紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

生涯最高のレコードだと作者自身が言ったアルバム…タンゴ・ゼロ・アワー~アストル・ピアソラ

2008-06-01 23:03:48 | ラテン・インストゥルメンタル
表題がとても仰々しいが、嘘でも大袈裟でも無くて、生前、本人「アストル・ピアソラ」が言っていた事であり、演奏内容も実際その通りで素晴らしいです。

「ピアソラ」と言う、タンゴの鬼神…いや、もはやクラシックの現代曲作曲家とも言うべき、偉大なカリスマ・コンポーザー(&ミュージシャン)の、全身全霊を注いだこの作品は、彼の最高傑作との評価に全く異論はない。

とにかく何も考えずにアルバムに集中して聴いて欲しいです。

アルバムタイトル…タンゴ・ゼロ・アワー

パーソネル…アストル・ピアソラ・クインテット
      リーダー;アストル・ピアソラ(バンドネオン)
      フェルナンド・スアレス・パス(vl)
      パブロ・シーグレル(p)
      オラシマ・マルビチーノ(g)
      エクトル・コンソーレ(b)

曲目…1.タンゲディアⅢ、2.天使のミロンガ、3.キンテートのためのコンチェルト、4.ミロンガ・ロカ、5.ミケランジェロ’70、6.コントラバヒシモ、7.ムムキ

1986年5月ニューヨーク、サウンド・アイディアズ・スタジオにて録音

原盤…ワーナー・ミュージック?  発売…ワーナー・ミュージック・ジャパン
CD番号…WPCS-5100

それでは演奏について…今日はまず、お薦めの名演から行きましょう。

それは…3曲目の「キンテートのためのコンチェルト」です。
非常に劇的な曲で、序奏・イントロから興味を惹かれる魅惑的なメロディで始まります。
作品自体は1970年に書かれていて、約9分を超える大作です。
急小節においては「ピアソラ」のバンドネオンは、緊張感をビンビンに発していて、自身以外の4人のメンバーを統率します。
ピアノ「シーグレル」とヴァイオリン「スアレス・バス」の二人が、素晴らしい「ピアソラ」のサポートをします。
緩小節に入ると、「ピアソラ」は雄大で、まったりとした粘着系のバンドネオンを奏でて、非常に艶かしい演奏に仕上げてきます。
ピアノの「シーグレル」は低音域をメインに伴奏して、重厚感を増します。
ヴァイオリンの「スアレス・バス」とギターの「マルビチーノ」は、艶かしさを倍化する様なナイスなアシストを演ってくれます。
再度、急小節に入ると、「ピアソラ」、「スアレス・バス」、「シーグレル」のトリオがバトル形式で、応戦し合うと、「マルビチーノ」まで参戦して、劇的な作品は最高潮にヒートアップします。
「ピアソラ」の寸劇を見せつけられた、銀幕の様な逸品ですね。

1曲目「タンゲディアⅢ」…1985年の映画「タンゴーガルデルの亡命」のために書かれた作品で、冒頭から終始緊張感が張り詰めた衝撃作品で、これもいかにも「ピアソラ」らしいアグレッシヴな曲です。
悲劇のタンゴ曲であり、特にヴァイオリン「スアレス・バス」と「ピアソラ」との格闘技の様なバトルが最高の聴き所です。
ビシビシと唸りを上げるベース「コンソーレ」の威圧的な名演も見逃せませんね。

2曲目「天使のミロンガ」…1962年に書かれた「ピアソラ」の代表作の一つだが、非常にロマンティックで、スパイス的に一寸メランコリックで、影が憂いの有る美曲で…私は大好きです。
とにかく「ピアソラ」のバンドネオンの音色の切なさは、泣けますねぇ。
「ピアソラ」以上にこの曲で力が入っているのが「スアレス・バス」で、ヴァイオリンの物悲しい演奏が、深く心に染み入って来て…泣き叫びたくなりそうです。
心が痛くて…とても切ない曲です。
でも…でも…この曲と演奏は、とにかく清らかで美しくて…いつまでも聴いていたくなります。
渋い所では、ピアノ「シーグレル」のリフレイン伴奏が、曲に厚みを与えてくれます。

5曲目「ミケランジェロ’70」…1969年に書かれた「ピアソラ」の傑作。
とにかく疾走感に溢れていて、唸りを上げてドライヴィングをするベースの「コンソーレ」が最高に行けてます。
「コンソーレ」に引っ張られて、「ピアソラ」他3人もスポーツカーの様に疾風の如く駆け抜けて行く痛快なナンバーです。

6曲目「コントラバヒシモ」…その名の通りベース(ベーシスト)をフューチャーした曲で、序奏から「コンソーレ」のボーイングやスゴテクのアドリブ演奏に度肝を抜かれる。
ベース大好きな私は感涙物ですよ~!!
「コンソーレ」のアシストで「ピアソラ」や「シーグレル」が厳格な音色で、生真面目に演奏をして行く。
優しい調べでサポートする、ギターの「マルビチーノ」も、すごく渋くて良い仕事をしてます。
重厚さから徐々に軽やかに優しく曲調が変化して行く様は…深夜から朝日が立ち昇る情景が目に浮かびます。

7曲目「ムムキ」…序盤は哀愁感タップリに、センチメンタリックに感情を込めてメロディを弾くギターの「マルビチーノ」が曲の幕を開けてくれます。
それを受けてヴァイオリン「スアレス・バス」もジプシー的な哀愁の曲調を演じて展開して行きます。
その後、激しく煌びやかで、ヴィルトオーゾ的にピアノを弾く「シーグレル」が更に曲を色付けして行きます。
「ピアソラ」が加わり、哀愁さは極まり、その後はヴァイオリンの「スアレス・バス」、ベースの「コンソーレ」、そしてギターの「マルビチーノ」の弦楽器3人が室内楽的に、良く調和した格調高い演奏で纏めて行きます。
その後、曲はもうニ転三転するんです。
そう、非常に劇的で目まぐるしく変わるドラマティックな1曲なんです。
「ピアソラ」がリードを取るセンチメンタルな曲から厳しくて激しい小節へと変わるかと思えば、「マルビチーノ」と「スアレス・バス」が交代で哀愁のソロを演り返す緩小節へと、また激しく曲調が変わるのです。
特に哀愁の小節は聴いていgoodなのは勿論、更に終盤に来てから「シーグレル」が「ショパン」のバラードの様に美しくて…清々しいピアノ・ソロを決めてくれて…うっとりと聴き惚れてしまいます。
そしてフィニッシュはもう一回、「ピアソラ」を中心にした、心地良い優しさと、情熱的な激しさと、枯れて人生を達観した…そう…「ピアソラ」の人生そのものと言って良い一代絵巻が、この曲でなされているんですよ。
最後のサイレンの様な表現は???「ピアソラ」の死を意味しているのかなぁ?
この曲&演奏は、このアルバムの〆をするのに相応しい超名曲・超名演と言っても過言では有りませんね。
いや、タンゴ史に残る傑作でしょう。

4曲目「ミロンガ・ロカ」…やや不協和音的な音階で、「ピアソラ」は急速で演奏を進めて行きます。
しかし、ヴァイオリンの「スアレス・バス」の弾くメロディは、どことなくですが、「ピアソラ」の最高傑作「リベル・タンゴ」のメロディと似ていて、良いんですよ。
全員が激しくバウトして、スピーディに仕上げる演奏で、短曲ですが印象に残りますね。

もう、表題通り「ピアソラ」自身が生涯最高の録音(レコーディング)だと言った事に全く偽りは有りません。
聴いた方々には、現代タンゴの奇跡をこのアルバムに見る事が出来ますよ!きっと…!!!

久しぶりにラテンで行こう!サビーカス~フラメンコ・ギターの至芸

2008-04-08 22:08:17 | ラテン・インストゥルメンタル
ここの所、クラシックの紹介が多くなっていましたね。
前回、ご案内の通り、輸入の超廉価、超名盤を多く購入しておりまして、日々聴く事も多いんですねぇ。
しかし、今日は悪天候でしたが、昨今の桜満開で、いよいよ本格的な春到来と言う事で、温かくなったら、やっぱりラテン・ミュージックでしょう。

そこで、今日は久しぶりに、本格的なラテンで行きましょう。

とにかく、超人的なテクニックで、フラメンコ・ギターを弾き切る、スーパー・ギタリスト、「サビーカス」の演奏をご堪能下さい。

アルバムタイトル…フラメンコ・ギターの至芸

パーソネル…サビーカス(g)ソロ

曲目…1.アレグリーアスの変奏、2.セビーリャの幻惑(ブレリーアス)、3.わがソレア(ソレアーレス)、4.鐘の響き(ファルーカ)、5.ガリシアへのピローポ(ガジェガーダ)、6.レクオーナのマラゲーニャ、7.リナーレスのこだま(タランタス)、8.トリアーナの悲しみ(シギリージャス)、9.宴を終えて(ロンデーニャ)、10.ヘレスのクリスマス(ビジャンシーコ)

1972年スペインにてモノラル録音

原盤…ポリドール  発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…POCF-2002

演奏について…1曲目「アレグリーアスの変奏」では、てとも明るいイメージの曲で、スペインの…と言うより、イタリアのナポリを連想させる曲調と演奏です。
「サビーカス」は、トレモロをメインにフラメンコ・ギター・テクニックをノッケから、満開で気持ち良く弾き切ります。
明るい曲の裏に、わずかに垣間見れる、哀愁や影に何を感ずるでしょう。

2曲目「セビーリャの幻惑」…もう、この曲はフラメンコ臭さぷんぷんで、超絶技巧のギター・テクニックで、情熱の炎を燃やし続ける。
この曲に浮かぶ情念は…??
ギター1本の演奏にも拘らず、眼を閉じれば、何かバラを銜えたカルメンが、フラメンコ・ステップを踏んでいる姿が眼に浮かぶ。
「サビーカス」の技術と、演奏に滾る精神…恐るべし!

3曲目「わがソレア」…CD解説(濱田滋郎氏 著)によると、ソレアはフラメンコの核心をなす形式の一つで、メジャーにもマイナーにも属さない調整が、独特の音楽を生み出すとの事。
「サビーカス」のテクが冴え渡る。

4曲目「鐘の響き」…一言で言って、良い曲だ!
このアルバムで一番、私のお好みですねぇ。
とにかく、哀愁たっぷりで、叙情性豊かな曲に、「サビーカス」の演奏が映える。
哀愁のスペイン映画の、ワンシーンに登場する、映画音楽の様に、日本人の心の琴線と涙腺を刺激し捲くる。
このメロディを聴いて何を思うのか?
それは、遥か故郷だろうか?
別れた彼女(妻)?それとも亡くなった母親だろうか?
素晴らしい演奏&曲に拍手喝采!!!

5曲目「ガリシアへのピローポ」…この曲はガリシア地方の曲と言う事で、厳密にはフラメンコでは無いとの事。
「サビーカス」は、ガリシアやカタルーニャ地方の舞曲を、華麗に親近感たっぷりに聴かせる。
終盤の華麗なテクニックには圧倒されますよ。

6曲目「レクオーナのマラゲーニャ」…キューバの作曲家、「エルネスト・レクオーナ」が書いた、良く知られた名曲。
「サビーカス」は、技術は言うに及ばず、郷愁に駆られた様な演奏スピリットが、とにかく素晴らしくて、耳を奪われる。
極彩色とパステルカラーが交互に展開される様に、カラフルな中の懐かしさと幻想性が心に沁みます。

7曲目「リナーレスのこだま」…この曲はフラメンコの形式で、「タランタス」と言うのだそう。
「サビーカス」は、この「タランタス」に従って、不協和音的なコードで、ほの暗いイメージを描き出す。
フラメンコのマイナー調演奏の極みで有り、来る悲劇を予感させる。
曲は勿論、全く異なるのだが、思わず「プッチーニ」の蝶々夫人が思い浮かぶ。
美しくて悲しい物語だ!

8曲目「トリアーナの悲しみ」…この曲は「This is Flamenco.」といって良い、「シギリージャス」形式の演奏の最高峰との事。
「サビーカス」が、とにかくすごテクで、正しくフラメンコ・ギターが唸り、叫び、吼えて、パッションが爆発する。

9曲目「宴を終えて」…とても幻想的な曲で、「サビーカス」の情念がギターに乗り移る。
ギター一音一音に込める「サビーカス」の演奏スピリットが、とてもディープです。

10曲目「ヘレスのクリスマス」…とても郷愁を感じるようなマイナー・チューンで、スペイン(ラテン)の曲って、何て日本人の郷愁感情にマッチするのか?と改めて認識させられる1曲。
最後は泣いて下さいってか?
コード・チェンジでファイナルに盛り上がる時の瞬間が最高です。
やっぱり、哀愁のマイナー・メロディはいつ聴いても良い。
私は好きだなぁ…こう言う曲。

総括ですが、ラテンでもフラメンコは陽気じゃないね!
ここで聴けるのは、やっぱり哀愁がメインです。
まじで泣けます。

久々にラテン系アルバムを…熊本尚美~ナオミ、リオへ行く。

2008-01-14 23:06:01 | ラテン・インストゥルメンタル
皆様、「ショーロ」って言うジャンルの音楽、ご存知ですか?
ブラジルで最古の都市型ポピュラー音楽の事を、「ショーロ」と言うんだそうです。
今日は、日本人で「ショーロ」演奏家として、リオで初録音した、フルート奏者「熊本尚美」の初リーダー・アルバムを紹介しましょう。

その前に「熊本尚美」さんについて簡単なご紹介をしておきましょう。
神戸市生まれ。大阪教育大学、音楽科でフルートを専政後、クラシック畑で活動を始めるが、最もフルートの合う楽曲、ジャンルを模索していた時に、行き着いたのが、クラシック音楽とアフリカのリズムが混血した、ブラジル最古の都市型ポピュラー音楽、すなわち「ショーロ」に出会ったとの事です。
現在は、音楽活動拠点をリオ・デジャネイロに移し、精力的に演奏を行っているとの事です。

アルバムタイトル…ナオミ、リオへ行く

パーソネル…リーダー;熊本尚美(fl、a-fl、picco)
      ナイロール・プロヴェータ(cl)
      エドゥアルド・ネヴェス(ts、fl)
      フイ・アウヴィン(cl)
      ペドロ・アモリン(tenor-g)
      ルシアーナ・ハベーロ(カヴァキーニョ)
      パウロ・アラガォン(g)
      マウリシオ・カヒーリョ(7弦g)
      セルシーニョ・シルヴァ(パンデイロ)
      ジョルジーニョ・ド・パンデイロ(パンデイロ、カイシェータ、他)

曲目…1.ナオミ、リオへ行く、2.私をリオで待っててね、3.トニーニョに捧げるショーロ、4.雨のリオ、5.ドミノ、6.~10.ブラジルの思い出(カドリーリャ)、11.甥っ子達、12.甦生(大震災から立ち直りつつある我が町、神戸に捧ぐ)、13.おめでとう、ショヴィ・ショヴァ、14.マリコチーニャ・シェガンド、15.にんじんケーキ(ドナ・ゼリアに捧ぐ)、16.アナ・カロリーナ

2001年6月、2002年5月、リオ・デジャネイロにて録音

原盤…アカリ・レコード AR-13  発売…㈲中南米音楽
CD番号…LAM-11503

演奏・曲について…オープニングのタイトル曲「ナオミ、リオへ行く」は、「マウリシオ・カリーヒョ」が作曲して、「熊本」へプレンゼントした曲との事。
「熊本」のフルートと、「カリーヒョ」の7弦ギター、他の楽器との絶妙の絡みが、寛ぎと癒しの空間を演出する。
とにかく気持ちの良い1曲です。

2曲目「私をリオで待っててね」…「熊本」が初作曲のオリジナル曲。
とても華やかで、軽やかなメロディに、ショーロの魅力が満載。
中盤からテナーの「ネヴァス」と「熊本」のフルートの掛け合いがワンポイントになっていて、良い味を出しています。

3曲目「トニーニョに捧げるショーロ」は、ブラジルのショーロの大御所フルーティストの「アントニオ・カスケイラ」のニック・ネーム。
彼に敬意を表している楽曲らしく、2曲目の後半以上に管楽器をフューチャーした演奏&編曲がなされている。
「ネヴァス」と「熊本」の二人…素晴らしいコラボです。

4曲目「雨のリオ」…これも勿論、「熊本」のオリジナル曲なんですが、一言で言いましょう。このアルバムのベスト・トラックです。
「熊本」の哀愁たっぷりのフルート演奏はもとより、とにかくテノール・ギターで感情豊かに入魂の演奏、アドリブを奏でる「ペドロ・アモリン」が素晴らしい出来栄えです。
「ハベーロ」、「バンデイロ」のリズム・セクションも二人をリスペクトする、バック演奏に従事します。

5曲目「ドミノ」…子犬の名前にちなんで付けられた、曲名&演奏で、いかにも可愛らしい雰囲気が溢れた曲です。

6曲目~10曲目「ブラジルの思い出」…カドリーリャと呼ばれている5つのパートから形成される組曲。
組曲なので当たり前かもしれませんが、起承転結が楽曲に見事にいかされていて、その中でも特に、個人的には8曲目のマイナー・メロディが気に入りました。
物悲しい曲調にも、明るい曲調どちらでもフルートって合うんですねぇ。

11曲目「甥っ子達」…正しく曲名通りのイメージ曲。
子供達が騒ぎながら駆けずり回って(暴れる?)、いたずらっ子風の感じが良く出ています。
ここで「熊本」はピッコロを使用して、より子供達の雰囲気を表現しています。

12曲目「甦生」…ショーロのタイトルとしては、相応しく無いと物議をかもしたらしいのですが、曲は良いですねぇ。
私の大好きなマイナー・チューンで、ここでも「熊本」とギター奏者達とのコラボレーション、フュージョンが、good jobを成し遂げました。
特に「熊本」の静かな悲しみを纏ったフルートにまいります。

13曲目「おめでとう、ショビ・シュヴァ」…まっこと、ジス・イズ・ショーロとも言うべき、ショーロの伝統的・基本的な曲調で、「バンデイロ」がタンボリンで参加している事も見逃せません。
ギター、カヴァキーニョ等のリズムに、ラテンの血が滾ります。

14曲目「マリコーニャ・シェガンド」…「マウリシオ」が(お腹の中にいる)娘のために書いた名曲で、「熊本」の荘厳のフルートと「アラガォン」の静かなギターが、生命の尊さ、神秘さを表現している。
二つの楽器だけのデュオ演奏が、逆に曲の重厚さと、生真面目さをより一層際立たせる役目を果たしている。

15曲目「にんじんケーキ」…遊び心と悪戯な雰囲気を良く表したトラック。
こう言うライトな感覚のラテン曲って、良いよねぇ?

16曲目「アナ・カロリーナ」は、ショーロの老舗グループ、「コンジュント・エポカ・ヂ・オウロ」のリーダー、「ジョルジーニョ・パンデイロ」が、自分のお孫さんに捧げたワルツ曲。
とても、気持ちのこもった優しいフルートの調べを、「熊本」が奏でます。
正しく、好々爺が孫の笑顔を見て、微笑んでいる様が、分り易く表現されていて、ほのぼのさせられる、goodな1曲です。

ボサ・ノヴァ程、洗練されていませんが、フォルクローレよりは、アーバナイズされているショーロ・ミュージックを是非お試しあれ!!

昨日の続き…風の語らい

2007-11-11 00:18:08 | ラテン・インストゥルメンタル
まず、オープニング曲「果てしなき道」…前半はカントリー調のリズムに乗って、ケーナで素朴だが哀愁たっぷりに聴かせる。
後半はカーニバル風に、一寸劇的にメロディが盛り上がり、悠久を流れる大河の様にゆったりと聴かせる。
バックのバンジョー陣の出来も良いです。

2曲目「もう一度あなたのもとへ」…「ホセ・ラミレス・トーレス」作曲のポルカ・ボリビアーナで、弦楽器の軽快な基礎音をベースにして、ケーナとバンジョー、ギターが見事にコラボレーションを魅せる。
曲の間の取り方が、センス抜群で、魅力的な一曲に仕上がっている。

3曲目「きらめく川」…リーダー、エルネスト河本が作曲したクエカで、ヴォーカル入りのトラック。

4曲目「あの約束」…この曲は良いですよ。
パーカションが効果的で、ネオ・フォルクローレと言うべき、ジャズ・エッセンス満載の名曲・名演です。
ケーナの哀愁ある音色と、打楽器のリズム、そして伴奏に終始し、サイドをガッチリ固めるギターが最高の調和を魅せる。
曲のメロディも哀愁たっぷりで、とにかく聴かせる曲です。

5曲目「カミオネッタ~」…序奏からギロのリズムで始まる個性的な曲。
中間部分は、いかにもフォルクローレとも言うべき、素朴なテーマ・メロディにKOですね。

6曲目「蜃気楼の歌」…「グラシェス・スサーナ」が作曲したカンシオン。
「島田静江」のヴォーカルは余り上手くは無いが、曲の魅力だけで充分に行けます。
とにかくセンチメナリズムの極地的なギターの伴奏だけでも、聴き応え有ります。

7曲目「ラ・ビキーナ」…聴いていると元気が出てくる、メジャー調子の曲。
悲しみを乗り越えて未来に向かう、「マルコ」の「母を訪ねて三千里」ってな感じです。
サンポーニャを超絶技巧で吹く「TOPO洋平」の名演奏にご注目です。

8曲目「ワイナ・ポトシ」…ケーナ、チャランゴ、サンポーニャの民族楽器群が、マッシブにパワフルに、大地を揺るがすような熱い演奏。
勿論、楽器だけでなく、それを奏でる人間の魂の熱さは、それ以上です。
とにかく素晴らしい演奏ですね。

9曲目「タローペの花」…「オスカロ・リベロ・アラマーヨ」の作品の名曲。
「島田」が味わい深い歌唱をしてくれますが、とにかく曲の名旋律に泣かされます。
これぞ、ラテン歌謡の代名詞とも言うべき曲で、日本人の琴線にも触れ捲ります。
最高ですね!!

10曲目「カラササヤ」この曲もゆったりとした時が手に取れるような、不思議なタイム感覚と、雄大さが魅力溢れた曲です。
こう言う曲って日本にはないよね。と言いながら作曲したのは「エルネスト河本」なんだけど…それでも、やはり大陸の香りがぷんぷんに香っているね。

11曲目「ラ・プリマベーラ」この曲は、ボサ・ノヴァ風に作られていて、純然たるフォルクローレではないけれど、このモダン・センスをエッセンスに含んだ、ネオ・フォルクローレも、かなり良いんでないの?
私は「買い」と見ています。

15曲目、ラストは表題曲の「風の語らい」ですが、当然このアルバム中で、白眉の名演奏でしょう。
ケーナ、サンポーニャの名演奏、吹きっぷりは正しく、目の前を通り過ぎる風だ。
風の語らい、そのものだ。
バックのギター伴奏がガッチリ・リズムをキープして、その上空をこれらの吹奏楽器が飛翔する。
飛翔といっても渡り鳥ではない。
やはり、南米のコンドルとか、大陸を渡るのではなく、見渡す猛禽類だろう。
自身の翼に沢山の風を受けて、ゆったり、どこまでもゆったり天空に羽ばたく。
風は俺の味方だ…風ある限り、どこまでも、いつまでも飛べるんだ。飛べるはずだ。

ハービー・マン&ジョアン・ジルベルト・ウィズ・アントニオ・カルロス・ジョビン

2007-11-07 23:09:01 | ラテン・インストゥルメンタル
今日紹介するのは、「ハービー・マン」と「ジョアン・ジルベルト」、そして「アントニオ・カルロス・ジョビン」と言う、ジャズ&ボサ・ノヴァのスター達の夢の共演アルバムです。

アルバムタイトル…ハービー・マン&ジョアン・ジルベルト・ウィズ・アントニオ・カルロス・ジョビン

パーソネル…リーダー;ハービー・マン(fl、a-fl)
      リーダー;ジョアン・ジルベルト(vo)
      バーデン・パウエル(g)
      アントニオ・カルロス・ジョビン(arr) 他
      ネスヒ・アーティガン(prod)

曲目…1.アモール・エン・パス(ラヴ・イン・ピース)、2.デサフィナード、3.ボリーニャ・デ・パペール、4.インセンサデス(ハウ・インセンシティヴ)、5.マリア・ニンゲン、6.ウ・パルキーニョ、7.サンバ・ダ・ミーニャ・テーハ、8.ローザ・モレーナ、9.コンソレーション、10.ワン・ノート・サンバ、11.ピン・ポン、12.デヴェ・ザー・アモール(イット・マスト・ビー・ラヴ)

原盤…ATLANTIC SD-8105  発売…ワーナー・ミュージック・ジャパン

CD番号…AMCY-1241

演奏について…1曲目「アモール…」…「マン」のフルートが漣の如く癒し効果を生み、このアルバムの寛ぎ度が高い事を知らしめる。
オープニングに相応しい、アルバム・コンセプトに副った名演奏です。

2曲目名曲「デサフィナード」…正しく「ジルベルト節」全開で歌ってくれて、超気持てぃいー!
男性ヴォーカルのヘタウマ調がとにかく心地良いんです。

3曲目「ポリーニャ…」は2曲目と同様のコンセプトです。
7曲目「サンバ~」も楽しさ満載で、陽気に聴きたいですね。
11曲目「ビン・ボン」もとても楽しくて、浮かれ気分になりそうです。

4曲目「インセンサデス」…「マン」のフルートとバックのボサ・ノヴァ・リズム&ホーン&ストリングスが最高のコラボを魅せる。
この辺の編曲は、プロデューサー「「アーティガン」とアレンジャー「ジョビン」の手腕に負う面が大きいだろう。
アルバム中でも聴き物の代表的な1曲です。

5曲目「マリア・ニンゲン」では、「ジルベルト」の語りかける様なヴォーカルにプラスして、「バーデン・パウエル」のギター伴奏が特に良い味を出しています。
こう言った、語り部調のヴォーカルでは、「ジルベルト」の独壇場ですね。

6曲目「ウ・バルキーニョ」もボサ・ノヴァには欠かせない名曲で、ここでの「ジルベルト」の名唱はこの曲の代表的な1曲に挙げられますよ。

8曲目「ローザ・モレーナ」は、「ジルベルト」が男性ながら、気だるさとアンニュイさを醸し出したヴォーカルで、とても個性的で印象的な1曲です。
しかし、こう言う歌唱も悪くないね。

9曲目「コンソレーション」…このアルバム中、白眉のジャジーな名演奏。
序奏の「パウエル」のメロディ、アドリブが、どことなく西部劇の1フレーズに似ていて…荒野の用心棒か?荒野の七人か?
しかし、とても漢っぽくて、「マン」のアドリブも硬派で冴えている。
この二人のコンビネーションが完璧にシンクロしていて、このアルバムが只の寛ぎアルバムでは無い事を強烈に主張する。
真にハードで、心にズシンと来る一曲です。

10曲目の「ワン・ノート・サンバ」…ボサ・ノヴァ・ソングの中でも屈指の名曲ですが、ここでの演奏(歌唱)は、とてもジャジーな雰囲気で、寛ぎ系では有りません。
普通はヘタウマ調の歌唱&演奏が多いのですが、ヴォーカルだけでなく「マン」&「パウエル」、そしてリズム・セクションの演奏も、かなりジャジーで聴き応えが有ります。

ラスト「デヴェ~」…不思議な序奏ですが、「マン」が印象に残るフレーズで渋く、且つシャープに吹き切る。
「パウエル」も低音弦を活かした、重厚なバック伴奏で、「マン」を好アシストします。
9曲目に準じて、」ジャジーで硬派な1曲ですね。
ジャズ好きな方には、9曲目「コンソレーション」と、この「デヴェ~」は、聴いて頂きたい曲です。      

天才アルパ奏者…今村夏海~NATSUMI

2007-10-28 23:33:46 | ラテン・インストゥルメンタル
正しく、地上に舞い降りたミューズ……。
このアルバムを発表した時は、「今村夏海」は若干15歳。
日本が生んだ天才アルパ奏者です。

ラテン好きな方はもとより、アコースティック系の楽器が好きな方(主にクラシックかな?)、それから癒し系音楽が好きな方には、是非お薦めしたいアルバムです。

アルバムタイトル…NATSUMI

パーソネル…今村夏海(arpa)
      チューチョ・デ・メヒコ(g、vo)
      他

曲目…1.NATSUMI、2.パハロ・カルピンテーロ、3.太陽の乙女たち、4.遥けき恋路、5.エストレジータ、6.ティリンゴ・リンゴ、7.ラ・ジョローナ、8.ビバ!フフイ、9.オディアメ、10.牛乳列車、11.ラ・ブルーハ、12.アディオス・ミ・チャパリータ

2004年9月15、17~19録音

原盤・発売…テイクオフ
CD番号…TKF-2922

演奏について…オープニング曲「NATSUMI」…は自分の名を冠した曲ですが、彼女の前途洋洋の未来を予見させる、魅力的なメロディの1曲ですね。
ものすごく乙女心が感じられる曲調で、はかない小花の様に可憐で、しおらしい正に「今村」のイメージピッタリです。
演奏も良いですよ。

5曲目「エストレジータ」…「今村」の幻想的なソロ・アルパ演奏がバッチリ堪能できる1曲。
可憐でいて、しかし少女から大人へと身も心も成長している彼女の音楽性が、見事に捕らえられていて、曲への感情移入、表現力も抜群です。
やっぱり、少女と言えどもしっかりしていて、女って恐ろしい生き物ですね。

7曲目「ラ・ジョローナ」…私が選ぶ、このアルバムのベスト1曲はこれです。
哀愁バッチリのマイナー・メロディにまず心を打たれます。
「今村」のトレモロ演奏や、緩急抜群の演奏に、味わいと音楽の深みを持たせる弾き方も抜群です。
「メヒコ」も彼女を立たせた演奏で、あえてバックに徹していて宜しい。

3曲目「太陽の乙女たち」、8曲目「ビバ!フライ」、も真にアルパの真髄の様な曲で、アルパと言う楽器の色々な演奏テクニックを味わえます。
勿論、それを完璧に弾きこなす「今村」の技術の高さに舌を巻くばかりです。

4曲目「遥けき恋路」、6曲目「ティリンゴ~」は、「チューチョ・デ・メヒコ」のヴォーカルがフューチャーされた陽気な曲で、「今村」は早弾きで、テクニックを見せ付ける。
「メヒコ」の味わい深い歌声は、渋さも加わって良い味を出していますね。

9曲目「オディアメ」…この曲も「メヒコ」のヴォーカルがメインですが、曲が哀愁タップリでとにかく良いんです。
「メヒコ」のヴォーカル…メジャー・コードの曲よりも、こう言ったマイナー調の語りっぽい曲の方が、より良い感じです。
バックの「今村」も出来は良いです。

12曲目「アディオス~」は、「メヒコ」が大ベテラン健在を実証する、goodな歌を歌います。
感情が充分に篭っていて、男の哀愁をバッチリ感じさせてくれます。
「今村」の伴奏も文句無いです。

10曲目「牛乳列車」は、アルパの演奏の究極に近いテクニックがこれでもか?と押し寄せて来ます。
「今村」の演奏はとにかく完璧で、全く非の打ち所が有りません。
アルパと言う楽器は、やっぱり魅力が有りますね。

11曲目「ラ・ブルーハ」もナイスなメロディで…何て良い曲だ。
いつまでも聴いていたい、センチメンタルな曲調で、涙が出そうだ。

今日は久しぶりにベスト盤ですよ。ベスト・オブ・ファン・モサリーニ~新しいタンゴの世界~

2007-10-18 22:15:28 | ラテン・インストゥルメンタル
クラシックの現代曲が好きな方なら、極度のラテン好きでなくても、その名を聞いた事があるであろう、20世紀最高のタンゴ・コンポーザーにして、バンドネオン奏者と言えば「アストラ・ピアソラ」ですが、今日紹介する、現代タンゴのコンポーザーにして、バンドネオン奏者は「ファン・ホセ・モサリーニ」と言うミュージシャンなんです。

「ピアソラ」程、日本(世界)では、著名ではないが、実はそれに比肩しうるぐらい、ヨーロッパ(フランス)では、良く知られたマエストロ(巨匠)なのです。
演奏技術も本当に素晴らしく、「ピアソラ」と双璧か、実はそれ以上と言っても過言では有りません。

ただ、「ピアソラ」よりも、世間的評価が若干低いのは、「モサリーニ」の奏でる(作る)タンゴの方が、「ピアソラ」の音楽(タンゴ)に対してよりも、少し柔軟な考えを持っており、ネオ・クラシックとも言うべき、現代曲のタンゴ・ミュージックよりも、幾分ポピュラーやジャズよりな曲が多いのが、本格的派の現代タンゴよりも、色眼鏡で見られているからかも知れません。

私にとっては、「ピアソラ」よりも、ジャジーな「モサリーニ」の方が愛聴すべきミュージシャンなんですけどね。
また、1995年に、NHKドラマ「水辺の男」のサウンド・トラックを担当した事があり、多少は聞いた事が有る方が、いるかも知れません。

そう言った訳で、本日は「ファン・ホセ・モサリーニ」の世界へトリップしましょう。

アルバムタイトル…ベスト・オブ・ファン・モサリーニ~新しいタンゴの世界~

パーソネル…1曲目・モサリーニ&アントニオ・アグリ タンゴ五重奏団
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン)
      アントニオ・アグリ(vl)
      オスワルド・カロ(p)
      ロベルト・トルモ(b)
      レオナルド・サンチェス(g)

      2、4、6曲目
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン)
      グスタボ・ベイテルマン(p)
      パトリス・カラティーニ(b)

      5曲目
      ファン・ホセ・モサリーニ(バンドネオン・ソロ)

曲目…1.水辺の男(12:26)
     ①水辺の男Ⅰ
     ②水辺の男Ⅱ
     ③主人公のテーマ
     ④愛のテーマ
     ⑤死のテーマ
   2.ヴィオレント(6:47)
   3.酔いどれたち(5:55)
   4.パロミータ・ブランカ(3:00)
   5.ペドロ・イ・ペドロ(5:37)
   6.ナオミ(8:52)
   7.アレ・エ・ルトゥールⅠ(6:13)
   8.アレ・エ・ルトゥールⅡ(5:10)

原盤…MANNENBERG RECORDS
CD番号…CAC-0018

演奏について…まず、前述の通り、「NHKのドラマ」のサウンド・トラックに使用されたオープニングの組曲「水辺の男」が、流石とも言うべき名曲・名演です。
①水辺の男Ⅰのテーマから、胸が締め付けられる様な、甘く切ない美旋律のメロディが心に残る。
「モサリーニ」のバンドネオン…危険な恋に身を焦がす、危険な炎の様に妖艶です。
②のテーマに移ると、現代タンゴらしい不安げな曲調で展開される。
「モサリーニ」のバンドネオンを取り囲む様に、最も不安なテーマを弾く「アグリ」のヴァイオリンが聴き所。
低音域で曲を推し進める「カロ」の重厚な弾き具合も良いですぞ。
③主人公のテーマは②以上に不安を予期させる。この先にあるのは、やはり悲劇なのか?
僕は彼女の元へは戻れないのか?
④愛のテーマでは、前半はギターの「サンチェス」が主役…これは主人公を待つ恋人の曲なんでしょう。
彼女は、この先にあるのは決して悲劇では無い。…私の愛が、信念が強ければ、何も怖くないし、彼は無事に帰って来る。きっと帰ってくるわ。
後半のピアノのテーマは、主人公が彼女の愛を信じて、無事に帰れると。希望を見出すのだろうか?
⑤死のテーマ…しかし、やはり、貴方は帰って来ないのね…。
あの暗い海の底に沈んでしまったの?この物語は悲劇で幕を閉じた様です。
しかし、悲しくも美しいメロディは感動的な1曲になっています。

2曲目「ヴィオレント」…現代タンゴとジャズの融合がとても新鮮で、驚きの発見が多い曲で、かなり気に入りました。
ギター「カラティーニ」の殴る様な、ラテン・ギター演奏と、これまたアグレッシヴな「モサリーニ」のバンドネオンが、とても緊張感のある名演を作り上げています。
ベースとピアノの重厚な響きが、緊張感の維持に、より一層の効果をもたらしています。

3曲目「酔いどれたち」…ここでは恨み節や泥酔の酔いどれが集まったイメージは無く、とても陽気な酔っ払いたちが集まって、歌でも口ずさんでいるんだろう。
しかし、後半一人の男が…一番の御大(長老)だろうか?
人生のはかなさ、わびしさをヴァイオリンの調べで表現する。
人生とは…男とは…家族とは…生きる事とは…と静かな口調で語り、皆は黙って聞いている。
しみじみと聴かせる演奏です。

4曲目「パロミータ~」は、多分このアルバムで一押しのトラックだろう。
演奏されているのは、実はタンゴでは無く「シャンソン」です。
「モサリーニ」…やはりパリで腕を上げ、認められた男…。
本場シャンソンのテイストを散りばめた、「ネオ・タンゴ」に彼の真髄が見れる。

5曲目「ペドロ~」では、寛ぎと平穏のタンゴが、「モサリーニ」のバンドネオン・ソロで演じられる。
「モサリーニ」は明るめの音色で、前向きな曲調のアドリブ・メロディを弾き、
決して声には出さないが、強い心で希望を持って生き抜こうと決心している。
いつかは幸せに、きっと幸せになれるはず…私はまだまだ頑張らなくては…。

6曲目「ナオミ」…何で日本の女性の名が冠してあるのか?ちと疑問だが…
この曲の肝は、メロディを弓で弾くベースの「カラティーニ」で、これは男なのだろうか?
そうすると、流麗なピアノメロディを紡ぐ「ベイテルマン」がナオミだろう。
そして、この二人の心の揺れを表現するのは…「モサリーニ」のバンドネオン。
男と女(ナオミ)は、この先どうなるの?
私達、分かり合ってたはずなのに…今は貴方が分からない。
どうすれば良いの?別に好きな人が出来たの?知りたいけど、知るのが怖い…。
いや、僕は君を絶対に失いたくないんだ…。
でも、信じてもらえないけど、別の人も好きになってしまった…。
やはり、つらいが君との関係は終わりにしないと…僕はダメな男だね…ナオミ。
やっぱり…そうだったの。分かったわ…さようなら貴方。
そんなダメな男…私からサヨナラしてあげるわ…なんて上手く行くかな?

7曲目「アレ・エ~」、8曲目「アレ・エ~」…7曲目では、ヴァイオリン協奏曲の様な、激しい旋律のテーマと、伴奏なのだが煌びやかなメロディで飾りを付ける「バンドネオン」の見事なコラボレーションが素晴らしい。
8曲目では、ヴァオリンが打って変わり、ピッチカートを利かした不安げな演奏にチェンジする。
温かみの感じられるメジャー・コードと、絶望的なマイナー・コードが、交互に演奏されて、丁半賭博か白黒かの結論を迫られる様な雰囲気の曲です。
しかして、その結論は…最後はまた、ヴァイオリン協奏曲調なのですが、突然切れる様に終わるので…このイプセン的な解釈はどうなるんでしょう?
皆さんの心が決めるんでしょうね。

最近出たピカイチアルバム…辣腕フラメンコギタリスト、沖仁~レスペート(十指一魂)

2007-10-01 23:50:23 | ラテン・インストゥルメンタル
今日紹介するアルバムは、ラテン・ファンには正しくブラボー!待ってました!の掛け声が飛びそうな、抜群に行けてるアルバムです。

演奏者「沖仁」は、本場スペインでフラメンコ・ギターを修業し、賞も受賞するなどして、今や世界的なフラメンコ・ギタリストとして、認められています。
その「沖」が先月26日に発表したアルバムがこれです。

アルバムタイトル…レスペート~十指一魂~

パーソネル…リーダー;沖仁(フラメンコg)
      セラニート(フラメンコg)
      Ana Salazar(vo)
      矢幅歩(vo)
      大儀見元(perc)
      鈴木正人(b)
      坂田学(ds、perc、他)
      北村聡(bandneon)
      石塚まみ(p)
      山中光(vl)
      矢島富雄(vc)
      鈴木民雄(viola)
      藤谷一郎(e-b)
      ヤマカマヒトミ(fl)
      千住明(cond) 他

曲目…1.メルチョールの家、2.サンパブロ通りの天使達、3.ベサメ・ムーチョ、4.ペイン・アンド・ジョイ、5.マエストロ・セラニート、6.マニア・コシタ、7.サンタ・マリア教会、8.アイ・ジャスト・ウォント・ユー・トゥ・コール・マイ・ネーム、9.61+60、10.風林火山~巡礼紀~

原盤…EMIミュージック・ジャパン
CD番号…TOCT-26322

演奏について…まず、ワンパターンだが、3曲目「ベサメ・ムーチョ」は、史上に残る名曲の名演奏でしょう。
褒めすぎかもしれないが、「アート・ペッパー」と双璧かもしれないです。
アコースティック(フラメンコ)ギターの、この上ない、センチメンタリズムとパッションを極限まで追求した演奏。
カスタネットと、ピアノの「石塚まみ」の、純なアコースティック色豊かななバック・サポートも、「沖」の演奏を3ランクくらい徳の高いステージへと導き、素晴らしく劇的な演奏に仕上げた。
難を言えば、これ程の演奏がわずか4分半と、とても短い事ぐらい。
あと3分、いやこの倍の10分ぐらいは聴いて、聴き続けていたいぐらい素晴らしい。

2曲目「サンパブロ通りの天使達」…いつもの決め台詞、マイナー佳曲大好きなおいらは、ノッケから涙が出そうになるほど、哀愁が立ち込めている良い曲だ。
中途で転調して、メジャーになる劇的さも良いし、ヴァオリン「山中」とバンドネオン「北村」の切なさが満載のアドリブフレーズも、「沖」を強烈にアシストしている。
いつまでも聴いていたい、素晴らしい名曲だ。

5曲目「マエストロ・セラニート」…題名通り、正しくフラメンコ・ギタリストの大巨匠、「セラニート」をリスペクトして、「沖」とその「セラニート」の二人でフラメンコ・ギター・デュオした、驚愕のコラボ演奏。
ステレオ録音で、右チャンネルが「沖」で、左が「セラニート」が演奏している、言わばフラメンコ・ギター・バトルです。
二人の超絶技巧は筆舌し難い程素晴らしいのだが、テクだけでなく、スピリチュアルが非常に高い次元に存在し、ギターを聴きながら(聴かされながら)、魂がピュアに浄化されて行く。
このアルバム中、白眉の名演奏で、是非聴いて欲しい1曲です。

4曲目「ペイン~」もラテン・ポップ・チューンとして、」とてもメロディアスな良い曲で、「サラサール」と言う、下手上手女性ヴォーカルをフューチャーして、このアルバムにアクセントを付けている。
フラメンコ・ギターは、やはり伴奏しているだけでもカッコイイ。
      
1曲目のオープニング曲「メルチュールの家」…ディス・イズ・フラメンコ・ギターと言える、スパニッシュ・ムード満点の異国情緒溢れる曲。
朴訥とした男性ヴォーカルと、周りの掛け声。
打ち鳴らされるカスタネットのリズムを背景に、「沖」がアコースティック(フラメンコ)ギターを打楽器の様に、殴りつける様にかき鳴らす。
スペインの哀愁と、闘牛士的な情熱が交錯する、圧倒的な演奏に胸を討たれる。

7曲目「サンタ・マリア教会」…ここでの「沖」の激しい、打楽器的なギター奏法もすごいの一言。
一心不乱にギターの指先だけに集中して、己を消し去って、弦から魂の音を絞り出して行くのが分かるくらいに、凄まじいアドリブソロ演奏です。

8曲目「アイ・ジャスト~」は、「沖」が子供の為に作ったバラード曲で、「矢幅」が優しく歌って、「沖」の愛情を見事に表現しています。

9曲目「60+61」は、逆に「沖」が両親に」捧げた曲で、チェロ「矢島」の伴奏も美しく、心が落ち着く曲です。

10曲目「風林火山」は、NHK大河ドラマで使われた曲で、雄大なオーケストラに加えて、和太鼓を使用すると言うセンスに脱帽です。
フラメンコ・ギターとの和洋折衷で、渾然一体となった、非常にスケールの大きい演奏です。

「沖仁」…今が旬で、一押しのアーティストです。

今日、もう一枚紹介したいアルバムが有るんです。尾花毅~バヒア・ダンス

2007-09-28 00:39:23 | ラテン・インストゥルメンタル
今日は、もう一枚是非紹介したいアルバムが有るんです。

「尾花毅」と言う、アマチュア(セミ・プロ)が、インディーズで出版した「バヒア・ダンス」と言う、ラテン系(ボサ・ノヴァ)アルバムなんです。
全曲「尾花毅」のオリジナル曲なんですが、とにかく、佳曲、佳演が揃っていて素晴らしい仕上がりです。

アルバムタイトル…バヒア・ダンス

パーソネル…尾花毅(g、e-g、perc、b)
      尾花賢(key)
      小澤敏哉(pandeiro)

曲目…1.バヒア・ダンス、2.ブルドッグ、3.マリサ、4.ソンハー、5.アマゾンの浸水林、6.サンバ・ファンク、7.エスカンダルーサ、8.メイシーズ・ハウス

原盤…MYMレコード  CD番号…MYM0002

演奏について…ぴか一のお薦め、2曲目「ブルドッグ」は、物すごく哀愁感が漂う、涙ちょちょ切れ物のマイナー調佳曲。
おいらの琴線触れ捲りなんだけど、素晴らしいボサ・ノヴァ・メロディが、貴方の心も揮わせる。
アルバムの中で一番好きな曲だな。多分。。。

5曲目「アマゾンの~」…これも良いねぇ。
本当に悲しくて、切なくて、孤独で絶望に苛まれた私が、一人アマゾン川にカヌーを漕いで、静かな水面を見つめていた時、ひっそりと、しかし、水中に(大地)に根を降ろした浸水林の強さと直向さに、生きる勇気を与えてもらう…。
最後は消え入るようなボサ・ノヴァリズムで音は消えて行きますが、私は希望で一杯になる。優しくて、芯の強い素晴らしい名曲です。
アルバム中のベスト・トラックでしょうね。

6曲目「サンバ・ファンク」は、「尾花」の多重録音が生かされた演奏で、元祖「デパペペ」みたいな演奏は◎でしょう。とてもセンスが良いんです。

アルバム・タイトルの1曲目「バヒア・ダンス」は、サンバ・リズムに乗って、「尾花」が軽快にアコースティック・ギターをかき鳴らす。
何か、春先のサイクリングを連想させる、軽やかな、そしてスピーディな雰囲気のメロディが気持ち良いですね。
中間では、泣きのギター・フレーズも有って、セミ・プロらしからぬ?、中々のテクニックで、壷を押さえた演奏がgoodです。

3曲目「マリーサ」は、心寛ぐ、癒し系メロディのボサ・ノヴァ。

7曲目「エスカンダローサ」は、かなり重厚な曲調にプラスして、ゲスト・プレイヤーの「小澤」のパンデーロが、幻想的な異次元の世界を演出する。

4曲目「ソンハー」は、元気が出るメジャー調子のメロディで、聴いているだけで、明るく陽気な気持ちになります。

8曲目「メアリーズ~」は、正統的なボサ・ノヴァ・サウンド&メロディが、エンディングを飾るのに相応しい。
ラテン好きな方々が、聴き終わった後、安心して眠りに就く事を想定している様な曲ですね。

しかし、こんな才能を埋もらせておくのは、余りにももったいないなぁ。
「尾花毅」…いつかはメジャーな世界に出てきて欲しい、アーティストです。

このキリンのジャケットは有名だよね…アントニオ・カルロス・ジョビン~波

2007-09-10 21:59:20 | ラテン・インストゥルメンタル
こんばんわ。
あっ先日、カテゴリー欄をチョイ、カスタマイズしまして、少しだけですが前よりは、検索し易くなったと思います。
ジャズ・ホーンを、サックスとトランペットとその他に分けてます。
ジャズその他も、ベース、コンボ、その他に分け直しました。

さて、今日はボサ・ノヴァの超名盤、「アントニオ・カルロス・ジョビン」の「波」を紹介します。
先日書きましたが、ラテンは絶対に夏の音楽と自負してますので、できるだけ残暑の内に、紹介したいなぁなんて思っています。

アルバムタイトル…波(ウェイヴ)

パーソネル…リーダー;アントニオ・カルロス・ジョビン(p、g、harpsich)
      アービー・グリーン(tb)
      ジミー・クリーヴランド(tb)
      ジェローム・リチャードソン(fl、picco)
      ロン・カーター(b)
      クラウス・オガーマン(arr、cond) 他

曲目…1.波、2.赤いブラウス、3.ルック・トゥ・ザ・スカイ、4.バティディーニャ、5.トリステ、6.モハーヴェ、7.ディアローゴ、8.ラメント、9.アンティグァ、10.キャプテン・バカルディ

1967年5月22日~24日、6月15日、ニュージャージー、ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音

原盤…CTI 発売…ビクター・エンターテインメント
CD番号…UCCU-5007

演奏について…全編に吹く、カラッっとした季節風と青い空の如く、さわやかで軽快な「ジス・イズ・ザ・ボサ・ノヴァ」と言って良い名演奏に包まれたアルバムで、タイトル曲「波」では、「ジョビン」のピアノの流麗な音に幸せを感じる。

2曲目「赤いブラウス」では、「リチャードソン」のフルートが最高に聴き所。
同じフレーズを吹いているのだが、聴いているととてもハッピーになれて、サンパウロの風が、心地よく体に纏わりついて来る気分です。

3曲目「ルック・トゥ~」…ボサ・ノヴァのギターリズムに乗って、ストリングスとトローンボーン「グリーン」、「クリーヴランド」二人が軽やかなサウンドを奏でる。
聴いていると、正に題名通りの青い空と白い雲が眼前に浮かんでくる。

4曲目「バディーニャ」…この曲は一言で言おう。
極上のイージー・リスニングだ!!

5曲目「トリステ」…この曲も「ジョビン」のピアノ、アドリブセンスが抜群で、ストリングス、トロンボーン、ギター群と、ほのぼの系トーンで統一した演奏がウォームな雰囲気を醸し出す。

6曲目「モハーヴェ」も5曲目と同様のアプローチで、聴いた後に心が温かくなる事間違い無いでしょう。
「ジョビン」のボサ・ノヴァは、心底優しいサウンドです。

7曲目「ディアローゴ」はやや翳りと哀愁あるメロディが印象的なトラック。
輪唱の様に繰り広げられる「トランペット」、「トローンボーン」、「ストリングス」の調べが、美しい。

8曲目「ラメント」…良いです。goodです。
「ジョビン」の味わい深いヴォーカルが聴けちゃいます。
伴奏してくれる「トロンボーン」や「フルート」も、とてもハイセンスです。
それからベースの「カーター」がぶいぶい言わせているのも良い!!

9曲目「アンティグァ」…この曲もベース「カーター」がリズムを構築していて、ソフトな曲なのに、重厚感を残していて、軟派にしないのは流石の演奏。
ハープシコードでソロを取る「ジョビン」のアドリブは、とにかく気持ちが良い。
「フルート」はアンニュイな雰囲気を出していて、パーカッション群との絡みも行けてます。

10曲目「キャプテン~」は、ハイハットでシンバルを刻み続けるドラマーが良い仕事をしている。ところで演奏者は誰なんだろう?
ここでは、トロンボーンがメロディを吹いて、「カーター」が、ガッツリベースをかき鳴らして曲を〆てる。
「ジョビン」はピアノとギターの両方を弾いている様で、アシストに廻っている。
いずれにせよ、終曲を飾るのに相応しい、盛り上がり曲です。

灼熱の真夏の夜には…ワルター・ワンダレイ~サマー・サンバ

2007-08-05 23:41:16 | ラテン・インストゥルメンタル
いやー寝苦しい夜ですね。
こんな夜にはクール&ホットなボサノヴァを聴くに限りますね。
それも飛びきり飛んでいきそうな、軽やかなサウンドが良い。
となると、この盤がgoodですね。

アルバムタイトル…サマー・サンバ

パーソネル…ワルター・ワンダレイ(org)
      他

曲目…1.サマー・サンバ、2.さよならなんか簡単さ、3.クライド、クライド、4.レイン、5.イパネマの娘、6.ピラヴド・メランコリー、7.悲しみの味、8.ビーチ・サンバ、9.コール・ミー、10.君の悲しみを叫べ、11.オ・グランジ・アモール、12.ジェットの歌

演奏について…アルバムタイトル曲「サマー・サンバ」は、「ワンダレイ」の代名詞であり、押しも押されぬ代表的な演奏作品です。
※作曲は、実は「ワンダレイ」では無く、「マーカス・ヴァレー、パウロ・セルジオ・ヴァレーの合作」
夏の雨が降った後に、森を歩いていく雰囲気が気分を爽快にしてくれます。

3曲目「クライド~」では、「ワンダレイ」が、ジャズオルガン奏者の「ジミー・スミス」調に、ハードにびんびんオルガンを弾くのが最高です。
アルバムの中で、「ワンダレイ」が、一番演奏テクニックをひけらかした曲でしょう。

4曲目「レイン」は、バラード曲で「ワンダレイ」は、ハイで飛んで行くだけのプレイヤーでは無いことが良く分かる(伴奏)演奏。
感傷的過ぎず、だけどしっかりバラードしちゃってます。
ピアノのメロディはとてもロマンティックで、ドラムはスティックだけの演奏で、とても控えめです。
トランペット(フリューゲルホーン?かな)も、味わい深いソロが良い。

5曲目「イパネマの娘」…「カルロス・ジョビン」の代表的な作品で、ボサノヴァのスタンダードとして有名。
「ワンダレイ」はかなり軽やかに、ポップな演奏で和ませる。

6曲目「ピラヴド~」は、ホーンセクションと「ワンダレイ」の絡み具合が絶妙で、これだからボサノヴァは真夏に聴く曲なんだと再認識できる演奏。

7曲目「悲しみの味」は、曲名と違って、全然悲しさなんか感じない曲。
パーカッション群がサンパウロをイメージさせる編曲に作られ、中途で入るフルートも良い味を出している。
ラテン系って悲しみ(失恋?)がじめじめしてなくて良いね!

8曲目「ビーチ・サンバ」…トロンボーンとギターが重要なパートを占めるので、このアルバム中ではかなり、ジャジーな演奏です。
しかし、夏の浜辺をバッチリイメージさせてくれるのは流石です…。

10曲目「君の悲しみ~」…この曲も全く悲しくない。むしろとても楽しい曲だ。
本当にラテン系ってさばけていて良いよね。
失恋したら(振られたら)、さっさと次の恋にチェンジだよ。
だから、ラテン系(南米もともかく、イタリア、フランス、スペイン人)は軟派が得意なんだろうな。

11曲目「オ・グランジ~」は、正に恋の曲だが、逆にとてもクールな雰囲気の曲調で、楽しいと言うよりはハイセンスに仕上げていて、都会的なボサノヴァ曲です。

エンディング曲「ジェットの歌」も名曲です。
とても軽やかな飛行機で、海外旅行に行くウキウキ気分を表現しているのでしょうか?
全曲通じて「ワンダレイ」節が全開で、オルガンボサノヴァの名人は伊達じゃないです。

心地よいサウンドに身を委ねて…gontiti~XO

2007-06-11 23:49:42 | ラテン・インストゥルメンタル
もうすぐ、入梅しそうですね。
今日は不安定な天気模様を、気分だけでもスカっとさせたいと願い、ゴンチチのアルバムを紹介します。

アルバムタイトル…XO

パーソネル…ゴンチチ(ゴンザレス三上、チチ松村)
                        他

曲目…1.Midnight cable car、2.Land at ALOHA〔IPO IPO〕、3.ping-pong song、4.朝のめざめ、5.逃げる男と求める女、6.wind blow ,tree sings、7.豚と卵、8.Lovers、9.Left Side of Happiness、10.Boy’s Song、11.sayang、12.9つの雫

演奏(曲)について…まず、最高のお薦め曲は、9曲目「Left Side of Happiness」です。
まるでアントニオ・カルロス・ジョビン作曲の様な、絵画的な哀愁一杯のボサ・ノヴァの名旋律は、このアルバムの白眉でしょう。
ゴンチチのギターとバックのオーケストラ、ストリングスの甘い調べに酔いしれそうです。

8曲目の「Lovers」も、ゴンチチの叙情性の極みのような、美しい曲の演奏で、9曲目同様に、バックに入るストリングスやフルート等も、この曲のロマンティシズムを全面的にサポートして、最高に気持ち良いです。

3曲目の「ping-pong song」は、このアルバムの中でも随一の「ゴンチチらしいサウンド」の曲調で、メジャーを基調としていて、聴いた人をほのぼのとした優しい気持ちにしてくれます。

12曲目「9つの雫」も個人的にはとてもお気に入り。
同じフレーズの繰り返しなのですが、その美しいマイナー調のメロディは、いつまでも心に染み入ってきます。

6曲目の「wind~」のライトでアンニュイな、ボサ・ノヴァ演奏も、一服の清涼飲料のような「さわやかさ」がとても素敵です。

オープニングの「midnight~」はブラジルサンバと、70年代のサイケデリックな雰囲気の合いの子みたいな曲。
全員の乗りも良くて、このアルバムのこの後の素晴らしさを予見させる。

5曲目「逃げる男と~」は、オープニングがどことなくD・エリントンのジャングルサウンドを連想させて、とてもダンサブルで楽しい曲です。
エレピ、ドラムス、ホーン・セクションと、参加している全員のノリ度は、アルバム中一番でしょう。

7曲目「豚と卵」は、曲名からは想像もつかないほど、ジャジーで幻想的な曲で、それもアシッド・ジャズの様な現代性と、ブラコンの様な洗練もあって、非常に興味深い演奏となっています。
ゴンチチの曲としてはかなり実験的だと思いますが、正直嫌いではないです。

11曲目「sayang」は二人だけのギター・デュオ演奏で、東洋的な郷愁を感じさせるメロディが、懐かしくてそして少し泣けます。



松岡直也~HOW ROMANTIC!バラード・チューン編

2007-06-08 23:52:27 | ラテン・インストゥルメンタル
今日は、最初に皆様に一言あやまっておきます。
「大変申し訳ありません。」
というのは、ブログ開設依頼、私個人的な嫌なこと、苦しい事などは書かないように努めてきましたが、今日会社でかなり嫌な事がありまして、みっともないですが少しだけ愚痴を書かせて下さい。
どんなに嫌な事でも、このブログに書くのだけは嫌だったんですが、自分がとても情けなくて、でも耐え難く胸が苦しいです。
でも、分かってはいます。はっきり言って「みじめ」です。

本当に「ごめんなさい」どうも失礼しました。

さて、気を取り直してアルバム紹介をします。

嫌な気分をスカッとさせるには、何が良いかと考えていたら、閃いたのがラテンポップのフージョンと言うことで、松岡直也に決定しました。

アルバムタイトル…HOW ROMANTIC!バラード・チューン編
        まぁベスト盤ですが、ご勘弁下さい。

パーソネル…松岡直也(p、フェンダーローズ、syn)
      レイ・バレット、カンノシンゴ(conga)
      村上ポンタ秀一、ヒロセノリユキ、オマール・ハキム(ds)
      高橋ゲタオ、ワタナベケン、ナカムラユージ(b)
      ディーン・ブラウン、ワダアキラ、オムラケンジ(g)
      ※ベスト盤につきその他多数

曲目…1.イヴニング・タイド、2.ロング・フォー・ジ・イースト、3.この道のはてに、4.ア・ソング・オン・ザ・ウィンド、5.九月の風、6.見知らぬ街で、7.アドリア、8.シオン~ウェルカム、9.ミラージュ、10.思い出のマジョルカ

演奏について…3曲目「この道のはてに」は、松岡のアコースティックピアノの音色、ソロとも非常に魅惑的な演奏で、バックのコンガ他ラテンリズムの乗りも良く、ワダのギターソロもスカッと爽快で、聴いていて心から浮かれる、ダンサブルなナンバーです。

5曲目「九月の風」は、松岡のピアノ、フェンダーローズ、そして(打ち込み?)とパーカッションだけの演奏だが、インプロビゼイション他が、とにかくロマンティックで、情緒溢れる名作です。

6曲目「見知らぬ街で」は、松岡のメロディラインが心の琴線に触れて、とてもナイーブで、そして幻想的な曲。
バックは比較的淡々とリズムを刻むのだが、それがかえって、ピアノの哀愁を更に浮き立たせて効果満点。

10曲目「思い出のマジョルカ」は、ギロなどのパーカッション系のリズム隊が、完璧にサンバを形作る。
とりわけ、名人、村上ポンタのドラムの推進力も素晴らしく、全員の乗りも半端じゃない。
例に寄って、そのサンバのリズムに、松岡はまたまた、非常に魅力的な音を重ねて行き、フィナーレを飾るのに相応しい盛り上がりを見せる。

オープニングの「イヴニング・タイド」は、このアルバムの序章を飾るのに相応しいナンバーで、お上品なピアノと、ラテンのリズム隊に、ちょっぴりスパイスを効かせたワダのエレキギターと、優しいストリングスの編曲の妙が心地よい。

7曲目「アドリア」は、このアルバム随一のロック色濃い曲だが、松岡は何とパイプオルガンを奏でて、この編曲のセンスには脱帽物。
とにかくメチャかっこいいナンバーです。




現代タンゴの傑作~アストラ・ピアソラ:ファイヴ・タンゴ・センセーションズ

2007-05-08 23:06:18 | ラテン・インストゥルメンタル
今日は現代タンゴの傑作である、アストラ・ピアソラ作曲のファイヴ・タンゴ・センセーションズを紹介します。

この曲は、ピアソラが現存していた時に、現代音楽のスペシャリストの弦楽四重奏団として有名な、「クロノス・クヮルテット」のために作曲され、捧げられた名曲です。

アルバムタイトル…ファイヴ・タンゴ・センセーションズ

パーソネル…アストラ・ピアソラ(バンドネオン)
      クロノス・クヮルテット
          David Harrington(vl)
          John Sherba(vl)
          Hank Dutt(viola)
          Joan Jeanrenaud(cello)

曲目…ファイヴ・タンゴ・センセーションズ
     1.眠り、2.愛、3.不安、4.目覚め、5.恐怖

演奏について…まず、主役は当然バンドネオンを演じるピアソラである。
やはり自作曲なのか、或いは曲調からそう感じさせるのかは分からないが、とにかく全曲を通じての緊張感は筆舌しがたい。

各曲の表題を感じるのに十分な曲調と演奏がされているのも素晴らしく、1曲目は「ピアソラ」と「クロノスQ」が紡ぐ繊細な表現力に、緊張感を保ちつつも安らぎを享受できる演奏である。
2曲目は激しい「愛」では無く、心の中に秘めた強い愛が表現されており、静かだが芯の強い愛だ。
3曲目の「不安」も分かり易い見え見えの不安ではなく、微妙な不安の心理状況が描かれている。
4曲目の「目覚め」は不安から中々目覚められず、やっと目覚めるまでが良く分かる。 
そして、クライマックスの5曲目「恐怖」は、ピアソラの鬼気迫る超絶的な名演奏で、それに追従するクロノスの演奏も激しく、ベストトラックだと思う。         

      

ブラジルの名ドラマー「ロベルチーニョ・シルヴァ」~「ボダス・ヂ・プラータ」

2007-04-30 23:30:04 | ラテン・インストゥルメンタル
まずは、「ロベルチーニョ・シルヴァ」を良く知らない方々に解説書を参考にしてご紹介します。

ロベルチーニョ・シルヴァ…1941年ブラジル、リオ・デ・ジャネイロの生まれで、1988年には「ミルトン・ナシメント」のメンバーとして来日したことがある。
彼は、以前紹介のマルチ・インストゥメンタル奏者「パスコアール」などと数多くのアルバムレコーディングに参加しており、取分け今回ご本人の作曲でもある名曲「スピーク・ノー・イヴィル」にソプラノサックスで参加している「ウェイン・ショーター」の、その名も名盤「ネイティヴ・ダンサー」にドラムスとして参加していたのである。
とにかくサンバのノリを持つ優れたタイム感覚と、骨太のドラムを敲く職人肌のドラムスです。

では詳細について説明しましょう。

アルバムタイトル…「ボダス・ヂ・プラータ」(銀婚式)

パーソネル…リーダー;ロベルチーニョ・シルヴァ(ds)
      ミルトン・ナシメント(p)
      ルイス・アルヴィス(b)
      フランク・コロン(perc)
      ヴァンデルレイ・シルヴァ(perc)
      アレウーダ(voice)
      ウェイン・ショーター(ss)
      グループ・ウアクチ(etc.)
      他

演奏曲…1.ヴェイオ、2.サンバ・ブラジル、3.ドルフィン、4.ボダス・ヂ・プラータ、5.スピーク・ノー・イヴィル、6.リリア、7.ベニー・カーターの肖像、8.オルフェアンの日曜日、9.パルチード・アルト・№2、10.ガイオ・ダ・ロゼイラ

演奏(曲)について…オープニング「ヴェイオ」はこのアルバムがブラジル音楽のアルバムである事を高らかに告げる。
2曲目の名曲「サンバ~」は一転してフルートとオケにより寛ぎのボサ・ノヴァに聴者が身を委ねる。
3曲目「ドルフィン」も「サンバ・ブラジル」と同路線で安心感一杯。
そしてクライマックスはその次からやって来る。
まず最初に、アルバム・タイトル4曲目「ボダス~」のハイセンスな編曲と演奏、そこには「ショーター」の甘いソプラノサックスの響きが、幻想的な宇宙へと誘い、リーダー、「ロベルチーニョ」は重厚感が有るが決して五月蝿くはない超絶的なドラミングでその「ショーター」と融合する。
そして白眉がその「ショーター」を全面的に押出した次曲でジャズの名曲「スピーク~」である。
ここで「ショーター」は素晴らしいアドリブを演じており、バックのメンバーも盛り上げに徹して、最高のパフォーマンスを形成している。
6曲目「リリア」はいかにもナシメントの作品らしく、「ブラジリアンポップス演歌」と言えるような作風が楽しい。
7曲目は「ベニー・カーター」の名を付けているが、肩肘張らない優雅なサックス曲で、「ショーター」の貫禄が見て取れる。
8曲目はサンバ、9曲目も高速のサンバでアルバム後半を盛り上げ、最後に現代音楽の様な前衛さと、奥方「アレウーダ」のヴォイス、そしてラテン・パーカッション系楽器のうねり、それと絡むアコーディオン、ベースなどが不思議な魅力を醸し出す「ガイオ~」で締め括る。

ジャズ、ラテン、フュージョン好きな人、絶対に聴かなくてはならないアルバムですぜ!!