紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

生涯たった1枚しか残していないレコーディングだがとにかく最高!…天才アール・アンダーザ

2008-07-05 14:57:24 | ジャズ・アルト・サックス
先ほどは、私事でのお詫び…ご了承頂きありがとうございました。

さて、更新回数が激減致す代わりと言っては何ですが、今日は飛び切り抜群の1枚を紹介しましょう。

アルト・サックスの名演(隠れた名盤)にして、著名なジャズ評論家;「アイラ・ギトラー」が、このアーティストの将来性を揺ぎ無い天才として評価していたにも拘らず、(60年代アルティストとして「オーネット・コールマン」や「エリック・ドルフィー」を追従する存在)、何故かこの作品1枚だけを残して、表舞台から姿を消してしまったんです。

そのアーティストの名は…「アール・アンダーザ」!

正しく「エリック・ドルフィー」の直系の様な、アグレッシブで、しかしインテリジェックで、魂を揺さぶる鋭利なトーンで吹き切る様は…一言…かっこいいです。

では、詳細について説明致しましょう。

アルバムタイトル…天才アール・アンダーザ

パーソネル…リーダー;アール・アンダーザ(as)
      ジャック・ウィルソン(p、harpsichord)
      ジョージ・モロー(b)
      ジミー・ボンド(b)
      ドナルド・ディーン(ds)

曲目…1.オール・ザ・シングス・ユー・アー、2.ブルース・バロック、3.ユード・ビー・ソー・ナイス・トゥ・カム・ホーム・トゥ、4.フリー・ウェイ、5.アウタ・サイト、6.ホワッツ・ニュー、7.ビナイン

1962年3月録音

原盤…Pacific PJ-65  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6389

演奏について…オープニング曲「オール・ザ・シングス~」…アルト・サックスの神様、「チャーリー・パーカー」十八番の曲から、若造が演るなんて…何て度胸が有るやつなんだぁ~と思ったら、ところがどっこい、この演奏が素晴らしいんですよ。
まず、耳を傾けさせられるのが、序奏のハープシコード演奏で、今までのワン・ホーンとは毛色が違うぞ?と、先制パンチを食らうんですが、「アンダーザ」の演奏は、「バード」が若返った様に、素晴らしいインプロヴァイズで、熱く…時にはクールに決めてくれて…心を奪われます。
その後のハープシコード「ジャック・ウィルソン」のアドリブ・ソロも奇を衒うだけでなく、知的でインテリジェックな演奏が良いですよ~。
後半の「ジョージ・モロー」の一発ソロ(ベース)も効果覿面です。
オープニングとして掴みはバッチリ!のgoodな1曲です。

2曲目「ブルース・バロック」…ブルー・ノートとは、やはり作りが違う、いかにもパシフィック的な音色で録られた演奏ですが、「アンダーザ」の鋭利なト-ンで攻める演奏は、パシフィックのライトな録音に打ち消される程、軟では有りません。
ここでも「ジャック・ウィルソン」は、ハープシコードを用いて(ソロ部分)、黒いブルーズとは一線を画した、白い?ブルーズを演ずるんです。
1曲目でスタート・ダッシュしたので、ここでは少しクール・ダウンで寛ぎをもたせたんでしょう。

3曲目「ユード・ビー・ソー~」…この若造…一度ならず二度までも…今度は白人アルト・サックス奏者の最高峰「アート・ペッパー」の名演に対抗するつもりか?
何て無謀な…と思ったが、この曲ではかなりストレートな表現で、原曲の良さを活かしつつ、「アンダーザ」らしさを少し加味する演りかたで、作品を仕上げています。
「ウィルソン」もここではピアノでソロを取り、クール&ロマンティックな女性的?な演奏…そうですね、「トミー・フラナガン」っぽい感じで、曲を修飾して行きます。
バック二人(「ジミー・ボンド」と「ドナルド・ディーン」)は、タイトで締まった堅実なリズム・ワークで、個性的な二人をしっかりアシストしてくれてます。

4曲目「フリー・ウェイ」…「アンダーザ」のアイドルは何と言っても、やっぱり「バード」らしく、いかにも「チャーリー・パーカー」っぽい、煌くアドリブ・フレーズで、疾走系のブルーズを速射砲の様に決めてくれます。

5曲目「アウタ・サイト」…ピアニスト「ジャック・ウィルソン」作のモード・ナンバーで、「児山紀芳」先生のライナー・ノーツによれば、この時代の最先端、「ジョン・コルトレーン・カルテット」が演りそうな曲をモチーフにしているとの事で、言われてみると、「ジャック・ウィルソン」の流麗でハイソなピアノ演奏は。「マッコイ」に酷似していて、「アンダーザ」のソロもアルトを演っている「トレーン」の様です。
モード・ジャズ好きには堪らない1曲ですね。

6曲目「ホワッツ・ニュー」…スタンダード・バラッドの最右翼の1曲ですが、「アンダーザ」は、かなり辛目のトーンで、センチメンタリズムも排除した、硬派の演奏で進めて行きます。
この演奏形態は「ジャッキー・マクリーン」に似てますね~!
「アンダーザ」…天才の名に恥じない引き出しの多いアーティストです。
しかし、勿論、先輩アーティスト達の物真似ばかりしている訳ではなく、「アンダーザ」らしい個性も発揮しています。
2トップを張る「ジャック・ウィルソン」も曲によって演奏スタイルを変化させていて、ここではしっとりとロマンティックなピアノで弾き切って、硬質な「アンダーザ」との対比が劇的な演奏にしています。

ラスト曲「ビナイン」…この曲は「アンダーザ」のオリジナル曲で、かなりアグレッシブと化した「チャーリー・パーカー」が演っているかの様な演奏です。
「ジャック・ウィルソン」は、この曲では「ホレス・シルヴァー」の「シスター・セイディ」のメロディをアドリブでかましたりして…この二人は先輩アーティストの良いとこを取っていくみたいで…悪く言えば盗人アーティスト?か??。
でも、若くして先輩の濃いエッセンスを吸収しているので、「アンダーザ」が2枚目、3枚目…或いはジャズ・ミュージシャンとして表舞台に出ていたらとしたら、末恐ろしい、ジャズ・ジャイアンツになっていたと予感させます。

本当に何で1枚しか録らなかったのかなぁ?
サイド・メン演奏も無いんですよ。
余りにももったいない…残念な稀有なタレントだったんですねぇ。

「フィル・ウッズ」が吹くスタンダード…ワン・ホーン・アルバム…ウォーム・ウッズ

2008-05-04 11:45:16 | ジャズ・アルト・サックス
「フィル・ウッズ」が若い頃に吹き込んだ、スタンダード・ナンバー・メインのワン・ホーン・アルバムが、今日紹介するこれなんです。

まず、印象的なのが、このジャケット…犬を小脇に抱えて横たわっているのが、若かりし頃の「フィル・ウッズ」なんですが、今流に言うと、結構なイケメンで、当時は女性にも人気が有ったんだろうな。

さて、演奏についてですけど、当然、この頃から「ウッズ」の個性はかなり出来上がっていて、独特のアルトのトーンも聴けるし、カッコイイ…アドリブ・フレーズも随所に演ってくれて、足りないのは年齢(後年の熟成が)無いだけで、逆にこの演奏の若々しさは武器になっていますよ。

アルバムタイトル…ウォーム・ウッズ

パーソネル…リーダー;フィル・ウッズ(as)
      ボブ・コーウィン(p)
      ソニー・ダラス(b)
      ニック・スタビュラス(ds)

曲目…1.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ、2.イージー・リビング、3.アイ・ラヴ・ユー、4.スクィアズ・パーラー、5.ウェイト・ティル・ユー・シー・ハー、6.ワルツ・フォー・ア・ラヴリー・ワイフ、7.ライク・サムワン・イン・ラヴ、8.ガンガ・ティン

1957年9月11日、10月18日、11月8日 N・Yにて、MONO録音

原盤…?  発売…Epic Recors  CD番号…ESCA-7757

演奏について…個人的に大好きなのは、私のど真中ストライク・ゾーンの8曲目「ガンガ・ディン」で、ラテン・リズムにマイナー調メロディと正しく、王道です。
演奏も「フィル・ウッズ」の切味鋭いトーンで、瞬発力良く吹き上げるアドリブの出来は当然良いのは勿論、ピアノの「コーウィン」のシングル・トーンを主軸にしたアドリブが哀愁たっぷりで、抜群に行けてます。
後半のドラムの「スタビュラス」のソロも存在感を示し、とくにバス・ドラのズドンが腹に響きます。
カルテット4人が、見事にスクエアに嵌って、このアルバムで、ベスト・チューンを演ってくれますよ。

オープニング曲「イン・ユア・オウン~」…序奏からスムースにさりげなく「フィル・ウッズ」が吹いてくれるんですが、一寸ライト?と思いつつも、やはり気合が漲ってくると、トーン自体が鋭く、聴く物の心を抉ってきます。
しかし、そのアドリブ演奏は、とてもエモーショナルで、落ち着いていて、心を癒してくれるんです。
「コーウィン」の伴奏もさりげないのですが、ソロに入るとセンチメンタルな雰囲気も醸し出して、胸キュンですね。
「ソニー・ダラス」の堅実なベース演奏と、「スタビュラス」のシンバル演奏もさりげなくて良いですね。
序奏からこのカルテット…掴みはOKでしょう。

2曲目「イージー・リビング」…アルト・サックス奏者のバラッド演奏の定番ですが、「ウッズ」も例に漏れず、素晴らしいソロを吹きます。
「ウッズ」は温かみの有る音色で、奇を衒わずに、オーソドックスに吹き上げるんですが、完全王道が逆に胸を打つんですねぇ。
ジャズって革新的な事も、超オーソドックスも両方行ける稀有な音楽ですよね。
ここでなされる「ウッズ」の演奏は、シンプルに心地良く吹いてくれて…シンプル・イズ・ベストの代表的な演奏です。

3曲目「アイ・ラヴ・ユー」…この曲も「コール・ポーター」作の著名なスタンダードですが、ここでも「ウッズ」は、スッキリ爽快に、ストレート・アヘッドで曲を料理します。
食べ物に例えるなら、極上の松坂牛のヒレ・ステーキを、塩(岩塩)と挽き胡椒だけで、食わせるやり方で…良い素材(名曲)には、直球勝負で小細工しないのが一番(美味しい)と言う、とても判り易い方程式ですね。
この曲での3人のバック伴奏は、とても切れが有ってスパイスになっています。

7曲目「ライク・サムワン・イン・ラヴ」…「小西啓一」氏著の、ライナー・ノーツによれば、このアルバムは正しく「ウッズ」がウォームなトーンで吹いていることから、付けられたとのらしいのですが、そう言う意味では、この曲の演奏が一番ウォームな音色で、ほのぼの系で仕上げています。
しかし、中間部のアドリブは、「ウッズ」が結構攻めていて面白いし、とても良く歌わせています。
「コーウェン」のピアノも結構クールで、この辺の対比が趣き深いんでしょうね。
「ダラス」と「スタビュラス」は、淡々と実直に仕事してくれて…この二人をアシストしてます。

5曲目「ウェイト・ティル・ユー~」…非常に寛いだ軽快な演奏ですが、「ウッズ」はキラリと光るアドリブ・フレーズを所々に入れて、流石だと認識させます。
時折ブイブイ言わせるフレーズを演る時には、思わず、アッ「ウッズ節」が出たぁ!って頭に浮かんじゃうもんね。
サイドでは、抑えた表現で、小洒落たアドリブを「コーウェン」がさりげなく演ってくれるのも○でしょう。

4曲目「スクィズ・パーラー」…「ウッズ」のオリジナル曲で、割とアップ・テンポに進む1曲。
「ウッズ」のソロは当然ですが、かなりノリノリの「スタビュラス」のハイなドラミングが裏の聴き所の一つでしょう。
いや、裏じゃなくて表かな?
終盤「ウッズ」との掛け合いも◎ですし、相当なgood jobですよ!
それから、かなり地味なのですが、インテリジェックなブロック・コード・フレーズを随所に連発して、伴奏なのに?決めてくれる「コーウェン」も、実はMVP…いや助演男優賞ですね…。
「コーウェン」のアドリブ・ソロ・パートも、結構知的で行けてるしね。

6曲目「ワルツ・フォー・ア~」…「ウッズ」が、愛妻「チャン」に捧げたトラックらしいが、とにかく優しくて温かい音色で、「ウッズ」のアルト・サックスが包み込んでくれます。
このナンバーもアルバム・タイトル「ウォーム・ウッズ」が付けられた要因の1曲でしょうね。

シンプルにスタンダードを味わいたい方には、お薦めの1枚です。

デヴィッド・サンボーン~クローサー…続き

2008-03-10 10:33:37 | ジャズ・アルト・サックス
いやー、皆様、大変ご無沙汰しております。
実は、我が家に子犬(トイ・プードル)が来まして、また、仕事の煩雑さもあって全くブログが書けませんでした。
更に昨日は、日曜日出勤も重なって…トホホ!
どうも、すみません。

今日は、先日の続きから書き始めたいと思います。

6曲目「バラード・オブ・ザ~」…「サンボーン」が、とても朗々と伸びやかにバラード・チューンを吹き上げて…歌心に満ち溢れた演奏です。
「ゴールディングス」のキー・ボードがスーパー・アシストを提供し、「マクブライド」の太いベース音が、二人を支える。
いつまでも聴いていたくなるような、とても優しい調べです。
軟派じゃない、癒し系サウンドです。
これは必聴でしょうね。

7曲目「アナザー・タイム・アナザー・プレイス」…霧に包まれたニューヨークをイメージして、「サンボーン」が書いたオリジナル曲との事ですが…はたして…正にその通りでして、「サンボーン」は、男っぽいハード・ボイルドな演奏を展開して、アドリブもかっこいいですね。
「スティーブ・ガッド」の切れ味抜群のドラムスが、更に乾いた大都会のイメージを誇張して…ニヒルなサウンドに仕上がっています。
それから、「ゴールディングス」のエレピが、実は一番霧を表していると思います。
非常に良いアシスト演奏となっていて、とても心地良いサウンドです。
都会の中にあるオアシス的な1曲でしょうか?

8曲目「ケープタウン・ブリンジ」…アフリカン・ピアニスト、「ダラー・ブランド」作ですが、「サンボーン」はライトに吹いて、カリプソ調のダンサブル・ナンバーに仕上げている。
「ガッド」のドラミングが秀逸物で、全員をさりげなくノリノリにさせている。

9曲目「ポインシアナ」…「アーマッド・ジャマル」作品ですが、「ウォーター・メロンマン」を彷彿させる序奏から気に入った。
ラテン調の変則的なリズムをバックに「サンボーン」が、渋めに決めてくれる。
余り派手なブロウはしないが、逆にクールで、かっこいい!
ダンディズムが煌く演奏です。
バックのパーカッション群のノリも良いです。
名前の通り、森の楽園を飛び廻る蝶の様に、軽やかで煌びやかです。

10曲目「ユー・マスト・ビリーブ~」…こいつも良いですよぉー。
私、フェイヴァリットの「ミシェル・ルグラン」作曲の、ビターなバラッドで、「ラッセル・マローン」のギターと、「サンボーン」のアルト・サックスが、語り合う様に曲を修飾して行きます。
「マクブライド」のベース、「ガッド」のシンバルは、どこまでも控えめで…いじらしい程控えめで、二人をじっと見守っています。
「サンボーン」は渋く、少しばかり辛口のトーンで、ここでもダンディズムが極まれりと言った感じです。
痺れますねぇ!!

11曲目「ソフィア」…アルバムのラストを飾るチューンです。
「サンボーン」自作の、哀愁のバラッド作品で、ここでも「サンボーン」の抑制したバラッド演奏が、悲しく美しい情景を描き切っています。
別れる時に背中で泣く、男の哀愁なんでしょうか?
サイド・メン達のさりげないサポートが、取分け「マイニエリ」のヴァイブが、哀愁感をセピア色に染め上げています。
泣けます…かっこいいです。

とにかく、アルバム全曲が良いと言っても過言では有りませんよ。
大お薦めの1枚です。

孤高のアルト・サックスで冴えるベテランの味…デヴィッド・サンボーン~クローサー

2008-03-03 22:16:24 | ジャズ・アルト・サックス
しばらくです。
週末、公私共々チト忙しくて、ブログ書けませんでした。
どうもすみません。

さて、今日はもはやベテランの域に達したアルト・サキソフォニストの「デヴィッド・サンボーン」が、2004年に録音した、比較的最新のアルバムを紹介しましょう。
スタンダード曲と「サンボーン」のオリジナルが程よく配置された選曲も好ましいし、何より激しいブロウとは、対極にある様な、余裕有るイージー・リスニング的大人吹きで、吹き通すスタイルが、逆に個性を発していて…聴き応え十分なアルバムに仕上がっています。

アルバムタイトル…クローサー

パーソネル…リーダー;デヴィッド・サンボーン(as)
      ラリー・ゴールディングス(key)
      ギル・ゴールドスタイン(key on 8)
      マイク・マイニエリ(vib)
      ラッセル・マローン(g)
      クリスチャン・マクブライド(b)
      スティーヴ・ガッド(ds)
      他
      ゲスト・ヴォーカル;リズ・ライト(on 3)

曲目…1.ティン・ティン・デオ、2.セニョール・ブルース、3.ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト、4.スマイル、5.エンチャントメント、6.バラード・オブ・ザ・サッド・ヤング・メン、7.アナザー・タイム・アナザー・プレイス、8.ケープタウン・フリンジ、9.ポインシアナ、10.ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング、11.ソフィア

2004年ニューヨークにて録音

原盤…Verve  発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCV-1065

演奏について…1曲目「ティン・ティン・デオ」…オープニングから、「サンボーン」が絶好調で、テーマを吹く叙情性も、アドリブでのラテンチックで刺激的な展開も、完璧に行けてます。
序奏での「マクブライド」のブ厚いベース・サウンドと、パーカッションの切れ味鋭いノリもバチッシで、取分けテーマが展開した後、ヴァイブの「マイニエリ」とのリズム・セクションとのコンビネーションは、もう一つの聴き所です。
ラテンなんだけど…「サンボーン」がジャズは絶対に忘れてはいない。
流石の1曲です。

2曲目…「ホレス・シルヴァー」の代表作「セニョール・ブルース」ですが、本家よりも大分遅めのスピードで、「サンボーン」が土臭くない、都会的なブルーズを渋く、且つアーシーに決めて吹く。
ここでもラテン調の曲らしく、パーカッション群と「マクブライド」のベースが、男っぽい骨太のサウンドで、曲の屋台骨を支える。
「マイニエリ」のヴァイブが縦横無尽に跳ね回り、「サンボーン」のいぶし銀色のアルトが絡みつく。
切れ味抜群のドラミングをする「ガッド」の演奏もいかします。

3曲目「ドント・レット・ミー~」は、サプライズ・ゲスト?「リズ・ライト」が参加する女性ヴォーカル入りのトラック。
「サンボーン」は、フュージョン風の寛ぎと、余裕をビンビンに見せ付ける、情感たっぷりのアルトを吹いて、「リズ」が馬鹿上手の歌を熱唱する。
彼女の声色もアルト(女声低音)で、「サンボーン」のアルトと音域的にピタリとマッチする。
ある種、インストとヴォイスのデュエット的な演奏&歌で…大人のデートを彷彿させるゴージャスな時空間が…とにかく心地良いです。

4曲目「スマイル」…「チャーリー・チャップリン」の名画「モダン・タイムス」で、(チャップリン自身にて)歌われた曲を「サンボーン」が、感情を最大限に移入して、歌い(吹き)上げるバラード演奏。
とにかく、「サンボーン」のバラードは心に沁み込む。

5曲目「エンチャントメント」…この曲も「H.シルヴァー」の作品で、「サンボーン」は肩肘張らない余裕のアドリブをバッチリこなす。
「マクブライド」のとにかく重低音のベース演奏と、「ラッセル・マローン」のブルージーなギター演奏が、「サンボーン」の演奏の脇をガッチリ固めてくれて…ラテン調、ジャジー&ブルージーの極上サウンドに仕上がっている。
軟派に見えて、ものすごい硬派な音楽だ!

続きは又明日以降で…

60年代マクリーンの最後の傑作…デモンズ・ダンス~ジャッキー・マクリーン

2008-01-13 11:05:38 | ジャズ・アルト・サックス
おどろおどろしくサイケなジャケット・デザインに目を奪われて、とても過激な演奏かと思いきや、中身は正統的な2管で、(曲によっては)若干フリーキーな演奏も有りますが、叙情性タップリの「マクリーン」のブロウが冴えている曲も多く、60年代後期、いや、(60年代)最後の「ジャッキー・マクリーン」を代表するアルバムが、これなんですよ。

アルバムタイトル…デモンズ・ダンス

パーソネル…リーダー;ジャッキー・マクリーン(as)
      ウディ・ショウ(tp)
      ラモント・ジョンソン(p)
      スコット・ホルト(b)
      ジャック・デジョネット(ds)

曲目…1.デモンズ・ダンス、2.トーイライド、3.ブー・アンズ・グラインド、4.スイート・ラヴ・オブ・マイン、5.フルーゲ、6.メッセージ・フロム・トレーン

1967年12月22日録音

原盤…BLUE NOTE BST-84345  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-9548

演奏について…表題曲「デモンズ・ダンス」…「マクリーン」と「ショウ」のユニゾン演奏に、「デジョネット」の変幻自在のドラミングが付随して序奏が始まり、その後、「マクリーン」がスケール有るブロウを展開して行く。
「ショウ」は情感たっぷりのアドリブを演り、「ジョンソン」もスケールはやや小さいが、メロディ・フレーズ的には「マッコイ・タイナー」を彷彿させるモード演奏が行けてますね。
しかし、やはりこのアルバム全体を素晴らしい物に仕上げているのは、偏に「デジョネット」のドラムの素晴らしさにつきるだろう。
タイム・キープングとドライビングの素晴らしさは言うまでもないが、リズムを敲いていながら、しっかりとドラム&シンバルを一つの楽器として、歌わせている…
流石としか言いようが無い。

2曲目「カル・マッセイ」作品のバラッド曲「トーイランド」…この演奏は「ショウ」抜きのカルテット演奏なんですが、まず序奏の「マクリーン」の叙情性豊かにアルト・サックスを吹き始める所からが、いきなり、そして最大の聴き所です。
続く「ジョンソン」の透明度抜群の湖の様に、透き通った静かなピアノ・ソロも秀逸で、まっこと美しいカルテット演奏が終始なされます。

3曲目「ブー・アンズ~」では、このアルバム随一の「マクリーン」のアグレッシブなソロ演奏が聴けます。
「ショウ」もブリリアントな音色で、「マクリーン」の向こうを張ったアドリブを演ってくれて、フロント2管のバトル的な演奏がgoodですねぇ。
「ジョンソン」は、この演奏も「デモンズ・ダンス」と同様、ミニ「マッコイ」って感じで、モード演奏の極め付きのソロを弾きます。
「マクリーン」も「コルトレーン」に多大な影響を受けた一人ですが、それに付随して?至高のカルテットのメンバーからも(演奏的)影響を受けたミュージシャンって沢山いる事を改めて感じますね。
終盤、「デジョネット」も華麗なアドリブを一発演ってくれますぜ!

4曲目はこのアルバムの目玉曲「スイート・ラブ・オブ・マイン」。
私、大好きなボサ・ノヴァ・リズムの佳曲なんですが、歌うドラムス演奏で、ボサノヴァ・リズムでも、キッチリ皆を引っ張る「デジョネット」に率いられて、「マクリーン」、「ショウ」の二人とも、情感溢れるアドリブ・フレーズを吹くんです。
ここで面白いのが、「ジョンソン」の演奏で、今まではモード演奏で、クールに決めていたのですが、ここではラテン調と言う事も有ってか、遊びの演奏も演ってくれて、彼の個性が垣間見れるんです。
演奏もバッチリですが、とにかく曲が良いですね。

5曲目「フルーゲ」…アップ・テンポのリズムに乗って、「マクリーン」がかなりフリーキーにシャウトする1曲です。
ここでは「ジョンソン」が、非常に出来の良い、センス抜群のアドリブ・ソロを弾いてくれます。
中間部で、曲を無演奏(無音=タイム・ブレイク)する部分があって、この辺りは結構、実験的な感じがしますね。

ラストの「メッセージ・フロム・トレーン」…「コルトレーン」亡き後の、制作アルバムだったので、この曲を取り上げたんでしょうが、「ジョンソン」以外は、「コルトレーン・カルテット」的な演奏では無いんです。
しかし、各人のソロの出来栄えはかなり良いですよ~!
前述の「ジョンソン」のハイ・センスな演奏はもとより、リーダー「マクリーン」、「ショウ」の2管も聴き応え有りますし、ここでも「デジョネット」の華麗なソロは健在で、ラストを飾るに相応しい演奏です。

奇抜なアルバム・デザインで聴く事(購入する事)を躊躇されている方、…決して怖くは有りませんよ!(笑・笑)

これも幻の名盤の一つでした…ソニー・クリス~サタデイ・モーニング

2008-01-08 00:07:55 | ジャズ・アルト・サックス
今日は、かつて幻の名盤の一つであった、「ソニー・クリス」が、ザナドゥ・レーベルから出した、「サタデイ・モーニング」を紹介しましょう。

「クリス」の良く歌う、饒舌アルトの冴えも素晴らしいのは勿論の事、バックのメンツも行けてますよ。
ピアニストは「バリー・ハリス」、ベースは、ウォーキング・ベースの名人、「リロイ・ビネガー」、そしてドラムは「レニー・マクブラウン」と言う、渋い名人が強固に「クリス」をサポートしてくれちゃってます。

曲も聴き易い名曲が多く、多くの方にお薦めしたいアルバムです。

アルバムタイトル…サタデイ・モーニング

パーソネル…リーダー;ソニー・クリス(as)
      バリー・ハリス(p)
      リロイ・ビネガー(b)
      レニー・マクブラウン(ds)

曲目…1.エンジェル・アイズ、2.ティン・ティン・ディオ、3.ジェニーズ・ニーズ、4.サタデイ・モーニング、5.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、6.アンティル・ザ・リアル・シング・カムズ・アロング

1975年3月1日 録音

原盤…XANADU 105   発売…クラウン・レコード
CD番号…CRCJ-5001

演奏について…まず、冒頭の1曲目「エンジェル・アイズ」から、お薦めだい。
「ハリス」の悲しげなマイナー・トーンの序奏から、聴く耳が立って、それに続いて「クリス」も更にディープで、憂いを纏ったアルト・サックスで、詩人の様に物語を綴る。
「ビネガー」のカッツリした実直なベース演奏と、ブラシ&シンバルで影の様に「クリス」の演奏を支える「マクブラウン」のバック二人も超名演…。
最初から、これぞワンホーンの魅力が凝縮された演奏に大満足します。
中間の「ハリス」のシングル・トーンが更に深く心の悲しさを抉り、「ハリス」が最後に「泣き節」で止めを差す。
最初から全開バリバリの名演にKOですよ。

2曲目「ティン・ティン・ディオ」…私、大、大好きなラテン・リズムで「マクブラウン」がリズムを起こすと、続く「ビネガー」のぶっといガッツリ・ベースが思い切りはまる。
メロディを吹く「クリス」は相変わらず絶好調、泣き、こぶし、感情を入れ捲り、日本人の琴線に触れるアドリブを演ってくれます。
「ハリス」のソロも美演で、曲に彩りを副えてくれますよ。
しかし、何度も言いますが、この曲でのベスト演奏は、とにかく「ビネガー」の野太い安定感抜群のベースにつきます。
ジャズはベースよければ全て良しと言っても過言では有りません。
「リロイ・ビネガー」最高です!!

3曲目「ジェニーズ・ニーズ」…この曲は、とてもシンプルなブルース曲で、堅実なピアノ・トリオをバックに、「クリス」が気持ち良く、アルトを吹き切ります。
余り虚飾せずに、まじにストレートで男っぽい表現で、「クリス」の別の魅力が発見できます。
中途で「ハリス」が、前2曲のロマンティック&ナイーブな表現とは異なったブルーズでのピアノ演奏も、中々乙ですね。
最後もテーマ・メロディを「クリス」がシンプルに吹いてフィニッシュと相成る。

4曲目「サタデイ・モーニング」…いよいよタイトル曲、真打の登場に場内が沸く。(勝手に妄想していますぜ!)
この曲のテーマも物悲しい、都会のジャズ演歌で、「クリス」の「こぶし」の吹き廻しは絶妙で壷を直撃する。
受ける「ハリス」のアドリブも、「クリス」と一体化されたエレジーである。
相変わらず、「ビネガー」と「マクブラウン」は、実直にラインを刻むだけだが、これが非常に漢の一途な仕事ぶりでいかすんです。
※しかし、中間で一寸だけ、「ビネガー」がぶっとい音でソロを演ってくれて、これが又良いんだよ~。
最後の〆も、臭いぐらい劇的に舞台設定を3人がしてくれて、「クリス」がきっちりと千両役者として、纏めてくれます。
最高!!です。気持ち良いです。

5曲目「マイ・ハート~」…前3曲とは異なって、寛ぎ系メジャー・チューンです。
この曲は、「クリス・レス」のピアノ・トリオで曲が演奏され、「ハリス」がかなり装飾を付けた煌びやかなアドリブを弾き、かつての「ハリス」が演っていた、トリオ・アルバムがデジャ・ヴ様に脳裏をよぎるんですよ。
ここでもソロを演ってくれる「ビネガー」のベースが、分厚いサウンドを生み出し、「クリス・レス」の寂しさは微塵も感じさせない演奏に仕上がっています。

ラストの「アンティル・ザ~」…この曲もラストを飾るには、とても可憐でライトな雰囲気の曲です。
伝統的な4ビートで、終始ブラシ・ワークで「マクブラウン」がリズムを刻み、「ビネガー」もこつこつラインを刻む。
「クリス」は、最後のこの曲は楽しんでいるかの様に、非常に肩の力が抜けた、大人の演奏が渋かっこいいですね。
最初から最後まで、「泣き節」で通さない所が、逆に好感が持てますよね。

演歌を思わせる、1~4曲目の陰鬱な泣き節と、ライトで寛いだ5&6曲目の対比がとても面白く、聴き比べもgoodなアルバムです。
非常にお薦めの1枚です。

新年、明けましておめでとうございます。

2008-01-03 00:28:03 | ジャズ・アルト・サックス
新年明けましておめでとうございます。

昨年は、閲覧されてらっしゃる皆様に、多大なご協力やアドバイスを賜り、本当にありがとうございました。

また、私の至らない面から、色々な嫌な思いをされた方も多かったのでは?と深く反省をしている所存です。

今年は、ブログを書く者として、常識ある文章、態度、コメントをして行く所存ですので、(但し、如何せん不躾な人間故に、皆様のお気に召さない、不適切な言葉で書いたりする事も有るかもしれません)、その節は、平にお叱りの言葉(苦言)を言って頂いたり、逆にフォロー、アドバイスをして頂けると幸いです。

一所懸命に努力をしますので、今年もどうかお付き合いをして行って下さい。

さて、新年最初のアルバムは、昨年の続き…余りにもディープで、ノッケからヘヴィーな作品で、恐縮しちゃいますが、「ゴールデン・サークルのオーネット・コールマン」の続き、「vol.2」で行きますよ。

まず、超問題作の、1曲目「スノーフレイクス・アンド・サンシャイン」ですが、この「コールマン」の傑作アルバムが、「問題作」とも言われているのは、偏にこの曲、演奏に他ならないのではないかと思わせるトラックです。
まず、「コールマン」のバルトークを思わせる様な、(おどろおどろしい)ヴァイオリン演奏から、スタートして、この緊張感溢れるヴァイオリン演奏を、乾いた音色で、タイトに演奏する「アイゼンソン」のベースと、変幻自在のクールなドラミングの「モフェット」が見事にアシストをする。
中間では、「コールマン」はトランペット(演奏)も駆使するが、やはりこの曲の面白さは、ヴァイオリンの演奏の方だと思う。
ヴァイオリン演奏自体は、技術的に優れているとは思わないが、「ネオ・ジャズ」を演ろうとしている、スピリットは非常に買いの部分だと思う。
何度も言うが、乾いた緊張感の演奏は、このヴァイオリンと言う楽器演奏ならではのなせる産物だと思う。
とにかく、聴いてみる価値のある、一曲でしょう。

2曲目「モーニング・ソング」…1曲目で、究極の遊び心、実験心を満喫?した「コールマン」が、今度はアルト・サックスで正統的にブロウする曲が、これなんです。
演奏フレーズは、清々しい朝をイメージさせる、伸びやかで健康的な響きで…前曲とは、全く曲調が異なる。
まぁ、バラッド曲と言えば、バラッドと言うカテゴリーに入れても良いぐらい、スタンダードな曲調であり、演奏でもある。
中途では、トライアングルをリズム楽器として使用したりする、前衛的な演奏部分も有るには有るのだが、この曲全体を通じて思うのは、とても魅惑的な、聴き易いベーシックな演奏と解釈できる曲だと言えます。

3曲目「ザ・リドル」…vol.2の中では、「コールマン」が、最もアグレッシヴで、豪快にブロウするナンバーです。
バックでは、特に「モフェット」のクールなドラミングの出来が良く、「コールマン」とのデュオの様な、サックスとドラムのバトル的なやりとりが、最高の聴き所でしょう。
ピアノ・レスの良い部分、ロマンティシズムやセンチメンタリズムを排除した、乾いたクールさが、カッコイイですね。
「コールマン」は、激しい演奏の中に、何か楽しさを見出した様な、不適な笑みが思い浮かぶ演奏です。

ラストの「アンティーク」…フリー演奏ですが、「コールマン」のサックスが良く歌っていて、メロディアスなフレーズが多く、「ロリンズ」のピアノ・レスでの演奏を彷彿させる、好トラックです。
この辺が、フリー系アーティストでも、「コールマン」なら何とか聴ける…と言う方が多い理由かもしれませんね。
サックスと言う楽器の性能を、極限まで導き出した感じがする演奏です。

最後に…フリー・ジャズが怖い方でも、「オーネット・コールマン」なら、聴ける方はいらっしゃると思いますので、是非チャレンジして下さい。

皆さん、今年も宜しくお願い致します。

ついに登場!ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.1&vol.2

2007-12-30 01:14:39 | ジャズ・アルト・サックス
先日から、私のブログ記事の内容につきまして、少しばかり変化がございました。
かなり…と言うか、個人的には、実は多くの方にお奨めしたくは無かった、所謂「フリー・ジャズ」の世界に大きく足を踏み出しまして、聴き易いアルバムをメインに紹介していたブログ記事の内容から、逸脱しまして、かなりマニアックに…そしてアヴァンギャルドな世界に入って来てしまいました。
勿論、ずぅっ~とこの世界に留まるつもりは有りませんが、一ヶ月前とはかなり異なる音楽世界、アルバムの紹介も今後は多くなる事と思います。
閲覧されておられる方々で、私が紹介する(した)メロディアスな音楽が好きな方々には、少しの間、ご迷惑をかけるかも知れませんがお許し下さい。

さて、その様な状況下で、今日は先日このブログを良く閲覧されている方が、ご自身のブログで紹介されていた、「オーネット・コールマン」の最高傑作であろう、「ゴールデン・サークル」での2枚組みアルバムを紹介させて頂きます。
実は、「コールマン」につきましては、先日のアルバムから2連荘になるかと思いますが、彼にはクラシックの素養があり、フリーと言っても、決して五月蝿い演奏、聴き辛い音楽では有りません。
静寂とカオスが微妙に同調した、過激で有りつつも、かなり高尚な音楽とも言えるんです。

ですから、今夜は「コールマン」の過激で且つとても美しい世界にトリップして頂ければ、幸いです。

アルバムタイトル…ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.1&vol.2

パーソネル…リーダー;オーネット・コールマン(as、vl、tp)
      デヴィッド・アイゼンソン(b)
      チャールス・モフェット(ds)

曲目
   vol.1…1.フェイシズ・アンド・プレイシズ、2.ヨーロピアン・エコーズ、3.ディー・ディー、4.ドーン

   vol.2…1.スノーフレイクス・アンド・サンシャイン、2.モーニング・ソング、3.ザ・リドル、4.アンティーク

1965年12月3、4日 録音

原盤…BLUE NOTE 84224、84225  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4224、TOCJ-4225

演奏について…まずは、vol.1から行きましょう。
1曲目「フェイシズ・アンド・プレイシズ」…アナウンサーによって、「コールマン・トリオ」が紹介されて、その後「コールマン」はスタートから、「コールマン」節全開で、全力疾走を始める。
前回の「ジャズ来るべき…」での「ヘイデン」、「ヒギンス」の最強バック、リズム・セクションは、「素晴らしい」の一言で片付けられるぐらい、まじで「素晴らしい」のだが、このアルバムを司る、ユーロ系ミュージシャンの、ベース「アイゼンソン」と、ドラムス「モフェット」の二人のリズム陣も、かなりの高水準のテクニシャンであり、勿論、テクだけでなく、スピリットも「コールマン」の意図を理解して、見事なサポート演奏をなしている。
とにかく、圧倒的なドライヴィング力で、「コールマン」の疾走に併走して、逆に「コールマン」でさえ煽り返しているんです。
この一曲目…「コールマン」がぶいぶい言わせて、二人が走り捲る…例えて言うなら、「コールマン」が元F1ドライバーのチャンピオン、皇帝「シューマッハ」だとするならば、彼等二人が「フェラーリ」と言う事になるでしょう。
「コールマン」の高速コーナリングのドライビングに忠実に手足となって、疾走するF1マシーンのそれなのです。

2曲目「ヨーロピアン・エコーズ」…バッハのフーガ的な、音階をグラデュエーションで展開して行く、古典的な手法ですが、「コールマン」が演ると、古新しいから不思議ですね。
非常にメロディアスで、とても心地良い演奏です。
その後、ベースとドラムスのデュオ演奏で、タイトでアナーキーな無音階のバトルがなされ、しばらくして「コールマン」がまた、グラデュエーション演奏で復活してフィニッシュします。
フリーと言いながら、良く考えられた演奏ですね。

3曲目「ディー・ディー」…この曲は「ロリンズ」のカリプソ?それとも「ナベサダ」のブラジリアン・ミュージック?って思うぐらい、テーマ曲、序奏が、ラテン・フレイヴァーの強いメロディで、陽気な演奏なんです。
でも…リズム自体は全くラテンでは演っていない。
リズムはとても乾いた、8ビートでシンプルに…タイトに…静けさを保って、しかし激しく…これが基本線ですね。
「コールマン」は、とにかく自由に…でも歌謡的で、メロディックなんですよ。
この演り方自体が「フリー」と言う考えなんでしょうね。
演奏内容は、本当にフリーには思えない。
とてもメロディックで、美しいんですよ。
私的には、フリー・ジャズが毛嫌いな方でも、この曲・演奏は、守備範囲内で、アイムOK!って言える演奏だと思います。
是非、聴いて欲しい1曲です。

それから4曲目「ドーン」…この曲も親しめる1曲です。
「アイゼンソン」のドシーンとして、まるで地響きの様なベースに、「モフェット」は、シンバル・メインの静かなサポートによって、「コールマン」が、フリー系のララバイ(子守唄)を歌う様に、サックスを奏でる。
中間では「アイゼンソン」が弓弾きで、彩を副えて、決して聴き易いメロディでは無いんですが、まぁ、妖怪が出てきそうな、おどろおどろしさも有るんですが、非常に静寂の間を意識した、音作り…演奏がされています。
この怖くて、でも美しい、ちょっと物悲しいアドリブ・メロディに、聴いていると思わずはまっちゃう。
「コールマン」って、とても罪深いお人だわ!
でも許しちゃう。

vol.2…これは、さすがに明日にしましょうか?    

先日の続き…ジャズ来るべきもの~オーネット・コールマン

2007-12-29 23:48:38 | ジャズ・アルト・サックス
昨日の続きです。

「オーネット・コールマン」の「ジャズ来るべきもの」から、4曲目「フォーカス・オン・サニティ」から再解説していきましょう。

いきなり妖しげなユニゾンが有ったかと思うと、沈黙に程近いベースのピアニシモが数十秒続く。
この意図は、「コールマン」の指示なのか?それとも天才「ヘイデン」が自発的に演っているのか?
しかし非常に効果が有ると思う。
この後の「コールマン」のシャウト、ブロウを際立たせるのに、必要充分な効果を上げているんです。
この後、「チェリー」が、知的で魅惑的なフレーズを多発し、曲を分析的に抉り取ってくる。
それから「ヒギンズ」のドラム・ソロである。
ガツンとくるパワフルなソロでは無いが、タイトで筋肉質の見栄え良いソロです。

5曲目「コンジニアリティ」…この曲も「ヘイデン」の野太いベースに駆られて、「コールマン」がかなりラテンチックでメロディアスなアドリブフレーズを吹く。
途中なんかは、「チャイコフスキー」のピアノ・コンチェルトもどきのフレーズだったり、物が終わった時ラッパで奏でる曲、「パッパララーのパッパ」???
言葉で書くと分かり辛いなぁのフレーズまで吹いちゃって…この、おっさんユーモア有りすぎ…って思っちゃいますよ。
続く「チェリー」のソロは生真面目そのもの…この辺の余裕は、やはり「コールマン」の勝ちでしょうね。

6曲目「クロノロジー」では、「チェリー」がブリリアントだが、相変わらず分析的な学者肌のアドリブソロを吹いてくれる。
「チェリー」は、フリー系を代表するトランペッター(コルネット)奏者だけれども、決してメチャクチャな吹き方をせず、音階の和声を超えつつも、とても思索された、好ましいフレーズや音調を奏でる男なんです。
「チェリー」と比較すると、同じくフリー系のアーティストの中では、かなり学者的な「コールマン」でさえ、相当フリーキーな演奏に聴こえるから不思議です。
「チェリー」…何とも一筋縄では行かない、アーティストですね。

7曲目はボーナス・トラックの「モンク・アンド・ザ・ナン」ですが、ここでは「コールマン」が、「ヘイデン」と「ヒギンズ」の重厚なバックでサポートを受けて、自由奔放にフレーズを放つ。
「チェリー」も相変わらず、煌くフレーズのソロを放ち、この曲がオリジナル・アルバムから省かれたのが、信じられないくらいに良い演奏になっています。

ラストもCD用のボーナス・トラックなんですが…この演奏は驚愕です。
もしかしたら、このアルバム随一の名演奏かも…。。。
何故なら、この曲…バラードなんですよ!!
でも、そこいらに有る、甘ったるいだけのバラードでは無い…。
音階はやはり、フリーと言う事もあって、モード以上に自由に設定されて演奏していますし、でも「コールマン」と「チェリー」二人のユニゾンや掛け合いは、ちゃんと調整がなされているんです。
このトラックは素晴らしいです。


コールマン衝撃のデビュー作…オーネット・コールマン~ジャズ来るべきもの

2007-12-20 23:15:36 | ジャズ・アルト・サックス
今日もフリー・ジャズ系のアルバム行っちゃいましょう。
アルト・サックス奏者で、フリー・ジャズの旗手の一人であった「オーネット・コールマン」の、アトランティック・レコードのデビュー作品がこれなんです。
「コールマン」のフリー・ジャズは、結構聴き易いので、フリーはちょっと…と言う方にも、比較的すんなり入って行けると思います。
但し、編成はピアノ・レスのツー・ホーン・カルテットと言う珍しい形態なので、その辺が、かなり個性的だと思います。

アルバムタイトル…ジャズ来るべきもの(+2)

パーソネル…リーダー;オーネット・コールマン(as)
      ドン・チェリー(cornet)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.淋しい女、2.インヴェンチュアリー、3.ピース、4.フォーカス・オン・サニティ、5.コンジニアリティー、6.クロノロジー、7.※モンク・アンド・ザ・ナン、8.※ジャスト・フォー・ユー
※…CD only bonus tracks

1959年5月22日 ハリウッドにて録音

原盤…ATLANTIC 1317  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…30XD-1032

演奏について…名曲のオープニング・ナンバー「淋しい女」…「チャーリー・ヘイデン」の野太いベースに引っ張られて、「コールマン」と「チェリー」のコードを敢えてハズシ気味に?吹くユニゾン・テーマから、興味を惹かれる。
ハズシ調子なのだが、「ヘイデン」の重厚なベースと、「ヒギンズ」のこれまたクールで的確なドラミングによって、曲が締って見える。
「コールマン」と「チェリー」の掛け合いは、ハズシ加減が絶妙で、フリーと言いながら、かなり計算された(編曲)演奏に思える。
「コールマン」は、ヴァイオリンを嗜んだり、(アルバムも有るので、いや弾くと言う方が正確だな)して、クラシックの素養を持っているので、かなり和声を重んじるアーティストなんです。
一曲目の曲の崩しの妙を味わって下さい。

2曲目「イヴェンチュアリー」…この曲の「コールマン」は相当ぶっ飛んでいます。
アルト・サックスの嘶き具合が、まるで「ドルフィー」が吹いているかと錯覚を起しそうです。
続く「チェリー」も、この時代のアーティストとしては、かなりやばいぐらいに行っちゃってます。
「ブラウニー」「モーガン」もっと言って「マイルス」の吹くペットとは、かなり違います。
ペットが過激な楽器に変身しています。
二人にインプロビゼーションを堪能して下さい。

3曲目「ピース」…1曲目「淋しい女」と同じように、崩し調子のユニゾンから始まりますが、バックの「ヘイデン」が深海を彷彿させる、重々しいボウイングを演ってくれるんで、この辺りが激スパイスになって、辛ムーチョの演奏になります。
しかし、「コールマン」のアドリブはとてもメロディアスで、聴き易いですし、ピアノレスの編成に、「ロリンズ」の演奏みたいに、ガッツリとマッチする演奏になっています。
「チェリー」のソロも、とても知的で、メロディアスで、一聴するとフリー・ジャズには思えません。
二人のアドリブ演奏がとても魅惑的なトラックで、一言で言えば、so goodな演奏です。
「淋しい女」と双璧の演奏でしょうか?

4曲目以降は、明日書きますね。



キャノンボール・イン・ジャパン~キャノンボール・アダレイ

2007-10-16 22:42:16 | ジャズ・アルト・サックス
今日も名曲、名演の2拍子が揃ったライヴ・アルバムを行っちゃいましょうか?

「キャノンボール・アダレイ・クインテット」が、東京、サンケイ・ホールで興行した時の演奏を収めたアルバムがこれなんです。
まぁ、「キャノンボール・クインテット」の来日と言う事で、演奏している曲は、まんまこのコンボの代表曲ばかりで、実質ベスト盤みたいな物でしょう。
「アダレイ・ブラザース」のベスト・パフォーマンスはもとより、若き日のエレピやシンセでは無く、アコースティックなピアノを奏でる、「ザビヌル」の演奏なんか、とても興味が湧きますよね。

アルバムタイトル…キャノンボール・イン・ジャパン

パーソネル…リーダー;キャノンボール・アダレイ(as)
      ナット・アダレイ(cornet)
      ジョー・ザビヌル(p)
      ヴィクター・ガスキン(b)
      ロイ・マッカーディ(ds)

曲目…1.ワーク・ソング、2.マーシー・マーシー・マーシー、3.ジス・ヒヤー、4.マネイ・イン・ザ・ポケット、5.ザ・スティックス、6.ジャイヴ・サンバ

1966年8月26日 東京サンケイ・ホールにて ライヴ録音

原盤…Capitol 発売…東芝EMI
CD番号…CDP-7-93560-2 (輸入盤)

演奏について…コンボとしての演奏パフォーマンスが高いのは、まず3曲目の「ジス・ヒヤー」…「ボビー・ティモンズ」作曲のファンキーの王道曲ですが、序奏は「アダレイ・ブラザース」のユニゾンから始まって、その後の「キャノンボール」が思い切り良く吹き切るのと、「ナット・アダレイ」のブリリアントなコルネットを活かした快演のアドリブ比べが気持ち良いですね。
それに続く「ザビヌル」も、かなり「ファンキー」なアドリブ・ソロを弾いて、「アダレイ・ブラザース」に見事に同化した演奏をしています。

4曲目「マネー・イン・ポケット」…この曲も「ザビヌル」の作曲だが、変拍子から始まる、完璧なまでものファンキー・チューンです。
ラテン調&ファンキー節のこの演奏は、このグループに敵うバンド(コンボ)は皆無でしょう。
「ナット」がスタートから猛ダッシュを駆けたアドリブをかます。
アドリブの途中でまたまた「ワーク・ソング」の1小節を吹いちゃう所なんかが笑えます。
兄貴「キャノンボール」も、弟に触発されたのか、ぶいぶいアルトを吹き捲り、続く「ザビヌル」のピアノ・ソロ…抜群ですね。
この思索型にお人が、こんなにもファンキーに弾けるなんて…しかし、曲の後半では音を極力排除して、とても間を活かしたアドリブを弾いたりして、この曲にアクセントをつけています。
この辺は学者肌の「ザビヌル」らしい感じがします。
3曲目と並ぶ、ベスト・パフォーマンス演奏です。

そしてエンディング曲の「ジャイヴ・サンバ」…サンバのリズムに乗って、ベース「ガスキン」、ドラムス「マッカーディ」の二人は、フロントの2管の二人、そして「ザビヌル」に比べると幾分地味なアーティストだが、このライブの成功は、偏にこの二人のドライヴィング力から来ていると思程、素晴らしい推進力の演奏をしている。
曲の最後には、この二人のアドリブも有るので、嬉しいですね。
「キャノンボール」…素晴らしいフレーズを連発し、最後の盛り上げに集中力も最高潮に達したかな?
「ナット」は、前半は兄貴に合わせるイメージ演奏だが、ソロに入ってからは、とても輝かしい魅力的なコルネット演奏をする。
「ザビヌル」のラテンチックなアドリブ・ソロもとても魅力的で、ヨーロッパのゲルマン民族らしからぬ、(確かオーストリー出身だよね?)このノリはどこから来てるの?
この曲の演奏は、エンディングに相応しい、パワーと遊び心の両面が良く出された名演奏でしょう。

オープニング曲「ワーク・ソング」は、このコンボの代名詞的な曲で、「キャノンボール」が思い切りバウトしてぶいぶい言わせてます。
ファンキーな持ち味を保持しつつ、非常にフリーキーなトーンのアドリブを連発していて、「キャノンボール」に新たな魅力を発見できるでしょう。
他のメンバーは「キャノンボール」を引き立たせる演奏に従事しています。

2曲目「マーシー~」は、「ジョー・ザビヌル」作曲の名曲ですが、この演奏ではメロディに忠実に、AOR的な大人のブルースが展開されています。
誰でも口ずさめる、このメロディ良いですよねぇ。
但し、ジャズはアドリブ重視と考えると、一寸ポップスすぎるかなぁ、なんて老婆心がでちゃいますね。
「ザビヌル」のピアノをメインにしているので、ベース「ガスキン」とドラムス「マッカーディ」のリズム・セクションの二人も、自己主張を少しばかり見せてくれます。

アート・ペッパー・ウィズ・デューク・ジョーダン・イン・コペンハーゲン1981

2007-10-15 23:42:30 | ジャズ・アルト・サックス
復活した「アート・ペッパー」のヨーロッパでのライヴ・アルバムを聴いて下さい。
名ピアニスト「デューク・ジョーダン」のスペシャル参加も相成って、超ド級の演奏、ライヴ・パフォーマンスに感動を味わって欲しいですね。

変身後のハードな「ペッパー」ですが、時折、若い頃の感性豊かな「閃き」のフレーズも吹いてくれますので、その辺りは一番の聴き所です。

「ジョーダン」のお得意のフレーズ「ジョーダン節」も健在で、ファンには堪らない曲目&演奏でヘヴィーな2枚組ライヴ・アルバムを堪能して頂戴!

アルバムタイトル…アート・ペッパー・ウィズ・デューク・ジョーダン・イン・コペンハーゲン1981

パーソネル…アート・ペッパー(as、cl)
      デューク・ジョーダン(p)
      デヴィッド・ウィリアムス(b)
      カール・バーネット(ds)

曲目…DISC1…1.ブルース・モンマルトル、2.恋とは何でしょう、3.虹の彼方に、4.キャラバン、5.リズム・マ・ニング、6.ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド

   DISC2…1.ベサメムーチョ、2.チェロキー、3.レディオ・ブルース、4.グッド・バイト、5.オール・ザ・シングス・ユー・アー

1981年7月3日 デンマーク コペンハーゲン カフェ・モンマルトルにてライヴ録音

原盤…TOFREC 発売…トイズ・ファクトリー・レコード
CD番号…TFCL-88916/7 2枚組

演奏について…DISC1のオープニング曲は、この地にちなんで付けられたであろう曲目、「ブルース・モンマルトル」で、比較的ライトな感覚のブルース曲で演奏される。
「ペッパー」は、若い頃よりは、幾分渋みと言うか、くすんだ音色になってはいるが、エモーショナルで、煌きを持ったフレーズを随所に吹いて、健在ぶりを見せ付ける。
「ジョーダン」は、「ディス・イズ・ザ・ジョーダン」とも言うべき、「ジョーダン節」を全開して、素晴らしい哀愁を帯びたマイナー調のシングル・トーンを次々と連発!
いつまでも聴いていたい、ピアノ・アドリヴ・ソロです。
それから、ベースの「デヴィッド・ウィリアムス」が、実直ながら太目の音でベースを弾いて、皆を強烈にドライヴしているのは、好感が持てます。
大御所二人を前にして、全くひるむ事が無いし、中途のベース・ソロも「ロン・カーター」ばりで、中々の物ですよ。

2曲目「恋とは何でしょう」…言わずと知れた「コール・ポーター」作曲のスタンダードだが、ここでの「ペッパー」は、急速調でぐいぐいとこの曲を進めて行く。
2曲目と言う事もあり、1曲目よりは、大分遊びと言うか、シャウトする様な激しいフレーズを入れて吹く部分が、「新生ペッパー」らしい所です。
「ペッパー」の、この演奏形態はいつの時代でも賛否両論ですが、「コルトレーン」等、モード~フリー系が好きな人には、充分に理解して頂ける演奏です。
まじ、所々、「コルトレーン」がアルトで演奏している様に思えるぐらい、激しい演奏なんですよ。
「ジョーダン」は良い意味でのワンパターンで、決して自分のスタイルを崩さないで、期待通りにここでも哀愁調のアドリブを弾いてくれます。
この曲では、ドラムス「バーネット」が、派手目のドラム・ソロを対話の様に絡めて、二人の美味しいスパイスになっています。
最後に転調して、ラテンリズムで、フィニッシュして終わるのが、彼等コンボのセンスの良さでしょう。

3曲目「虹の彼方に」も、「ハロルド・アーレン」の書いたスタンダード・バラードで、「ペッパー」は、余り崩す事無く、かなりストレートにテーマを吹いて曲が始まります。
リズム・セクションの3人は、当初バックに徹していますが、その中で、音数を削って、間を取りながらリズムを弾く「ウィリアムス」のベースが聴き物です。
中間からは、「ジョーダン」「ウィリアムス」共、アドリブに入りますが、とても静寂な感覚の演奏で、「ペッパー」のリリシズムを、かなり強調した演奏に仕上げています。

4曲目「キャラバン」…当然の事ながら、ラテン・リズムで始まり、「バーネット」が派手に敲いて、「ウィリアムス」も廻りを鼓舞させる様な、ハードなベースラインを刻むと、「ペッパー」がアドリブの前奏から、いきなり「キャラバン」のメロディ:テーマに演奏を移し、それを聴いて、メンバーの皆も、一気にエキサイト・モードに突入する。
この後は、「ペッパー」は、かなりフリーキーなシャウトを多発し、ベース&ドラムスも全力で疾走し始める。
「ジョーダン」は、合間合間をブロック・コードで、敲きつける様に、音譜(楽譜?)の白い部分をうめていく。
その後も、間を活かしながら、お上品なフレーズをゆっくり弾いたりして、演奏にアクセントをつける所なんざぁ、ベテランがなせる、余裕の表れか?
しかし、この後の「ジョーダン」の、万華鏡の様に千変万化する、美フレーズのアドリブ・シャワーは最高の聴き所です。
まじにすごいです!
更に、続くドラムス「バーネット」の超絶的なドラム・ソロも見事です。
終盤の4人のスーパーバトル、アドリブ合戦は、取分けシャウトに吹き続ける「ペッパー」を筆頭に、このアルバム、ディスク1の頂点の演奏に有る事は間違い無い!

5曲目「リズム・マ・ニング」…4曲目で「ペッパー」は、頑張りすぎて、少し疲れたのか?、この曲では最初はかなり軽めに吹いていたが、やはり途中からは乗って来て、吹き捲って、触発されたのか廻りもすぐさま燃えて来る。
この中年親父は若い頃より、数倍パワーと体力、持久力が有るのとちゃうかい?
「ジョーダン」は、崩し調のアドリブ・フレーズで、「モンク」ワールドをしっかりと聴衆にアピールしてます。

6曲目「ユー・ゴー~」…「ペッパー」の、これぞ大人のバラッドだ!と主張する見事なアルト・サックスを一聴しただけで、胸を討たれる。
原曲のメロディをかなり活かして吹いているが、それでも素晴らしいアドリブ・フレーズを随所に吹いて、リリカルな「ペッパー」も、未だここにいると言う事を、自己主張しているかの様な演奏です。
「ジョーダン」もロマンティックなアドリブ演奏を展開して、「ペッパー」の名演奏に花を副えます。

DISC2の冒頭を飾る、名曲「ベサメ・ムーチョ」…個人的には、このアルバムの白眉と言いたい、超名演です。
「ペッパー」は序奏のアプローチから、アバンギャルドなアドリブを吹いて、「変身ペッパー」を、デンマークの方々にお披露目する。
メロディを吹けば十八番の曲なので、全くお手の物で、ラテン・リズムでバックアップする「バーネット」と「ウィリアムス」の真面目な仕事ぶりも、「ペッパー」を好アシストしている。
この後の「ペッパー」のアドリブが、好フレーズを尽きる事無く生み出して、感動物なのだが、それを受ける「ジョーダン」のピアノ・アドリブも、センチメンタルな哀愁メロディを次々に紡いで行き、二人のイマジネーションの見事さに唖然です。
この辺りのガチンコ勝負は「ベサメ・ムーチョ」大好きなおいらは、もはや失神寸前なぐらいに酔わされて、」KOされている。
終盤には、脇役「ウィリアムス」も重厚なベース・アドリブを見せてくれるし、これが又、最後期の「コルトレーン・クインテット」の「ジミー・ギャリソン」の様なフレーズですし、「バーネット」も最後におかずたっぷりのソロを見せてくれるし、全員が持ち味を出し切った名演奏に拍手喝采です。

2曲目「チェロキー」も「クリフォード・ブラウン」盤よりも、かなり高速のテンポで展開する。
最初から「ペッパー」が高速で、次から次へとアドリブを吹き捲り、「ウィリアムス」も負けじとベースで「ペッパー」に高速で追従する。
「ジョーダン」は、この曲では少しご休憩かな?
余り、ピアノを弾いてないんですよね。
逆にベースとドラムスは、完全に来てますね。
終盤に「バーネット」が、これでもか?と太鼓を敲き捲り、自らを更に高めようと鼓舞しています。

3曲目は「ペッパー」オリジナルの「レディオ・ブルース」なんですが、本日2度目の本格的なブルース演奏では有りますが、正直「ペッパー」の音色にブルースってあんまり合わない気がするね。
やはり。白人であり、音色から南部の香りがしないからなのかなぁ。
「ジョーダン」も黒人なんだが、ヨーロッパ在中が長いからか、あまりブルース向きなピアニストじゃないよね。
何の曲も聴いていない、オープニング曲ぐらいなら、ライトなブルーズも良いとは思うが、これだけ名演奏、好フレーズを聴かされた後での、「ペッパー」の(体質に合わない)ブルースを長時間聴くのはチョイきついね。
唯一、「ウィリアムス」のベース・ソロは、テクも抜群だし、黒い雰囲気を充分に出しているので、それはそれで、評価したいですね。

4曲目「グッド・バイト」では、「ペッパー」が何とクラリネットを吹くんです。
これだけでも、すごい事だよね。
しかし、「ペッパー」…クラリネットの演奏、思ったよりも良いねぇ。
何か若い頃に最大の持ち味だった、叙情性が呼び戻って来た様に思うのは俺だけですか?
クラリネットの木管楽器特有のソフトな音色が、「ペッパー」のリリカルさを全面に押し出すのに一役も二役も買っている事には、全く異論が有りません。
「ジョーダン」は、ハッピィなイメージのアドリブを弾いて、先ほどの「ペッパー」の叙情性を補うアシスト演奏が、本当に上手ですね。
チョコッと、映画「第三の男」のテーマを拝借していたりするのも、お洒落~。。

最後の曲「オール・ザ・シングス~」…「ペッパー」は、最後もスタンダードで纏める気でしょうか?
最後の最後まで、尽きないアドリブ・フレーズを演る所が「ペッパー」の、正にすごい所です。
更に言わせてもらえれば、ここではシャウト系のアドリブ・メロディが少なく、とてもメロディアスなフレーズのアドリブ演奏が多いのも特筆物。
堕ちた天才が、努力と研鑽で、正しく全盛期以上に「復活」した、素晴らしいアーティストの代表者と言えるでしょう。
「ジョーダン」も原曲を損なわない、メロディックなマイナー中心のフレーズを多発して、更にこの演奏のセンスと品を上げてます。
逆に余りにも、品が高すぎて、エンディングの盛り上がりに欠ける気がするのは、老婆心?でしょうか?
しかし、こう言う大人の演奏での〆も、やっぱり有りでしょうね。
いつも最後は、派手に劇的に…って言うのもナンセンスですから…。

今日はまじに長文になりました。
最後まで読んで下さった方、サンクスです。

カフェ・モンマルトルでの壮絶ライヴ…J・マクリーン&D・ゴードン~ザ・ミーティング

2007-09-28 23:40:41 | ジャズ・アルト・サックス
ジャズ界のビッグ・ネーム・サックス奏者、「ジャッキー・マクリーン」と「デクスター・ゴードン」が、コペンハーゲンのモンマルトルで競演した、伝説的なライヴ・アルバムがこれです。

年代に多少差がありこそすれ、二人とも「チャーリー・パーカー」直系のブロー派サックス吹きにカテゴリーとして、入るだろう。

アルバムタイトル…ザ・ミーティング

パーソネル…リーダー;ジャッキー・マクリーン(as)
      デクスター・ゴードン(ts)
      ケニー・ドリュー(p)
      ニールス・ペデルセン(b)
      アレックス・リール(ds)

曲目…1.イントロダクション、2.オール・クリーン、3.リュー・ドゥ・ラ・アルプ、4.コーリン、5.サン・セット、6.オン・ザ・トレイル

1973年7月20日、21日 コペンハーゲン、モンマルトルにてライヴ録音

原盤…Steeple Chase 発売…ビデオ・アーツ・ミュージック
CD番号…VACE-3016

演奏について…冒頭の2曲目「オール・クリーン」から、必聴に値する名演。
「ゴードン」の豪快なテナー、「マクリーン」の切れ味鋭いアルト、バッピシュな「ドリュー」のピアノ、深々とした重厚な低音でソロをぶちかます「ペデルセン」
と、ソロを取る何れのプレイヤーも、聴かせ所を的確に演奏して、期待通りの出来栄えです。

3曲目「リュー・~」…「サハブ・シハブ」が作曲したバップ・ナンバーだが、序奏から「マクリーン節」全開で、「マクリーン」が熱いアルトを吹き切る。
「ケニー・ドリュー・トリオ」たる、バックの3人も、ハード・ドライヴィングで、強烈に「マクリーン」をアシストする。
特にドラムス「リール」の、回転系?ドラムでの推進力は、この演奏のエンジン役を担っている。
後半にアドリブを吹く「ゴードン」は、味わい深い、そして豪快なテナーで「マクリーン」のソロを受ける。
5人が渾然一体となった、ハード・バップ満開の演奏です。

5曲目「サン・セット」は、「ドリュー」のオリジナル曲で、やはり、「ドリュー」らしい、メロディアスなフレーズのバラッド佳曲。
冒頭の「ゴードン」と「マクリーン」のユニゾン&掛け合いから、耳を奪われる。
中途からは、二人のソロが始まって、「マクリーン」は、彼独特の塩辛いトーンで、アドリブをぶいぶい吹き捲る。
センチメンタリズム満載の「ドリュー」の伴奏ソロも、勿論センス抜群で、「マクリーン」を援護する。
後半に出てくる「ゴードン」のアドリブは、余裕と貫禄の、正に大人吹きで、「マクリーン」の演奏を、ガッチリ胸で受け止める。
「リール」のブラッシュ・ワークも、とても真面目な演奏で、好感が持てます。
アルバム中で、最も気に入った1曲です。

6曲目「オン・ザ・トレイル」…クラシック作曲家「グローフェ」の、組曲「グランド・キャニオン」から、通称「山道を行く」と言われている、組曲中での1曲がこれです。
「ドリュー」「ペデルセン」のリズム・セクションに引っ張られて、「マクリーン」「ゴードン」とも、魅力たっぷりのソロを吹いて、アルバムのラストを飾るに相応しい名演奏で盛り上がる。
しかし、この二人のソロ…言葉で言うなら、「渋カッコいい」で決まりかな?

ネオ・トラディショナルって言うのかな?矢野沙織 BEST~ジャズ回帰~

2007-09-09 11:50:26 | ジャズ・アルト・サックス
みなさん、お早うございます。
今日は、ベスト盤で恐縮ですが、(上原ひろみに続いて)又も、日本の元気娘ミュージシャンから、「矢野沙織」を取り上げたいと思います。

私は決して男尊女卑ではないのですが、どうしてもアーティストと言うと、男性ミュージシャンの方が、女性ミュージシャンよりも優れている方が多い様な気がしまして、…実際は女流でアーティストをなさっている方の絶対数が少ないので、有能な方も(絶対数が)少ないだけかもしれないのですが…。
そんな考えもあったのか、「矢野」の今迄出してきたアルバムを買った事がありませんでした。

しかし、2ヶ月前に彼女のベスト盤が出ると聞いて、一度聴いてみたいと思い、発売してすぐに購入に至ったわけなんです。

果たして(聴いた)結果は?
※大感激!とまではいかなかった物の、他のアルバムも聴いてみたいと思わせるレベルには充分有りました。

ただ、やはりルックス、ビジュアル、ファッション・センス、そして若き乙女と言うことで、特をしている所もある様な気も少しばかりは有ります。
ただし、「チャーリー・パーカー」への畏怖と敬愛を持っているジャズスピリットは、尊敬に値しますし「ビ・バップ」を得意の演奏としている所も「買い」と言って良いと思います。
また、オリジナル曲はどれもメロディアスで、もしかすると将来はコンポーザーの方が更に有名になるのでは?っと思いますね。

アルバムタイトル…矢野沙織 BEST~ジャズ回帰~

パーソネル…リーダー;矢野沙織(as)
      ランディ・ブレッカー(tp)
      スライド・ハンプトン(tb)
      エリック・アレキサンダー(ts)
      ハロルド・メイバーン(p)
      レイ・ドラモンド(b)
      ピーター・ベムスタイン(g)
      ジョー・ファムスワース(ds)
                     他 多数

曲目…1.Donna Lee、2.砂とスカート、3.Crazy He Calls Me、4.Rizlla、5.In A Sentimental Mood、6.Manteca、7.I&I、8.Greenism、9.My Ideal、10.How To Make A Pearl、11.Lover Man、12.Tico Tico、13.Open Mind

2007年3月30日 他

原盤…SAVOY 発売…コロムビアミュージックエンタテインメント
CD番号…COZY-263~264

演奏について…夜書きますので、お楽しみに…
さて、オープニング曲で、「矢野」のミュージシャンの原点、「C・パーカー」作曲の「ドナ・リー」良いねぇ。
流石のビバップ大得意少女?だけに、堂の入った音量とセンス有るフレーズをかまして、良い演奏をしている。
バックでは、オルガンの「ドネ」が優れた演奏で、「矢野」を好アシストしています。

2曲目「矢野」作曲の「砂とスカート」…おいらはとてもこの曲&演奏が気に入ったよ。
何回でも聴きたいねぇ。(実際繰り返し聴いているけどね…)
これが前説で言った「矢野」のコンポーザーとしての才能が有ると言った証拠の1曲で、超ハイセンスのボサノヴァリズムで、セクステットのノリも最高潮。
何と言ったって、ピアノはボサノヴァ名人「ハロルド・メイバーン」だ。
後半のアドリブなんか最高潮ですね。
「矢野」ちゃん、このメンバーにも恵まれているよね。
「ベムステイン」のギターも良いし、ベース「リーヴス」、ドラム「ファムスワース」もそれぞれ持ち味を出してる。
勿論、真打、「矢野」のサックスもgoodです。
「矢野」は、「パーカー」に多大な影響を受けたサックス吹きと言うが、彼女はこの曲の様に、ビバップにあまり捉われないで、自由に吹いた方が良いんじゃないかと思う。

3曲目スタンダード「クレイジー~」も素晴らしい演奏です。
ここでも1曲目同様、「矢野」以上にすごいアドリブを奏でて、バリバリに乗っているのが、オルガン「ドネ」と、ギターの「ベムステイン」ですね。
まぁ、色眼鏡的な見方を少しだけさせて頂くと、「可愛い子ちゃん」を目の前にして、「おじさん」達が実力をガッツリ見せちゃったってな感じなんだろうか?
しかし、「矢野」の適度に甘い音色で奏でるバラッドは悪くは無い。
彼女の数多ある才能の一つでしょう。

4曲目「リジラ」…これも「矢野」のオリジナル曲だが、ここで「矢野」は「パーカー」そっくりな音&フレーズでアドリブを演る。
当たり前だが、音量はパワー不足なものの、アドリブセンスは悪くない。
ここでも「メイバーン」おじさんが、可憐なまごの前で、頑張っちゃってます。
テナーバトルをイメージさせる、「矢野」と絡む「アレクサンダー」の出来栄えも良いです。

5曲目「エリントン」ナンバーの「イン・ア~」だが、この曲にはどうしても例の超名演(超名盤)が有るので、その演奏が耳に残っていて、ゴメンナサイって言う感じです。
しかし、この「コルトレーン&エリントン」の神の演奏をひとまず置いておけば、「矢野」の演奏も好演と言えるでしょう。
この邦人、ワンホーンカルテットのセンスは良いと思う。
各人が「矢野」の魅力を出すために、バックサポートに徹していて、しかしピアノの「今泉」はお洒落なフレーズが多いし、ベース「カミムラ」も渋いボウイングなんかも演ってくれます。
そして、ブラッシュ・ワークで終始通す「オサカ」も流石の貫禄。

6曲目「マンテカ」…比較的大人数のコンボ演奏で、ユニゾン演奏が主になるが、私は結構この編曲は好きですね。
5曲目の様に「今泉」のピアノは素敵だし、「ムーディ」のフルート、「ブレッカー」のトランペットなども、この曲を素敵に彩っている。
さて、肝心の「矢野」のアルトだが、こう言った一人で吹き続けずに、チョイ・アドリブで演奏するシチュエーションってのは、非常に彼女に合っている気がしますし、上手ですね。
一言で言うと、遊び心と寛ぎに溢れたハイセンス・ナンバーです。

7曲目「I&I」は、某CMで使用されている、耳慣れた佳曲ですが、流石に「矢野」は吹き慣れていて、好フレーズを連発して、バックメンバーもハイテンポでグングン突き進む。
正に「パーカー」を彷彿させる、エキサイティングな演奏です。

9曲目「マイ・アイディアル」…この曲は当然の事ながら、「K・ドーハム」の名演があるのだが、ペットでは無く、アルトで演るのも悪くない、いや合うなぁ。
ここで「矢野」は甘すぎないが、情感を込めて非常にバランスの良いアルトアドリブを吹き通す。
何度も言ってすみませんが、やはり「パーカー」を意識しすぎないで、今後は「矢野」独自の世界を、もっともっと追求していくと良いのでは?と再認識します。

ラテン掛かった急速調の10曲目「ハウ・トゥ~」も「矢野」のオリジナル曲で、ここでは「矢野」の「パーカー」調のアルトは良いねぇ。
オリジナルの場合、他に比べる物も無いので、かつての耳馴染みの名演が頭に無いので、「矢野」が「似非パーカー」を吹いても、彼女の個性として気になることもなく、真の実力として評価して良いと思う。

11曲目「ラヴァー・マン」も「パーカー」直系(縁)の曲だが、「矢野」は充分に、自分の曲として、こなしていて好感が持てる。
しかし、この曲でも「メイバーン」の名伴奏が、よりいっそう「矢野」のアルトを極立たせている。
勿論、とてもロマンティックなアドリブ、ソロも聴き物で、私から見ると、実は「メイバーン」が主役を喰っちゃてる気がする。

12曲目「ティコ・ティコ」は、ラテンの名曲だが、この曲は「矢野」に合うと思う。
と。言うのも「パーカー」はラテンを非常に得意にしていて、大好きだった。
ラテンは、先輩「ナベサダ」も十八番だが、アルトにパワー演奏を必要としていないので、ヤング「ペッパー」も、リリカル&ナイーヴな演奏で、得意にしていた。
「矢野」も演奏で言えば、ビバップをやりつつ、こう言うライトな演奏を突き詰めたら、もっと良い物が作れそうに思う。
それから、またまた「ドネ」がぶっ飛びオルガンを弾くのもgood。
それ以上に、終盤の「ファムスワース」のドラム・ソロは、この曲最大の聴き所です。

終曲「オープン・マインド」は、テレビ朝日のニュース・ステーションの曲でおなじみです。
皆さん、是非センス抜群の演奏に聴き入りましょう。

「矢野沙織」…今後も大きな期待が持てるアーティストなのは、間違い無いですが、「パーカー」他には、多かれ少なかれ、「人種差別」としての問題を悲しいかな演奏にも抱え込んでいたと私は思います。
また、その不遇から麻薬や酒に溺れた日々を過ごしてしまったのでしょう。
※「ミンガス」も「マイルス」も「コルトレーン」も多分そうだと思います。
ですから、彼等のアドリブフレーズの素晴らしさには、切なさ、情感を含めて、彼等が一生懸命生きてきた証として、血と汗と涙が眼で見えずとも、どっぷりと沁みついています。
彼等の演奏(音)(フレーズ)から、オーラをびんびんに発しています。
その時代背景を持たずに、生きる苦労とはおよそ縁遠かった彼女には、彼等の演奏を継承するのは、度台無理が有ると思います。
ですから、「矢野沙織」には、もっと現代に生きているレディースアルティストとして、ビバップの追求みたいな物は不必要ではないかと個人的には思います。
彼女には彼女らしい、個性を磨いて欲しいと願っています。


アイク・ケベックの送るブラック・フィーリングが香るボッサ・アルバム…ボサ・ノヴァ・ソウル・サンバ

2007-09-07 23:35:37 | ジャズ・アルト・サックス
昨日はものすごい台風で、ブログを書く所じゃなかったです。
それと、私の「バトン」いかがだったでしょうか?
あまり「大喜利」にはなっていなかった気がしますし、次の方への「バトン」のお題目「アンドレ・プレヴィン」が一寸、狭義すぎて失敗に終わったかも?って事が残念です。
しかし、これに懲りずに、またこの様な機会があったら、再チャレンジするかもしれません。
その時も宜しくお願いします。

さて、今日も飛び切りご機嫌な「ジャズ・ボッサ」アルバムを紹介しちゃいます。
ブルーノートが生んだ、渋いが愛すべきテナー・マン、「アイク・ケベック」が残した好アルバムです。

アルバムタイトル…ボサ・ノヴァ・ソウル・サンバ

パーソネル…リーダー;アイク・ケベック(ts)
      ケニー・バレル(g)
      ウェンデル・マーシャル(b)
      ウィリー・ボボ(ds)
      ガーヴィン・マッソー(chekere)

曲目…1.ロイエ、2.ロロ・トゥ・デスペディーダ、3.家路、4.ミー・ン・ユー、5.愛の夢、6.シュ・シュ、7.ブルー・サンバ、8.ファヴァーラ、9.リンダ・フロール

1962年11月5日

原盤…BLUE NOTE 発売…東芝EMI

CD番号…TOCJ-4114

演奏について…超お薦め曲は、このアルバムでナンバー1人気のオープニング曲「ロイエ」で決まり。
「バレル」が作曲した哀愁タップリの昭和歌謡的なメロディは、ボッサ・リズムに乗って、軽快にそして艶やかに「ケベック」が吹き通す。
強く吹き過ぎず、余裕を持たせた哀愁テナーに「ケベック」の男を見る。
支えるバックのリズムは、ソフトな雰囲気でとても良い味だしてる。
当然、作曲者「バレル」もロマンティックなトーンで、憂いのフレーズを弾いて、聴き所が満載です。
唯一難を言えば、まじに良い曲なのに、演奏時間が短すぎ…この(3分チョット)倍ぐらいは聴いていたいなぁ。

3曲目…一昨日書いた「クラシック」の好きな…の、お題に選んだ、「ドヴォルザーク」の交響曲第9番の第2楽章が、この曲「家路」ですが、これを選んだセンスが良いよねぇ。
クラシック曲をジャズ風に演じたって感じじゃなくて、まじめにジャズ(サンバ)になっていて、郷愁を誘う「ケベック」の啜る様なテナーに酔わされそうです。

4曲目「ミー・ン・ユー」は「ケベック」作曲の佳曲。
この曲も「ケベック」の哀愁が満ち溢れた、渾身のフレーズ盛り沢山の名演です。
「バレル」が完全にブラックいや、ブルーズに徹した黒い演奏も魅力たっぷり。
「マーシャル」「ボボ」「マッソー」出しゃばらない、控えめにバック&リズムに徹した演奏も◎です。

7曲目「ブルー・サンバ」…この曲こそ「ケベック」がこのアルバムのコンセプトで、正に言わんとしていた答えだろう。
1962年と言う、ボサ・ノヴァ隆盛期に、単なるコマーシャリズムではなく、いかにもブルーノートらしい、「ブルース」とのコラボが出来ないかと、考えた末に出た答え(曲)がこれなんだ。
「ケベック」の艶やかさと哀愁の混在した大人のテナーに、ブルース・フィーリング・ナンバー1の「バレル」のギターが良く絡み合う。
ここでもバック・リズム陣は、脇役に徹しまくる。

8曲目「ファヴァーラ」…マイナー佳曲大好きなおいらには、もう最初のフレーズが流れただけで、夢見心地になる良い曲だ。
「ケベック」…泣かせやがって、酔わせやがって、この野郎~。。
次いで「バレル」が…こいつも泣かせるフレーズを弾きまくりやがる…。
こつら二人、すすり泣きが上手な、…いや、泣かせ上手の大名優だ!!
いつまでも曲よ続いておくれと願ったけど、この曲も4分で終わっちゃった。
非常に残念!!もっと聴きたい~!!

9曲目「リンダ・フロール」は、エンディングをあえて、明るく楽しく好印象を残して終わらせる意図があるのか?とてもライトな曲調。
そして、この紹介した曲以外でも、とても聴き易く、しかしブルースのフィーリングもスパイスとして、効かされているので、最初から最後まで飽きずに楽しめます。
このアルバムを聴いて、台風一過の後の、このじめじめした天気を忘れましょう。