紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

続き…ヴィレッジ・ゲートのクリス・コナー

2008-05-14 20:58:33 | ジャズ・ヴォーカル
さて、それでは、この歌手&バック・ミュージシャン、演奏曲、と3拍子揃った名アルバムの解説をして行きましょう。

ところで、実は…以前も言い訳じみた事を書いてお叱りを頂いた事が有るのですが、昨日このアルバムの記事を書いていたら…???久しぶりに投稿保存をしていなくて、記事を消失してしまいました。(涙)(涙)

私のブログ…記事を書き続けて20分ぐらいした時、一時保存しないと…駄目なんですね!
何回もこんなことやってたらいかんですねぇ!

さて、1曲目「ロット・オブ・リヴィン~」…オープニング曲に相応しく「クリス・コナー」が、とにかく元気良く歌い上げるナンバーで、曲間の「ロニー・ボール」のブギ・ウギピアノが、更に元気さを加速させます。

2曲目「エニープレイス・アイ・ハング~」…「クリス・コナー」のスキャット入りのディープなナンバーで、「ショーネシー」の繊細なドラミングと、「ロニー・ボール」の明るめのブロック・トーンが上手く絡み合って、goodです。
「マンデル・ロウ」の渋いギターも○です。
「クリス」は、とにかく歌詞を大事に、且つシャウトも入れて、完璧な歌唱をします。

3曲目「オール・オア・ナッシング・アット・オール」…私、個人的に大好きな曲ですが、「ショーネシー」のご機嫌なラテン・ドラミングに乗って、「ロニー・ボール」もラテン・ピアノで「クリス」の名唱を飾り立てます。
中間からは「マンデル・ロウ」の技巧高き伴奏ソロも突き抜けて来るし、「リチャード・デイヴィス」の重厚なベース演奏もハイになってくる。
「クリス」の歌も益々冴え渡り、ここに又、名唱が生まれました。

4曲目「サムシング・カミング」…「ロニー・ボール」、「マンデル・ロウ」とも急速調の演奏で序奏し、その後の「デイヴィス」のぶっといベース一発で、更に疾走系のナッバーに仕上げて行く。
その後、曲調が一転して「クリス・コナー」がじっくり情感たっぷりに、ハスキー・ヴォイスで歌い込む。
そして、もう一度曲調が疾走をして、フィニッシュへと導いて行く。
とにかく、劇的で、「クリス」の唱とバック・メンバーの素晴らしい技巧が堪能出切る逸品です。
このアルバム中でも屈指の出来栄えです。

5曲目「セントルイスからはるばると」…古きロックンロール調で、楽しいナンバーで、「クリス」はこう言うポップス曲を歌わせても、抜群に上手い…って当たり前か?
白人ジャズ歌手として、最高峰に位置する人(シンガー)だもん、ポップス曲なんてお手の物ですよねぇ?

6曲目「オ-ルド・デヴィル・ムーン」…「リチャード・デイヴィス」の地鳴りベースと「ショーネシー」のセンシティブなリズムから序奏が始まり、「クリス」が余裕と一寸遊び心を出した歌で、ややラフに仕上げています。
勿論、ラフって言うのはワザとで、「クリス・コナー」流の計算が有っての事でしょう。
ライヴ客を飽きさせないように、各歌に(歌い方)の変化を付けているんですね。

7曲目「あなたに夢中」…この曲では「クリス・コナー」は大人歌いをして、じっくり聴かせる。
バックでは特に「マンデル・ロウ」のギターが冴えてる。
大人の歌唱に対する大人の伴奏です。
勿論、「ロニー・ボール」の煌くピアノも良いし、ラテン・リズムで遊ぶ「ショーネシー」も上手いです。

8曲目「ブラック・コーヒー」…ジャズ歌手が登らなければならないエヴェレスト曲の一つがこれでょう。
「クリス・コナー」は敢えて正面から登山はしないで、アンニュイでけだるい、あばずれ女で攻撃する。
勿論、これも彼女の計算に則ってのことで、この曲は投げやり風の歌唱がピッタリ来ると判断しての所業でしょう。
彼女のアンニュイさにピッタリ寄りそう様に伴奏を仕上げる「ロニー・ボール」のピアノ演奏と、「リチャード・デイヴィス」の硬派なベース演奏に痺れます。

9曲目「グッドバイ」…この曲もじんわり…じっくり「クリス」が歌い込む。
ここでも「デイヴィス」のぶんぶんのブ厚いベース演奏が、ガッツリと彼女を包み込んで、曲の格調を上げている。
「リチャード・デイヴィス」…まじで寡黙で大きな仕事を平然と演ってのける漢です。
男の中の男(漢)ですねぇ!!

10曲目「オンリー・ザ・ロンリー」…「グッドバイ」に続いて「デイヴィス」が男気満開で、ベースで燃えます。
とにかく渋くてカッコイイし、この後の「クリス」の名唱を予感させる導入です。
逆に「ロニー・ボール」は、華麗に女性的に伴奏を仕上げて行って…「クリス」の歌唱を美しくサポートします。
「クリス」は一言一言を大事に丁寧に歌い上げて、この二人の芸術性に応えます。
ラストの「マンデル・ロウ」の一発ソロも素敵で、「クリス」とバック・カルテットの5人がとても高い打点で融合が計られた名唱、名演で、このアルバム、ベスト1でしょう。

11曲目「10セントひと踊り」…この曲も「クリス」がじっくり歌い上げて、ここでは「マンデル・ロウ」と「デイヴィス」の伴奏が行けてます。
そしてラストになると「クリス・コナー」が、ここぞとばかり絶唱で〆て、このグレートなライヴ・アルバムを締めくくるんです。

冒頭に言った通り、「クリス・コナー」(歌手)と言う名歌手と、ソロでも充分行ける、名人バック・ミュージシャン4人ががっぷり4つに組んだ、音楽の総合芸術が、高いステージで結合した名盤です。

難点は唯一点…録音が悪い事…これだけです。
もう少し録音が良ければ、コンプリートな1枚だったのが…一寸残念です。
でも、多くの人に聴いて欲しいですね。

ライヴで魅せる…ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー

2008-05-12 23:23:19 | ジャズ・ヴォーカル
比較的小編成のコンボ(メンバーは相当強力ですよ!)をバックに、「クリス・コナー」が、パワフルに、伸びやかに、良く知られたスタンダード曲をメインに歌い上げた録音が、今日紹介するこのライヴ・アルバムです。

ライヴ故に、録音が余り良くないのが難点ですが、歌、曲、バックの演奏と…高水準でパーフォーマンスがなされており、聴き応え充分な名盤ですので、是非お楽しみ下さい。

アルバムタイトル…ヴィレッジ・ゲイトのクリス・コナー

パーソネル…クリス・コナー(vo)
      ロニー・ボール(p)
      マンデル・ロウ(g)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エド・ショーネシー(ds)

曲目…1.ロット・オブ・リヴィン・トゥ・ドゥ、2.エニープレイス・アイ・ハング・マイ・ハット・イズ・ホーム、3.オール・オア・ナッシング・アット・オール、4.サムシング・カミング、5.セントルイスからはるばると、6.オールド・デヴィル・ムーン、7.あなたに夢中、8.ブラック・コーヒー、9.グッドバイ、10.オンリー・ザ・ロンリー、11.10セントひと踊り

1963年 ヴィレッジ・ゲイトにてライヴ録音

原盤…ROULETTE  発売…日本コロムビア
CD番号…30CY-1433

演奏・歌について…とにかく「クリス・コナー」のジャジーで、抜群に上手い歌唱力による歌もともかく、バックの名人たちの演奏にも耳が必ず行ってしまいます。
そんな訳で詳細はまた明日以降と言うことで…。。。

エラ・フィッツジェラルド~ジ・アーヴィング・バーリン・ソングブック・vol.1

2008-03-22 10:22:51 | ジャズ・ヴォーカル
みなさん、お早うございます。
今日は、「エラ・フィッツジェラルド」の定評あるソングブック・シリーズから、「アーヴィング・バーリン」のソングブックを取上げましょう。

「エラ」の歌については、今さら詳細は不要でしょう。

今日はこれぞアメリカ、これぞジャズ・ヴォーカルの醍醐味を味わって下さい。

アルバムタイトル…ジ・アーヴィング・バーリン・ソングブック・vol.1

パーソネル…エラ・フィッツジェラルド(vo)
      ポール・ウェストン(arr、cond)
      ハリー・エディソン(tp)
      他

曲目…1.レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス、2.ユー・アー・ラフィング・アット・ミー、3.レット・ユア・セルフ・ゴー、4.ユー・キャン・ハヴ・ヒム、5.ロシアの子守唄、6.プッティン・オン・ザ・リッツ、7.ゲット・ジー・ビハインド・ミー・サタン、8.アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド、9.トップ・ハット・タイ・アンド・テイルズ、10.ハウ・アバウト・ミー、11.チーク・トゥ・チーク、12.アイ・ユースト・トゥ・ビー・カラー・ブラインド、13.レイジー、14.愛は海よりも、15.オール・バイ・マイセルフ、16.リメンバー

1958年3月13、14日、17日~19日 LA、ラジオ・レコーダーズ録音

原盤…Verve 発売…ポリドール
CD番号…POCJ-2145

曲(歌)について…1曲目「レッツ・フェイス~」…オープニングから「エラ」の世界に一気に突入。
歌の上手さは、説明不要、バックのブラス&オケを従えて、50年代の良きアメリカを演出する。
「エラ」のマイナー・ポップ・チューンの歌い上げは、いつ聴いても良いですね。

2曲目「ユー・アー・ラフィング~」…「エラ」が、ここではバラードをしっとりと歌い上げて、ストリングスのオケとの相性もバッチリです。
終盤のトロンボーンのソロも歌心に溢れていて…ワンポイントになってます。

3曲目「レット・ユア・セルフ・ゴー」…この曲は軽快なスウィンギー・ナンバーですけど、「エラ」の歌はもとよりトランペット「ハリー・エディソン」との掛け合いも聴き所の一つです。

4曲目「ユー・キャン・ハヴ・ヒム」…ピアノ・トリオ・プラス・ホーンがバックで、ミディアム・テンポで、情感たっぷりに「エラ」が歌い上げてくれます。

5曲目「ロシアの子守唄」…短曲なんですが、このアルバムで「エラ」の歌の中で白眉の一つです。
ヴァイオリン&ピアノの少ない編成を最大限に活かして、「エラ」がハミングを用いながら、エモーショナルに決めます。

6曲目「プッティン・オン・ザ・リッツ」…この曲は1曲目に近い、ビッグ・バンドをバックに「エラ」が気持ち良く伸びやかに歌う、ゴージャスな1曲です。

7曲目「ゲット・ジー・ビハインド~」…「エラ」がキュートに、女心を純真に歌い込めて…夢見心地のサウンドと歌に仕上がっています。

8曲目「アレクサンダーズ・ラグ・タイム・バンド」…「エラ」がファニー&遊び心十分に…時にはわざと投げやりに歌う楽しいナンバーで、「バーリン」が初期に書いたヒット曲です。

9曲目「トップ・ハット・ホワイト~」…「フレッド・アステア」十八番の曲ですが、「エラ」も負けじと、とてもスウィンギーに、軽快に歌います。
「エラ」は不思議とアメリカン・ミュージカル風な曲にもマッチするんですね。

10曲目「ハウ・アバウト・ミー」…「バーリン」の作品の中で、あまり有名ではないとの事ですが、ピアノ伴奏をメインに、「エラ」が、しっとりと歌うバラードには、思わず耳を奪われるgood jobです。
個人的には、「ロシアの子守唄」と匹敵する名唱にあげたいです。

11曲目「チーク・トゥ・チーク」…言わずと知れた「バーリン」の代表作の一つですが、「エラ」は軽快に、そしてパワフルに、名曲を見事にさばいています。
ヴィブラートや歌の節回し、表現力のどれをとってもパーフェクトな歌い方で、流石のパフォーマンスですね。
アルバム中、アップ・テンポ系の曲では、ベストな1曲だと思います。

12曲目「アイ・ユースト・トゥ~」…ライトな感覚のバラード・チューンで、「エラ」もしっとり感を失くさずに…しかし、割と軽めに歌い上げてくれて…センスが良いですね。
「エディソン」のトランペット伴奏も行けてます。

13曲目「レイジー」…この曲も軽めのバラッドで、12曲目と同様のコンセプトで「エラ」がハイ・センスに仕上げてくれます。

14曲目「愛は海よりも」…この曲も名曲ですね。
いや、それにも増して、「エラ」の歌が良いんですぅ。
まじにしっとりと聴かす大人の女性のバラードに、胸を揺さぶられます。
中盤のテナー・サックスの色香ぷんぷんの名演も、見事に「エラ」の歌に彩を副えてくれて…最高のパフォーマンスの1曲です。
気持ち良い~!!

15曲目「オール・バイ・マイセルフ」…元来暗い歌詞の内容の歌らしいのですが、「エラ」はさっぱりとライトに歌います。
確かにポジティブな「エラ」には、泣きの歌は似合いませんね。

ラスト「リメンバー」…ラストを〆るのに相応しいお休み?調の歌に仕上げています。
オルゴールを使った「ウェストン」の編曲センスもキラリと光り、終盤ではビッグ・バンドにチェンジして、ゴージャスに変えて行って…フィナーレになるんです。

最後に…このアルバムは、「エラ・フィッツジェラルド」と言う歌手の、ポジティブな魅力が満載の楽しいアルバムです。
是非、聴いてみて下さい。

ピアノ弾き語りの女性ジャズヴォーカル、かつての幻の名盤…ビストロ・バラッズ~オードリー・モリス

2008-02-07 23:06:13 | ジャズ・ヴォーカル
このセンセーショナルなジャケット・デザイン…見ていて衝撃を受けますね。
そして、このジャズ・ヴォーカル・アルバム…かつては、幻の名盤でした。
何せ、女性自身がピアノを弾き語り、しっとりと落ち着きの有る歌い方で、バラッドで通すアルバムなんて、滅多に有る物じゃないです。

今日は「オードリー・モリス」のこのアルバムで酔って下さい。

アルバムタイトル…ビストロ・バラッズ

パーソネル…オードリー・モリス(vo、p)
      ジョニー・ペイト(b)
      チャールス・ウォルトン(シンバル)

曲目…1.ノーバディズ・ハート・ビロングス・トゥ・ミー、2.ホエア・アー・ユー、3.グッド・モーニング・ハートエイク、4.カム・イン・アウト・オブ・ザ・レイン、5.スウィート・ウィリアム、6.ブラー・ブラー・ブラー、7.ゲス・フー・アイ・ソウ・トゥデイ、8.涙のかわくまで、9.エイプリル・フール、10.恋の終り 

録音…MONO 

原盤…X LXAー1028  発売…BMGビクター
CD番号…BVCJ-7374

演奏について…1曲目「ノーバディズ・ハート~」…「オードリー」が弾くピアノの調べに、語り的な優しい歌声が乗り、寛ぎと格調の高さを兼ね備えた、名唱・名演…硬派のジャズとは一線を画する、余裕と平和?のジャズ・ヴォーカル。
クラブ(ビストロ)で、白人美人が語りかけてくる、チョイ・エロ・カワの歌です。

2曲目「ホエア・アー・ユー」…「オードリー」の歌は、べらぼうに歌が上手いと言うわけでは無い。
しかし、味わいと、ほんのりの色香が有って、聴く者を癒してくれる。
彼女をサポートする、ベーシスト、「ジョニー・ペイト」の渋いベース演奏が、この歌の品格を上げる。

3曲目「グッド・モーニング・ハートエイク」…「ビリー・ホリデイ」の名唱が有名ですが、この「オードリー」の歌も、元祖に匹敵する演奏&歌です。
彼女のピアノ・ソロ・パートも有り、ややマイナー・チューンのメロディに、少し幻想がかったピアノ伴奏…クラシックで言うと「ドビュッシー」の様な雰囲気が感じられて…とても趣深いトラックになった。
個人的には、アルバム・ナンバー1の演奏・歌と位置づけたい。

4曲目「カム・レイン~」…あまり有名な曲では無いとの事だが、アルバム収録中、上位に来る演奏・歌だと思う。
ほんとにしっとりと「オードリー」が歌い上げて…大人の女性のラヴ・バラッドの真髄が分る演奏です。

5曲目「スウィート・ウィリアム」…この曲も「オードリー」がじわっと味わい深く、ピアノ演奏と語りヴォーカルを決めてくれます。
ピアノ・ソロのパートは、とてもロマンティックで…白衣の天使に見舞われている様な、優しさ溢れる歌声が…気持ち良い~!!

6曲目「ブラー・ブラー・ブラー」…ブラー~が続けて発音すると、何故かラヴ・ラヴ~っと言う具合に聴こえる、楽しいナンバーです。

7曲目「ゲス・フー~」…アルバム中、最も語り調、つまり耳元で語る感じの曲で、これが一番の女性ヴォーカルの醍醐味ですよね。
とても可愛らしい曲&歌です。

8曲目「涙のかわくまで」…結構、ジャズの中では名曲なんですが、「オードリー」の歌、ピアノ伴奏、そして「ペイト」のベースとの三位一体(ニ位一体?が正しいか?)で、それぞれが見事な融合を見せます。

9曲目「エイプリル・フール」…エイプリル・フール…女に冗談で騙される…いやぁ男って馬鹿だねぇ!
でも、でも…騙されたと分っていても、それでも(あえて)騙されて見たいんですよ。
男は単純…男は正直…女性の方が全てにおいて、1枚も2枚も、いや30枚ぐらい上でしょう。
この「オードリー」のバラッドには…嘘が有るのかなぁ???

10曲目「恋の終り」…とても乗りの良い「オードリー」のピアノが、彼女自身のヴォーカルを自ら好アシストしていて…実に良い仕事をしてくれます。
正にピアノ弾き語りの規範的な演奏&歌であり、後半(LPで言えばB面)の中では、ベスト・チューンだと思います。

今宵はハイ・センスで、しっとりの弾き語り…女性ヴォーカル・アルバムで寝心地良いですよ!!

このヴォーカル・アルバムはすごい!屈指の名盤だ!…カサンドラ・ウィルソン~ニュー・ムーン・ドーター

2008-01-27 13:04:51 | ジャズ・ヴォーカル
この、アルバムは、ジャズ・ヴォーカル・アルバムの中でも、群を抜くクールさと、(器楽的な)ジャジーさが魅力です。
普通は、ジャズ・ヴォーカル・アルバムで、緊張感を覚える程、張り詰めた感覚って中々無いんだけど、このアルバムにはそれが有る。

異質かも知れないが、ジャズ・ヴォーカル・アルバム史上、屈指の名盤でしょう。

このアルバムでは、歌を歌う感覚ではなく、「カサンドラ・ウィルソン」の声が、正しく楽器と同化して…器楽セクションの一つとなっています。
しかし、歌い方は決して、器楽的では有りません。
むしろ、黒人ジャズ・ヴォーカリストらしく、声量、歌い回し、ヴィブラートの付け方など、第一級の歌唱をしています。

それから、私的には、このアルバムの編曲、雰囲気がすごく好きです。
一言で、カッコイイと言う言葉に尽きるんです。
インストを立たせたブルー・ノートの録音も、このアルバムのクールさを更に上げる原動力になっています。

アルバムタイトル…ニュー・ムーン・ドーター

パーソネル…カサンドラ・ウィルソン(vo)
      クレイグ・ストリート(pro)
      グラハム・ヘインズ(cor)
      ブランドン・ロス(g)
      ロニー・ブラキシコ(b)
      他

曲目…1.奇妙な果実、2.恋は盲目、3.ソロモン・サング、4.デス・レター、5.スカイラーク、6.ファインド・ヒム、7.泣きたいほどの淋しさだ、8.恋の終列車、9.アンティル、10.ア・リトル・ウォーム・デス、11.メンフィス、12.ハーヴェスト・ムーン、13.ムーン・リヴァー

1995年録音

原盤…BLUE NOTE  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5996

演奏について…まず、オープニング曲、「ビリー・ホリデイ」で有名な「奇妙な果実」が、スーパー・トップ・ヘヴィな名唱・名演で、いきなり度肝を抜かれる。
ベーシスト「ブラキシコ」の、野太いピッチカート奏法が、重厚な曲の礎を築き、
この曲のデュープな環境を的確に示してくれる。
所々で、「ヘインズ」が奏でるコルネットの、やや遠目から聴こえるサウンドが、黒人リンチ事件の不気味で哀れな雰囲気について語るアナウンサーの様だ。
そして、「カサンドラ・ウィルソン」の歌声は、どこまでも辛辣で、深い悲しみに満ちている。
叫ぶ様な怒りの絶唱ではなく、心の奥底に響いてくる、深い深い慈悲の、神への祈りの歌です。

2曲目「恋は盲目」…アコースティックの美しいサウンドに乗って、「カサンドラ」が、ここでも真に深い死の悲しみを表現した名唱を聴かせます。
ぼんやりとした音調で、この悲しさを色濃くしている、「ヘインズ」のコルネットが、ここでも一役かっています。

3曲目「ソロモン・ソング」は、「カサンドラ」の自作曲。
ジャズの曲とは思えない程、ゆとりや寛ぎ、そしてほのかな優しさに包まれた、癒し系の歌&楽曲。
分り易く、平たく言えば、「ユーミン」的なフォーク・ソングに近い感じがする。
楽器では、「ブランドン・ロス」のアコースティック・ギターの優しい調べが、「カサンドラ」の歌声と同化して、貴方の心に深く沁み込んで来ます。
しかし、全曲を彩る、アコースティック楽器群の編曲と、余す所なく録られた、録音が、より一層優しさを倍加させています。

4曲目「デス・レター」…死の知らせが書かれた手紙を受け取って、歌うブルーズ曲で、ここでの「カサンドラ」は、前3曲とは違って、ハードさと怒りの気持ちを込めた、迫力有る歌い方で押して行く。
バック陣のリズムとブルーズ演奏は、泥臭い中にも、かなり都会的なエッセンスを加味していて、あくまでも現代のブルーズで攻めています。

5曲目「スカイラーク」…とてもアンニュイな曲調で、曲が進行して、「カサンドラ」も気だるい雰囲気で、語りかける様に歌います。
スチール・ギター?が、ひばりを包み込む風の役目を表現していて…このひばりの行き着く先はどこなのか?
平和の世界なのでしょうか?

6曲目「ファインド・ヒム」…この曲もフォークソング、いや、あまり臭くない、カントリー&ウェスタンの感じの曲なんですが、しかし演奏&曲とは対照的に、情感タップリに「カサンドラ」が、素晴らしいヴォイスで歌ってくれます。
「カサンドラ」…やはり半端じゃなく歌は上手いねぇ。
バック陣では、「ロス」のギター演奏が聴かせてくれます。

7曲目「泣きたいほどの淋しさだ」…この歌も激しくディープできつい歌です。
「ハンク・ウィリアムス」が作曲した、ずばり…絶望の歌なんです。
しかし「カサンドラ」は、割と淡々と歌い上げて行き、演奏もヴァイオリン、ギターがメロディ・ラインを弾いて…比較的ライトに仕上げてくれてます。
あまりに悲しい歌なので、あえてそれ以上悲しみにくれない様に、軽めにしてくれたのかぁ?

8曲目「恋の終列車」は、皆が良く知る「ザ・モンキーズ」の歌った有名曲。
勿論、ここではジャズ曲として「カサンドラ」が歌い、仕上げているだけに、原曲のポップスとは一転して、全く違う雰囲気の曲になっています。
「カサンドラ」は、低音域をメインに歌っており、ドラムスとギターも低音重視に重厚的な編曲と演奏をしていて、重々しいと言うよりは、軽くない演奏曲にしているんです。
ここで歌われているのは、正しくジャズです。
決してポップスでは有りませんよ。

9曲目の「アンティル」は、「カサンドラ」自作曲で、アコーデオンがメイン伴奏をするセンスが、とてもgoodだと思います。
「カサンドラ」の実直で真摯な、そして上手いヴォーカルが、このパリジャン風のアコーデオンと、リズムを司るパーカションとのコンビネーションにマッチしていて、とにかくハイセンスで○ですね。
大人二人の愛を見つめる、好トラックです。

10曲目「ア・リトル・ウォーム・デス」は、題名通り、死についての歌なんですが、曲調がとても明るいんです。
演奏的には、ヴァイオリンをメインに押し立てて、明るく振舞うジプシーのイメージなんでしょうか?
曲調はメジャーだけど…このアコースティックな響きによって、演奏と歌が全然ライトじゃないんです。
「カサンドラ」の意図する物は…いたって「モーツァルト」的なのかもしれないですね。
メジャー曲に認めれた、心の奥底に眠る悲しさなんでしょう。

11曲目「メンフィス」も「カサンドラ」の自作曲です。
この曲は、アルバム中では最もロック&ポップよりの演奏・編曲がなされていて、ソウルフルなオルガンや、指パッチン、ギターなどが、「カサンドラ」の歌声に装飾を付けてくれます。

12曲目「ハーヴェスト・ムーン」…「ニール・ヤング」が書いたラヴ・バラード。
ここでの「カサンドラ」は、鳥のさえずりをバックに、朝日溢るる高原で気持ち良く、しっとりとバラードを歌い上げます。
サイドで爪弾く、バンジョーいや、シタール?(エキゾティックな弦楽器)が、より深く幻想的な効果を生んで、「カサンドラ」の名唱をサポートしてくれます。

日本盤のみのボーナス・トラックであるラスト曲の「ムーン・リヴァー」ですが、この曲もアルバムのコンセプトを全く損なわないばかりか、上位に位置できる出来栄えです。
ゆったりとして、ややハスキー・ヴォイスの「カサンドラ」のヴォーカルが、原曲の映画音楽から、この曲を完全にジャズ・ヴォーカル曲に、ステージ移行させています。
ここでも、シタール?か、東洋的でエキゾティックな弦楽器が、バックでソロを取るんですが、イリュージョンを思わせる程、不思議な気持ちにさせてくれて…「カサンドラ」のヴォーカルとの融合が最高です。

7年前、FMから流れた曲を聴いて衝撃を受けた…エゴ・ラッピン~色彩のブルース

2007-12-17 22:55:44 | ジャズ・ヴォーカル
7年前にFM横浜だったかな?から流れていた、日本語で歌われている、超本格的なジャズ・ヴォーカルに耳を奪われたのが、今更ながら余りにもベタなのですが、「エゴ・ラッピン」の、この曲(アルバム)だったのです。

私は、車で営業に出る事が多いのですが、いつも気に入った曲や、おっ!と思ったアーティストは即座にメモを取って、控える様にしているんです。
特にラテン系のアーティストや曲、それから、もっと広義でのワールド・ミュージックなどは、余り調べる為の文献も無く、分らない場合が多いので、要チェックは絶対にしないと駄目なんですよ。
「エゴ・ラッピン」…聞き慣れない名だな?と思いつつも、この素晴らしい曲を購入するために、即座にメモを取りました。

まぁ余談はさておき、「エゴ・ラッピン」のこのアルバム…まじにお薦めします。
「色彩のブルース」以外にも佳曲が多く、本格的なジャズ・ヴォーカルとして、十二分に楽しめる事、間違いなしです。

アルバムタイトル…色彩のブルース

アーティスト…EGOーWRAPPIN’

曲目…1.nervous break down、2.gigolo feat. mama! milk、3.色彩のブルース、4.flowers、5.タバコ

2000年録音

原盤…Mirror ball  
CD番号…RDR-1030

歌について…最大の聴き所は、当然、大ヒット曲「色彩のブルース」で、決定!!
正に日本人による、日本人の為の、日本ジャズ(ヴォーカル)でしょう。
序奏の演歌風の入りも最高ですし、ヴォーカルの日本語での歌も、very goodです。
ブラッシュが冴えるドラムス、とてもブルージーな色調のエレキ・ギター…妖しく吹かれるサックス…昭和40年代の歌謡曲と、ジャズが融合された、超名曲でしょう。
昨今の私が紹介する所謂「フリー・ジャズ」には抵抗の有る方、または疲れた方、こう言う歌謡曲・ジャズ…日本人の琴線に直撃して来て、改めて感性が磨かれますね。
この曲だけでも最高ですね!!

5曲目「タバコ」…ボサ・ノヴァ・リズムに乗って、とてもアンニュイな雰囲気の歌が、妖艶さを醸し出して、正に大人の女性が歌う好トラックになっています。
泣きのギター、幻想的なフルートと楽器演奏も良い味をだしてくれて、取分けこの曲の核になっているのは、当然ノリノリのパーカッションとブラッシュをメインに演奏しているドラムスです。
終盤のフルート演奏は、「ハービー・マン」がいるみたいな感じで…行けてる。
贔屓と取られるかもしれませんが、これだけジャジーな雰囲気を持った、ラテン調ヴォーカルは、中々無いですね。
かなりお気に入りの一曲です。

オープニング曲「ナーヴァス・ブレーク・ダウン」…重厚なベースに導かれて、指パッチンと語りから曲が始まる。
その後のエレキ・ギターとピアノが奏でるサウンドが、昭和30年代の「若大将シリーズ」のサントラ風で、古カッコイイ!
場末のクラブでのジャズ演奏なんだけど、かなり実力が有って、近い将来表舞台に出て行くのでは?と期待を持たせる…なんて感じの曲調と演奏です。
とても、ダークでディープなイメージで、良いですねぇ。

2曲目「ジゴロ」…ギターのチューニングをしている所から曲が始まる。
ギターとアコーデオンのアンニュイな伴奏が、とにかく趣味の良さを見せる。
ヴォーカルもそれに劣らず、もっとアンニュイで抑えた情感を表現していて…ドラムもスティックだけでリズムを取っているのが、とにかくお洒落です。
しかし、良くこれだけ昭和の30年代~40年代風の歌謡曲と、ジャズを融合出来たなぁって心から思う。
歌詞には「ジャンゴ・ラインハルト」が出てくるし…日本のジプシー?歌手って位置付けのつもりで歌っているのかなぁ。
全編で、アコーディオンが良い味を出し捲りで、泣けます。

4曲目「フラワーズ」…このアルバムで一番ロック調の曲で、カッティング・ギター演奏を前に押し出して、ヴォーカルも英語で歌い、リズムも8ビートで、グングン疾走して、ガツンガツン、チャキチャキのベースとドラムス、そしてタンバリンが、サイケデリックな風情を出して…この曲だけは、昭和の歌謡ジャズでは有りません。
ラップ風の語りも入って、「エゴ・ラッピン」が、現代のバンドである事を見せているようです。
最後のハードなサックス伴奏も、カッコイイんですよ。

ショート・アルバムながら、「エゴ・ラッピン」の精神と実力を堪能できるアルバムです。

あの有名アレンジャーが…イフ・ユー・ゴー~ペギー・リー&クインシー・ジョーンズ

2007-12-14 23:48:08 | ジャズ・ヴォーカル
いまや、ブラック・ミュージック界のドンとも言うべき「クインシー・ジョーンズ」が、若かりし頃アレンジャーとして携わった、「ペギー・リー」のラブ・ソング集が、このアルバムなんです。

アルバムタイトル…イフ・ユー・ゴー

パーソネル…ペギー・リー(vo)
      クインシー・ジョーンズ(arr、cond)
      ※クインシー・ジョーンズ・オーケストラ・メンバー
      ヴィクター・フェルドマン(p、vib)
      デニス・バドミール(g)
      マックス・ベネット(b)
      スタン・リーヴィー(ds)
      チノ・ポゾ(cga、bgo)

曲目…1.時の過ぎるまま、2.イフ・ユー・ゴー、3.オー・ラヴ・ハスト・ゾウ・フォーセイクン・ミー、4.セイ・イット・イズント・ソー、5.アイ・ウィッシュ・アイ・ディドント・ラヴ・ユー・ソー、6.メイビー・イッツ・ビコーズ、7.アイム・ゴナ・ラーフ・ユー・アウト・オブ・マイ・ライフ、8.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル、9.ジプシー・ハート、10.ホエン・アイ・ワズ・ア・チャイルド、11.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ、12.スマイル

1961年4月LAにて録音

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5393

演奏について…まず、ナンバー1のお気に入りは、9曲目「ジプシー・ハート」で決定です。
「バドミール」の哀愁タップリのギターに導かれて、「ペギー」も仄かな色気と甘さを同居させた、憂いのヴォーカルを聴かせる。
「クインシー・ジョーンズ」のアレンジメントも、映画音楽のラヴ・ロマンスの様に、切なくとても甘い…特に編曲では、フルートの使用が、センス有って、決めのトランペットも技有り…いや、一本だな。
こいつは紛れも無く「クインシー」の勝利だと痛感させられる。

オープニング曲「時の過ぎるまま」…一曲目とは思えない程、アンニュイでねっとり系のヴォーカルで、「ペギー・リー」が迫って?来ます。
や、やばい…妻がいるのに…やばいよ~(何のこっちゃ?)…まぁ、これは冗談だが、ジャケット通りの白人美人の吐息混じりのヴォーカルは…つ、罪だ~。

タイトル曲2曲目「イフ・ユー・ゴー」…「リーヴァー」が敲くラテン調ドラムに載せて「ペギー」が伸びやかに、そしてここでもチョイ色香を纏った声色で、貴殿に迫ります。
青いパーティ・ドレスの裾がチョット捲れて、足首がチラ見えして、エ・エロイ!
魔性のラテン・ヴォーカル…これもやばいだろ!!

4曲目「セイ・イット~」…このスロー・テンポのハーフ・バラード?…これも良いなぁ。
ここでも「バドミール」がMVP級の、哀愁メロディ…アドリブを演ってくれて、「ペギー」を好アシストしてくれるんです。

11曲目名曲の「ヒヤズ・ザット~」…「ペギー」のヴォーカルの魅力だけで、逝きそうです。
この虚ろな感じ…でも絶対に目は死んでいない。青黒く光っている。。
女って怖いですね。
こう言う風に囁いて…男は…囁かれて…只の馬鹿だ!!大馬鹿だ!!!

6曲目「メイビー・イッツ~」…この曲もラテン・リズムなんだけど…「ペギー」は、元来ラテン曲を歌うのには、定評が有るだけに…流石の一言。
ボンゴ、コンガを上手く捌く「ポゾ」のテクニックの出来が抜群です。

7曲目「アイム・ゴナ~」…ここでも吐息混じりの「ペギー」のヴォーカルが冴え渡ります。
こう言うスロー・テンポの曲は、「ペギー」が歌えば、それ自体が武器になるよね。
優しい弦楽器が…「ペギー」のヴォーカルと共に貴殿を包み込みます。

8曲目「アイ・ゲット~」…これは明るい調子のラテン・リズムで、「ペギー」も楽しげに、しかし妖しい色香をオーラ的に出しながら歌います。
「バドミール」のラテンチックなギターと「ポゾ」の跳ねる様なコンガが、盛り上げてくれますよ。

10曲目「ホエン・アイ~」…とてもリラックスした「ペギー」のヴォーカルに、周りの空気の様にストリングスが纏わり付いて…纏わってても邪魔はしていない。
本当に空気の様に…ごく自然に…彼女の影の様に…本当にごく自然に…。。。

12曲目「スマイル」…この曲もラテン・リズム+バドミールのフラメンコ風のギター+ホーンを含んだオケと完璧な編曲で、最後に「クインシー」が締め括る。
こいつの才能はやはり…すごい!

3曲目「オー・ラヴ~」…ここに来て、やっと、まともな?(普通の)ジャズ・ヴォーカル・トラックが登場したね。
でも、でも…これは当たり前過ぎて、逆につまらないなぁ。
やっぱり、女は愛嬌が一番…、いや色気が一番なんだろう。

5曲目「アイ・ウィッシュ~」…甘いストリングスの調べに乗って、「ペギー」がうっすら色気で、囁きヴォーカルを歌ってくれます。
でも、一寸、ここでの声色が、おばさん臭いかな?

ライトでポップなジャズ女性ヴォーカルだが!実は?…ジューン・ガット・リズム~ジューン・クリスティ

2007-11-30 11:47:39 | ジャズ・ヴォーカル
今日も2枚目行こうかな?
久しぶりに、(ジャズ)女性ヴォーカル・アルバムでも如何ですか?

と言う事で、「ジューン・クリスティ」のこのアルバムを選びました。
ジャケットなんかを見ると、一見ライトな感じがして…でも、実はそんじょそこらのヴォーカル物とは、全然物が違いますぜ!

何故なら伴奏のメンバーがすごすぎなんだよね。

夫の「ボブ・クーパー」他、よだれが出る様な豪華メンバーにサプライズです。

アルバムタイトル…ジューン・ガット・リズム

パーソネル…ジューン・クリスティ(vo)
      ボブ・クーパー(ts)
      フランク・ロソリーノ(tb)
      バド・シャンク(as、fl)
      ローリンド・アルメイダ(g)
      シェリー・マン(ds)    他

曲目…1.ロック・ミー・トゥ・スリープ、2.ジプシー・イン・マイ・ソウル、3.アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー、4.私からは奪えない、5.スイングがなければ、6.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ、7.ホエン・ライツ・アー・ロウ、8.アイ・キャン・メイク・ユー・ラヴ・ミー、9.イージー・リヴィング、10.ブルー・ムーン、11.神の子はみな踊る

1958年6月~7月 録音

原盤…Capitol T-1076  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5316

演奏について…オープニング「ロック・ミー~」は、旦那「クーパー」が、粘着系のテナーでねっとりと妻君をサポートする。
「クリスティ」は、(旦那と異なって)比較的ライトに、シングするのが、面白い。

2曲目「ジプシー・イン~」では、ピアノ伴奏が小洒落ていて、センスが溢れています。
「マン」のブラッシュ・ワークも的確に壷を得ていて、「クリスティ」が少し気だるい雰囲気のヴォーカルで行くのですが、「マン」がキッチリ〆て、抑えているのは流石ですね。

3曲目「アイム・グラッド~」…「アルメイダ」のお上品なギターが、素晴らしい効果を上げていて、goodなトラックに仕上がっています。
「クリスティ」の一寸、ハスキーなヴォイスに「アルメイダ」の全編に渡る、略ソロの伴奏が見事に同化しているんです。

4曲目「私からは奪えない」…オープニングと同じような、ミドルサイズ(人員)のコンボをバックに、「クリスティ」が気持ち良く歌い上げますが、中途での「マン」のソロや「ブルックマイヤー」のトロンボーンが、お洒落なアクセントとなって曲を彩るんです。
かなりポップな仕上がりですが、結構行けますね。

5曲目「スイングがなければ」…元来、超絶技巧の黒人パワー系シンガー(エラとかカーメンとか)が得意とする楽曲なんですが、ここでの「クリスティ」…頑張っています。
中間のスキャットも的確で、隠れベスト・ソングです。

6曲目「マイ・ワン~」もどちらかと言うと、男性ベルベット・ヴォイス系に合う曲だと思いますが、「クリスティ」はしっかりとこなして歌っています。
ここでも「アルメイダ」のギター伴奏が冴えて、それ以上に美しく、クールなのが「バド・シャンク」のフルートで、この二人のアシストが、「クリスティー」を強固にサポートしてくれています。

7曲目「ホエン・ライツ~」…1、4曲目と同じ様な編曲で、旦那他のホーン・プレイヤーの一吹きが、曲間で其々アクセントを付けてくれます。
「クリスティ」は割りと淡々と歌います。

8曲目「アイ・キャン~」ピアノ伴奏から、始まるメジャー・コードのバラード・ソングですが、中途からこの曲でもホーン群が加わり、ゴージャスな雰囲気を作ってくれます。
だが、この後で旦那の「クーパー」と、トロンボーン「ブッルクマイヤー」が魅惑的なソロを取り、ジャズの醍醐味が味わえます。

9曲目「イージー・リヴィング」…言わずと知れた超名曲ですが、「クリスティ」は、どの曲でもあまり感情的にならずに、さらりと歌い上げます。
この曲でも、同様のアプローチなのですが、「アルメイダ」のギターと「シャンク」のフルート、そしてオルゴールの音が、この曲をメルヘンチックに飾って、とても可愛らしい、かすみ草の様なイメージにしています。
あえて、感情を廃して歌う?と言うのも有りなんですね。

10曲目「ブルーン・ムーン」…「クリスティ」の歌と、ピアノ、ベース、ドラムスのリズム・セクションが程好くブレンドされた音色と編曲?により、とても都会的でかっこいい仕上がりです。
正にジャズ女性ヴォーカルの王道的な演奏ですね。

ラストの「神の子はみな踊る」…ピアノでは「バド・パウエル」の超名演が有りますが、ここでの「クリスティ」は、緩やかな歌い出しの序奏から、徐々に早いリズムテンポになって…また緩楽章に戻したりと、スピードに変化を付けて、飽きさせません。

全編に渡って、「クリスティ」のヴォーカルを全面に出した企画と言うよりも、スーパー・スター的なバック・ミュージシャンと同格扱いで、さりげないヴォーカルにプラスして、端的だが、素晴らしいフレーズを一吹き…と言った、スターたちの共演、コラボな雰囲気が楽しめるアルバムと言うべきでしょう。
いずれにしても、買いの一枚でしょう。

エラ・イン・ローマ(バースデイ・コンサート)~エラ・フィッツジェラルド

2007-10-24 23:08:51 | ジャズ・ヴォーカル
数多くのライヴアルバムで、絶唱、名唱を残している、「エラ・フィッツジェラルド」ですが、このライヴ・アルバムは彼女の誕生日にローマで行われたコンサートを捉えた貴重な録音なんです。

時は1958年、「エラ」絶頂期の40歳の時の録音で、真に素晴らしい歌唱に心を打たれますね。
バックのメンバーも名うての名手揃いで、かなり聴き応えあるアルバムです。

アルバムタイトル…エラ・イン・ローマ(バースデイ・コンサート)

パーソネル…エラ・フィッツジェラルド(vo)
      ルー・レヴィ(p)
      マックス・ベネット(b)
      ガス・ジョンソン(ds)

      ゲスト…オスカー・ピーターソン・トリオ
      オスカー・ピーターソン(p)
      ハーブ・エリス(g)
      レイ・ブラウン(b)
      ガス・ジョンソン(ds) ※サヴォイでストンプのみの録音

曲目…1.ノーマン・グランツによるイントロダクション、2.セント・ルイス・ブルース、3.ジーズ・フーリッシュ・シングス、4.ジャスト・スクイズ・ミー、5.エンジェル・アイズ、6.恋の魔術師、7.そんなことなの、8.アイ・ラヴズ・ユー・ポーギー、9.私は御満足、10.捧ぐるは愛のみ、11.ノーマン・グランツによるイントロダクション、12.君ほほえめば(CD追加曲)13.霧の日(CD追加曲)、14.真夜中の太陽、15.レディ・イズ・ア・トランプ(CD追加曲)、16.ソフィスティケイテッド・レディ(CD追加曲)、17.キャラヴァン、18.サヴォイでストンプ

1958年4月25日 ローマにてライヴ録音

原盤…Verve  発売…ポリドール
CD番号…POCJ-1913

演奏(歌唱)について…まず、「エラ」の超絶的な歌唱が聴けるのは、スキャット歌唱が洪水の様に、次から次へと繰り出される2曲目の「セント・ルイス・ブルース」です。
やはり、「エラ」は、ブルースを歌わせると半端じゃなく上手いし、バックの3人と見事に調和した歌と伴奏がオープニングから、フルスロットルで疾走し、会場を一気に盛り上げる事に、一役も二役も買っている。
とにかく、一発目から圧倒される名唱で、歌だけで言えば、ベスト歌唱でしょう。

3曲目「ジーズ・フーリッシュ~」は、「セント・ルイス~」とは、一転して、静かなバラードを聴かせる。
4曲目「ジャスト~」も、大人しめで、ジャジーな魅力に溢れていて、こう言った、アダルトで大人しい感じの「エラ」も有りですね。

5曲目「エンジェル・アイズ」…本来は作曲者「マット・デニス」の超名唱が有名で、いかにもダンディな歌でしたが、「エラ」も品位が高く、流石の歌唱力で、聴かす歌を決めています。
伴奏はピアノの「レヴィ」だけが音を出していて、とても落ち着いた曲調で、観衆も聞き惚れていますよ。

6曲目「恋の魔術師」は、ピアノ・トリオの演奏がお洒落で、それに同化して「エラ」が歌ってくれます。
典型的な「ピアノ・トリオ・プラス・シンガー」ですね。
全く、ヴォーカル物の王道ですから、聴いていて安心ですね。

8曲目「アイ・ラヴズ~」…この「エラ」のバラードもgoodです。
決して無理な声を出さず、抑制した歌唱の中に、ハートがタップリ詰まっています。
伴奏のピアノ「レヴィ」もとても品が良く、「エラ」の歌を際立たせています。
ブラシ・ワークでひっそり演奏する「ジョンソン」も可愛らしいですね。

9曲目「私は御満足」は、「コール・ポーター」作曲で、個人的に大好きな曲なんですが、ここでは「エラ」は序奏から、高速歌唱で、寸分狂いなく歌います。
そして、中間からとてもゆっくりと、聴かせる歌唱のテンポに落として、また高速に戻すと言う、劇的歌唱でKOされます。

10曲目「捧ぐるは愛のみ」…とにかく楽しい曲で、「エラ」が超一流ジャズ歌手であると同時に、一級のエンターテイナーである事を認識させられます。
序盤は余裕で歌うのは勿論なんですが、何と中間から歌まね(物真似)をしちゃうんですよ。
その歌手とは?…何と何と…「サッチモ」です。
女性の「エラ」が、見事にだみ声を真似して、「サッチモ」に変身するんです。

14曲目「真夜中の太陽」では、一寸「エラ」の本筋からはハズレるのでは?と思う、アンニュイな雰囲気の歌唱がなされ、「ベネット」のベースと「レヴィ」の抑えたピアノが、この気だるく歌う「エラ」を好アシストしてくれます。
こう言う「エラ」も結構来ますね。

CD追加曲の中では、15曲目「レディ・イズ~」なんかは面白い歌唱です。
そう、言うなればミュージカル風の歌唱で、高速の語り調で、「エラ」がぶいぶいと言わします。
今の時代なら、「エラ」…多分ラップの女性名人になっているんでしょう。

17曲目「キャラヴァン」では、「ガス・ジョンソン」の派手目のシンバル演奏と、ガッツリ重厚なベースを弾く「ベネット」、そしてセンス良いブロック・コードで「エラ」をサポートする「レヴィ」のピアノが素晴らしく、ジャズ演奏において、通常ヴォーカル物よりも、コンボ系が好きな私にとって、最高の聴き所の1曲となりました。
勿論、「エラ」の歌唱も最高潮です。

18曲目「サヴォイでストンプ」では、「オスカー・ピーターソン・トリオ+ワン」が「エラ」のバックを務めた唯一の曲がこれなんです。
「ピーターソン」が相変わらずテクニック抜群のピアノを弾き、「エラ」も負けじと圧倒的なスキャットで応戦します。
「ブラウン」「エリス」のセンス抜群の伴奏も良い味を出しています。
とにかく「エラ」のスキャットは完全に、コンボの一種と化して、声を楽器として使用した、言わば「オスカー・ピーターソン・クインテット」の演奏と言って良いでしょう。
アルバム中、最もジャジーな1曲です。

50年代西海岸を代表する女性ヴォーカルアルバム…アフター・ミッドナイト~ヘレン・グレイコ

2007-09-13 23:59:02 | ジャズ・ヴォーカル
ここの所、「夏のラテン」を数多く紹介して来ましたが、大分涼しくなってきたので、今日は「秋のジャズ・ヴォーカル」を紹介しましょう。

それも夜、じっくりと耳を傾けて聴く、ちょっとハスキー・ヴォイスが良いんじゃないかな。
ジャケットも飛切り美人じゃなくても、お洒落で「素敵」なのが良い。
てな、訳で今日はこのアルバムをチョイスしちゃいましょう。

アルバムタイトル…アフター・ミッドナイト

パーソネル…ヘレン・グレイコ(vo)
      ジャド・コンロン(指揮) オーケストラ 他

曲目…1.テイク・ミー・イン・ユア・アームス、2.ムード・インディゴ、3.グラッド・トゥ・ビー・アンハッピー、4.いつもさよならを、5.ホワイル・ウィ・アー・ヤング、6.ブラック・コーヒー、7.ユー・アー・マイ・スリル、8.グッド・モーニング・ハートエイク、9.また会う日まで、10.ラスト・ナイト・ホエン・ウィ・ワー・ヤング、11.ミッドナイト・サン、12.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ

原盤…VIK LX1066 発売…BMGビクター
CD番号…BVCJ-7362

演奏(歌)について…まず、一番良いと思うのは、1曲目「テイク・ミー~」は、オープニングから、スペードのエースを投入した、言うなれば「切り札」を使用した名歌唱。
ギターの調べと「グレイコ」のハスキー・ヴォイスが、そしてストリングス、ホーンが美しく溶け合って、素晴らしい絵画的な1曲を描いた。
正しく、総天然色に彩られた、黄金の50年代の絵画であり、「グレイコ」入魂の歌です。

2曲目…名曲「ムード・インディゴ」は、ハスキー・ヴォイスだが、甘ったるさ色香はあまり感じず、「グレイコ」は、比較的淡々と歌っていく。
バック陣では、ラグタイム調のピアノが、曲にアクセントをつけている。

3曲目「グラッド・トゥ~」は、アルバムにアクセントを付ける、ミュージカルの語り部的な序奏(序唱)から始まり、中途からはベースとピアノ、ヴァイブの小編成のコンボをバックに「グレイコ」が気だるく歌い込む。

4曲目「いつもさよならを」では、ストリングスをバックに、ここでも、語り部的に歌う。
その後、4ビートに変わりギター伴奏を中心として、「グレイコ」は歌の感情移入を見事に表現する。

5曲目「ホワイル~」…この曲ではとても女性らしい、可憐で可愛らしい優しい口調で歌って、「グレイコ」の別の魅力を出している。
そして、この曲では伴奏はピアノ一本で、題名通り「アフター・ミッドナイト」にぴったりの名唱、個人的にはベスト2に推薦したいです。

6曲目「ブラック・コーヒー」…何と言っても、そのものズバリの「ペギー・リー」の超絶的な名唱があるので、それと比べて…ってなってしまいそうになるが、あの名盤は置いといて、この歌唱も決して悪くはない。
アルバム随一「グレイコ」がフルヴォリュームで歌う箇所もあって、只の白人美人歌手ではなく、実力充分である事を再認識させられる。

7曲目「ユー・アー~」…この歌もとても良い。
非常に「わび・さび」の「曲間」が活かされた、歌とバックのセンスに脱帽する。
この様に、静かに歌うヴォーカルは、ジャズの女性物に良く合うねぇ。

9曲目「また会う日まで」…この曲もピアノ伴奏一本で序唱がなされて、その後ピアノ、ベース、ヴァイブがバランス良く絡み合う、編曲によりお洒落に仕上がっています。

10曲目「ラスト・ナイト~」…この曲も映画の挿入歌の様な、甘いメロディが「売り」の曲で、聴いた我々は「買い」の1曲と言えよう。
この歌での「グレイコ」は、渋さを出した助演女優賞が似合う。

11曲目「ミッドナイト・サン」では、ヴァイブが「ミルト」が敲いている様に、思える程、良い味を出している。
とてもジャジーな伴奏で「グレイコ」をケアーする、ギター&ピアノもgood。

ラスト「ユー・ドント~」…この曲は「コルトレーン」「ロリンズ」等、ホーンアルバムにも、半端じゃない超絶名演があるので、果たして「グレイコ」の唱はどうか?と思ったが、ベースをメインとした骨太のバックに「グレイコ」が渋く歌う。
女性の渋系ヴォーカルも良いもんだなぁ。

とにかく、名曲、名唱の、オン・パレードの様なアルバムをどうぞ…。。。

見よ!このチョイ悪のアルバムジャケットを。マーク・マーフィー~ラー

2007-05-31 23:52:05 | ジャズ・ヴォーカル
一言で言うなら、今流行の「チョイ悪」に最もマッチする、アルバム・ジャケットとシンガーがこの盤だと思う。

アルバムタイトル…「ラー」

パーソネル…マーク・マーフィー(vo)
      アーニー・ウィリアムス(arr、cond)
      クラーク・テリー(tp)
      ブルー・ミッチェル(tp)
      ウィントン・ケリー(p)
      ビル・エヴァンス(p)
      ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
      ジミー・コブ(ds) 他

曲目…1.エンジェル・アイズ、2.グリーン・ドルフィン・ストリート、3.ストッピン・ザ・クロック、4.スプリング・キャン・リアリー・ハング・ユー・アップ・ザ・モスト、5.ノー・ティアーズ・フォー・ミー、6.アウト・オブ・ジス・ワールド、7.マイルストーンズ、8.マイ・フェイヴァリット・シングス、9.ドゥードゥーリン、10.リル・ダーリン、11.トゥイステッド、12.アイル・ビー・シーイング・ユー、13.マイ・フェイヴァリット・シングス(ロング・ヴァージョン)

演奏(歌唱)について…まず、オープニングの「エンジェル~」から、悪カッコイイ「マーク・マーフィー」の世界に引き込まれる。
正直、「マーフィー」は、シナトラやメル・トーメなどの名人シンガーと比べると、歌の上手さが、2枚も3枚も落ちると思うが、このジャケット通りの不良っぽさが、普通のジャズ・ヴォーカルとの個性的な違いを生んでそこが最大の聴き所だ。

7曲目以降の、器楽曲で有名なスタンダード曲を、歌唱を器楽として用いる、ヴォーカルで表現&アレンジする解釈と術は、誠に見事と言うより他に無い。
特に、7曲目の「マイルストーンズ」はマーフィーのハードボイルドなヴォーカルの良さを立たせた名唱だと思う。

他では、12曲目「アイル~」のラテン曲などは、彼の遊び心を垣間見る事ができて、楽しい1曲である。

8曲目&13曲目の「マイ・フェイヴァリット~」は、先日紹介したコルトレーンの究極の演奏からすると、正反対の内容だ。
例えば、歌詞の中に、「レイ・チャールズ」や「ペギー・リー」、「キャノンボール」など、彼自身の正に「お気に入り」のアイドルを歌っている部分等もあって、非常に遊び心溢れた歌唱である。

しかし、このアルバムナンバー1のお薦め曲は、2曲目「グリーン~」で決まりである。
マーフィーの伸びやかな歌唱も素晴らしいが、バック・バンドのメンバーも好演している。
ピアノは何と「ビル・エヴァンス」、トランペットは「ブルー・ミッチェル」と言う超豪華版で、ハード・ボイルドの極地的な、ヴォーカル・ナンバーである。

ぜひ「悪カッコイイ」アルバムを聴く事をお薦めします。

白人女性ヴォーカルとマンボの王様の夢の共演…タバスコの香り

2007-05-29 22:56:32 | ジャズ・ヴォーカル
今日も昨日に引き続き、女性ヴォーカルアルバムを紹介します。

しかも、ヴォーカリストはジャズ&ポップス等を歌う白人美人歌手で有名な「ローズマリー・クルーニー」で、バックを務めるのは、マンボの王様「ペレス・プラード楽団」と言う豪華版です。
タイトル通り、このアルバムはラテン大好きな私にとっては非常にベタな盤です。

アルバムタイトル…「タバスコの香り」

パーソネル…ローズマリー・クルーニー(vo)
      ペレス・プラード楽団

1959年7月30日、31日、8月15日 LA録音

曲目…1.メロンの心、2.ライク・ア・ウーマン、3.瞳は君ゆえに、4.マジック・イズ・ザ・ムーンライト、5.小さなスペインの町で、6.キエン・セラ、7.マック・ザ・ナイフ、8.バリ・ハイ、9.ユー・ドゥ・サムシング・トゥ・ミー、10.ク・ク・ル・ク・ク・パロマ、11.くたびれもうけ、12.アディオス、13.小さなスペインの町で(インストver)

演奏(曲)について…まず第1のお薦めは、6曲目の名曲「キエン・セラ」がヴォーカル、演奏とも秀逸で良い。
ローズマリーの色香のあるヴォイスに対して、プラードバンドのホーンセクションも「男の色香」を漂わせて、ローズマリーに上手絡む。
リズムセクションもこの二人?の対決を後押ししていて、本当に素晴らしい。

次いで8曲目「バリ・ハイ」が、個人的には非常にお気に入り。
何故なら私のIDに使うほど、私はバリ島が大好きなので、この曲・演奏を聴くと、本当にバリに行ったような、南太平洋の真っ青な空と海をイメージさせる、名曲・名唱です。

10曲目「ク・ク~」はこのアルバム一番のローズマリーの名唱が聴けます。
この歌では、彼女がただの美人歌手ではない、確かな歌唱力を保持した、ジャズ歌手と言うことを改めて認識させてくれます。

オープニングの「メロンの心」は、これ1曲で、正に「タバスコの香り」へとトリップさせる、異国情緒プンプンの良演。

4曲目「マジック~」はペレスプラード楽団の明るく楽しい名演奏に、耳を奪われ、ローズマリーの歌も同調していて、曲の楽しさを倍化させている。

引き続き、2曲目「ライク~」と7曲目「マック~」は、スピーディなテンポでグイグイ推し進めるラテンエンジン全開の佳演。
聴いている自分が、思わず体がリズムを刻み出すほど。

13曲目の「小さな~」のインストヴァージョンは、ペレス・プラード楽団の純粋な実力が分かる演奏で、ウッと言う楽しい掛け声の中演奏は終了する。

心を乱すモノクローム・ヴォイス…ホリー・コール・トリオ~コーリング・ユー

2007-05-28 23:03:47 | ジャズ・ヴォーカル
その生い立ちから、奇跡のジャズ・シンガーとも言える、「ホリー・コール」のデビュー作であり、彼女の名声を決定付けた、大ヒットアルバムが本作である。

まず、このアルバムはかなり有名なのだが、このアルバム自体を、もしくはタイトル曲「コーリング・ユー」を聴いたことが無い諸氏へは、このジャケット写真を見て歌われている曲や声を是非とも想像して欲しい。
一言で言うと、私の今日のブログタイトルにも使わせて頂いているが、アルバム解説に載っていた、正しくアンニュイな女性が歌う「モノクローム・ヴォイス」そのものなのである。

イメージ的には、このアルバムは、美味しいブランデーかバーボンでも片手に、夜聴いて頂くと良いのでは?と思う。
(実は私は下戸なので、バーボンなんて代物は全く飲めないのですが…(恥))

さて詳細を説明して行こう。

アルバムタイトル…「コーリング・ユー」

パーソネル…ホリー・コール(ヴォイス)
      アーロン・デイヴィス(p)
      デイヴィッド・ピルチ(b)

  ゲスト ジョニー・フリゴ(vl)
      ロバート・W・スティーヴンソン(b-cl)

曲目…1.トラスト・イン・ミー、2.アイム・ゴナ・ラフ・ユー、3.イフ・アイ・ワー・ア・ベル、4.スマイル、5.パープル・アヴェニュー、6.コーリング・ユー、7.ゴッド・ウィル、8.君住む街角、9.ハニー・サックル・ローズ、10.アイル・ビー・シーイング・ユー

演奏について…結論から言うと、万人が認めるベスト1はアルバムタイトルの「コーリング・ユー」で間違いないでしょう。

映画「バグダッド・カフェ」のテーマ曲として名高い名曲だが、ホリーの歌では女性の弱さを持ちつつも、ほのかな色香と奥底にある芯の強さを、極うっすら分かる程度に、微妙な心理状態として見事に表現しており、正しく名唱である。
彼女をサポートする二人も名演で、ジャジーな雰囲気を損なわずに、それでいて都会的なカッコ良さも何気に見せていて、クールな「大人のジャズ」を演っている。

次いで個人的には10曲目「アイル~」がバック二人の見事な演奏により、(取分けピアノのデイヴィスが美しい演奏を奏でていて酔いしれる)ホリーとの声を含めたトリオ演奏として完璧なシンクロを見せる。

8曲目「君住む街角」は序章が不安で怪しげな入りなのだが、(まるでドラキュラが棺から出てくるようだ)ホリーのヴォイスが入ってからは、とても可愛らしい歌い方とピアノの伴奏も可愛くなって、この曲調の変化がとても劇的で趣深い演奏です。

オープニング曲「トラスト~」は本当にホリーのアンニュイさの良さが全面に浮き出た好演であるが、それ以上にすごいのは、この演奏の影の主役、ベースの「ピルチ」の太いが締まった音色で奏でる名演である。 

3曲目スタンダードの名曲「イフ~」ではゲストプレイヤーのヴァイオリニスト、「フリゴ」が参加するが、ホリーのヴォイスも1楽器の様な役目をしていて、「器楽的カルテット」の様なシンクロ演奏がとても楽しい。

4曲目「スマイル」は想像とは全く違う超スローテンポの演奏(歌唱)で、改めてホリーの歌唱力に上手さを思い知る。
そして、ここでももう一人の主役はベースの「ピルチ」である。

5曲目「パープル~」はピアノ「デイヴィス」の伴奏サポートが見事にホリーの 歌声とマッチしており、いかにもジャズ・ヴォーカルを聴いたと納得する歌です。

全曲ジャジーな雰囲気満載の、お遊び無しの名演・名唱なので、是非ご一聴を願います。  

今宵はフランス名曲集…仏的ジャズ、ヴィッキ・ベネットが歌う「ア・パリ」

2007-05-16 23:37:00 | ジャズ・ヴォーカル
今日はシャンソン風の味付け満載のジャズ・ヴォーカリスト、「ヴィッキ・ベネット」が歌う「ア・パリ」を紹介します。

ジャケットを見て頂くと分かりますが、中々の美人であり、シャンソンの名曲満載ですが、曲を良く知らずに買えば所謂「ジャケ買い」の類に入るでしょう。
しかし、彼女の声は写真の雰囲気とは大分違い、お色気タップリのハスキーヴォイスではありませんし、セクシーな歌い方でも有りません。

彼女はフランス人ですから、勿論フランス語に堪能であり、どちらかと言うと英語も仏語訛りが入っていますが、全曲非常に真面目な歌い方をしており、好感が持てます。
それでは詳細の説明をしましょう。

アルバムタイトル…「ア・パリ」

パーソネル…ヴィッキ・ベネット(vo)
      ニック・ペリト・オーケストラ

1960年3月2日~4日録音

曲目…1.パリ・カナイユ、2.ユー・ドント・ノウ・パリー、3.パリの空の下、4.ホワイ・ドゥ・ユー・パス・ミー・バイ、5.ザ・ラスト・タイム・アイ・ソー・パリ、6.ラ・パリジェンヌ、7.ア・パリ、8.ホエン・ザ・ワールド・ワズ・ヤング、9.ザ・プア・ピープル・オブ・パリ、10.オン・ザ・シャンゼリゼ、11.アイ・ウィッシュ・ユー・ラヴ、12.パダム…パダム

演奏(曲)について…一言で言って、彼女はジャズ歌手と言うよりも、クラシカルな歌い方に近いフレンチポップス歌手であろう。

全12曲の内、お薦め曲はどちらかと言うと、奇数曲に集中している。
ただ、このアルバムの中でもしもベストソングを選ぶとすると、8曲目「ホエン~」がナンバー1の名唱に思う。
この曲はオリジナルは盲目の女流詩人「アンジェール・ヴァニエ」の作詞に、「フィリップ・ジェラール」が作曲したシャンソンで、「エディット・ピアフ」が歌い1951年にACCディスク大賞を受賞した、名曲・名唱です。
ヴィッキはピアフ程の名歌手では無いにせよ、非常に真面目に丁寧に歌っており、感情移入も、仏語&英語、両語の歌い廻しもとても魅力的で味わい深いです。
次いで11曲目の「アイ~」がチョット及ばずの次点の評価でしょう。
この曲は結ばれぬ恋を歌った歌なのですが、ここでも8曲目と同様に、彼女の真面目で丁寧な歌い方に好感がもてます。
どちらかと言うと声自体に魅力があるタイプの歌手ではなく、先ほど言ったように声質の色香もジャケット写真と違って?あまり有りません。
ですので、この曲の様に「スロー・テンポ」の曲で、繊細に歌った方が、ほんのりとした色香が出て、聴き手に「ときめき」を感じさせるのでしょう。

それ以外では、名曲で仏語で歌うだけで素敵な3曲目「パリの~」は個人的に大好きな曲なので、絶対にはずせません。
5曲目「ザ・ラスト~」は前半が仏語、後半が英語で歌われていて、彼女の実力が充分に発揮された1曲です。
タイトル曲「ア・パリ」はかつて「イヴ・モンタン」が歌って大ヒットした名曲で彼女の仏語で語るように歌うシャンソンは魅力たっぷり。
そしてラストの「パダム…」も仏語で過ぎ去った恋の思い出を歌った名唱が心に響く。

今夜は女流歌手の歌うシャンソンに癒されてはいかが?

女性ジャズ・ヴォーカルの人気盤、リタ・ライス~ジャズ・ピクチャーズ

2007-04-17 22:31:16 | ジャズ・ヴォーカル
今日はほんのり色香あるジャズ女性シンガー、「リタ・ライス」の人気ライブ・アルバム、「ジャズ・ピクチャーズ」の紹介です。
このアルバム、勿論主役は「リタ・ライス」ですが、もう一人「影の主役」がいます。
彼女のバックを務めているのが、「ピム・ヤコブス・カルテット」なのですが、「ピム~」は、本来トリオであって、もう一人参加の大物が曲者というか、味噌なのです。
その人物とは、ドラムスの名手;大御所「ケニー・クラーク」その人であります。
彼はモダン・ジャズ史上に残る「名ドラマー」であり、あのMJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の初代ドラマーでもあります。
ドラム・テクニックについては詳細の説明は要らないと思いますが、特にブラシワークの名人芸は必聴に値します。

では解説しましょう。

アルバムタイトル…「ジャズ・ピクチャーズ」

パーソネル…リタ・ライス(vo)

   ピム・ヤコブス・カルテット
      ピム・ヤコブス(p)
      ウィム・オーヴァーハウ(g)
      ルディ・ヤコブス(b)
      ケニー・クラーク(ds)

1961年10月12日 オランダのラーレンにて録音

演奏曲…1.手紙を書こう、2.枯葉、3.チェロキー、4.プア・バタフライ、5.お友達になれない?、6.君にこそ心ときめく、7.アイ・リメンバー・クリフォード、8.タンジェリン、9.スピーク・ロウ、10.ホワッツ・ニュー

演奏(曲)について…結論から言おう、アルバム中の白眉は「枯葉」である。
ライスの歌はほのかな色香を放ちながらも、過剰なドラマティックにはせず、かと言ってあっさりもしすぎずに、見事なまでの「中庸の美学」で仕上げています。
10曲目「ホワッツ・ニュー」も枯葉に近い、「中庸」で歌っており、ラストを締めくくっています。
それから、短い曲(歌)だが、「アイ・リメンバー~」は素晴らしいバラードの絶唱で聴き物です。
このアルバムで一番「力唱?」してるかなぁ。
個人的には、バック(カルテット)が非常にしゃれた8曲目の「タンジェリン」と、クラークのラテンタッチから4ビートのドラムリズムに見事に変速する、「スピーク・ロウ」なんかも結構好みなんです。

いずれにせよ、歌っている曲はなじみの物が多いし、バックサポーターも良いので是とも一聴をお薦めします。