紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

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生涯たった1枚しか残していないレコーディングだがとにかく最高!…天才アール・アンダーザ

2008-07-05 14:57:24 | ジャズ・アルト・サックス
先ほどは、私事でのお詫び…ご了承頂きありがとうございました。

さて、更新回数が激減致す代わりと言っては何ですが、今日は飛び切り抜群の1枚を紹介しましょう。

アルト・サックスの名演(隠れた名盤)にして、著名なジャズ評論家;「アイラ・ギトラー」が、このアーティストの将来性を揺ぎ無い天才として評価していたにも拘らず、(60年代アルティストとして「オーネット・コールマン」や「エリック・ドルフィー」を追従する存在)、何故かこの作品1枚だけを残して、表舞台から姿を消してしまったんです。

そのアーティストの名は…「アール・アンダーザ」!

正しく「エリック・ドルフィー」の直系の様な、アグレッシブで、しかしインテリジェックで、魂を揺さぶる鋭利なトーンで吹き切る様は…一言…かっこいいです。

では、詳細について説明致しましょう。

アルバムタイトル…天才アール・アンダーザ

パーソネル…リーダー;アール・アンダーザ(as)
      ジャック・ウィルソン(p、harpsichord)
      ジョージ・モロー(b)
      ジミー・ボンド(b)
      ドナルド・ディーン(ds)

曲目…1.オール・ザ・シングス・ユー・アー、2.ブルース・バロック、3.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ、4.フリー・ウェイ、5.アウタ・サイト、6.ホワッツ・ニュー、7.ビナイン

1962年3月録音

原盤…Pacific PJ-65  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6389

演奏について…オープニング曲「オール・ザ・シングス~」…アルト・サックスの神様、「チャーリー・パーカー」十八番の曲から、若造が演るなんて…何て度胸が有るやつなんだぁ~と思ったら、ところがどっこい、この演奏が素晴らしいんですよ。
まず、耳を傾けさせられるのが、序奏のハープシコード演奏で、今までのワン・ホーンとは毛色が違うぞ?と、先制パンチを食らうんですが、「アンダーザ」の演奏は、「バード」が若返った様に、素晴らしいインプロヴァイズで、熱く…時にはクールに決めてくれて…心を奪われます。
その後のハープシコード「ジャック・ウィルソン」のアドリブ・ソロも奇を衒うだけでなく、知的でインテリジェックな演奏が良いですよ~。
後半の「ジョージ・モロー」の一発ソロ(ベース)も効果覿面です。
オープニングとして掴みはバッチリ!のgoodな1曲です。

2曲目「ブルース・バロック」…ブルー・ノートとは、やはり作りが違う、いかにもパシフィック的な音色で録られた演奏ですが、「アンダーザ」の鋭利なト-ンで攻める演奏は、パシフィックのライトな録音に打ち消される程、軟では有りません。
ここでも「ジャック・ウィルソン」は、ハープシコードを用いて(ソロ部分)、黒いブルーズとは一線を画した、白い?ブルーズを演ずるんです。
1曲目でスタート・ダッシュしたので、ここでは少しクール・ダウンで寛ぎをもたせたんでしょう。

3曲目「ユード・ビー・ソー~」…この若造…一度ならず二度までも…今度は白人アルト・サックス奏者の最高峰「アート・ペッパー」の名演に対抗するつもりか?
何て無謀な…と思ったが、この曲ではかなりストレートな表現で、原曲の良さを活かしつつ、「アンダーザ」らしさを少し加味する演りかたで、作品を仕上げています。
「ウィルソン」もここではピアノでソロを取り、クール&ロマンティックな女性的?な演奏…そうですね、「トミー・フラナガン」っぽい感じで、曲を修飾して行きます。
バック二人(「ジミー・ボンド」と「ドナルド・ディーン」)は、タイトで締まった堅実なリズム・ワークで、個性的な二人をしっかりアシストしてくれてます。

4曲目「フリー・ウェイ」…「アンダーザ」のアイドルは何と言っても、やっぱり「バード」らしく、いかにも「チャーリー・パーカー」っぽい、煌くアドリブ・フレーズで、疾走系のブルーズを速射砲の様に決めてくれます。

5曲目「アウタ・サイト」…ピアニスト「ジャック・ウィルソン」作のモード・ナンバーで、「児山紀芳」先生のライナー・ノーツによれば、この時代の最先端、「ジョン・コルトレーン・カルテット」が演りそうな曲をモチーフにしているとの事で、言われてみると、「ジャック・ウィルソン」の流麗でハイソなピアノ演奏は。「マッコイ」に酷似していて、「アンダーザ」のソロもアルトを演っている「トレーン」の様です。
モード・ジャズ好きには堪らない1曲ですね。

6曲目「ホワッツ・ニュー」…スタンダード・バラッドの最右翼の1曲ですが、「アンダーザ」は、かなり辛目のトーンで、センチメンタリズムも排除した、硬派の演奏で進めて行きます。
この演奏形態は「ジャッキー・マクリーン」に似てますね~!
「アンダーザ」…天才の名に恥じない引き出しの多いアーティストです。
しかし、勿論、先輩アーティスト達の物真似ばかりしている訳ではなく、「アンダーザ」らしい個性も発揮しています。
2トップを張る「ジャック・ウィルソン」も曲によって演奏スタイルを変化させていて、ここではしっとりとロマンティックなピアノで弾き切って、硬質な「アンダーザ」との対比が劇的な演奏にしています。

ラスト曲「ビナイン」…この曲は「アンダーザ」のオリジナル曲で、かなりアグレッシブと化した「チャーリー・パーカー」が演っているかの様な演奏です。
「ジャック・ウィルソン」は、この曲では「ホレス・シルヴァー」の「シスター・セイディ」のメロディをアドリブでかましたりして…この二人は先輩アーティストの良いとこを取っていくみたいで…悪く言えば盗人アーティスト?か??。
でも、若くして先輩の濃いエッセンスを吸収しているので、「アンダーザ」が2枚目、3枚目…或いはジャズ・ミュージシャンとして表舞台に出ていたらとしたら、末恐ろしい、ジャズ・ジャイアンツになっていたと予感させます。

本当に何で1枚しか録らなかったのかなぁ?
サイド・メン演奏も無いんですよ。
余りにももったいない…残念な稀有なタレントだったんですねぇ。


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