紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

フレディ・ハバードのブルーノート7作目…ブルー・スピリッツ

2008-03-15 23:47:38 | ジャズ・トランペット
こんばんわ。
花粉症の超きついえりっく$Φです。
いやー、昨年までは花粉症が耐えられなくなると、すぐにステロイド注射を射ちに行っておりましたが、体に悪いので、今年は、うがいと目洗いと、鼻うがい、マスクでどこまで頑張れるか?トライしているのですが…超辛い、地獄の毎日を送っています。

もはや、ひどい風邪の症状そのままでして、咽喉はメチャ痛い、声は出ない、鼻水は出っ放し、痰には血が混じるし、膿も出て、おまけに頭痛、吐き気まで出る始末です。
高熱以外の風邪に似た症状出まくりで、人間崩壊の危機に面しています。(泣き笑い)

そんな訳で、今日も気分だけでも爽快にしたいので、ブルー・ノート行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ブルー・スピリッツ

パーソネル…リーダー;フレディ・ハバード(tp)
      バーナード・マッキニー(euph)
      ジェームス・スポールディングス(fl、as)
      ジョー・ヘンダーソン(ts)
      ハンク・モブレー(ts)★
      ハロルド・メイバーン(p)
      マッコイ・タイナー(p)★
      ラリー・リドレー(b)
      ボブ・クランショウ(b)★
      クリフォード・ジャーヴィス(ds)
      ピート・ラロカ(ds)★
      ビッグ・ブラック(conga)

曲目…1.ソウル・サージ、2.ブルー・スピリッツ★、3.アウター・フォーシズ★、4.クンガ・ブラック、5.ジョド★

1965年2月19日、26日★録音

原盤…BLUE NOTE 84196  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6657

演奏について…パーソネル表記でお分かりかと存じますが、主立って2種のコンボから演奏がなされています。
テナー・サックスが「モブレー」、ピアニストに「マッコイ」、ベース&ドラムスが「クランショウ」「ラロカ」とかなりスター奏者になっている、2曲目、3曲目、5曲目と、それに対してテナー・サックスが「ヘンダーソン」、ピアノが「メイバーン」以外は、かなり渋いメンバーで構成されている、1曲目、4曲目と言う具合です。
どちらのコンボが良いかって?それは…聴いてのお楽しみ……。。

1曲目「ソウル・サージ」…かなりファンキーっぽい感じのブルース曲で、4管4リズムの分厚いサウンドで曲が展開される。
「ブラック」のコンガに触発されて、曲が始まるが、例に漏れず、序奏はユニゾンでなされ、その後「ハバード」が張りの有るトーンで、気持ち良くアドリブ・ソロを吹く。
バックの「メイバーン」のブロック・コードも青黒さを演出するのに、とても効果的で、やるーって感じです。
「ハバード」の後を受けての「スポールディングス」のメロディックなアルトも勿論、行けますが、更にその後の「ヘンダーソン」のソロ…かなりアグレッシブで、ぶいぶい言わせて、強烈なパッセージを残します。
「メイバーン」のピアノ・ソロは、都会的なブルーズ演奏にバッチリとマッチするし、ベーシスト「リドレー」が、一心不乱にベース音を刻むのが、後半の裏聴き所でしょうか?
いずれにせよ、都会的でカッコイイ、BNらしいブルーズ演奏です。
goodな1曲です。

もう1曲、このメンツで演っている4曲目「クンガ・ブラック」に行きましょう。
少し複雑なラテン調のリズムで、コンガの「ブラック」を完全フューチャーした1曲で、「ハバード」の煌びやかなソロは当然の如く、カッコイイですが、フルートを演る「スポールディング」の攻撃的な演奏も中々です。
でも、この中でも特に、ラテン・メロディ曲となると、「メイバーン」のピアノが抜群に輝きを増す。
ホーン・セクションと違って、アグレッシブではないが、すっきり爽快のファンキー節で、ノリノリになります。
最後にはベース「リドレー」のアドリブ一発も有って…本当に楽しい1曲です。

2曲目「ブルー・スピリッツ」…表題曲でもあるワルツ曲だが、やっぱり1番の名演かもしれない。
序奏の「スポールディング」のフルート演奏からして、超魅惑的で、受ける「ハバード」のアーバナイズされたアドリブも、クールでカッコイイ!!
しかし、この演奏で光っているのは、やはり豪華なリズム・セクションである。
「マッコイ」は、序盤はブロック・コードで伴奏をしているだけだが、この当時(全盛期)の彼らしく、ハイ・センスの塊の様な、強烈なパルスをびんびんに発しているモード・ピアノの極地演奏をしてくれる。
「ラロカ」のシンバルメインの、華麗なドラミングも素晴らしいし、最後までキープ力を落とさずセンスを保ってくれる。
中盤以降は、もう一度(2度)「スポールディング」がスマートなソロを演って、「モブレー」が渋くテナーで対抗する。
これらの新人類?に混じって「モブレー」一人が、時代遅れだが、そんな事はどうでも良い。
あくまで「モブレー」は「モブレー」らしくだ!
最後の最後まで「スポールディング」のフルート演奏の切れと、インテリジェンスが最高潮で、この曲では完全に主役の座を「ハバード」から奪っちまったようです。
「ハバード」の出来だって悪くは無いんですが、「スポールディング」が出来すぎなんでしょうね。
モード・ジャズ好きの方には、この演奏つぼにはまります。

3曲目「アウター・フォーシズ」…各自のソロが活かされた編曲で、トラディショナルな演奏が心地よい。
「ハバード」は思い切りよく、好フレーズ連発のソロを取り、「モブレー」はマイペースなんですが、アルトを演る「スポールディング」が、ハードでフリーキーなブロウを展開して、ここでも光っています。
リズム・セクションは、2曲目同様で、モード・ジャズの典型的な演奏を終始行っています。
知的な「マッコイ」と、インテリックに煽る「ラロカ」、ベースで有りながら、歌って皆をエキサイティングにさせる「クランショウ」…と、このリズム・セクションは、まじですごいねぇ。
この連中に煽られたら、フロントは燃えない訳が無いですね。

5曲目「ジョド」…「クランショウ」のハードなベース・プレイと「ラロカ」の強固なタイム・アシストに引っ張られて、「ハバード」がストレイトに、アドリブを演ります。
この曲では、ほぼ全員にソロ・パートが廻って来て、アルバムのエンディングに相応しい締めを抽出しています。
華麗に全員で、ゴール・テープを切りますよ!

評価とすると、やっぱりリズム・セクションにスター軍団を揃えた曲の方が判定勝ちでしょう。
個人的にはコンガの「ブラック」が入ったオクテットも捨て難いんですが、アルバム、ベスト1の曲は、やっぱりタイトル曲の「ブルー・スピリッツ」ですね。

トランペットとバリトン・サックスの競演…ザ・キャット・ウォーク~ドナルド・バード

2008-02-29 23:06:00 | ジャズ・トランペット
今日は当たり前ですが、4年ぶりのうるう年、2月29日ですね。
このブログを書き終えると、次回の2月29日は、また4年後まで無いんですね。
そう考えると、一寸不思議な気分になります。

さて、今日もブルー・ノートから楽しい一枚を紹介しましょう。
トランペットの貴公子「ドナルド・バード」と双頭のコンボを組む相棒が、バリトン・サックスの「ペッパー・アダムス」。
高音パートと低音パートの2管編成の妙が楽しめるアルバムです。

アルバムタイトル…ザ・キャット・ウォーク

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ペッパー・アダムス(bs)
      デューク・ピアソン(p)
      レイモン・ジャクソン(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.セイ・ユーア・マイン、2.デュークス・ミクスチュア、3.イーチ・タイム・アイ・シンク・オブ・ユー、4.ザ・キャット・ウォーク、5.キュート、6.ハロー・ブライト・サンフラワー

1961年5月2日 録音

原盤…BLUE NOTE ST-84075  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6562

演奏について…オープニング曲「セイ・ユーア・マイン」…1曲目から、とてもメロディアスで、マイナー・チューン好きな人のハートを直撃するテーマが魅力的で、「バード」のミュート・プレイのリリカルさとナイーヴな演奏が、より一層魅力を倍増させている。
後を受ける、渋い「ペッパー・アダムス」の重厚なバリトン・サックスと、「ピアソン」の叙情的なシングル・トーンでの優しげなタッチが…得も言わぬアシスト機能となって、曲と演奏を彩るんです。

2曲目「デュークス・ミクスチュア」…ゴスペル調のファンキー・チューンで、「バード」と「アダムス」の2管のユニゾン演奏が、より、アーシー&ブルージー、…そしてファンキーの3種の匂いを強烈に発する。
特に「アダムス」の分厚いバリトン・サウンドが重厚さを3割増しにさせて…リリカルなタッチで軽やかに弾く「ピアソン」との対極的な演奏と音質が、更に曲の特色を色濃くさせている。
実直に、テクニックを抑え目にリズム・セクションに徹する「フィリー・ジョー」の脇役ぶりが良い仕事をしています。

3曲目「イーチ・タイム・アイ~」…序奏のソロを取るのがバリトン・サックスの「ペッパー・アダムス」と言う編曲の妙が、センスを感じさせるバップ・チューンで、期待に違わず、「アダムス」が抜群アドリブで、ぶいぶい言わせる。
「バード」のオープン・トランペット演奏は、伸びやかで健康的で気持ち良い。
「ピアソン」のソロも勿論良いが、この曲では前2曲で大人しかった、「フィリー・ジョー」が本領発揮で、超絶ドラミングで皆をバンバン煽ってくれます。
流石「フィリー・ジョー」です。
ファンキーさとバップ臭さが倍増しですねぇ。

4曲目「ザ・キャット・ウォーク」…90年代に入って、大ヒットしたUs3の「カンタループ」にサンプリングされたタイトル曲なのだが、今聴いてもなるほどと思わせる魅力が有る曲です。
変則的なリズムで、曲を切りながら進行する所は、正しく抜き足、差し足、忍び足の…猫が歩く様を表現しているのでしょう。
特に「ピアソン」のカラフルで、魅惑溢れるアドリブ・ソロ演奏が美しい雌猫のしなやかさを表している。
「バード」と「アダムス」は、フェロモンぷんぷんの雌猫に求愛するのか?アッシー君、貢君をしている、情けない雄猫みたいだなぁ。
いつの時代も女は強いもんだ。
人間でも、猫でもそれは変わらないねぇ!!

5曲目「キュート」…アルバム随一の急速調の曲だが、完璧な演奏技術のメンバーが揃っているので、楽々こなしていて、心憎い。
「バード」の運指も流石だし、「フィリー・ジョー」と「ジャクソン」のリズム・セクションも完璧なシンクロで、心強いばかりです。
「アダムス」も難しいバリトン・サックスと言う楽器を、超絶で吹き通して、漢っぷりを見せ付けてくれます。
フィナーレの盛り上げもバッチリ決まって、…特に「フィリー・ジョー」がソロで爆裂ドラミングを決める部分は圧巻の一言。
相変わらずやる所はやってくれるぜ「ジョー」!!カッコイイぜぇい!!!

最後に、今日の卓球(女子)惜しかったね!
中学生の「石川佳純」ちゃんが善戦空しく負けちゃったけど、あそこで(特に第1セット)で取っていれば、波に乗って(チームも)勝てたかもしれない。
とても残念です。
個人的には「福原愛」ちゃんよりも「佳純」ちゃんのファンな物で…。
勿論、「愛」ちゃんや「平野」選手も沢山応援したんですけど…皆負けてしまって、返す返す残念です。
しかし皆若いので、この敗戦を糧にして、次回(来年)の横浜でリベンジして欲しいです。
女子の分も、明日の男子、頑張れ!!!

衝撃のデビュー作…ウィントン・マルサリス~マルサリスの肖像

2008-02-19 22:08:18 | ジャズ・トランペット
正しく衝撃が走る!
若干二十歳の若者が、「ハンコック・トリオ」をバックに従えて、ストレイト・アヘッドなトランペットを吹き切る…これこそ「クリフォード・ブラウン」以来の天才的なトランペッターの登場である。

貴方も、「マルサリス」の登場を見て(聴いて)下さい。

アルバムタイトル…マルサリスの肖像

パーソネル…リーダー;ウィントン・マルサリス(tp)
      ブランフォード・マルサリス(ts、ss)①~⑤
      ハービー・ハンコック(p)③、⑤、⑥
      ロン・カーター(b)③~⑥
      トニー・ウィリアムス(ds)③~⑥
      ケニー・カークランド(p)①、②、⑦
      クラレンス・シー(b)①、②
      ジェフ・ワッツ(ds)①、②、⑦
      チャールズ・ファンブロウ(b)⑦

曲目…1.ファザー・タイム、2.アイル・ビー・ゼア・ホエン・ザ・タイム・イズ・ライト、3.RJ、4.ヘジテイション、5.シスター・シェリル、6.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ(ホエン・ノーバディ・ニーズ・ミー)、7.トワイライト

1981年7月、東京にて録音③~⑥、1981年8月NYにて録音④、⑦

原盤…CBS  発売…ソニー・ミュージック・エンターテインメント
CD番号…SRCS 9173

演奏について…オープニング曲「ファザー・タイム」…「ケニー・カークランド」の尖ったタッチの硬質ピアノ、「ジェフ・ワッツ」の乾いたクールさが魅力のドラミングに導かれて、「ウィントン・マルサリス」が、20歳とは思えない、テクニックとエモーションで、ハイ・センスのアドリブを吹き切ります。
中盤からは、兄貴の「ブランフォード・マルサリス」が、幾分渋めの音質で、テナーでブロウして、弟をアシストします。
ここからは、演奏もかなり高速化してきて、「ワッツ」が煽り、2ホーンの兄弟が受けて立ちます。
そしてユニゾン調のアーバナイズされた兄弟デュオで曲を締め括ります。

2曲目「アイル・ビー・ゼア~」…曲は短いが、非常に幻想的で、桃源郷の様な曲(サウンド)で、「ウィントン・マルサリス」のオープン・トランペットが、夜空を彩るオーロラみたいに、心を誘う。

3曲目「RJ」…「ウィントン・マルサリス」のミュートを付けていながら、攻撃的な奏法は、まるで全盛期の「マイルス・デイヴィス」の化身の様です。
その後、「ブランフォード」が、ソプラノ・サックスで、煌びやかで軽やかな、天空を駆けるペガサスの如く疾走を始める。
しかし、曲を引っ張る最大のエンジン役は、やはり「トニー・ウィリアムス」ですね。
超絶ドラミングが、えぐいです。

4曲目「ヘジテイション」…「ロン・カーター」と「トニー・ウィリアムス」のヘヴィーなリズム・セクションに推進されて、「ウィントン」がオープン・トランペットで、そして「ブランフォード」がテナー・サックスで、交互に掛け合いをしながら、クールに…且つ大胆にアドリブを吹いて行く。
「カーター」、「トニー」とも非常に短調なリズムを刻むんですが、逆にそこがカッコイイんです。
リズム・セクションはパワーとスピードが有れば、他はあまり必要では無い…シンプル・イズ・ベストが良いですねぇ。

5曲目「シスター・シェリル」…ネオ・ラテン調と言うべき、変則的なリズムだが、「ハンコック」の魅惑的なフレーズでの飾り付けと、「ウィントン・マルサリス」の良く歌うフレーズが、とにかく心地良いサウンドを作り上げる。
「ロン・カーター」が、ぶんぶん言わせるベース演奏が、重厚さを纏って、実に良い仕事をしていますぜい。
エンディングに近づいてから、「ブランフォード」も、とても情緒溢れるソプラノ・サックスで決めるのも味わい深くてgoodです。
個人的には、このアルバムで、一番お気に入りのトラックです。
スーパー・ミュージシャンが描く、絵画の様な極上サウンドです。

6曲目「フー・キャン・アイ~」…「ウィントン」が若いくせに、また一つ引き出しを開けて、ツールを取り出す。
そう、「アート・ファーマー」を彷彿させる、ほのぼの系…いや、幻想的なトーンで、甘い空間を演出する演奏をやってくれるんです。
勿論、「ハンコック」がサイドで、アシストする抜群のピアノ・アドリブも冴えに冴えて…「カーター」「トニー」と、「マイルス・バンド」の勇士達の完璧なバック演奏も加味されて…とにかく、とっても気持ち良いんです。
最高です!!

ラストの「トワイライト」…かなり、モード演奏の極みの様な演奏で、「ウィントン」が、華麗に…そしてインテリジェンスにオープン・トランペットを決めます。
「ファンブロウ」の硬派なベース・プレイと、クールに推進して行く「ワッツ」のカッコイイ、ドラミングも、とにかく行けてます。
中間からは、「カークランド」が、高音域をたっぷり使って、モード・ピアニズム全開のアドリブをバッチリ決ます。
ラストを飾るのに相応しい、ハイ・センスな演奏の一曲です。

神童?の華麗なるデビュー作品を堪能して下さい。


グルーヴィー&ファンキーな名盤…ヒアーズ・リー・モーガン~リー・モーガン

2008-02-12 22:49:25 | ジャズ・トランペット
バッチリ、goodなグルーヴ感覚に、ブリリアントでエモーショナルな魅惑のフレーズでビシッと決め捲る、伊達男。
そう、それが今日の主役「リー・モーガン」が贈る、VeeJayの名盤、「ヒアーズ・リー・モーガン」です。
参加メンバーも最高レベル…演奏曲も超行けてる…正に言う事無しです。

アルバムタイトル…ヒアーズ・リー・モーガン

パーソネル…リーダー;リー・モーガン(tp)
      アート・ブレイキー(ds)
      ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      クリフ・ジョーダン(ts)

曲目…1.テリブル・T、2.モギー、3.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー、4.ランニング・ブルック、5.オフ・スプリング、6.ベス

1960年録音

原盤…Vee Jay LP-3007  発売…㈱ファンハウス
CD番号…FHCY-2007

演奏について…もう、最高の名演は誰が何と言おうとも、3曲目「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」の超絶バラッドである。
とにかく、この1曲だけでこのアルバムの価値は普遍であり、「リー・モーガン」と言う稀代のトランペッターの評価を揺ぎ無い物にしている。
「ケリー」の叙情的な前奏に率いられて、「モーガン」が、とにかくロマンティックで、ナイーヴで、そしてセンチメンタルにミュート・トランペットで心情を歌う。
続く「クリフ・ジョーダン」のテナー・ソロもすごいの一言。
「モーガン」の描く音を敢えて女性とするならば、「クリフ」は渋い男性です。
めちゃくちゃに「モーガン」のアドリブ・ソロが可憐で美しいんです。
サポートする「ケリー」のピアノ・アドリブ・ソロも心の琴線触れ捲りで…泣けます。
御大「ブレイキー」は静かに脇役に徹し、「チェンバース」は演奏こそ主張無しですが、野太いベースを淡々と、切々と刻み、見事に助演男優賞獲得です。
夜の四十万に映える、一輪の真っ赤なバラの様に悲しくも、美しい名演奏です。

ファンキー節がびんびんで、絶好調のオープニング曲「テリブル・T」ですが、こう言ったファンキー演奏を演らせたら、「モーガン」はトランペット奏者では、殆ど神と言って良いんじゃない?
ヴィー・ジェイと言うマイナー・レーベルのレコーディングだけど、奏でられたサウンドは、ブルー・ノート真っ青、いやブルー・ノートその物と言っても良いぐらい。
「モーガン」を煽るぐらい乗りの良い「クリフ・ジョーダン」と、こちらもファンキー・ピアノの申子、「ウィントン・ケリー」もソロで決めます。
ラテン・ドラムでぎんぎんに煽り捲る「ブレイキー」と渋く決める「チェンバース」のサポートも二重丸評価です。
とにかく、楽しい1曲です。

2曲目「モギー」…この曲も楽しげなファンキー・チューンで、「モーガン」と「ジョーダン」のユニゾンで始まるテーマ・メロディ演奏なんか…まんまブルーノートみたい…。
アドリブに入ってから、「モーガン」はブリリアントで聡明なサウンドを、これ見よがしに吹いてくれます。
受けた「ジョーダン」は明るく豪快に、ぶいぶいとテナーをかまして、更にアドリブを展開させます。
「ケリー」は魅力溢れるフレーズを連発して、二人の演奏に修飾を付けてくれて…終盤では「チェンバース」のソロも出てきちゃうし…最後は「ブレイキー」がガツン、ドキュンと太鼓を敲き捲って…クインテットのパワー全開で…フィナーレとなって…本当に良い演奏です。

6曲目「ベス」…ブラッシュで引っ張る「ブレイキー」に、ミュートで応える「モーガン」。
「クリフ」も前半は弱音を活かした、かなりセンシティブなソロを演ってくれて、後半はテナーを良く歌わせて…とても魅惑的な演奏です。
「ケリー」はブロック・コードを主体にしたサイド演奏と、跳ねる様に乗ったシングル・トーンで陽気に歌わすソロ演奏の対比が面白いですねぇ。
ラストはホーン二人の、ハーモニー&ユニゾンのテーマ演奏でバッチリ〆てくれますぜ。

4曲目「ランニング・ブルック」…例に洩れず「モーガン」と「ジョーダン」のユニゾン演奏で幕を開けて、その後「ジョーダン」が、バリバリとカッコ良いテナー演奏をばっちり決めます。
その後、「モーガン」のソロが、迫力満点の名演奏です。
「ジョーダン」が、かなり煽ったので、倍返しですんごいアドリブをやっちゃいますよ。
「ケリー」は、これ以上二人をバウトさせない為か?、goodなフレーズを弾きつつも、少し引き気味のアドリブ演奏をするんです。
サッカーで言う、とてもクールなボランチの様な演奏ですね。
しかし…「ブレイキー」は、終盤に思い切り煽り捲って…「ケリー」の冷静さははて?どこへやら?
でも、そいつが良いんです。
「ブレイキー」はやっぱり、ガツンとやらないかんのです。(大爆笑)!!

5曲目「オフ・スプリング」…「ジョーダン」が思い切りブローするソロから聴いていて気持ち良い~!
実直にベースを弾き続ける「チェンバース」…良い仕事してますね。
「モーガン」は、ここでかなりクールでインテリジェンス有るアドリブ・ソロを決めてくれます。
「ケリー」は、前半は伴奏に専念していて、終盤にかなり遊び心を見せたおかずを多めのソロをしっとりと演ってくれます。
どこかラグタイム調の、オールディーズな雰囲気が感じ良いです。
ラストはホーン二人が、テーマを演って…クール・ダウンです。

70年代に録られた正統的なジャズ…ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン~ハンニバル・イン・ベルリン

2008-01-29 22:18:09 | ジャズ・トランペット
1970年代~って言いますと、誰もが知っている、フュージョン全盛時代。

歴史的な名盤で言っても、電気マイルスの諸作…例えば、「アガルタ」「パンゲア」「ジャック・ジョンソン」「オン・ザ・コーナー」なんかがそうでしょう。
また、「ハービー・ハンコック」の「ヘッド・ハンターズ」、「チック・コリア」の「リターン・トゥ・フォーエヴァー」等もそうですし、「ヒューバート・ローズ」の作品や、日本の「ナベサダ」「ヒノテル」「渡辺香津美」等も著名な、フュージョン系アルバムを数多く出したのが、やはり70年代です。

その、フュージョン全盛期に敢えて、アコースティック楽器で、フリー&モードで全力でぶいぶい演るアルバムを出したのが、今日、紹介の「マーヴィー・ピーターソン」であり、その彼の作品の中でも最高傑作が、この「ハンニバル・イン・ベルリン」なんです。

時代錯誤?と言われようと、自己を貫き、思い切り吹き切る「マーヴィー・ピーターソン」の名演を是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…ハンニバル・イン・ベルリン

パーソネル…リーダー;ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン(tp)
      ジョージ・アダムス(ts)
      マイケル・コクラン(p)
      ディーダ・マレイ(cello)
      スティーヴ・ニール(b)
      アレン・ネルソン(ds)

曲目…1.賛美歌第23番、2.ウィロウ・ウィープ・フォー・ミー、3.ベッシーズ・ブルース、4.スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット、5.マイ・フェイヴァリット・シングス

1976年11月3日 ドイツ、ベルリン・ジャズ・フェスティバル ライヴ録音

原盤…MPSレコード  発売…ポリドール
CD番号…POCJ-2554

演奏について…まぁ、私が好きで書いてるブログなので、一方的な意見だと思いながらも、ラストの「マイ・フェイヴァリット・シングス」から書きたいので、ご了承を下さい。
「ハンニバル」が奏でる序奏は、ハイ・ノートで吹くアドリブ・ソロ演奏です。
一聴すると、まだ「マイ・フェイヴァリット・シングス」には聴こえないが、1分半過ぎた所から、著名なメロディを吹いて、全員がヨーイ・ドンの戦闘体勢に入る。
ビンビンと張り詰めたハードなベースを演る「スティーヴ・ニール」と、「エルヴィン・ジョーンズ」のこれ見よがしに、爆流の様にドラムを敲く「ネルソン」が、リズムを推進する。
ここで、「ジョージ・アダムス」が、フリー・ジャズの寵児らしく、思い切り豪快にシャウト&ブロウで、エネルギー発散120%で吹き切ります。
先生の「コルトレーン」を彷彿させる、テナー・サックスでの絶叫に、心が思い切り解放されます。
その後に続く「ハンニバル」は、高音域を中心に、オープン・トランペットで、ブリリアントにアドリブを決めてくれます。
その後には、「ハンニバル」が、もはやトランス状態になり、吹いて吹いて吹き捲る…倒れそうになるまで吹く。
こんなトランペット演奏…聴いた事がないぜ!
聴衆は完全にスタンディング・オベーションになります。

オープニング曲「賛美歌第23番」…クラシックに名曲、「熊蜂は飛ぶ」を彷彿させる、トランペットでの速射砲の様な、超絶技巧曲でスタートする。
ヴェリー・ハードな男のベースを弾き捲る「スティーヴ・ニール」が、鋼鉄のドライヴィングで皆を引っ張る。
「アレン・ニルソン」のドラムスも、「ニール」に負けじと、皆を煽り捲る。
それを受けて、「ハンニバル」が、幽閉された鳥が、天空に放たれた様に、思い切り自由にアドリブ演奏を吹くんです。
その後はピアノの「マイケル・コクラン」が、モード&フリー全開で、鍵盤を敲く敲く…打楽器としてピアノを打ち込むんです。
それから、またまた「ハンニバル」の登場です。
少し休んで体力を取り戻した、若き獅子がまたオープン・トランペットで、声高らかに、自己を叫びます。
素晴らしい名演奏です。

2曲目「ウィロウ・ウィープ~」…非常に有名なスタンダード曲ですが、ここでも例に洩れず、「ハンニバル」が素敵なバラード・プレイを見せます。
どこまでも美しく、しかしトランペットの迫力を活かして、ハイ・ノートで決めて来ます。
それから「コクラン」が、とても流麗なアドリブ・ソロを紡ぎます。
バックのリズム・セクションは、真面目に、実直に自分の仕事を完遂し、「コクラン」をサポートします。
この後、「ジョージ・アダムス」が、良く歌うカデンツァを演じて、更にエキサイティングな感情にさせますが、ラストの再度ソロを取る「ハンニバル」は、序奏と同じアプローチに戻り、叙情的なバラード・プレイで、この曲を締め括ります。

3曲目「ベッシーズ・ブルース」…相も変わらずハードなバック陣に煽られて、序盤は「アダムス」が主軸になり、ブルース調のメロディをフリーキーに調理して、ファイティング・スピリッツを曲に抽入します。
「アダムス」は、体が大きい事も有って、天性に(吹く)音に迫力が有りますね。
持ち前の大音量を見事に活かした演奏です。
この曲では「コクラン」は、シングル・トーンをメインに転がす様な弾き方で、華麗にソロを仕上げます。
そして、また曲の仕上げには、「ハンニバル」が、雄大なソロを大きな音で吹き切り、劇的に〆てくれます。
しかし、この日の「ハンイバル」…集中力の持続力が、まじに大した物です。
どの曲も、フル・トーンで完璧に吹き切っています。

4曲目「スウィング・ロウ~」…チェロの「デューダー・マレイ」のソロ演奏から、この曲は幕を開ける。
この曲は「ハンニバル」の自作曲らしいのだが、とても歌謡的なブルース曲で、覚え易いメロディ進行で…「ハンニバル」がアドリブ・フレーズを駆使して進んで行く。
しかし、チェロをコンボに使用すると考えた意図は何だろうねぇ?
結果から言うと、とてもセンスが有るよねぇ。
とても、曲の品が上がる感じがするんです。
「ハンニバル」は、とても気持ち良く、バックを信じて、トランペットで、メロディを忠実に、最初から最後まで歌い上げます。
真にセンス抜群の1曲に仕上がりました。

「ハンニバル・マーヴィン・ピーターソン」…活躍期間は短かかったが、このアルバムを残した事により、ジャズ史にその名を刻んだと、私は信じたいです。
それぐらい、出来が良い名盤に仕上がっております。

このアルバムの収録曲は佳曲ぞろいです…ドナルド・バード~バード・イン・フライト

2008-01-20 14:14:53 | ジャズ・トランペット
CD解説(高井信成氏 著)から引用させて頂くと、このアルバムは、「ドナルド・バード」の有名作、ファンキーの王道「フュエゴ」と、ライブの傑作「ハーフノートのドナルド・バードvol.2」の間に挟まれて、一寸地味な評価に留まっているのだが、佳曲揃いの好アルバムだと書かれていました。

正しく高井氏のおっしゃる通りで、「バード」の作曲と、ピアニストとして参加の「デューク・ピアソン」の作品、そして、スタンダードと、メロディアスな佳曲で構成されている…昔的に言うなら、ジャズ喫茶(店主)好みの1枚なんですね。

そして、演奏するコンボも、「ハンク・モブレー」との2管(1、3、4曲目)と、「ジャッキー・マクリーン」との2管(2,5,6曲目)で、半々ずつに構成されています。
この辺の対比、聴き比べが出来るのもお楽しみの一つになるかもって感じでしょうか?

アルバムタイトル…バード・イン・フライト

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ハンク・モブレー(ts) ☆2、5、6曲目抜け
      ジャッキー・マクリーン(as)★★2、5、6曲目参加
      デューク・ピアソン(p)
      ダグ・ワトキンス(b) ☆2、5、6曲目抜け
      レジー・ワークマン(b)★★2、5、6曲目参加
      レックス・ハンフリーズ(ds)

曲目…1.ガーナ、2.リトル・ボーイ・ブルー ★★、3.ゲイト・シティ、4.レックス、5.BO ★★、6.マイ・ガール・シャール★★

録音…1960年1月17日、25日  7月10日★★

原盤…BLUE NOTE STー84048  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6531

演奏について…巷で評価されているのは、1曲目と6曲目、そして2曲目なんですが、私的にもその3曲が聴き物なのは言うまでも有りません。(かなり俗的だけど、良い物は良いんですよ!)
さて、その1曲目「ガーナ」…「ドナルド・バード」自らが書いたラテン・リズムのナンバーなのですが、「ダグ・ワトキンス」の的確なベースと、「ハンフリーズ」のシンバル・メインのドラムスがしっかりと曲の礎を作って、そのリズムの上を「バード」が哀愁を含んだトランペットで走ります。
その後に「ピアソン」がそれ以上に哀愁あるピアノ・アドリブをバッチリ決めてくれて、心わくわくの更に良い感じになります。
終盤に出てくる「モブレー」は、いつもより太目の音色(サウンド)で、かなり男っぽい(渋い脇役では無く、準主役級の俳優だな)のイメージ演奏が新鮮です。
それ以上に「モブレー」の後の「ハンフリーズ」のドラム・ソロが聴き物で、アフロでリズミックなバスドラ効果も良いので、「ハンフリーズ」の音楽人生の中でもベストに近い演奏では無いかと思います。

2曲目「リトル・ボーイ・ブルー」…「マクリーン」抜きのワン・ホーン演奏なんですが、「バード」の演奏だけをメインに選ぶなら、このアルバムのベスト・チューンなのは間違いないでしょう。
やや抑制した音量で、非常にリリカルにバラッド・メロディを吹き切ります。
フル・トーンでのバラッド演奏で言ったら、「リー・モーガン」の「アイ・リマンバー・クリフォード」に匹敵するぐらいの演奏かな?(一寸持ち上げすぎか?)
「ピアソン」のシングル・トーンで高音域を多用した、ロマンティックなアドリブも感涙物で…とにかくきれいで、二人の織り成す「美演」は、最高です。

3曲目「ゲイト・シティ」…これは、「ピアソン」作のファンキーなノリの良さを含んだブルーズ曲で、1曲目のラテンと2曲目のバラッドから、がらりと変わった曲調で、面白いアクセントになっています。

4曲目「レックス」…全編を通じて、ブリリアントな音色で、「バード」が気持ち良いアドリブを演ってくれます。
相変わらずバックの3人「ピアソン」、「ワトキンス」、「ハンフリーズ」の的確なアシスト演奏が、「バード」の強力な援軍となってくれます。
「モブレー」も、元気なトーンで、ぶいぶい言わせるんですが、1曲目と同様に、この日「モブレー」に何が有ったんだろう?って思うぐらい、奏でるサウンドが元気(良すぎ)なんですよ。
「モブレー」の音って、テナー奏者の中で、最も地味で、渋いのが特徴で、また魅力でも有るんですが、(この日の音・演奏は)いつもと違うんだよね。
でも、一寸パワフルでマッシブな「モブレー」も良いよね?

5曲目「BO」…「ピアソン」作のマイナー・チューンで、序奏のテーマをユニゾン演奏する所のフレーズ&編曲は、完全にブルー・ノートの世界に真っ只中って感じだよね。
その後の「マクリーン」の塩辛い尖ったトーンのアルト・サックスと、「バード」の抑え気味のアドリブが、ディープな雰囲気を作っています。
また、「レジー・ワークマン」の野太いベース・サウンドと、ブルース調のフレーズを多様する「ピアソン」の演奏が、更にディープさに拍車をかけてますねぇ。
うぅーん、真に渋い一曲です!!

さて、このアルバムの代表作品が6曲目の「マイ・ガール・シャール」なんですけど、とにかく「ジャッキー・マクリーン」のソロの出来が秀逸で、無理に音を出すフリーキーな感じではないけど、天に突き抜けた様なトーンがgoodだねぇ。
「バード」も、アルバム収録曲中、一番とも言えるブリリアントな音色で、アドリブを展開してくれて…2管の魅了を余す事無く堪能させてくれます。
それから「ピアソン」の「ソニー・クラーク」ばりのシングル・トーンでのセンチメンタルなアドリブ演奏が…更に(貴方の)琴線を刺激し捲りますよ。

いつまでも手許に置いておきたい、魅惑的なアルバムです!!!
 

ジャズ・メッセンジャーズをバックに従えて…バーズ・アイ・ヴュー~ドナルド・バード

2008-01-14 08:55:22 | ジャズ・トランペット
以前、「ドナルド・バード」が演奏していた、幻のレーベル、トランジションに吹き込んだ、「ビーコン・ヒル」を紹介した事が有りました。
今日は、「バード」が同じくトランジションに残したデビュー・アルバム(曲によって、「ジョー・ゴードン」との2トランペッツ)を紹介しましょう。

バックのメンバーが「ジャズ・メッセンジャーズ」と言う、豪華且つ貴重なアルバムです。

アルバムタイトル…バーズ・アイ・ヴュー

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ジョー・ゴードン(tp)
      ハンク・モブレー(ts)
      ホレス・シルヴァー(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      アート・ブレイキー(ds)

曲目…1.ダグズ・ブルース、2.エル・シノ、3.エヴリシング・ハプンズ・トゥ・ミー、4.ハンクス・チューン、5.ハンクス・アザー・チューン

1955年12月2日録音

原盤…TRANSITION  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5886

演奏について…解説から少し引用すると、スタートの「ダグズ・ブルース」は、12小節のブルースで、「ジョー・ゴードン」が加わったセクステット演奏との事。
ソロの順番ですが、「ワトキンス」の(2コーラス・ウォーキングベース)から始まり→「バード」(9コーラス)、「モブレー」(4コーラス)、「ゴードン」(7コーラス)、そして最後が「シルヴァー」(3コーラス)との事です。
まず、長いソロの「バード」ですが、ちょっぴりファンキーで、エモーショナルも豊かなフレーズ連発で、デヴュー作とは思えない程、堂に入った演奏をしてくれます。
「モブレー」は、とにかく、し、渋い!
渋くてス・テ・キ!!
2トランペッツで、派手になりがちなイメージの演奏・曲を、ブラック・ブルー色の楔(くさび)を打つが如く、燻し銀の役目をしています。
「ゴードン」は「ガレスピー」をアイドルと仰ぐだけに、非常に切れが有って、ブリリアントな音色で、尖ったソロを取ります。
この辺の二人のペッターの音色&フレーズ対決が、一番の聴き所でしょう。
「シルヴァー」の抑え目のソロ(余りファンキーには演っていないんだけど…)も良いですね。
御大「ブレイキー」は、何故か?地味に地味にバックに徹していますが、これも逆に良い味を出しています。
正にトップ・イズ・ベストの1曲でしょうか?

2曲目「エル・シノ」…こいつも少し解説のお力を借りておきましょう。
まず、「モブレー」が抜けた2トランペッツのカルテット演奏であります。
テーマは2管ユニゾンで演りますが、主題の1ブリッジは、まず「ゴードン」が吹きます。
それから、この曲…「ウォーキン」にクリソツと思ったら、一部メロディを引用しているとの事で…。
ここでのソロは、「ゴードン」、「バード」の順番で、代わる代わる取りますが、前述の通り「ゴードン」の音色の方が尖っているので、ちと鋭く、そして乾いたクールさが有るので分り易いと思います。
逆に「バード」の音色は、幾分、ウォーム系で、情感がとても豊かです。
「ブレイキー」「ワトキンス」「シルヴァー」のバックは…バック、リズム・セクションとして申し分無い出来栄えで、二人を強固にサポートしています。
2トランペッツのバトル的な演奏を際立たせる、とても見事な演奏です。
でも、でも「シルヴァー」は勿論の事、「ブレイキー」も1コーラスだけ、一発ソロを演りますよ!ムフフ…。

3曲目「エヴリシング・ハプンズ~」…一言で良いねぇ。
寛ぎ系の4ビートのバラッド演奏で、「ゴードン」が抜けたカルテット演奏なんだけど、序奏からソロと取る「バード」が、エモーション抜群のアドリブ・ソロを吹き切る。
「モブレー」もウォーム系で、訥々とした感じが何とも言えない良い仕事をしますねぇ。
ブラシで静かに演奏を通し抜く「ブレイキー」と、可憐にお洒落に弾く「シルヴァー」も最高です。

4曲目「ハンクス・チューン」は、名前の通り「モブレー」が書いたミドル・テンポのハード・バップ曲。
最初のソロは、当たり前だが「モブレー」から。
前2曲は一寸遠慮がち?で渋すぎたかも?て言うに思ったのか、結構、自我を出したソロを取ります。
※自我って言ってもそこは、朴訥な「モブレー」の事、ビッグ・ネームのサキソフォニストとは全く違って、やっぱり渋いんですけどね。(大笑)
この曲はハード・バップさをモロ出しで、「ワトキンス」のカッコイイソロや「ブレイキー」節全開の御大のソロなんかも繰り出されて、面白い演奏です。

ラスト「ハンクス・アザー・チューン」も勿論「モブレー」の曲です。
ここでの「モブレー」のソロの出来は良いですよ~!
音色は相変わらず渋いものの、アドリブ・フレーズのイマジネーションの豊かさは半端じゃない。
派手じゃないけど、とても良く思索された演奏です。
続く「バード」も、「モブレー」を尊敬して?同感覚(音色は地味に、だけど情感はタップリの)ソロを演ります。
中間では見事な二人の絡み合いが最高の聴き場所で、ハード・バップ・カルテットの醍醐味が堪能出来ます。

いずれにせよ、駄演抜きの好アルバムで、新人「ドナルド・バード」の実力と魅力を堪能できますよ。
とてもお薦めの1枚です。

モーガンのファンキーなアルバム…ザ・クッカー~リー・モーガン

2007-12-12 23:17:46 | ジャズ・トランペット
ブルー・ノートの誇る、天才トランペッター、「リー・モーガン」が素晴らしいメンバーによって組まれたコンボで、天賦の才を余す所無く見せ付ける、痛快なアルバムです。

特に「肝」になっている、キー・パーソンは、バリトン・サックスを駆る「ペッパー・アダムス」だと信じて疑いません。
「ボビー・ティモンズ」、「ポール・チェンバース」、そしてドラムス「フィリー・ジョー」のリズム・セクション3人の実力・実績は言わずもがなで、衆目が一致する所なので、敢えて語る必要性は無いでしょう。

「モーガン」の煌くアドリブ・フレーズと、「アダムス」の渋く、硬派な重低音のバリトン・サックスに今宵は酔いましょう。

アルバムタイトル…ザ・クッカー

パーソネル…リーダー;リー・モーガン(tp)
      ペッパー・アダムス(bーsax)
      ボビー・ティモンズ(p)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.チュニジアの夜、2.ヘヴィー・ディッパー、3.ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・ソングス、4.ラヴァー・マン、5.ニュー・マ

1957年9月29日

原盤…BLUE NOTE 1578  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1578

演奏について…ぴか一演奏は、やはりオープニング曲「チュニジアの夜」で決まりです。
「フィリー・ジョー」が奏でる毒々しいラテン・リズムから、期待値100%で胸が膨らみ、その後のメロディを奏でる「アダムス」の重厚なバリトン・サックスと、ブリラントな音質で、声高らかに吹く「モーガン」のアドリブ・ソロにいきなりのノック・ダウンを取られます。
「モーガン」のハイ・スピードで次々繰り出される運指とテクニックの素晴らしさは筆舌に値しますが、それ以上に、このエキゾチック・サウンドにハマリ役なのが、「アダムス」のカデンツァ…究極的なアドリブです。
この演奏の素晴らしさの魅力を倍増させているのが、紛れも無く「バリトン・サックス」と言う楽器です。
この音色は、まじに「チュニジアの夜」にベスト・マッチではないでしょうか?
この二人の抜群の出来のソロを受けて、ファンキー・ピアニストの「ティモンズ」も軽やかなアドリブで疾走をします。
ヘヴィな管楽器の攻撃を、ピアノで軽く受け流し…その後のスーパー・テクニシャン「フィリー・ジョー」のチョイ・ソロも短いが聴き物です。
最後はお似合いのカップル、「モーガン」と「アダムス」が〆を決めて、フィニッシュなのですが…ヤッホー!!とにかく最初から最高の演奏です。。。

2曲目「ヘヴィー・ディッパー~」…序奏の2管のユニゾンと掛け合いから、興味をそそられる、ファンキー・チューンです。
渋く決める「チェンバース」のドライヴィング・ベースに「モーガン」が引っ張られて、抜群のソロを吹けば、「アダムス」もイマジネーション豊かに、しかし原曲のメロディを活かしたアドリブで応えてくれます。
「ティモンズ」は、ここでもライトなタッチで、管楽器を邪魔しません。
あくまでもサイド・メン的な伴奏から発展させたソロで受けます。
「チェンバース」「フィリー・ジョー」のアドリブは、お決まりでは有りますが、とにかく上手いです。
こう言うライトなナンバーを演っても「モーガン」は合うよね。

3曲目「ジャスト・ワン~」…「コール・ポーター」の曲ですが、この曲もいかにもブルー・ノートらしい演奏解釈で、早めの4ビートで疾走していくイメージです。
「アダムス」が、かなりシャウト気味の演奏で、3曲目にも入り、高揚して来た感じもします。
「モーガン」も速射砲の如く、高速のアドリブ・フレーズを湯水の如く吹いて、実力を見せ付けます。
こう言う、疾走ナンバーになると、流石の「アダムス」も「モーガン」にはお手上げ状態でしょうか?
とにかく「モーガン」の超絶技巧に圧倒されます。
「ティモンズ」も高速の指使いで、疾風のソロを受けて立ちます。
終盤には、「フィリー・ジョー」も高速ドラミングで、バトルに参加してくれて…複数の天才が正しくガチンコ・バトルで演り合うベスト演奏です。
「チュニジアの夜」と双璧か?もしかすると、この演奏の勝ちかも???

4曲目「ラヴァー・マン」…「モーガン」の天賦の才が煌く、もう一つの顔…それがこう言うバラッド演奏です。
「マイルス」が知的で抑制された、ミュート・トランペットの美学的な、神の精神的バラッドだとすれば、「モーガン」は真に正統的な、トランペットと言う楽器の美音を余す所無く伝える、「貴公子」の歌声と言ったら過言でしょうか?
いずれにせよ、胸にビビッと来る演奏には違い有りません。
「アダムス」のバラード演奏も結構行けますし、何より「フィリー・ジョー」のブラッシュ・ワークが、見事に彼等をサポートしてくれます。

ラスト曲「ニュー・マ」…「モーガン」のオリジナルで、いかにも…のマイナー調ブルーズ。
まず「ティモンズ」が、日本の演歌の様に、泣き節を入れながらソロ演奏をして、ブルースの真髄を表現したくれます。
それから「チェンバース」…こう言った地味?目のベース・ラインの見事さと、ソロ演奏での生真面目さ…似合っていて大好きです。
「アダムス」も抑制気味だが、渋くブルース・フレーズを決めてくれて、ラストの舞を見せ付けてくれます。
今回のアルバムの最高殊勲選手ですね。
「フィリー・ジョー」の見せ場も勿論有りますよ。
そして最後は、「モーガン」がバッチリとブリリアントにソロをやり遂げて、最高のフィニッシュを見せてくれて…カッコ良く決めてくれます。

全5曲とも駄演が無く、50年代後期のブルーノートの最高に行けてる時代をしっかり捉えた、好アルバムですね。

昨日の続きです。サッチモ・アット・シンフォニー・ホール

2007-10-22 23:02:50 | ジャズ・トランペット
昨日の続きで、サッチモ・アット・シンフォニー・ホールのDISC2を解説しましょう。

まず、1曲目「マホガニー・~」ですが、典型的なデキシー・ランド&ニュー・オーリンズ・ジャズの演奏で、各人のノリノリのプレイが堪能できます。
特に「サッチモ」の長めのアドリブの出来が良いですね。

2曲目「明るい表通りで」では、ゆっくリズムの4ビートによって、「サッチモ」のペット、「ティーガーデン」のトロンボーン、「ビガード」のクラリネットがユニゾンとソロを上手く絡めた三位一体の様な序奏から、このバンドの世界にトリップして、その後の「サッチモ」の味わい深い、ヴォーカルも抜群です。
「サッチモ」を伴奏する「ティーガーデン」の伴奏も秀逸で、名コンビの名演奏に心を打たれるでしょう。
DISC2の中では屈指の名演奏です。

3曲目「ハイ・ソサイエティ」…非常に古典的なマーチ風の演奏で、ディズニーの行進曲を彷彿させる、とても楽しい演奏です。
ソロでは、前奏で頑張るドラムス「カトレット」と、クラルネット「ビガード」のアドリブが聴き物です。

4曲目「家へ帰らないか」…「ティーガーデン」がメインのヴォーカル&トロンボーン演奏と、DISC1と同様に、「ティーガーデン」の伴奏で、力演する「サッチモ」のビッグ2の演奏がgoodですよ。

5曲目「ザッツ・マイ~」では、情感たっぷりに「ヴェルマ」が歌い、聴いていると、とてもふくよかな気分になります。
続く「サッチモ」のヴォーカルも的を射た名唱で、ペーソスもたっぷりで、二人のユーモア溢れるヴォーカルに聴衆は笑いの渦に入ります。

6曲目「C・ジャム・ブルース」では、クラリネット「ビガード」の超絶的なカデンツァ・アドリブと、ベースの「ショウ」のガッツリ・ベースで、略デュオとも言える二人のバトル演奏が素晴らしい。
正に烈火の様な火花散る名演奏。

7曲目「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」でも、ベース「ショウ」の骨太なサウンドが核になって、重厚感に満ち溢れた演奏がなされる。
何やらバップの聖典とも言われる演奏との事で、賑やかな雰囲気が良い。
しかし、「ショウ」のピッチカート演奏の技巧はすごいね。
ベース好きな私には堪らん演奏です。

ラストナンバー「ボフ・ボフ」…ドラムス「カトレット」が、派手派手ドラミングで皆を煽り、強烈にドライヴして行く。
やはり、終曲にドラムが前面に出てくるのは、ノリが有って良いねぇ。
このスタイルは、人気物「バディ・リッチ」や、御大「A・ブレイキー」なんかに踏襲されて行ったのでしょう。
「カトレット」は、かなりのすご腕で、「サッチモ」「ティーガーデン」「ビガード」「ショウ」と、このアルバム(ライヴ)で、ソロを取るメンバーどれもが名人で、この「オールスターズ」が、「オールスターズ」と言われる所以ですね。
拍手喝采で幕が下ります。

ルイ・アームストロング&ザ・オール・スターズ~サッチモ・アット・シンフォニーホール

2007-10-21 23:15:57 | ジャズ・トランペット
ジャズ初期の歴史的なレコーディングであり、アルバムでもあるのが、今日紹介の「サッチモ・アット・シンフォニーホール」です。

言うまでも無く、ジャズの大巨人、「サッチモ」こと「ルイ・アームストロング」が率いる「ザ・オールスターズ」が、シンフォニー・ホールで演奏した、伝説的なライブ録音です。

録音は悪いですが、ビ・バップ、ハード・バップ、モード、フリーへと繋がっていく、ジャズの基本的な演奏は、この頃に確立されて行きました。
日頃、私が紹介している音楽に比べて、一寸、古臭い感じも否めませんが、それはそれで、古き良き時代の貴重な演奏を聴くのも、中々おつな物です。

アルバムタイトル…サッチモ・アット・シンフォニーホール

パーソネル…リーダー;ルイ・アームストロング(tp、vo)
      ジャック・ティーガーデン(tb、vo)
      バーニー・ビガード(cl)
      ディック・キャリー(p)
      アーヴェル・ショウ(b)
      シドニー・カトレット(ds)
      ヴェルマ・ミドルトン(vo)

曲目…DISC 1
   1.マスクラット・ランブル、2.ブラック・アンド・ブルー、3.ロイヤル・ガーデン・ブルース、4.ラヴァー、5.アラバマに星堕ちて、6.アイ・クライド・フォー・ユー、7.シンス・アイ・フェル・フォー・ユー、8.二人でお茶を、9.身も心も、10.ステイク・フェイス
   
   DISC 2
   1.マホガニー・ホール・ストンプ、2.明るい表通りで、3.ハイ・ソサイエティ、4.家へ帰らないか、5.ザッツ・マイ・ディザイア、6.C・ジャム・ブルース、7.ハウ・ハイ・ザ・ムーン、8.ボフ・ボフ

1947年11月30日 ボストン・シンフォニー・ホールにて録音

原盤…DECCA DL 8037 発売…MCAビクター
CD番号…MVCR-20015~16

演奏について…ライブ録音で、2枚組の超大作、それも古い演奏なので、曲数も多いと来たもんだ!
最初に言っておきます、正直、全曲の紹介なんて出来ないっぽいので、気になる曲とお薦め曲だけにしておこうかな。

まず、DISC1の方ですが、オープニング曲「マスクラット・ランブル」…いかにも「サッチモ・オールスターズ」のお出ましと言うのが如実に分かる1曲。
「サッチモ」のトランペット、「ティーガーデン」のトロンボーンの絡みもバッチリ、ピアノ「キャリー」のサロン風寛ぎ演奏も良いし、ベース「アーヴェル・ショウ」のソロもかっこいいです。

2曲目「ブラック・アンド・ブルー」…このDISC1で、一番のお薦め曲です。
哀愁たっぷりの「サッチモ」のトランペットがとにかく泣ける。
その後の、ご存知、だみ声での情感がこもったヴォーカルも最高です。
この曲は「黒い皮膚」の悲哀の歌であり、この時代、シンフォニー・ホールで演奏した事の誇りと、白人に対する揶揄も感情がこもった要因でしょう。

4曲目「ラヴァー」は「ティーガーデン」のトロンボーンをフューチャーした曲で、とにかく抜群のテクニックに目を見張るばかり。
時代が古くても、トロンボーンの演奏には、他のホーン楽器のよりも、技術的な差異は少ないみたいなので、今でも第一級の名演でしょう。

5曲目「アラバマに星堕ちて」では、前曲で技巧高きトロンボーンを吹いた「ティーガーデン」のバラッド・ヴォーカルが堪能できる。
バックの伴奏が終始「サッチモ」が吹くトランペットで、何と言う豪華な組合せでしょう。
中間での「ティーガーデン」のトロンボーン・ソロも、伸びやかで大らかな音色にうっとりします。
2曲目と双璧の名演・名唱です。

6曲目「アイ・クライド~」7曲目「シンス・アイ~」の2曲共、「女サッチモ」こと「ミドルトン」が、のびのびと歌うヴォーカル曲です。

8曲目「二人でお茶を」9曲目「見も心も」の2曲は、クラリネット「ビガード」が素晴らしいアドリブ・ソロを取ります。
8曲目では、後半にドラム「カレット」との、対話「合戦」が繰り広げられ、9曲目では、ベース「ショウ」が、かなりハードなベース・ワークをするのが聴き物です。
「ビガード」は、真面目に超絶テクニシャンで、今聴いても実力充分なアーティストですね。

10曲目「ステイク・フェイス」は、ドラムスの「シドニー・カトレット」のアドリブ・ソロが聴き物なのですが、「M・ローチ」「A・ブレイキー」「フィリー・ジョー」「エルヴィン」「T・ウィリアムス」モダン・ジャズのスーパー・ジャズ・ドラマー達と技巧を比べると、やはり名人と言えども、チョッチ古臭い感じがする。
しかし、この当時のドラム・ソロとすれば、画期的で超絶技巧だったのは、伺い知る事はできる。

DISC2の詳細、解説は、明日に続く…。。。

ファンキーなブルーノートの代表作…リー・モーガン~ザ・サイド・ワインダー

2007-10-19 23:14:50 | ジャズ・トランペット
今日は、ジャズ・ロックの走り云々等と、巷では言われる事が有りますが、ロックかどうかはともかく、ファンキーなノリのよさで、ブルー・ノートの60年代中期を代表する名盤の一つと言うのは間違い有りませんので、この盤を紹介します。
リーダーは天才トランペッター「リー・モーガン」
サイドメンには、「ジョー・ヘンダーソン」や「バリー・ハリス」等、好メンバーに恵まれて、演奏曲も名曲「ザ・サイドワインダー」が入っているので、言う事は有りません。

アルバムタイトル…ザ・サイド・ワインダー

パーソネル…リーダー;リー・モーガン(tp)
      ジョー・ヘンダーソン(ts)
      バリー・ハリス(p)
      ボブ・クランショー(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.ザ・サイドワインダー、2.トーテム・ポール、3.ゲイリーズ・ノート・ブック、4.ボーイ・ホワット・ア・ナイト、5.ホーカス・ポーカス

1963年12月21日録音

原盤…BLUE NOTE 84157  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-5236

演奏について…表題曲(名曲)「サイドワインダー」だが、ロック・リズムに乗って、「モーガン」がファンキーなアドリブを、いつも通りブリリアントな音色のトランペットで吹き切るのが最初の聴き所。
次いで「ヘンダーソン」も、このロック・リズムに合わせて、センスの良いフレーズを次々吹いて、コンボの高揚感が更に増す。
それから「ハリス」が、ノリノリのピアノ・プレイで止めをさしに来ます。
ファンキー度120%の演奏に、貴方の体はリズムを刻み、頭を振るでしょう。
サプライズは、「クランショウ」の渋いベース・ソロが最後に入るのも、編曲のエンターテインメントの素晴らしさが感じられる。

2曲目「トーテム・ポール」…実は、この曲がこのアルバムのベスト1演奏だと、私は信じて疑わない。
ラテン・リズムに合わせて、「モーガン」「ヘンダーソン」のとても都会的な雰囲気のメロディが、ニューヨークを颯爽と歩く、スーツ姿のニューヨーカーをイメージさせる。
「モーガン」のアドリブ・ソロも音色が輝かしく、逆に「ヘンダーソン」は渋く抑え目にソロを吹く。
バックはラテン・リズムと4ビートを随所に転調させて、曲のアクセントを付けて、聴衆を飽きさせない編曲に仕上げている。
この曲での「ハリス」のピアノ・アドリブが、「レッド・ガーランド」のシングル弾きの様にセンスが溢れていて魅力的です。
更に「クランショウ」と「ヒギンズ」のタイトなリズムが、個性的なソロ奏者3人のアドリブ演奏をカッチリ締めている。
最後にもう一度、「モーガン」がテーマを発展させたアドリブを吹いて、この曲の完成を見る。
誠にアーバナイズされた曲調で、(演奏が)終わっても、いつまでも曲が耳と心に残るんです。

3曲目「ゲイリーズ~」も変拍子のロック調リズムの曲で、この曲では、最初に「ヘンダーソン」がアドリブソロをとり、次に「モーガン」がアドリブを吹くのだが、この演奏では「モーガン」が「ヘンダーソン」に合わせたのか、かなり抑え目のトーンでアドリブを吹くのが、いつに無く個性的です。
「ハリス」のピアノも相変わらず冴えていて、「ヒギンズ」がパシンパシンとアクセントを付けて敲くドラムとの曲の対話が楽しいです。

4曲目「ボーイズ~」も変速リズムの曲で、且つファンキー節全開の曲調がアルバムのトータル・コンセプトを表明しています。
フロント二人のユニゾン演奏が長めに取られていて、演奏のパワーが山場に来たかなって思います。
3曲目まで、抑制気味に吹いていた、「ヘンダーソン」も、かなりフリーに大胆にアドリブ・ソロをとっていて、受ける「モーガン」も限定解除?になって、思い切り吹き捲ります。
ミュージシャン皆の心が、集中して燃えるのがすごいですね。

TIMEレーベルの名盤…ケニー・ドーハム~ショウボート

2007-10-09 23:23:09 | ジャズ・トランペット
昨日は、入試で言えば「東大理Ⅲ」の様なアルバム紹介(解説)でしたので、今日は理屈抜きで楽しめるアルバムにしましょう。

TIMEと言うアルバムに残された、リリカルで歌心に富む名盤、「ケニー・ドーハム」リーダーで、ミュージカル作品をジャズ化した「ショウボート」です。

アルバムタイトル…ショウボート

パーソネル…リーダー;ケニー・ドーハム(tp)
      ケニー・ドリュー(p)
      ジミー・ヒース(ts)
      ジミー・ギャリソン(b)
      アート・テイラー(ds)

曲目…1.ホワイ・ドゥ・ラヴ・ユー?、2.ノーバディ・エルス・バット・ミー、3.キャント・ヘルプ・ラヴィン・ダット・マン、4.メイク・ビリーブ、5.オール・マン・リヴァー、6.ビル

1960年12月9日 録音

原盤…TIME  発売…センチュリー・レコード 
CD番号…COCC-00370

演奏について…オープニング曲「ホワイ~」は、楽しげなテーマに乗って、いかにもミュージカルの始まりらしい、明るい感じのスターティング演奏です。
「ドーハム」は、幾分抑え目の音量で、知情意のバランスの取れたアドリブを吹きます。
「ヒース」も、彼としては押さえ気味のヴォリュームで、バランス感覚充分なソロを吹いて、「ドーハム」に続きます。
「ドリュー」は、正しく「ドリュー」らしい、煌びやかなソロ演奏で、キラキラと輝いていて、素敵の一言ですね。
バックの二人「ギャリソン」「テイラー」は、ほんの少し、自己主張(ソロ)を取る時も有りますが、基本的にはリズム、サイドメンに徹しているのが、良いですね。

2曲目「ノーバディ~」は、アルバム中で一番ブルージーなナンバーです。
渋く抑えた「ドーハム」と、派手目に吹く「ヒース」の対比が聴き物です。
次いで「ドリュー」が、シングルトーン中心の、粒立ちの良いタッチで、煌くソロを弾く。
最後は、もう一回「ドーハム」と「ヒース」の絡みとユニゾンで、無難に終わりますね。
とても安心感の有る編曲です。

3曲目「キャント~」は、「ドリュー」の情感に満ちたピアノ伴奏に導かれて、「ドーハム」が繊細でリリカルな持ち味を見事に活かしたラヴ・バラッドを演る。
その、赤銅色の様な(地味且つ明るめ)音色で「ドーハム」が終始、優しく吹き切ります。
ブラッシュでアクセントをつけながら、さりげなく皆を推進していくドラムス「テイラー」が、実は影の主役です。
勿論、「ドリュー」の伴奏も最後までロマンティックで、良い味を出しますよ。
この演奏が、アルバム中でのベスト・トラックじゃないかなぁ。

4曲目「メイク~」では「ドーハム」はいつも通り肩の力を抜いて、淡々と吹いているんですが、「ヒース」は、かなり力演しています。
中間では、「ドーハム」と「テイラー」の掛け合い(丁々発止)が、寛ぎと余裕を醸し出して、演奏場の雰囲気を和らげてくれてます。

5曲目「オール~」は、フロント二人のユニゾン・テーマが、エキゾチックな郷愁を漂わせる。
その後、メジャー・コードに転調して、この二人を中心に、皆がずんずんとスウィングし始める。
特にドライヴィング力、抜群なのは、ベースの「ギャリソン」で、彼に引っ張られて、「テイラー」「ドリュー」も高揚して来るんです。
最後は全員で、きれいにフィニッシュして、サンクスです。

6曲目「ビル」…は、「ヒース」が太い音の豪快なテナーをかますと、「ドーハム」は余裕で受け流して、ベテランの懐の深さを見せ付ける。
うぅーん、流石ベテランの味が、ジワっと出てますね。
玄人受けする演奏がたまらんなぁ。
「ドリュー」のここでのソロは、かなりスウィングしていて、いつもとチト違う印象を持ちます。
エンディングは、二人とも力を入れた、パワー系のソロを吹いて、チラっと男の色香を見せてくれちゃいます。

昨日と打って変った、緊張感とは無縁のこう言うジャズも、当然有りでしょう。

トランペットの貴公子、晩年のアルバム…チェット・ベイカー~ブロークン・ウィング

2007-09-14 23:58:22 | ジャズ・トランペット
若かりし頃は、リリカルで繊細なプレイ&シングと、「ジェームス・ディーン」ばりの「イケメン」ルックスで、絶大な人気を誇った、白人トランペッター&シンガーの、「チェット・ベイカー」の晩年(中年期)のアルバムです。

アルバムタイトル…ブロークン・ウィング

パーソネル…リーダー;チェット・ベイカー(tp、vo)
      フィル・マーコヴィツ(p)
      ジャン・フランソワ・ジェニー・クラーク(b)
      ジェフ・ブリリンガー(ds)

曲目…1.ブロークン・ウィング、2.ブラック・アイズ、3.オー・ユー・クレイジー・ムーン、4.ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン、5.ブルー・ジル、6.ブラック・アイズ(別テイク)、7.ハウ・ディープ・イズ・ジ・オーシャン(別テイク)

1978年12月28日 パリにて録音

原盤…エマーシー 発売…ビクターエンタテインメント
CD番号…UCCMー3003

演奏について…このアルバムの演奏&歌は、「チェット」の10代~20代の頃の非常にリリカルでナイーヴな演奏では勿論ないが、「アート・ファーマー」的な、ほのぼの系のトーンで、また優しげな歌声の歌唱は、若い頃を充分に思い出させる出来である。

特にほのぼのトーンのトランペットが聴ける演奏、5曲目「ブルー・ジル」は、まんま「ファーマー」の吹くそれだ。
バックは、ブラッシュの「ブリリンガー」、かっちり締ったベースで曲の輪郭を作る「ジェニー・クラーク」の二人の出来は良い。
そしてそれ以上に素晴らしい出来なのは、ピアノの「マーコヴィッツ」で、音を極力排除して、少ない音で空間と間を活かした極上のサポート演奏をしている。
いずれも「チェット」のナイーヴな演奏表現を、しっかりと支えている、ハイセンスなリズムセクション演奏である。
「チェット」には、申し訳無いが、トランペットレスの、ピアノ・トリオで演奏する中盤から後半部分は特に聴き物で、各人が一級の冴えを見せる。
この中では、「クラーク」のソロ、カデンツァが聴き応え抜群です。

冒頭のタイトル曲「ブロークン・ウィング」では、「チェット」による「マイルス」ばりの優れたミュート・プレイが印象的だ。
若い時の「チェット」は、リリカルでありながら、どこか憂いと、若者らしいナイフの様な鋭利さが演奏に同居していたが、晩年(50代で死んだので、実際は中年)では、当然鋭利さは無くなったが、渋さと哀愁は増しているので、「チェット」のプレイの新たな魅力が発見できて大変趣がある。
この曲でもバックの3人の出来はとても良く、「チェット」のミュートと素晴らしく一体感が取られたバラードプレイで、ワンホーン・カルテットの醍醐味が味わえる。

2曲目「ブラック・アイズ」…センス抜群のラテンリズムにのって、「チェット」が、幾分明るめのフリューゲルホーンの様な音色で、トランペットを気持ちよく吹く。
「クラーク」のガッツリベースのパワフルな音に支えられて、「ブリリンガー」はシンバルメインに、皆を煽り始める。
「マーコヴィッツ」は、やや半音を多めに使用して、「モンク」程では無いが、ハズシの和音を上手に使用して、大人の伴奏を行う。
しかし、「クラーク」のベースは良いね。
このベース、誰かとにてるのだが…わ、分かった。
第二次「ビル・エヴァンス・トリオ」のベーシスト、「エディ・ゴメス」にくりそつなんだ。
だから、良い音で、アドリブもセンス抜群なんだな。
この曲を含めて、上記3曲が、このアルバムの3大聴き物(演奏)でしょう。

3曲目…「オー・ユー~」では…昭和歌謡の様なイントロ部分から、退廃的なムードたっぷりの「チェット」のヴォーカルが堪能できる。
老いたとはいえ、リリカルな面影は残っていて、中途のトランペット・プレイにも、まだまだ繊細さを持ち合わせている。
この曲ではピアノの「マーコヴィッツ」は、「デューク・ジョーダン」の様なクラシック的な正統的なピアノソロを取り、ベース「クラーク」とのインタープレイには、痺れますよ。
「チェット」のスキャットは…グリコのおまけみたいな物かなぁ。

4曲目「ハウ・ディープ~」…この演奏も序奏は、似非「ファーマー」的な演奏ですが、しかし、この音色、アドリヴ…嫌いじゃないですね。
むしろ好きでさえある。
中盤からは、カルテット4人の演奏に力が入り、「チェット」にしては、かなりブリリアントで、パワー充分のアドリブを吹いて、とても気持ち良い演奏です。
ピアノは殴る様なブロックトーンで、ドラムも全曲中、一番バスドラを効かす演奏で、ベースもぶいぶい言わせるので、ここでの演奏は一言で言うと「硬派」です。

いずれにしても晩年の「チェット・ベイカー」も悪くは無いです。   

今宵は極上のB級グルメの宴を開きましょう。…カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム

2007-08-29 23:46:19 | ジャズ・トランペット
実は私、B級グルメの食べ歩き、大好きなんですよ。
一人で、ファミレスでも焼肉屋でも、平気でどこでも入って食べれますし、下戸なので、酒は殆ど飲めない分、一人でおいしいケーキ屋に行くのも全然大丈夫でして…。
まぁ今は、基本的にダイエットをしているので、昼間は低カロリーの食事を摂っていますが、それまでは営業に出た時、昼食は「安くて美味しいランチ」を見て探すのが、趣味の一つでした。
好き嫌いも殆ど無いので、定食屋とか、ラーメン屋とか、小洒落たイタリアンなんか、どこでも何でも色々行くんですよ。(これは音楽の趣味も同様ですね。)

さぁ、余談はこのくらいにしておいて、さて、今日紹介するアルバムは、「食事」で言うと、正しく安くて美味しい、超一級の「B級グルメ」の様な演奏です。

アルバムタイトル…「カフェ・ボヘミアのケニー・ドーハム」

パーソネル…リーダー;ケニー・ドーハム(tp)
      J.R.モンテローズ(ts)
      ケニー・バレル(g)
      ボビー・ティモンズ(p)
      サム・ジョーンズ(b)
      アーサー・エッジヒル(ds)

曲目…1.モナコ、2.ラウンド・アバウト・ミッドナイト、3.メキシコ・シティ、4.チュニジアの夜、5.ニューヨークの秋、6.ヒルズ・エッジ

1956年5月31日

原盤…ブルーノート BN-1524 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1524

演奏について…何故、極上のB級グルメの宴かと言えば、リーダー「ドーハム」からして、ジャズ好きには認識されているが、ジャズ初心者の方や、失礼ながらジャズ素人の方には、渋いミュージシャンで、知名度が薄いと思うし、このセクステットのメンバーでも、「ティモンズ」「バレル」「サム・ジョーンズ」も、そこそこ有名だが、ジャズ・ジャイアンツとは呼ばれる程ではない。
「モンテローズ」「エッジヒル」に至っては、真面目にB級アーティスだと思われている。
つまり、アルバム参加メンバーが、一言で言うと「脇役の集まり」なのだが、演奏内容は極上品でとても美味しい。
そしてライブ演奏と言う事を考慮すると、正しく「宴」と言って良い。
ところで、ライブで演奏されている、これらの曲にはどことなく統一感がある。
名曲が「ラウンド・アバウト~」、「チュニジアの夜」、「ニューヨークの秋」と揃っているが、他の3曲も「ドーハム」が書いたマイナー調の佳曲で、全6曲がマイナー・チューンのメロディアスな曲で演奏されているので、(聴き手にとって)コンセプトが統一されていると感じるのだろう。

その中で、一番のお薦めは、アルバムに副題で付けられた「ラウンド・アバウト・ミッドナイト」でしょう。
「ドーハム」が名旋律のテーマを吹き、静寂の闇夜に一筋のトランペットの小さな光が灯されて、曲は始まる。
続く「モンテローズ」も抑制した音量で、暗闇を見つめる様なサックスを演る。
それから「ドーハム」の明かりは、徐々に輝きを増して、辺りを明るく染め始める。
「ティモンズ」の一寸センチメンタルで、少しファンキーなピアノ演奏は、悲しみを纏った、悲しい女性の心を歌っているのだろうか?
最後に「モンテローズ」も「泣きのフレーズ」を奏でて、「ドーハム」とのユニゾンで終幕となるのです。
聴衆と共に、アー拍手喝采!!

双璧の演奏では、「ドーハム」にとって、ジャズメッセンジャーズ在籍で十八番の曲「チュニジアの夜」で決定。
「ドーハム」はとてもバピッシュで、魅力的なアドリブフレーズを連発し、聴き応え充分ですし、「モンテローズ」も原曲を活かしたアドリブがgoodです。
「ティモンズ」はブロックコード中心で、曲を彩り、「バレル」は相変わらずブルージーなトーンで、ぶいぶい弾いている。
そして、リズムの二人はとても手堅く、曲を引き締めている。
終盤、6人がアドリブソロで、それぞれ主張し合うフィナーレは、気分最高だねぇ。

1曲目「モナコ」…個人的には、とても気になる一曲です。
ラテン調のリズムに、「ズンズズズンズン」とベースとピアノで演奏される節は、「キャノンボール」の「枯葉」の序奏にソックリ。
って事は、「マイルス」がこれを真似やがったのか?まぁいいや。
その後、「ドーハム」は明るめのトーンで、バピッシュにアドリブ演奏を突き進む。
「ティモンズ」は、センス抜群のブロックトーンで「ドーハム」に合わせて行く。
「エッジヒル」は、高揚して、皆を煽り始めるが、「モンテローズ」が高音域を活かした音色で、まるでアルトサックスの様なソロで応える。
その後の「バレル」「ティモンズ」は、唯我独尊の境地で、やってくれるぜ。
フィナーレは、またまた「ズンズズズンズン」だ。
しかし、何回聴いても、まじに「枯葉」ソックリなんだよな。(不思議)

3曲目「メキシコ・シティ」…は、この時代らしいハードバップの代表的な展開の曲で、急速調のリズムに乗って、「ドーハム」がぶいぶい言わせる。
ややくすんではいるが、彼にしては明るめの音色で、リードして行く。
「モンテローズ」は、ここでも抑え目のソロワークで、渋めに決める。
「バレル」は待ってましたとばかり、冴え渡るテクでギターソロを弾いて、追従する「ティモンズ」も、限定解除されて?アドリブが飛翔する。
そして、最後まで熱い演奏で、フィニッシュ!

5曲目「ニューヨークの秋」…短曲だが、「ドーハム」の叙情性を活かした、好演奏で聴く者の胸を討つ。
「エッジヒル」のブラッシュワーク、「ティモンズ」の哀愁的な伴奏も、とても良い味を出してる。

最後に、目だったソロ演奏はしないのだが、ベースの「サム・ジョーンズ」が、全編に渡って、渋い(真面目な)良い仕事をしてるんです。
やはり、ジャズはベースが良いと名演が生まれますね。

60年代にニュー・トランペット・ヒーロー誕生…ゴーイン・アップ~フレディ・ハバード

2007-08-14 23:27:04 | ジャズ・トランペット
ブルー・ノート・レーベル…アルフレッド・ライオンが、次々に才能ある若手ミュージシャンを見出し、プロデュースして育て上げた伝説のレーベルだが、今日紹介の「フレディ・ハバード」も60年代に彼に見出されたアーティストだ。
本作は、デビュー作「オープン・セサミ」の次に出された、セカンド・アルバムです。

アルバムタイトル…ゴーイン・アップ

パーソネル…リーダー;フレディ・ハバード(tp)
      ハンク・モブレー(ts)
      マッコイ・タイナー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.エイジアテック・レエズ、2.ザ・チェンジング・シーン、3.カリオカ、4.ア・ペック・ア・セック、5.アイ・ウィッシュト・アイ・ニュー、6.ブルース・フォー・フレンダ

1960年11月6日録音

原盤…ブルーノート・レーベル
CD番号…TOCJ-6575

演奏について…前説の通り「ハバード」の若かりし頃のアルバムだが、彼の良い部分を二面見る事の出来る演奏である。

まず、「ドーハム」のリーダー作では「ロータス・ブロッサム」と言う名前で、良く知られた名曲である、1曲目「エイジアテック・レエズ」では、「ハバード」は、とてもブリリアントなトランペット・トーンで、来るべき、超新星の実力を見せ付ける。
そして、アドリブも新人らしからぬ非常にメロディアス演奏で宜しいです。
受ける「モブレー」…ベテランらしく「ハバード」以上に歌心溢れる好フレーズを連発して、若手をフォローする。
「チェンバース」はボウイングを、「フィリー・ジョー」は変幻自在のドラミングで、「ハバード」を更にアシストして、名演が生まれた。

「ハバード」の良い部分(才能)のもう一面は、5曲目のバラード曲「アイ・ウィッシュ~」で分かる。
「マッコイ」のリリカルなピアノに導かれた後、「ハバード」は情感たっぷりのソロを吹くが、とにかく美しいアドリブメロディで、切なさに心を打たれる。
続く「モブレー」のアドリブも、「ハバード」に負けず叙情的で、彼がただの便利屋テナーでは無いことを知らしめる。
「マッコイ」のピアノも「コルトレーン」の傑作アルバム「バラード」の時の様に、キレと甘さの両面を持った素晴らしい出来です。
このアルバム中ベストトラックで間違いない!!

3曲目「カリオカ」は、2曲目同様ファンキーなマイナー調の佳曲だが、曲名通りリズムはラテン調で、「フィリー・ジョー」が抜群のリズム・キーピングを見せる。
「ハバード」はノビノビと気持ち良く吹き切り、「モブレー」は渋いが、とにかくカッコイイ吹きっぷりで流石と思わせる。
ここでは、「マッコイ」が、モーダルでハイセンスなアドリブピアノを弾いて、曲にスパイスを効かせる。
後半の「フィリー・ジョー」のドラムソロが…とにかく、す、すごい!!

2曲目「ザ・チェンジング~」はファンキーなマイナー調4ビートの曲で、4曲目「ア・ペック~」は2管のユニゾンテーマからの展開で、これぞブルーノートの2管だというべき、規範的な演奏がなされる。
特に「ア・ペック~」での「マッコイ」のピアノソロは、センス抜群で聴き物。
勿論、「フィリー・ジョー」も抜群に冴えてます。

最後に…「ハバード」の類稀な才能を見せ付けられるアルバムではあるが、全編に渡ってすごいのは、やはり天才ドラマー「フィリー・ジョー・ジョーンズ」のドラミングである。
彼はタイムキーパーとしてのドラムスの役割をはるかに超えた、「歌うドラム演奏」を完璧に掌中にしており、持ちえる超絶技巧も相成って、サイドメンながらもメンバー全員を見事にコントロールしている。
本当に恐るべきドラマーだ。