紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

超名盤なのに超廉価の輸入盤クラシック…スヴァトスラフ・リヒテル~バッハ平均律クラヴィーア全集

2008-04-07 22:40:29 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
最近、ひょんな事から、輸入盤のクラシック・アルバムを某有名レコード店から売られているのを知り…それも有名な超が付く名盤ながら、とてもとても安い値段(ウルトラ廉価で)…またまたビックリ!って感じで、驚きが倍増、いや~5倍増しました。

これらのアルバム…日本語の解説が付いた、言わば日本盤だったら、一寸手が出ないぐらい高価なアルバム(全集)が、ものすごーく安いので、最近ついつい(沢山)買ってしまって…所謂、はまっている状況です。

そして、今日紹介させて頂く、その中の1枚(セット)が、このアルバムなんですよ。

アルバムタイトル…スヴァトスラフ・リヒテル~バッハ平均律クラヴィーア曲集
第1巻&第2巻BMV.846~893

パーソネル…スヴァトスラフ・リヒテル(p)

曲目…DISC1.…プレリュードとフーガ1~14 BWV846~859
   DISC2.…プレリュードとフーガ15~24 BWV860~869
   DISC3.…プレリュードとフーガ1~13 BWV870~882
   DISC4.…プレリュードとフーガ14~24 BWV883~893 

1970年7月21日~31日、1972年8月、9月、1973年2月ザルツブルグにて録音

原盤…メロディア  発売…ビクター(前)、原盤・発売(現在)…独RCA
CD番号…GD60949(4枚組)輸入盤

クラシックがお好きな方なら、誰でもご存知の、超名盤なんですけど…輸入盤4枚組で、価格は¥2,344と言う値段です。
★安いと言うより、もはや恐ろしい???っていうぐらいの価格(世界)ですね。
昨今出ている日本盤なら、1枚のCDでさえ、買えない可能性もある訳で…もう、輸入盤以外は買えなくなりそうです。

さて、肝心な演奏についてですが、「リヒテル」が弾く演奏って、いかにも旧ロシア(ソビエト)出身者らしく、骨太で無骨、いかにも職人気質のイメージが強いのですが、ここで演奏される「J.S.バッハ」には、その様なイメージが余り感じられません。
かなり、ロマンティックで、明朗、快活な演奏で進行します。

さて、DISC1ですが、この冒頭「プレリュードとフーガ」の1曲目、そして2曲目と、すぐさま、とてもロマンティシズム溢れる演奏で、聴く者の心の琴線に触れ捲くります。

3曲目も煌びやかで、飛び跳ねる様なタッチが素敵で、心地良い演奏です。

一転して、4曲目では…感傷的で、静かで、音の余白と静寂を優しいタッチで表現してくれます。
「リヒテル」ってこんなに繊細な表現をする人だったかなぁ?と改めて、別の魅力を発見できるでしょう。

5曲目や7曲目では、ハッキリ、くっきりと明確なタッチでキリリと曲を仕上げて、天性のヴィルトオーゾぶりを垣間見せます。

6曲目や9曲目では、流麗さと繊細さを対比させた表現が見事です。

8曲目は、元曲が空間を活かした曲なので、「リヒテル」は、非常にゆったりと一音一音を大切に弾いて、「J.S.バッハ」の思索された哲学的な要素をしっかりと抽出していて…とても感動的で味わい深い名演奏です。
しんみりと心に染み渡る幻想的な感覚が素敵ですね。

10曲目も一言で言って、とても良いですねぇ。
いかにも「バッハ」らしい、硬軟が渾然となったアーキテクチュアが見事な曲で、「リヒテル」の実直な演奏がピッタリマッチします。

11曲目や14曲目では、カチッとした音で緊張感を保って、ビシッと〆た演奏をしています。

12曲目でまた鎮美的で、とても静かな表現で、「バッハ」の神々しさと清々しさを示します。
この曲&演奏では、更に深く深遠に入った神に対するアーメンが聞こえるでしょう。
非常に敬虔なクリスチャンの言霊と言えば良いのでしょうか?

13曲目では、「バッハ」らしい、高音部の調整、展開を表現している曲中で、低音部のポイントが重厚さを持っているのがgoodです。
この締まった低音、左手の表現が、素晴らしいスパイスとして効果抜群なんです。

いかにも「リヒテル」らしくない、この美演…DISC1から、逆噴射のエンジン全開で…気持ち良~い!!

DISC2以降は、機会を持って、又、書くことに致しましょう。
それでは、お休みなさい。

不世出のプリマドンナ、マリア・カラスの代表作~プッチーニ「トスカ」

2008-03-31 14:19:57 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
20世紀最高の…不世出のソプラノ歌手、「マリア・カラス」の若い頃の代表作であり、またイタリア・オペラを振らせれば、屈指の存在である「ヴィクトール・デ・サバータ」にとっても最高傑作との誉れが高いのが、今日紹介するアルバムです。

原作は、パリ演劇界にその人有りと言われた重鎮、「サルデュー」が書いた、悲劇の戯曲で、それを「ジャコモ・プッチーニ」が、満を持して19世紀の終わりにオペラ化したのです。

このオペラがレコーディングされてから、55年もの時が経過しておりますが、未だ嘗て、この演奏・録音を凌駕したアルバム(実演も?)は出てきておりません。

今日は、イタリア・オペラの最高峰を是非、ご賞味下さい。

アルバムタイトル…プッチーニ歌劇「トスカ」サバータ指揮/ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団 カラス、ディ・ステファノ、ゴッビ 他

パーソネル…マリア・カラス(ソプラノ)「フローリア・トスカ」役
      ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)「マリア・カヴァラドッシ」
      ティト・ゴッビ(バリトン)「スカルピア」
      フランコ・カラブラーゼ(バス)「チェーザレ・アンジェロッティ」
      メルキオーレ・ルイゼ(バリトン)「堂守」役
      アンジェロ・メルクリアーリ(テノール)「スポレッタ」
      ダリオ・ガゼルリ(バス)「シャルローネ及び牢番」
      アルヴァーロ・コルドヴァ(ボーイ・ソプラノ)「羊飼い」

      ヴィクトール・デ・サバータ(指揮)
      ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団
      ヴィットーレ・ヴェネツィアーニ(合唱指揮) 

曲目

DISC1

第1幕…1.ああ!やっとの思いで!、2.いつも洗ってばかりだ、3.なんということ!あの人の絵姿じゃ、4.絵の具をくれ、妙なる調和、5.誰だ、そこにいるのは!、6.マリオ!マリオ!マリオ!/ここだよ!、7.さあ、聞いて頂戴な、8.さあ、仕事をさせてくれ、9.ああ、あの眼が/君の黒く、燃える瞳に、10.やきもち屋さん!、11.トスカは気のいい女だ、12.この上もなく嬉しい知らせじゃ、閣下!、13.教会でこのような馬鹿騒ぎとは!、14.トスカだな?儂を見つけなかったろうな、15.それに私はほんとの悲しい気持ちで…、16.警官を3人と馬車を一台…急いで

DISC2

第2幕…1.トスカは素晴らしい鷹だ!、2.儂としては、狂暴な征服の方が、3.おお、君、狩猟はどうだったね?、4.まずまずだ!、5.アンジェロッティは、どこにいるんだね?、6.さあ、私達だけで、親友のようにお話を、7.シャルローネ、カヴァリエーレは、何といわれた?、8.さあ、トスカ、言いなさい、9.フローリア!/あなた…、10.あの人をお助けください!/儂が?…それは、むしろあなただ、11.若しも、役目に対して誓った忠節を…儂は、以前からプリマドンナのあなた、12.あなたは、どれ程儂を憎んでいるのか!、13.私は歌に生き、愛に生き…“歌に生き、愛に生き”、14.さあ、御覧になって、私は手を合わせて、15.儂は約束を果たしたぞ…、16.トスカ、とうとう儂のものとなったぞ!、17.今は許してやるわ!

第3幕…1.ああ、私の限りないため息よ、2.管弦楽、3.マリオ・カヴァラドッシですね?、4.星は輝き…“星も光ぬ”、4.フローリア・トスカと…、5.おお、柔らかく、けがれ知らぬ、快い手!、6.さあ、時刻は迫ってます、7.私にとっての心がかりはただ君のこと、8.あの人達は来ないわね、9.待つということは、なんて長いことでしょう!、10.マリオ、さあ早く!

原盤…EMI  発売…東芝EMI
CD番号…TOCE-59401~2

演奏について…まず、特筆すべきは、「デ・サバータ」の指揮であろう。
ベリズモ・オペラにジャスト・マッチの、濃密で劇的な表現力は、他に比肩する者がいないだろう。
ミラノ・スカラ座管弦楽団も、「デ・サバータ」の棒に、一糸乱れぬ適応を見せて、きら星のスター歌手軍団のアシストを完璧に果たす。
とても濃い音色で、極彩色のこのオペラを美しくカラフルに彩り、管楽器のブリリアントな響きと、弦楽器のロマンティックな味付けが素晴らしい。
取分け、第2幕での劇的な演奏は、他では一寸経験出来ないぐらいに良いですね。
しかし、極彩色の表現・演奏だけでなく、繊細で微音での表現が多いパートでの演奏もすごいです。
また、合唱団の出来も良く、同様に第2幕では幻想的な世界へと誘います。

さて、歌手の出来ですが、「マリア・カラス」については、後述するとして、バリトンの「ティト・ゴッピ」は、相当名唱だと思う。
輝かしくも迫力十分の歌いっぷりに、イタリア・オペラの醍醐味を味わえる。
悪者、「スカルビア」の身の毛も弥立つ恐ろしさを、完璧な歌唱と、魂で歌い上げる様は、正に適役と言えよう。
第2幕終幕での、「トスカ:カラス」との掛け合い(愛憎劇?)は、必聴物です。

また、「ディ・ステファノ」のテノールも、このオペラの数多ある録音、ディスクの中でも間違いなく最高峰でしょう。
声の良さは勿論のこと、「カヴァラドッシ」と言う、ナイーヴな役の性格を見事に歌っており、この男の弱さや優しい感情を描き切っています。
彼の歌の代表的なパートですが、これも代表的なアリア、第3幕、4曲「星は輝き…星も光ぬ」について書くと…死を覚悟した「カヴァラドッシ」が、「トスカ」に対する思いの全てを伝える歌だが、男の憂いが伝わる名唱です。

さて、いよいよ「マリア・カラス」についてですが、このオペラで最も有名なアリア、第2幕、13番「私は歌に生き、愛に生き…」から、申しましょう。
ここでの「カラス」は、まだまだ歌声も若々しいし、声の張りも十分です。
しかしながら、感情移入と表現は(若いとは言え)非常に豊かで、愛の切なさ、苦しさを神に願って…見事に歌い切っています。
また、「トスカ」の第2幕は、このオペラ劇中で、歌手にとっての一番の魅せ所であり、特に「トスカ」を我が物にしようとして、最終的に「スカルビア」が「トスカ」の手にかけられるパートは、聴き所でしょう。
ここでの「カラス」の憂い、失意、悲しさを纏った、歌唱も素晴らしいです。
そして、「ディ・ステファノ」との愛の絶唱、第3幕の「トスカ」「カヴァラロッシ」との掛け合い、繊細な二人の心情を伝える最重要パートですが、「カラス」の正に真骨頂で、驚異の歌声から、妖艶さと清らかさの両面を見て取れます。

最後に…指揮、歌手、オーケストラ、合唱の全てが、正しくパーフェクトな演奏のオペラ(アルバム)は中々無いのですが、この盤は、そう言った意味では、正に稀有な存在のアルバムです。
唯一の難点は、録音が古い(MONAURAL)事だけでしょう。
クラシックを主に聴く方々にとっては、ここだけが残念ですね。

★ジャズが好きで、クラシックも聴く人は、(ジャズは、名盤に音源が古いMONO録音が多いので)そんなに、不満は感じないと思います。
いずれにせよ、昨今のクラシック・ブームで、(クラシック)を聴く様になった初心者の方にもお薦めしたい1枚です。

ライヴ録音のオペラ名盤…アバド指揮/ウィーン・フィル~歌劇「ヴォツェック」

2007-10-14 22:57:37 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
二十世紀オペラの最高峰、「アルバン・ベルク」作曲の歌劇「ヴォツェック」の素晴らしい演奏のアルバムを、今日は紹介しましょう。

「ヴォツェック」とは、まこと愚かな(精神的に弱い)兵士の名前(人)で、悪い医者に実験台まがいの事をされたり、上官と内縁の妻の不倫などでにより、精神的に思い悩んだ挙句、最後には内縁の妻を殺し、自らも気が狂って、池で溺れ死ぬと言う結末、一種排他的なオペラなんです。

しかし、この悲劇は「ベルク」が、キリスト教の「マグダラのマリア」についてのテーゼを追求している事も見逃せません。
また、人間の醜さ、弱さ、いじめ、愛と欲望、嫉妬、等、現代社会の病んでいる様を、20世紀の前半に、早くも抉り取って警鐘としている先見性にも驚くばかりです。
いや、先見性と言うより、「マグダラのマリア」のテーゼからすると、「イエス」の死後から、およそ2000年経った今でも、人間の精神構造の、特に弱い部分と言うのは、殆ど克服されていない、所謂「弱点」として、現代人もいまだ保持している事を改めて追求しているのだと思います。

余り小難しい事を長々述べても、皆様が飽きてしまうと思うので、「ベルク」のこの作品の作曲の意図、(あくまでも私、個人的なの解釈なんですが…)は、これで終わりにします。

さて、このアルバム(名盤)を作った方達ですが、指揮は「クラウディオ・アバド」…現存する指揮者の中では最高のオーソリティです。
受けるオケは、「ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団」…こちらも世界最高のオーケストラの一つです。

歌手陣について言えば、主役ヴォツェックの「グルントヘーバー」、妻マリーの「ベーレンス」、鼓手長の「ラファイナー」等、オール・キャストがはまり役と言って良いでしょう。

この難解な作品を演じるのには、指揮、オケ、歌手陣共申し分の無いメンバーです。 
難しい作品ですが、是非、皆様に聴いて欲しい(アルバム)です。

アルバムタイトル…歌劇「ヴォツェック」全曲

パーソネル…クラウディオ・アバド(指揮)
      ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
      ヘルムート・フロシャウワー(合唱指揮)
      ウィーン国立歌劇場合唱団 ウィーン少年合唱団
      フランツ・グルントヘーバー(バリトン)…ヴォツェック
      ヴァルター・ラファイナー(テノール)…鼓手長
      フィリップ・ラングリッジ(テノール)…アンドレス
      ハインツ・ツェドニク(テノール)…大尉
      オーゲ・ハウクランド(バス)…医者
      アルフレート・シュラメック(バス)…第一の徒弟職人
      アレクサンダー・マリー(バリトン)…第ニの徒弟職人
      ペーター・イエロジッツ(テノール)…白痴
      ヒルデガルト・ベーレンス(ソプラノ)…マリー
      アンナ・ゴンダ(アルト)…マルグレート
      ヴェルナー・カーメニク(テノール)…兵士

第1幕 第1場…「ゆっくり、ヴォツェック、ゆっくり!」 (8:13)
    第2場…「おい、ここは呪われているぞ」 (6:41)
    第3場…「チンブン、チンブン、聞こえる坊や?」 (8:11)
    第4場…「一体何てことだ、ヴォツェック?」 (7:35)
    第5場…「ちょっと歩いてごらんなさい」 (2:55)

第2幕 第1場…「何て光る石だろう!」 (5:30)
    第2場…「たいそうお急ぎで、どちらへ、棺桶釘先生?」 (8:53)
    第3場…「いらっしゃい、フランツ」 (4:15)
    第4場…「俺はシャツを着ているが、これは俺の物じゃない」(9:41)
    第5場…「ああ!ああ!アンドレス!俺は眠れん」 (4:26)

第3幕 第1場…「しかして、その口に虚偽なかりき」 (2:59)
        「御足許にひざまづき、泣き、御足に接吻し」 (2:03)
    第2場…「左へずうっと行けば町よ」 (4:30)
    第3場…「みんな、踊れ、踊りつづけろ!」 (3:27)
    第4場…「ナイフは?ナイフはどこだ?」 (7:50)
    第5場…「ぐるぐる、ぐるぐる、バラの冠、踊れ!」 (1:40)

1987年6月 ウィーン国立歌劇場にてライヴ録音

原盤…独グラモフォン  販売…ポリドール㈱
CD番号…F64G-20317/8 (2枚組)

演奏について…正直に言って、私は「ヴォツェック」は、このアルバムしか聴いた事が無いんです。

巷では、「カール・ベーム」指揮、ベルリン・ドイツ・オペラ・O、「フィッシャー=ディースカウ」(バリトン)、「ヴンダーリヒ」(テノール)の、夢の組合せ、超名盤が存在するのですが、私は聴いた事が無いんです。

ですから、この盤を他と比べての批評と言うか、感想を書く事は出来ませんので、あくまでもこの盤について、記述して行きます。

一言で言うと、「精緻で非常な緊張感に包まれた演奏」です。

実際は、かなり大編成のオーケストラなんですが、まるで室内楽の如く、締ったタイトな音質で、一糸乱れぬオーケストの統率を、「アバド」が魔法の如くの棒捌きでまとめ上げています。

しかしながら、曲そのものは、非常に緊張感の有る、20世紀クラシック独特のおどろおどろしい曲調で、それを「アバド」が不安感としてを見事に描ききってもいます。

歌唱について言えば、主役ヴォツェックの「グルントヘーバー」は、ノイローゼ男の狂乱ぶりを的確に歌い上げており、マリー役「ベーレンス」の出来も抜群です。

ライヴ録音とは思えぬ程、「完璧」な演奏と歌唱が融合された、この金字塔アルバムは、皆様に絶対にお薦めです。

ピュアな心で真摯に聴きたい…グレン・グールド~バッハ・イタリア協奏曲 他

2007-10-02 23:53:43 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日は心を無にして、何も考えずに聴けるアルバムは無いかな?と考えていた所、やはり「バッハ」しか無いなと思い、「グレン・グールド」のこのアルバムをチョイスしました。

アルバムタイトル…バッハ~イタリア協奏曲/パルティータ/フランス組曲/イギリス組曲

演奏…グレン・グールド(p)

曲目…1.イタリア協奏曲ヘ長調 BWV971
   ①第1楽章…アレグロ(4:09)
   ②第2楽章…アンダンテ(5:56)
   ③第3楽章…プレスト(3:02)

   2.パルティータ第1番変ロ短調 BWV825
   ①プレリューディウム(1:52)
   ②アレマンダ(1:54)
   ③コレンテ(1:44)
   ④サラバンド(3:09)
   ⑤メヌエットⅠ&Ⅱ(1:26)
   ⑥ジーガ(1:22)

   3.パルティータ第2番ハ短調 BVW826
   ①シンフォニア(4:13)
   ②アルマンド(3:14)
   ③クーラント(1:49)
   ④サラバンド(2:35)
   ⑤ロンドー(1:36)
   ⑥カプリッチョ(1:49)

   4.フランス組曲第2番ハ短調 BVW813
   ①アルマンド(2:34)
   ②クーラント(1:07)
   ③サラバンド(2:15)
   ④エール(0:53)
   ⑤メヌエット(0:49)
   ⑥ジーグ(1:43)

   5.フランス組曲第6番ホ長調 BVW817
   ①アルマンド(1:33)
   ②クーラント(1:00)
   ③サラバンド(2:37)
   ④ガヴォット(0:36)
   ⑤ポロネーズ(0:53)
   ⑥メヌエット(0:47)
   ⑦ブーレ(0:58)
   ⑧ジーグ(2:05)

   6.イギリス組曲2番イ短調 BVW807
   ①プレリュード(4:30)
   ②アルマンド(1:33)
   ③クーラント(1:11)
   ④サラバンド(3:02)
   ⑤ブーレⅠ(1:26)
   ⑥ブーレⅡ(2:00)
   ⑦ジーグ(2:19)

1.…1959年6月23~29日、2.…1959年5月1日、8日、9月22日、3.1959年6月22、23日 NY 30Th Street Studioにて録音
4.…1972年11月5日、5.…1971年3月14日、5月23日、6.…1971年5月23日 カナダ トロント Eaton's Auditorium 録音

原盤…米コロンビア 発売…SONY MUSIC JAPAN
CD番号…SICC-326

演奏について…内なる世界をギリギリの境界線にて音として捉え、我々に訴えかけて来る、聖なる音空間を演奏できるのは、世界広しと言えども「グレン・グールド」しかいないと思う。

このアルバムに録られている演奏は、1959年の「グールド」20代の若かりし頃から、隠匿生活に入って、もはや巨匠として君臨していた40歳丁度ぐらいの二つの時代の演奏が収録されているアルバムです。

やはり、20代半ばの演奏「イタリア協奏曲とパルティータ2曲」は、非常にリリカルでナイーヴな、繊細さが前面に出た演奏です。
「グールド」は、おそらく何も考えずに、天賦の才の煌めきを信じて、自然と音を紡いでいます。

特に、緩楽章における優しさの中にキラリと光る鋭利な感性と表現は、計算して出来た演奏には思えません。
奇行癖や変人振りが有名なアーティストですが、この辺の天才振りと無邪気さ?は、一種「モーツァルト」と相通ずる共通点に思います。

本当に、イタリア協奏曲の「アンダンテ」、パルティータ1番の「アレマンダ」、「サラバンド」、パルティータ2番の「アルマンド」と「サラバンド」の大人し目の緩楽章のリリカルな魅力は、筆舌し難いです。

さて、1970年代の、巨匠となってからの演奏…「フランス組曲」2曲と、「イギリス組曲」では、進化した「グールド」の演奏が見て取れます。
緩楽章では、上記のリリカルな面に加えて、やはり成熟した「グールド」が、熟考し、思索した人間性が演奏に映し出されています。

又、急楽章では、若い頃は自然に任せた自発的な演奏で、言わば天衣無縫に弾いていた節がありますが、この時代になると「グールド」の脳細胞が活性化して出した結論を、音符に乗せて表現している様です。

前回、紹介した「ゴールドベルク変奏曲」で、新・旧両アルバムで表現した「グールド」の進化の過程が、この1枚のアルバムでは体験できるんです。

PS…進化した「グールド」と言う言い方をしていますが、旧(若い)ナイーヴな「グールド」を決して批判、卑下するつもりなどは毛頭有りません。
天衣無縫な天才性と、閃き&煌きの見事な演奏は、巨匠「グールド」では、少し失っている所も有ります。
まぁ、その閃きを失った部分を、人生経験と己の頭脳(解釈)で、補った結果が思索を加えた演奏なんですけどね…。
しかし、新旧いずれにせよ、自分の心がピュアになれる(浄化される)名演奏には違い有りません。


I氏に御悔みを…J.S・バッハ無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ~ヘンリク・シェリング

2007-09-03 23:36:58 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
「大バッハ」芸術の金字塔の一つ、「無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲)」を今日の紹介アルバムとし、私の敬愛するI氏に捧げましょう。

さて、今日は表題の様に、私がお世話になった(特に精神的に支えて下さった)知人I氏が、病気の為に亡くなられました。
享年52歳と言う若さでした。(佳人薄命でしょうか?)
病気をされていた事は聞いていたのですが、まさかこんなに病状が悪く、帰らぬ人になるなんて想像もしていませんで、結局お見舞いに行く事も出来ませんでした。
何か自分にとって、一生後悔が残りそうに落ち込んで、申し訳ない気持ちに苛まれています。
せめてもの御侘びに、I氏が天国に召される様に、心よりお悔やみ申し上げ、「J.S・バッハ」の無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータをご供養代わりに捧げます。

演奏は稀代のバッハ弾き、多分、ヴァイオリニストの中では、史上最高のバッハ奏者と言っても良い、「ヘンリク・シェリング」の名盤をチョイス致します。

アルバムタイトル…J.S・バッハ 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ(全曲) BVW1001-1006

ヘンリク・シェリング(vl)

曲目…1.ソナタ第1番 ト短調 BVW1001 
   ①Adagio、②Fuga.Allegro、③Siciliano、④Presto
   2.パルティータ第1番 ロ短調 BVW1002 
   ①Allemande、②Double、③Courante、④Double Presto、⑤Sarabande、⑥Double、⑦Tempo di Bourree、⑧Double
   3.ソナタ第2番 イ短調 BVW1003 
   ①Grave、②Fuga、③Andante、④Allegro
   4.パルティータ第2番 ニ短調 BVW1004
   ①Allemande、②Courante、③Sarabande、④Gigue、⑤Chaconne
   5.ソナタ第3番 ハ長調 BVW1005
   ①Adagio、②Fuga alla breve、③Largo、④Allegro assai 
   6.パルティータ第3番 ホ長調 BVW1006
   ①Preludio、②Loure、③Gavotte en Rondeau、④Menuet Ⅰ/Ⅱ、⑤Bourree、⑥Gigue

1967年7月8~20日 スイス、ヴヴェイ劇場 録音

原盤…Deutsche Grammophon 発売…ポリドール
CD番号…F66G-20001~20002

演奏について…一言で言えば、亡き故人を畏怖、尊敬し、清々しいピュアな心で無心に祈りを込めるのに相応しい、尊厳ある名演奏がこのアルバムでなされている。

神の如く、シンプルだが無限の拡がりを見せる、「バッハ」の曲には、余計な考えや、計算は正直言って不必要である。

そこで「シェリング」は、何も余計な事には手を加えず、大バッハのスコアを忠実に楽器を演奏すると言う、至ってシンプルに音を出す事に終始して、時空を超えて「バッハ」が音楽によって語ろうとしている精神性を、逆に表現する事が出来たのである。

音色はどこまでも澄んで美しく、余計な力は必要以上には加えず、楽器から出る自然な音を心から喜んで、出して行く。
「バッハ」の曲はヴァイオリニストとしては、それ程、超絶技巧で無くとも演奏は可能だが、神の声(音)を弾きこなし、音を出す事は本当に難しい。
しかし、「シェリング」は「バッハ」を敬愛し、多くの曲を弾き込んで来たので、自然にその演奏が出来ている。

特にお薦めの曲(楽章)だが、やはり無伴奏全曲中、最も有名な「パルティータ第2番 ニ短調」を上げたい。
①~④までの特徴的な舞曲に加えて、長大な⑤曲目「シャコンヌ」に、「バッハ」ヴァイオリン曲のエッセンスが全部と言って良いくらい盛り込まれた、偉大な芸術家の集大成の楽章だ。
「シェリング」は、持てる技術の全てを駆使して演奏表現するが、これは上述の通り外面的な物で、この演奏の真髄は「大バッハ」の精神性をどこまで、表現できるかに有る。
己を出さずに、「バッハ」の神の声を楽器からそのまま出すと言う、シンプル・イズ・ベスト…実は最も難しい事を「シェリング」は、やり遂げている。
自然発生の表現(音)を出したとは言ったが、演奏の内容的にも、非の打ち所が無く、知・情・意のバランスも素晴らしく、魂の宿った演奏が、貴方の心を揺さぶるでしょう。

最後に…このアルバム(曲)聴き終えた時に、貴方の心は清らかに浄化され、一服の清涼剤を飲んだ様に、晴れやかな気分になる事でしょう。

I氏も、何も迷わずに天国に行って、この世界を見守って頂きたいと願っています。
I氏…お疲れ様でした。そして、ありがとうございました。(合掌)。。。

若かりし頃のシャイーが描き出した傑作…プロコフィエフ~アレクサンドル・ネフスキー

2007-08-01 23:51:06 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
このプロコフィエフの書いたカンタータ、「アレクサンドル・ネフスキー」は、13世紀にロシアに実在した英雄、「アレクサンドル・ヤルスラヴィッチ」がネフスキーと呼ばれロシアの英雄になった、彼の生涯を描いた曲である。
また、演奏・指揮しているのは、録音当時若くして天才指揮者と呼ばれた「リッカルド・シャイー」の代表的なレコード(CD)である。

アルバムタイトル…プロコフィエフ
         カンタータ「アレクサンドル・ネフスキー」op.78

演奏…リッカルド・シャイー(指揮)
   クリーヴランド管弦楽団
   クリーヴランド管弦楽団合唱団(合唱指揮…ロバート・ペイジ)
   イリーナ・アルヒポヴァ(メゾ・ソプラノ)

曲目…1.モンゴルの制圧にあえぐロシア
   2.アレクサンドル・ネフスキーの歌
   3.プスコーフの十字軍士
   4.めざめよ、ロシア人民
   5.氷上の戦い
   6.死の原野
   7.アレクサンドルのプスコーフ入城

1983年3月録音

演奏について…一言で言うと、シャイーの天才性が充分発揮され、聴き手が堪能できる名演である。
理由として、まず、クリーヴランド管弦楽団の最も持ち味と言える、精緻なオーケストレーションを、完璧にドライヴィングしている点が挙げられよう。
このオケの歴史は、オーケストラ・ビルダー役となり、基礎を叩き込み、超一流に仕立て上げた名指揮者「ジョージ・セル」と、その完成を更に高めた「ピエール・ブーレーズ」の、学者肌二人の指揮者が育て上げたオーケストラで、一時期「ロリン・マゼール」が音楽監督時代に、演奏(レコーディング)の、好不調の波が激しい時代もあったが、この若き天才は、先輩二人の最良の遺産部分を活かした演奏をしたことにより、類稀な名演を導き出したのである。

7つあるパートの中で最も聴き物(所)は、一番時間が長い「氷上の戦い」です。
元来、戦闘シーンは大袈裟で派手な演奏になりがちだが、ここでの「シャイー」は非常にディティールを磨きぬいた、精巧極まりない演奏をして、最もマッシヴなフルオーケストレーションの場面でも、情感の激しさ等は表現しつつ、オケは決して五月蝿く鳴らしてはいない。
合唱コンダクターの「ペイジ」のアシストも、この若者を強力にサポートしている。
そして精緻だが、ロシアの大地の叫びは洗練させすぎずに、土の香が残る大陸の人間らしさも分かる描き方をしているのには、末恐ろしいと感じる。
まるで、ストラヴィンスキーの「ハルサイ」の「ブーレーズ」盤のようですね。
非常に繊細な微音で聴かせる後半部分も秀逸の名演です。

6パート「死の原野」の静音パートも聴き応え充分で、声楽パート、メゾ・ソプラノの「アルヒポヴァ」も、じっくり丁寧に歌い込んでいて、伴奏を合わせるクリーヴランドOと「シャイー」の指揮も彼女の歌とベスト・マッチングを見せる。
5パートと並ぶ、このアルバム中、白眉の名演・名唱です。

プスコーフの十字軍士では、おどろおどろしい旋律の激しい部分と、ピアニシモなどの微音パートでの表現力と、棒さばきの対比が絶妙で、特に静かな場面こそ「シャイー」&「クリーヴランドO」の見せ所(聴かせ所)の、面目躍如の部分だと改めて感じる。

それ以外のパートでは、短い曲だが、「めざめよ、ロシア人民」の合唱パートも上記同様、ロシア臭さが残った、それでいて洗練されている良い演奏です。

ホロヴィッツ・プレイズ・スクリアビン

2007-07-15 23:07:16 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日紹介のアルバムは、日本編集と言うか企画物ではありますが、20世紀最高のピアニスト、「ウラディミール・ホロヴィッツ」が、RCAに録音したスクリアビン作品の大半が収録されたアルバムです。
「ホロヴィッツ」と「スクリアビン」、祖国ロシアのご当曲&演奏ですので、相性は抜群です。
また、演奏テクニックについても、スクリアビンの曲は非常に難曲ですが、全盛期のホロヴィツですから、楽々弾きこなしています。

アルバムタイトル…ホロヴィッツ・プレイズ・スクリアビン

アーティスト…ウラディミール・ホロヴィッツ(p)

曲目…1.ピアノ・ソナタ第5番 作品53
  前奏曲集
   2.ハ長調 作品11の1
   3.嬰ハ短調 作品11の10
   4.ホ長調 作品11の9
   5.ト長調 作品11の3
   6.変ロ短調 作品11の16
   7.変ト長調 作品11の13
   8.変ホ短調 作品11の14
   9.嬰ヘ短調 作品15の2
  10.ロ長調 作品16の1
  11.ロ短調 作品13の6
  12.変ホ短調 作品16の4
  13.ト短調 作品27の1
  14.イ短調 作品51の2
  15.変ニ長調 作品48の3
  16.作品67の1
  17.作品59の
 ピアノ・ソナタ第3番 嬰ヘ短調 作品23
  18.ドラマティコ 嬰ヘ短調
  19.アレグレット 変ホ長調
  20.アンダンテ ロ短調
  21.プレスト・コン・フォーコ 嬰ヘ短調
  22.練習曲 変ロ短調
  23.練習曲 嬰ハ短調
  24.練習曲 嬰ニ短調

録音…1…1976年2月、2~21…1956年5月NY、22&23…1953年2月25日 カーネギーホール、24…1982年5月22日 ロンドン・ロイヤル・フェスティバル・ホール

演奏について…まず、「ホロヴィッツ」が50歳そこそこで、録音した前奏曲集だが、やはり演奏全般に若々しさや活力が漲っていて、一音一音も非常にパワフルで、正に「ヴィルトオーゾ・ピアニスト」の面目躍如の演奏です。

同様に「ピアノ・ソナタ第3番」も、前奏曲と同時期の録音だけに、起伏の激しい曲の特徴を余す所無く取らえて、劇的に且つ繊細に仕上げていて素晴らしい名演奏です。

それから、冒頭を飾る名曲、「ピアノ・ソナタ第5番」ですが、この時代は、巨匠・大家として油が乗り切った「ホロヴィッツ」だけに、知情意のバランスが最適で、細部まで良く思索されていて、録音されている同曲のベスト演奏でしょう。

3曲ある練習曲は、「変ロ短調」と「嬰ハ短調」が、このアルバムで最も若い(古い)1953年録音で、逆に「嬰ニ短調」は、最も老獪な(新しい)1982年の録音です。
若い時の2曲は、やはり相当エネルギッシュな演奏で、録音自体は古いので、音は良く無いですが、音の一粒一粒の粒子が立っていると分かるぐらい、生命力に満ち溢れています。
一方、晩年の録音「嬰ニ短調」ですが、例の歴史的事件「初来日時のひび割れた骨董演奏」よりも更に加齢している時の演奏ですが、何と若い時以上にパワフルでマッシブな演奏であることに、驚かされます。
しかし、この演奏は、燃え尽きる前の「最後のろうそくの明かり」だったのでしょう。
若い頃は無理して弾いていなくても、余裕を持って音がパワフルなのですが、晩年は持てる力を出し切って(力を振り絞って)ダイナミズムを捻出しているのです。

しかし、不世出の大ピアニストの最も得意な作曲家の貴重な演奏が録音された、とても良いアルバムです。

20世紀随一の有名声楽曲…オルフ~カルミナ・ブラーナ レヴァイン&シカゴ響

2007-07-10 23:56:19 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
世界一のシェイプ・アップ&ビルド・アップされたマッチョなオーケストラ、シカゴ交響楽団を、ジャームス・レヴァインが指揮した、20世紀の名曲オルフ作曲「カルミナ・ブラーナ」を紹介しましょう。

とにかく、この迫力ある重厚な楽曲に最もフィットするオケは、世界中でも「シカゴ響」に勝る楽団は無いでしょう。
率いるレヴァインの指揮も、演奏の詳細はオケのメンバーの自発性に委ねて、自らは自然体でオケをまとめることだけに専念していますが、これが世界一のオケをリードするのにとても素晴らしい効果を上げています。

独唱は、ことさらバリトンの「ベルント・ヴァイクル」が優れた名唱で、この楽曲のステイタスを何ランクも上げています。

アルバムタイトル…カール・オルフ作曲~「カルミナ・ブラーナ」

演奏…ジャームス・レヴァイン指揮
   シカゴ交響楽団 
   グレン・エリン児童合唱団
   ジューン・アンダーソン(ソプラノ)
   フィリップ・クリーチ(ソプラノ)
   ベルント・ヴァイクル(バリトン)

曲詳細…1.おお、運の女神よ、2.運の女神の傷手を、「第1部」3.春の愉しい面ざしが、4.万物を太陽は整えおさめる、5.見よ、今や楽しい、6.おどり、7.森は花咲き繁る、8.小間物屋さん、色紅を下さい、9.円舞曲、10.たとえこの世界がみな、「第2部」11.胸のうちは、抑えようがない、12.むかしは湖に住まっていた、13.わしは院長さまだぞ、14.酒場に私が居るとにゃ、「第3部」15.愛神はどこもかしこも飛び廻る、16.昼間も夜も、何もかもが、17.少女が立っていた、18.私の胸をめぐっては、19.もし若者が乙女と一緒に、20.おいで、おいで、さぁ来ておくれ、21.天秤棒に心をかけて、22.今こそ愉悦の季節、23.とても、いとしい方、24.アヴェ、25.おお、運の女神よ

1984年7月 シカゴにて録音

お薦めの詩(歌)は…まず第1は、最も有名なオープニング&エンディングの「おお、運の女神よ」における合唱&フルオーケストラの迫力は感涙ものです。

次いでは上記の「ベルント・ヴァイクル」が独唱しているパートはいずれも聴き物です。4曲目「万物~」、第2部の11曲目「胸のうち~」、16曲目「昼間も~」、18曲目「私の胸~」この辺りは良いですよ。

それから、「おお、女神よ」の次に有名な、22曲目「今こそ~」の恋の讃歌のフルオケ&フル合唱も、パワー全開でマッシヴな演奏です。

他には、オーケストラ&合唱の曲でありながら、ピアノが使われていたり、打楽器を多く使用したりと、オーケストレーションの妙を満喫出来る、曲&アルバムです。

グレン・グールド新録音’81~ゴールドベルク変奏曲

2007-07-08 22:16:46 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
随分とジャズばかり紹介しておりまして、今日は久しぶりにクラシックの王道的なアルバムを紹介したいと思います。

奇才、孤高の天才と言われるピアニスト、「グレン・グールド」が突然死の直前に再録音したのが、1981年録音の、この「ゴールドベルク変奏曲」です。
この曲は「グールド」にとっても、クラシック音楽界にとっても非常にエポックメイキングな曲でして、おりしも奇才「グールド」がデビューし、一世風靡を巻き起こしたのが、旧録音1955年の「ゴールドベルク変奏曲」だったからです。

「ゴールドベルク変奏曲」旧盤は、非常にスピーディな解釈で、「グールド」の若々しさと閃きが随所に見られる、正しく天才がなせる演奏で、クラシック業界&音楽業界にセンセーショナルを引き起こしました。
又、「グールド」は1964年に、ライブ演奏(ステージ演奏)からの引退を表明し、その後の彼の演奏は、レコードからしか聴く事ができなくなりました。
そして、そのレコーディングにしても、生来の奇行癖や人嫌いもあり、多くのアルバムを出す人でもありませんでした。
その中で、このアルバムはデビュー盤以来の再録音と言うこともあって、満を持しての登場となった矢先の訃報により、追悼盤となったのです。

この新録音は、演奏解釈アプローチはデビューアルバムとは全く異なり、一聴した時、「グールド」の演奏だと教わらなければ、同一人物が演奏した曲と思えない程違います。
序奏のアリアから、非常にゆっくりのテンポで演奏し、ジックリと空間を活かした、絵画で言うところの水墨画のような「ワビサビ」をイメージさせられます。
アリア以降も、旧盤に比べて全体的にもゆっくり調で、そして「音符の強弱」、「ディテイルの描写」、そして取分け「間」について、非常に思索され、熟考された「グールド」の解釈が、とにかく際立っている演奏なのです。

全30曲の変奏の詳細については、私のCDの解説書に、作曲家の諸井誠先生の専門的な解説がありますので、興味ある方は是非このアルバムをご購入下さい。
※現在発売のアルバムに、諸井先生の解説が使用されているかどうかは、私自身は知りませんので、間違いでしたら始めに謝っておきます。

私の個人的な見解ですが、クラシック界のレコードに於いて、「3大バッハ演奏」と言うのを勝手に決め手言っています。
1つは、以前紹介した「リヒター指揮・ミュンヘン・バッハ・オーケストラ」の旧盤、2つめがこのアルバム、3つめは、「パブロ・カザルス演奏の、無伴奏チェロ組曲全曲」の有名な3アルバムです。

アルバムタイトル…バッハ作曲 BWV988 「ゴールドベルク変奏曲」

演奏…グレン・グールド(p)

1981年4月22日、5月15日、19日、25日録音

とにかく理屈ぬきで聴いて下さい。

クラシック界のヴィルトオーゾ合奏団、オルフェウス室内管弦楽団~ロッシーニ序曲集

2007-05-19 23:55:17 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
最近チョットジャズに偏ってアルバム紹介しておりましたので、今日はかつてクラシックアルバムで大ベストセラーになった名盤を紹介します。

アルバムタイトル…「ロッシーニ序曲集~オルフェウス室内管弦楽団」

曲名…1.歌劇《タンクレディ》序曲、2.歌劇《アルジェのイタリア女》序曲、3.歌劇《幸福な錯覚》序曲、4.歌劇《絹のはしご》序曲、5.歌劇《セビリャの理髪師》序曲、6.歌劇《ブルスキーノ氏》序曲、7.歌劇《結婚手形》序曲、8.歌劇《イタリアのトルコ人》序曲

録音1984年 ニューヨーク州立大学、パーチェス校

オルフェウス管弦楽団について…1972年に結成され、何より特徴的なのは指揮者をおかずに演奏する楽団という事。
編成は26名でなされ、ヴァイオリン9、ヴィオラ3、チェロ3、コントラバス1と言う16名の弦楽器群と、フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン各2名ずつの管楽器群から成る。
とにかく、各々の演奏テクニックが抜群に優れており、それでいて非常に精緻に合奏がなされているので、他の楽団とは全く比べ物にならない、スーパー・グループなのである。

このアルバムでは、全てロッシーニのオペラの序曲を納めており、このアルバム一枚にして、ロッシーニオペラの全貌の、わずか一部だけでは有るが垣間見ることができるので、とてもお得と思われる。
普通のオムニバスアルバムだと、演奏の一部分しか紹介していない事が多々有るのだが、これは序曲ではあるが全曲演奏されているので、しっかりした普遍的なアルバムとして作られているので、皆様にお薦めしたい。

お薦めの演奏曲だが、このオーケストラにかかると、全曲全てが名演なので、後は曲単体の魅力によって決めるしかなさそうだ。
そうなると、ベスト1はロッシーニオペラの最高峰、「セビリャの理髪師」が不動の1位でしょう。
次いで、名曲の2曲目の「アルジェのイタリア女」が2位、ロッシーニ出世作と言われているオープニング曲「タンクレディ」が3番目の推薦曲になりそう。
それから、個人的には6曲目「ブルスキーノ氏」が作曲・編曲に変化があってとても楽しいので好きです。

今日は、スーパーオーケストラグループの妙技を是非聴いて下さい。

クラシックレコーディング史上最高評価のアルバム、リヒター~マタイ受難曲

2007-05-01 19:06:34 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日紹介のアルバムは、おそらく古今東西、過去から今迄のクラシックレコーディング中で、史上ナンバー1の名盤評価を受けていると思います。

アルバムタイトル名…マタイ受難曲 BVW244

指揮…カール・リヒター
   ミュンヘン・バッハ管弦楽団、ミュンヘン・バッハ合唱団、ミュンヘン少年合唱団
   エルンスト・ヘフリガー(テノール)、キート・エンゲン(バス)、アントニー・ファーベルク(ソプラノ)、マックス・プレープストル(バス)、イルムガルト・ゼーフリート(ソプラノ)、ヘルタ・テッパー(アルト)、ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バス)

1958年6-8月 ミュンヘンにて録音

演奏について…まず、リヒターの指揮だが、彼はこの曲を後に再録音している。
しかし、この再録音(1979年録音)はこの演奏に遠く及ばない。
それは、200分間全てにおいて統率されたミュンヘン・バッハオーケストラの劇的で、緊張感があり、静と動そして厳しさと重厚さを維持している演奏は、筆舌し難く、いかにリヒターと言えども奇跡は二度は起こせない。

それから、独唱陣も素晴らしい。
エヴァンゲリストを演じる「ヘフリガー」の独唱も素晴らしいが、若き日の「フィッシャー=ディースカウ」のアリアも、声の張りもさることながら、完璧な歌唱をしている。
少年達の合唱団でさえ、この難曲に完璧に同調し、穴は全くと言って良いほど皆無である。

正直、3時間半一気に聴くのは、(緊張感の連続で)辛いかもしれません。
しかし、過去何度も「無人島に持って行きたい1枚のレコード」ベスト1に選ばれたこのレコード(CD)を是非一度は聴いて頂きたい。

ヴィルヘルム・バックハウス~ベートーヴェン4大ピアノ・ソナタ

2007-04-21 23:00:05 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日は20世紀ドイツの生んだ偉大なピアニスト、「ヴィルヘルム・バックハウス」のベートーヴェンピアノソナタ(選集)を紹介しましょう。
バックハウスにとっては、言わば「ベートーヴェン」はご当地、お家芸ですので、このアルバムでも無骨ではあるが、威厳のある素晴らしい演奏をしています。

アルバムタイトル…ベートーヴェンピアノソナタ(悲愴)(月光)(ワルトシュタイン)(熱情)

演奏者…ヴィルヘルム・バックハウス(p)

1958年10月、1959年10月 ジュネーブにて録音

曲目…1.ピアノ・ソナタ第8番ハ短調作品13{悲愴}
   ベートーヴェン初期ピアノソナタの傑作であり、悲劇的な曲想とドラマティックな構成の名曲。
   2.ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調作品27の2{月光}
   ベートーヴェン中期ピアノソナタの名作で、月光と言う名は俗称である。
ベートーヴェン自身は「幻想曲風ソナタ」と銘打っており、その名に相応しい幻想的な名曲です。
   3.ピアノ・ソナタ第21番ハ長調作品53{ワルトシュタイン}
   「傑作の森」と呼ばれている、交響曲第5番{運命}や交響曲第6番{田園}等を作曲していた同時期に作曲された、広大なイメージの輝かしい名作。
   4.ピアノ・ソナタ第23番ヘ短調作品57{熱情}
   前述{ワルトシュタイン}のすぐ後に書かれた、同じく「傑作の森」時代の傑作中の傑作であり、最後のコーダまでに情熱的に突き進む。

演奏(曲)について…バックハウスのベートーヴェンは、万人が認める「十八番」であるが、ベスト1をあえて決めるなら{熱情}でしょう。
骨太で無骨な表現ではあるが、情熱を十二分に伝えている素晴らしい出来栄えの演奏です。
次いで、{ワルトシュタイン}でしょうか?
もちろん他の2曲も素晴らしいですが、「悲愴」や「月光」はベートーヴェン作品の中では、最も繊細で内面志向で鎮美的な表現の曲なので、そう言う表現が得意のピアニストの方が、バックハウスよりも更に良い演奏かもしれません。
しかし、真面目にどの曲も一聴に値する演奏ですので、感動した方は「バックハウスのベートーヴェン・ピアノソナタ全集(全曲)」を聴くことをお薦めします。

スメタナ四重奏団~スメタナ弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」&第2番

2007-04-15 22:46:52 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
今日はまじで渋い選曲&アルバムです。

アルバムタイトル…スメタナ弦楽四重奏曲第1番「わが生涯より」&第2番

演奏者…スメタナ弦楽四重奏団

1945年に結成され、1989年まで45年間活動していた(1954年までは、後のチェコの名指揮者;ヴァーツラフ・ノイマンがヴィオラパートを担当していたが、それ以降はメンバーの変更は無い)、20世紀屈指の名ストリングス・カルテットである。
長年連れ添っているメンバーだけに、暗譜で且つアイコンタクトで演奏できるのが特色であり、最大の強み(セールス・ポイント)でもあります。

4人メンバーは下記の通り
    イルジー・ノヴァーク(vl)
    リュボミール・コステツキー(vl)
    ミラン・シュカンバ(ヴィオラ)
    アントニーン・コホウト(vc)
    録音1976年2月12日~16日 スプラフォン・ジシコフ・スタジオ

アルバム自体は、1976年の「レコードアカデミー賞」を受賞した、名盤の誉れ高い評価を受けたものです。

演奏を聴いてみますと、「スメタナ四重奏団がスメタナを弾く」、ちょっとしゃれっぽく思えますが、演奏はしゃれではなく真面目に良い意味で「ご当地物」として抜群の統制と余裕を感じさせる名演です。
チェコの作曲家と言えば、日本では(世界でも)ドヴォルザークが最も有名ですが、チェコ本国ではスメタナの方が有名らしいです。

演奏されている作品2曲ですが、両曲ともスメタナの晩年の作品であり、「わが生涯より」は、硬軟両面(激しい曲調の楽章や、穏やかな楽章)が良くでている名曲ですが、第2番は全く耳が聞こえなくなった最晩年に書かれたものだけに、相当に激しく緊張感が続き、やや聴き疲れする曲です。

20世紀(最強の?)弦楽四重奏団の名演を是非聴いて下さい。

クラシックのベストセラー「奇蹟のカンパネラ」

2007-02-13 23:20:37 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
クラシックのピアノソロアルバムを紹介しましょう。
数年前に大ベストセラーになったアルバムなので、詳細説明は要らないでしょう。

アルバムタイトル名…「奇蹟のカンパネラ」

演奏…「フジ子・ヘミング」

演奏曲…リスト作ー1.ため息、2.ラ・カンパネラ、3.小鳥に説教するアッシジの聖フランシス、4.愛の夢、5.泉のほとりで、6.ます(シューベルト)7.ハンガリー狂詩曲第2番、ショパンー8.ノクターン第2番、9.エチュード第1番、10.エチュード第7番

演奏についてはNHKなどでも何回も放送されているので、詳細は割愛しますが、
フジ子の演奏を一言で言うなら、技術で聴かすのではなく、心で聴かすピアニストです。
このアルバムは名曲(聴きなれた&耳慣れた)が大半なので、多くの方に楽しんで頂けると思います。
今後はフジ子とは対極の、テクニシャンやビルトオーゾ、そして超絶技巧のピアニストも随時紹介して行きますが、まずは彼女の、「魂のこもった心の演奏」を聴いて下さい。