紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ライトでポップなジャズ女性ヴォーカルだが!実は?…ジューン・ガット・リズム~ジューン・クリスティ

2007-11-30 11:47:39 | ジャズ・ヴォーカル
今日も2枚目行こうかな?
久しぶりに、(ジャズ)女性ヴォーカル・アルバムでも如何ですか?

と言う事で、「ジューン・クリスティ」のこのアルバムを選びました。
ジャケットなんかを見ると、一見ライトな感じがして…でも、実はそんじょそこらのヴォーカル物とは、全然物が違いますぜ!

何故なら伴奏のメンバーがすごすぎなんだよね。

夫の「ボブ・クーパー」他、よだれが出る様な豪華メンバーにサプライズです。

アルバムタイトル…ジューン・ガット・リズム

パーソネル…ジューン・クリスティ(vo)
      ボブ・クーパー(ts)
      フランク・ロソリーノ(tb)
      バド・シャンク(as、fl)
      ローリンド・アルメイダ(g)
      シェリー・マン(ds)    他

曲目…1.ロック・ミー・トゥ・スリープ、2.ジプシー・イン・マイ・ソウル、3.アイム・グラッド・ゼア・イズ・ユー、4.私からは奪えない、5.スイングがなければ、6.マイ・ワン・アンド・オンリー・ラヴ、7.ホエン・ライツ・アー・ロウ、8.アイ・キャン・メイク・ユー・ラヴ・ミー、9.イージー・リヴィング、10.ブルー・ムーン、11.神の子はみな踊る

1958年6月~7月 録音

原盤…Capitol T-1076  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5316

演奏について…オープニング「ロック・ミー~」は、旦那「クーパー」が、粘着系のテナーでねっとりと妻君をサポートする。
「クリスティ」は、(旦那と異なって)比較的ライトに、シングするのが、面白い。

2曲目「ジプシー・イン~」では、ピアノ伴奏が小洒落ていて、センスが溢れています。
「マン」のブラッシュ・ワークも的確に壷を得ていて、「クリスティ」が少し気だるい雰囲気のヴォーカルで行くのですが、「マン」がキッチリ〆て、抑えているのは流石ですね。

3曲目「アイム・グラッド~」…「アルメイダ」のお上品なギターが、素晴らしい効果を上げていて、goodなトラックに仕上がっています。
「クリスティ」の一寸、ハスキーなヴォイスに「アルメイダ」の全編に渡る、略ソロの伴奏が見事に同化しているんです。

4曲目「私からは奪えない」…オープニングと同じような、ミドルサイズ(人員)のコンボをバックに、「クリスティ」が気持ち良く歌い上げますが、中途での「マン」のソロや「ブルックマイヤー」のトロンボーンが、お洒落なアクセントとなって曲を彩るんです。
かなりポップな仕上がりですが、結構行けますね。

5曲目「スイングがなければ」…元来、超絶技巧の黒人パワー系シンガー(エラとかカーメンとか)が得意とする楽曲なんですが、ここでの「クリスティ」…頑張っています。
中間のスキャットも的確で、隠れベスト・ソングです。

6曲目「マイ・ワン~」もどちらかと言うと、男性ベルベット・ヴォイス系に合う曲だと思いますが、「クリスティ」はしっかりとこなして歌っています。
ここでも「アルメイダ」のギター伴奏が冴えて、それ以上に美しく、クールなのが「バド・シャンク」のフルートで、この二人のアシストが、「クリスティー」を強固にサポートしてくれています。

7曲目「ホエン・ライツ~」…1、4曲目と同じ様な編曲で、旦那他のホーン・プレイヤーの一吹きが、曲間で其々アクセントを付けてくれます。
「クリスティ」は割りと淡々と歌います。

8曲目「アイ・キャン~」ピアノ伴奏から、始まるメジャー・コードのバラード・ソングですが、中途からこの曲でもホーン群が加わり、ゴージャスな雰囲気を作ってくれます。
だが、この後で旦那の「クーパー」と、トロンボーン「ブッルクマイヤー」が魅惑的なソロを取り、ジャズの醍醐味が味わえます。

9曲目「イージー・リヴィング」…言わずと知れた超名曲ですが、「クリスティ」は、どの曲でもあまり感情的にならずに、さらりと歌い上げます。
この曲でも、同様のアプローチなのですが、「アルメイダ」のギターと「シャンク」のフルート、そしてオルゴールの音が、この曲をメルヘンチックに飾って、とても可愛らしい、かすみ草の様なイメージにしています。
あえて、感情を廃して歌う?と言うのも有りなんですね。

10曲目「ブルーン・ムーン」…「クリスティ」の歌と、ピアノ、ベース、ドラムスのリズム・セクションが程好くブレンドされた音色と編曲?により、とても都会的でかっこいい仕上がりです。
正にジャズ女性ヴォーカルの王道的な演奏ですね。

ラストの「神の子はみな踊る」…ピアノでは「バド・パウエル」の超名演が有りますが、ここでの「クリスティ」は、緩やかな歌い出しの序奏から、徐々に早いリズムテンポになって…また緩楽章に戻したりと、スピードに変化を付けて、飽きさせません。

全編に渡って、「クリスティ」のヴォーカルを全面に出した企画と言うよりも、スーパー・スター的なバック・ミュージシャンと同格扱いで、さりげないヴォーカルにプラスして、端的だが、素晴らしいフレーズを一吹き…と言った、スターたちの共演、コラボな雰囲気が楽しめるアルバムと言うべきでしょう。
いずれにしても、買いの一枚でしょう。

近年人気が再沸騰…ヴァラエティ・イズ・ザ・スパイス~ザ・ルイス・ヘイズ・グループ

2007-11-30 10:25:52 | ジャズ・コンボ
皆さん、お早うございます。
今日も代休が取得できたので、朝からブログを書きますね。

このアルバムは、「ルイス・ヘイズ」がリーダーで約30年近く前に出したのですが、収録曲や演奏内容から、近年クラブ・シーンで人気が再燃しているとの事でセレクトしました。
クラブで人気が有ると聴いて、アシッド・ジャズの原点?かと思う方がいらっしゃるかもしれませんが、実際はハードな内容で、一部にヴォーカルがフューチャーされていますが、正統派なアコースティック・ジャズとして大お薦めのアルバムです。

アルバムタイトル…ヴァラエティ・イズ・ザ・スパイス

パーソネル…リーダー;ルイス・ヘイズ(ds)
      ハロルド・メイバーン(p、el-p)
      セシル・マクビー(b)
      フランク・ストロージャー(as、fl)
      ティト・ソムバ(conga)
      ポルティーニョ(perc)
      レオン・トーマス(vo)…2、6トラック

曲目…1.ケリー・カラーズ、2.リトル・サンフラワー、3.スターダスト、4.ホワッツ・ゴー・オン、5.インヴィテーション、6.ナイシャ、7.マイ・フェイヴァリット・シングス、8.ダンス・ウィズ・ミー、9.ハンドレッド・ミリオン・ミラクル

1979年 NYにて録音

原盤…Gryphon G-787  発売…MUZAK
CD番号…MZCS-1057

演奏について…まず、私がこのアルバムを購入する時にアシストしてくれた名演、「マイ・フェイヴァリット・シングス」ですが、まず序奏で「メイバーン」がカラフルに煌びやかに、ブロック・コードでテーマを弾いて、皆のファイティング・スピリットを呼び起こす。
応えた「マクビー」がぶんぶんドライヴして、それにすぐさま反応して、「ヘイズ」のドラミングは勿論、コンガの「ソムバ」、パーカッション「ポルティーニョ」の気合も充分で、全員が一体となって煽り捲る。
とにかく「メイバーン」の名演が冴えていて、ホーン・レスの演奏ですが、聴き応え充分ですよ。

2曲目「リトル・サンフラワー」…ラテン・リズムから序奏が始まる、ヴォーカル入りのトラック。
リズム・セクションは最初からノリノリで行くが、この曲を素晴らしい仕上げに染めているのが、「ストロージャー」のフルート。
やはり、ラテンとフルートってバッチグーに合いますね。
所々の「口笛」(これはヴォーカルの「トーマス」が吹いているんでしょう?)も効果が抜群です。
「ソムバ」のコンガ…まじに行けてます。
「ポルティーニョ」のパーカッションの一連の楽器群が、粒立ち良く彩りを添えて、効果抜群で、来てます。
勿論、「トーマス」のアンニュイな雰囲気のヴォーカルも、どことなく「デヴィッド・ボウイ」のジャズ・ヴァージョン版みたいでgoodですよ。
この曲は確かにクラブ・シーンには、ど真中の当りですね。

3曲目「スターダスト」では、「ストロージャー」のアルト・サックスを中心に、見事に統制された、ワンホーン・カルテット演奏が気持ち良い。。。
「ストロージャー」のアドリブ・ソロは奇を衒ったとこが無く、的を射た、それでいてセンスと感性も充分で、素晴らしい演奏です。
「マクビー」の分厚いベース、「メイバーン」の品有る伴奏、そしてリーダー「ヘイズ」のドラムも、「ストロージャー」を強固にアシストします。

オープニングの「ケリー・カラーズ」…80年代(実際は79年だが)の、到来を告げるファンキー・チューン。
「キャノンボール」等が演っているよりは、かなり都会的なイメージのファンキー曲だ。
「ストロージャー」の序奏のアドリブ演奏も良いが、やはり中盤からガツンと出て来る「メイバーン」のピアノが最高に行けてる。
「マクビー」と「ヘイズ」、そして「メイバーン」の織り成すリズム・セクション・トライアングル演奏は完璧です。
中盤の「マクビー」の重厚なベース・ソロ…かっこいいの一言です!!
分かり易く言えば「大人による、大人のための、大人が(演る&聴く)ジャズ」です。

4曲目「ホワッツ・ゴーイング・オン」…「マーヴィン・ゲイ」の有名ポップス曲を、ジャズにアレンジした曲だが、セプテット(全員)による、コンボ演奏によってビッグ・バンド風で楽しい1曲に仕上げてます。
「ストロージャー」は、かなりフリーに吹いてくれますし、「メイバーン」もテクニックを見せびらかして、華麗なカデンツァを弾いてくれます。
「ヘイズ」は、あえて全員に自由にやらせていながらも、しっかりとコントロールしているドラミングは、見事と言って良いでしょう。
一聴ごちゃごちゃに聴こえるんですが、耳を凝らすとしっかりと統率が取れているんです。

5曲目「インヴィテーション」では、「ストロージャー」のカデンツァから、曲が劇的に始まる。
「ポルティーニョ」のギロ、「メイバーン」のブロック・コード、そして「ヘイズ」のシンバルが「ストロージャー」をフォローしていて、この後「マクビー」が強烈なベース進行で、皆を引っ張って行きます。
それからが、またまたこの、名人リズム・トライアングルがぶんぶんと疾走をするんです。
ドライヴィング力が半端じゃなく、鳴門の渦潮並に?引っ張り込まれそうです。
「ストロージャー」も再度、カデンツァを吹き鳴らし、この3人と渡り合います。
フィナーレも劇的で、最もバトル性が出された演奏がこの曲で、まじお薦めです。

6曲目「ナイシャ」…「ストロージャー」の哀愁あるアルト・サックスと「メイバーン」の流麗なピアノに導かれて、「トーマス」が味わい深く、男の色気を纏わせたヴォーカルを、バッチリ決めてくれます。
「トーマス」のこの歌い方は、悪さが取れた「マーク・マーフィー」の様ですね。
但し、「ストロージャー」他、全員がバック・バンドに徹しているシチュエーションの録音では無いので、主役「トーマス」が休憩中?に、ヴォーカル抜きのバンド演奏の時では、主役を喰っちゃうぐらい素晴らしいカルテット演奏をしてくれますよ。

8曲目「ダンス・ウィズ・ミー」…これは現在のクラブ・シーンにドンピシャのダンス・ナンバーです。
「メイバーン」のエレピ、「ストロージャー」のファンク色全開のアルト演奏が、ダンス・ミュージックに、はまります。
「ソムバ」「ポルティニョ」のラテン・パーカッショニストたちもエネルギーを100以上発散させていて、正しくノリノリ。
70年代フュージョン全盛期の、横綱、真打登場と言った感がする、ダンサブルな1曲です。

9曲目「ハンドレッド~」は、序奏からモンク調の怪しげなテーマが吹かれてから、「ヘイズ」の独壇場と化して、超絶ドラムを敲き捲る。
とにかく、アルバム・タイトル…「ヴァラエティ~」と名売って、色々な曲を演ってきたが、リーダー「ヘイズ」は、それ程見せ場を作らず(作れず?)、ちょこっと欲求不満?だったのを、最後の暴れドラミングで、発散させてフィナーレ!って言う所でしょうか。

いずれにせよ、聴き応え充分な好アルバムで、お墨付きです。

面白可笑しくて…こう言うジャズも有って良い。サム・ブテラ~ザ・ビッグ・ホーン

2007-11-27 15:33:03 | ジャズ・テナー・サックス
今日3枚目のアルバム紹介と行きましょう。

さて、前作は相当ヘヴィーな内容で、歴史的な意義の有るアルバムでしたので、今回のは、飛切りハッピーで脳天気なのを行っちゃいましょう。

テナー・サックス奏者「サム・ブテラ」が、ホーンセクションをバックに、ロックンロール(古い8ビート)リズムに乗って、スタンダード曲、ポップスを楽しく吹き捲るアルバムがこれなんです。

アルバムタイトル…ザ・ビッグ・ホーン

パーソネル…サム・ブテラ(ts) 他

曲目…1.ラ・ヴィアン・ローズ、2.オール・ザ・ウェイ、3.テネシー・ワルツ、4.ラヴ・イズ・ア・メニー・スプレンダード・シング、5.トゥー・ヤング、6.アラウンド・ザ・ワールド、7.スリー・コインズ・イン・ザ・ファウンテン、8.アイ・ラヴ・パリス、9.オン・ザ・ストリート・ホエア・ユー・リヴ、10.ヘイ・ゼア、11.ザ・ソング・フロム・ムーラン・ルージュ、12.ロッカ・バイ・ユア・ベイビー・ウィズ・ア・デキシー・メロディ

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6303

演奏について…正直に言って、この曲がベスト演奏…等と解説を入れる様な類の演奏では無いんです。
「ブテラ」が楽しくサックスを吹く事に意義が有ると言っても良いんです。
全曲ほぼ良く知られた、スタンダードやポップス曲なので、「ブテラ」の演奏に追いて行って、鼻歌でもハミングでも歌ったらOKでしょう。

でもその中で、解説して見たいと思います。

オープニングの「ラ・ヴィ・アン~」…低音をアクセントに、陽気にぶいぶいと「ブテラ」が吹いてくれます。
名前が分かりませんが、ドラムスが「ブテラ」の次に乗っていて、演奏を盛り上げます。
最後の「ブテラ」の一啼きも絶妙です。

2曲目「オール・ザ・ウェイ」では、エレキ・ギターと「ブテラ」の掛け合いが寛ぎ系で好感が持てます。
中間からアクセントをもたらす為に、「ブテラ」が急速調に吹く所がお洒落です。

3曲目「テネシー・ワルツ」…普通のワルツではなく、何と言うかブグウギ調で、派手で、陽気で、まじに楽しい。
アホかと言いたいくらいに楽しんで、アドリブを演ってくれる「ブテラ」に感謝!
メロディをあまり変えずに、極限まで楽しくいじった名演?です。

4曲目「ラヴ・イズ~」…日本での50年代に流行った演歌ポップス調のリズムが面白い。
中間から、ドラムスとデュオで煽る様に高速で吹いて…うぅーん楽しいねぇ。

5曲目「トゥー・ヤング」…ピアノ・トリオをメイン・バックにして「ブテラ」が吹きます。
所々でホーン・セクションがワンポイントで、合いの手を入れてくれます。

6曲目「アラウンド・ザ・ワールド」…ラテン・リズムかな?
いや、途中で中国の曲に変わった。
と思ったら、今度はマーチング・バンド調に………。
そうか、これで「ワールド」を意識付けている訳なのか?

8曲目「アイ・ラヴ・パリス」…こう言う下品な演奏…嫌いじゃない。
いや、むしろ大好きだ!
バックのホーンは、「ウェスト・サイド・ストーリー」を彷彿させる、都会的なリズムに乗って、「ブテラ」がとにかくお下品に悪乗りで吹くんです。
正にぶいぶい言わしているんです。

9曲目「オン・ザ・ストリート~」…「ブテラ」…未だ絶好調てな感じで、ワンパターンは変えずに、とにかく楽しくシャウトしてくれて、期待を裏切らないです。

11曲目「ザ・ソング~」…このアルバムらしくラテン調のリズムに乗って、「ブテラ」が気持ち良く吹き切るんです。
ホーン群が下流のゴージャスさを見せ付け?3流のジャズ演奏って言うのを、あえて見せびらかして…ここまで来ると決して下品じゃないねぇ。
だって、「ブテラ」は分かっていて(計算していて)演ってるんだから…。

全曲に渡って、そうポップ調の50年代の女性ジャズ・ボーカルにホーン版と言ったら分かり易いかな?
つまり、コマーシャリズムに染まっているけど、聴いたら間違いなく楽しくて、はまっちゃうイメージなのかな?

ロック・ギター史上に名を遺す傑作…魂の兄弟たち~C・サンタナ&M・J・マクラフリン

2007-11-27 12:23:49 | ロック
今日の2枚目アルバムは、表題通りロック・ギター・アルバム史上で、傑作と呼ばれている作品ですが、演奏内容からすれば、「ジャズ」と言うカテゴリーに入れても何ら違和感が無いばかりか、ジャズ・ギターとして歴史的なアルバムと言う位置付けでも十二分に評価されるべき作品だと思います。
何故ならば、「カルロス・サンタナ」と「マハビシュヌ・ジョン・マクラフリン」の二人が「ジョン・コルトレーン」にトリビュートして、彼に捧げたアルバムだからです。

特に演奏している曲目に着目して下さい。
何と1曲目に「至上の愛」を演っているんです!
「神」に挑戦する、いや(畏怖の念を抱き、楽器で祈る)この二人の勇気と行為を改めて賞賛して下さい。

アルバムタイトル…魂の兄弟たち

パーソネル…リーダー;カルロス・サンタナ(g)
      リーダー;マハビシュヌ・ジョン・マクラフリン(g、p)
      カリッド・ヤシン「ラリー・ヤング」(org)
      アーマッド・ペラザ(conga)
      ビリー・コブハム(ds)
      ドン・アリアス(ds)
      ジャン・ハマー(ds)
      ダグ・ランチ(b)
      マイク・シュリーヴ(ds)

曲目…1.至上の愛、2.ネイマ、3.神聖なる生命、4.神の園へ、5.瞑想、6.至上の愛(オルタネイト・テイク2)、7.ネイマ(オルタネイト・テイク4)

1972年録音 1973年6月22日オリジナル・アルバム・リリース

原盤…Columbia KC32034  発売…SONYミュージック
CD番号…MHCP-2029

演奏について…1曲目「至上の愛」…この1曲目に「サンタナ」と「マクラフリン」は全てを賭ける。
彼等二人を強烈にサポートするのが、オルガンの「コルトレーン」こと「ヤシン:ラリー・ヤングの別名」で、そのサポートと「ラブ・シュープリーム」のテーマのパーカッションを受けて、「サンタナ」「マクラフリン」が縦横無尽にギターを掻き鳴らす。
テクニックはさることながら、それ以上に注目すべきは、演奏スピリットだ!
ここでの演奏は、「神」へのチャレンジでは無く、あくまでも「神」に対して祈りを捧げている演奏に聴こえる。
「コルトレーン」に対して、楽器やジャンルは違えど、我々は貴方の音楽精神を踏襲し、伝えていきたいのです。との決意表明とも言えるだろう。
ギターとオルガンが織り成す小宇宙の先に、小さいが強く明るい希望の光が見えている。

2曲目「ナイマ」…これも「コルトレーン」の曲だが、「至上の愛」とは全く異なったアプローチで、二人のアコースティック・ギターによってデュオ演奏がなされる。
瞑想と言うべきか、静寂と言うべきか、正に「コルトレーン」の墓前で無心に祈りを捧げている様が見える。
アコースティック・ギターのナイーブで物悲しい音質が、貴方の心を静かに揺さぶるでしょう。

3曲目「神聖なる生命」…「コルトレーン」亡き後、新たなミュージック・シーンの到来と、彼等自らが時代を背負って行く事を高らかに告げるトラック。
パーカションに煽られ、掛け声を言いながら曲を進行させているのは、彼等なりの「至上の愛」と取ったら良いのでしょうか?
全員が一体となって演奏に邁進し、宇宙空間にトリップする、熱狂的なトラックです。

4曲目「神の園へ」…彼等は「コルトレーン」の聖地に到着したのであろうか?
肉体は勿論、死んではいないので有り得ないが、精神は「神」「師匠」の元へ着いたのであろうか?
ギター、オルガン共々フル・トーンで演奏がなされるのだが、とても静かだ!
精神が極みに近づき、楽園へと心が舞い降りる。
その後、パーカッションはことさら楽しげに敲きあい、「サンタナ」「マクラフリン」のギターも各々に狂喜乱舞する。
音楽と言う世界観が、「神」に最も近づいた時、その「神」の「精神」が彼等の肉体についに宿る………。
「コルトレーン」は己の魂を削って吹き続けたと思っていたが、実は違うのでは無いか?と思わせる曲です。
「神」も実は、音楽は楽しい物だと最終的に言いたかったのかも知れません。
それとも「サンタナ」「マクラフリン」が、「コルトレーン」に叩き付けた「挑戦状」「回答」がこれなのかも知れません。
いずれにせよ、曲の中盤から後半にかけて、明らかに彼等が吹っ切れて、迷い無くギターを弾き切っている(ギター小僧になっている)のは確かです。
このアルバムでのオリジナル曲では、間違い無くナンバー1の名演です。

5曲目「瞑想」…短いが、とても東洋的で、そして名旋律の良い曲です。
前の曲(演奏)で、燃えに燃えて疲れ切った心と体を、クールダウンし、自らを癒すヒーリング・チューン…「サンタナ」「マクラフリン」…恐るべし!!!

また、サージ・チャロフ行っちゃおうかな…ブルー・サージ

2007-11-27 08:37:40 | ジャズ・(他)サックス
先週は休日も働いていたので、今日は代休を取っています。
ですから、朝からアルバム紹介行っちゃいましょうかね。

先週一度お目見え(紹介)した、「サージ・チャロフ」なんですが、今回は何がすごい(魅力)と言いますと、バックのトリオが良いんです。
ピアノが「ソニー・クラーク」、ベースが「リロイ・ヴィネガー」、そしてドラムスが「フィリー・ジョー・ジョーンズ」なんですよ。
ハッキリ言って、ジャズ・メンのランク的には「チャロフ」が一番格下ではないでしょうか?
ついでに、ジャケットも超魅力的な逸品で、言う事無しです…ハイ!!

それでは紹介します。

アルバムタイトル…ブルー・サージ

パーソネル…リーダー;サージ・チャロフ(b-sax)
      ソニー・クラーク(p)
      リロイ・ヴィネガー(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ア・ハンドフル・オブ・スターズ、2.ザ・グーフ・アンド・アイ、3.サンクス・フォー・ザ・メモリー、4.オール・ザ・シングス・ユー・アー、5.アイヴ・ガット・ザ・ワールド・オン・ア・ストリング、6.スージーのブルース、7.ステアウェイ・トゥ・ザ・スターズ、8.ハウ・アバウト・ユー

1956年3月4日録音

原盤…Capitol T-742  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5431

演奏について…1曲目「ア・ハンドフル~」…オープニングに相応しく、まずは一寸小手調べと言った感じで、「チャロフ」は余裕を持ったアドリブを吹き、受ける「クラーク」のシングルトーンもとても軽やかで、ライトな雰囲気で曲が進む。
「ヴィネガー」のソロは朴訥系だが音量が大きく、大地に根をおろした重厚さが魅力です。
「フィリー・ジョー」は所々でスゴテクを披露してくれて…4人が正しく対等に渡り合うアルバムだと言うことを、意識付けられます。

2曲目「ザ・グーフ~」は、高速のリズムで各人がテクニシャンだと言うことを改めて感じ得ます。
ぶんぶんドライヴィングする「ヴィネガー」と、バリトン・サックスで吹き切る「チャロフ」の技術の高さに圧倒されますね。
勿論、「フィリー・ジョー」は、この程度の高速リズムはお手の物と言った所で、自由奔放にドラムを敲いてくれます。
テクニック的には最もお薦めの一曲です。

3曲目「サンクス・フォー~」…このアルバムでベスト1の名演と思われる、スローテンポのバラッド!
この曲の主役は誰が何と言おうと「チャロフ」である。
この雰囲気、切なさ、叙情性、そして色香…バリトン・サックスと言う楽器じゃないと表現できないのでは?と思う。
それも、「チャロフ」じゃないと出せないトーン…そう、唯一無二の音色なんですよ。
同じ楽器の名人、「ジェリー・マリガン」とは、本質的に出す音が違うんだよね。
「マリガン」は、もっとライトで且つクールに吹く。
言うなれば都会的なバリトン・サックスなんだけど、「チャロフ」は「男芸者」…ものすごい色気が有る、悪魔の音色なんですね。

4曲目「オール・ザ・シングス~」…「チャロフ」との対決?で、「クラーク」が良い仕事をしてくれます。
哀愁あるシングル・トーンが、とても冴えてますよ。
終始、分厚いベースを淡々と刻み続ける「ヴィネガー」も素晴らしい出来栄えで、録音的にも低音が締っていながら、重厚感を失わずに、聴き応えが有ます。

5曲目「アイヴ・ガット~」…この曲も「ヴィネガー」の分厚いベースに導かれて序奏がなされる。
「チャロフ」のソロは、このベース音に合わせて、低音域を有効に活用して味わい深いです。
中間から、やや高速のフレーズを用いて、曲にアクセントを付けてくれます。
「フィリー・ジョー」はさりげないが、曲間でおかずを沢山つけたドラミングで、チョコッと自己主張するのが、お洒落~って感じでしょうか。

6曲目「スージーのブルース」は、「チャロフ」が演るブルースだけに黒くはないんです。
こんな雰囲気のブルースもたまには良いのではないでしょうか?

7曲目「ステアウェイ~」…この静かなバラッドも良いですね。
ひっそりとさりげなく、「チャロフ」のサックスをサポートする、バックの名人3人の演奏が、とにかく品が有って聴き物でしょう。
「クラーク」のライトなアドリブ…粒が立っていて煌びやかです。
「ヴィネガー」のベースは、一音一音に真面目さと太い芯が存在していて、安心してしまいますね。

8曲目「ハウ・アバウト・ユー」はCD化にあたってのボーナス・トラック。
「チャロフ」がノリ良く気持ち良く吹いてくれて、「フィリー・ジョー」も元気が出るドラムを敲いています。

最後に…このアルバムの真のリーダーは、ずばり「ヴィネガー」でしょう。
「チャロフ」のバリトン・サックスの(音色)の魅力はさることながら、全編、全曲に渡って、分厚く一本芯がピシッと通った、ヘヴィなベースを終始弾いている「ヴィネガー」のおかげで、ライトな曲(演奏)でも、「フィリー・ジョー」が所々ではしゃいでも、高尚でエヴァー・グリーンな魅力を放つアルバムを作れたのは、彼の影響が大たる証拠です。

ベース良ければ全て良し…の最たるアルバムの一つだと思います。

このバンド(コンボ)のメンツもすごいぜ!クリフォード・ブラウン・オール・スターズ~キャラヴァン

2007-11-25 16:05:19 | ジャズ・コンボ
一週間さぼった?ので、今日3枚目のアルバム紹介行っちゃおうかな?
演奏曲はわずか2曲(このCDには追加曲1曲有るので、3曲)で、間延びする演奏か?と思うと全く違うんです。
曲の題材は、2曲とも超の付く名曲、「キャラヴァン」と「ニューヨークの秋」で、これを料理するのが、「クリフォード・ブラウン」&「マックス・ローチ」の二人に多くのスター・プレイヤー達が参加して、スーパー・コンボを形成して、圧倒的な迫力の演奏をしてくれるのです。

アルバムタイトル…キャラヴァン

パーソネル…クリフォード・ブラウン・オール・スターズ
      リーダー;クリフォード・ブラウン(tp)
      リーダー;マックス・ローチ(ds)
      ハーブ・ゲラー(as)
      ジョー・マイニ(as)
      ウォルター・ベントン(ts)
      ケニュー・ドリュー(p)
      カーティス・カウンス(b)
     
曲目…1.キャラヴァン、2.ニューヨークの秋、3.キャラヴァン(ザ・ボス・マン)

1954年8月11日 LAにて録音

原盤…EmArcy MG-36102  発売…マーキュリー・ミュージック・エンターテインメント

CD番号…PHCE-3063

演奏について…まず、表題曲であり、オープニング曲でもある「キャラヴァン」だが、「ローチ」のラテン・ドラミングから、管楽器のユニゾンによって序奏がなされる。
先人はアルト・サックスの「ジョー・マイニ」で、この演奏がかなり熱く、素晴らしいアドリブも相成った名演奏なんですよ。
陸上のリレーで言えば、第一走者から見事なスタート・ダッシュ成功と言った所でしょうか?
次いでテナーの「ベントン」が、実直なソロを取り、見事にバトン渡し成功。
その後の「ゲラー」のアルト演奏も中々良いですよ。
そして、真打「ブラウニー」登場!!
相変わらず、唯一無二の正確無比、とにかく輝かしい艶やかな音色のトランペットを高らかに吹き切る。
それから、この軍団を見事にドライヴィングしているのが、名人「ローチ」以上に、実はベースの「カウンス」なのである。
彼のドライブ推進力は「すごい!」の一言で、低音ながら皆を煽り捲る。
とにかくパワフルなエンジンを搭載した重戦車の様なベースに脱帽です。
その後では、お待ちかね「ドリュー」のファンキー&ナロウなピアノ・ソロに身を預けたい。
フィニッシュ前の「ローチ」の駄目押しの超絶ドラム・ソロも決まり物です。
演奏の総括として、「ブラウン」のソロ自体は短いが、各人が素晴らしいチーム・ワークで、名曲の名演を作り上げた、最高のパフォーマンスと言って良いでしょう。
     
2曲目「ニューヨークの秋」では、「ブラウン」がとても正統的で、真面目な曲のテーマをピアノ・トリオをバックに吹き切る。
奇を衒わず、メロディに殆ど忠実なのだが、そこは「ブラウニー」が「ブラウニー」たる所以で、音色や技術の確かさだけで、このスタンダードバラッドの魅力を余す事無く伝えています。
その後では「ドリュー」が、晩年を思い出させる(この時は思いもよらなかったかも知れないが…)ロマンティックなピアノ・アドリブを演奏して、更に曲の魅力を増させるのです。
「マイニ」のソロは、前奏の「キャラヴァン」同様に、素敵なアドリブ・フレーズを紡ぎ出して、職人技の存在感を見せますね。
「ベントン」のテナーは、哀愁が有って曲にすごく雰囲気がマッチしております。
そして演奏から約15分経った所で、「カウンス」のベース・ソロがやって来る。
朴訥として、不器用な雰囲気のタッチだが、逆にスター連中が次々吹いているこの曲では、全員がでしゃばらない方が、センスが有って良いと思う。
まぁわざと、ベース・ソロをガツンガツンと行かなかった様な気がしないでもないなぁ。
終盤のアルト・ソロは「ゲラー」なのかな?
このアルトサックスのソロはかなり行けていて、絶品ですね。
最後に、全体的に見ると、やっぱり「ドリュー」の伴奏の出来が良いと思う。
独特のタッチ(音)から、伴奏しているんだけど、さりげなく自己主張にもなっているブロック・コードの魅力に参った(降参)です。

3曲目は「キャラヴァン」(別テイク)の「ブラウニー」のソロ部分だけを取り上げた演奏なんですが、曲の断片だけでも彼のすごさは良く分かります。
長生きしていたら、やはりトランペット界の頂点に立つべくアーティストだったのでしょう。
※「マイルス」は音楽界の総合アーティストとして、「ブラウン」は、あくまでもジャズ・トランペッターとしてですが…。。。

「コルトレーン」の遺作…「ジョン・コルトレーン」~「エクスプレッション」

2007-11-25 13:43:31 | ジョン・コルトレーン
ハードに真摯に命を削ってサックスを吹き続けた稀代のアーティスト、「ジョン・コルトレーン」の最期の作品…それがこの「エクスプレッション」です。

史上最強のオリジナル・カルテットから、「アリス・コルトレーン」の夫人を含むフリー系のクインテットにチェンジしてから、過激な?演奏内容と長大な演奏時間に変貌して行った「コルトレーン」ですが、ここでの演奏は、正しく悟り、窮め、「グル」になったと言える、静寂の演奏がなされています。

アルバムタイトル…エクスプレッション

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ts、fl)
      アリス・コルトレーン(p)
      ジミー・ギャリソン(b)
      ラシッド・アリ(ds)
      ファラオ・サンダース(piccolo)

曲目…1.オグンデ、2.トゥ・ビー、3.オファリング、4.エクスプレッション

1967年2月15日、3月7日 録音

原盤…Impulse A-9120  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…32XD-597

演奏について…最も興味深い演奏として、2曲目「トゥ・ビー」の「コルトレーン」のフルート演奏が挙げられよう。
実は、ここで演奏に使われている楽器(フルート)は、無二の親友「エリック・ドルフィー」の遺品なのである。
「ドルフィー」は、このフルートにより、「ラスト・デイト」の「ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ」での白鳥の歌、絶唱を描ききった(演じきった)が、これは志半ばで命が尽きた「ドルフィー」の無念さが、美しさの中に、介錯された血が、垣間見える様な痛みを伴っている演奏から理解できると思う。
しかし、「コルトレーン」は同じフルート演奏だが、「ドルフィー」の様な、血の匂いがしない。
とてもクリヤーで、無我の境地にいる演奏である。
と言うのも、「コルトレーン」は、遣り残した事が余り無かったからだと思う。
確かに、41歳と言う若さであったが、ジャズと言う音楽形態の中で、死後40年以上経った今でも、未だ誰も到達出来ない高み(極み)へと昇った、稀有のアーティストだけに、彼が存命だったとしても、これ以上にやれた事(演奏)は、もはや殆ど無かったと言っても良いと思うからです。
とにかく、虚飾を廃し、ピュアに音楽(ジャズ)を演じきった演奏は、とめどなく美しいのです。
「サンダース」のピッコロ演奏も、彼に似合わず?静寂の美学伴奏を貫き通しているし、「アリ」の空間的なブラッシュ・ワークも影でいながら、存在感を見せる。
但し、中間で「サンダース」が小鳥が飛翔する様な、自由奔放の見事なカデンツァを奏でています。
「アリス」は「偉人」である夫に対して、恐れを抱かぬのか?唯一自由に、終始アドリブを演奏しているのがアクセントになっている。
いずれにせよ、「コルトレーン」が最終的になろうとしていた、賢者(グル)に近づいた、最も東洋的(インド哲学的)な趣を感じ得る、演奏&曲に仕上がっています。

タイトル曲「エクスプレッション」も、激しさの中に垣間見れる、落ち着きと静寂が、聴いている者を浄化させる。
「アリス」はモードに副って、自由にアドリブを演奏する。
妻で無ければ、出来ないアドリブです。
「ギャリソン」は徹頭徹尾、リズム・キーピングに終始していて、大将を援護射撃している。
終盤では、「コルトレーン」が最後の力を振り絞って、シャウトしまくるのは、大将の務めとして当然なのだろう。
因みに、1曲目以外は「ファラオ」レスなのは、アルバム上、どう言った意図があったのだろうか?
やはり、「トレーン芸術」は、ワンホーン・カルテットが最高のパフォーマンスを形成するのに相応しいと、出た答なのか?

3曲目「オファリング」…このアルバムの中では最もアグレッシブな「コルトレーン」の演奏が見て取れる。
病んでいるとは思えない程、張りのあるトーンで、シーツ・オブサウンドを止め処なく繰り出す。
中間部のカデンツァで、「コルトレーン」とのバトルを受けるのは、タイム感覚が優れた「アリ」で、この二人のデュオは手に汗を握る。
「コルトレーン」は、「アリ」のドラミング・スピードに挑むかの様に、演奏スピードをグングン上げて、シンバルの音が咲き乱れ、テナーの絶叫が乱舞する。
美しく、切ない、そしてとても激しいバトルだ。
最後には、いたたまらなくなったのか、「アリス」がさりげなく助け舟を出す。
これは余計な事なのか?それとも内助の功なのか?

オープニングの1曲目「オグンデ」は、中期の傑作バラードアルバム、「クレッセント」を彷彿させる、抑え目のトーンと紡ぎだす「シーツ・オブ・サウンド」のアドリブが真に美しい、短いが素晴らしい演奏である。
雨だれの様な連弾で旦那をサポートする「アリス」、サポーターとして申し分無い、「アリ」と「ギャリソン」の演奏も良いですね。

私の稚拙紹介文なんて全く不必要な歴史的名盤…ジャズ・アット・マッセイ・ホール

2007-11-25 11:26:00 | ジャズ・コンボ
皆様、お早うございます…いや、お久しぶりです。
先週は、とにかく多忙な一週間で、ブログ更新どころかブログの閲覧すらしていない状況で、大変ご迷惑をおかけしました。
今週から、気合を入れ直して書きますぞ!って言いたい所ですが、仕事の疲れで体調も崩しており、今日も床に臥せながら、やっとブログを書いている次第でして…

まぁ、言い訳はさておき、このアルバムについて説明すると…ジャズの大巨人5人「クインテット」が、カナダ、トロントのマッセイ・ホールにて、一期一会でセッションをした伝説の一夜の事である。

セッション参加のメンバーと言うと、アルト・サックスが「チャーリー・チャン」こと「チャーリー・パーカー」、トランペット…「ディジー・ガレスピー」、ピアノ「バド・パウエル」、ベースが「チャールス・ミンガス」そしてドラムが「マックス・ローチ」。

正にモダン・ジャズの創世紀、バップの大巨人が一同に会した、奇跡の演奏(レコーディング)なのである。

尚、今回は当初発売された「ミンガス」が企画したアルバムでは無く、オリジナル・レコーディングのマスター・テープでの演奏(アルバム)を紹介させて頂きます。

アルバムタイトル…ジャズ・アット・マッセイ・ホール~フロム・オリジナル・レコーディング

パーソネル…チャーリー・パーカー(as)
      ディジー・ガレスピー(tp)
      バド・パウエル(p)
      チャールス・ミンガス(b)
      マックス・ローチ(ds)

曲目…1.ウィー、2.ホット・ハウス、3.チュニジアの夜、4.パーディド、5.ソルト・ピーナッツ、6.オール・ザ・シングス・ユー・アー~52丁目のテーマ

1953年5月15日 トロント、マッセイ・ホールにて録音

原盤…debut  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23061

演奏について…1曲目「ウィー」…ノッケから「パーカー」、「ガレスピー」が、素晴らしいアドリブ連発で、いきなりトップ・ギアで疾走する。
特に「ディズ」の出来が抜群で、ブリリアントな音色で、快活なフレーズを次々に繰り出して聴衆をこの「スーパー・コンボ」の世界へと引き込む。
続く「パウエル」も絶好調…病院から出てきたばかりとは思えない程、感性が冴えている。
「ローチ」も大巨人のソロイスト達に負けてはいられないと、超絶技巧のドラミング・ソロをかまして存在感を見せ付ける。

2曲目「ホット・ハウス」…ここでもテーマは、巨人2管のユニゾンから始まる。
すぐに「バード」が煌くソロを吹くのだが、何がすごいかと言うと、ここで演奏している楽器(アルト・サックス)がプラスチック製のおもちゃ同様の品物だと言う事で、そのおもちゃでもすごいアドリブを次々に繰り出す所なのです。
余談ですが、勿論、この曲に限らず、この日の演奏(録音)の全曲が、このおもちゃアルトにて演奏されているんですよ。
詳細はCDの解説書や、「マッセイ・ホール」についてのジャズ記事などを読んで頂ければ幸いです。
この後、「ディズ」「パウエル」は1曲目同様、冴えてますし、「ミンガス」もソロパートが用意されており、「しかめっ面」で不気味に演奏している様が眼に浮かびます。
残念なのは、ベース音がしっかりと録られていない事なんですが、これにより当初発売のこのアルバムでは、「ミンガス」が録音・発売の権利を持った事もあって、ベースのパートだけ「オーヴァー・ダビング」しての発売がなされたのです。

3曲目「チュニジアの夜」…とにかく「バード」の出来が最高潮で、汲めど尽きぬアドリブ・フレーズが洪水の様に繰り出されるんです。
「ガレスピー」は、この曲では音のうねりを重視したソロを取って、クレシェンドとデクレシェンドの演奏対比が見事で、流石チュニジア(アフリカ)の夜は激しいと言うのを伝えてくれます。
「パウエル」はいかにも「パウエル」らしく、思うがまま天才の煌きに従って演奏している。
このスーパー・コンボのアクセント役は、ハッキリ言って「パウエル」でしょう。

4曲目「パーディド」…今までの3曲がかなりハードな演奏だったのか?ここらで一休み的に、ラテン・リズムの寛ぎ系のテーマから始まる。
「バード」もラテン好きなアーティストなので、この演奏では余裕を見せながら、気楽に吹いているのが良いですねぇ。
しかし時々、高速のアドリブ・フレーズを織り交ぜて、自身のスキルをチラ見せするのが、乙と見るか?いやらしい(笑)と思うか?どっちかなぁ。
「ガレスピー」は、終始、大真面目に曲に取り組んでいて、好感が持てます。
「パウエル」…本当に彼は自由人そのもので、これだけのメンバーがいても臆する事無く、我が道を突き進む。
と言って、勝手気ままに演っている訳ではなくて、独自スタイルで演っても天賦の才によって、他のミュージシャンにピタッとマッチしちゃうんです。

5曲目「ソルト・ピーナッツ」…一番リラックスした名演で、「ディズ」が曲目「ソルト・ピーナッツ」を地声で言うのが、面白おかしくて…goodです。
しかし演奏に入ると「ガレスピー」のエネルギー爆発で猛演ですぞ。
「パウエル」は軽やかにしかしスピーディにアドリブを注ぎ、スポーツカー的な演奏が聴き所です。
彼等を強烈にドライヴィングする「ミンガス」と、ここが最後の見せ所とばかり、ガツン、バキン、ドカンとドラムをぶっ敲く「ローチ」の劇演は更に良いです。

ラスト「オール・ザ・シングス~」…解説書によると、どうやらこの日の演奏では無いらしく、ピアニストが「パウエル」では無く、「ビリー・テイラー」らしい。
そう言われると、今までの演奏とピアノは随分違う感じがする。
有る意味コンボとしては、「テイラー」の演奏の方がしっくりくるし、統制が取れているかもしれません。
だが、毒が無いのはつまらないとも言えますよね。
これだけのメンバーが集まったら、全員毒ガスでもミサイルでも何でもありだと思うし、統制なんか全く考えずに、ゴーイング・マイ・ウェイの「パウエル」だからこそ、やはり「マッセイ・ホール」なんだと思います。
ただし、演奏は悪くは無いですよ、いやむしろ名演奏と言った方が良く、私個人的には大好きなんです。
「ローチ」、「ミンガス」とも「テイラー」?の意図を理解しているのか、この曲ではバック・ミュージシャンとして、2管の二人をきっちりサポートしています。
この演奏がオリジナル・バンドだったなら、実はこの演奏が一番の名演だったかも知れません。
しかし、「マッセイ・ホール」と言う事を考慮すると…アルバムに収めなくても良かったかも…。。。

寺島先生曰く、悪魔が住むバラッド演奏…サージ・チャロフ~ボストン・ブロウ・アップ

2007-11-18 11:57:40 | ジャズ・(他)サックス
おはようございます。
今日はバリトンサックス奏者、「サージ・チャロフ」の代表的なアルバムを紹介しましょう。

タイトルに有ります様に、ジャズ評論家「寺島靖国」先生がCDの帯解説に、「悪魔が住むバラッド云々…」と、興味起こり捲りの文字が記載されており、当時私は購入した覚えが有ります。
PS…「寺島氏」のお薦めする「ジャズ購入本」の類の幾つかの書誌には、このアルバムは何度も推薦されていた事が、もう一つの購入理由でも有るんですが…。
いずれにせよ、「コルトレーン」等の奏でる、ハードな東海岸ジャズとは全く別物の白人、西海岸ジャズを堪能してみては如何でしょうか?

アルバムタイトル…ボストン・ブロウ・アップ

パーソネル…リーダー;サージ・チャロフ(bs)
      ハーブ・ポメロイ(tp)
      ブーツ・ムッスリ(as)
      レイ・サンティシ(p)
      エヴァレット・エヴァンス(b)
      ジミー・ジターノ(ds)

曲目…1.ボブ・ザ・ロビン、2.イエスタデイズ・ガーデニアズ、3.サージカル、4.ホワッツ・ニュー、5.マー・ドロス、6.ジュニア、7.ボディ・アンド・ソウル、8.キップ、9.ダイアンズ・メロディ、10.ユニゾン

1955年録音 MONO

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5374

演奏について…「寺島先生」をよいしょする訳では無いが、やはり何と言ってもスタンダードのバラッド曲2曲が、群を抜いての聴き物です。

まず、4曲目の「ホワッツ・ニュー」…真に美しい「サンティシ」のピアノ序奏からいきなり曲に惹き込まれかと思うと、その後のチャロフの演奏が…感涙物です。
アドリブ・メロディの美しさも有るが、とにかくバリトン・サックスの織り成す音の世界その物(深い腹に染み渡る低音)が、正しく「桃源郷」の様な、或いは江戸時代の「花魁」の舞台の様な色香と幻惑の世界に聴く者を包み込むんです。

そして7曲めの「ボディ・アンド・ソウル」も最高ですよ。
低音を利かして重厚に吹くパートと、ピアニシモでは、あえて音をかすれさせて無音に近い部分を作り出し、そう、空気の振えの一つ一つが全て意味を持つ様に吹いて、フルトーンで吹き切る時の対比が、一種の物語に成っているんです。

8曲目「キップ」は、「ポメロイ」が煌びやかなトランペットを吹き、「ムッスリ」のアルト、「チャロフ」のバリトンと3つの楽器がマトリクス的だが、西海岸らしく軽やかに演奏されていて、お洒落ですね。

オープニング曲「ボブ・ザ・ロビン」…「ムッスリ」のオリジナルだが、イタリア系のミュージシャンらしく、とても陽気でノリノリのメロディで、ユニゾン的に3管が絡み合う編曲も、ライトでポップでセンスが良いですね。
中間でトランペットのソロを取る「ポメロイ」とピアニスト「サンティシ」のアドリブが好演ですね。

2曲目「イエスタデイズ・ガーデニアス」…ショウ・パブのダンス・ミュージック的な寛いだライトな曲だが、「チャロフ」のソロ演奏は流石ですし、「ポメロイ」もブリリアントな音で、「ムッスリ」も原曲を活かした丁寧なアドリブを二人が演ってくれるので、只のライトなナンバーに終わってはいない。

6曲目「ジュニア」…このユニゾンで演奏されているテーマ・メロディは好きだ。
何か「ゴルソン・ハーモニー」を彷彿させてくれて、「ムッスリ」は、あっけらかんとした曲が多いのだが、この曲には暗さと黒さが垣間見えて、私のストライク・ゾーンに来てますよ。
メンバー中では、この曲では「ムッスリ」、「チャロフ」の二人が出来が良いんですが、渋くガッツリとベース・ラインを刻む「エヴァンス」の職人気質も買いですね。

10曲目「ユニゾン」…文字通り、ユニゾンでのテーマが主ですが、ここでの「チャロフ」の早めのテンポにバッチリ乗せて、バリトンサックスを吹き切るテクには恐れ入ります。
「サンティシ」は相変わらず良い味を出して、良いソロを弾いてくれます。

3曲目「サージカル」、5曲目「マー・ドロス」とも…曲自体の魅力は正直無いのだけれども、いかにもこの時代らしく、各人のアドリブ・ソロ・パートの時に、どれだけ遊べるか?を競い合っているのが、微笑ましいです。

バラッド曲2曲と比べると、他の演奏は二枚も三枚も落ちるかも知れませんが、それでもこのアルバムは、買いでしょう。
それ程、この2曲はすごいんです。
&真っ赤なこのジャケットもセンス有ると思いませんか?

硬派の女流ピアニスト…大西順子~ビレッジ・バンガードⅡ

2007-11-15 23:36:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
女性ならではの繊細なタッチと表現力も勿論兼ね備えてはいるのだが、とにかくパーカッシブでパワフルな、敲くように弾き切るパワー系ピアニストが、今日紹介する「大西順子」である。

今をときめく「上原ひろみ」等よりも10年以上前に衝撃のデビューを果たし、一世を風靡した頃のアルバムがこれなんです。

ビレッジ・バンガードのパートⅠ演奏も良いんだけれど、あえてⅡを選んだのは、選曲の楽しさ、取分け日本人にしか弾けないであろう「りんご追分」のジャズ番が一番の聴き(弾き)所だと思うので、この曲が入っている事でしょうか。
それ以外にも「モンク」作曲の「ブリリアント・コーナーズ」や「ジジ・クライス」作曲のオープニング曲「ハウス・オブ・ブルーライツ」など、一癖も二癖も有る曲ばかりで、大いに興味を持ってしまいます。

是非「順子」のテクとスピリットを是非堪能して下さいませ。

アルバムタイトル…ビレッジ・バンガードⅡ

パーソネル…リーダー;大西順子
      レジナルド・ヴィール(b)
      ハーラン・ライリー(ds)

曲目…1.ハウス・オブ・ブルーライツ、2.ネヴァー・レット・ミー・ゴー、3.ブリリアント・コーナーズ、4.りんご追分、5.ティー・フォー・トゥー

1994年5月6日~8日 NYビレッジ・バンガードにてライヴ録音

原盤…somethin’else 5572  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5572

演奏について…冒頭で述べたが、このアルバム収録曲で、演奏の白眉は、ズバリ「りんご追分」です。
何故なら、この曲を題材として、原曲のメロディやスピリットを生かしつつ、しっかりとジャズ作品に仕上げられるのは、日本人ジャズ・メンしかいないし、取分け男性的にパワー系で弾ききれる「大西順子」にとって、非常に料理しがいの有る具財として申し分無い選曲だと言えるでしょう。
序奏からして非常に面白い導入がなされる。
「ライリー」の敲くメロディはラテン調のリズムなんだが、「ヴィール」はボウイングを絡めた珍しいリズムサポートを見せる。
大将の「大西」は、ここでもクラシック曲の様な、スケールの大きいゆとりあるアドリブ・ソロを魅せ付ける。
「りんご追分」と言う曲が、交響詩の様に聞こえる程、スケール・アップさせた解釈が趣深くて、良いんですよ。
雨だれが流れる様に聴かせるアドリブ・ソロは、まるで「ラフマニノフ」の前奏曲の様に…艶やかだが重厚な演奏なんです。
そして7分過ぎからのカデンツァに入ってからの「大西」はすごいの一言。
「ライリー」「ヴィール」とも煽ったか煽られたか?燃えるサイド・メンに変身して、一方の「大西」はガツンガツンと圧巻のソロを弾き捲る。
その後10分ぐらいで、またまた深い静寂が訪れる。…闇夜を縫って真夜中に聴こえるのは、重厚な「ヴィール」のベース音…まるでパワフルな「琵琶法師」が奏でているように不気味だ…。
「ジミー・ギャリソン」が後期の「コルトレーン・クインテット」で聞かせてくれる様な野太いサウンドでのソロ…最高に痺れますぜ!
その後は「ライリー」がとても空間的なアドリブ・ソロ…いやこれも「ドラム・カデンツァ」と言った方が良いぐらいの、圧倒的なアドリブに、雷を食らった様な衝撃的感動を味わえる。
このトリオ…本当に半端じゃねぇな。
最後はリズムは序奏通りラテン調だが、「大西」は、メロディに忠実に「りんご追分」を弾いて終わる…口笛ピューピューで、万歳!スタンディング・オベーション確実な名演ですね。

収録の1曲目「ザ・ハウス~」…前衛的な「大西」のアドリブ導入フレーズから、気持ちをグイッと惹かれる。
その後のメロディから、「大西」のセンシティブなソロ・トーンと迫力あるブロック・コードの硬軟取り混ぜた演奏と、「ライリー」の軽快なドラム&シンバル…そして「ヴィール」の実直なベースが三位一体となって、見事なピアノ・トリオ演奏として集結するんです。
中でも「大西」の縦横無尽に鍵盤を駆け抜け、且つ広大なシンフォニーを想像させる重厚なアドリブ・パート・ソロは最高の聴き所と言えるでしょう。

2曲目「ネヴァー・レット~」では、「大西」の静寂のピアニシモから序奏がなされる。
何か一寸「ドビュッシー」的な雰囲気で…アンニュイさも有って…この曲では、本当に女性美溢れる演奏が終始なされて、「大西」にもこう言うセンスと繊細さが有ったのか?(失礼!)と改めて、別の魅力を再発見したりなんか出来ますよ。
彼女のピアノを更に繊細にサポートする、「ライリー」の静かな静かなシンバル・ワークも良い味を出しています。
中盤以降では、「大西」は微音を上手く使いながらも、サロン的な小洒落たフレーズも織り交ぜて、この曲の繊細美を極限まで高めています。
さりげなく咲く「カスミソウ」の様な、可憐な1曲です。

3曲目「モンク」作曲の「ブリリアント・コーナーズ」…またまた「大西」から新たな魅力を発見!
でも、「モンク」の曲を弾く中では、逆に演奏が上手すぎるかも?
「大西」心はやっぱり「大西順子」だ!!
しかし、こう言うビルトオーゾの「モンク」も当然有りだろう。
中間からは「大西ワールド」へと、「モンク」の曲もステージを変えて、「大西」が自分の曲の様に消化した解釈で、この曲を料理する。
おかず満載のアドリブ・ソロをかます「ライリー」が、とても面白いですねぇ。
逆に「ヴィール」は、相変わらず実直に、とにかく真面目にベース・ラインを刻み続ける…この男、相当の堅物か、馬鹿が付くほど真面目なんだろうなぁっと思ったら、曲の7分過ぎからやってくれます。
「チェンバース」が乗り移ったかの様な、素晴らしい「ボウイング・ソロ」を思う存分弾き捲るんです。
やはり、奥の手を隠し持っていやがった。
こりゃ一本取られました。(大爆笑!)

BGMにかけても良いソウル・ジャズ…ラムゼイ・ルイス~ウェイド・イン・ザ・ウォーター

2007-11-14 21:41:25 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ファンキーでロック色の強い…或いはソウルフルな…ジャズ・ピアニスト…それが「ラムゼイ・ルイス」なんです。
このアルバムでは、「バート・バカラック」の曲等を取り上げて、ソウルフルで有り、且つハイ・センスが感じて取れる出来上がりになっています。
サイド・メンに「モーリス・ホワイト」が、ドラマーで参加していたりして、歴史的な価値も有りですよ。

勿論、BGM的な聴き方でもノー・プロブレムの楽しいアルバムに仕上がってます。

アルバムタイトル…ウェイド・イン・ザ・ウォーター

パーソネル…リーダー;ラムゼイ・ルイス(p)
      クリーブランド・イートン(b)
      モーリス・ホワイト(ds)
      リチャード・エヴァンス(arr)&オーケストラ

曲目…1.ウェイド・イン・ザ・ウォーター、2.エイント・ザット・ペキュアリー、3.タバコ・ロード、4.マネー・イン・ザ・ポケット、5.マイケルへのメッセージ、6.アップ・タイト、7.ホールド・イット・ライト・ゼア、8.デイ・トリッパー、9.ミ・コンパシオン、10.ハート・ソー・バッド

1966年6月シカゴにて録音

原盤…MCAレコード  発売…ビクター・エンターテインメント
CD番号…MVCJ-19122

演奏について…タイトル曲のオープニング・ナンバー「ウェイド~」…序奏から非常にソウルフルで、サイケな60年代後半~70年代前半を連想させる、極彩色のケバいサウンドが、最高に行けてる。
ノリノリの「ラムゼイ」のピアノにホーン・セクションが絡みつき、手拍子と掛け声に「モーリス・ホワイト」のドラムが、派手派手に煽るんです。
「ラムゼイ」のブロック・コードは、本当にハイで体も弾みますぜ。

2曲目「エイント~」…これも「ラムゼイ」のブロック・コードが跳ねて、手拍子とホーンがゴージャスに宴を演出する、ダンサブルなナンバーです。

3曲目「タバコ・ロード」…これは面白い。とてもソウルフルで、いや…どちらかと言うと、まじにファンキー節全開で、ここではベースの「イートン」が非常に重厚でガッツリとした、ピラミッド・バランスのベースを終始奏でていて、これが最高に聴き所。
やはりジャズは、ベース良ければ全て良しだね。
この1曲だけでも、このアルバムが軽薄短小のコマーシャリズムなアルバムでは無い事を証明できますぜ。

4曲目「マネー・イン~」…「ジョー・ザビヌル」のオリジナル曲だけあって、このメンバーの奏でるサウンドには、ドンピシャはまりますねぇ。
ファンキー・モア・ファンキーに、とにかく行け行けで「ラムゼイ」がピアノを乱舞させる。

5曲目「マイケルへのメッセージ」は「ディオンヌ・ワーウィック」のヒット曲で、このアルバムは、ジャズとブラック(コンテンポラリー)ミュージックが見事に融合されたコラボ・パフォーマンスですね。

6曲目「アップ・タイト」は「スティービー・ワンダー」のヒット曲。
「ラムゼイ」は、とにかくポップ・チューンを見事にソウル・ジャズへと昇華させている。
「エヴァンス」のホーン・アレンジもこのノリの礎として、しっかりと機能して「ラムゼイ」を好アシストをします。

7曲目「ホールド・イット」…「エヴァンス」のオリジナル曲だが、何故か一番この曲がソング・ミュージック的な雰囲気がして、この辺りが面白いとこです。

8曲目「デイ・トリッパー」…言わずと知れた「ザ・ビートルズ」の名曲。
この曲のアレンジでは、「ビートルズ」の匂いがあまりせずに、見事に?「ラムゼイ」のグループの音楽に料理しています。
「ラムゼイ」のピアノ・アドリブが相変わらず冴えてますよ。

9曲目「ミ・コンパシオン」…「エドワーズ」作曲のとても魅力的な旋律の佳曲。
編曲的にはコンガが効果的で、ラテン・テイストが満喫できます。
とにかく「ラムゼイ」のアドリブ・フレーズがセンチメンタリズムの極みの様なフレーズが多発で、涙がチョチョ切れそうですね。
個人的にはアルバム中で一番お気に入りの一曲です。

10曲目「ハート・ソー~」…この曲も魅惑的な曲で、「ラムゼイ」がとても素敵なアドリブ・フレーズを演じてくれます。
ラスト・ナンバーに相応しい煌びやかなサウンドが心地良いんですよ。
80年代で言うと、「シャカタク」のサウンドに似ていて…いや「シャカタク」が後発なんだから真似したんだよね?
いずれにせよメロディアスで良い曲だね。
中間で吹かれるソプラノ・サックスも良い味を出しているんだよね。

とにかく、楽しめる(ポップス)曲が目白押し。
本格的なジャズ・ファンからは敬遠されがちかも?と思いますが、食わず嫌いは駄目ですよ。(笑顔)

ソウル・ジャズなんだけど都会的でカッコ良い~フレッド・ジャクソン~フーティン・ン・トゥーティン

2007-11-12 00:08:22 | ジャズ・テナー・サックス
ブルーノートの定番の一種…ソウル・ジャズ…かなり泥臭い、まんまブルース・フィーリング満載のアルバムも多いのだが、このアルバムはかなり都会的な雰囲気を持っているね。

ニューヨーカーの昼の顔と夜の顔?が交錯している様な印象を持ちますよ。
昼は有能なビジネス・マンだが、夜は黒服に身を包んだ…???

まぁ、センス有るアルバムには違い無いので、一聴をお薦めします。

アルバムタイトル…フーティン・ン・トゥーティン

パーソネル…リーダー;フレッド・ジャクソン(ts)
      ウィリー・ジョーンズ(g)
      アール・ヴァン・ダイク(p、org)
      ウィルバート・ホーガン(ds)

曲目…1.ディッピン・イン・ザ・バッグ、2.サザン・エクスポジャー、3.プリーチ・ブラザー、4.フーティン・ン・トゥーティン、5.イージン・オン・ダウン、6.ザッツ・ホエア・イッツ・アット、7.ウェイ・ダウン・ホーム

演奏について…オープニング曲「ディッピン~」…ユニゾンのテーマからして、都会的なブルーズで、聴く物を惹き付ける。
「ジャクソン」もあまりこねくり廻さずに、割とストレートにテーマ&アドリブを吹く。
続くギター「ジョーンズ」が、かなり良いアドリブ・ソロを奏でる。
ブルージーでいながら、泣きのエッセンスも入れていて、センス抜群なんです。
しかし、この二人以上に良い出来は、オルガンの「ヴァン・ダイク」なんですよ。
伴奏に終始しているんだけど、合間に合間に奏でる、ブロック・コードが一寸過激で、自己主張しているんです。

2曲目「サザン・エクスポジャー」…これはかなり黒いイメージのブルースだな。
「ジャクソン」は飾り気無しで、ストレートに真っ向から、テーマを吹いて、「ホーガン」は所々で、おかずを入れてアクセントを付ける。
ここでも「ヴァン・ダイク」のオルガンが冴えを魅せて、「ジャクソン」以上に燃えて、魂を込めたアドリブが胸を討つんです。
漢達が、戦争(出陣)前の、最後の一夜を祝う?様な、心の奥底で泣いている様に思わせる、奥深いブルース演奏です。

3曲目「プリーチ・ブラザー」…一聴して「ナット・アダレイ」作曲の名曲「ワーク・ソング」を彷彿させるテーマが印象に残る。
「ジャクソン」は、余り重くならない様に、サラリとさりげなくテーマを吹いて、続いての「ジョーンズ」も、かなりシンプルなアドリブなんですが、ここでもオルガン「ヴァン・ダイク」が、バリバリにやってくれますよ。
何かこのコンボ…実はリーダーが「ヴァン・ダイク」なんじゃないか?と思うぐらいにどの曲でも力の入った良い演奏を弾いてくれて、まじめに気持ちが良いです。

タイトル曲「フーティン~」は、「ジャクソン」が割とアーシーに、そして丁寧に吹き始める。
ギター「ジョーンズ」のアドリブ・ソロは、大人しいんだけど、センスが有って宜しいんではないでしょうか?
更にドラム「ホーガン」と、「ジャクソン」のデュオ的なバトルはこの曲中、随一の聞き所で…「ホーガン」が燃えてますよ。。。
オルガンの「ヴァン・ダイク」は、いつも通り、ノッケからソウルフルに、そしてアヴァンギャルドに弾き捲ります。
この曲の終盤は、全員がストレイト・アヘッドなジャズで吹き通します。

5曲目「イージン・オン~」は、「ジャクソン」が男の色気を出しつつも、渋めに決めて、吹いてくれるのが堪らないですね。
バックのメンバーは、「ジャクソン」を全面的に出した、一聴すると控えめの演奏をしている様なのですが…実は違う。
ドラムスの「ホーガン」はタイム・キーピングしながらも静かに燃えているのが分かるし、「ヴァン・ダイク」は相変わらず、アドリブ・ソロに入ると、限定解除して、ビンビンにオルガンを弾き捲ります。
「ヴァン・ダイク」の演奏…カッコ良いですよ。
彼に煽られて、「ジャクソン」も終盤には、パワフルに変身して来ます。
都会的なセンス溢れる名演です。

6曲目「ザッツ・ホエア~」…シンプリで分かり易いテーマのリフレイン演奏から曲が始まり、特に「ジャクソン」はこのアルバム全編に渡って、とにかくテーマをこねくり廻さずに、ストレートに吹く所が、好感が持てますね。
何か、こう言うコンセプトも有りだよね。
常に、アグレッシブにアドリブをぶいぶい言わすだけがジャズじゃないって強烈にアンチ・テーゼを放っている様に思えて来た。
このアルバム全体がソウル・ジャズにも拘らず、アーバナイズされている様に思うのは、このシンプルさが、多分起因しているんだろうな。

ラストの「ウェイ・ダウン~」は、4ビートの正統的なブルーズ・ジャズで進行する。
「ジャクソン」…最後の最後まで「シンプル・イズ・ベスト」を貫き通す吹き方で、これぞ一本気の男の代表ってな感じだよ。
ドラムの「ホーガン」は、かなり派手にやってくれていて、これはこれで良いんだよ。
ギター「ジョーンズ」も、「ジャクソン」同様に、自己のスタイルは変えないで、ごてごてには、アドリブをやらない。
しかし、ここでも「ヴァン・ダイク」は過激に、そして思い切り良くアドリブ・弾き捲り。
中途で他の曲「インター・プレイ」のテーマをチョイと弾いたりして、ほくそえむんですよ。
最終的な結論なんだけど、ストレートにテーマを演じる「ジャクソン」&「ジョーンズ」組VSアドリブ・おかず満載の「ヴァン・ダイク」「ホーガン」組の対決アルバムなんだな。

結果は、判定で「ヴァン・ダイク」組の勝ちと思うけど、あえてシンプルに終始吹き切る「ジャクソン」も真面目に捨て難いぜ!!!




昨日の続き…風の語らい

2007-11-11 00:18:08 | ラテン・インストゥルメンタル
まず、オープニング曲「果てしなき道」…前半はカントリー調のリズムに乗って、ケーナで素朴だが哀愁たっぷりに聴かせる。
後半はカーニバル風に、一寸劇的にメロディが盛り上がり、悠久を流れる大河の様にゆったりと聴かせる。
バックのバンジョー陣の出来も良いです。

2曲目「もう一度あなたのもとへ」…「ホセ・ラミレス・トーレス」作曲のポルカ・ボリビアーナで、弦楽器の軽快な基礎音をベースにして、ケーナとバンジョー、ギターが見事にコラボレーションを魅せる。
曲の間の取り方が、センス抜群で、魅力的な一曲に仕上がっている。

3曲目「きらめく川」…リーダー、エルネスト河本が作曲したクエカで、ヴォーカル入りのトラック。

4曲目「あの約束」…この曲は良いですよ。
パーカションが効果的で、ネオ・フォルクローレと言うべき、ジャズ・エッセンス満載の名曲・名演です。
ケーナの哀愁ある音色と、打楽器のリズム、そして伴奏に終始し、サイドをガッチリ固めるギターが最高の調和を魅せる。
曲のメロディも哀愁たっぷりで、とにかく聴かせる曲です。

5曲目「カミオネッタ~」…序奏からギロのリズムで始まる個性的な曲。
中間部分は、いかにもフォルクローレとも言うべき、素朴なテーマ・メロディにKOですね。

6曲目「蜃気楼の歌」…「グラシェス・スサーナ」が作曲したカンシオン。
「島田静江」のヴォーカルは余り上手くは無いが、曲の魅力だけで充分に行けます。
とにかくセンチメナリズムの極地的なギターの伴奏だけでも、聴き応え有ります。

7曲目「ラ・ビキーナ」…聴いていると元気が出てくる、メジャー調子の曲。
悲しみを乗り越えて未来に向かう、「マルコ」の「母を訪ねて三千里」ってな感じです。
サンポーニャを超絶技巧で吹く「TOPO洋平」の名演奏にご注目です。

8曲目「ワイナ・ポトシ」…ケーナ、チャランゴ、サンポーニャの民族楽器群が、マッシブにパワフルに、大地を揺るがすような熱い演奏。
勿論、楽器だけでなく、それを奏でる人間の魂の熱さは、それ以上です。
とにかく素晴らしい演奏ですね。

9曲目「タローペの花」…「オスカロ・リベロ・アラマーヨ」の作品の名曲。
「島田」が味わい深い歌唱をしてくれますが、とにかく曲の名旋律に泣かされます。
これぞ、ラテン歌謡の代名詞とも言うべき曲で、日本人の琴線にも触れ捲ります。
最高ですね!!

10曲目「カラササヤ」この曲もゆったりとした時が手に取れるような、不思議なタイム感覚と、雄大さが魅力溢れた曲です。
こう言う曲って日本にはないよね。と言いながら作曲したのは「エルネスト河本」なんだけど…それでも、やはり大陸の香りがぷんぷんに香っているね。

11曲目「ラ・プリマベーラ」この曲は、ボサ・ノヴァ風に作られていて、純然たるフォルクローレではないけれど、このモダン・センスをエッセンスに含んだ、ネオ・フォルクローレも、かなり良いんでないの?
私は「買い」と見ています。

15曲目、ラストは表題曲の「風の語らい」ですが、当然このアルバム中で、白眉の名演奏でしょう。
ケーナ、サンポーニャの名演奏、吹きっぷりは正しく、目の前を通り過ぎる風だ。
風の語らい、そのものだ。
バックのギター伴奏がガッチリ・リズムをキープして、その上空をこれらの吹奏楽器が飛翔する。
飛翔といっても渡り鳥ではない。
やはり、南米のコンドルとか、大陸を渡るのではなく、見渡す猛禽類だろう。
自身の翼に沢山の風を受けて、ゆったり、どこまでもゆったり天空に羽ばたく。
風は俺の味方だ…風ある限り、どこまでも、いつまでも飛べるんだ。飛べるはずだ。

日本のフォルクローレをリードする…グルーポ・カンタティ~風の語らい

2007-11-09 23:46:08 | ラテン・ヴォーカル
グルーポ・カンタティ…日本のフォルクローレ・シーンを牽引している、エルネスト河本が率いる、ラテン・グループ
このアルバムは1999年8月~9月にかけて、ボリビアで録音された。

メンバーのオリジナル曲とラテンのスタンダードが程好く混在して、聴き応えの有るアルバムに仕上がっています。

このアルバムの購入の決め手は、ずばり…私が敬愛する「竹村淳」先生が解説を書かれている事です。(単純明快!)
師の推薦されるラテン曲、アルバムはノー・プロブレムで良作品ばかりなので、皆様もご参考にされてはどうでしょう?

余談ですが、3年前までやっていた、NHK・FMのミュージック・プラザのラテン解説は、私のFMベスト1番組です。

アルバムタイトル…風の語らい

パーソネル…リーダー;エルネスト河本
      島田静江
      菅沼由隆
      山下“TOPO”洋平

曲目…1.果てしなき道、2.もう一度あなたのもとへ、3.きらめく川、4.あの約束、5.カミオネッタに乗って、6.蜃気楼の歌、7.ラ・ビキーナ、8.ワイナ・ポトシ、9.タローペの花、10.カラササヤ、11.ラ・プリマベーラ、12.アメ・タウナ、13.カスカリータ、14.風の語らい

1999年8月~9月 サンタ・クルス カロリーナ・レコード・スタジオにて録音

原盤DIVINA  発売…テイクオフ
CD番号…TFK-2909

演奏について…ごめんなさい。明日書きます。(失礼)

この色香漂うジャケット…新主流派の傑作アルバム…ボビー・ハッチャーソン~ハプニングス

2007-11-08 23:21:09 | ジャズ・ビッグバンド・その他
ショッキング・ピンクの色地にモデル風美女の魅惑的なアルバム・ジャケット。

演奏は?と言えば、これもジャケットに負けぬ新主流派の王道的な名演奏。
収録曲には、名曲「処女航海」も有ります。

そして、参加ミュージシャンも、当時のブルーノートの革新的な若手メンバー揃いの上、アルバムリーダー「ボビー・ハッチャーソン」のヴァイブと、「ハービー・ハンコック」のピアノが高次元で、交錯し飛翔する…。

60年代中期を代表する1枚でしょう。

アルバムタイトル…ハプニングス

パーソネル…リーダー;ボビー・ハッチャーソン(vib、marimba、trk、等)
      ハービー・ハンコック(p)
      ボブ・クランショウ(b)
      ジョー・チェンバース(ds、vib、trk)


曲目…1.アクエリア・ムーン、2.ブーケ、3.ロジョ、4.処女航海、5.ヘッド・スタート、6.ホエン・ユー・アー・ニア、7.ジ・オーメン

原盤…BLUE NOTE ST-84231  発売…EMIミュージック・ジャパン

CD番号…TOCJ-7030

演奏について…最も有名なのは、ピアニストとして参加の「ハービー」が作曲した名曲「処女航海」の4曲目であろう。
ここではドラム「チェンバース」が幾分派手目にタイム・キープするのだが、「ハッチャーソン」のソロは、原曲の美しさを活かした、とてもスタンダードな解釈&演奏で、作曲者「ハンコック」に敬意を表した形になっています。
「ハンコック」も自分は一歩引いた形で曲に向かっており、(かなり客観的に曲を分析して演奏している様で)思索的な一曲に仕上げています。

このアルバムで一番の聴き物は、「エリック・ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」から、諸に影響を受けている様に聴こえるラスト曲「ジ・オーメン」だと思う。
決して聴き易い曲では無いが、ドラムス「チェンバース」がアヴァンギャルドな序奏を始めると、続く「ハンコック」が、もっと過激に曲を展開させる。
その後は「ハッチャーソン」が、360度に向けて、ヴァイブによって、異彩の空気をばんばん放出する。
効果的に使用される、トライアングルも良く考えられて使っています。
とにかく「ハッチャーソン」と「チェンバース」のデュオ的な演奏の緊張感は半端では無く、「ハンコック」のピアノも思わず躊躇うのでは?と思うぐらい、行っちゃってるんですよ。
正に異次元空間にタイム・トリップする1曲です。

オープニング曲「アクエリア・ムーン」…硬派で良いですよ。
スタートから「ハッチャーソン」が飛翔の如く、ヴァイブを敲き捲るのですが、バックのベース「クランショウ」が、渋く且つハードにベースラインを刻み続けて、「ハッチャーソン」を強烈にドライヴィング&アシストする。
皆を煽るドラムス「チェンバース」のタイム・キーピングも良い味を出してますよ。
そして、中間からは「ハンコック」が、煌びやかでセンス抜群のアドリブ・ソロをガンガン弾き捲ります。
「ハッチャーソン」と「ハンコック」のバトル合戦がまじに聴き所です。
フィナーレは静かに終えた様に見せといて…もう一回サプライズが…。
うぅーん、カッコイイ!!

2曲目「ブーケ」…序奏は「ハンコック」&「ハッチャーソン」の、静寂のバラッド演奏から始まる。
この不思議で、幻想的な余韻の感じる演奏は、やはりヴァイブと言う楽器の持つ魔力なのか?
このピアノとヴァイブが奏でる異空間…他では真似できないでしょうね。
特に「ハッチャーソン」のアドリブが、とてもハイ・センスで聴かせ上手だと思います。
「ハンコック」は、美音でリフレインを効果的に使用して、曲の幻想さをより輝かせていて、好感が持てますね。
アルバム中、個人的には一番好きな演奏でしょうか?

3曲目「ロジョ」…ラテン・リズムをバック・ボーンにして陽気に「ハッチャーソン」と「ハンコック」がやってくれます。
この二人のアドリブの魅力もたっぷりなんですが、それ以上に冴えているのが、ラテン・リズムを抽出しているドラムス「チェンバース」です。
ハイハット、シンバルワーク、バス・ドラと適材適所に効果的な一発を入れて、曲の核をしっかり作っています。
終盤の「クランショウ」のアドリブ・ソロ…こいつもカッコイイんです。
ラテン大好きな私はお気に入りの一曲になっていますよ。

5曲目「ヘッド・スタート」…都会的な雰囲気抜群の高速4ビート曲です。
こう言ったリズムの曲だと、ベーシストの独壇場になりますね。
とにかく「クランショウ」のびんびんベースが聴いていて、痛快ですよ。

6曲目「ホエン・ユー~」…短曲ですが、とにかく良い曲です。
何が良いかって?
それは、メロディが「貴方と夜と音楽と」を彷彿させるメロディアスな曲で、「ハッチャーソン」の幻想的なヴァイブと「ハンコック」の抑制したピアノのリリシズムが見事に融合されていて、胸が締め付けられます。
もう一寸演奏して欲しい…もう一寸聴きたい…佳曲です。