クロスビー」の二人は、「ジャマル」の良きサポーターになっていますね。

6曲目「ビート~」は、「ジャマル」のオリジナル曲で、高音域を活かした旋律と品の良いアドリブが、芳醇な香り漂う佳曲にしている。

7曲目「マリアム」も「ジャマル」の曲で、ここでは少しアンニュイな雰囲気の曲調で、しかしカデンツァに入ると、スローテンポながら鍵盤の全部を使用した様に、縦横無尽に駆け巡る指使いに、畏怖の念をを感じる。
「ジャマル」は、超絶技巧では無いが、ジャズ的技術(テク)は優れている。

8曲目「イージー~」も良いねぇ。
この曲では、「パーキンス」がアドリブソロを演奏しており、この演奏も中々上手く、聴き所になっている。
後半は「ジャマル」が木琴を敲く様に演奏する、一寸ラフなピアノタッチも個性的でgoodですね。

エンディング曲「ジム~」は、リズムをラテン調にして、オープニングのヴォルガと似せたコンセプトの演奏です。
アルバムの始まりと終わりを同じタッチにしていて、統一感を持たせている。
「ジャマル」はプロデューサー的な事も多分得意なんだろうなぁ。

センス抜群のピアノ・トリオ…スティーヴ・キューン・トリオ~ウェイヴズ

2007-08-27 23:57:26 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
初代、コルトレーン・カルテットのピアニストだった、「スティーヴ・キューン」の初リーダー作を紹介しましょう。
非常に知的で、センス抜群のこの1枚をご堪能あれ!!

アルバムタイトル…ウェイヴズ

パーソネル…リーダー;スティーヴ・キューン(p)
      スティーヴ・スワロー(b)
      ピート・ラロッカ(ds)

曲目…1.アイダ・ルピノ、2.アー・ムーア、3.トゥデイ・アイ・アム・ア・マン、4.メモリー、5.ホワイ・ディド・アイ・チューズ・ユー、6.スリー・ウェイヴズ、7.ネヴァー・レット・ミー・ゴー、8.ビッツ・アンド・ピーセス、9.コドピース

1966年録音

原盤…flying Dutchman? 発売…BMGファンハウス
CD番号…BVCJ-37094

演奏について…さて、お薦め曲だが、ピカ1は、表題曲「スリー・ウェイヴズ」
「キューン」の印象的なワルツリズムにて序奏が始まり、その後、「キューン」は、流麗なブロック・コードを湯水が如く降り注いで演奏する。
「ラロッカ」は、シンバルワークメインでリズム空間を司り、「スワロー」は、実直にタイムキープの職人に徹する。
しかし、中途からリズム二人の技巧高きソロが入るが、両名とも名うての名手だけに、「ブロック・コード・シャワー」を注ぐ「キューン」に一歩も引けをとってはいない。
非常なる名演奏だ。

次いで、好演奏の曲は、変則リズムでスタートしますが、「ビル・エヴァンス」が憑依した様な、とても知的で、ハイソサイエティなピアノ・アドリブ演奏がなされる3曲目「トゥデイ・アイ~」がとても素晴らしい出来栄えです。
「キューン」は攻撃的なコードをガンガンに弾きまくって、その後演奏される後半部分の「スワロー」の超絶技巧一発アドリブソロが、この曲最高の裏聴き所。

小曲ながら、ボサノヴァリズムで、寛ぎのピアノ・トリオが展開され、心から癒される5曲目「ホワイ・ディド~」は、個人的には一番のお気に入り。
「キューン」の華麗でセンチメンタルなシングルトーンが舞う。

7曲目「ネヴァー・レット~」もまじに良いんです。
ややスローテンポの4ビート(中途でリズムチェンジもあるんですが)だが、とても流麗なブロック・コードを、品良く散りばめて「キューン」がやってくれます。

8曲目「ビッツ~」は、「チック・コリア」的なピアノが、得意気に決まる演奏。
やや早めの曲調で、「キューン」はガツンと弾きまくる。
現代に蘇る「スクリャービン」の様な演奏です。
かなりアヴァンギャルドなソロワークだが、流石「キューン」…全く聴き苦しくは無い。
「スワロー」のハードなベースソロと、ラロッカの煽りシンバルも聴いて頂戴な!!!

ジャズ界の超新星、上原ひろみのセカンド・アルバム「ブレイン」

2007-08-26 23:11:56 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
いやー、すみません。
ここの所、仕事が忙しくお疲れモードなのにプラスして、テレビで、バレーとか水泳とか、世界陸上とかのスポーツや、近年話題作の映画、諸々が多くて、毎日見てしまって、ブログが更新し難くなってます。
それにも増して、仕事から帰って、夜中にパソコンに向かいっぱなしで、夫婦の会話も少なくなって、(妻)からも苦情が出ています。(苦笑)。。。

そんな訳で今後ブログを「毎日更新」して行くのは難しそうですが、出来るだけ頑張りますので、宜しくお願いします。

今日紹介のアルバムは、一寸前に話題になった名盤、新進の邦人女流ピアニスト、「上原ひろみ」のセカンドアルバムです。

アルバムタイトル…「ブレイン」

パーソネル…リーダー;上原ひろみ(p、keys)
      アンソニー・ジャクソン(b) ※2、5、8、9曲目
      トニー・グレイ(b) ※1、3、4、7曲目
      マーティン・ヴァリホラ(ds)

曲目…1.カンフー・ワールド・チャンピオン、2.イフ…、3.ウィンド・ソング、4.ブレイン、5.デザート・オン・ザ・ムーン、6.グリーン・ティー・ファーム、7.キートーク、8.レジェンド・オブ・ザ・パープル・ヴァレー、9.アナザー・マインド

2003年12月9日~11日 1~8曲 テネシー州「サウンド・キッチン」録音
2003年12月1日 大阪ブルーノートにて ライブ録音

原盤…TELARC CD-83600 販売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCTー1990

演奏について…圧倒的なパフォーマンスで、オープニング曲「カンフー・ワールド~」から演奏が始まる。
正統的?なピアノジャズを期待すると、アララと思うが、このハードなロック?フュージョン?いやー、「テクノ」演奏は悪くない。
ベースの「グレイ」の硬派な弾きっぷりがこのサウンド(演奏)の肝となり、ぐいぐいと引っ張る。
「上原」もハードなピアノから、前衛的なキーボードにチェンジし、カンフーの痛快さとスピード感を見事に表現している。
二人を繋ぎ合わせている、ドラムス「ヴァリホラ」の、空間を司るタイムキーピングとタイトなドラミングも抜群のテクニックで聴き物。

2曲目「イフ…」はがらりと変わって、ミドルテンポの正統的な4ビートジャズが展開される。
タイトに締まった音色で、スーパー・ベーシスト「アンソニー・ジャクソン」が、ガツッとカッコイイベースを決めて、「上原」はハイセンスなピアノアドリブを奏でる。
私、性差別などをするつもりは毛頭無いが、ここでのピアノも迫力満点で、マッチョな男性ピアニストが弾いている様な錯覚を起しそう。
繊細なシングルトーンと、マッシブなブロックコードの対比が良いねぇ。

3曲目「ウィンド・ソング」…曲調の最初のイメージは、「ジョージ・ウィンストン」か「加古隆」の、ロマンティックなピアノ演奏です。
「上原」は、ここではとても女性らしい繊細な演奏で、マッシブでパワフルなピアノを奏でるだけではない、演奏表現の多面性を見せつける。

4曲目、タイトル曲「ブレイン」…この曲こそ、「上原」が目指してしる音楽、「ジス・イズ・ワールド・オブ・ウエハラ」でしょう。
ドビュッシーの様な、印象派?のキーボードによる、不思議音楽から曲は始まる。
その後、エキゾチックなメロディ・テーマを、アコースティックピアノに変えて、素晴らしいアドリブソロで、変幻自在に展開して行く。
急速調の部分は、まるで「チック・コリア」の様な、超絶技巧で弾きまくる。
緩小節では、繊細に軽やかな美音で仕上げて行き、最後はまた冒頭の不思議音楽に戻ってフィニッシュとなる。
「上原ひろみ」…何と言う恐るべし、才能溢れるピアニストだろう。

5曲目「デザート・オン~」…個人的には4曲目と同率首位の名演奏だと思う。
ややハイテンポなチューンで、ピアノトリオの規範的な演奏がなされる。
ここでの「上原」は、仮想「ビル・エヴァンス」になって、ハイセンスのアドリブを縦横無人に弾きまくる。
当然、バックの二人、「ジャクソン」と「ヴァリホラ」も、仮想「エヴァンス・トリオ」の「ラファロ」と「モチアン」みたいに素晴らしいトリオ演奏をして、彼女を完璧にサポートする。
現代の「ザ・トリオ」の名演奏ですね。

6曲目「グリーン・ティー~」…この曲も「上原」の才能を見せ付ける1曲で、ロマンス・フィーリングが漂う、ピアノソロ曲です。

ハードなフィーリングのフュージョン系の7曲目「キートーク」、上品なフィーリングのピアノ・タッチで、トリオが渾然一体となる8曲目「レジェンド~」と、「上原」のピアノ・ワークも素晴らしいが、「グレイ」「ジャクソン」のそれぞれのベーシストの秀逸な演奏テクニックも最高レベルの演奏です。

日本盤にのみ収録された、ボーナス・トラック「アナザー・マインド」は、大阪ブルーノートでのライブ録音だが、「上原」は、ダークな音色のトリオ演奏が序奏でなされ、中途では、センチメンタルな叙情性たっぷりなアドリブソロを奏で、ライブ演奏が高揚を見せ始める。
ここから、「上原」はアバンギャルドな演奏を始めて、「ヴァリホラ」は、シャープで、飛び切りクールな感覚のドラムで皆を鼓舞し、「ジャクソン」も応えて、グイグイドライヴして行く。
見事なトリオ演奏が形成されてエンディングを迎える。

これは「上原ひろみ」の2枚目のアルバムだが、彼女の音楽的な懐の深さ、根底に持っている多種多様の音楽コンセプト、そして表現を可能にする確かなテクニックと、この後の演奏活動、アルバム制作について、大きな期待が持てるアーティストだと思う。
「上原ひろみ」…恐ろしいタレント(才能)のミュージシャンです。



知的なピアニスト、デューク・ピアソンのBNデビュー盤~プロフィール

2007-08-22 23:02:52 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
昨日は会社の仲間と飲み会がありまして、ブログ更新できずにすみませんでした。
と、言っても私下戸なので、コーラで付き合ってたんですが…。
さて、今日はブルーノートレーベルの中で、黒人なのですが、知性的なピアニスト、「デューク・ピアソン」のデビューアルバム「プロフィール」を紹介します。

非常に煌めいた音色のピアノで、それでいて、ビバップやファンク、ブルース、ラテンなどのエッセンスを散りばめながら、知的に奏でる「ピアソン」の魅力が満載の好アルバムです。

アルバムタイトル…プロフィール

パーソネル…リーダー;デューク・ピアソン(p)
      ジーン・テイラー(b)
      レックス・ハンフリーズ(ds)

曲目…1.ライク・サムワン・イン・ラヴ、2.ブラック・コーヒー、3.タブー、4.アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー、5.ゲイト・シティ・ブルース、6.トゥー・マイル・ラン、7.ウィッチクラフト

原盤…ブルーノート ST-84022 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4022

1959年10月29日録音

演奏について…一言で言うと、オープニング曲「ライク・サムワン~」から、エンディングの「ウィッチクラフト」まで、「ピアソン」の技巧とスピリットが充分に堪能できる、完成度の高いアルバムです。

まず、眼を引く?のは、あらら不思議リズムの3曲目「タブー」。
リズム二人が、変則的なラテンリズムで、序幕を開けると…そこに見えたのは…。
「ピアソン」が華麗に、そしてセンシティブにシングルトーンでアドリブを弾いている。
そして、この音、この雰囲気は、誰かに似ている。
そうだなぁ、そうだ「ジョン・ルイス」に似てるんだ。
知的ピアノの権化に似てるんだもの、このフレーズ、トーン…すごくセンス良いよね。
まじに「ミルト」のヴァイブ抜きの、MJトリオって感じで、私…この演奏大好きです。萌えぇですね。

4曲目「アイム・グラッド~」は、4ビートバラードで、取分けシングルトーンで「ピアソン」が、ロマンティックにじっくり聴かせる。
すごく女性的な、品のあるピアノだなぁ。
この人の技術とスピリットって、まじにすごいと思う。
いつまでも聴いていたい、「ピアソン」のポエムの世界…夢の中のコンサートです。

6曲目「トゥー・マイル~」は、「ピアソン」作曲の、ややアップテンポのマイナー・チューンで、いかにもブルーノートらしいサウンド(作り)だ。
「ピアソン」のファンキーで、バッピシュなアドリブソロも勿論買いだが、ウォーキング・ベースぶいぶいの「テイラー」と、アルバム中では最もエキサイティングなドラムソロを敲く、「ハンフリーズ」も、素晴らしい名演を繰り広げている。
このアルバムでのベスト演奏かなぁ。

5曲目「ゲイト・シティ・ブルース」では、「ピアソン」は、その名の通りブルージーにブロックコードで弾き上げて、「ピアソン」…こいつはとても器用なピアニストで、どのテンポ、楽曲でも変幻自在に同化し、上手に消化して行く。
バックの二人「テイラー」「ハンフリーズ」は、手堅く、しかし「ピアソン」をサイドからガッツリ固めた好サポート演奏です。

オープニング曲「ライク・サムワン~」では、4ビートからワルツへのリズム・チェンジなど「ピアソン」が、(デビュー作だと言うのに)のっけから、緊張することなく、早速やってくれてます。
流石、大物新人ですね。
そして、「ピアソン」の奏でるメロディは、とても叙情的で、キラキラ輝いていてピアノトリオの魅力を余すことなく、伝えてくれます。

2曲目「ブラック・コーヒー」…「ピアソン」は、「ペギー・リー」の超名盤をイメージさせる、アンニュイな雰囲気を上手に醸し出しているが、それ以上に目立つのは、ここではガッツリとした硬派なベースを弾く「テイラー」が主役でしょう。

エンディング「ウィッチクラフト」は、「ピアソン」の、転がす様な珠玉のシングルトーンに耳を奪われる。
「テイラー」のベースソロは心優しく、「ハンフリーズ」のリズムキーピングも寛ぎの塊りで、ハッピー・エンドでフィニッシュですよ。