紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ファンキー&ソウルフル…ドナルド・バード~ブラック・バード

2008-02-24 16:37:48 | フュージョン
今日は、60年代ブルー・ノートでの演奏からは想像できない程、(この時代、70年代初期に)感化された「ドナルド・バード」の、代表的なフュージョン演奏を収めたアルバムを紹介しましょう。

ファンキーで、ソウルフルで、ちょっぴりロック・テイストも加わって、所謂ブラック・ファンク・ミュージックの最たる姿なのですが、たまには純粋なアコースティック・ジャズとは違う、こう言うアルバム&演奏を紹介しても良いのかな?と思いつつ…行っちゃいましょうね!

※(独り言)アコースティック楽器演奏命の昔の私なら、こう言ったアルバム、多分紹介してねぇだろうなぁ。
多分…今なら「電気マイルス」も紹介できそうや!!

アルバムタイトル…ブラック・バード

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp、flh、vo)
      フォンス・マイゼル(tp、vo)
      ジョー・サンプル(p、el-p)
      ウィルトン・フェルダー(el-p)
      ハーヴィ・メイソン(ds)
      ラリー・マイゼル(vo、arr)
      ロジャー・グレン(fl、a-fl、saxes)
      ディーン・パークス(g)
      フレッド・ペレン(el-p、synth、vo)
      他

曲目…1.フライト・タイム、2.ブラック・バード、ラヴズ・ソー・ファー・アウェイ、4.Mr.トーマス、5.スカイ・ハイ、6.スロップ・ジャー・ブルース、7.ホエア・アー・ウィ・ゴーイング

1972年4月3、4日、11月24日録音

原盤…BLUE NOTE BN-LA047-F  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6706

演奏について…オープニング曲「フライト・タイム」…ジェット機の爆音から曲が始まるが、「メイソン」のカッツリと締ったドラミングと、「ジョー・サンプル」の軽やかで、跳ねる様なシングル・トーンのピアノ演奏が、カリフォルニアの乾いた風の様な、サッパリとした心地良さを序盤からイメージ付ける。
中盤では「バード」のトランペットと「グレン」のフルートのホーン部と、ギターの「バークス」、エレクトリック・ベースの「フェルダー」を軸にした弦楽器?とのバトル風のやり取りが面白い。
特にベース「フェルダー」の重厚で、ハードなベース演奏は、この曲でのMVPだと思わせる。
ファンキー&グルーヴで、全員熱く燃えている曲です。

2曲目「ブラック・バード」…アルバムタイトル曲で、ヴォーカル入りのブラック・ファンク・ミュージックです。
エレピ、シンセ、そして「パークス」のカッティング・ギターがファンキーさをビンビンに醸し出し、「バード」のエレクトリック・トランペットが、更に曲にファンクさを増させる。
ここでも、「メイソン」と「フェルダー」のドラムとエレキ・ベースのグルーヴィング力が抜群で、リオのカーニヴァルの様に、熱気と歓喜に満ち溢れた世界を表現している。
このファンキーさとグルーヴ感覚に身を預けて下さい。

3曲目「ラヴズ・ソー・ファー・アウェイ」…個人的にはこのアルバム中、一番気に入ったトラックです。
何と言ってもカッコイイ!!まじでカッコイイ!!!
ボンゴで引っ張るラテン・リズムに乗って、「グレン」のフルートと「バード」のトランペットが幻想的な風景を描き出して、夜空を飛び回る鳥?(鳥は夜、飛べないからこうもりかな?)みたいに華麗に飛翔する。
「ハーヴィ・メイソン」のハイ・ハットとスネア・ドラムがビシビシ決まり捲り、「フェルダー」のエレキ・ベースがこれでもかと加速し、「パークス」のギターが切れ捲る…ハードでファンキーで、最高のグルーヴ感を出し捲るリズム・セクションが余りにもカッコよすぎ!!
これぞ男のフュージョンだぜ!軟派と半端には聴けない代物ですよ。

4曲目「Mr.トーマス」…非常にダンサブルで、全員が渾然一体となったファンキーなナンバーです。
今のクラブじゃなくて、昔のディスコでかけたら人気が出そうだね。
当時、多分かかっていたんだろうなぁ?
「バード」の演奏は自らを出すと言うより、「ラリー・マイゼル」のアレンジメントに則って、メンバーとの一体化を主眼に置いている。
ここでも当然、「メイソン」の切れ味抜群の、日本刀の様なドラムは冴えていますし、エレピやシンセの演奏も、ホーンや「パークス」等のギター等を繋ぐ鎹の役目をバッチリ果たしていて…good jobです。

5曲目「スカイ・ハイ」…「バード」と「グレン」のトランペットとフルートのユニゾン演奏が心地良い、ドライヴ・サウンドになっています。
当時、かなり人気が出たトラックとの事なんですが、サウンドがきれいで、とても良くまとまっていて…いや、まとまり過ぎて私には物足りないなぁ。
70年代のフュージョン・サウンド全盛期の聴者には、ど真中のストライクだったんだろうけど…コマーシャリズム臭さが鼻に付く感じだな。
何か褒めてなくてすみません。
でも良い部分も沢山ありますよ。
特に「バード」の演奏は、尖ってはいないが、朗々と伸びやかに吹き切っていて、出来が良くて…とても好感が持てます。

7曲目「ホエア・アー・ウィ・ゴーイング」…導入のアコースティック・ピアノの美しさがとても印象的で、装飾的に曲を色付けして行く「バード」のサイド・アタック(トランペット演奏)が、カラフルで素敵です。
私的には、3曲目「ラヴズ・ソー~」と準拠してお気に入りの演奏になりました。
パーカッションのノリも良いし、「バークス」のギターも切れ味抜群で、ドラムの「メイソン」との、このリズム・セクションがメチャ曲の推進力に貢献しています。
バックのヴォーカル・サウンドと「バード」のトランペットが、素晴らしい融合を見せてくれます。
かなり、高尚なフュージョン演奏ですよ。

レゲエっぽい感じの6曲目「スロップ・ジャー・ブルース」…ファンキー&グルーヴィで、ガッツガツに進行して行き、特に「ハーヴィ・メイソン」のドラムスの切れが行けてます。
「バード」のトランペットと「グレン」のフルートが、ヴォーカルと並行的に進行して行って…例えが難しいかもしれないが、目的地が全く同じで、電車と自動車が同時に走っている感じなんですよね。
交わりそうで交わらないんだけど…仲は悪くない感じなんです。

アルバム作品中、最もジャジーなコンセプトの傑作盤…サンタナ~キャラバンサライ

2008-01-19 15:12:04 | フュージョン
まず、最初に…今日は、「サンタナ」のアルバムで行くんですが、このアルバムのカテゴリーを、ラテン・インストゥルメンタルに入れるのを止めました。
最も「サンタナ」のサウンド自体が、ロック、ラテン、ワールド・ミュージック、フュージョン(ジャズ)の多岐に跨っているので、偏に一つのカテゴリーに入れるのが、最初から難しいグループなのは分り切った事ですが、特にこのアルバムは、ジャズ色が濃く、もしもカテゴリーを一つに決めなければならないのならば、私は「フュージョン」にしたいと思い、決めました。
※異論の有る方、ごめんなさい。

それから、このアルバムは、「サンタナ」の傑作であり、且つ問題作でもあります。
何故なら、ラテン・ポップの最高峰だったこのバンドの方向性を変える、言うなれば、過渡期に制作された事もあって、メンバーがアルバム制作途中で変わっているんです。
ですから、今日はパーソネル表記もいつもと変えておきます。(各曲について記入しておきます。)

それでは詳細に行きましょう。

アルバムタイトル…キャラバンサライ

曲目…1.復活した永遠のキャラバン
   Authors:Mike Shrieve;Neal Schon;Tom Rutley 
   Sax:Hadley Caliman
   Guitar:Neal Schon
   AcoーBass:Tom Rutley 
   Piano:Wendy Haas
   Perc:James Mingo Lewis;Calros Santana
   Drums:Mike Shrieve
   録音…1972年4月20日

2.躍動
  Authors:Douglas Rauch;Gregg Rolie
  L-Guitar:Calros Santana
  Guitar:Douglas Rauch;Douglas Rodrigues
  Bass:Douglas Rauch
  Organ:Gregg Rolie
  Timbales:Chepito Areas
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年4月10日
    
3.宇宙への仰視
  Authors:Calros Santana;Douglas Rauch;Gregg Rolie
  L-Guitar:Calros Santana
  Guitar:Douglas Rauch;Neal Schon
  Bass:Douglas Rauch
  Organ:Gregg Rolie
  Timbales:Jose Chepito Areas
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年2月22日

4.栄光への夜明け
  Authors:Mike Shrieve;Calros Santana;Gregg Rolie
  L-Guitar:Calros Santana
  Guitar:Neal Schon
  Bass:Douglas Rauch
  Organ:Gregg Rolie
  Timbales:Jose Chepito Areas
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年2月21日

5.風は歌う
  Authors:Gregg Rolie;Calros Santana;Neal Schon
  Guitar:Carlos Santana;Neal Schon
  Bass:Douglas Rauch
  Organ:Gregg Rolie
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年5月5日

6.宇宙への歓喜
  Authors:Calros Santana;Neal Schon
  Vocal:Calros Santana;James Mingo Lewis;Rico Reyes
  Guitar:Carlos Santana;Neal Schon
  Bass:Douglas Rauch
  Organ&Piano:Gregg Rolie
  AcoーBass:Tom Rutley 
  Timbales:Jose Chepito Areas
  Castanets:Lenny White
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年4月6日

7.フューチュア・プリミティヴ(融合)
  Authors:Jose Chepito Areas;James Mingo Lewis
  Congas:Jose Chepito Areas;James Mingo Lewis
  Bongos:James Mingo Lewis
  Timbales:Jose Chepito Areas
  Additional music by Mike Shrieve
  録音…1972年2月23日

8.ストーン・フラワー
  Authors:Antonio Carlos Jobim
  Words by:Mike Shrieve;Calros Santana
  L-Guitar:Calros Santana
  Guitar:Neal Schon
  AcoーBass:Tom Rutley 
  Piano:Wendy Haas
  Congas:James Mingo Lewis
  Bongos:Jose Chepito AreasJames 
  Drums:Mike Shrieve
  Perc:Carlos Santana;Armando Peraza;James Mingo Lewis
  録音…1972年4月4日

9.リズムの架け橋
  Authors:James Mingo Lewis
  L-Guitar:Calros Santana
  Guitar:Neal Schon
  AcoーBass:Tom Rutley
  Organ:Gregg Rolie
  AcoーPiano:James Mingo Lewis
  Elec-Piano:Tom Coster
  Timbales:Jose Chepito Areas
  Bongos:Amando Peraza
  Congas&Perc:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  録音…1972年3月1日

10.果てしなき道
  Authors:Mike Shrieve
  Guitar:Carlos Santana;Neal Schon
  AcoーBass:Tom Rutley 
  Organ:Gregg Rolie
  Congas:James Mingo Lewis
  Drums:Mike Shrieve
  Orchestra arranged by Tom Harrel
  録音…1972年3月1日

原盤…米コロムビア  発売…ソニー・ミュージック
CD番号…MHCP-2028

演奏について…1曲目「復活した永遠なるキャラバン」…鳥の鳴き声から序奏が始まり、「キャリマン」の透明的な質感のサックス音が、まるで、早朝(朝日)の到来を告げているかの様。
「トム・ルーリー」のアコースティック・ベースは、察するに、キャラバン隊のラクダの足音か…。
重低音が、一歩一歩、大地を踏みしめて歩いて行く様に感じる。
そして、最高の聴き所は「ニール・ショーン」のカッティング・ギターが幻想的な風景を美しく表現している。

2曲目「躍動」…早速「サンタナ」のリード・ギターが炸裂し、中間部では伸びやかな高音を軸に、激しい気流の様な演奏をしてくれます。
又、パーカッション群(特筆物は「ミンゴ・ルイス」のコンガ演奏が最高!)と、「グレッグ・ローリー」のオルガンが、混然一体の音となって、マッシブな重厚感と躍動感を表現する。

3曲目「宇宙への仰視」…「ロウチ」と「ショーン」のツイン・サイド・ギターが「サンタナ」のリード・ギターとも融合されて、迫力のトリプル・ギターとなって、血の滾るパーカッションの嵐と共に宇宙空間へとトリップさせられる。
他では、ここでもオルガン「ローリー」のハードなプレイも聴き所です。

4曲目「栄光への夜明け」…コンガの「ミンゴ・ルイス」が皆をファイトさせるが如く、ビート・パワー全開で煽り捲ります。
曲は、「サンタナ」のヴォーカルもフューチャーされて、超絶技巧のギターと共に夜明けを告げる。

5曲目「風は歌う」…ここでの風は「グレッグ・ローリー」のオルガンと「サンタナ」のギターが、吹き付ける様子を表現していて、まじに良く歌うギター(風)です。
「ロウチ」のドライブ感覚溢れる、エレクトリック・ベースと、「マイケル・シュリーヴ」のドラムス、そしてまたまた「ミンゴ・ルイス」の燃えるコンガが、「サンタナ」の歌(演奏)を強固にアシストします。

6曲目「宇宙への歓喜」…ズバリ、このアルバムでのベスト演奏でしょう。
序奏は全員で、ユニゾン風に始めて、まるで音の洪水の様に圧倒的な迫力で聴衆を引きこむ。
その後、フラメンコ風なテーマに変わったかと思うと、軽快な「サンタナ」のヴォーカルが融合されて、非常に変化に富んだ曲である。
この辺のアプローチと編曲は、当時一番旬な音楽であったプログレに影響を受けているのかなぁ?
終盤は「サンタナ」のリード・ギターの独壇場かと思いきや、「ロウチ」のパワフル・ベース、ぶっ飛んでる「ローリー」のオルガン、そして千手観音の様に、ドラムを敲き捲る「シュリーヴ」と役者が勢ぞろいして、演奏はクライマックスとなる。

7曲目「フューチュア・プリミティヴ」…非常に静かで、天の声の様な序奏から、アフロ・リズムが出捲りの「アレス」のコンガと「ミンゴ・ルイス」のボンゴが不可思議な空間を想像する。

8曲目「ストーン・フラワー」…序盤は「ルーリー」のアコースティック・ベースによって、とてもジャジーな曲調で始まる。
その後、「ローリー」のオルガン伴奏?で、「シュリーヴ」と「サンタナ」がヴォーカルで飾り付ける。
この辺の優雅なラテン・ロック演奏は、正しく「サンタナ」と言うグループの十八番で、「サンタナ」本人のグルーヴィなギターと「ハース」のエレクトリック・ピアノのデュオ調の絡み合いが、とてもお洒落な感じです。

9曲目「リズムの架け橋」は、個人的に大好きなナンバーです。
ここでは、単調な演奏なんだけど「ミンゴ・ルイス」のアコースティック・ピアノが、ラテン曲臭さをぷんぷんに放って、「ペラザ」のボンゴのノリも最高潮で、皆のラテンの血が燃え滾るんです。
終盤のエレピ「トム・コスター」の名演も、曲に彩をそえてくれて、聴き所の一つです。

ラストの「果てしなき道」…まず、「サンタナ」と「ショーン」のギター・バトルが気持ち良い~!!
パーカション系では、ティンバレスを奏でる「ホセ・チェピート・アレアス」もgoodな演奏ですし、それ以上に特筆演奏は、ラスト曲で燃えに燃える、「ミンゴ・ルイス」のファイアー・コンガで、まるで敲いている掌から、煙が出ているようです。(笑)
燃えてます。爆走しています。速いです。乗ってます。まるで機関車です。
勿論、リーダーの「サンタナ」は、最後の力を振り絞って?ギターで叫びます。
素晴らしいアルバムの完成です。

飛切りポップなフュージョン…ジョージ・ベンソン~ブリージン

2007-09-22 23:55:55 | フュージョン
デビュー時は、我が愛するジャズ・ギタリスト、「ウェス・モンゴメリー」の後継者として、ジャズ界に新星として華々しく出てたのが、今日紹介の「ジョージ・ベンソン」です。

しかしながら、60年代末にジャズ界に出てきたミュージシャンの多くは、ロック&ポップ・チューンに、「マイルス」が多大な影響を与えた事から、「コルトレーン」に傾倒し、或いは「セシル・テイラー」や「オーネット・コールマン」を追従した、若きミュージシャン達、つまり「フリー・ジャズ」を追求していった者達以外は、よりポピュラーな世界へと、鞍替えして行きました。

そのポップミュージックへと移った多くのミュージシャンの代表が、この「ジョージ・ベンソン」であり、他には「アース・ウィンド&ファイヤー」の「モーリス・ホワイト」等、後のビッグ・ネームが、所謂「ブラック・コンテンポラリー」と言うジャンルに属する音楽の礎を作って行ったのです。

ところで、この「ジョージ・ベンソン」のアルバムは、「ブラコン」の開祖としてのポップさだけでなく、ジャズ畑の一流ギタリストとしてのテク&ソウルも充分に堪能できる名盤に仕上がっています。

アルバムタイトル…ブリージン

パーソネル…ジョージ・ベンソン(g、vo)
      フィル・アップチャーチ(rhy-g)
      ロニー・フォスター(el-p)
      ジョージ・ダルト(p)
      スタンリー・バンクス(b)
      ハーヴィ・メイソン(ds)
      ラルフ・マクドナルド(perc)

曲目…1.ブリージン、2.マスカレード、3.シックス・トゥ・フォー、4.私の主張、5.これが愛なの?、6.愛するレディ

1976年1月6、7、8日 ハリウッド・キャピタル・レコードにて録音

原盤…ワーナー・ブラザース 発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…20P2-2061

演奏について…このアルバムを最も有名にしたトラックは、何と言っても「ベンソン」のギターとヴォーカルをフューチャーした、2曲目「マスカレード」である。
自らのギターとアコースティック・ピアノの伴奏から始まる序奏で、「ベンソン」は抜群にかっこいいスキャットでかっ飛ばす。
その後メロディを歌うと、実に歌が上手い。
しかし、黒人歌手ってなんで、皆こんなに良い声をしてるのかねぇ。
「ベンソン」の声だけど、やや低音(バリトン)になった「ライオネル・リッチー」って言えば分かり易いかな?
中間からは、またまたスキャットしながら、本家のギターでもぶいぶい言わせる。
その後アドリブソロを見せるピアノ「ダルト」の華麗な演奏もgoodです。
この曲について判定すると、「カーペンターズ」とも引き分けの好勝負です。

表題曲である1曲目「ブリージン」の出来もすこぶる良く、この曲は様々な音楽や映画などの媒体で、誰でも聴いた事が一度はあるはずです。
ここでは、「フィルアップチャーチ」が、サイドギターとして、見事に「ベンソン」のソロ・ギターを支える、素晴らしい演奏をしている。
都会的なハイセンスの中に、チョットエキゾティックな香りがして、澄んだ秋空の様な気持ち良いサウンドです。

アルバム唯一の「ベンソン」のオリジナル曲である5曲目、「これが愛なの?」では、流石「ウェス」の後継者と言われた事があると、思わず納得のスゴテクギターを「ベンソン」がかき鳴らす。
「ベンソン」と対比するかの様に伴奏をつける「ロニー・フォスター」のエレクトリック・ピアノも名演です。
しかし、「ベンソン」が、高音を弾いている時、ふと「ウェス」の面影がよぎるのには、背筋がゾクっとします。(音色が似てるんですよ。)

4曲目「私の主張」…良いねぇ。好きだ。大好きな曲だ。
パーカッシブなラテンのリズムに乗って、「ベンソン」が幾分暗めの音色で、哀愁を帯びた名フレーズのソロを弾く。
バックのストリングスも嘗ての「ウェス」の後期諸作を彷彿させて、感涙物。
中途からは、メジャーコードになって、各人がそれぞれ楽しく皆を煽り合い、「フォスター」のエレピが全く負けちゃいない。
後半は全員の気合が、見事に一本に集結しつつフィニッシュとなる。

「ロニー・フォスター」が書いたエンディングの「愛するレディ」…とてもロマンティックな曲で、ドライブのBGMには持って来いの軽快なサウンドです。
「フォスター」、「ベンソン」ともとても寛いだ演奏で、聴き手をハッピーにしてくれます。
「マクドナルド」の的を射たパーカッションも良い味を出してるよ。

3曲目「シックス~」は「フィルアップチャーチ」が書いたアップテンポでファンキーなポップナンバー。
80年代以降主流をなした、ドライヴィング・サウンド、フュージョンの原型の様な軽やかで、ハイセンスな佳曲です。
この中では、ドラムスの「メイソン」が、印象に残る良い演奏です。

70年代を代表する、マッコイ・タイナーの名盤、最も極上のフュージョンだ!

2007-06-18 23:58:33 | フュージョン
今日は、非常にアコースティックで、色彩豊かな極上のフュージョンアルバムを紹介しましょう。
この盤は70年代を代表し、且つコルトレーン・サウンドから卒業した?「マッコイ・タイナー」の素晴らしきリーダーアルバムです。
フュージョンと言っても、コマーシャリズムに染まった企画、演奏とは一線を画し、アコースティック好きな、硬派のジャズ好きにも充分満足をして頂ける内容だと思います。
メンバーも下記の通り、70年代に考えうる、最強ラインナップですので、是非、ご一聴をお薦め致します。

アルバムタイトル…フライ・ウィズ・ザ・ウィンド

パーソネル…リーダー;マッコイ・タイナー(p)
      ヒューバート・ローズ(fl、afl)
      ポール・レンツィ(piccolo、fl)
      ロン・カーター(b)
      ビリー・コブハム(ds)
      レイモンド・ダステ(oboe)
      リンダ・ウッド(harp)
      ギレツミ・フランコ(tamb)
      ウィリアム・フィッシャー(arr、cond)
      ウィズ・ストリングス

曲目…1.フライ・ウィズ・ザ・ウィンド、2.サルヴァドーレ・デ・サンバ、3.ビヨンド・ザ・サン、4.ユー・ステップト・アウト・オブ・ア・ドリーム、5.ローレム

1976年1月19日~21日 バークレー録音

演奏(曲)について…まず、LPで言ったらA面2曲がまじにすごい出来です。
アルバム企画コンセプトは、完全にトップ・ヘヴィーな出来栄えです。
しかし、私はB面に配置された曲も非常に良い出来で、実は捨てがたい。

表題曲「フライ~」は、クラシックの管弦楽曲を思わせるイントロから、すぐさま激変して、この強固なメンバーの演奏が一気に爆発する。
ピアノ・トリオ「マッコイ、カーター、コブハム」の各メンバーを煽る推進力&ドライヴィングは半端ではなく、とにかく鼓舞しまくる。
特に「カーター」と「コブハム」は何かにとり付かれていると思える程、普段では想像出来ない様な、パワー演奏で押し捲る。
最後まで突き進む「完全一致」の演奏は、本当に素晴らしい。

2曲目「サルヴァドーレ~」は、表題曲以上に素晴らしい出来栄えで、このアルバムのベスト1だろう。
とくに、モーダルで、ラテンチックな美しいソロを弾く「マッコイ」に、アーバナイズされた締まったドラムで推進する「コブハム」、そしてここでの主役は、ずばりベーシストの「カーター」である。
彼にしては、珍しいぐらい野太いパワー系のベース音で、この大編成のコンボ(オケ)をぐいぐいと引っ張り、ものすごいインプロビゼーションを書き立てる、スーパー・エンジンと化している。
中間部分でソロを演じる「ローズ」のフルートも非常に良い出来で、この名演に花を添えている。

3曲目「ビヨンド~」は、美しいクラシック曲そのもので、個人的には大好きである。
まるで、ドビュッシーの様な印象派的な描写がなされた曲で、オーケストのヴァイオリンの美しい響きに、ローズのフルート、リンダのハープがこの絵画を描き切り、皆を夢の世界へと旅立たせる。

4曲目「ユー~」は、ラテン調のリズムのマッコイが素晴らしいピアノ・ソロをかまして、全員の集中力も途切れる事無く曲は進むが、中途でローズ幻想的なソロで皆を煽る。
ここでもリズムの中核、「コブハム」と「カーター」のガチガチ硬派な、タイム・キーピングは見事で、この曲(アルバム)を貧弱で軟派なフュージョンアルバムから、根絶しているのだ。

5曲目「ローレム」は、モード色全開の佳曲で、マッコイの華麗なピアノに、例によって最強リズムの二人がガッチリサポートをする。
一言で言えば、かなりマッチョなピアノ・トリオ演奏が終始演奏されており、オケやローズのフルートは、ここではほんのアクセント・スパイス程度として使われている。

最後にマッコイの代表的なアルバムと言ったが、「裏番」は間違いなく「ロン・カーター」だ。
私はカーターの参加したアルバムも多数所有しているが、ここでのカーターは彼の生涯膨大な録音の中で、最もハードで硬派な演奏をしているのは異論がない。

極上のブラジリアン・フュージョン…ウェイン・ショーター~ネイティブ・ダンサー

2007-06-17 23:51:24 | フュージョン
今日は、ウェイン・ショーターのリーダーアルバムにして、ブラジル音楽界の大御所、ミルトン・ナシメント達の参加を得て作成された歴史的名盤「ネイティブ・ダンサー」を紹介します。

個人的には、フュージョンと言うジャンルの音楽は、それ程好きなカテゴリーでは有りませんが、この盤はラテン・ポップアルバムとして見ても、素晴らしい出来なのでセレクトしました。

アルバムタイトル…ネイティブ・ダンサー

パーソネル…リーダー;ウェイン・ショーター(ts、ss)
      ミルトン・ナシメント(g、vo)
      ハービー・ハンコック(p、key)
      ワグネル・チーゾ(key)
      ジェイ・グレイドン(g、b)
      デヴィッド・アマロ(g)
      デイヴ・マクダニエル(b)
      ロベルト・シルヴァ(ds、perc)
      アイアート・モレイラ(perc)

曲目…1.ポンタ・デ・アレイア、2.ビューティ・アンド・ザ・ビースト、3.タルジ、4.ミラクル・オブ・ザ・フィッシュ、5.ジアナ、6.孤独の午後、7.アナ・マリア、8.リリア、9.ジョアンナのテーマ

1974年9月12日 LAヴィレッジ・レコーダーズにて録音

演奏(曲)について…まず、ミルトンの極上の歌がフューチャーされている3曲目「タルジ」が非常に良い演奏です。
ミルトンとショーターのコラボ作品としては、最高評価を受けており、非常に高品位のブラジリアン・ポップスに仕上がっている。
中間部でのショーターのテナー・サックスのバラード演奏も素晴らしく、ナシメントとのスキャットとの掛け合いは、言葉に出来ないぐらい美しいです。

6曲目の「孤独の午後」は、かなりジャジーな曲で、ここではショーターはテナー・サックスのインタープレイがすごいのだが、最も良いのは「ナシメント」のファルセット・ヴォーカリーズで、ジャジーな演奏の中で、不思議と違和感なく、曲にマッチしている、アーバンな演奏です。

7曲目「アナ・マリア」は、ショーターが妻に捧げた曲で、ボサ・ノヴァ調のリズムに乗って、しかしとても優しく風に身を委ねるような音色の美演がなされていて、私的には、この曲が一番好きです。

9曲目「ジョアンナのテーマ」は、ハンコックの作品で、ハンコックのアコースティック・ピアノと、ショーターのソプラノサックスが、非常に幻想的な絡みをして、極地的美演がなされている。
このアルバムのコンセプトからは、少し外れるかもしれないが、7曲目と同等で私は好きな曲です。

オープニング曲「ポンタ~」は、ミルトンのファルセットに導かれ、この曲&アルバムの序章が始まる。
不思議な歌声に、ジャズともポップスともロックとも言えない、異空間の音楽世界に、あっと言う間にタイム・スリップさせられて、この曲が只者では無い事を体感させられるのです。

8曲目「リリア」は、ナシメントがリスペクトする、マイルス・デイヴィスの70年代のサウンド(ビッチェズ・ブリュー、ジャック・ジョンソン、アガルタ、パンゲア等)を意識している編曲です。
私は「エレクトリック・マイルス」は好きでは無いので、個人的には評価し難いのだが、巷では3曲目の次に評価している曲だと思います。
バックのラテン係ったロック・リズムに、ショーターのサックスが飛翔するので、名演には違いないでしょう。

2曲目「ビューティ~」は、リズムこそラテンだが、パーカション、エレクトリック・ベース、アコースティック・ピアノ等のバックを務めるメンバーの演奏が、これぞフュージョンの王道とも言うべき、サウンド作りがなされている。
しかし、ショーターのソプラノサックスは、ジャズ的でアドリブソロも素晴らしく、中々の名演です。