紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

トランペットとバリトン・サックスの競演…ザ・キャット・ウォーク~ドナルド・バード

2008-02-29 23:06:00 | ジャズ・トランペット
今日は当たり前ですが、4年ぶりのうるう年、2月29日ですね。
このブログを書き終えると、次回の2月29日は、また4年後まで無いんですね。
そう考えると、一寸不思議な気分になります。

さて、今日もブルー・ノートから楽しい一枚を紹介しましょう。
トランペットの貴公子「ドナルド・バード」と双頭のコンボを組む相棒が、バリトン・サックスの「ペッパー・アダムス」。
高音パートと低音パートの2管編成の妙が楽しめるアルバムです。

アルバムタイトル…ザ・キャット・ウォーク

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      ペッパー・アダムス(bs)
      デューク・ピアソン(p)
      レイモン・ジャクソン(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.セイ・ユーア・マイン、2.デュークス・ミクスチュア、3.イーチ・タイム・アイ・シンク・オブ・ユー、4.ザ・キャット・ウォーク、5.キュート、6.ハロー・ブライト・サンフラワー

1961年5月2日 録音

原盤…BLUE NOTE ST-84075  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6562

演奏について…オープニング曲「セイ・ユーア・マイン」…1曲目から、とてもメロディアスで、マイナー・チューン好きな人のハートを直撃するテーマが魅力的で、「バード」のミュート・プレイのリリカルさとナイーヴな演奏が、より一層魅力を倍増させている。
後を受ける、渋い「ペッパー・アダムス」の重厚なバリトン・サックスと、「ピアソン」の叙情的なシングル・トーンでの優しげなタッチが…得も言わぬアシスト機能となって、曲と演奏を彩るんです。

2曲目「デュークス・ミクスチュア」…ゴスペル調のファンキー・チューンで、「バード」と「アダムス」の2管のユニゾン演奏が、より、アーシー&ブルージー、…そしてファンキーの3種の匂いを強烈に発する。
特に「アダムス」の分厚いバリトン・サウンドが重厚さを3割増しにさせて…リリカルなタッチで軽やかに弾く「ピアソン」との対極的な演奏と音質が、更に曲の特色を色濃くさせている。
実直に、テクニックを抑え目にリズム・セクションに徹する「フィリー・ジョー」の脇役ぶりが良い仕事をしています。

3曲目「イーチ・タイム・アイ~」…序奏のソロを取るのがバリトン・サックスの「ペッパー・アダムス」と言う編曲の妙が、センスを感じさせるバップ・チューンで、期待に違わず、「アダムス」が抜群アドリブで、ぶいぶい言わせる。
「バード」のオープン・トランペット演奏は、伸びやかで健康的で気持ち良い。
「ピアソン」のソロも勿論良いが、この曲では前2曲で大人しかった、「フィリー・ジョー」が本領発揮で、超絶ドラミングで皆をバンバン煽ってくれます。
流石「フィリー・ジョー」です。
ファンキーさとバップ臭さが倍増しですねぇ。

4曲目「ザ・キャット・ウォーク」…90年代に入って、大ヒットしたUs3の「カンタループ」にサンプリングされたタイトル曲なのだが、今聴いてもなるほどと思わせる魅力が有る曲です。
変則的なリズムで、曲を切りながら進行する所は、正しく抜き足、差し足、忍び足の…猫が歩く様を表現しているのでしょう。
特に「ピアソン」のカラフルで、魅惑溢れるアドリブ・ソロ演奏が美しい雌猫のしなやかさを表している。
「バード」と「アダムス」は、フェロモンぷんぷんの雌猫に求愛するのか?アッシー君、貢君をしている、情けない雄猫みたいだなぁ。
いつの時代も女は強いもんだ。
人間でも、猫でもそれは変わらないねぇ!!

5曲目「キュート」…アルバム随一の急速調の曲だが、完璧な演奏技術のメンバーが揃っているので、楽々こなしていて、心憎い。
「バード」の運指も流石だし、「フィリー・ジョー」と「ジャクソン」のリズム・セクションも完璧なシンクロで、心強いばかりです。
「アダムス」も難しいバリトン・サックスと言う楽器を、超絶で吹き通して、漢っぷりを見せ付けてくれます。
フィナーレの盛り上げもバッチリ決まって、…特に「フィリー・ジョー」がソロで爆裂ドラミングを決める部分は圧巻の一言。
相変わらずやる所はやってくれるぜ「ジョー」!!カッコイイぜぇい!!!

最後に、今日の卓球(女子)惜しかったね!
中学生の「石川佳純」ちゃんが善戦空しく負けちゃったけど、あそこで(特に第1セット)で取っていれば、波に乗って(チームも)勝てたかもしれない。
とても残念です。
個人的には「福原愛」ちゃんよりも「佳純」ちゃんのファンな物で…。
勿論、「愛」ちゃんや「平野」選手も沢山応援したんですけど…皆負けてしまって、返す返す残念です。
しかし皆若いので、この敗戦を糧にして、次回(来年)の横浜でリベンジして欲しいです。
女子の分も、明日の男子、頑張れ!!!

昨日の続き…ハンク・モブレー・クインテット

2008-02-27 23:18:17 | ジャズ・テナー・サックス
さくさくと、昨日の続きいっちゃいましょうね。

4曲目「スターティン・フロム・スクラッチ」…本作品中、一番「モブレー」がブロウして、気合が乗るトラック。
「ブレイキー」のザクザク、ドカンと煽りの入ったドラムスも燃える。
二人に触発されて、「ファーマー」のトランペットもかなり激しい演奏で、こいつも珍しく燃えていやがる。
挙句にサイド演奏では、「シルヴァー」まで、廻りをファイトさせて、自らのソロに入ると早弾きのタッチで自分自身を鼓舞する。
でも、でも…やっぱりこう言う演奏になると、「ブレイキー」は最高だね!
この人のスティック捌きで、周りが用意ドンで爆発するんですよ。
激しい演奏に乾杯したいね!

5曲目「ステラ・ワイズ」…非常にオーソドックスな4ビートで序奏がなされ、「シルヴァー」のアドリブ演奏と、バックサポートの「ブレイキー」のブラッシュが、格調高く冴えています。
「モブレー」のソロは、ここでもかなり良い出来で、吼え過ぎない、丁度良い頃合でシャウト&ブロウするのが、通好みの彼らしい所以でしょう。
礼節を重んじる「ファーマー」のトランペット…彼もシャウトギリギリで寸止めしてくれるので…かなりハイセンスですねぇ。
このメンツは、下品と上品の境目を熟知していて、決して下世話に成り下がらないギリを分っていて演奏するんです。
燻し銀の演奏家達です。

ラスト曲「ベース・オン・ボールズ」…表題通り、ベースをフューチャーしている曲で、序奏は渋く渋~く「ワトキンス」のベース・ソロ演奏から始まる。
受けるのは「シルヴァー」で、ブルース臭さぷんぷんの、十八番的な演奏で曲を飾り付けてくれます。
「モブレー」もとてもブルージーな雰囲気を醸し出していて、うねるフレーズを効果的に使って、ブルースとはこんなもんだよと、主張する。
「ファーマー」は抑制した、お得意の自己表現で、見事なサポートぶりを発揮するんです。
最後までしっかりと良い仕事をやってくれる方々です。

余談ですが、このアルバムのオリジナル盤(LP)は、ブルーノート1500番台の中で、最も高額な相場で取引がなされているとの事らしいです。
当時、余り売れなかったんでしょうが、本当に良い物は、時が経ってから分るんでしょうねぇ。
通には堪らない魅力の好アルバムなんですね。

この1枚も渋いでしょう…ハンク・モブレー・クインテット

2008-02-26 22:10:52 | ジャズ・テナー・サックス
今日もまたまたブルー・ノートの渋い1枚を紹介しちゃいましょう。
リーダーの「ハンク・モブレー」の作品と言うよりは、バックに入る演奏陣の「ジャズ・メッセンジャーズ」メンバーの演奏を聴くアルバムと言った方が良いかもしれない。
それぐらいバックのメンバーの演奏が行けてるんです。

アルバムタイトル…ハンク・モブレー・クインテット

パーソネル…リーダー;ハンク・モブレー(ts)
      アート・ファーマー(tp)
      ホレス・シルヴァー(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      アート・ブレイキー(ds)

曲目…1.ファンク・イン・ディープ・フリーズ、2.ワム・アンド・ゼイア・オフ、3.情事の終わり、4.スターティン・フロム・スクラッチ、5.ステラワイズ、6.ベース・オン・ボールズ

1957年3月8日録音

原盤…BLUE NOTE 1550  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6487

演奏について…1曲目「ファンク・イン・ディープ・フリーズ」…いかにものブルー・ノート特有のマイナー・チューンで、各人のユニゾン演奏から、全員が戦闘モードに入る。
トップ・バッターは「アート・ファーマー」だが、彼にしては中々鋭いトーンでキチッとしたアドリブを演っていて…やや燻しを加えた「リー・モーガン」の様な演奏が、まんまBNの世界感を表現している。
その後、「シルヴァー」がファンキー臭さぷんぷんの、待ってましたのアドリブを演ってくれて全員の乗りも佳境へと進む。
「ダグ・ワトキンス」のソロも決まり物だし、ラスト近くで、リーダー「モブレー」の暖系のトーンで渋く吹き通すソロも聴き応え充分です。
勿論は〆は全員でまたまたユニゾン演奏で纏めます。
1曲目からブルー・ノートの桃源郷へようこそです!!

2曲目「ワム・アンド・ゼイア・オフ」…ノッケから「モブレー」が早めのパッセージですいすいと吹く。
相変わらず歌心溢れる、優しいフレーズのソロが魅力的です。
受ける「ファーマー」のソロも素敵で、とてもリリカルで、スウィンギーな感覚にセンスを感じます。
ところで、この2曲まで、自己主張を殆どせずに、敢えてバックに徹する「ブレイキー」の推進力抜群のドラミングが、裏聴き所ナンバー1です。

3曲目「情事の終わり」…タイトルもエロいが、曲&演奏は最高!!!
倖田來未じゃないけど、正にエロカッコイイいいんです。このアルバムぴか一の出来栄えです。
何と言っても「モブレー」の男の色香、哀愁、そうです、「ダンディズム」がぷんぷんの、スターティングでのアドリブ・ソロが最高なんです。
それにも増して「ファーマー」の渋い、ややクールでインテリジェンスぱしぱしのソロもすごいです。
「シルヴァー」のソロも情緒的で秀逸。
正しく最高のバラード演奏です。

後半3曲は明日紹介します。
お楽しみに………。。。

参加メンバー最高!60年代BNでのラストアルバム…ジョー・ヘンダーソン~モード・フォー・ジョー

2008-02-25 22:04:41 | ジャズ・テナー・サックス
ブルー・ノートの看板アーティスト達が多数参加した、「ジョー・ヘンダーソン」の60年代でのBNラスト・アルバム。

後に85年に「ザ・ステイツ・オブ・テナー」vol1&vol2を発表するんだけど。

究極のモード・ジャズを今宵は堪能して下さい。

アルバムタイトル…モード・フォー・ジョー

パーソネル…リーダー;ジョー・ヘンダーソン(ts)
      リー・モーガン(tp)
      カーティス・フラー(trb)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      シダー・ウォルトン(p)
      ロン・カーター(b)
      ジョー・チェンバース(ds)

曲目…1.ア・シェイド・オブ・ジェイド、2.モード・フォー・ジョー、3.ブラック、4.カリビアン・ファイア・ダンス、5.グランテッド、6.フリー・ホイーリン

1966年1月27日録音

原盤…BLUE NOTE ST-84227  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6628

演奏について…オープニング曲「ア・シェイド・オブ・ジェイド」…いかにもBNらしいマイナー・チューンのユニゾンから序奏が始まり、すぐさま「ヘンダーソン」のざらついた音色のテナー・サウンドでスケールの大きいアドリブを吹く。
勿論、「モーガン」、「ハッチャーソン」の演奏もバッチリ決まっています。
その後、「シダー・ウォルトン」がセンスと雰囲気満点のモード・ピアノをガンガンと弾き捲る。
ドライヴする、「カーター」のベースと、「ジョー・チェンバース」のハイ・ハットがいかしてます。

2曲目「モード・フォー・ジョー」…タイトル曲でも有るんですが、「ヘンダーソン」が変則的に、音を切りながら吹くアドリブ演奏が個性的で面白い。
しかし、変則的で有りながら、歌心が溢れていて、エモーショナルなフレーズは、とても好ましい。
次いで「ハーチャーソン」のソロに入るのだが、「ハッチャーソン」にしては、ぶっ飛んではいないメロディアスな演奏です。
「フラー」は、もう「フラー」の世界をフル・オープンにしていて…ほのぼの系の音色で、とても優しい気持ちにさせられる優しい調べを演ってくれます。
終盤で、とっても渋~いソロを演く「ロン・カーター」が、楔のワン・ポイントになっていて…気持ち良~い!!
最後の終わり方が、「A列車で行こう」っぽいのもお洒落です。

3曲目「ブラック」…この曲は「ヘンダーソン」の演奏とフレーズにピッタリですねぇ。
非常に都会的で、カッコイイ曲だし、「ヘンダーソン」節もこの曲の展開にバッチリはまっています。
受ける「モーガン」のソロの出来も抜群で、とてもブリリアントな音色で、思い切り吹き捲る「モーガン」が彼の十八番と言えるぐらいの演奏です。
「ウォルトン」のソロは華麗で、きらびやかな感覚がグー!
後半の「ヘンダーソン」のシャウト&ブロウも〆に持って来いで、混然一体となったスーパー・アーティスト達の宴に乾杯!ですね!!

4曲目「カリビアン・ファイア・ダンス」…曲名の通り、カリブを感じさせる熱いダンシング・サウンドで、「ヘンダーソン」はうねる様なフレーズで、カリブの熱い夜を見事に表現する。
その後にソロを取る「フラー」の出来が抜群の出来栄えで、彼には珍しいぐらいに熱を帯びた熱いサウンド&フレーズで曲を盛り上げる。
「ハッチャーソン」のソロもいかにもってな感じで…ヴァイブの幻想的な響きがこれ程カリビアン・ナイトに合うとは…新しい発見か?(ちと大袈裟)
ドラムス「ジョー・チェンバース」のエキゾチックなドラミングもgoodです。

5曲目「グランテッド」…ハード・バピッシュな1曲で、「フラー」「ヘンダーソン」の順番でソロを取るんですが、「ヘンダーソン」がまた、一音一音切る様に、個性的なフレーズを演るかと思えば、思い切り吹くブロウイングとの組合せも有って、彼の多くの引き出しが表れます。
「ハッチャーソン」、「ウォルトン」と続くセンス抜群のそれぞれのアドリブも聴き所で言う事無しですね。

ラスト「フリー・ホイーリン」…「リー・モーガン」のオリジナル曲らしく、この曲では「モーガン」のソロがピカ1の出来です。
6拍子の変調ブルーズなのですが、流石のアドリブを演ってくれます。
「フラー」も短いですが、燃えたイメージのアドリブで、「ハッチャーソン」も小洒落たソロを演ってくれて…〆の全員でのユニゾンもピタッと決まります。

決してA級の名盤ではないかもしれないですが、ひっそりと聴きたい愛すべきB(C)級名盤に1枚ですね!!

ファンキー&ソウルフル…ドナルド・バード~ブラック・バード

2008-02-24 16:37:48 | フュージョン
今日は、60年代ブルー・ノートでの演奏からは想像できない程、(この時代、70年代初期に)感化された「ドナルド・バード」の、代表的なフュージョン演奏を収めたアルバムを紹介しましょう。

ファンキーで、ソウルフルで、ちょっぴりロック・テイストも加わって、所謂ブラック・ファンク・ミュージックの最たる姿なのですが、たまには純粋なアコースティック・ジャズとは違う、こう言うアルバム&演奏を紹介しても良いのかな?と思いつつ…行っちゃいましょうね!

※(独り言)アコースティック楽器演奏命の昔の私なら、こう言ったアルバム、多分紹介してねぇだろうなぁ。
多分…今なら「電気マイルス」も紹介できそうや!!

アルバムタイトル…ブラック・バード

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp、flh、vo)
      フォンス・マイゼル(tp、vo)
      ジョー・サンプル(p、el-p)
      ウィルトン・フェルダー(el-p)
      ハーヴィ・メイソン(ds)
      ラリー・マイゼル(vo、arr)
      ロジャー・グレン(fl、a-fl、saxes)
      ディーン・パークス(g)
      フレッド・ペレン(el-p、synth、vo)
      他

曲目…1.フライト・タイム、2.ブラック・バード、ラヴズ・ソー・ファー・アウェイ、4.Mr.トーマス、5.スカイ・ハイ、6.スロップ・ジャー・ブルース、7.ホエア・アー・ウィ・ゴーイング

1972年4月3、4日、11月24日録音

原盤…BLUE NOTE BN-LA047-F  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6706

演奏について…オープニング曲「フライト・タイム」…ジェット機の爆音から曲が始まるが、「メイソン」のカッツリと締ったドラミングと、「ジョー・サンプル」の軽やかで、跳ねる様なシングル・トーンのピアノ演奏が、カリフォルニアの乾いた風の様な、サッパリとした心地良さを序盤からイメージ付ける。
中盤では「バード」のトランペットと「グレン」のフルートのホーン部と、ギターの「バークス」、エレクトリック・ベースの「フェルダー」を軸にした弦楽器?とのバトル風のやり取りが面白い。
特にベース「フェルダー」の重厚で、ハードなベース演奏は、この曲でのMVPだと思わせる。
ファンキー&グルーヴで、全員熱く燃えている曲です。

2曲目「ブラック・バード」…アルバムタイトル曲で、ヴォーカル入りのブラック・ファンク・ミュージックです。
エレピ、シンセ、そして「パークス」のカッティング・ギターがファンキーさをビンビンに醸し出し、「バード」のエレクトリック・トランペットが、更に曲にファンクさを増させる。
ここでも、「メイソン」と「フェルダー」のドラムとエレキ・ベースのグルーヴィング力が抜群で、リオのカーニヴァルの様に、熱気と歓喜に満ち溢れた世界を表現している。
このファンキーさとグルーヴ感覚に身を預けて下さい。

3曲目「ラヴズ・ソー・ファー・アウェイ」…個人的にはこのアルバム中、一番気に入ったトラックです。
何と言ってもカッコイイ!!まじでカッコイイ!!!
ボンゴで引っ張るラテン・リズムに乗って、「グレン」のフルートと「バード」のトランペットが幻想的な風景を描き出して、夜空を飛び回る鳥?(鳥は夜、飛べないからこうもりかな?)みたいに華麗に飛翔する。
「ハーヴィ・メイソン」のハイ・ハットとスネア・ドラムがビシビシ決まり捲り、「フェルダー」のエレキ・ベースがこれでもかと加速し、「パークス」のギターが切れ捲る…ハードでファンキーで、最高のグルーヴ感を出し捲るリズム・セクションが余りにもカッコよすぎ!!
これぞ男のフュージョンだぜ!軟派と半端には聴けない代物ですよ。

4曲目「Mr.トーマス」…非常にダンサブルで、全員が渾然一体となったファンキーなナンバーです。
今のクラブじゃなくて、昔のディスコでかけたら人気が出そうだね。
当時、多分かかっていたんだろうなぁ?
「バード」の演奏は自らを出すと言うより、「ラリー・マイゼル」のアレンジメントに則って、メンバーとの一体化を主眼に置いている。
ここでも当然、「メイソン」の切れ味抜群の、日本刀の様なドラムは冴えていますし、エレピやシンセの演奏も、ホーンや「パークス」等のギター等を繋ぐ鎹の役目をバッチリ果たしていて…good jobです。

5曲目「スカイ・ハイ」…「バード」と「グレン」のトランペットとフルートのユニゾン演奏が心地良い、ドライヴ・サウンドになっています。
当時、かなり人気が出たトラックとの事なんですが、サウンドがきれいで、とても良くまとまっていて…いや、まとまり過ぎて私には物足りないなぁ。
70年代のフュージョン・サウンド全盛期の聴者には、ど真中のストライクだったんだろうけど…コマーシャリズム臭さが鼻に付く感じだな。
何か褒めてなくてすみません。
でも良い部分も沢山ありますよ。
特に「バード」の演奏は、尖ってはいないが、朗々と伸びやかに吹き切っていて、出来が良くて…とても好感が持てます。

7曲目「ホエア・アー・ウィ・ゴーイング」…導入のアコースティック・ピアノの美しさがとても印象的で、装飾的に曲を色付けして行く「バード」のサイド・アタック(トランペット演奏)が、カラフルで素敵です。
私的には、3曲目「ラヴズ・ソー~」と準拠してお気に入りの演奏になりました。
パーカッションのノリも良いし、「バークス」のギターも切れ味抜群で、ドラムの「メイソン」との、このリズム・セクションがメチャ曲の推進力に貢献しています。
バックのヴォーカル・サウンドと「バード」のトランペットが、素晴らしい融合を見せてくれます。
かなり、高尚なフュージョン演奏ですよ。

レゲエっぽい感じの6曲目「スロップ・ジャー・ブルース」…ファンキー&グルーヴィで、ガッツガツに進行して行き、特に「ハーヴィ・メイソン」のドラムスの切れが行けてます。
「バード」のトランペットと「グレン」のフルートが、ヴォーカルと並行的に進行して行って…例えが難しいかもしれないが、目的地が全く同じで、電車と自動車が同時に走っている感じなんですよね。
交わりそうで交わらないんだけど…仲は悪くない感じなんです。

名指揮者;カルロ・マリア・ジュリーニの晩年の名演…ブラームス交響曲第4番ホ短調

2008-02-23 13:45:04 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
まず、最初に、このブログに遊びに来られておられます、とある友人に対して、このアルバム(紹介)を捧げます。

その方は「カルロ・マリア・ジュリーニ」と言う、イタリアが生んだ20世紀の巨匠、指揮者が、フェイヴァリットとの事なので、今日はその「ジュリーニ」の指揮する1枚を紹介させて頂きます。

アルバムタイトル…ブラームス交響曲第2番、第4番、悲劇的序曲

パーソネル…カルロ・マリア・ジュリーニ(指揮)
      ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

曲目…DISC1…ブラームス交響曲第2番 ニ長調 作品73

   DISC2…ブラームス交響曲第4番 ホ短調 作品98
         悲劇的序曲 作品81

1991年4月録音・DISC1、1989年5月録音・DISC2

原盤…ドイツ・グラモフォン  発売…ポリドール㈱
CD番号…POCG-9625~26(2CD)

演奏について…今日は代表として、DISC2の交響曲第4番を取り上げさせて頂きます。

「ベートーヴェン」の影響を完全に受けている、傑作、第1番交響曲と異なり、第4番は「ブラームス」芸術の集大成とも言うべき、後期の傑作であります。
曲自体に、「ブラームス」の枯れた人生観と、隠された情熱が宿っており、またクラシックの総活とも言うべき、バロック的な形式も取り入れて、「ブラームス」が描き切った総合芸術のオブジェとなっているんです。

さて、ここでの「ジュリーニ」の演奏ですが、全曲において非常にゆったりとした(遅いと言った方が手っ取り早いかな?)テンポで曲を進めており、雄大な作品を更に掘り深くスケール・アップさせています。

第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」…雄大で真摯な「ジュリーニ」の棒捌きにより、「ブラームス」の心の広さまでもが感じ得る様な、深い情念が描かれています。
心の深みにじわっと入ってくる、「ウィーン・フィル」の弦音も素敵です。

第2楽章「アンダンテ・モデラート」…バロック形式を踏襲した二部形式の緩楽章ですが、「ジュリーニ」&「ウィーン・フィル」の演奏は、序盤はとにかく美しいの一言です。
優しい弦楽器の調べに、フルートやピッコロ、クラリネット等の管楽器がさりげなく装飾し、曲を紡いで行きます。
終盤は古風で厳格な響きを重視して、厳しく重厚なサウンドで押し進めてきます。
しかし、大河の流れの様な、ゆったりとしたロマンティシズムを失う事はなく、どこまでも流れを大切にした演奏なのです。

第3楽章…「アレグロ・ジョコーソ」…ブラームスには珍しい、スケルツォの様な楽章なんですが、「ジュリーニ」は、割ときびきびとしたリズムで、ダイナミックにこの楽章を描いて行きます。
強弱の付け方が激しくて、学者肌の「ジュリーニ」には、珍しいぐらいファイトしている演奏ですねぇ。
「ウィーン・フィル」のストリングスと、ホーン部も緊張感を保って、「ジュリーニ」のダイナミズムに溢れたコンダクティングに機敏に反応して、終盤のティンパニ等の打楽器群もピシャリとリズムを合わせて、劇的楽章を完璧に纏め上げてくれて…やった~大成功です!!

第4楽章「アレグロ・エネルジコ・エ・パッショナート」…「ブラームス」が、バロックのパッサカリアをモチーフにした楽章で、主題は「J.Sバッハ」の「カンタータ」を使用しているとの事。
とにかく原曲の主題が「バッハ」なだけに、とてつもなく厳粛で、心の中まで清々しくさせられる曲ですが、「ジュリーニ」の魔法の棒が、その精神性までも貫く様に透明度の高い演奏に仕上げています。
しかし、決して厳格なだけでは無く、ほのぼのとした優しさと慈愛が、緊張感溢れる演奏からも、じわっと滲み出ていて…人間「ジュリーニ」の、温かみが感じられます。
盛り上がっていくコーダが、まるで聳え立つ、ネパール山脈のエベレスト山の様に神々しくもあり…でも神はやっぱり優しいんですよ。
極寒のエベレストに差す、太陽光線の暖かさの様に、愛が溢れています。

「ジュリーニ」さん、こんな素敵な演奏を本当にありがとう。
あの方にも慈愛を届けて下さい!

ロリンズ名義だけれども、実はサプライズが…?ソニー・ロリンズ~ソニー・ロリンズ・プレイズ

2008-02-23 11:30:38 | ジャズ・テナー・サックス
皆様、お久しぶりです。
私事で恐縮ですが、仕事と家庭と適当に忙しくて、ブログ更新し難い状況です。

さて、今日は(も)、かつては幻の名盤として君臨していた一枚のアルバムを紹介します。

リーダー名義はタイトルの通り「ソニー・ロリンズ」なんですが、収録曲、全6曲の演奏の内、「ロリンズ」がリーダー・セッションとしてテナー・サックスを吹いている演奏曲は、半分の3曲だけで、残りの半分(3曲)は、リーダーが「サド・ジョーンズ」のコンボ演奏なんですよ~!

まぁ、下衆の勘繰りですが、シンプルに考えるならば、「サド・ジョーンズ」名義よりは、「ロリンズ」名義の方が明らかに《売れる》と制作側(レコード会社)が判断して、そうしたと言うのが本音ではないでしょうか?

いずれにせよ、「ロリンズ」、「サド・ジョーンズ」とも名演奏ですし、細かい揚げ足などに捉われず、普通に聴けば良いと思います。

アルバムタイトル…ソニー・ロリンズ・プレイズ

パーソネル…1~3曲目
      リーダー;ソニー・ロリンズ(ts)
      ジミー・クリーブランド(trb)
      ギル・コギンズ(p)
      ウェンデル・マーシャル(b)
      ケニー・デニス(ds)

      4&5曲目
      リーダー;サド・ジョーンズ(tp)
      フランク・フォスター(ts)
      ジミー・ジョーンズ(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      ジョー・ジョーンズ(ds)

      6曲目
      リーダー;サド・ジョーンズ(tp)
      ヘンリー・コッカー(trb)
      フランク・ウエス(ts)
      トミー・フラナガン(p)
      エディ・ジョーンズ(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ソニームーン・フォー・トゥ、2.ライク・サムワン・イン・ラヴ、3.悲愴のテーマ(チャイコフスキー)、4.ラスト・フォー・ライフ、5.アイ・ガット・イット・ザット・エイント・バッド、6.バラード・メドレー

録音…1957年11月4日①~③、1956年12月24日④&⑤
   1957年1月6日⑥

原盤…ピリオド  発売…ヴィーナスレコード㈱
CD番号…TKCZ-79506

演奏について…巷で名演の誉れ高い1曲目「ソニームーン・フォー・トゥ」…テーマの序奏を「ロリンズ」、「クリーブランド」のユニゾンで宣誓し、その後、野太いテナー・サウンドで「ロリンズ」がアドリブを朗々と歌わせて決めます。
受けて「クリーブランド」が、情緒的且つ鋭さも兼ね備えた、素晴らしいアドリブで「ロリンズ」に対抗します。
その後、「ギル・コギンズ」のシングル・トーンを活かしたピアノ・アドリブも魅力抜群で…曲に彩を添えます。
ベースの「マーシャル」のソロ・パートも有って、全体的に非常にオーソドックスで、実直なハード・バピッシュなセッションに仕上がりました。
曲後半の「ロリンズ」がぶいぶい言わすアドリブ演奏は、「サキソフォン・コロッサス」の流れを汲む、まじで気持ちの良い吹きっぷりです。
1曲目から、名演バシバシです。

2曲目「ライク・サムワン・イン・ラヴ」…言わずと知れたスタンダード・ナンバーですが、ここでの「ロリンズ」は原曲をあまり崩さないんですけど、アドリブ・パートに移行してからのフレーズがとても魅惑的です。
いつも通りのゆったりとした雄大なテナー・サウンドを吹いてくれます。
それから「コギンズ」のピアノ演奏…この人は相当の実力者ですね!
素晴らしいソロも勿論ですが、その演奏の端々にハズシや遊びも垣間見せて、「ロリンズ」へのサポート演奏が冴えています。

3曲目「悲愴のテーマ」…クラシックの超巨匠「チャイコフスキー」の最高傑作、交響曲第6番のメインとなる主題を題材にして、「ロリンズ」がバラード曲として仕上げている。
非常に高尚な演奏で、決してクラシカル・ジャズの俗っぽい雰囲気は皆無です。
演奏自身は、原曲をリスペクトして、崩しは少ないのですが、「ロリンズ」の熱い(厚い)テナーが、ものすごく朗々と歌ってくれて…甘くない大人のバラッド演奏を構築しているんです。
素材はクラシックだが、完全に1ジャズ・バラード曲として存在していて、「コギンズ」の可憐なソロも素敵だし、サポート演奏に徹する「クリーブランド」、「マーシャル」、そしてブラシ・メインの「デニス」のドラム演奏も「ロリンズ」をバッチリ、後押ししてくれてます。 

4曲目「ラスト・フォー・ライフ」…打って変って、「サド・ジョーンズ」カルテットのお出ましです。
ちょっぴり不可思議なテーマで奏でられる「サド・ジョーンズ」のオリジナル曲。
序盤を引っ張るのが「フランク・フォスター」のテナーで、渋みを効かせた大人のテナーで吹きます。
それから「ジミー・ジョーンズ」、「サド・ジョーンズ」が、煌びやかなアドリブを演って、曲を盛り上げてくれます。
皆を煽る「ジョー・ジョーンズ」の演奏も、勿論良い仕事をしてますよ。
ビ・バップの香りが漂う懐かしい演奏です。

5曲目「アイ・ガット・イット~」…いかにもブルースを得意とする「サド・ジョーンズ」らしく、彼のソロ演奏が一際輝きを増しています。
「サド」以外では、この演奏でも、パパ「ジョー・ジョーンズ」のドラムが良いですねぇ。
そして、終盤「ワトキンス」の分厚いベースとデュオ的に奏でる、とても華麗な「ジミー・ジョーンズ」のピアノ・アドリブが抜群に行けてます。

ラストの「バラード・メドレー」…「フラミンゴ」を奏でるピアノの「トミー・フラナガン」…普通にテーマを弾いているだけなのに、何て素敵なんだぁ!
「イフ・ユー・ワー・マイン」を渋く、カッコよく決める「フランク・ウエス」、「アイム・スルー・ウィズ・ラヴ」を、やや悲しげに、情緒たっぷりに歌わす「ヘンリー・コッカー」のトロンボーンもお気に入りです。
最後のバラード曲「ラヴ・ウォークト・イン」を朴訥と…シンプルに感情を込めて吹く「サド・ジョーンズ」…いずれの曲、演奏とも奇を衒わず、しかし歌心充分で、感情移入も素晴らしい、「サド・ジョーンズ」の演奏曲3曲の中では、ナンバー1の評価です。

2つのコンボのそれぞれの名演を是非聴き比べて下さい。    

衝撃のデビュー作…ウィントン・マルサリス~マルサリスの肖像

2008-02-19 22:08:18 | ジャズ・トランペット
正しく衝撃が走る!
若干二十歳の若者が、「ハンコック・トリオ」をバックに従えて、ストレイト・アヘッドなトランペットを吹き切る…これこそ「クリフォード・ブラウン」以来の天才的なトランペッターの登場である。

貴方も、「マルサリス」の登場を見て(聴いて)下さい。

アルバムタイトル…マルサリスの肖像

パーソネル…リーダー;ウィントン・マルサリス(tp)
      ブランフォード・マルサリス(ts、ss)①~⑤
      ハービー・ハンコック(p)③、⑤、⑥
      ロン・カーター(b)③~⑥
      トニー・ウィリアムス(ds)③~⑥
      ケニー・カークランド(p)①、②、⑦
      クラレンス・シー(b)①、②
      ジェフ・ワッツ(ds)①、②、⑦
      チャールズ・ファンブロウ(b)⑦

曲目…1.ファザー・タイム、2.アイル・ビー・ゼア・ホエン・ザ・タイム・イズ・ライト、3.RJ、4.ヘジテイション、5.シスター・シェリル、6.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ(ホエン・ノーバディ・ニーズ・ミー)、7.トワイライト

1981年7月、東京にて録音③~⑥、1981年8月NYにて録音④、⑦

原盤…CBS  発売…ソニー・ミュージック・エンターテインメント
CD番号…SRCS 9173

演奏について…オープニング曲「ファザー・タイム」…「ケニー・カークランド」の尖ったタッチの硬質ピアノ、「ジェフ・ワッツ」の乾いたクールさが魅力のドラミングに導かれて、「ウィントン・マルサリス」が、20歳とは思えない、テクニックとエモーションで、ハイ・センスのアドリブを吹き切ります。
中盤からは、兄貴の「ブランフォード・マルサリス」が、幾分渋めの音質で、テナーでブロウして、弟をアシストします。
ここからは、演奏もかなり高速化してきて、「ワッツ」が煽り、2ホーンの兄弟が受けて立ちます。
そしてユニゾン調のアーバナイズされた兄弟デュオで曲を締め括ります。

2曲目「アイル・ビー・ゼア~」…曲は短いが、非常に幻想的で、桃源郷の様な曲(サウンド)で、「ウィントン・マルサリス」のオープン・トランペットが、夜空を彩るオーロラみたいに、心を誘う。

3曲目「RJ」…「ウィントン・マルサリス」のミュートを付けていながら、攻撃的な奏法は、まるで全盛期の「マイルス・デイヴィス」の化身の様です。
その後、「ブランフォード」が、ソプラノ・サックスで、煌びやかで軽やかな、天空を駆けるペガサスの如く疾走を始める。
しかし、曲を引っ張る最大のエンジン役は、やはり「トニー・ウィリアムス」ですね。
超絶ドラミングが、えぐいです。

4曲目「ヘジテイション」…「ロン・カーター」と「トニー・ウィリアムス」のヘヴィーなリズム・セクションに推進されて、「ウィントン」がオープン・トランペットで、そして「ブランフォード」がテナー・サックスで、交互に掛け合いをしながら、クールに…且つ大胆にアドリブを吹いて行く。
「カーター」、「トニー」とも非常に短調なリズムを刻むんですが、逆にそこがカッコイイんです。
リズム・セクションはパワーとスピードが有れば、他はあまり必要では無い…シンプル・イズ・ベストが良いですねぇ。

5曲目「シスター・シェリル」…ネオ・ラテン調と言うべき、変則的なリズムだが、「ハンコック」の魅惑的なフレーズでの飾り付けと、「ウィントン・マルサリス」の良く歌うフレーズが、とにかく心地良いサウンドを作り上げる。
「ロン・カーター」が、ぶんぶん言わせるベース演奏が、重厚さを纏って、実に良い仕事をしていますぜい。
エンディングに近づいてから、「ブランフォード」も、とても情緒溢れるソプラノ・サックスで決めるのも味わい深くてgoodです。
個人的には、このアルバムで、一番お気に入りのトラックです。
スーパー・ミュージシャンが描く、絵画の様な極上サウンドです。

6曲目「フー・キャン・アイ~」…「ウィントン」が若いくせに、また一つ引き出しを開けて、ツールを取り出す。
そう、「アート・ファーマー」を彷彿させる、ほのぼの系…いや、幻想的なトーンで、甘い空間を演出する演奏をやってくれるんです。
勿論、「ハンコック」がサイドで、アシストする抜群のピアノ・アドリブも冴えに冴えて…「カーター」「トニー」と、「マイルス・バンド」の勇士達の完璧なバック演奏も加味されて…とにかく、とっても気持ち良いんです。
最高です!!

ラストの「トワイライト」…かなり、モード演奏の極みの様な演奏で、「ウィントン」が、華麗に…そしてインテリジェンスにオープン・トランペットを決めます。
「ファンブロウ」の硬派なベース・プレイと、クールに推進して行く「ワッツ」のカッコイイ、ドラミングも、とにかく行けてます。
中間からは、「カークランド」が、高音域をたっぷり使って、モード・ピアニズム全開のアドリブをバッチリ決ます。
ラストを飾るのに相応しい、ハイ・センスな演奏の一曲です。

神童?の華麗なるデビュー作品を堪能して下さい。


アコーディオン+ヴァイブが作る極上のBGM…アート・ヴァン・ダム・クインテット~マティーニ・タイム

2008-02-18 22:08:03 | ジャズ・ビッグバンド・その他
非常に個性的な楽器編成で、極上のBGMとなっているサウンドを形成する「アート・ヴァン・ダム」。

ここで聴ける音楽は、アコーディオンと言う楽器でジャズを演じた中でも、上位に入る名演だろうと思う。

クールでお洒落で…しかし一本芯は通っている、ダンディズムがキラリと光るアルバムなんです。

アルバムタイトル…アート・ヴァン・ダム・クインテット

パーソネル…リーダー;アート・ヴァン・ダム(アコーディオン)
      チャーリー・カルザレッタ(ヴィブラフォン)
      フレッド・ランドキスト(ギター)
      ルイス・スカリンダー(ベース)
      マックス・マリアッシュ(ドラムス)

曲目…1.アディオス、2.ブルー・ルー、3.チーク・トゥ・チーク、4.レット・ユアセルフ・ダウン、5.マイ・カインダ・ラヴ、6.アイ・ヒア・ミュージック、7.イフ・アイ・クッド・ビー・ウィズ・ユー、8.アイ・ディドント・ノウ・ホワット・タイム・イット・ワズ、9.サリー・ウィズ・フリンジ・オン・トップ、10.テンダリー、11.イッツ・イージー・トゥ・リメンバー、12.マダム・ヴァン・ダム

原盤…米CBS?  発売…ソニー・ミュージック・エンターテインメント
CD番号…SRCS-7156

演奏について…オープニング曲「アディオス」…鈴の音の序奏から、ラテン・リズムで始まって、と~ってもお洒落に曲が展開されて行きます。
「ヴァン・ダム」のアコーディオンと、「カルザレッタ」のヴァイブの絡みが、程好くソフトさとフリーな表現がブレンドされて…心地良いサウンドに仕上がってますねぇ。

2曲目「ブルー・ルー」…この曲では「カルザレッタ」が、かなりテクニックを見せ付けるアドリブ演奏が聴き所でしょう。
それを受けて「ヴァン・ダム」もナイスなアドリブをかまして、他にもドラムスの「マリアッシュ」の一発ソロや、ギターの「ランドキスト」の聴かせ所もあって、行けてる演奏です。

3曲目「チーク・トゥ・チーク」…曲名にピッタリの、ライトなダンス・ナンバーで、正しくアコーディオンとヴァイブが織り成す、ソフトな音楽空間に身を寄せたくなるカンフォタブル・ミュージックです。

4曲目「レット・ユアセルフ~」…かなり高速に疾走する、かなりハードなナンバー…と言っても、このメンバーで、この編成ですので、熱を帯びたモダン・ジャズ・カルテットの演奏に近い感じだと言えば分り易いでしょう。
「ヴァン・ダム」がかなりファイトしてますよ~。

5曲目「マイ・カインダ・ラヴ」…では、いきなりギターの「ランドキスト」が触発し、「ヴァン・ダム」も(対抗して)熱くアドリブで受けるんです。
「カルザレッタ」は、サイドメンに徹して、二人を見守ります。

6曲目「アイ・ヒア・ミュージック」…オール・ユニゾン調の寛ぎサウンドで序盤は推移するが、中盤から「ヴァン・ダム」と「ランドキスト」、そして「カルザレッタ」の3人共アドリブを演ってくれて…「スカリンダー」と「マリアッシュ」の煽りもgoodで…気持ち良い~!!

8曲目「アイ・ディドント~」…スロー・テンポで、パリ・シャンゼリゼ風に「ヴァン・ダム」が流麗に流す演奏をすれば…「カルザレッタ」はブルージーに曲を彩り、「ランドキスト」はジャジーに硬派の演奏をする。
ベース「スカリンダー」の重厚な演奏も良いし、アルバム収録中、最もジャズを感じ得る名演でしょう。

9曲目「サリー・ウィズ~」…「ヴァン・ダム」はお洒落サウンドの演奏に終始するけど、「カルザレッタ」のヴァイブと「ランドキスト」のギターが、キッチリとジャズを演ってくれます。
実は、この二人は、羊の皮を被った狼?なんですね。

10曲目「テンダリー」…この編成からして、この曲が合わないはずは有りませんねぇ。
まどろみを感じる景色に、気だるい甘さが漂うみたいな、ほのかな香水に誘われて…行けてる男と女がそっと指を絡める…黄金の50年代のアメリカ映画の様な演奏なんです。
「ヴァン・ダム」と「カルザレッタ」の優雅なアドリブがとにかく気持ち良いんですよ~!!
ベスト・チューンだと思います。

11曲目「イッツ・イージー~」…寛ぎのフロント・ライン3人が交互に主張して、でも…どこまでも洒落っ気は失わず曲を演り通すのが、心憎いです。

ラスト曲「マダム・ヴァン・ダム」…ダンディズムを通した伊達男たちだが、細君は怖いのか?最後におべっかを使った曲を持って来た。(大爆笑)
だが、曲&演奏は悪くは有りません…お茶を濁してはおりません。
スカッと晴れやかに決めてくれます。

極上のBGM風のジャズをどうぞ………!!!!

ノリノリ最高!…ジミー・スミス~ジ・インクレディブル・ジミー・スミス.vol3

2008-02-16 23:22:06 | ジャズ・ビッグバンド・その他
演奏曲にスタンダード・ナンバーがずらり…。
オルガン・ジャズの神様、「ジミー・スミス」がブルー・ノート初期に録音した、ノリノリのアルバムがこれなんです。
ファンキー&ブルージーな一夜をお過ごし下さい。

アルバムタイトル…ジ・インクレディブル・ジミー・スミス.vol3

パーソネル…リーダー;ジミー・スミス(org)
      ソーネル・シュワルツ(g)
      ドナルド・ベイリー(ds)

曲目…1.ジュードー・マンボ、2.ウィロー・ウィープ・フォー・ミー、3.恋人よわれに帰れ、4.ウェル・ユー・ニードント、5.フィドリン・ザ・マイナーズ、6.枯葉、7.アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント

1956年6月17日、18日録音

原盤…BLUE NOTE 1525  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6537

演奏について…序奏のアプローチが、一風変わった入り方で、印象的な6曲目「枯葉」…最初のアドリブ演奏のメインは、「シュワルツ」で、かなりブルージーで、じっくり聴かせるタッチで、枯葉のメロディの、わび・さびを表現する。
「ジミー・スミス」は、一音、一音のフレーズを長めに取って、サイドで伴奏的な演奏ながら、曲を劇的に染めて行く。
この二人のデュオ&バトル演奏を、上品に飾るのが、ブラシをメインに静かにサポートする「ベイリー」です。
動の「シュワルツ」&「スミス」と静の「ベイリー」の対比が真に素晴らしい1曲です。

オープニング曲「ジュードー・マンボ」…一発目から、全開バリバリのノリノリ・ナンバーで、これぞ「ジミー・スミス」の世界、BNのオルガン・ジャズの真骨頂って所です。
「ソーネル・シュワルツ」のテク抜群のギター・アドリブと、それ以上にバカ・テクでぶっ飛ぶ「ジミー・スミス」の天空を舞う様なオルガン演奏に感動する。
さりげなく二人を煽る「ドナルド・ベイリー」のドラミングもgoodで、終盤では、彼のラテンチックな一発ソロも聴けます。
1956年と言う年代を考慮すると、時代の最先端を行ってる演奏解釈に驚くばかりですねぇ。

2曲目「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」…こう言ったスロー・ブルーズの曲は、ドンピシャ、ジャズ・オルガンって言う楽器にはまるよね?
「スミス」の感情移入も至極当然だし、「シュワルツ」のジャジーな演奏も当然ストライク・ゾーンのど真中で、この二人が演るんだから、好演にならないはずが無い。
とにかく、ピアノ演奏を超える様な高速で運指して、ガッツリとアドリブを演る「スミス」の超絶演奏がまじにスゴス。
硬派のオルガン・ジャズを聴こうぜぃ!!

3曲目「恋人よわれに帰れ」…序奏の入り方が、最初「A列車で行こう」っぽいのが微笑ましくて、笑える。
演奏も正しくその通りで、かなり高速のリズムで、(列車が)疾走するように「スミス」と「シュワルツ」が、駆け巡る。
特に「スミス」の出来は秀逸で、正に「オルガンの神様」と言う冠に偽りが無い。
勿論、「シュワルツ」のアドリブも抜群に良い出来です。
オルガン・トリオとして、最高にパフォーマンスが凝縮された演奏でしょう。

4曲目「ウェル・ユー・ニードント」…「セロニアス・モンク」作曲の名曲だが、ここでの演奏には「モンク」臭さは殆ど無い。
きっちり「スミス」トリオとして、曲を調理しており、あくまでも素材としての「モンク」曲であり、曲の進行、アドリブ展開は…完全に「ジミー・スミス」流になっている。
終盤、「ベイリー」がおかずを沢山付けて、アドリブを演る所が、とてもお洒落~って思いますね。
分り易く、一言で言うなら、とても面白い演奏でしょう。

5曲目「フィドリン・ザ・マイナーズ」…「スミス」のオリジナル曲で、ややハイ・テンポで、自らのオルガン演奏を立たせた曲で進行して行く。
中間部から「シュワルツ」もいきり立ってきて、「スミス」とバトルを演り合う。
3人編成(トリオ)演奏には思えないぐらいに熱い演奏です。

ラスト「アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント」では、前6曲がかなり熱演だった事もあり、敢えてラスト・ナンバーは、寛ぎをメインに、…つまりクール・ダウンを主たる目的にセレクトした感がする曲目&演奏になっている。
「スミス」のタッチもとても軽やかで、「シュワルツ」もコードだけで、リズムを刻み、サイドメンに終始している。
この辺りの〆方も、「スミス」のセンスがなせる業なんでしょう。

グルーヴィー&ファンキーな名盤…ヒアーズ・リー・モーガン~リー・モーガン

2008-02-12 22:49:25 | ジャズ・トランペット
バッチリ、goodなグルーヴ感覚に、ブリリアントでエモーショナルな魅惑のフレーズでビシッと決め捲る、伊達男。
そう、それが今日の主役「リー・モーガン」が贈る、VeeJayの名盤、「ヒアーズ・リー・モーガン」です。
参加メンバーも最高レベル…演奏曲も超行けてる…正に言う事無しです。

アルバムタイトル…ヒアーズ・リー・モーガン

パーソネル…リーダー;リー・モーガン(tp)
      アート・ブレイキー(ds)
      ウィントン・ケリー(p)
      ポール・チェンバース(b)
      クリフ・ジョーダン(ts)

曲目…1.テリブル・T、2.モギー、3.アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー、4.ランニング・ブルック、5.オフ・スプリング、6.ベス

1960年録音

原盤…Vee Jay LP-3007  発売…㈱ファンハウス
CD番号…FHCY-2007

演奏について…もう、最高の名演は誰が何と言おうとも、3曲目「アイム・ア・フール・トゥ・ウォント・ユー」の超絶バラッドである。
とにかく、この1曲だけでこのアルバムの価値は普遍であり、「リー・モーガン」と言う稀代のトランペッターの評価を揺ぎ無い物にしている。
「ケリー」の叙情的な前奏に率いられて、「モーガン」が、とにかくロマンティックで、ナイーヴで、そしてセンチメンタルにミュート・トランペットで心情を歌う。
続く「クリフ・ジョーダン」のテナー・ソロもすごいの一言。
「モーガン」の描く音を敢えて女性とするならば、「クリフ」は渋い男性です。
めちゃくちゃに「モーガン」のアドリブ・ソロが可憐で美しいんです。
サポートする「ケリー」のピアノ・アドリブ・ソロも心の琴線触れ捲りで…泣けます。
御大「ブレイキー」は静かに脇役に徹し、「チェンバース」は演奏こそ主張無しですが、野太いベースを淡々と、切々と刻み、見事に助演男優賞獲得です。
夜の四十万に映える、一輪の真っ赤なバラの様に悲しくも、美しい名演奏です。

ファンキー節がびんびんで、絶好調のオープニング曲「テリブル・T」ですが、こう言ったファンキー演奏を演らせたら、「モーガン」はトランペット奏者では、殆ど神と言って良いんじゃない?
ヴィー・ジェイと言うマイナー・レーベルのレコーディングだけど、奏でられたサウンドは、ブルー・ノート真っ青、いやブルー・ノートその物と言っても良いぐらい。
「モーガン」を煽るぐらい乗りの良い「クリフ・ジョーダン」と、こちらもファンキー・ピアノの申子、「ウィントン・ケリー」もソロで決めます。
ラテン・ドラムでぎんぎんに煽り捲る「ブレイキー」と渋く決める「チェンバース」のサポートも二重丸評価です。
とにかく、楽しい1曲です。

2曲目「モギー」…この曲も楽しげなファンキー・チューンで、「モーガン」と「ジョーダン」のユニゾンで始まるテーマ・メロディ演奏なんか…まんまブルーノートみたい…。
アドリブに入ってから、「モーガン」はブリリアントで聡明なサウンドを、これ見よがしに吹いてくれます。
受けた「ジョーダン」は明るく豪快に、ぶいぶいとテナーをかまして、更にアドリブを展開させます。
「ケリー」は魅力溢れるフレーズを連発して、二人の演奏に修飾を付けてくれて…終盤では「チェンバース」のソロも出てきちゃうし…最後は「ブレイキー」がガツン、ドキュンと太鼓を敲き捲って…クインテットのパワー全開で…フィナーレとなって…本当に良い演奏です。

6曲目「ベス」…ブラッシュで引っ張る「ブレイキー」に、ミュートで応える「モーガン」。
「クリフ」も前半は弱音を活かした、かなりセンシティブなソロを演ってくれて、後半はテナーを良く歌わせて…とても魅惑的な演奏です。
「ケリー」はブロック・コードを主体にしたサイド演奏と、跳ねる様に乗ったシングル・トーンで陽気に歌わすソロ演奏の対比が面白いですねぇ。
ラストはホーン二人の、ハーモニー&ユニゾンのテーマ演奏でバッチリ〆てくれますぜ。

4曲目「ランニング・ブルック」…例に洩れず「モーガン」と「ジョーダン」のユニゾン演奏で幕を開けて、その後「ジョーダン」が、バリバリとカッコ良いテナー演奏をばっちり決めます。
その後、「モーガン」のソロが、迫力満点の名演奏です。
「ジョーダン」が、かなり煽ったので、倍返しですんごいアドリブをやっちゃいますよ。
「ケリー」は、これ以上二人をバウトさせない為か?、goodなフレーズを弾きつつも、少し引き気味のアドリブ演奏をするんです。
サッカーで言う、とてもクールなボランチの様な演奏ですね。
しかし…「ブレイキー」は、終盤に思い切り煽り捲って…「ケリー」の冷静さははて?どこへやら?
でも、そいつが良いんです。
「ブレイキー」はやっぱり、ガツンとやらないかんのです。(大爆笑)!!

5曲目「オフ・スプリング」…「ジョーダン」が思い切りブローするソロから聴いていて気持ち良い~!
実直にベースを弾き続ける「チェンバース」…良い仕事してますね。
「モーガン」は、ここでかなりクールでインテリジェンス有るアドリブ・ソロを決めてくれます。
「ケリー」は、前半は伴奏に専念していて、終盤にかなり遊び心を見せたおかずを多めのソロをしっとりと演ってくれます。
どこかラグタイム調の、オールディーズな雰囲気が感じ良いです。
ラストはホーン二人が、テーマを演って…クール・ダウンです。

ロンが演じるスタンダード…ロン・カーター~ベース・アンド・アイ

2008-02-11 22:03:09 | ジャズ・ベース
皆さん、こんばんわ!
今日は、久しぶりに「ロン・カーター」のリーダー・アルバムを紹介しましょう。
演奏している曲目は、有名なスタンダード・ナンバーがメインで聴き易いです。
そして、編成は、ピアノ・トリオにパーカッションがプラスされた、変則のカルテットですが、とてもお洒落な演奏です。

それでは詳細に行きましょう。

アルバムタイトル…ベース・アンド・アイ

パーソネル…リーダー;ロン・カーター(b)
      スティーヴン・スコット(p)
      ルイス・ナッシュ(ds)
      スティーヴ・クローン(perc)

曲目…1.貴方と夜と音楽と、2.いつか王子様が、3.ブルース・フォー・D.P、4.いそしぎ、5.ミスター・ボウタイ、6.ダブル・ベース、7.アイ・リメンバー・クリフォード

1997年1月14日 ルディ・ヴァン・ゲルダー・スタジオにて録音

原盤…Somethin’else 5585  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5585

演奏について…オープニング曲「貴方と夜と音楽と」…「スティーヴン・スコット」の原曲を活かした哀愁のトーンから序奏が幕を開ける。
カデンツァに入り、「スコット」がダイナミズムをフルに活用し、思い切り弾いて行き、その後を渋く「ロン・カーター」が受ける。
ガッツリとした音では有るが、とても歌謡的にベースを歌わせて、この辺が「カーター」の真骨頂なんでしょう。
終盤では、センシティヴにリズムを刻む「ルイス・ナッシュ」と、超絶技巧で「カーター」をサポートする「スティーヴ・クローン」の二人のアドリヴ演奏が、彩を添えます。
オープニングに相応しい華々しいナンバーです。

2曲目「いつか王子様が」…「ビル・エヴァンス」が大横綱の名演とするならば、ここでの演奏は名小結くらいの品格と価値は充分に有ります。
ここでも「スコット」は、原曲のメロディを崩さずに、大事にきれいにソロを仕上げます。
特に「スコット」のアイドルは、「ウィントン・ケリー」らしいので、「マイルス」盤での「ケリー」の美演に肉薄している、素晴らしいソロです。
「カーター」も「ラファロ」ほど太っとくは無いが、ここでも歌心が充分に行き届いたベース・ソロを展開して、この曲の素晴らしさを表現しています。
1曲目同様、「ナッシュ」と「クローン」のリズム・サポートも充実していて…特に「クローン」のディズニー・サウンド?の様な星の音を表現している鈴の音が楽しくて…こう言っては失礼かもしれませんが、初心者向けの好演と言えば分り易いと思います。
勿論、ジャズに五月蝿い、通の方も楽しめる演奏です。

3曲目「ブルース・フォー…」は、「カーター」の自作曲で、盟友「デューク・ピアソン」へのオマージュとして作られた曲との事で、「カーター」がブルース魂全開で分厚く弾き切ります。
ここで、「スコット」は前曲と異なり、かなり泥臭いブルース・フィーリングを見せますし、バックの二人のノリも良いですよ~。

4曲目「いそしぎ」…これ程センスの塊りの様な編曲、演奏の「いそしぎ」…は余り聴いた事が無い。
特に「カーター」のコード・チェンジがノーマル・パターンの一歩いや、三歩先を行っていて、合わせる「スコット」のブロック・コード主体のアドリブもハイ・センスです。
終盤のアドリブは、コード・チェンジと半音崩しも有ったりして…オー!カッコイイぜぃ!!
ラストの方では、消え入る様に弾くんですが…何故かメロディは「イパネマの娘」を使用しているんですよ。
「ナッシュ」「クローン」は、あくまでも、どこまでも脇役に徹していて…この演奏の品格が5ランクくらいアップしている。
私的には、このアルバムで、ベスト・チューンに挙げたいですね。

5曲目「ミスター・ボウタイ」…ボサ・ノヴァ・リズムに導かれて、「スコット」がハイ・センスなフレーズをびんびんに決め捲る…。
重厚にサポートするリーダー「カーター」の演奏もすごいのは勿論ですが、ここでの主役は、何と言ってもパーカッショニスト「クローン」です。
ノリとテクニックは完璧な上に、様々な打楽器を効果的に用いて、「カーター」とのデュオ的なリズム・バトルを演ってくれます。
終盤に入ってから「スコット」と「クローン」の高速での凌ぎあいが…すごい!
ラテン+ジャズ(ピアノ・トリオ)の見事な融合です。

6曲目「ダブル・ベース」…原曲はかつて、某洋酒メーカー((サントリー)と言った方が良いかな?)のCMソングに使用されていて…その当時「ロン・カーター」(の名前)を知った方も多いのでは?(古いなぁ…年がばれそうや!!)
最初の数小節は原曲に忠実な演奏なんですが、その後、かなり大胆に展開して行きます。
特に「カーター」のアドリブ・ソロは…テクニック、感性とも素晴らしく、正しくベースのカデンツァだ!
この曲では非常に軽やかにブラッシュ・ワークを演じる「ナッシュ」のバック・サポートが超名演です。
終盤では、各人の遊びも出て来て…良いですね。

ラスト曲「アイ・リメンバー・クリフォード」…この曲も序奏は「スコット」が、美しい原曲をあえてそのまま弾き、スロー・テンポで進んで行く。
「スコット」以外の3人も、この曲自身の魅力を最大限に引き出すためなのか?「スコット」のピアノを全面に押し出し、小細工せずにリズム・サポートに終始する。
しかし、最後には、「カーター」がベースでこの曲のメロディを弾いて…しずかに成就させるんです。

聴き易い、名演奏ばかりで…こいつは本当にお薦めのアルバムです。



ピアノ弾き語りの女性ジャズヴォーカル、かつての幻の名盤…ビストロ・バラッズ~オードリー・モリス

2008-02-07 23:06:13 | ジャズ・ヴォーカル
このセンセーショナルなジャケット・デザイン…見ていて衝撃を受けますね。
そして、このジャズ・ヴォーカル・アルバム…かつては、幻の名盤でした。
何せ、女性自身がピアノを弾き語り、しっとりと落ち着きの有る歌い方で、バラッドで通すアルバムなんて、滅多に有る物じゃないです。

今日は「オードリー・モリス」のこのアルバムで酔って下さい。

アルバムタイトル…ビストロ・バラッズ

パーソネル…オードリー・モリス(vo、p)
      ジョニー・ペイト(b)
      チャールス・ウォルトン(シンバル)

曲目…1.ノーバディズ・ハート・ビロングス・トゥ・ミー、2.ホエア・アー・ユー、3.グッド・モーニング・ハートエイク、4.カム・イン・アウト・オブ・ザ・レイン、5.スウィート・ウィリアム、6.ブラー・ブラー・ブラー、7.ゲス・フー・アイ・ソウ・トゥデイ、8.涙のかわくまで、9.エイプリル・フール、10.恋の終り 

録音…MONO 

原盤…X LXAー1028  発売…BMGビクター
CD番号…BVCJ-7374

演奏について…1曲目「ノーバディズ・ハート~」…「オードリー」が弾くピアノの調べに、語り的な優しい歌声が乗り、寛ぎと格調の高さを兼ね備えた、名唱・名演…硬派のジャズとは一線を画する、余裕と平和?のジャズ・ヴォーカル。
クラブ(ビストロ)で、白人美人が語りかけてくる、チョイ・エロ・カワの歌です。

2曲目「ホエア・アー・ユー」…「オードリー」の歌は、べらぼうに歌が上手いと言うわけでは無い。
しかし、味わいと、ほんのりの色香が有って、聴く者を癒してくれる。
彼女をサポートする、ベーシスト、「ジョニー・ペイト」の渋いベース演奏が、この歌の品格を上げる。

3曲目「グッド・モーニング・ハートエイク」…「ビリー・ホリデイ」の名唱が有名ですが、この「オードリー」の歌も、元祖に匹敵する演奏&歌です。
彼女のピアノ・ソロ・パートも有り、ややマイナー・チューンのメロディに、少し幻想がかったピアノ伴奏…クラシックで言うと「ドビュッシー」の様な雰囲気が感じられて…とても趣深いトラックになった。
個人的には、アルバム・ナンバー1の演奏・歌と位置づけたい。

4曲目「カム・レイン~」…あまり有名な曲では無いとの事だが、アルバム収録中、上位に来る演奏・歌だと思う。
ほんとにしっとりと「オードリー」が歌い上げて…大人の女性のラヴ・バラッドの真髄が分る演奏です。

5曲目「スウィート・ウィリアム」…この曲も「オードリー」がじわっと味わい深く、ピアノ演奏と語りヴォーカルを決めてくれます。
ピアノ・ソロのパートは、とてもロマンティックで…白衣の天使に見舞われている様な、優しさ溢れる歌声が…気持ち良い~!!

6曲目「ブラー・ブラー・ブラー」…ブラー~が続けて発音すると、何故かラヴ・ラヴ~っと言う具合に聴こえる、楽しいナンバーです。

7曲目「ゲス・フー~」…アルバム中、最も語り調、つまり耳元で語る感じの曲で、これが一番の女性ヴォーカルの醍醐味ですよね。
とても可愛らしい曲&歌です。

8曲目「涙のかわくまで」…結構、ジャズの中では名曲なんですが、「オードリー」の歌、ピアノ伴奏、そして「ペイト」のベースとの三位一体(ニ位一体?が正しいか?)で、それぞれが見事な融合を見せます。

9曲目「エイプリル・フール」…エイプリル・フール…女に冗談で騙される…いやぁ男って馬鹿だねぇ!
でも、でも…騙されたと分っていても、それでも(あえて)騙されて見たいんですよ。
男は単純…男は正直…女性の方が全てにおいて、1枚も2枚も、いや30枚ぐらい上でしょう。
この「オードリー」のバラッドには…嘘が有るのかなぁ???

10曲目「恋の終り」…とても乗りの良い「オードリー」のピアノが、彼女自身のヴォーカルを自ら好アシストしていて…実に良い仕事をしてくれます。
正にピアノ弾き語りの規範的な演奏&歌であり、後半(LPで言えばB面)の中では、ベスト・チューンだと思います。

今宵はハイ・センスで、しっとりの弾き語り…女性ヴォーカル・アルバムで寝心地良いですよ!!

昨日の続き…MJQ~ヨーロピアン・コンサート

2008-02-05 22:07:12 | ジャズ・コンボ
昨日の続きを行きましょう。

DISC2…1曲目は同名のアルバムも有る、MJQ初期の名曲「ピラミッド」。
かなりブルージーにディープに曲を仕上げる「ミルト」と、この演奏では流麗ではなく、どちらかと言うと朴訥に(半音やハズシをやらない「モンク」みたいな感じ)で、対話するように演奏する「ルイス」が面白い。
バックでは、行進曲風にドラミングする「コニー・ケイ」の演奏は、影のMVP級のイカス演奏です。

2曲目「スウィングしなけりゃ意味ないね」…著名な「エリントン」ナンバーですが、ここではジャングル調は一切無しで、いかにもMJQらしい、室内楽的なハイ・センスのスウィング・ナンバーに仕上げている。
ガッツリ4ビートで皆を推進する「ヒース」のベースが心地良く、「ルイス」のピアノも粋な演奏でgoodです。

3曲目「スケーティング・イン・セントラル・パーク」…「ミルト」のヴァイヴがペダルを活かした、幻想的で真にロマンティックな演奏で…セントラル・パークで子供達が、スケートを楽しんでいる様子が、見事に表現されている。
中盤からは、アドリブも佳境に入り、滑ったり、転んだり、笑い合う微笑ましさも感じます。
「ルイス」は、あくまでもサイドメンに徹して、そうですね、スケート場のBGM的な演奏をしているのかも知れません。

4曲目「ザ・シリンダー」…MJQ中期から後期にかけて、彼等の持ち曲の一つとなった名曲。
バッハ風の輪唱の様な演奏(「ミルト」と「ルイス」の追いかけっこ)が、一度聴いたら耳を離れない、単純なメロディながらベストなメロディです。
ちなみに私も大好きな曲の一つです。
テーマが終わると、「ミルト」はブルージーなアドリブを連発して、曲にディープなイメージも植付けてくる。
一方、「ルイス」は遊びをしながら、曲をライトに仕上げてくる。
「コニー・ケイ」の時間を変える様な、スティック捌き、ドラミングが一瞬間を変えて、曲にアクセントを付ける。

5曲目「ラウンド・ミッドナイト」…「モンク」作曲の超名曲ですが、MJQと言うコンボも十八番の1曲にしています。
センス抜群のシングル・トーンで押し通す「ルイス」と、これ見よがしにgoodなヴァイヴ・アドリブを敲き捲る「ミルト」とのスーパー・コンビネーションがえぐいくらいです。

6曲目「バグス・グルーヴ」…言うまでもなく「ミルト」作曲のMJQの定番ミュージック。
ここでの「ミルト」は、縦横無尽にヴァイヴを演り、「ルイス」は、訥々と、ひっそりとしたイメージで曲を紡ぐ。
剛の「ミルト」、柔の「ルイス」と言う図式がピタリと当て嵌まる。
終盤では全員が一斉にファイトする様な場面も見られて、流石定番と言う感じです。

ラスト・ミュージックは、この曲の本筋とは一寸違う、「四月の想い出」。
何が違うかと言うと、単純にスピードなんですけど、非常に高速で疾走する演奏で、コンサートのラストを盛り上げようと、4人がスパートして、こう言う感じになったんでしょう。
特に「ミルト」が煽る様にヴァイヴを決め捲って…大拍手で〆てくれます。

このコンボのベスト・パフォーマンスが凝縮されたアルバム…MJQ~ヨーロピアン・コンサート

2008-02-04 22:08:56 | ジャズ・コンボ
今日は、モダン・ジャズ・カルテットのベスト・パフォーマンスが収録されたライヴ盤、ヨーロピアン・コンサートを紹介しちゃいましょう。

彼等のライヴアルバムとしては、1974年の「ラスト・コンサート」と双璧の金字塔的な名盤です。

このライヴでは、勿論、(ラスト・コンサートの様な)解散の雰囲気等は皆無であり、正に彼等の心技体の全てが充実した、素晴らしい演奏が展開されています。

アルバムタイトル…ヨーロピアン・コンサート

パーソネル…モダン・ジャズ・カルテット(MJQ)
      リーダー;ジョン・ルイス(p)
      ミルト・ジャクソン(vib)
      パーシー・ヒース(b)
      コニー・ケイ(ds)

曲目…DISC1…1.ジャンゴ、2.ブルーソロジー、3.アイ・シュッド・ケア、4.ラ・ロンド、5.クリフォードの想い出、6.フェスティヴァル・スケッチ、7.ヴァンドーム、8.明日に賭ける
   DISC2…1.ピラミッド、2.スウィングしなけりゃ意味ないね、3.スケーティング・イン・セントラルパーク、4.ザ・シリンダー、5.ラウンド・ミッドナイト、6.バグズ・グルーヴ、7.四月の想い出

1960年4月11日~13日 ストックホルム、ゴッテンブルグにてライヴ録音

原盤…ATLANTICー1385 発売…ワーナーパイオニア
CD番号…50XD-1013~14

演奏について…まず、掴みはOK、スタート・ダッシュに賭ける「ジャンゴ」…「コニー・ケイ」のセンス抜群のブラシ演奏に導かれて、「ミルト・ジャクソン」のヴァイブが踊り、跳ねて、グレイトなアドリブ・パフォーマンスを演じる。
「ジョン・ルイス」は最初は地味に、控えめに伴奏に徹するが、弾いているメロディはセンチメンタル且つ、メロディアスで…アドリブに入ってからは、転がりながら光輝く宝石の様に、キラキラときれいで、「ルイス」の面目躍如と言った所です。
もう一人、「パーシー・ヒース」のドライブ感抜群のベース演奏も通を唸らせる出来栄えです。

2曲目「ブルーソロジー」…とてもジャジー&ブルージーなチューンで、MJQは美しくて聴き易いだけのコンボで無い事が良く分かる1曲です。
こう言うブルーズをベースにしたグルーヴ感の有る曲にも、見事な適応を見せるのが、彼等のもう片側の顔なんですね。
ブルース命の「ミルト」の演奏が良いのは当然ですが、「ルイス」のピアノも何気にこう言う時に素晴らしいパフォーマンスを演るんですよね。
奥が深い、そして、引き出しの多いコンボだねぇ。

3曲目「アイ・シュッド・ケア」…映画「スリル・オブ・ア・ロマンス」からのバラード・チューンで…「ミルト」の幻想的なヴァイブが、「ルイス」の美音ピアノにねっとりと絡み付いて…大人のディズニー映画の様な感覚に陥ります。
「コニー・ケイ」と「パーシー・ヒース」のリズム・セクションは、相変わらず裏方に従事していますが、その部分を集中的に聴いていると…二人の演奏がキー・ポイントになっている事が分ります。
野球の試合で言えば、名セット・アッパー(中継ぎ)、サッカーなら名ボランチと言えば分るかなぁ。

4曲目「ラ・ロンド」…MJQ初期のヒット曲だが、とにかく「パーシー・ヒース」のど真面目なベース・ソロをリスペクトした曲&演奏で、MJQと言う稀代の名コンボが、決して著名なフロント・ライン二人のコンボでは無いことが分ります。
「ヒース」の超絶ベースを聴いてくれ!!

5曲目「アイ・リメンバー・クリフォード」…「ルイス」がメロディ・テーマを奏でて、「ミルト」が、とてもメロディックなアドリブで続く。
すると「ルイス」は、またまたテーマ・メロディを余りいじらずに、「ミルト」から受け取る。
それを「ミルト」が発展させて…更に良いアドリブ・パートへと持って行く。
終盤は二人の掛け合いがもっと高いステージで融合されて、大満足の演奏に仕上げてくれます。

6曲目「フェスティヴァル・スケッチ」…南仏カンヌでのジャズ・フェスティヴァルをイメージして、「ジョン・ルイス」が作った曲だそうだが、わりと早めのテンポで、「ミルト」が駆け、「ルイス」が紡ぎ、「ヒース」が運び、「ケイ」が〆る4人のそれぞれのパートが見事に機能し、MJQがクラシカルな室内楽的なジャズ・コンボと言う事を再認識させる1曲です。

7曲目「ヴァンドーム」…名盤「ピラミッド」等でも演奏されている、フーガ形式、リアル・バッハ的な魅惑の1曲。
この演奏こそ、MJQの核心的な演奏&曲で、「ミルト」の先演奏を、「ルイス」が輪唱的に追いかけて…正にビューティフルな演奏です。

8曲目「明日に賭ける」…「拳銃の報酬」で知られる映画のために「ジョン・ルイス」が作曲したトラック。
曲の前半は、とても渋く、沈静さが極まる、叙情的なサウンドで…そのメロディが心の琴線に触れて…もの悲しいイメージが、いつの間にか脳内を洗脳する。
終盤はメジャー・コードに転調して、「ミルト」が楽しげに力強く跳ねる様なヴァイブを敲いて、任務が成功し、報酬を頂いた事を物語っているのでしょうか?
しかし、大ラスでは、またまた、とても静かなエンディングを迎えるので、映画は…ハッピー・エンドで終わったのか?悲しい結末なのかは?聴いている方の想像にお任せします。

これにてDISC1はお終いです。
続きは又、明日………。。。