紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ブルーノートの新スタイルピアニスト、アンドリュー・ヒル…ジャッジメント

2007-09-18 23:59:03 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ブルーノート出身で、空間をすごく上手く使うピアニストが、今日紹介の「アンドリュー・ヒル」です。

そして、このアルバムに参加したメンバーも、彼の作り出す世界にジャストフィットする、ヴァイブの「ボビー・ハッチャーソン」と、スーパー硬派のベーシスト「リチャード・デイヴィス」、そして、これまた「デイヴィス」の相棒の兄貴キャラ「エルヴィン・ジョーンズ」と言う申し分ないメンツです。

メンバー構成を聞いただけで、もう演奏が分かりそうな感じで、よだれ物です。

アルバムタイトル…ジャッジメント

パーソネル…リーダー;アンドリュー・ヒル(p)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.シエト・オチョ、2.フレア・フロップ、3.ヨカダ・ヨカダ、4.アルフレッド、5.ジャッジメント、6.リコンリエーション

1964年1月8日

原盤…BLUE NOTE 84159 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4159

演奏について…まず、全曲「ヒル」のオリジナル曲であり、革新的なヴァイブ奏者「ハッチャーソン」が加わった事によって、「ヒル」の空間的な「間」とセンスを活かした演奏が、より一層輝きを増すのである。
リズムの二人は、これ以上に無いバリバリ硬派であり、硬派と言っても不良学○じゃないし、ましてヤ○ザでもチン○ラでも無い。
もっと怖い右○団体のボスか、逆にロ○アK○Bぐらいの過激さを持つ、超大物二人である。
この二人にガッチリ基礎を支えられて、「ヒル」と「ハッチャーソン」は、自由気ままに大空を舞うのである。

さて、お薦め曲だが、全曲変拍子のリズムが多く、個性的な曲ばかりなのだが、その中で逆に毛色が変わっているのは、変拍子では無くてオーソドックスなリズムで、沈静化されたリリシズムがとても品が良く、趣を感じさせる4曲目「アルフレッド」が抜群に良い出来だ。
その名の通り、名プロデューサー「アルフレッド・ライオン」に捧げられた曲であり、「ヒル」が単なる物珍しいピアニストでは無く、恐るべき才能を持っている(コンポーザー)だと言う事を思い知らされる。
この中の主役は、ピッチカートベースで分厚く引き続ける「デイヴィス」と、間を活かす「ヒル」の二人だ。
「ハッチャーソン」も、所々で伴奏をつけて、名演に色を添える。

5曲目、表題曲の「ジャッジメント」も抜群に良い演奏だ。
この曲では、何と言っても中途でソロをとる「エルヴィン」がカッコイイ。
「ハッチャーソン」も、優れたアドリブをびんびんに敲き、「デイヴィス」は完全にわが道を突き進むが如く、骨太ベースをガッツリ弾き通す。
ここでは「ヒル」は伴奏に終始する程、3人が熱く燃えている。

寛ぎ調の6曲目「リコンシリエーション」…序奏は変則拍子の「モダン・ジャズ・カルテット」的に始まるが、すぐにこの新主流派の世界にトリップをする。
ここでもベースの「デイヴィス」がすごい!!凄すぎる。
「エルヴィン」は、ブラッシュ・ワークだが、やはり硬派だ。
「ヒル」は素晴らしく出来が良く、半音をとても上手く使って曲を印象派的に描ききる。
彼の個性が良い方に全面的に出た演奏だ。
「ハッチャーソン」は、エンディングで一発参加して、聴かせる。

1曲目「シエト・オチョ」…その名の通り7/8拍子なのだが、「ヒル」が雨だれの様に煌めいたソロを取り、「ハッチャーソン」もそれに合わせて、ハイセンスのアドリブをかます。
「デイヴィス」「エルヴィン」の二人は、ハードにリズムをキープして、彼等をアシストする。
しかし「エルヴィン」のドラムソロ、パワフルで超絶技巧で、流石の一言。
やはりこのリズム二人は、化物だぜぃ。

前日の続きを書きましょう。ユセフ・ラティーフ~ジャズ・ムード

2007-09-18 23:12:08 | ジャズ・フルート他(ホーン)
1曲目…「メタファ」はこのアルバムのコンセプト通りの楽曲です。
インディア的なメロディテーマの序奏の後で「ラティーフ」は、「モンク」調のハズシ気味のメロディーを、やや過激なアドリブでフルートを用いて奏でる。
昨日、プチ紹介したが、どことなく、いや、かなり「ドルフィー」が見え隠れするソロだ。多分フルートと言う楽器で、アヴァンギャルドに演奏すると、無条件反射的に「ドルフィー」が脳裏を掠めるんでしょうね。
「ラティーフ」の後で、「フラー」がいつもよりはハードに、ピアノの「ローソン」ベースの「ファロウ」、名人「ヘイズ」のバック3人は、非常にクラシカルなトリオ演奏で、フロント二人をサポートする。
過激な「ラティーフ」とのギャップが、この演奏の隠し味になっている。

2曲目「ユセフズ・ムード」は、過激と言うよりは、もろにファンキーだ。
ファンキーと来れば、このメンツではジャズテットの勇士、「フラー」の出番だ。
「ラティーフ」は、この曲ではテナーサックスで、「モブレー」が吹いた様な、割と正統的に吹く。
中途で絡む「フラー」が、同じフレーズを淡々と吹くのだが、アドリブでぶいぶい言わす「ラティーフ」よりも目立ってしまうのは、何故だろう?
やはり、曲調が「フラー」にピッタリ合うので、聴き手が「フラー」の勝ちを判定してしまうんだろう。
かと言って、「ラティーフ」のソロは、悪い訳では無いので、ご安心を…。
特に終盤は、ガンガン吹いて盛り上げてくれますぜ!!

3曲目「ザ・ビギニング」は、短曲だが「ラティーフ」が、沈静なテナーアドリブを吹いて、何か後期の「コルトレーン」が、神聖なバラッドを吹いている所がオーヴァーラップするようだ。
低音域を効果的に弾く「ローソン」が良い味を出してます。

4曲目「モーニング」…序奏のパーカッション「ワトキンス」が、ノッケから異国情緒たっぷりに皆を煽ると、「ラティーフ」「フラー」のユニゾンが、それに続く。
ここでの「ラティーフ」は、渋くむせび泣く様な、サックスを吹く。
「ローソン」は、モード調のピアノで応戦するが、その間でも「ファロウ」はピッチカート奏法で、「ワトキンス」も、延々と締った音色のパーカッションを単調に、しかしハードコアに引き続ける。
単調と言っても、全く飽きさせず、むしろ「フラー」「ラティーフ」のアドリブを際立たせているのが、素晴らしい。
私的に、1曲目と双璧の名演奏と思うし、是非推薦したい曲です。

5曲目「ブルース~」も、エキゾチックなテーマメロディに導かれて、「ラティーフ」が登場!
ここで漢っぷり充分なテナーソロを吹くと、「ヘイズ」もシンバル&ブラシで皆を高揚して行く。
「ローソン」は、お洒落目のシングルトーンで、ハードバップ全開。
受ける「フラー」は「フラー節」全開で、これまた良いねぇ。
「フラー」に限って言えば、このアルバムで一番良い演奏でしょう。
「ファロウ」のソロも朴訥調で、好感が持てる。
最後のユニゾンフィニッシュも、曲の締め括りに相応しい。

アバンギャルドと言っても、フリーじゃないので、聴き易いアルバムです。