紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

20世紀の最高の遺産の一つ…トリプル・ダブル・コンチェルト

2008-05-31 13:25:47 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
皆さん、お久しぶりです。
随分とご無沙汰していて、本当にすみませんです。
今日はクラシック好きなら誰でも知っている、正に一期一会の超名盤を一枚紹介しましょう。

アルバムタイトル…ベートーヴェン「トリプル・コンチェルト」
         ブラームス「ダブル・コンチェルト」

演奏者…ベートーヴェン・トリプル・コンチェルト
   (ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 ハ長調 作品56)
    ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
    ダヴィッド・オイストラフ(vl)
    スヴァトスラフ・リヒテル(p)
    ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(vc)
    ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

    ブラームス・ダブル・コンチェルト
   (ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102)
    ジョージ・セル(指揮)
    ダヴィッド・オイストラフ(vl)
    ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(vc)
    クリーブランド管弦楽団

曲目…ピアノ、ヴァイオリンとチェロのための三重協奏曲 ハ長調 作品56
   第一楽章…アレグロ(17:47)
   第二楽章…ラルゴ(5:35)
   第三楽章…ロンド・アラ・ポラッカ(12:52)

   ヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲 イ短調 作品102
   第一楽章…アレグロ(16:57)
   第二楽章…アンダンテ(7:53)
   第三楽章…ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ(8:35)

ベートーヴェン…1969年9月15日~17日ベルリンにて録音
ブラームス…1969年5月クリーブランドにて録音

原盤…英EMI  発売…東芝EMI
CD番号…TOCE-13077

演奏について…最初のベートーヴェンのトリプル・コンチェルトだが、「カラヤン」&「ベルリン・フィル」のオーケストラ・サポートは、非常にシンフォニックで雄弁な響きで曲を支配している。
この時代の「カラヤン」は、磨きぬいたサウンドには未だ到達しておらず、スーパー・オーケストラの「ベルリン・フィル」をパワフルにドライヴしてくれて、名アシスト・パッサーになりきっている。
しかし、ロシア(旧ソ連)の生んだ3人のマエストロ達は、抜群のテクニックを持ちながらも、それをひけらかすのでは無く、かなり室内楽的にお互いの調和を尊重したソロ演奏に従事している。
外見は厳ついロシア人?(失礼)が演奏しているのだが、ソロ演奏での内面はむしろ可憐な感じがする。
勿論、フォルテシモ等、パワフルなパートに入れば素晴らしい重厚さの演奏で押進めて来るのだが、その演奏は彼等ならば、むしろ当然であろう。
しかし、己を出さないピアニシモ等の繊細な表現に、非常な集中力を見せて、大切に演奏しているからこそ、迫力の楽章やパートが、より一層活きてくるのだと痛感させられる。
3人のソリストの内、最も出来が良いのは?個人的には「ロストロポーヴィッチ」がベスト・パフォーマンスを見せていると思う。
「リヒテル」は、ベートーヴェンの原曲が、ピアノ・パートに余り重きをおかず、彼のヴィルトオーゾが充分に発揮できないのが、少々残念な感じがする。
しかし、ピアノ演奏としては抜群ですね。
「オイストラフ」は、彼の晩年なので、キレ味や迫力のヴァイオリン演奏では無く、巨匠の貫禄や余裕が大家の芸風を表出させた演奏です。
勿論、培われた表現力は、流石の一言ですねぇ。
3楽章を聴き終えて、正しくブラボーで締めくくりたい名演です。

ブラームスのダブル・コンチェルト…ベートーヴェンのトリプル・コンチェルトよりは、原曲自体が優れているので、まず曲の劇的な展開にソリストのテクニックが完璧にマッチして、活きてくるのが良い。
「ロストロポーヴィッチ」は、前曲同様に絶好調で、「オイストラフ」も緊張感抜群のハードなソロで応酬してくる。
「セル」の指揮サポートも抜群に良い。
パワフルで有りつつ、非常にひき締まったサウンドは、名匠「セル」に完璧に鍛え上げられた集団、クリーブランド管の真骨頂であろう。
一糸乱れぬ合奏が、二人のマエストロに勇気と活力を与えてくれる。
しかし、それにしても若き日の「ロストロポーヴィッチ」の演奏…まじで良いなぁ。
来るべき自分の時代の扉をこじ開けた様なアグレッシブな演奏で、しかし大先輩「オイストラフ」を決してないがしろにはしていない。
先輩を立てつつ、自らを強烈にアピールしたソロ演奏で、聴き応え充分のパフォーマンスが形成されている。
特に第一楽章の厳格な響きが、魂を崇高に導いてくれる。

一転、緩楽章の第二では、「オイストラフ」の寛ぎと、良い意味での枯れた…人生(演奏)を達観した余裕弾きが最高に映える。

ラストの第三楽章は、「セル」&クリーブランド管、「ロストロポーヴィッチ」、「オイストラフ」が三位一体となった、厳格さと柔和さがバランス良く融合した演奏が展開される。
言うなれば、知・情・意のバランス感覚が優れた好演になっている。
しかし、柔和な演奏状態でも、精神の緊張感は全く失われていない。
この辺が、彼等がマエストロのマエストロたる所以だろう。

ベートーヴェン、ブラームス共、共演なのか?はたまた競演?なのか、いずれにせよ、バトルの部分と調和の部分が、バランス良くミックスされた好演です。
クラシックで有りながら、どこかジャズを彷彿するのは?やっぱりバトルっぽい感じがするからなんでしょう。
大家の自己主張している所と、相手を持ち上げる謙譲さが、見事に融合され、表現されている名盤です。

中庸…自然体…無骨…厳格…ヨッフム指揮/ドレスデン・シュターツカペレ~ブルックナー交響曲全集

2008-05-03 23:38:49 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日も以前紹介した、(HMV)発売の超廉価、名盤全集の一つから、「オイゲン・ヨッフム」指揮、「ドレスデン・シュターツカペレ」の「ブルックナー交響曲全集」を紹介します。

その全集から、1曲代表して、「交響曲第4番変ホ長調」「ロマンティック」を取上げましょう。

スコアは「ヨッフム」お気に入りの「ノヴァーク版」を採用していて、いかにもドイツ交響曲とも言うべき、無骨、厳格でいながらも、自然体で中庸の美学を表現してくれてます。

アルバムタイトル…ブルックナー交響曲全集

オイゲン・ヨッフム指揮
ドレスデン・シュターツカペレ

1975年~1980年 ドレスデン聖ルカ教会にて録音

原盤…英EMI 
CD番号…5-73905-2 ※輸入盤(9枚組)

演奏について…今回はこの全集から代表して、ブルックナー交響曲第4番「ロマンティック」をセレクトしました。

交響曲第4番「ロマンティック」…第一楽章では、比較的ゆっくりなテンポで、この曲の厳格さと雄大さを余すところ無く伝える。
このアルバムでの「ドレスデン・シュターツカペレ」の音色は、(録音機器&技術や、収録場所(教会)の影響も無いとは言えないが、同時期の「ブロムシュテット」が演じた「第7番」が極めて透明感が高かったのに比較して)、かなり色付けがなされている。
と言っても、とても渋く地味な単色で、例えるなら、銅色(ブロンズ・カラー)或いは、燻し銀色(ガンメタリック)が、一番相応しい色だと思う。
金管楽器群は、華やかなイメージよりも、かなり(音の)光を抑えて、輝かしい音色ではなく、ブロンズ像の様に抑えた色だが、完成された美があるんです。
そして、何よりも清楚な神々しさと尊厳が有って、(「ブルックナー」と「ヨッフム」、そして「ドレスデン・シュターツカペレ」の)ゲルマン魂を味わえる。
決して派手な演奏では無いが、一切の手抜きは無い。
これぞ職人技ですね。

第ニ楽章では、「ヨッフム」の構築する「ブルックナー」像に小宇宙を見る。
決して威張っていたり、肩肘張ったりしている訳ではないが、演奏に尊厳・威厳が充満している。
「ブルックナー」を語らせたら、日本一…いや、世界一?の「宇野功芳」先生が3大「ブルックナー指揮者」を挙げているが、確か「※クナッパーツブッシュ」は別格として、この演奏を振っている「ヨッフム」、それから「シューリヒト」、そして、「朝比奈隆」だったと思う。
彼らに言えるのは、「ブルックナー」の音楽(曲)に対して、自発的な真っ向勝負はしない…自然体に任せて、スコアと「ブルックナー」に身も心も任せているんです。
宇野氏に因れば「ブルックナー」演奏とは絶対的にそういうものだそうです。
それでいて、この「ヨッフム」演奏の終盤の盛り上がりはすごいです。

第三楽章…この交響曲の中で、一番変化に富んだ楽章ですが、「ヨッフム」は自己主張しすぎず、しかし的確に緩パートと急パートの対比を描き、第二楽章同様に、あくまで自然体で「ブルックナー」像を構築します。
「ヨッフム」流のスパイスが効いているのは、ゲルマン魂のみでしょう。
無骨で、ストイックで、職人気質で、あくまで精神的なエッセンスだけを、香とスパイスとして用いているんですね。

第四楽章…自然体で貫いている「ヨッフム」では有るが、この終楽章は、迫力のコーダを擁する所から「ドレスデン・シュターツカペレ」の集中力と緊張感が半端でない。
つまりオーケストラの自発性が、抜群に発揮された楽章&演奏になっているんです。
マッシブなフル・オーケストラ時の迫力はバッチリだし、ピアニシモでの静寂の緊張感も秀逸です。
それでも「ヨッフム」はずっと自然体で…流れに身を任せています。
これは、大河、ライン川の流れそのものなんでしょうか?
厳しさ、激しさは有るんですが、あくまでも自然的な厳しさなんですよ。
絶対に自然に逆らってはいけませんね。例え音楽であっても。
「ブルックナー」&「ヨッフム」は、それを良く判らせてくれますよ。

超人的テク、切味抜群…ハイフェッツ/ミュンシュ&ボストン響…メンデルスゾーンVI協奏曲

2008-04-10 23:44:30 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
生涯不敗…かの剣豪「宮本武蔵」が、剣をヴァイオリンに持ち替えて、生まれ変わったとしたら…???
多分、今日紹介する、二十世紀最高…いや、史上最強のヴィルトオーゾ・ヴァイオリニストの「ヤッシャ・ハイフェッツ」ですよと言っても、誰も否定できないでしょう。
いや、むしろその通りですと、肯定してくださる方も多いのでは?と思います。

それぐらい、彼のヴァイオリンは切味抜群で、完璧無比な技術を持ち得ているんです。
逆に余りにも完璧過ぎて、冷たいとかロボットの様な演奏だと揶揄された事もあるぐらいで…しかし、それでも「ハイフェッツ」の遺した演奏はどれもすごく、歴史的な意義が有るんです。

その中でも、曲的にも最もポピュラーで、指揮者、オーケストラの演奏(伴奏)を加味してベスト1的なレコードは?と問われれば、第一に候補に挙がるのが、この演奏、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲でしょう。

録音こそ、いかんせん古いので、良いとは言えないですが、それでも…この超名演が色褪せる事は絶対に無いと思います。

20世紀の奇跡…いや、「ハイフェッツ」ならば、普段の演奏・実力を是非味わって下さい。

アルバムタイトル…ハイフェッツ(vl) ミュンシュ指揮・ボストン交響楽団…メンデルスゾーンヴァイオリン協奏曲ホ短調 作品64

1959年2月23日、25日 シンフォニー・ホール ボストンにて録音

原盤…RCA RED SEAL 輸入盤(オリジナル・ジャケット・シリーズ)
CD番号…LSC-2314

演奏について…まず、最初にお断りしておくと、このCDオリジナル・ジャケ・シリーズも、先回ご案内させて頂いた、激安の輸入廉価盤、全集の内の一つで、超人「ヤッシャ・ハイフェッツ」の超名演・名盤の10枚組セットが、わずか五千円そこそこで、手に入るのである。
全く驚きの一言で、正直、有り得なーいと思うが、紛れも無い事実なのだ!!!

さて、演奏について言えば、全体的に早めのテンポで、第1楽章から第3楽章まで、ぐいぐいと進む。
「ハイフェッツ」の演奏技術は、勿論、完璧で、研ぎ澄まされた一音一音が、キリリと立って、冴えた音色で、そのコンプリート演奏を成し遂げる。

サポートする、「シャルル・ミュンシュ」と「ボストン・シンフォニー・オーケストラ」も、早めの演奏に微塵も遅れず、いや、むしろ「ハイフェッツ」を煽るぐらいに、ドライブ力に溢れた、力演をしている。
この頃の「ボストン響」は、「ミンシュ」と言う、名オーケストラ・ビルダーに扱かれ、育てられた為に、素晴らしい技術を持った、一流オーケストラになっており、「ハイフェッツ」と言う稀代の名人、ソリストのサポーターとして、申し分の無い伴奏をしてくれます。

それから、「ハイフェッツ」の演奏は、完璧過ぎて面白くないと思う人も、多いかもしれないが、それは間違いです。
完璧な演奏技術に裏付けされた、確かな音楽スピリットが、青白く、(実は激しく)燃え上がっていて、そうですね…ジャズ・トランペッターで言うなら「マイルス・デイヴィス」の、(マラソン・セッション時代?の)冷めた(完璧な)演奏に近いと言うと分かり易いかもしれません。

無機的な様でいて、実は深く、静かに燃えているんです。

多分、「宮本武蔵」も、剣客と言う冷静さの中に、誰にも絶対に負けないと言う、確固たる自負と信念を持っていたと思われます。

「武蔵」の生まれ変わり?「ハイフェッツ」であれば、当然同じ精神構造であったはずです。

研ぎ澄まされた演奏の中に、自然や美、そして人間愛がさりげなく隠されていて…シャイな「ハイフェッツ」は、それをテクニックを見せ付ける事によって、ひっそりと隠しているんです。

清々しい!ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/ドレスデン・シュターツカペレ~ブルックナー交響曲第7番

2008-03-18 22:09:25 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
ここで展開される音楽を一言で言うなら、バカラ製のショット・グラスの様な…重厚で、崇高で、透明感が鋭利…と言ったらようだろうか?

大河の様にゆったり流れる雄大さよりも、とても清々しく透き通る、清流の様なイメージの演奏がされているのです。

ブルックナーの朴訥さに加えて、人間の手が入った、つまり人工美の美しさが加えられた名演…そう、世界遺産で言えば、自然に調和した…白鳥城…ノイシュバシュタイン城の様な演奏なんですよ。

煌びやかでは無いが…とても優美、優雅で…心を清らかにしてくれます。

アルバムタイトル…「ブルックナー交響曲第7番ホ長調」

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮

ドレスデン・シュターツカペレ

第1楽章…アレグロ・モデラート(21:07)

第2楽章…アダージョ;非常に荘厳に、かつ非常にゆっくりと(24:32)

第3楽章…スケルツォ;非常に速くートリオ;やや遅く(9:39)

第4楽章…フィナーレ;快速に、しかし速すぎずに(12:25)

1980年6月30日~7月3日 東ドイツ、ドレスデン、ルカ教会にて録音

原盤…DENON 発売…日本コロムビア
CD番号…33C37-7960

演奏について…前説で殆ど述べてしまっているが、とにかく透明度が抜群に高い演奏なんです。
管楽器も弦楽器も、とにかく透き通っていて…しかし、決してガラス細工の様に繊細で壊れ易い訳ではない。
バカラのショット・グラスと比喩したが、透明で有りながらもガッチリとした重厚さを持っている。
「ブルックナー」の演奏と言えば、厳格、或いは朴訥のどちらかの範疇に属する演奏が多いと思う。
或いは、ものすごく自然体で、マッシブな音の洪水、楽器群に見も心も自然に任せて委ねる演奏、が多いのも事実です。

しかし、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・シュターツカペレ」は、それらの演奏のどれとも違うんです。

自然体に身を任せる部分が有るんですが、その自然は穏やかな春ではなく、かと言って厳格な真冬ではない。
良く晴れた冬の暖かい日中…或いは、無風で暖かさをほんのり感ずる様な晩秋が相応しいだろうと思う。
甘すぎず、厳しすぎず…この背景はとても中庸である。

オーケストラについて言えば、この当時の「シュターツカペレ・ドレスデン」は、東欧諸国のオケの中では、最も洗練されていた楽団と言っても良いでしょう。
いかにも無骨な…いや、野暮ったい楽団ではないので有るが、しかし、西側のオケ程、洗練されてもいない。
つまり、シカゴ・シンフォニーの様なヴィルトオーゾ集団でも無ければ、ウィーン・フィルの様な優雅さがある訳ではない。
しかし、無骨な国の中のさりげない洗練…実はこれがこの名演奏の味噌(秘薬)だと激しく思う。

この自然の秘薬によって、正しく「ブルックナー」と言う作曲家を表現するのに…他の指揮者、楽団との決定的な違いを導き出しているんです。

特に第1楽章~第2楽章の出来は抜群だと思います。
透明感を全面に押し出した指揮&演奏で、得も言えぬ美空間を演出しているのです。

逆に、第3楽章では、かなりマッシブでパワフルな演奏をするんですが、この楽章、この演奏表現は、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・SK」の持ち味を少し殺してしまった感が有るんですが…。
彼等には激しい、厳しい(厳し過ぎる)表現は似合わない。
もう少し抑制した演奏の方が良かったかも?

第4楽章の表現もまずまずでしょう。
荘厳さと透明感が程好く混じって、精緻さが有っても、細々しさは入っていない。
管楽器の透き通った響きが…とにかく美しいんですよ。

この演奏…最後まで聴いていると、とにかく心が洗われる気がします。
そう、クールではなく、クリヤーなんです。どこまでもクリヤーなんです!!!

攻撃的名演…ショスタコーヴィチ交響曲第12番~ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

2008-03-17 22:27:00 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
何か今日は、超攻撃的なオーケストラ曲が聴きたくなりまして、この盤を取り上げちゃいました。

20世紀ソビエトの生んだ大作曲家、「ショスタコーヴィッチ」の交響曲第12番ニ短調「1917年」作品112で、演奏は「ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー」指揮、ソビエト国立文化省交響楽団…謂わばお国物っていうやつですね。

とにかく、劇的な表現の演奏で、ロシア革命臭さがぷんぷんの、えぐい演奏ですけど、迫力十分で音の洪水が眼前に迫って来ますよ。

アルバムタイトル…ショスタコーヴィッチ作曲 交響曲第12番ニ短調「1917年」作品112

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)
ソビエト国立文化省交響楽団

第1楽章…「革命のペトログラード」モデラート~アレグロ(13:48)

第2楽章…「ラズリフ」アレグロ~アダージョ(12:39)

第3楽章…「オーロラ」リステッソ・テンポ~アレグロ(4:32)

第4楽章…「人類の夜明け」リステッソ・テンポ(10:34)

1983年録音

原盤…メロディア  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDC-544

演奏について…まず、「ロジェストヴェンスキー」の手兵として機能している「ソビエト国立文化省交響楽団」について、簡単に説明しておかなければならないだろう。
このオーケストラは、西側で活躍していた祖国のスター「ロジェストヴェンスキー」を呼び戻すために作られた、ヴィルトオーゾ集団なのである。
だから、演奏技術は高水準で、「ロジェヴェン」の意図する通りに演奏機能を果たすのである。

この交響曲自身の持つ、ロシア臭…オーケストラで表現すれば、燻し銀色…いや、鉛色の管楽器の音色が必要となってくるのだが、それについて言えば、申し分の無い音色と技術がある。

それにも増して特筆すべきは、音色こそ(敢えて)鉛色だが、オーケストラの演奏は、非常に精緻であり、何より素晴らしいのは、ロシア臭を漂わせながら、都会的に洗練された部分、つまりやぼではない品位、資質を、このオケが持っている事である。

その理由としては、やはり「ロジェストヴェンスキー」が齎している力が大きい事は否めない。
西側で多くの事を吸収し、咀嚼して来た「ロジェヴェン」による棒だからこそ、オーケストラが従順に反応できるのだと思う。

とにかく劇的で、演奏の起伏が激しい…大地をも揺るがすど迫力サウンドの演奏ですが、ピアニシモ系の部分では、非常に精緻極まりない、微細な表現もなされているんです。

楽章による色分けはこう言ったイメージですね。

ほの暗く不安感たっぷりで、ディープで厳格な、いかにもロシアっぽい第1楽章。

内面から滲み出て来る、抑圧のいらだたしさが、少しずつ顔を出す第2楽章。

行進曲風の展開に趣を感じ得る第3楽章。

最終コーダの盛り上がりが最高潮の、劇的な解釈で幕を閉じる第4楽章。

最後に…戦争嫌いな方には不向き?…確かにそうかもしれない。
しかし、平和ボケしている日本人には、たまにはこう言った緊張感がびんびんの曲を聴くのも良いかもね?
政治家の皆様が、銭金に目が眩んで、真の社会(国家)について、鑑みない日本人へのペーソスがいっぱい詰まっていて、良いと思うなぁ…僕はね!!

名指揮者;カルロ・マリア・ジュリーニの晩年の名演…ブラームス交響曲第4番ホ短調

2008-02-23 13:45:04 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
まず、最初に、このブログに遊びに来られておられます、とある友人に対して、このアルバム(紹介)を捧げます。

その方は「カルロ・マリア・ジュリーニ」と言う、イタリアが生んだ20世紀の巨匠、指揮者が、フェイヴァリットとの事なので、今日はその「ジュリーニ」の指揮する1枚を紹介させて頂きます。

アルバムタイトル…ブラームス交響曲第2番、第4番、悲劇的序曲

パーソネル…カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)
      ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目…DISC1…ブラームス交響曲第2番 ニ長調 作品73

   DISC2…ブラームス交響曲第4番 ホ短調 作品98
         悲劇的序曲 作品81

1991年4月録音・DISC1、1989年5月録音・DISC2

原盤…ドイツ・グラモフォン  発売…ポリドール㈱
CD番号…POCG-9625~26(2CD)

演奏について…今日は代表として、DISC2の交響曲第4番を取り上げさせて頂きます。

「ベートーヴェン」の影響を完全に受けている、傑作、第1番交響曲と異なり、第4番は「ブラームス」芸術の集大成とも言うべき、後期の傑作であります。
曲自体に、「ブラームス」の枯れた人生観と、隠された情熱が宿っており、またクラシックの総活とも言うべき、バロック的な形式も取り入れて、「ブラームス」が描き切った総合芸術のオブジェとなっているんです。

さて、ここでの「ジュリーニ」の演奏ですが、全曲において非常にゆったりとした(遅いと言った方が手っ取り早いかな?)テンポで曲を進めており、雄大な作品を更に掘り深くスケール・アップさせています。

第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」…雄大で真摯な「ジュリーニ」の棒捌きにより、「ブラームス」の心の広さまでもが感じ得る様な、深い情念が描かれています。
心の深みにじわっと入ってくる、「ウィーン・フィル」の弦音も素敵です。

第2楽章「アンダンテ・モデラート」…バロック形式を踏襲した二部形式の緩楽章ですが、「ジュリーニ」&「ウィーン・フィル」の演奏は、序盤はとにかく美しいの一言です。
優しい弦楽器の調べに、フルートやピッコロ、クラリネット等の管楽器がさりげなく装飾し、曲を紡いで行きます。
終盤は古風で厳格な響きを重視して、厳しく重厚なサウンドで押し進めてきます。
しかし、大河の流れの様な、ゆったりとしたロマンティシズムを失う事はなく、どこまでも流れを大切にした演奏なのです。

第3楽章…「アレグロ・ジョコーソ」…ブラームスには珍しい、スケルツォの様な楽章なんですが、「ジュリーニ」は、割ときびきびとしたリズムで、ダイナミックにこの楽章を描いて行きます。
強弱の付け方が激しくて、学者肌の「ジュリーニ」には、珍しいぐらいファイトしている演奏ですねぇ。
「ウィーン・フィル」のストリングスと、ホーン部も緊張感を保って、「ジュリーニ」のダイナミズムに溢れたコンダクティングに機敏に反応して、終盤のティンパニ等の打楽器群もピシャリとリズムを合わせて、劇的楽章を完璧に纏め上げてくれて…やった~大成功です!!

第4楽章「アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート」…「ブラームス」が、バロックのパッサカリアをモチーフにした楽章で、主題は「J.Sバッハ」の「カンタータ」を使用しているとの事。
とにかく原曲の主題が「バッハ」なだけに、とてつもなく厳粛で、心の中まで清々しくさせられる曲ですが、「ジュリーニ」の魔法の棒が、その精神性までも貫く様に透明度の高い演奏に仕上げています。
しかし、決して厳格なだけでは無く、ほのぼのとした優しさと慈愛が、緊張感溢れる演奏からも、じわっと滲み出ていて…人間「ジュリーニ」の、温かみが感じられます。
盛り上がっていくコーダが、まるで聳え立つ、ネパール山脈のエベレスト山の様に神々しくもあり…でも神はやっぱり優しいんですよ。
極寒のエベレストに差す、太陽光線の暖かさの様に、愛が溢れています。

「ジュリーニ」さん、こんな素敵な演奏を本当にありがとう。
あの方にも慈愛を届けて下さい!

生誕100年、ヘルベルト・フォン・カラヤン/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団~マーラー交響曲第9番

2008-01-06 23:12:31 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日は、今年、生きていたら生誕100年と言う、記念すべき年に当たる、20世紀クラシック界の巨匠指揮者、「ヘルベルト・フォン・カラヤン」が、手兵「ベルリン・フィル」を振って、ベルリン芸術週間での、歴史的ライブ録音にて、「マーラー」の「交響曲第9番」の演奏アルバムを紹介します。

「カラヤン」の「マーラー」演奏にはそこそこ定評が有るものの、磨きぬかれたオーケストレーション故に、実際は、作為的だの美術工芸品、偽宝石(ジルコニア)などと、言われる評論家の方々が多い事も否めません。
そう言った意味では、「ワルター」や「バーンスタイン」の「マーラー」直系の愛弟子達や、「テンシュテット」、「アバド」達の「マーラー」演奏に対して、定評のある指揮者等と評価を比べてると、低いと言わざるを得ませんでした。

「カラヤン」とは、アプローチやスタイルが違うものの、一般的な音楽好き(俗的)な我々にだけ?評価されていた、「マーラー」指揮者と言えば、「ゲオルグ・ショルティ」が代表的ですが、「カラヤン」も「ショルティ」と同様の評価、(専門家から見方が)なされていたと言っても過言では無いでしょう。

つまり、俗人受けが良く、評論家や専門家からの評価は、こと「マーラー」演奏に対しては、高いものでは無かったのです。

しかし、本アルバムの、この演奏は、その評価を覆したばかりか、20世紀の全「マーラー」演奏の中でも屈指の評価を得た、超絶的な名演奏なんです。

一言で言うと、「カラヤン」がレコーディングの鬼、録音の魔術師では無かったことが証明されて、ライブで最高のパフォーマンスを表現できる、真のマエストロ(巨匠)である事を、実力でもって知らしめた演奏、アルバムなのです。

とにかく、全編に漲る緊張感と、「カラヤン」の研ぎ澄まされた「タクト」の魔術に、「ベルリン・フィル」の団員達も、極限状態まで高まった精神を集中して、演奏に邁進しています。

曲的には、「マーラー」の第9は、聴き易い曲では無く、一寸マニアックで、長大な曲なのですが、多くの指揮者がベスト・パフォーマンスを遺している曲ですので、是非、慣れて聴いて頂きたいと思います。

アルバムタイトル…カラヤン/マーラー交響曲第9番ニ長調

演奏…ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目…第1楽章 アンダンテ・コモド ニ長調 4分の4拍子 ソナタ形式
   第2楽章 ゆっくりとしたレントラーのテンポで、いくらかぶきっちょに、そして非常に粗野に ハ長調 4分の2拍子 非常に拡大されたスケルツォ 
   第3楽章 ロンド ブルレスケ イ短調 2分の2拍子 きわめて反抗的に
   第4楽章 アダージョ 変ニ長調 4分の4拍子 ロンド形式

1982年9月 ベルリン芸術週間におけるライブ・レコーディング

原盤…ドイツ・グラモフォン 410-726-2  発売…ポリドール
CD番号…F66G-50038~39 2枚組

演奏について…冒頭の解説でも、かなり述べているので、手短に行きましょう。
 
まず、一つには「カラヤン」と言う、詳細、ディティールを磨きぬく手法を得意とした、指揮者の力量を、余す事無く伝える演奏形態に、寸分違わず応える、「ベルリン・フィルハーモニー」のビルトオーゾぶりと、技術を味わってもらいたい。

二つ目に、ライブ・レコーディングと言う、得も言えぬ緊張感により、高められた各人のコンセントレーションを、「カラヤン」が一つの指揮棒によって纏めて、精神性の非常に高い演奏が、徹頭徹尾成されている。

三つ目に「マーラー」の第9と言う曲自体が、名演を生んだ大きな要因になっていて、その理由としては、「マーラー・ミュージック」中、最も美しいと評価されている、第1楽章と、美しい死が訪れる、究極の美音楽(空間)の第4楽章、アダージョが、「カラヤン」の磨きぬいた美音、美しさと、とてもマッチしている事。
中間の第2楽章は、とても変化に富んだ面白い楽章であり、同じく第3楽章も「道化」の楽章として、趣の深い演奏が強いられるので、こう言う「ポピュラー・ミュージック」的な演奏を演らせたら、「カラヤン」の右に出る者はいない。

つまり、全楽章を通じて、「パーフェクト」な演奏がなされているので有る。

是非、「カラヤン」の「ベスト・パフォーマンス」の出来栄えの、この1枚、アルバムを聴いて下さい。

20世紀最高の指揮者が残した遺産…アルトゥーロ・トスカニーニ~レスピーギ、ローマ3部作

2007-09-24 19:33:43 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
巷では、20世紀最高の指揮者と言えば、「フルトヴェングラー」か、今日紹介する「トスカニーニ」を挙げる人が多いと思う。
時代は悲劇を生んだのか、この二人、活躍した時期も同時期で、尚且つ引退&他界した状況から、ステレオ盤をこの世に遺していない。うーぅーん、残念!!
もしも、ステレオ期だけで言ったら、20世紀最高の指揮者は、やはり「カラヤン」なんだろうなぁ。
しかし、帝王「カラヤン」でさえも、この二人の域には到達していないと思う。
それほど、この二人は図抜けた巨匠(マエストロ)だと思います。
まぁ、そんな事はどうでも良いんだけど、何を言いたいかと言うと、録音の貧弱さ(悪さ)を除けば、「フルヴェン」「トスカニーニ」の残した芸術は永遠不滅なんだよね。
そこで、今日は「トスカニーニ」の代表的なレコード(CD)を一枚紹介しましょう。

アルバムタイトル…レスピーギ作曲
         交響詩「ローマの松」、交響詩「ローマの噴水」、交響詩「ローマの祭り」 ※所謂、「ローマ3部作」

指揮…アルトゥーロ・トスカニーニ~NBC交響楽団

曲目…交響詩「ローマの松」 ①ボルゲーゼ荘の松(2:35)
              ②カタコンブ付近の松(6:36)
              ③ジャニコロの松(6:48)
              ④アッピア街道の松(4:53)
   交響詩「ローマの噴水」①夜明けのジュリアの噴水(3:52)
              ②朝のトリトンの噴水(2:45)
              ③昼のトレヴィの噴水(3:07)
              ④たそがれのメディチ荘の噴水(5:23)
   交響詩「ローマの祭り」①チェルチェンセス(4:48)
              ②50年祭(6:55)
              ③10月祭(7:08)
              ④主題祭(4:47)

録音…ローマの松・1953年3月17日
   ローマの噴水・1951年12月17日
   ローマの祭り・1949年12月12日 全てカーネギー・ホールにて

原盤…RCA 発売…BMGジャパン
CD番号…BVCG-9935

演奏について…まず、演奏(指揮)していた時の「トスカニーニ」の年齢だが、ローマの噴水の時で82歳、ローマの噴水の時だと、ほぼ86歳と言う(失礼ながら)かなりの高齢である。
しかしながら、一言で言うと「トスカニーニ」の演奏は、若々しいなどと言うより、そう、血が脈々と通っている(血が滾る)熱い演奏なのである。
大指揮者が、貫禄や威厳でコンダクトしているのでは無く、例を挙げると、80歳台半ばになっても、全く衰えていないイタリアンの総料理長が、3つ星シャフクラスの弟子達がいる現場で、味見の最終チェックをしている様な感じなんだろう。
つまり、「トスカニーニ」の前で、腕利きのソロイスト達が、非常なる緊張感を持って、しかし情熱的に演奏に終始している。
その演奏には、妥協や遊びは一切無いので、正直面白みは全く無いが、研ぎ澄まされたオーケストレーションにて、しかし決して冷徹でクール等ではなく、熱く血が燃えている演奏なんです。

ローマの松では、特に緩楽章の「ジャニコロの松」では、甘すぎないが適度にロマンティックで、自然美を活かした演奏がなされ、「アッピア街道の松」では一転して華美なオーケストレーションで、華やかさを表現する。
最晩年の演奏(指揮)とは思えない程、演奏が自発的な情熱で満ち満ちている。

ローマの噴水は、3曲の中では一番微音をメインにしている曲だが、この微音の表現も、弱弱しくはなく、音は小さくともピシッっと一本筋が通っている。
大先生の前で、楽団員は本当は緊張していただろうが、その演奏にはもはや緊張を超越して、純粋に音楽を追及し邁進している。
「トスカニーニ」…の棒には魔力が宿っているのか?

ローマの祭りはとても華やかな曲だが、演奏は華美なだけでなく、血の通った「即物主義」の原点的な演奏です。

最後にもう一言…冒頭で録音が悪い(モノーラル)だと言ったのだが、正直この時代の録音の中では、かなり音は良くて、聴き難くは無いんです。
「トスカニーニ」の芸術性のすごさを充分に堪能できるレベルに有ります。
是非、ご一聴を…。。。

ブログ始まって以来初の一日で2曲目の紹介しちゃおう。クレンペラー~フィルハーモニア管弦楽団…大地の歌

2007-09-10 23:23:06 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今月、来月、再来月と仕事で出張が沢山入っていて、ブログの更新率が間違いなく悪くなります。
そこで今日は、東京への出張から思いの外、早く帰宅できたので、1日で2枚目のアルバム紹介をしちゃいましょうか?
先ほどの軽やかで、さわやかなボサ・ノヴァとは、まるっきり正反対の、人間の苦悩を内面から抉り取った、歴史的な名曲、「マーラー」の交響曲「大地の歌」を紹介しましょう。

指揮は、ドイツの生んだ堅物職人的な名指揮者、「オットー・クレンペラー」で、演奏するオーケストラは、彼の手足として絶対的に機能するオケである、「フィルハーモニア管弦楽団」です。

歌う歌手は、男性パートがテノールの「フリッツ・ヴンダーリッヒ」で、女性パートは、「クリスタ・ルートヴィッヒ」です。

このアルバムは、交響曲「大地の歌」のステレオ期のベスト演奏に数多く選出されている、名盤の誉れが高い代表的な演奏です。
※モノーラルを含めると、ワルター/ヴィーン・フィルの初盤とベスト1を争うかもしれません。

アルバムタイトル…マーラー交響曲「大地の歌」

指揮…オットー・クレンペラー/フィルハーモニア管弦楽団(ニュー・フィルハーモニア管弦楽団)

独唱…フリッツ・ヴンダーリッヒ(テノール)1、3、5曲目
   クリスタ・ルートヴィッヒ(メゾ・ソプラノ)2、4、6曲目

曲目…交響曲「大地の歌」
   1.第1楽章:現世の悲しみを歌う酒宴の歌(8分07秒)
   2.第2楽章:秋の日に独りありて(10分10秒)
   3.第3楽章:青春の歌(3分43秒)
   4.第4楽章:美しきものを歌う(7分47秒)
   5.第5楽章:春の日酔いて暮らす(4分43秒)
   6.第6楽章:告別(29分32秒)

1964年2月、11月 1966年7月 録音

原盤…英EMI 発売…東芝EMI
CD番号…TOCE-59020

演奏について…まぁ、演奏時間を見て頂くと、一目瞭然なのだが、長大な第6楽章の出来が、この曲の「優・良・可」判定の基準の大半を占めるのは事実だろう。
ですから、「ルートヴィッヒ」の双肩(歌の出来に)、この演奏の良否がかかっていると言っても過言では有りません。

しかし、その前に、奇数楽章を歌っているテノールの「ヴンダーリッヒ」についてだが、彼の歌の出来は、どの楽章においても非常に素晴らしい。
特に第1楽章でのブリリアントな歌声は、「素敵男子」の代表で、「クレンペラー」が鳴らす、「フィルハーモニアO」のフルパワーオーケストラにも、全く負けていない歌唱音量です。

先頃、3大テナーの一人、「ルチアーノ・パヴァロッティ」氏が亡くなられたが、この「ヴンダーリッヒ」も1930年生まれなので、このアルバム録音後の1966年9月に事故で急逝されなかったら、「パヴァロッティ」氏と5歳しか違わないこともあり、彼が世界3大テナーの一人に選ばれていたと思うのは、私だけであろうか?
個人的には、「ホセ・カレーラス」「プラシド・ドミンゴ」の現存するお二人の若い頃よりも、「ヴンダーリッヒ」の(この時代の)方が、歌は上手かったと思います。
この歌声を聴く度に、返す返す、「佳人薄命」が残念でなりません。

さて、「ルートヴィッヒ」の第6楽章「告別」の歌唱についてだが、非常に重々しく、沈潜する楽章なのだが、とにかく素晴らしい名唱が堪能できる。
内面から出る悲しみを見事に表現していて、前半のドラとハープがメインの楽器群の中で、深く深く心の暗い淵まで、浸透してくる歌唱をされます。
後半の際立って美しい弦楽器とのハーモニーも、勿論見事なんですが。
加えて「クレンペラー」の重厚で丁寧な棒捌きも、「ルートヴィッヒ」(の歌唱)を強力にアシストしている。
後半部分はオーケストラ演奏がメインになるのだが、「クレンペラー」は楽器を充分に鳴らしているのだが、音を出すと言うよりは、精神的な声を(楽器から)出させている指揮なので、全く五月蝿くは無いし、(オケのメンバー全員が)非常に高いステージに精神が有るのです。
重厚さを前面に押出した弦楽器群と、幾分暗さを持った(オーボエ等の)管楽器群が、神聖で見事なハーモニーを奏でる。
とにかく「クレンペラー」は、「マーラー」の苦悩を奥底まで掘り下げ、死の淵から一筋の明かりを…わずかな光明を見出して彷徨っているのを表現している、壮絶な演奏をしているのだ。

「ルートヴィッヒ」の第2、第4楽章も、勿論良い出来です。

ライトなボサ・ノヴァと、辛辣なマーラー…今夜のご注文はドッチ?
ちょっと古いなぁ(笑)。。。

ムソルグスキー《展覧会の絵》…ピアノオリジナル&アシュケナージ編曲版~ヴラジミール・アシュケナージ

2007-08-20 22:31:17 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
皆様、こんばんわ。
今日は、指揮者&ピアニストとして著名で、且つ一流の「ヴラジミール・アシュケナージ」が、ピアノ演奏と、本人の編曲オーケストレーション版がカップリングされたアルバムを紹介しましょう。

曲は、「モデスト・ムソルグスキー」作曲の、組曲「展覧会の絵」です。
原曲はピアノ曲ですが、この曲を広く世に知らしめたのは、「ラヴェル」がオーケストレーションした版が認知されてからです。

「アシュケナージ」は、当人オリジナル編曲のこの版も中々良いので、未聴の方は一度機会があったら、是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…ムソルグスキー組曲《展覧会の絵》
         ピアノオリジナル&アシュケナージ編曲オーケストラ版

演奏…ヴラジミール・アシュケナージ(ピアノ)
                 (指揮)フィルハーモニア管弦楽団

曲目…1.プロムナード、2.こびと、3.プロムナード、4.古い城、5.プロムナード、6.チュイルリーの庭(遊んだあとのこどものけんか)、7.ブイドロ、8.プロムナード、9.卵のからをつけたひなどりの踊り、10.サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ(金持ちのユダヤ人と貧しいユダヤ人)、11.プロムナード、12.リモージュの市場、13.カタコンブ(ローマ時代の墓)、14.死せる言葉による死者への呼びかけ、15.バーバーヤーガの小屋(めんどりの足の上に立つ小屋)、16.キエフの大門

※ピアノ版、オーケストラ版とも同内容の組曲

1982年6月(ピアノ) 9月(オーケストラ)録音

原盤…DECCA 発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCD-9022

演奏について…まず、ピアノオリジナル版、オーケストラ版の両方とも、後半に(11曲目のプロムナード以降ぐらいから)ものすごい山場(盛り上げ)を持って来ている。
いわば、(編)曲自体が一つのクレッシェンドに作られ、超エンド・ヘヴィの代表的な演奏になっている。

また、非常に特徴的な部分では、「ラヴェル版」で聴き慣れていると、「プロムナード」は4回だが、「ムソルグスキー」オリジナルピアノ版では、「プロムナード」が5回出てくる。
「アシュケナージ版」も、上記にある様に、「プロムナード」が5回出てきます。

それには、「アシュケナージ」によると大いなる理由がある。

ピアノ曲はオリジナルなので、後半に盛り上げていく演奏が「ムソルグスキー」の本意らしい、言わばスタンダードな演奏なのだが、「ラヴェル」が華麗なオーケストレーションに編曲した事により、色彩豊かな「展覧会の絵」を(前半部分や各所に盛り上がりがある編曲)に、我々が慣らされてしまっているとの事らしい。
言わば、「ラヴェル」がスコアを誤認したものが、普及(認知)されて、世に広まったらしいのだ。
だから、この「アシュケナージ編曲版」が、実は最も「ムソルグスキー」の意図に沿ったオーケストラ版(プロムナード5回を含めて)の演奏だとの事である。

もう一つの特色として、両演奏とも、どちらも「ロシア」の大地の香りがぷんぷんと漂う、無骨で暗い色調(特にオーケストラ版)の演奏なのだが、これは「アシュケナージ」と「ムソルグスキー」の同郷マエストロが、極めて高いステージで融合されたからだと解釈できる。
ピアノでは、いつもは叙情的で、かなりハイセンスな演奏表現をする「アシュケナージ」だが、ここで彼はロシアの偉大なる先輩(作曲家)の、偉大な作品を目の当りにして、土着気質の「封印」を解いたと思える。

「アシュケナージ」が十八番の「ラフマニノフ」の曲を演奏する時以上に、この演奏(2曲)とも、飛んではじけているのだ。
もしも、「ラヴェル編曲」を聴いた事が無い方は、先に「ラヴェル版」を聴きましょう。
その後で「アシュケナージ版」のロシアの大地の香りを、思い切りかぎましょう。

夭逝の超天才…ディヌ・リパッティ~グリーグ&シューマンピアノ協奏曲

2007-08-12 23:47:59 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日は何かピアノコンチェルトを聴きたくなって、あまりにも名盤ですがこのアルバムを選びました。
有り余る才能と演奏技術を持ちながら、病のためにわずか33歳で天に召された、悲劇の天才ピアニスト「ディヌ・リパッティ」の人気協奏曲のカップリング・アルバムです。

録音は本当に古い音源ですが、彼の演奏の素晴らしさは感じて取れますので、聴いた事の無い方は是非ご視聴下さい。
それでは紹介しましょう。

アルバムタイトル…ディヌ・リパッティ(ピアノ)、グリーグ・ピアノ協奏曲イ短調 作品16&シューマン・ピアノ協奏曲イ短調 作品54
指揮 アルチェオ・ガリエラ(グリーグ)、ヘルベルト・フォン・カラヤン(シューマン) フィルハーモニア管弦楽団

曲目…グリーグ・ピアノ協奏曲イ短調 作品16
1.第1楽章:アレグロ・モルト・モデラート
2.第2楽章:アダージョ
3.第3楽章:アレグロ・モデラート・モルト・エ・マルカート~アンダンテ・マエストーソ
   シューマン・ピアノ協奏曲イ短調 作品54
4.第1楽章:アレグロ・アフェトゥオーソ
5.第2楽章:インテルメッツオ アンダンティーノ・グラツィオーソ
6.第3楽章:アレグロ・ヴィヴァーチェ

パーソネル…ディヌ・リパッティ(ピアノ)
      指揮;アルチェオ・ガリエラ(グリーグ)1~3曲
      指揮;ヘルベルト・フォン・カラヤン(シューマン) 
      フィルハーモニア管弦楽団

1947年9月(グリーグ) 1948年4月(シューマン) 録音

英EMI・レコード原盤
CDナンバー…TOCEー59176

演奏について…「リパッティ」の演奏について、この曲・演奏は誰のが一番優れていて、「リパッティ」はこのレベルだろう云々等と言う、下衆な解説や紹介は全く必要ない。
と言うのも、彼の演奏・個性は唯一無二であり、彼亡き後も誰も真似できないスタイルだからです。

彼のスタイルを出来るだけ簡潔に言うならば、19世紀のロマンティズムを、優れた演奏技術で見事に再現した演奏美・演奏家とでも言えば良いのかな。
言うなれば、後期ロマン派の最後の生き残り的な人なんだと思う。
演奏技術について言えば、超絶技巧と言えば「マウリツィオ・ポリーニ」の方が上だと思うし、ヴィルトオーゾで言えば「ヴラジミール・ホロヴィッツ」の方が遥かに上だろう。
しかし、彼等スーパー・ピアニストでさえも「リパッティ」に敵わない事がある。

一つは「気品(貴賓)」である。
とにかく演奏自体に、常に芳醇な気品が漂っていて、クラシック音楽が王侯貴族の娯楽だった、正しくその時代にタイムスリップさせられる様な、高貴な装いが感じられる演奏なんです。

それから「間・空間の美学」が素晴らしい。
いかにも西洋全とした王侯貴族の娯楽音楽なのだが、日本人の琴線に触れる「間」つまり演奏自体に、えもいえぬ「わび・さび」がある。
これは、彼が幼少の頃から非常に病弱な人だった事もあって、常日頃「死」と言う概念に実は捉われていたのかも知れず、その精神状態から来た物だろう。
死に場所を探す「武士道精神」を知らず知らずの内に身につけたのかもしれない。

それから3つめが「お人柄」が、とにかく素晴らしい方だった(らしい)。
諸説によると、彼は聖者の様な方であり、知人・友人は言うに及ばず、師匠の「コルトー」、「ブーランジェ」、「ミンシュ」、「メニューイン」等からも可愛がられて、とても謙虚なそれでいて演奏に対しては非常にストイックな演奏家だった。

これらの人物背景から、この2大協奏曲の演奏も大凡想像が付く事でしょう。
どちらの曲もゆったりとしたリズムで、気品に満ち溢れたロマンティックな演奏で、取分け「緩楽章」の表現は筆舌し難い程に美しい。
演奏テクニックでの美しさだけでなく、内面から滲み出てくる「究極の美演」です。
しかし、美しいだけではありません。
しっかりとしたテクニックに裏付された、ディナーミクや雄大な表現もバッチリとなされており、曲の知情意のバランスも素晴らしいです。

そして、伴奏する指揮者も、二人それぞれ「ガリエラ」「カラヤン」が大袈裟にならずに中庸の美学的な演奏で、名ピアニストをしっかりとサポートしています。

録音は確かに悪いですが、是非とも皆さんに一度は聴いて頂きたい「正真正銘の名演」です。
 

イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ四季中の「四季」アーヨ盤

2007-07-25 23:39:00 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日も何か恥ずかしい様な、クラシック入門名盤のベスト10に入りそうなアルバム紹介で恐縮ですが、「イ・ムジチ合奏団」の演奏しているヴィヴァルディの「四季」の中で、一番の名演では?と思うのが、「フェリックス・アーヨ」の2度目の録音(1959年盤)のこのアルバムです。

アルバムタイトル…ヴィヴァルディ協奏曲集「四季」作品8
 
演奏者…イ・ムジチ合奏団 
    フェリックス・アーヨ(vl)

曲順…1.協奏曲第1番ホ長調 RV269「春」
   ①アレグロ、②ラルゴ、③アレグロ
   2.協奏曲第2番ト短調 RV315「夏」
   ④アレグロノンモルト、⑤アダージョ、⑥プレスト
   3.協奏曲第3番ヘ長調 RV293「秋」
   ⑦アレグロ、⑧アダージョモルト、⑨アレグロ
   4.協奏曲第4番ヘ短調 RV297「冬」
   ⑩アレグロノンモルト、⑪ラルゴ、⑫アレグロ

1959年4月29日~5月6日 ウィーンにて録音

演奏について…イ・ムジチ合奏団は、過去5回?四季を録音しているらしいのだが、私が持っているアルバムは、この「アーヨ盤」2度目の録音と、「ミケルッチ盤」、「カルミレッリ盤」の3枚だけであるが、全体像を一言で言うと、この盤での演奏が一番ゆったりとしたスローテンポで、じっくり聴かす演奏になっている。

この盤と比べると、「ミケルッチ盤」「カルミレッリ盤」共々、スピーディで軽やかな演奏であり、(新録音の度に演奏時間が短くなっているよう)聴き易いと言えばそうとも言えるが、やはりこれだけの技量の、世界的な合奏団が弾くのであれば、ヴィルトオーゾで重厚感溢れる、この盤の様な演奏の方が、イ・ムジチの品格を上げるのではないかと思う。
更にこの盤の特徴としては、曲調の対比の描き方が顕著で、演奏も最も叙情的である事が挙げられる。
つまり「四季」と言う表題を描き、演奏する事に一番近づいた演奏だとも言えるだろう。

各パートの詳細で言うと、最もこの盤で良いのは、緩楽章、つまり「アダージョ」のパートである。
「夏」の2曲目⑤や、「秋」の2曲目⑧がそのパートである。
取分け「秋」の⑧のピアニシモの演奏表現は素晴らしい出来映えです。

それから「春」に次ぐ有名曲「冬」の第1曲⑩は、このアルバム随一と言えるほど、知情意のバランスが完璧な演奏で評価◎です。
⑪⑫の演奏も抜群に良いので、「四季」4曲の中では、とにかく「冬」がベストの演奏でしょう。

次いでは上記のアダージョが素晴らしい、「秋」、次点が「夏」でしょうか。

最も有名な「春」は、ゆったりリズムで叙情的に仕上げている事が逆に仇になっているのが、チト残念です。
何故なら「春」はやはり軽やかな方が、より「春」らしいので、この楽章に限っては、個人的には「ミケルッチ盤」に軍配を上げたいですね。

しかし、それは非常に個人的な感想ですし、また、録音も1959年だが、それ程悪くはないので、万人にお薦めできる「ヴィヴァルディ」の「四季」の好アルバムです。

チャイコフスキー・ピアノ協奏曲 第1番変ロ短調 リヒテル(ピアノ) カラヤン/ウィーン交響楽団

2007-07-20 23:39:49 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日紹介のこの盤は、クラシックのピアノ協奏曲の中でも、人気・知名度ともおそらく1番ではなかろうか?と言う名曲であり、それを演奏しているレコードの中で最も評価を受けているアルバムです。

言わば、名曲の名演盤として、揺ぎ無い地位を確保しているアルバムなのです。

アルバムタイトル…チャイコフスキー・ピアノ協奏曲 第1番変ロ短調
 
パーソネル…スヴァトスラフ・リヒテル(ピアノ) 
      ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
      ウィーン交響楽団

演奏について…第1楽章の、冒頭の有名なピアノソロ演奏から、ものすごいパワフルな和音で「リヒテル」が弾く。
言わばこの演奏に対しての一種の「決意表明」がなされると、受ける「カラヤン」&「ウィーン響」も、それ以上に、非常にアグレッシヴなパワー演奏で応える。
「リヒテル」のパワー系演奏は、何ら珍しくは無いが、「カラヤン」がこの様にいきり立って、ソリストの真っ向勝負を受けることは極めて稀なので、そう言う意味では、とても貴重な演奏が収められているのは確かです。

第2楽章では、緩やかさと寛大さに満ち溢れた、とてもゆったりした悠久の時が流れるかの様な緩楽章が演奏される。
「リヒテル」はロマンティックだが、ロシアの土着性気質も充分感じる事が出来る、非常に「チャイコフスキーらしい」御国演奏をする。
「カラヤン」はいつもの洗練されたオーケストレーションと言うより、後期ロマン派としてのチャイコフスキーと捉えて、雄大なシンフォニック演奏で「リヒテル」をアシストする。

第3楽章で、「リヒテル」が、再度パワフル・ピアノに戻ると、「カラヤン」も又、パワフル・オーケストレーションで返す。
分かり易く言うと、クラシックのピアノ協奏曲と言う「闘技場」を使用した、サンボ代表の「リヒテル」とキック・ボクシング代表の「カラヤン」が、K1の舞台でガチンコで戦う様な演奏です。

どちらが勝ったかって?

延長戦ドロー、引き分けが結果相応と思うが、もしも優劣を点けるとすれば、ガチンコ勝負に慣れている「リヒテル」が1ポイント・リードを奪って「判定勝ち」と言ったところでしょう。

追伸…オリジナルレコードには、収録されていなかった、ラフマニノフの前奏曲がこのアルバムには5曲入っているのも、「リヒテル」有利の判定に一役買いそうです。

尚、余談ですが、このピアノ・コンチェルトの同曲異演の超名盤としては、①ホロヴィッツ&トスカニーニ盤、②アルゲリッチ&コンドラシン(ライブ)盤の二つを挙げておきます。
この盤と合わせて三つ聴き比べると、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番のすごさが改めて分かります。
しかし、どの演奏もガチンコバトル系なので、一寸疲れるかもしれません。


若き日の金字塔、ナルシソ・イエペス~アランフェス協奏曲

2007-06-01 23:48:44 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
後のジャズに絶大な影響を与えた、20世紀を代表するギター協奏曲である、ロドリーゴ作曲の「アランフェス協奏曲」の代表的なアルバムがこれです。

若き日の「ナルシソ・イエペス」(まだ彼の代名詞である10弦ギターは使用せずに、通常の6弦ギターを用いての演奏&録音)は、スペインの生んだ最高の指揮者「アタウルフォ・アルヘンタ」の名アシスト演奏もあり、本当に切ればスペイン色の血が吹き出るほど、熱く燃えた情熱的な演奏がなされている。

アルバムタイトル…「アランフェス協奏曲」

演奏者…ナルシソ・イエペス(g)
    アタウルフォ・アルヘンタ(con)
    ラファエル・フリューベック・デ・ブルゴス(con)※1
    オドン・アロンソ(con)※2
    スペイン国立管弦楽団

曲目…1.アランフェス協奏曲(第1楽章・5:55、第2楽章・9:55、第3楽章・5:19) 2.ある貴紳のための幻想曲※1(第1楽章・5:25、第2楽章・9:52、第3楽章・2:03、第4楽章・5:06) 3.ヴィヴァルディ・ギター協奏曲※2(第1楽章・3:28、第2楽章・4:15、第3楽章・2:13) バッハ・シャコンヌ・ニ短調(14:46)

演奏について…全曲目中最も素晴らしい演奏は、表題曲の「アランフェス」です。
取分け有名なアダージョである第2楽章の、美しく完璧な演奏と言ったら筆舌し難い。
イエペスの完璧なテクニックに加えて、聴いていて演奏のバックに有る背景まで見えて来るほどの知・情・意のバランスにすぐれた、アルヘンタの指揮も相まって50年近く経った今でも、この曲ベスト1の評価が揺るぎない名演奏を生んでいる。
イエペスも通常6弦ギターを使用しているので、他人には出来ない独自のテクニックのような分かり易い物ではなく、純粋にギターに魂を込めて弾いている姿が、余計に人を惹きつける。
正しくシンプルイズベストの代表的な名盤である。

コンダクターが、「デ・ブルゴス」に代わって、ある貴紳のための幻想曲では、イエペスの超絶的な演奏テクニックが冴え渡り、圧倒される。

終曲のバッハのシャコンヌでは、「イエペス」のソロ・ギター演奏となる。
ここでは、何にも束縛されない自由な空間の中で、ヴァイオリンによる原曲(無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番BWV1004の終楽章)を、ギター用に編曲したのだが、とにかく演奏に没頭し、集中したギターの申し子に、天から神が降臨するかのような、けがれ無き透明度の高い音色で崇高に奏でている。
オープニングの「アランフェス」に匹敵する、素晴らしき名演と言えよう。


きらびやかなピアノタッチの名演、ダニエル・バレンボイム~モーツァルトピアノ協奏曲

2007-05-22 23:52:30 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日は、モーツァルトピアノ協奏曲22番&24番の演奏で、ダニエル・バレンボイムが指揮&ピアノ演奏している(弾き振り)評価の高い名盤を紹介しましょう。

アルバムタイトル…モーツァルトピアノ協奏曲22番&24番

演奏…ダニエル・バレンボイム(ピアノ&指揮)
   ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目…モーツァルトピアノ協奏曲22番変ホ長調 K.482
   第1楽章(13:33)第2楽章(9:51)第3楽章(12:03)
   
   モーツァルトピアノ協奏曲24番ハ短調 K.491
   第1楽章(14:05)第2楽章(8:10)第3楽章(9:31)

1988年、1989年録音

演奏について…2曲の内でも大のお薦めは、やはり超名曲24番ハ短調が良い。
非常に劇的な第1楽章のアレグロでは、シンフォニックな分厚いサウンドを奏でるベルリン・フィルと粒立ちの良いバレンボイムのピアノタッチが非常に良くマッチングをしている。
第2楽章ラルゲットは、伸びやかで優しいピアノの響きは、まるで絶景を思い起こさせるようで、とても趣深い。
そしてこの曲の演奏の白眉は、第3楽章のアレグレットである。
ここでは、バレンボイムの明るい粒立ちだが、情感たっぷりのピアノと、ビルトゥオーゾのベルリン・フィルが心地よいバトル(松坂VSイチローの対戦かな?)を繰り広げているような素晴らしい競演がなされており、正に珠玉の名演奏である。

第22番も名演だが、バレンボイムの非常に粒立ちのハッキリしたピアノ音が、逆に長調の曲調に合いすぎて、モーツァルトの作曲された長調曲には全て有るとされている、明るさの中の暗さ(影)が、特に第1楽章のアレグロにおいて、若干感じにくい様に思う。
しかし、影が感じにくいと言うのは、あくまでも「若干」なのであって、バレンボイムの完璧なまでのピアノ演奏と、それに応えるベルリン・フィルも完璧な演奏をしているので、名演には相違ない。
特に、第2楽章のアンダンテにおけるバレンボイムのリリカルな演奏は、天上的美しさで絶品です。
第3楽章の序盤のアレグロのきらびやかな演奏から、叙情的なアンダンテカンタービレに移ってからの演奏も非常な名演です。

バレンボイムの超人的な「弾き振り」の名演奏を堪能しましょう。