紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1から続き。

2008-06-16 11:10:28 | ジャズ・ベース
長らくブログ更新せずにすみませんでした。
一寸、家庭の事情と、昨日までの仕事の関係で…書けなかったんです。

まぁ、愚痴と言い訳は良く有りませんので、それでは、前回からの続きで、「ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1」の詳細について書いて行きましょう。

まず、「ミンガス」のメンバー紹介から、ライブがスタートする。
序奏はお馴染みの「フォーバス知事の寓話」のテーマがメンバー全員で奏でられる。
その後、「クリフォード・ジョーダン」が、かなり叙情的なテナー・アドリブを演ってくれますが、それに合わせる「ドルフィー」は、ちょっぴり前衛的なフレーズで、煽ってきます。
リズム・セクションは変則的なドラム・リズムを刻む「ダニー・リッチモンド」、ブ厚いベースで皆をリードする、リーダー「チャールス・ミンガス」、そして「バイアード」は、インテリジェックな和音でスパイスを効かせる。

さて、序盤は先ほどの「ジョーダン」が、叙情的なフレーズから、徐々にアグレッシブに変貌を遂げて行って、スピーディにぶっ飛ばし始める。
そうすると、それ以上に「ミンガス」が、更にベースで煽り捲くって、益々「クリフォード・ジョーダン」をファイトさせて行くんです。
「ジョーダン」は止め処なく、めくるめく素晴らしいアドリブ演奏を連発して、大将に応えます。
その後は「ジャッキー・バイアード」のソロにチェンジして、ここで曲調が、静かでクールでロマンティックに激変するのが面白い。
「バイアード」は、とてもお上品なピアノを弾くので、「ミンガス・サウンド」とは対極的だが、逆に(自分に無い部分の)ここが「ミンガス」の気に入っていた一つのファクターかなと思う。
彼が入る事によって、ものすごい効果を上げている事は確かな様です。
中間部のカデンツァで「きらきら星変奏曲」をチョイ弾きする所なんかもお洒落~って感じがします。
その後急にまた、急速調に…そこここでブギウギ風なリズムで遊び心を出しながら曲調とスピードを変えて、変化を楽しんで行きます。

その次には大将自らがソロの番になって、激しい怒り親父だけでない、非常にウィットに富んだ…或いは楽しみながらのベース・メロディを演って、「ミンガス」と言う漢の引き出しの多さが良く判ります。
何と「子馬はみんなポッポコ…」等と言う童謡のメロディを弾いたりするので、聴衆は皆笑いの渦に入ったりなんかして…この親父、お笑いの才能も持っているね!(笑)
しかし、それからまたすぐに、頑固親父に逆戻りして、ハード・プレイのベース演奏に戻します。

さて、これから真打登場で、お得意のバス・クラリネットを引提げて、アヴァンギャルドなソロで決めます。
ソロに入って直に、「ミンガス」とのデュオ演奏になるんですが、「ドルフィー」はじっくりと且つ過激にソロを演ると、受ける「ミンガス」の弾くベース曲は、名作「メキシコの思い出」の名作「イザベルズ・テーブル・ダンス」のベース・ラインを刻んでいるんです。
判る人は嬉しいねぇ~判らない人は、私がかつて紹介しているので、それをご参考にして下さい。
その後、全員が絡んで来て、段々クライマックスに近づいて来ます。
「ドルフィー」のバス・クラリネットは地を割き、空も切り裂きます。
大人しいはずの「バイアード」も過激なブロック・コードを叩きますし、「ジョーダン」はブリリアントにサイド演奏で盛り上げます。
この音の洪水はド迫力ですね。
しかし、ここで演奏はフィニッシュとはなりません。
ラストはもう一度「ミンガス」と「ドルフィー」のデュオ・バトル…いや、過激なハーモニーと言った方が良いかもしれません。
二人が織り成す、緊張感びんびんの、このデュエット演奏は、ジャズ史上に残る名演奏の一つでしょう。
「エリック・ドルフィー」と「チャールス・ミンガス」…師匠と弟子と言う関係でなく、ここでなされている演奏は、正しく天才同士の究極のバトル演奏です。
ラストはもう一度、全員で「フォーバス~」のテーマ・メロディに戻って、気持ち良いフィニッシュをします。
万歳!万歳!!!万万歳!!!!!

2曲目スターティング」…「エリック・ドルフィー」のオリジナル曲で、オープニング「フォーバス知事~」からの流れで、こうなったのかは知りませんが、またまた二人のデュオ演奏がなされます。
ここでは「ドルフィー」は、フルートを駆使して、「ミンガス」も、とても渋くて大人のベース演奏を演って、「ドルフィー」の幻想的に美しいフルート演奏を際立たせます。
とにかく、きれいな演奏で、過激なコンボ軍団において、コンサートでは一服の清涼剤的な役割を果たしている曲&演奏です。
心が洗われますよ。

ラストは「メディテーションズ」…とても判り易いワルツ・リズムでのテーマで、何かワクワクさせる様な、映画のオープニング曲に似た感じがします。
ビッグ・バンド・ジャズ的なアレンジで序奏はなされますが、「ドルフィー」がユニゾンはフルート演奏で曲を飾りつけ、ソロに入ると、バス・クラリネットに持ち替えて、またまたアグレシッブ且つメロディアスで、更に付け加えると、ジョークも混ぜた、楽しいソロを演るんです。
「ドルフィー」も引き出しが多いミュージシャンなんですね。
その後の「クリフォード・ジョーダン」のソロも頑張ってます。
天才「ドルフィー」とは真っ向勝負は避けて、「ジョーダン」らしい歌心溢れるシンプルなソロで終始決めてきます。
こう言う所は逆に男らしさを感じますね。
己の力を冷静に分析し、やれるべき最善の方法を選んで演ってくれるんですから。
「リッチモンド」は、ガンガンにガツンガツンと、激しいドラミングで、相当いきり立った感じが有りますが、「ミンガス」は割と冷静に、渋い実直なベース演奏で皆を見守ります。
「バイアード」もアグレッシブなブロック・コードで、ガンガン突き進んで行って、皆を高揚させるのに一役買ってます。
しかして、曲は一旦、静かなテーマ・メロディに戻ります。
「ミンガス」はワン・ポイントでボウイングに切り替えて、情感たっぷりにベースを弾き、それを受けて「バイアード」も「ドビュッシー」のピアノ曲の様に、神秘的で、知的なピアノ演奏へと切り替えます。
ここで弾かれる「ミンガス」のベース・ソロは…とても物悲しくて、切なくて、「バイアード」のピアノも半端なく、美しいんです。
ここで演られている音楽(ジャズ)は、このコンボが過激なジャズ・テロリスト集団ではなく、真の芸術集団である事が非常に良く判るトラックなんです。
それから、演られている演奏が静かで知的ではあるけれども、そこに存在する緊張感たるや、恐ろしい程に空気が張り詰めていて、畏怖さえ感じます。
以前紹介した「アストル・ピアソラ」の様に…クラシックの現代曲にさえ思えるんですよ。
エンディングは「バイアード」のピアノに導かれて、全員で一発ユニゾンでフィニッシュします。

間違いなく感動するライブ・アルバムです。

また、ドルフィー関連のいわく付き作品だ!ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1~チャールス・ミンガス

2008-06-09 22:40:49 | ジャズ・ベース
「エリック・ドルフィー」が、影響を受けたアーティストは昨今紹介している「ジョン・コルトレーン」と、もう一人、この「チャールス・ミンガス」であろう。

このヨーロッパでの「ドルフィー」と「ミンガス」の激しいライブ・バトルは、超人二人の貴重な演奏の一つとして是非紹介しておきたい。

今日はその中からヴォリューム1をセレクトしましょう。

アルバムタイトル…ミンガス・イン・ヨーロッパvol.1

パーソネル…リーダー;チャールス・ミンガス(b)
      エリック・ドルフィー(as、fl、b-cl)
      クリフォード・ジョーダン(ts)
      ジャッキー・バイアード(p)
      ダニー・リッチモンド(ds)

曲目…1.フォーバス知事の寓話(37:30)、2.スターティング(5:24)、3.メディテーションズ(22:25)

1964年4月26日 西ドイツ、ヴィッペルタール・タウンホールにてライブ録音

原盤…enja 3049  発売…キングレコード
CD番号…K30Y-6239

演奏について…詳細は明日以降のお楽しみに…
とにかく70分近いCD収録の中で、わずか3曲の吹き込みなので、いかに1曲1曲が長大かお分かりになろうと言う物。
特にオープニング「フォーバス知事~」だけで37分を超える曲だし、3曲目「メディテーションズ」も22分以上の長い演奏となっています。
「ドルフィー」のマルチ・リードの絶叫と「ミンガス」の強烈なリ-ダー・シップに統率されて、若き精鋭達が、縦横無人に音の世界を描き切ってくれる様は圧巻その物です。


      

ジョン・コルトレーン&エリック・ドルフィー~ヨーロピアン・インプレッションズ

2008-06-07 11:32:12 | ジョン・コルトレーン
またまた友人に怒られそうな1枚を持って来ちゃいました。

演奏は聴かずとも推して知るべし!
正直、神が降臨していると言っても過言では無いぐらいに、素晴らしい演奏です。
しかし???録音が最悪です。
条件が悪い場所で録られただけでなく、マスター・テープの保管?状態も悪かったらしく、演奏(録音)の音飛びも所々有って、所謂「海賊盤」の類と言うぐらい、ひどい録音なんです。
でも…でも…皆様に一度は聴いて頂きたい演奏である事に異論は有りません。

アルバムタイトル…ヨーロピアン・インプレッションズ

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、ss)
      エリック・ドルフィー(as、fl、b-cl)
      マッコイ・タイナー(p)
      レジー・ワークマン(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.インプレッションズ(1st-ver)、2.エヴリィ・タイム・ウイ・セイ・グッバイ、3.マイ・フェイヴァリット・シングス(1st-ver)、4.ブルー・トレイン、5.ネイマ、6.マイ・フェイヴァリット・シングス(2nd-ver)、7.インプレッションズ(2nd-ver)

1961年11月 ヨーロッパ・ツアーでの録音

原盤…Band Stand  発売…徳間ジャパン
CD番号…32JDB-199

演奏について…どの曲も「コルトレーン」縁の代表作品ばかりですが、1曲目から順番に紹介して行きましょう。
1曲目「インプレッションズ1st-ver」…ノッケから「コルトレーン」がミドル・アップ・テンポのこのチューンで、エンジン全開でテナーを吹き捲くる。
当然、バックの「マッコイ・タイナー」のモード・ピアノと皆を煽り捲くる激しいドラミングの「エルヴィン・ジョーンズ」、それから真面目にベースを弾き続けれる「レジー・ワークマン」の好サポートも必聴物。
「コルトレーン」の後を受けて、今度は「エリック・ドルフィー」が燃える。
演じている楽器はバス・クラリネットなんだろうが、とにかく録音が悪いので、バス・クラらしく聴こえないのが、チト残念です。
しかし、カデンツァは物凄くて、後期「コルトレーン」クインテット(セクステット)の「ファラオ・サンダース」が師匠と比べると大分見劣りするのが、流石「ドルフィー」…全く「コルトレーン」に引けをとっていない。
終盤、二人が絡み合うが、この辺りも天才同士のぶつかりあいは痺れますね。

2曲目「エヴリィ・タイム・ウイ・セイ・グッバイ」…有名なスタンダード・バラードだが、序奏は「コルトレーン」がテーマをじっくり、ストレートにソプラノ・サックスで吹いて始まる。
その後、「マッコイ」が、リリシズムとインテリジェンスを程好くバランスさせた極上のピアノ・アドリブで展開して行く。
まじで、「マッコイ」のピアノ…素晴らしいです。
しかし、それにも増して面白い&すごいのは、「エルヴィン・ジョーンズ」のドラミングで、このバラード曲に対して、変則的で間を活かしたハイテク・ドラミングをしていながらも、しっかり皆を煽っているのは流石!!
終盤もう一度「コルトレーン」のソプラノでのバラッドが演られます。

3曲目「コルトレーン」十八番の「マイ・フェイヴァリット~」ですが、序奏は「マッコイ」のワルツ・ピアノで幕を開け、すぐさま「コルトレーン」がソプラノ・サックスでメロディを演り、徐々に伝家の宝刀「コルトレーン・チェンジ」と「シーツ・オブ・サウンド」で中を舞い始める。
「マイ・フェイヴァリット~」の印象的なメロディが、段々と拡張されて遠くへと飛んで行く。
その後の「マッコイ」のピアノ・ソロは…相変わらずモード・ピアノの極み的な演奏で、美音、美演でいながら、とてもインテリジェンスが有る。
そして、いよいよ「ドルフィー」が登場で、今回はフルートを手に持っている。
正に楽器を吹き切る…やり切ると言う表現がピッタリで、超絶的な技巧と精神で「コルトレーン」を凌駕する様な、ウルトラ・アドリブで天空を舞い続ける。
そして、「コルトレーン」ももう一度登場して、テーマ・メロディをじっくりと吹いてから、最後のフィニッシュへと導いて行く。
ここでも、実は「エルヴィン」のドラミングは絶妙で、ガツンドカンと激しいパートは基より、ブラッシュ演奏のパートでも、優しくしかし厳しく皆を煽り、演奏曲の高揚に貢献してくれる。
名曲の名演ですね。

4曲目「ブルー・トレイン」…これも聴きなれたテーマ・メロディを起点として、「コルトレーン」がこの曲ではテナーでブイブイとシャウト&ブロウで決め捲くり、曲の始めからロケット・スタートをかまします。
この曲を過去歴代の演奏でも、最も激しい演奏ではないでしょうか?
とにかく、ハイパワーで音の洪水、そうです「シーツ・オブ・サウンド」で激流の如くの演奏に飲み込まれそうです。
その後の「ドルフィー」のアルト・サックス演奏もものすごくて、もはや言葉では説明出来ないぐらいに凄まじく、そして…もはや心地良い。
「コルトレーン」の「シーツ・オブ・サウンド」と、甲乙付け難い、素晴らしいシャウトです。
「マッコイ」はハイソなソロで曲を修飾して行きます。
いつまでも聴き続けたい、演奏です。

5曲目「ネイマ」…「コルトレーン」のソプラノ・サックスと「ドルフィー」のバスクラのユニゾンで、テーマ・メロディが奏でられて曲がスタートする。
その後、「マッコイ」のセンスたっぷりの伴奏にアシストされながら、「ドルフィー」がバス・クラリネットで、インテリジェックで、静かにハードなアドリブを演ってくれて…最後はもう一度、「コルトレーン」が加わりユニゾン演奏で〆ます。
短曲(短演)ですが、とても印象的な名演です。

6曲目…「マイ・フェイバリット~2nd-ver」ですが、この後の2曲は解説を止めておきましょう。

その理由の一つは、私自身、久しぶりにこの2大超人の伝説的なライブ演奏を5曲目まで聴き続けて来て、余りに凄過ぎて、心が苦しくなっちゃったからです。
やはり、壮絶な演奏は聴き続けちゃ行けませんね。
腹八分目でないと駄目です。
私の様な凡人には、このすごい演奏に対して、肉体と精神が、ジャズ超人(神)達に最後まで付いては行けません。
ですので、休息をせざるを得ません。

二つ目の理由は…是非皆様にこのアルバムを聴いて欲しいので、手品で言うタネや仕掛けを最後までは教えない方が良いのではと思い、皆様に夢を持ってこのアルバムを聴いて欲しいからです。
少しだけタネ明かしすれば、6曲目の「マイ・フェイヴァリット~」では、ここでも「ドルフィ」のフルート・ソロパートが有ります。
そして、3曲目の「マイ・フェイヴァリット~」よりも、もっと優れた演奏がなされています。

ではお楽しみに…

ケニー・バレル&ジョン・コルトレーンの続き…

2008-06-07 10:45:10 | ジョン・コルトレーン
一昨日の続きです。

演奏について…2曲目「アイ・ネヴァー・ニュー」…序奏から「バレル」の歌心溢れるアドリブで心を奪われる。
「チェンバース」と「コブ」のすごーく実直なリズム隊もOKです。
その後、「コルトレーン」が、気持ち低空飛行では有るが、ナイスなソロを演って繋ぐ。
低空飛行と言っても悪い意味ではなく、後年のどこまでも飛翔するフライトではなく、バランス良く他のメンバーと一定の距離、高さからソロを演じている感じなんです。
「フラナガン」はセンシティブなソロで、「ジミー・コブ」も一発ソロを入れてくれて…いかにもバップ臭を残したモダン・ジャズ演奏が気持ち良いですよ。

3曲目「リレスト」…序奏のユニゾン演奏から、すぐさま「コルトレーン」の超絶的なスーパー・アドリブが展開される。
この曲では低空飛行ではなく、かなり上空まで「トレーン」が飛んで行ってます。
その後の「バレル」「フラナガン」の二人とも魅惑的なフレーズで曲を彩り、終盤の「チェンバース」と「コブ」のデュオでのソロ合戦で最高潮になります。
この二人のバトルが裏の聴き所です。

4曲目「ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?」…短曲ながら、このアルバムでのベスト・チューンで、「バレル」と「コルトレーン」のデュオで演奏がなされる。
「バレル」のとても中庸な…哀愁過ぎず、ブルージー過ぎず、辛過ぎず、非常に抑えた大人の表現のギター演奏に対して、これまた「コルトレーン」の甘過ぎず、激し過ぎず、渋過ぎず…やや硬いが、チョイ辛めの大人のテナー演奏で受けます。
これも正しく中庸のスタンダードな演奏なんですが、この中庸と言うのが実は難しい。
没個性にならないで、中庸ながらも己をチョイ出しするのが、プロ中のプロ、一流がなせる業なんでしょうね。
すごーく大人のバラッド演奏です。カッコイイ!!!

5曲目「ビッグ・ポール」…序奏はあっと驚く(大袈裟)「チェンバース」のベース・ソロから始まり、その後「トミー・フラナガン」が珠玉のピアノ演奏がとても(ジャズ的に)色っぽいんです。
この二人の鎹(かすがい)に、「コブ」がシャンシャンと敲く太鼓が一役買ってます。
その後、リズム・セクションに戻って、分厚く弾くベースの「チェンバース」の渋い仕事が魅惑的ですね。
それから…いよいよ「コルトレーン」の登場ですぜ!
辛目で硬質のトーンで、ハートを揺さぶるハードなテナー演奏にいかれちまいそうです。
この頃の演奏には、「コルトレーン・チェンジ」が随所に顔を出していて、過激で有りながらもメロディアスなカデンツァが、とにかく粋ですねぇ!
この「コルトレーン」のソロだけでも充分に聴き物なんですが、それに触発されて、「バレル」もいつもよりも気合が入ったソウルフルなソロを展開して行きます。
とてもスピリチュアルな精神性の高いソロが良いですね。
更に「チェンバース」も素敵なアルコ演奏で、絶妙のソロを演ります。
そして「フラナガン」が、真珠が煌くようにおしとやかに輝かしいアドリブピアノ演奏で纏めて行きます。
最後にもう一度、「チェンバース」の名を冠した曲名通り、渋カッコイイ、一発ベースソロ演奏で〆ます。
5人の名人が程好くバトルする、ナイスなトラックですねぇ。

このアルバムも言わずとしれた名盤ですが、「ジャイアント・ステップス」する直前の、未だ人間性を残している(失礼:笑)「コルトレーン」の素晴らしい演奏が聴ける良いアルバムだと改めて認識出来ますね。

トレーンとバレルのデュオがgood!…ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン

2008-06-05 23:08:34 | ジョン・コルトレーン
今日は「ジョン・コルトレーン」が、プレスティッジ時代に遺した好演盤を紹介しましょう。
「コルトレーン」のやや辛口のバラッド演奏を、ブルージーな「ケニー・バレル」、美しく華麗な「トミー・フラナガン」、そしてウォームな「ポール・チェンバース」と手堅い「ジミー・コブ」と言った、名人達の魅惑のサイドメンによるサポートが真に美しい必聴盤なんです。

アルバムタイトル…ケニー・バレル&ジョン・コルトレーン

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts)
      ケニー・バレル(g)
      トミー・フラナガン(p)
      ポール・チェンバース(b)
      ジミー・コブ(ds)

曲目…1.フレイト・トレーン、2.アイ・ネヴァー・ニュー、3.リレスト、4.ホワイ・ワズ・アイ・ボーン?、5.ビッグ・ポール

1958年3月7日録音

原盤…Prestije NJ-8276  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDJ-1533

演奏について…オープニング曲「フレイト・トレーン」…「トレーン」の名を冠しているが、作曲は「トミー・フラナガン」で、ミドル・アップ・テンポのバップ・ナンバーです。
序奏から「コルトレーン」がハードでパワフルなテナー・サックスを奏でて、それを受ける「ケニー・バレル」のウォーム系の音色でありながら、非常にブルージーでハイな行けてるソロを演って繋いでくるんです。
それから「トミー・フラナガン」が、小洒落てイマジネイティヴなアドリブをかまして、曲を色付して来ます。
その後「チェンバース」が、十八番のボウイングでギコギコ言わせて、フィニッシュでは「ジミー・コブ」の一発ソロも有って、ご機嫌でバッピッシュな演奏が煌くのです。
スタートから掴みはOKの演奏です。

2曲目「アイ・ネヴァー・ニュー」…「トミ・フラ」と「バレル」がノッケから行けてるアドリブを決め捲くり、「トレーン」もカデンツァ的なスーパー・アドリブで向こうを張って行く。
…続きはまた明日 see you next

我が友人に捧ぐ…エリック・ドルフィー~アザー・アスペクツ

2008-06-02 21:11:24 | エリック・ドルフィー
こんばんわ。
痛風とお友達の(笑)「えりっく$Φ」です。
さて、今日のアルバムは友人に捧げると言っても、痛風では有りません。
良くブログに遊びにいらして下さる友人に捧げたくてセレクトしました。
何故ならば、その友人が今「エリック・ドルフィー」と言うアーティストに心酔されていらっしゃるとの事で、(「ドルフィー」の渋くて無名のアルバム)を紹介したいと考えた訳です。

では…詳細に行きましょう。

アルバムタイトル…アザー・アスペクツ

パーソネル…1.ジム・クロウ~エリック・ドルフィー(b-cl、as、fl)Unknown(vo、p、b、perc)2.インナー・フライト♯1~エリック・ドルフィー(fl)、3.ドルフィー’N~エリック・ドルフィー(as)、ロン・カーター(b)、4.インナー・フライト♯2~エリック・ドルフィー(fl)、5.インプロビゼーション・タクラス~エリック・ドルフィー(fl)、ジナ・ラリ(tablas)、ロジャー・メイソン(tamboura)

曲目…1.ジム・クロウ、2.インナー・フライト♯1、3.ドルフィー’N、4.インナー・フライト♯2、5.インプロビゼーション・タクラス

原盤…BLUE NOTE  発売…輸入盤
CD番号…CDP-7-480412-2

演奏について…1曲目「ジム・クロウ」…「ドルフィー」のバス・クラリネットの一撃から曲が始まると、まるでお経の様なアルト音程で女性の歌唱が始まる。
その後に、無音部分の多いピアノ伴奏が…(まるでゆっくり弾いている「ドビュッシー」だな???)曲の鎹(かすがい)に収まる。
「ドルフィー」はソロでインプロヴァイズの境地的なアグレッシブな演奏を演る。
中間部からの展開は、「バルトーク」の鋭利な表現に良く似ている。
高尚な現代音楽がなされていて…その後、おどろおどろしい「ドルフィー」演奏が発展して行く。
しかし…良く聴くと非常にメロディアスなんですよ。
ブラッシュで進行するドラムス…(名前は分らない)…と、実直でハードなベース音(これも名前不明)そして、正統的なジャズ・ピアノ(ついでにこいつも名無し)のトリオが、叫び嘶く「ドルフィー」のバス・クラリネットの一所懸命吹きを、しっかりとガッツリとアシストします。
それと同時に女性は摩訶不思議なスキャットで…異空間へと聴衆をトリップさせて…「ドルフィー」との掛け合いは、正しく幻想的な異次元そのもの。
そしてエンディングは、とてもこの世の音楽とは思えない、ヴォーカルとピアノ、パーカッションに「ドルフィー」が加わり、ミックスされて…混沌としたカオスが構築されるんです。
最後の一吹きは、全てを浄化した、美しいフルート演奏で、「ドルフィー」自らが締めくくります。
恐ろしくも美しい1曲です。

2曲目「インナー・フライト♯1」…「ドルフィー」の美しくて、神々しいフルート・ソロから曲が始まります。
いや、この曲はソロ演奏なのです。
その天上の音楽で、終始曲を吹き上げるので、知らず知らずの内に「ドルフィー」の天国的な美園に誘われます。
気付いたら、もう廻りはお花畑と、紋白蝶が舞っているんです。

3曲目「ドルフィー’N」…とてもハードで重厚なベース演奏の「ロン・カーター」と、アルト・サックスでシャウトする「エリック・ドルフィー」が繰り広げるバトル・デュオ演奏が、とにかく素晴らしいんです。
「ドルフィー」のアドリブは過激で有りながら、とてもメロディアスで…この辺が彼が単なるフリー系ジャズ・アーティストと一線を画する所以でしょう。
過激でメロディック…言うなれば、五月蝿いのと心地良いのとの境目で曲を作り、演じているんです。
超絶的なアドリブ・コンポーザーでなければ出来ない、このギリギリ・ラインの攻防が、より一層の緊張感と麻薬的な快感を持たせるんでしょうね!!
「カーター」も自身のベスト演奏では?と思える程、ここでの演奏は鬼人と化しています。
学者「ロン・カーター」ではなく、ジャズ界の閻魔様に憑依されている様ですね。

4曲目「インナー・フライト♯2」…まるでクラシックのフルーティストが、無伴奏フルート組曲を演じているのでは?と錯覚を起こさせる程、テクニック、即興性ともに優れた曲&演奏です。
どこまでも心を抉り、そして清々しくさせる天界からの光の様な曲ですね。

5曲目「インプロビゼーション・タクラス」…ここに聴かれる音楽は正しく中東の祈り…いやインド音楽のようです。
「ドルフィー」のフルート演奏は、あえて自身を出さずに、しっかりとヴォーカルの祈り歌を伴奏に終始してサポートに徹します。
しかし、流石「ドルフィー」…終始伴奏で、覚え易そうな単純なメロディをリフレインして、奏でているだけの様に見えて、実は聴けば聴くほど、「ドルフィー」の領域に引き込まれて行ってしまいます。
まるで、蟻地獄に入ってしまう虫か、蜘蛛の糸に囚われてしまった虫の如く…。
しかし、捕まえられるのは、例えて虫の様ですが、なされている音楽は、天国そのものです。
この演奏&曲を純粋にジャズか?と問われれば…ちと違う。。とこ答えるべきでしょうが、不世出の音楽家「エリック・ドルフィー」は、そんな事は全く気にしません。
演られている曲が、クラシカル現代曲でも、宗教音楽であろうと、そんなジャンル、カテゴリー分けは、彼にとって極小さな事なのです。
最後まで聴いていると…本当に心が洗われるんです。
「ドルフィー」の演奏する曲(&演奏)は…もはや普遍であると言っても過言では有りません。
このアルバム自体は、ジャズ史上では傑作として認知されてはいませんが、「ドルフィー」にとっては、そんな評価等どうでも良い事だったと思います。

彼の生前語った有名な言葉に…音楽は一瞬で消えて行ってしまう…と言うのが有りますが、(一瞬で)消え入るからこそ、彼は一音一音を大事にして、一所懸命に吹いたと信じています。
だから、逆に「ドルフィー」の演奏&レコーディングは永遠に不滅なんだと思います。
今宵はマニアックな…でも良く聴くと普遍的なこのアルバムを皆様に…そして何より我が友人に捧げます。      

生涯最高のレコードだと作者自身が言ったアルバム…タンゴ・ゼロ・アワー~アストル・ピアソラ

2008-06-01 23:03:48 | ラテン・インストゥルメンタル
表題がとても仰々しいが、嘘でも大袈裟でも無くて、生前、本人「アストル・ピアソラ」が言っていた事であり、演奏内容も実際その通りで素晴らしいです。

「ピアソラ」と言う、タンゴの鬼神…いや、もはやクラシックの現代曲作曲家とも言うべき、偉大なカリスマ・コンポーザー(&ミュージシャン)の、全身全霊を注いだこの作品は、彼の最高傑作との評価に全く異論はない。

とにかく何も考えずにアルバムに集中して聴いて欲しいです。

アルバムタイトル…タンゴ・ゼロ・アワー

パーソネル…アストル・ピアソラ・クインテット
      リーダー;アストル・ピアソラ(バンドネオン)
      フェルナンド・スアレス・パス(vl)
      パブロ・シーグレル(p)
      オラシマ・マルビチーノ(g)
      エクトル・コンソーレ(b)

曲目…1.タンゲディアⅢ、2.天使のミロンガ、3.キンテートのためのコンチェルト、4.ミロンガ・ロカ、5.ミケランジェロ’70、6.コントラバヒシモ、7.ムムキ

1986年5月ニューヨーク、サウンド・アイディアズ・スタジオにて録音

原盤…ワーナー・ミュージック?  発売…ワーナー・ミュージック・ジャパン
CD番号…WPCS-5100

それでは演奏について…今日はまず、お薦めの名演から行きましょう。

それは…3曲目の「キンテートのためのコンチェルト」です。
非常に劇的な曲で、序奏・イントロから興味を惹かれる魅惑的なメロディで始まります。
作品自体は1970年に書かれていて、約9分を超える大作です。
急小節においては「ピアソラ」のバンドネオンは、緊張感をビンビンに発していて、自身以外の4人のメンバーを統率します。
ピアノ「シーグレル」とヴァイオリン「スアレス・バス」の二人が、素晴らしい「ピアソラ」のサポートをします。
緩小節に入ると、「ピアソラ」は雄大で、まったりとした粘着系のバンドネオンを奏でて、非常に艶かしい演奏に仕上げてきます。
ピアノの「シーグレル」は低音域をメインに伴奏して、重厚感を増します。
ヴァイオリンの「スアレス・バス」とギターの「マルビチーノ」は、艶かしさを倍化する様なナイスなアシストを演ってくれます。
再度、急小節に入ると、「ピアソラ」、「スアレス・バス」、「シーグレル」のトリオがバトル形式で、応戦し合うと、「マルビチーノ」まで参戦して、劇的な作品は最高潮にヒートアップします。
「ピアソラ」の寸劇を見せつけられた、銀幕の様な逸品ですね。

1曲目「タンゲディアⅢ」…1985年の映画「タンゴーガルデルの亡命」のために書かれた作品で、冒頭から終始緊張感が張り詰めた衝撃作品で、これもいかにも「ピアソラ」らしいアグレッシヴな曲です。
悲劇のタンゴ曲であり、特にヴァイオリン「スアレス・バス」と「ピアソラ」との格闘技の様なバトルが最高の聴き所です。
ビシビシと唸りを上げるベース「コンソーレ」の威圧的な名演も見逃せませんね。

2曲目「天使のミロンガ」…1962年に書かれた「ピアソラ」の代表作の一つだが、非常にロマンティックで、スパイス的に一寸メランコリックで、影が憂いの有る美曲で…私は大好きです。
とにかく「ピアソラ」のバンドネオンの音色の切なさは、泣けますねぇ。
「ピアソラ」以上にこの曲で力が入っているのが「スアレス・バス」で、ヴァイオリンの物悲しい演奏が、深く心に染み入って来て…泣き叫びたくなりそうです。
心が痛くて…とても切ない曲です。
でも…でも…この曲と演奏は、とにかく清らかで美しくて…いつまでも聴いていたくなります。
渋い所では、ピアノ「シーグレル」のリフレイン伴奏が、曲に厚みを与えてくれます。

5曲目「ミケランジェロ’70」…1969年に書かれた「ピアソラ」の傑作。
とにかく疾走感に溢れていて、唸りを上げてドライヴィングをするベースの「コンソーレ」が最高に行けてます。
「コンソーレ」に引っ張られて、「ピアソラ」他3人もスポーツカーの様に疾風の如く駆け抜けて行く痛快なナンバーです。

6曲目「コントラバヒシモ」…その名の通りベース(ベーシスト)をフューチャーした曲で、序奏から「コンソーレ」のボーイングやスゴテクのアドリブ演奏に度肝を抜かれる。
ベース大好きな私は感涙物ですよ~!!
「コンソーレ」のアシストで「ピアソラ」や「シーグレル」が厳格な音色で、生真面目に演奏をして行く。
優しい調べでサポートする、ギターの「マルビチーノ」も、すごく渋くて良い仕事をしてます。
重厚さから徐々に軽やかに優しく曲調が変化して行く様は…深夜から朝日が立ち昇る情景が目に浮かびます。

7曲目「ムムキ」…序盤は哀愁感タップリに、センチメンタリックに感情を込めてメロディを弾くギターの「マルビチーノ」が曲の幕を開けてくれます。
それを受けてヴァイオリン「スアレス・バス」もジプシー的な哀愁の曲調を演じて展開して行きます。
その後、激しく煌びやかで、ヴィルトオーゾ的にピアノを弾く「シーグレル」が更に曲を色付けして行きます。
「ピアソラ」が加わり、哀愁さは極まり、その後はヴァイオリンの「スアレス・バス」、ベースの「コンソーレ」、そしてギターの「マルビチーノ」の弦楽器3人が室内楽的に、良く調和した格調高い演奏で纏めて行きます。
その後、曲はもうニ転三転するんです。
そう、非常に劇的で目まぐるしく変わるドラマティックな1曲なんです。
「ピアソラ」がリードを取るセンチメンタルな曲から厳しくて激しい小節へと変わるかと思えば、「マルビチーノ」と「スアレス・バス」が交代で哀愁のソロを演り返す緩小節へと、また激しく曲調が変わるのです。
特に哀愁の小節は聴いていgoodなのは勿論、更に終盤に来てから「シーグレル」が「ショパン」のバラードの様に美しくて…清々しいピアノ・ソロを決めてくれて…うっとりと聴き惚れてしまいます。
そしてフィニッシュはもう一回、「ピアソラ」を中心にした、心地良い優しさと、情熱的な激しさと、枯れて人生を達観した…そう…「ピアソラ」の人生そのものと言って良い一代絵巻が、この曲でなされているんですよ。
最後のサイレンの様な表現は???「ピアソラ」の死を意味しているのかなぁ?
この曲&演奏は、このアルバムの〆をするのに相応しい超名曲・超名演と言っても過言では有りませんね。
いや、タンゴ史に残る傑作でしょう。

4曲目「ミロンガ・ロカ」…やや不協和音的な音階で、「ピアソラ」は急速で演奏を進めて行きます。
しかし、ヴァイオリンの「スアレス・バス」の弾くメロディは、どことなくですが、「ピアソラ」の最高傑作「リベル・タンゴ」のメロディと似ていて、良いんですよ。
全員が激しくバウトして、スピーディに仕上げる演奏で、短曲ですが印象に残りますね。

もう、表題通り「ピアソラ」自身が生涯最高の録音(レコーディング)だと言った事に全く偽りは有りません。
聴いた方々には、現代タンゴの奇跡をこのアルバムに見る事が出来ますよ!きっと…!!!