紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ドルフィーの伝説的ライブ、エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ・vol.2

2007-06-30 23:19:27 | エリック・ドルフィー
今日は、エリック・ドルフィーの伝説的なヨーロッパ・ツアーのライブ録音より、vol.2をチョイスします。
以前紹介した、これまた伝説の、ファイヴ・スポットのライブ録音から、わずか6週間後からスタートしたこのツアーの演奏は、ファイヴ・スポットよりもかなりフリー・ジャズに傾倒した演奏になっており、その辺りが非常に興味をそそります。

では、詳細を…

アルバムタイトル…「エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ・vol.2」

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(fl、as)
      ベント・アクセン(p)
      エリック・モーズホルム(b)
      ヨルン・エルニフ(ds)

曲目…1.ドント・ブレイム・フォー・ミー(テイク1)、2.今宵の君は、3.ミス・アン、4.ローラ、5.ドント・ブレイム・フォー・ミー(テイク2)

1961年9月6日、8日、コペンハーゲンにてライヴ録音

演奏について…まず唯一(CD化に際して追加トラックとなる5曲目のテイク2もそうだが)のフルート演奏となった、冒頭の「ドント~」の序奏から、いきなりドルフィーの世界にタイム・トリップさせられる。
「ドルフィー」は、非常にクリアーで美しいフレーズを奏でてから、すぐさま一気に飛翔して、フルートと言う楽器の持てるキャパシティを全て使い切った演奏がなされる。
バックの3人は演奏途中まではサポーターに徹するが、「ドルフィー」に触発されて、まただんだんドルフィー・ワールドに慣れて来てからは、ピアノの「アクセン」はモーダルでセンシティヴなシングルトーンを奏で、ベースの「モーズホルム」もソロを演じて、この緊張感に満ちたバラードは完成する。

2曲目のスタンダード曲「今宵の君は」は、かなりの急速調で演じられるが、この曲での「ドルフィー」のカデンツァは、超絶技巧で本当に驚愕物です。
まじに、アルトサックスで吹かれる「シーツ・オブ・サウンド」その物ではと思えて、音色に特徴があるので「ドルフィー」の演奏だと分かるが、吹かれたアドリブソロ・フレーズは、まるで「コルトレーン」が乗り移ったかの様な演奏です。
このライヴ録音(vol.2)でのベスト演奏でしょう。

自作曲「ミス・アン」は、「ドルフィー」以下のバックメンバーのソロも緊張感が取れて、かなり余裕が感じられる演奏になっている。

4曲目「ローラ」も、アルトサックスで演じられる超絶技巧のミドルテンポ・バラードですが、このアルバム中で一番ロマンティックな演奏です。
特に後半に入って「アクセン」が「ウィントン・ケリー」ばりの美麗なアドリブを奏でると、「ドルフィー」が触発されて、とてもメロディアスなアドリブで、更にその上を行くソロを奏でてフィナーレとなります。

異色の有名セッション、大御所デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン

2007-06-29 23:51:39 | ジョン・コルトレーン
正しく夢の共演、ジャズ殿堂入りした、「デューク・エリントン」とシーツ・オブ・サウンドを完成させ、ジャズ界の寵児となった「ジョン・コルトレーン」が一期一会にて、セッションをした有名アルバムの紹介です。

アルバムタイトル…「デューク・エリントン&ジョン・コルトレーン」

パーソネル…リーダー;デューク・エリントン(p)
      リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、ss)
      ジミー・ギャリソン(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)
      アーロン・ベル(b)
      サム・ウッドヤード(ds)

曲目…1.イン・ア・センチメンタル・ムード、2.テイク・ザ・コルトレーン、3.ビック・ニック、4.スティーヴィー、5.マイ・リトル・ブラウン・ブック、6.アンジェリカ、7.フィーリン・オブ・ジャズ

1962年9月26日録音

演奏について…まず1曲目「イン・ア~」の品の良い冒頭のピアノのフレーズからこの演奏に引き込まれる。
エリントンのピアノは想像していたジャングル的な粗野で荒々しいタッチではなく、非常にソフィスティケイトされた現代的な演奏で、一瞬「ビル・エヴァンス」?って思う程、アーバナイズされている。
一方の「コルトレーン」は、普段よりモード色を出さずに、とてもストレートにそして、格調高く吹いていて、(名作バラードの様な吹き方で)この二人の個性が(お互いを尊敬していて、やや引き気味だが)見事に調和をみせる。

2曲目「テイク・ザ・トレーン」は「コルトレーン」の名を冠したミドル急速調の曲で、曲名通り、彼のアドリブソロをがっつりフューチャーした曲です。
「トレーン」も遠慮することなく思い切り吹いていて、このアルバムで最も「コルトレーン」の個性&良さが出ている演奏です。
ドラムとベースのサポートも完璧です。

4曲目「スティーヴィー」は短曲だが、ハード・バッパー的な曲調で、ファンキーな面もあって乗り易そうな佳曲です。
ここでは「コルトレーン」はテナーサックスで、モード色を全面に出した演奏で、この融合が不思議と心地よい。
「エリントン」は、序章から最後まで小洒落たアドリブソロで花を添える。

5曲目「マイ・リトル~」は、トレーンが非常に渋く、高貴なシーツ・オブ・サウンドで、スロー4ビートのバラードを吹き切る。
「エリントン」はとてもお上品なシングル・トーンのフレーズを奏でて、とても愛らしい女性的な1曲に仕上げている。

3曲目「ビック・ニック」は、「コルトレーン」のソプラノサックスの、アドリブソロが秀逸で、時代の寵児の奏でる一音一音が、とてもきらびやかな自信のフレーズとなって、曲に満ち溢れている。

6曲目「アンジェリカ」は、ここの冒頭でやっと、「ジャングル・サウンド」的な編曲がなされて幕開けをするが、すぐに「トレーン」がまたまた素晴らしいアドリブ・ソロを吹き、やはり「トレーン色」に、知らず知らずの内に、この曲も塗られて行く。

ラスト曲「フィーリン~」でも、「コルトレーン」は、節度を持ちつつも、音の洪水をちょい出しして、とても感動的なアドリブソロを吹く。
「エリントン」は終始サポート演奏に従事する。

シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン

2007-06-28 23:52:40 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日ナオさんからご依頼の当ブログのカテゴリーを変更しました。
手前味噌ですが、以前に比べて少しは検索し易くなったと思います。
これからも宜しくお願い致します。
さて、今日は少し軽めのジャズ・アルバムを紹介しましょう。

いまや映画音楽の超大御所となった、ミシェル・ルグランが若かりし頃、ジャズ・ピアニストとして、ぶいぶい言わせていた時の、ライブ・アルバムです。

アルバムタイトル…シェリーズ・マン・ホールのミシェル・ルグラン

パーソネル…リーダー;ミシェル・ルグラン(p)
      レイ・ブラウン(b)
      シェリー・マン(ds)

曲目…1.ザ・グランド・ブラウン・マン、2.ア・タイム・フォー・ラヴ、3.レイズ・リフ、4.ウォッチ・ホワット・ハップンズ、5.マイ・ファニー・ヴァレンタイン、6.アナザー・ブルース、7.ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー、8.ロス・ゲイトス

1968年9月5日 LAシェリーズ・マン・ホールにてライブ録音

演奏(曲)について…4曲目「ウォッチ~」は、「ルグラン」の自作曲である名画「シェルブールの雨傘」からの(挿入)曲で、流石に掌中に修めている曲らしく、ここでの「ルグラン」のピアノ・テクニックは筆舌しがたい程の超絶技巧である。
バックの二人もピアノを際立たせるサポートに徹しており、このアルバム中、白眉の名演でしょう。

多分に好みが入っているのだが、2曲目「ア・タイム~」はとてもロマンティックな曲で、ルグランの演奏技術の確かさが堪能できる。

終曲「ロス・ゲイトス」も個人的に好きなラテン拍子の佳曲で、高速テンポに乗った3人のプレイは驚嘆もの!!

3曲目「レイズ・リフ」は、ブルース・ワルツだが、まずカッチリした音色で、皆を引っ張る名人「レイ・ブラウン」のベースが素晴らしい。
中途でのソロ・プレイも余裕と包容力を醸し出していて更に気持ち良い。
それを追従する、華麗な音色の「ルグラン」と、タイトでシャキっとしたドラムスを奏でる「シェリー・マン」の3人共いずれも好調だ。

6曲目「アナザー・ブルース」も3人のテクニックが充分に活かされた曲で、特に「ルグラン」のハイ・テクに魅了される。
「ブラウン」「マン」のすご腕演奏にもKO昇天寸前になりますよ。

7曲目「ウィロウ~」も3曲目同様「ブラウン」の重厚なベースに終始引っ張られて、所々で「ルグラン」が美麗なピアノ演奏を飾り付ける。
しかし「レイ・ブラウン」は、流石にベース名人として名を馳せるだけの事はあると改めて感じさせる、スーパー・テクニシャンです。

5曲目「マイ・ファニー~」は、何と「ルグラン」のスキャットヴォーカルが聴ける珍曲・珍演で非常に貴重なトラックです。

メイティング・コール~タッド・ダメロン・ウィズ・ジョン・コルトレーン

2007-06-27 23:50:43 | ジョン・コルトレーン
これは、「コルトレーン」初期の傑作にして、「タッド・ダメロン」のリーダー作として最も有名なアルバムであり、「ダメロン」の代表作とも言えるでしょう。
特に3曲目のバラード「ソウルトレーン」の名演奏は、つとに名演として後世に語り継がれる曲です。

では詳細を…

アルバムタイトル…メイティング・コール

パーソネル…リーダー;タッド・ダメロン(p)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ジョン・シモンズ(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.メイティング・コール、2.ニッド、3.ソウルトレーン、4.オン・ア・ミスティ・ナイト、5.ロマス、6.スーパー・ジェット

1956年11月30日録音

演奏について…まず、前説で紹介した3曲目「ソウルトレーン」は、非常にリリカルで、それでいて決して甘すぎず、しっかりと襟を正した正統的なスタンダード・バラードを若い「コルトレーン」が瑞々しく吹いている。
「ダメロン」の節をわきまえたバックフォロー振りも素晴らしい。
トレーン若き日の記念碑的名演です。

4曲目「オン・ア~」も、「ダメロン」作曲のメロディアスで美しい曲調で、「コルトレーン」は大分自分のスタイル(個性)を形作って来ているようで、何となく将来の「シーツ・オブ・サウンド」を予期させる節回しを吹いている。
「ダメロン」は、いかにも「ダメロン」らしいブロックコードのソロをとり、「モンク」の様までには崩さないが、「ガーランド」の様に流麗でもなく、この中間スタイルが、彼の個性とも言うべきか?

タイトル曲でオープニング曲の「メイティング・コール」は、個人的にはラテン調で且つメロディアスでとてもお気に入りです。
「フィリー・ジョー」の技巧に富んだシンバルワークと、ラテンタッチのスティックワークも素晴らしいし、「コルトレーン」のきびきびした吹き方も、とても好感がもてます。
「ダメロン」はちょいくずしのブラックコードと、哀愁あるシングルトーンを絶妙に使いこなして、非常にセンスの良い演奏をしています。

2曲目「ニッド」は、愛らしい曲調だが、「コルトレーン」はストレートに、そして時には豪放にテナーを吹き鳴らす。
「ダメロン」は「ウィントン・ケリー」か「レイ・ブライアント」のような、可憐なソロを弾いて、美曲に花を咲かせている。

5曲目「ロマス」はブルースで、「コルトレーン」はうねりの多いフレーズで、気持ち良くソロを吹き切っている。
但し、彼のスタイルはまだ未完成なので、フレーズを多少選びながらプレイをしているところが垣間見れる。
「ダメロン」は、ちょいくずしのブロックコードを多様して、曲を装飾している。

これからプレスティッジ時代のコルトレーンを紹介しますよ。~ブラック・パールズ

2007-06-26 23:07:51 | ジョン・コルトレーン
私のブログにいつも心あるコメントを下さるナオさんが、ご自身のブログでアトランティック~インパルスにかけての、完成された「コルトレーン」のアルバムをありがたい事に、良く紹介して下さっています。
この完成された「トレーン」には非の打ち所が無いのですが、その熟成前の少し青さの残った「トレーン」の演奏したアルバム(主にプレスティッジ時代)を、今後多くの機会に出来るだけ紹介して行きたいと思います。
今回はいきなりの頂上ですが、プレスティッジ時代の最後のアルバム「ブラック・パールズ」をセレクトしました。

アルバムタイトル…「ブラック・パールズ」

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
      ドナルド・バード(tp)
      レッド・ガーランド(p)
      ポール・チェンバース(b)
      アート・テイラー(ds)

曲目…1.ブラック・パールズ、2.恋人よ我に帰れ、3.スウィート・サファイア・ブルース

1958年5月23日録音

演奏(曲)について…まず、冒頭の「ブラック・パールズ」だが、序奏はいかにもハード・バップらしいファンキーな2管演奏で始まり、その後すぐさま「トレーン」はエンジン全開で「シーツ・オブ・サウンド」のシャワーを吹きまくる。
続く「バード」は歌うようにメロディアスなアドリブを演じて、ぶいぶい言わす「トレーン」とガチンコではない別土俵での勝負に出るのが面白い。
その後は、「ガーランド」、「チェンバース」、「テイラー」とお決まりで、各々順番にソロを演って、最後はまたファンキーな2管で締めくくる。
正にハード・バップのお手本の様な演奏に、「トレーン」超絶技巧がプラスされたグッドな演奏になっています。

2曲目のスタンダード・ナンバーですが、面食らうようなアップテンポでぐいぐい押し進められる演奏で、ここではまず「バード」が非常にブリリアントで魅惑的ななソロでスタートダッシュを駆けると、その後を追従する「トレーン」がまたまた、気絶物の「シーツ・オブ・サウンド」を演じる。
ここからしばらくは「トレーン」の独壇場が続いて、あまりのすごさに口をあんぐり状態にさせられそう。
これにインスパイアされて、「ガーランド」も早弾きし、「チャンバース」もいつも以上に気合の入ったソロで、いつものほのぼの癒し系ベースを突き破った演奏をする。
テイラーも節度を持ってはいるが、スティック1発1発に自然と力が入る。
しかし、「コルトレーン」がギアを入れると、廻りは一気に確変モードに入るので、改めて「神」のすごさ(影響力)は絶大だと気づかされる。

3曲目「スウィート~」は18分以上のミディアム・テンポのブルースで、ここでは最初から「ガーランド」が乗って「ブロック・コード」を嵐の如く弾きまくるが、また「トレーン」が登場すると、一気にぶっち切りの「カデンツァ」を吹いて、一瞬にして「コルトレーン」の世界に聴衆を引きずり込む。
「バード」は健闘はしているものの、「コルトレーン」の圧倒的なソロを見せつけられて、やや気後れしているようにも見える。
「チェンバース」は彼には珍しいパワフルなソロで、フロントをバックアップしていて、非常に好感が持てる。
「テイラー」もタイトでビシッとしたドラムソロを決めてカッコイイの一言。

いずれにしてもこの「至高のカルテット」結成前とは言え、改めて「ジョン・コルトレーン」のすごさが分かる1枚のナイスなアルバムである。

今日も飛切りgoodな1枚です。エリック・ドルフィー~ファー・クライ

2007-06-25 18:44:32 | エリック・ドルフィー
皆様、最近沢山のコメトを頂きありがとうございます。
今日は、日ごろの感謝の気持ちを込めて、飛切りの1枚を紹介します。

アルバムタイトル…「ファー・クライ」
      副題…「ファー・クライ・ウィズ・ブッカー・リトル」

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(as、bcl、fl)
      ブッカー・リトル(ts)
      ジャッキー・バイヤード(p)
      ロン・カーター(b)
      ロイ・ヘインズ(ds)

曲目…1.ミセス・パーカー・オブ・KC、2.オード・トゥ・チャーリー・パーカー、3.ファー・クライ、4.ミス・アン、5.レフト・アローン、6.テンダリー、7.イッツ・マジック、8.シリーン

1960年12月21日 NYC録音

演奏(曲)について…いつものセリフですが、まずメンバーの良さにどなたも納得でしょう。
彼等の演奏は一部メンバーが違いますが、以前「アット・ザ・ファイブ・スポット・VOL1」で紹介した事があるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
ファイブ・スポットのライブ盤では、ピアノが「マル・ウォルドロン」だったのですが、今回のピアニスト「ジャッキーバイヤード」もマルと演奏がかなり似ていますので、このコンボにぴったりマッチをしています。

さて、演奏曲ですが、5曲目にサプライズな名曲が名を連ねていますね。
そう、「レフト・アローン」ですが、ここでの「ドルフィー」のフルート・プレイ1曲だけでもこのアルバムを聴く価値が充分にあろうと言う物ですが、それ以外の曲も名演奏ばかりで、本当に素晴らしいアルバムです。
では、詳細について少し解説しましょう。

まず、1曲目「ミセス・パーカー~」ですが、オープニングに相応しい構成がされていて、この1曲目で聴き手を引き込みます。
この曲はピアニストの「バイヤード」が「C・パーカー」への敬愛を込めて作曲したとの事で、(2曲目も同じコンセプトです)「リトル」のブリリアントなトランペットソロに対して、「ドルフィー」はバス・クラでいななき、他のプレイヤーも皆ソロを取っています。
「ジャッキー」はまるで「マル」が弾いているかのようなブロック・コード&若干はずし気味のシングル・トーンで、哀愁を感じさせ、「カーター」はボウイングを披露し、「ヘインズ」は華麗で重厚なドラムワークで魅了します。

2曲目「オード~」は一転、「ドルフィー」が今度はフルートで、いつもの如く研ぎ澄まされたソロを演じ、「リトル」は年齢に似合わず、ここでは抑制した渋いバラードプレイをします。
バック3人も非常に抑えた表現で、このグループは、前衛的なただの過激軍団ではない事を、技術の確かさも加わって、聴衆に知らしめています。

表題曲の3曲目、同じく「ドルフィー」作曲の名曲4曲目とも、フロントの2管二人の良さが際だつ演奏。
ここでは又もや、「リトル」が非常にブリリアントなトーンで吹ききり、リーダー「ドルフィー」に全く引けをとらない「天賦の才」を見せつける。

さて、お待ちかねの5曲目「レフトアローン」ですが、「ドルフィー」は非常に高貴で、原曲を過激には崩さないストレートな演奏をしている。
勿論、カデンツァに入ると、どこまでも飛翔する鳥のような、天空をさえずる音程・音色は見事としか言いようが無い。
ここでは「リトル」は休んでおり、バックの3人も非常に抑制した演奏で、「ドルフィー」の高貴さをバック・アップしている。
ドラムのヘインズは、殆どシンバルワークとハイハットに終始するのだが、空間の使い方が素晴らしく、この名演の影のMVPです。

6曲目「テンダリー」がまたまた筆舌し難い名演です。
ここで「ドルフィー」は優雅なスタンダードナンバーを、無伴奏で「アルト・サックス」で、素晴らしいアドリブソロを吹ききる。
ドルフィーの素晴らしさは、全く「コルトレーン」と同じで、過激で超絶技巧のアドリブを駆使できるテクニックだけでなく、下世話で甘くない、「誠にピュアで高貴なバラード」を吹く叙情性を持っているのが、私が「惚れる」アーティストたる理由です。

7曲目「イッツ~」もワン・ホーンのバラード演奏だが、ここでは「ドルフィー」は「バス・クラ」を使っているので、前曲よりは演奏に洒落や遊び心が見える。

8曲目「シリーン」はいかにも「ドルフィー」のオリジナルらしい曲で、ここでも「バス・クラ」を使用して前衛的なプレイをするが、「リトル」はがメロディアスで「健康的」なソロで対抗する。
「バイヤード」と「カーター」は非常に抑えたバックアップをするが、「ヘインズ」は、彼の境地らしい変則的なドラミングを奏でて、曲にスパイスを効かせているのが、隠し味と言えます。

とにかく、素晴らしいアルバムです。

アドリブの最高峰的演奏、ソニー・ロリンズ~ヴィレッジ・ヴァンガードの夜(コンプリート)

2007-06-24 23:38:32 | ジャズ・テナー・サックス
今日は、ジャズ至上最もアドリブ演奏を極めた、サックスの大巨人「ソニー・ロリンズ」のワンホーンピアノレストリオのライブ盤を紹介しましょう。
とは言え、このアルバムはロリンズの最高傑作(サキソフォン・コロッサスと双璧)ですから、今更解説なんて不必要かもしれませんが、何卒ご勘弁下さい。

アルバムタイトル…ヴィレッジ・ヴァンガードの夜vol.1&vol.2

パーソネル…リーダー;ソニー・ロリンズ(ts)
      ウィルバー・ウェア(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)
      ドナルド・ベイリー(b)※vol.1の1&2曲目のみ
      ピート・ラロカ(ds) ※vol.1の1&2曲目のみ

曲目…vol.1…1.チュニジアの夜(アフタヌーン・テイク)、2.アイヴ・ガット・ユー・アンダー・マイ・スキン、3.チュニジアの夜(イヴニング・テイク)、4.朝日のようにさわやかに(テイク1)、5.フォア、6.ウディン・ユー、7.オールド・デヴィル・ムーン

  vol.2…1.恋とは何でしょう、2.朝日のようにさわやかに(テイク2)、3.ソニー・ムーン・フォー・トゥ、4.言い出しかねて、5.四月の思い出、6.ゲット・ハッピー、7.ストライヴァーズ・ロウ、8.オール・ザ・シングス・ユー・アー、9.ゲット・ハッピー(ショート・テイク)

1957年11月3日 ヴィレッジ・ヴァンガードでのライブ録音

演奏について…今回は、同日同曲異演がいくつか有るのですが、ジャズ評論家では無い、私如きがロリンズ先生のアドリブの出来を1曲1曲解説するなどと言う、神をも恐れぬ行為は遠慮させて頂きましょう。
CDの解説では、油井正一先生が、例えば「チュニジアの夜」とか、「朝日のようにさわやかに」等は、後の録音の方がロリンズのアドリブの崩しが、大胆になってくると記載されております。
書道に例えれば、行書と草書の違いだそうです。

まぁ、崩し方が大胆な方が良い演奏(などと一般的には言われますが)本当に良い演奏かどうかなど、正直好みの部分がウェイトを占めると思うので、議論すべき事ではないと思います。

いずれにせよ、vol.1、vol.2のどの曲でも、ロリンズの天性のアドリブ表現と、集中力は全くすごいの一言です。
このアルバムを聴くと、バックにピアノがいるのは反って「邪魔」だとロリンズが言ったというのも、納得させられます。

稀代のインプロバイザー「ロリンズ」をサポートする二人「ウェア」と「ジョーンズ」も非常に素晴らしい演奏をしています。
特に「エルヴィン・ジョーンズ」は、コルトレーン・カルテット在籍前の演奏ですが、ポリリズムを駆使したテクニックと、重量級パワードラミングに、彼の技量と才能を充分に感じることができます。

最後にお気に入りの演奏を数曲挙げておきます。

チュニジアの夜の(イヴニング・テイク)、オールド・デヴィル・ムーン、朝日のようにさわやかに(テイク1)、恋とはなんでしょう
勿論、これらの曲以外も、愚演は有りませんので聴いて欲しい作品です。

孤高のピアノ詩人、マル・ウォルドロンの初リーダー・アルバム

2007-06-23 23:58:16 | ジャズ・ピアノ・コンボ
皆様こんばんわ。
昨日は私の提案、隠れ名盤を教えて下さい…との問いに、多くの方がコメントを下さって頂き、本当にありがとうございます。
皆様各々には、また後日丁重にコメント・バックさせて頂きます。

さて、今日は隠れ名盤ではありませんが、代表作からもちょっとはずれている、マル・ウォルドロンの「マルー1」を紹介します。

アルバムタイトル…マルー1

パーソネル…リーダー;マル・ウォルドロン(p)   
      アイドリース・シュリーマン(tp)
      ジジ・グライス(as)
      ジュリアン・ユーエル(b)
      アーサー・エッジヒル(ds)

曲目…1.ステイブル・メイツ、2.イエスタデイズ、3.トランス・フィギュレーション、4.バド・スタディ、5.ディーズ・ジレンマ、6.ショーム

演奏(曲)について…このアルバムの演奏曲についてだが、まず2管を活かした、いかにもハードバップと言うべき、ユニゾンとアドリブを程よく混合させた演奏と、マルやシュリーマンなどの、各個人の特性を活かした演奏の2種類に大別される。

1曲目のゴルソン作曲の「ステイブル~」は、当然作曲者の意図が良く分かる曲だけに、2管を活かした演奏(ゴルソン・ハーモニーの踏襲)がされている演奏で、同様に3曲目の「トランスフィギュレーション」も正しく、2管のお手本の様な演奏をしています。

逆に2曲目「イエスタデイズ」は、ペットの「シュリーマン」と、ベースの「ユーエル」のデュオ演奏の様な世界を形作っていて、とても面白い。
特に「ユーイング」は、タイムキーピングに徹しているのだが、その力強い演奏が、「シュリーマン」のアルバム随一の魅惑的なソロ演奏の、単なるバックアップに留まってはいないで、とても主張した演奏になっている。
本作品のベストトラックでしょう。

5曲目の「ディーズ・ジレンマ」は、本アルバム中、個人的には一番お気に入りの曲です。
哀愁のマイナー調ワルツで、「ソニー・クラーク」の「クール・ストラッティン」に出てくる様な、素晴らしいメロディで、正にマルの「面目躍如」と言って良いでしょう。
朴訥な「黒いピアノ」のシングルトーン演奏が、来るべき「レフト・アローン」等の将来の名曲・名演を予見させて、「グライス」のアルトの好演も後押しして、この曲の盛り上げに一役買っています。

4曲目「バド・スタディ」は、マルのピアノの魅力が随所に表れて、やっとリーダーらしい目立ちがされたかなと思わせる演奏です。
敬愛する「バド・パウエル」の名を冠したのは、マルのセンスでしょう。

6曲目「ショーム」はトランペットの「シュリーマン」のオリジナル作品との事で、この1曲はウェストコーストの香りが漂います。
シュリーマンは勿論ですが、ここでは「グライス」のアルト、そして何故かウェストコースト臭くない、マルのソロも好演していて、中々良演です。

ブルーノートの隠れた名手、ソニー・レッド~アウト・オブ・ザ・ブルー

2007-06-22 23:38:06 | ジャズ・アルト・サックス
今日は、昨日紹介できなかった渋い名盤、ブルーノートレーベルに唯一リーダー作を残した、ソニーレッドのアウト・オブ・ザ・ブルーをチョイスします。
とても、ファンキーで、ブルージーな、いかにもブルーノート録音らしい、好アルバムです。

アルバムタイトル…アウト・オブ・ザ・ブルー

パーソネル…リーダー;ソニー・レッド(as)
      ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      サム・ジョーンズ(b)※
      ジミー・コブ(ds)※
      ロイ・ブルックス(ds)

曲目…1.ブルースヴィル、2.ステイ・アズ・スイート・アズ・ユー・アー、3.アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォア、4.ナディア、5.ブルース・イン・ザ・ポケット、6.アローン・トゥー・ロング、7.ザ・ロープ※、8.星への階段※

録音1959年12月5日、1960年1月23日※

演奏(曲)について…まず、アルバム参加メンバーを見て下さい。
リーダーのソニー・レッド以外のメンバー、一流どころが揃っています。
逆に言えば、有名になれなかったものの、当時レッドはそれだけ期待されていたのかも知れませんね。
推薦曲ですが、やはりメンバー中最も実力を見せ付けるのは、「ウィントン・ケリー」のピアノです。

2曲目「ステイ~」のバラードなんか、ピアノトリオ・プラス1の様な構成で、ちょっとレッドがかわいそうな感じですが、ケリーのピアノ、哀愁バッチリで最高です。

しかし、1曲目「ブルースヴィル」4曲目「ナディア」などのファンキーな吹き具合は「レッド」の魅力が充分に出ています。
音色的には、この時代のアルト吹きの誰もが影響を受けていた、「パーカー直系」で、マクリーンやウッズにも似た感じと言えば多少イメージできると思います。

それから、ブルース曲の5曲目も、レッドのもう一つの得意分野として、良い演奏をしていますが、ここでもケリーが優れたブロックコードを飾り付けて、主役を喰っている時があって、苦笑いしちゃうかもしれません。

6曲目「アローン~」は短曲ですが、レッドのアドリブソロがかなり良い感じで持っている実力を発揮しています。
「ケリー」は軽快なアドリブを、きらめきを放ちながら弾いています。

7曲目「ザ・ロープ」からは、バック二人が入れ替わりますが、演奏自体はキープ・コンセプトで、全く違和感はありません。

特に8曲目「星への階段」のバラードを心地よく吹き切る「レッド」は、とても好感が持てます。
ここでは「コブ」と「ジョーンズ」が貫禄のタイム・キーピングをして、「ケリー」は最後に「レッド」に花を持たせようとしたのか、サポート演奏に徹していて、アルバム全曲中一番「レッド」らしい演奏は、実はこの曲だと思います。

ブルーノートには、本当に「隠れた名盤」が多いですね。
皆様も何か良いのがありましたら、コメントを下さい。

ブログ書くのが間に合わない…YOSUI TRIBUTE

2007-06-21 23:56:43 | J-POP
今日もまたまたお疲れちゃんモード全開でございます。
ブログを書こうと思った矢先に、何と不覚にも転寝(うたたね)してしまい、さぁ大変!!
紹介文を書こうと思ったら、あとシンデレラまで後10分しかないじゃんか!!!
せっかく渋いジャズ・アルバムを用意してあったんだけど、急遽変更じゃ!

そんなすったもんだで、このアルバム紹介に相成ったのです。

アルバムタイトル…YOSUI TRIBUTE
        井上陽水の名曲の数々を豪華アーチストがトリビュート!!

曲目&パーソネル…1.夢の中へ・TRICERATOPS、
         2.東へ西へ・布袋寅泰、3.心もよう・平原綾香、
         4.リバーサイドホテル・奥田民生、
         5・いっそセレナーデ・小野リサ、
         6.懲りない欲望・Bank Band、
         7.カナリア・ジェーン・バーキン、8.傘がない・UA
         9.いつのまにか少女は・持田香織
         10.とまどうペリカン・松任谷由実
         11.白い一日・玉置浩二
         12.ワインレッドの心・DOUBLE
         13.ジェラシー・一青窈、14.少年時代・忌野清志郎

曲について…陽水の曲の良さと、各アーチストのコラボが、各々の個性を活かした編曲&演奏がなされているのを、特にお薦めしたい曲目です。

まず、小野リサの「いっそセレナーデ」は、正しく、晩夏の午後の昼下がりにフィットしそうなボサ・ノヴァに仕上がっていて、センス抜群な曲になっています。

Bank Bandの「懲りない欲望」は、桜井和寿のきれいなハイトーンのシャウト調で歌うボーカルが、どんぴしゃりハマル。
本家「陽水」以上に自分の持ち歌にしていて、このアルバムのベストトラックでしょう。

UAが歌う「傘がない」は、陽水以上に曲と声質がマッチしている。
この歌詞に「自殺」なんかが出てくる曲には、最適なスーパー・ハスキー・ヴォイスでしょう。

ジェーン・バーキンの「カナリア」は個人的にお気に入りです。
フランス語で女性が歌「陽水ワールド」えもいえぬ不思議空間が心地よい。
中途で曲をドライブする、ウッド・ベースも、編曲的にGOOチョイスでしょう。

持田香織の「いつのまにか少女は」は、ELTとは全く違う非常にアンニュイな雰囲気の曲に歌い仕上げている。
ここには、トレンディな女性ボーカルの姿は見られず、ハーモニカとアコースティック・ギターに良くマッチした、フォーク・シンガーが目の前にいる。
私はELTの持田より、こっちの持田の方が好きだ。

DOUBLEの「ワインレッドの心」は、このアルバム随一のジャジーな編曲がなされており、ホーン・セクションの品の良さも相まって、極上サウンドに仕上がっています。

ユーミンの「とまどうペリカン」ですが、はっきり言うと、彼女のヴォーカルと余り合うとは言えないのですが、この曲は私個人的に、「陽水作品」の中でも最も好きな曲なので、あえてお薦め曲として紹介させて頂きます。

一青窈の「ジェラシー」も、正直あまり声質は合っているようには思えないのだが、この曲も個人的には大好きなのと、編曲がパーカッションを軸としたラテン編曲になっているので、この部分は非常な聴き所でもあり、アコースティックなバック演奏は◎評価です。

平原綾香の「心もよう」は、彼女のあっさりとしたハスキーヴォイスが、元来どろどろ調の歌詞&歌を、ちょっと大人しめに渋く都会的に決めているのが味噌。

奥田民生、玉置浩二の「陽水の舎弟?」は、当然二人とも的を射た歌&演奏をしていますので、両曲とも安心して聴けます。

忌野清志郎の「少年時代」…陽水の作品では無い!と言うぐらい、清志郎ワールドにトリップしています。
評価はハッキリ白黒分かれると思いますが、陽水の曲でここまで遊べるのは、清志郎ぐらいしかいないと思うので、そう言う意味では一聴の余地はあるでしょう。

肩のこらない寛ぎのアルバム…イェスタデイ~クラシック・ミート・ポップス

2007-06-20 23:53:56 | イージー・リスニング
いやぁー、最近ちょっと仕事が忙しめで、帰りが遅くなってます。
今日もついさっき帰宅したところで…。
そこで、肩のこらない寛ぎ系のアルバムをCD棚を探した所、このアルバムが目に入りました。

題名…イェスタデイ~クラシック・ミート・ポップス
副題…ベルリン・フィルの12人のチェリスト達。

まぁ、BGMに聴くには、かなりもったない極上のクラシック音楽でして、フルトヴェングラーやカラヤンなどを肩肘張って聴くのとは全く違うと言うのも事実でして、疲れた体には一服の清涼剤にはなりそうです。

アルバムタイトル…イェスタデイ~クラシック・ミート・ポップス

パーソネル…ベルリン・フィルの12人のチェリスト達
      アーリン・オージェ(ソプラノ)

曲目…1.フーガの技法BMW1080から
   ①コントラプンクトゥス第1番
   ②カノン第14番
   ③コントラプンクトゥス第5番
   2.ブラジル風のバッハ第1番
   ④序奏
   ⑤前奏曲
   ⑥フーガ
   3.ブラジル風のバッハ第5番
   ⑦アリア
   ⑧踊り
   4.バーンスタイン~ウェスト・サイド・ストーリーから
   ⑨マリア
   5.WC・ハンディ
   ⑩セントルイス・ブルース
   6.アメリカ民謡
   ⑪ゴスペル・トレイン
   7.レノン&マッカートニー
   ⑫イェスタデイ

演奏について…個人的には、ブラジル風バッハの5番が大大好きです。
以前、MJQの「シェリフ」と言うアルバムでも紹介した名曲です。
チェロの品の良さと、オージェのヴォーカルが上手く融合され、思わず秋の湖畔を散策している様な気持ちになります。
とにかく、バッハ(風)とラテンの融合は、最高の一言ですね。

それから、ジャズ好きな方には、ジャズの古典、サッチモの名演(名唱)で有名なセントルイス・ブルースも良いでしょう。
「ラッパ」とは一味も二味も違う、「チェロ」で味わう「WC・ハンディ」の名曲も、中々良いですよ。

ビートルズ(レノン&マッカートニー)の超名曲「イェスタデイ」も、元の曲の素材の良さから、全くポップスとは言えないぐらいに格調の高い、しかし溶け込み易い演奏に、「癒し」を頂いて下さい。
   
   

異色のブルーノート・アルバム、ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ

2007-06-19 23:24:00 | ジャズ・ピアノ・コンボ
黒人ジャズの最高峰とも言うべき、ジャズレーベルの王道ブルーノートの初期にこの異色のアルバムは誕生した。
リーダー、ピアニストは、ドイツのライプツィヒ出身の女流「ユタ・ヒップ」で、それを白人テナーの名人「ズート・シムズ」がフォローして行くアルバムで、およそブルー・ノートらしくはない。
どちらかと言うと、ヴァーヴやパシフィックなんかに近いサウンド&演奏です。
しかし演奏は、品が良く、適度に寛いだクインテット編成になっていて、バリバリの激しいジャズ演奏とは違いますが、こう言うジャズもたまには良いもんです。

さて、詳細の解説です。

アルバムタイトル…ユタ・ヒップ・ウィズ・ズート・シムズ

パーソネル…リーダー;ユタ・ヒップ(p)
      ズート・シムズ(ts)
      ジェリー・ロイド(tp)
      アーメド・アブダル・マリク(b)
      エド・シグペン(ds)

曲目…1.ジャスト・ブルース、2.コートにすみれを、3.ダウン・ホーム、4.オールモスト・ライク・ビーイング・イン・ラヴ、5.ウィー・ドット、6.トゥー・クロース・フォー・コンフォート

1956年7月28日録音

演奏について…お薦め曲は、まず2曲目のスタンダード「コートにすみれを」は、ユタ・ヒップのユーロセンスの品の良いピアノに、これまたズートの品の良いテナーが見事にかみ合い、寛ぎの中にそれぞれがセンスあるアドリブを演じて、とても良い仕上がりの1曲になっている。

同様に、スタンダードの4曲目「オールモスト~」は、上記の二人に加えてトランペットのロイドも、お上品でしゃれたアドリブを演って、この3人のコラボがクインテットの醍醐味を味合わせる。
バックの二人は3人を煽らずにタイム・キーピングに終始するが、スイング感は失わず、影の力持ちに徹していて、好感が持てる。

5曲目「ウィー・ドット」は、2管編成の良い部分を見せつける演奏で、ズートもちょい力を入れたソロを吹き、ロイドもズートに触発されて、ちょいやりあう。
ここでユタ・ヒップはややコードを崩して、変則の抑えて冴えたブロックコードを弾き、2管にアクセントをつける。

オープニング曲「ジャスト~」は、ズート作のブルースだが、どろどろしない、さらりとした白人ブルースには、お洒落なユタのピアノがとても良く合う。

6曲目「トゥー~」も3人の絡みがとてもセンス良く感じる演奏で、ユタの「レニー・トリスターノ」を感じさせるシングルトーンと、余裕と寛ぎで吹き廻すズートに、聴いている者を上手いと思わせる、ロイドのハーモニー的アドリブも素晴らしいの一言です。

70年代を代表する、マッコイ・タイナーの名盤、最も極上のフュージョンだ!

2007-06-18 23:58:33 | フュージョン
今日は、非常にアコースティックで、色彩豊かな極上のフュージョンアルバムを紹介しましょう。
この盤は70年代を代表し、且つコルトレーン・サウンドから卒業した?「マッコイ・タイナー」の素晴らしきリーダーアルバムです。
フュージョンと言っても、コマーシャリズムに染まった企画、演奏とは一線を画し、アコースティック好きな、硬派のジャズ好きにも充分満足をして頂ける内容だと思います。
メンバーも下記の通り、70年代に考えうる、最強ラインナップですので、是非、ご一聴をお薦め致します。

アルバムタイトル…フライ・ウィズ・ザ・ウィンド

パーソネル…リーダー;マッコイ・タイナー(p)
      ヒューバート・ローズ(fl、afl)
      ポール・レンツィ(piccolo、fl)
      ロン・カーター(b)
      ビリー・コブハム(ds)
      レイモンド・ダステ(oboe)
      リンダ・ウッド(harp)
      ギレツミ・フランコ(tamb)
      ウィリアム・フィッシャー(arr、cond)
      ウィズ・ストリングス

曲目…1.フライ・ウィズ・ザ・ウィンド、2.サルヴァドーレ・デ・サンバ、3.ビヨンド・ザ・サン、4.ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム、5.ローレム

1976年1月19日~21日 バークレー録音

演奏(曲)について…まず、LPで言ったらA面2曲がまじにすごい出来です。
アルバム企画コンセプトは、完全にトップ・ヘヴィーな出来栄えです。
しかし、私はB面に配置された曲も非常に良い出来で、実は捨てがたい。

表題曲「フライ~」は、クラシックの管弦楽曲を思わせるイントロから、すぐさま激変して、この強固なメンバーの演奏が一気に爆発する。
ピアノ・トリオ「マッコイ、カーター、コブハム」の各メンバーを煽る推進力&ドライヴィングは半端ではなく、とにかく鼓舞しまくる。
特に「カーター」と「コブハム」は何かにとり付かれていると思える程、普段では想像出来ない様な、パワー演奏で押し捲る。
最後まで突き進む「完全一致」の演奏は、本当に素晴らしい。

2曲目「サルヴァドーレ~」は、表題曲以上に素晴らしい出来栄えで、このアルバムのベスト1だろう。
とくに、モーダルで、ラテンチックな美しいソロを弾く「マッコイ」に、アーバナイズされた締まったドラムで推進する「コブハム」、そしてここでの主役は、ずばりベーシストの「カーター」である。
彼にしては、珍しいぐらい野太いパワー系のベース音で、この大編成のコンボ(オケ)をぐいぐいと引っ張り、ものすごいインプロビゼーションを書き立てる、スーパー・エンジンと化している。
中間部分でソロを演じる「ローズ」のフルートも非常に良い出来で、この名演に花を添えている。

3曲目「ビヨンド~」は、美しいクラシック曲そのもので、個人的には大好きである。
まるで、ドビュッシーの様な印象派的な描写がなされた曲で、オーケストのヴァイオリンの美しい響きに、ローズのフルート、リンダのハープがこの絵画を描き切り、皆を夢の世界へと旅立たせる。

4曲目「ユー~」は、ラテン調のリズムのマッコイが素晴らしいピアノ・ソロをかまして、全員の集中力も途切れる事無く曲は進むが、中途でローズ幻想的なソロで皆を煽る。
ここでもリズムの中核、「コブハム」と「カーター」のガチガチ硬派な、タイム・キーピングは見事で、この曲(アルバム)を貧弱で軟派なフュージョンアルバムから、根絶しているのだ。

5曲目「ローレム」は、モード色全開の佳曲で、マッコイの華麗なピアノに、例によって最強リズムの二人がガッチリサポートをする。
一言で言えば、かなりマッチョなピアノ・トリオ演奏が終始演奏されており、オケやローズのフルートは、ここではほんのアクセント・スパイス程度として使われている。

最後にマッコイの代表的なアルバムと言ったが、「裏番」は間違いなく「ロン・カーター」だ。
私はカーターの参加したアルバムも多数所有しているが、ここでのカーターは彼の生涯膨大な録音の中で、最もハードで硬派な演奏をしているのは異論がない。

極上のブラジリアン・フュージョン…ウェイン・ショーター~ネイティブ・ダンサー

2007-06-17 23:51:24 | フュージョン
今日は、ウェイン・ショーターのリーダーアルバムにして、ブラジル音楽界の大御所、ミルトン・ナシメント達の参加を得て作成された歴史的名盤「ネイティブ・ダンサー」を紹介します。

個人的には、フュージョンと言うジャンルの音楽は、それ程好きなカテゴリーでは有りませんが、この盤はラテン・ポップアルバムとして見ても、素晴らしい出来なのでセレクトしました。

アルバムタイトル…ネイティブ・ダンサー

パーソネル…リーダー;ウェイン・ショーター(ts、ss)
      ミルトン・ナシメント(g、vo)
      ハービー・ハンコック(p、key)
      ワグネル・チーゾ(key)
      ジェイ・グレイドン(g、b)
      デヴィッド・アマロ(g)
      デイヴ・マクダニエル(b)
      ロベルト・シルヴァ(ds、perc)
      アイアート・モレイラ(perc)

曲目…1.ポンタ・デ・アレイア、2.ビューティ・アンド・ザ・ビースト、3.タルジ、4.ミラクル・オブ・ザ・フィッシュ、5.ジアナ、6.孤独の午後、7.アナ・マリア、8.リリア、9.ジョアンナのテーマ

1974年9月12日 LAヴィレッジ・レコーダーズにて録音

演奏(曲)について…まず、ミルトンの極上の歌がフューチャーされている3曲目「タルジ」が非常に良い演奏です。
ミルトンとショーターのコラボ作品としては、最高評価を受けており、非常に高品位のブラジリアン・ポップスに仕上がっている。
中間部でのショーターのテナー・サックスのバラード演奏も素晴らしく、ナシメントとのスキャットとの掛け合いは、言葉に出来ないぐらい美しいです。

6曲目の「孤独の午後」は、かなりジャジーな曲で、ここではショーターはテナー・サックスのインタープレイがすごいのだが、最も良いのは「ナシメント」のファルセット・ヴォーカリーズで、ジャジーな演奏の中で、不思議と違和感なく、曲にマッチしている、アーバンな演奏です。

7曲目「アナ・マリア」は、ショーターが妻に捧げた曲で、ボサ・ノヴァ調のリズムに乗って、しかしとても優しく風に身を委ねるような音色の美演がなされていて、私的には、この曲が一番好きです。

9曲目「ジョアンナのテーマ」は、ハンコックの作品で、ハンコックのアコースティック・ピアノと、ショーターのソプラノサックスが、非常に幻想的な絡みをして、極地的美演がなされている。
このアルバムのコンセプトからは、少し外れるかもしれないが、7曲目と同等で私は好きな曲です。

オープニング曲「ポンタ~」は、ミルトンのファルセットに導かれ、この曲&アルバムの序章が始まる。
不思議な歌声に、ジャズともポップスともロックとも言えない、異空間の音楽世界に、あっと言う間にタイム・スリップさせられて、この曲が只者では無い事を体感させられるのです。

8曲目「リリア」は、ナシメントがリスペクトする、マイルス・デイヴィスの70年代のサウンド(ビッチェズ・ブリュー、ジャック・ジョンソン、アガルタ、パンゲア等)を意識している編曲です。
私は「エレクトリック・マイルス」は好きでは無いので、個人的には評価し難いのだが、巷では3曲目の次に評価している曲だと思います。
バックのラテン係ったロック・リズムに、ショーターのサックスが飛翔するので、名演には違いないでしょう。

2曲目「ビューティ~」は、リズムこそラテンだが、パーカション、エレクトリック・ベース、アコースティック・ピアノ等のバックを務めるメンバーの演奏が、これぞフュージョンの王道とも言うべき、サウンド作りがなされている。
しかし、ショーターのソプラノサックスは、ジャズ的でアドリブソロも素晴らしく、中々の名演です。

ジェリー・マリガン~ジェル

2007-06-16 23:56:43 | ジャズ・(他)サックス
今日は、バリトン・サックスの名手、ジェリー・マリガンの飛切りセンスの良いアルバムを紹介します。

アルバムタイトル…ジェル

パーソネル…リーダー;ジェリー・マリガン(b-sax)
      トミー・フラナガン(p)
      ベン・タッカー(b)
      デイブ・ベイリー(ds)
      アレック・ドーシー(conga)

曲目…1.capricious、2.here I’ll stay、3.inside impromptu、4.you’ve come home、5.get out of town、6.blue boy、7.lonly town

演奏について…個人的にお薦めナンバー1は、1曲目のスタンダード「カプリコーン」がお気に入りです。
マリガンのバリトン・サックスと、フラナガンのセンス良いピアノが、寛ぎのラテン調のリズムに乗って、きっと貴方の心を癒してくれますよ。

それから、もろラテン度100%の、7曲目「ロンリー・タウン」は、気分ノリノリにさせてくれて、とても楽しい曲です。
特にラテン・リズムの重鎮、ベン・タッカーのベースが、メンバー全員をグイグイと引っ張って、終曲を飾るのに相応しい演奏です。

2曲目「ヒヤー~」は、マリガンの余裕綽々のバリトンに、コンガのドーシーが上手に絡んで、とても品の良いラテン・ジャズに仕上っています。
マリガンのこの余裕は、他の演奏者には無い、ある種の個性と言って良いかもしれません。

3曲目「インサイド~」は、コンガ入りの長調のバラードで、マリガンにとっては、正しく得意分野の演奏でしょう。
ここでのマリガンは、ちょっとファイトした演奏で吹くのですが、受けるフラナガンのピアノは、とても落ち着いていて優しい演奏で、この対比が良いですね。

4曲目「ユーヴ~」は、コンガが入っていますが、4ビートの正統的なジャズを演っており、ここではベイリーがシンバルを中心として、淡々とリズムを刻んでいるだけですが、そこが逆に一本筋通った男らしさが見えます。