紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1から続き。

2008-06-16 11:10:28 | ジャズ・ベース
長らくブログ更新せずにすみませんでした。
一寸、家庭の事情と、昨日までの仕事の関係で…書けなかったんです。

まぁ、愚痴と言い訳は良く有りませんので、それでは、前回からの続きで、「ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1」の詳細について書いて行きましょう。

まず、「ミンガス」のメンバー紹介から、ライブがスタートする。
序奏はお馴染みの「フォーバス知事の寓話」のテーマがメンバー全員で奏でられる。
その後、「クリフォード・ジョーダン」が、かなり叙情的なテナー・アドリブを演ってくれますが、それに合わせる「ドルフィー」は、ちょっぴり前衛的なフレーズで、煽ってきます。
リズム・セクションは変則的なドラム・リズムを刻む「ダニー・リッチモンド」、ブ厚いベースで皆をリードする、リーダー「チャールス・ミンガス」、そして「バイアード」は、インテリジェックな和音でスパイスを効かせる。

さて、序盤は先ほどの「ジョーダン」が、叙情的なフレーズから、徐々にアグレッシブに変貌を遂げて行って、スピーディにぶっ飛ばし始める。
そうすると、それ以上に「ミンガス」が、更にベースで煽り捲くって、益々「クリフォード・ジョーダン」をファイトさせて行くんです。
「ジョーダン」は止め処なく、めくるめく素晴らしいアドリブ演奏を連発して、大将に応えます。
その後は「ジャッキー・バイアード」のソロにチェンジして、ここで曲調が、静かでクールでロマンティックに激変するのが面白い。
「バイアード」は、とてもお上品なピアノを弾くので、「ミンガス・サウンド」とは対極的だが、逆に(自分に無い部分の)ここが「ミンガス」の気に入っていた一つのファクターかなと思う。
彼が入る事によって、ものすごい効果を上げている事は確かな様です。
中間部のカデンツァで「きらきら星変奏曲」をチョイ弾きする所なんかもお洒落~って感じがします。
その後急にまた、急速調に…そこここでブギウギ風なリズムで遊び心を出しながら曲調とスピードを変えて、変化を楽しんで行きます。

その次には大将自らがソロの番になって、激しい怒り親父だけでない、非常にウィットに富んだ…或いは楽しみながらのベース・メロディを演って、「ミンガス」と言う漢の引き出しの多さが良く判ります。
何と「子馬はみんなポッポコ…」等と言う童謡のメロディを弾いたりするので、聴衆は皆笑いの渦に入ったりなんかして…この親父、お笑いの才能も持っているね!(笑)
しかし、それからまたすぐに、頑固親父に逆戻りして、ハード・プレイのベース演奏に戻します。

さて、これから真打登場で、お得意のバス・クラリネットを引提げて、アヴァンギャルドなソロで決めます。
ソロに入って直に、「ミンガス」とのデュオ演奏になるんですが、「ドルフィー」はじっくりと且つ過激にソロを演ると、受ける「ミンガス」の弾くベース曲は、名作「メキシコの思い出」の名作「イザベルズ・テーブル・ダンス」のベース・ラインを刻んでいるんです。
判る人は嬉しいねぇ~判らない人は、私がかつて紹介しているので、それをご参考にして下さい。
その後、全員が絡んで来て、段々クライマックスに近づいて来ます。
「ドルフィー」のバス・クラリネットは地を割き、空も切り裂きます。
大人しいはずの「バイアード」も過激なブロック・コードを叩きますし、「ジョーダン」はブリリアントにサイド演奏で盛り上げます。
この音の洪水はド迫力ですね。
しかし、ここで演奏はフィニッシュとはなりません。
ラストはもう一度「ミンガス」と「ドルフィー」のデュオ・バトル…いや、過激なハーモニーと言った方が良いかもしれません。
二人が織り成す、緊張感びんびんの、このデュエット演奏は、ジャズ史上に残る名演奏の一つでしょう。
「エリック・ドルフィー」と「チャールス・ミンガス」…師匠と弟子と言う関係でなく、ここでなされている演奏は、正しく天才同士の究極のバトル演奏です。
ラストはもう一度、全員で「フォーバス~」のテーマ・メロディに戻って、気持ち良いフィニッシュをします。
万歳!万歳!!!万万歳!!!!!

2曲目スターティング」…「エリック・ドルフィー」のオリジナル曲で、オープニング「フォーバス知事~」からの流れで、こうなったのかは知りませんが、またまた二人のデュオ演奏がなされます。
ここでは「ドルフィー」は、フルートを駆使して、「ミンガス」も、とても渋くて大人のベース演奏を演って、「ドルフィー」の幻想的に美しいフルート演奏を際立たせます。
とにかく、きれいな演奏で、過激なコンボ軍団において、コンサートでは一服の清涼剤的な役割を果たしている曲&演奏です。
心が洗われますよ。

ラストは「メディテーションズ」…とても判り易いワルツ・リズムでのテーマで、何かワクワクさせる様な、映画のオープニング曲に似た感じがします。
ビッグ・バンド・ジャズ的なアレンジで序奏はなされますが、「ドルフィー」がユニゾンはフルート演奏で曲を飾りつけ、ソロに入ると、バス・クラリネットに持ち替えて、またまたアグレシッブ且つメロディアスで、更に付け加えると、ジョークも混ぜた、楽しいソロを演るんです。
「ドルフィー」も引き出しが多いミュージシャンなんですね。
その後の「クリフォード・ジョーダン」のソロも頑張ってます。
天才「ドルフィー」とは真っ向勝負は避けて、「ジョーダン」らしい歌心溢れるシンプルなソロで終始決めてきます。
こう言う所は逆に男らしさを感じますね。
己の力を冷静に分析し、やれるべき最善の方法を選んで演ってくれるんですから。
「リッチモンド」は、ガンガンにガツンガツンと、激しいドラミングで、相当いきり立った感じが有りますが、「ミンガス」は割と冷静に、渋い実直なベース演奏で皆を見守ります。
「バイアード」もアグレッシブなブロック・コードで、ガンガン突き進んで行って、皆を高揚させるのに一役買ってます。
しかして、曲は一旦、静かなテーマ・メロディに戻ります。
「ミンガス」はワン・ポイントでボウイングに切り替えて、情感たっぷりにベースを弾き、それを受けて「バイアード」も「ドビュッシー」のピアノ曲の様に、神秘的で、知的なピアノ演奏へと切り替えます。
ここで弾かれる「ミンガス」のベース・ソロは…とても物悲しくて、切なくて、「バイアード」のピアノも半端なく、美しいんです。
ここで演られている音楽(ジャズ)は、このコンボが過激なジャズ・テロリスト集団ではなく、真の芸術集団である事が非常に良く判るトラックなんです。
それから、演られている演奏が静かで知的ではあるけれども、そこに存在する緊張感たるや、恐ろしい程に空気が張り詰めていて、畏怖さえ感じます。
以前紹介した「アストル・ピアソラ」の様に…クラシックの現代曲にさえ思えるんですよ。
エンディングは「バイアード」のピアノに導かれて、全員で一発ユニゾンでフィニッシュします。

間違いなく感動するライブ・アルバムです。


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