紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

今年一年、このブログを閲覧して頂きまして、本当にありがとうございました。

2007-12-31 08:34:36 | 独り言
今年一年、本当にありがとうございました。

思えばパソコン・スキルが殆ど無いこの私が、ブログを始められるなんて事は、年初では全く考えられませんでした。

しかし、多くの皆様に支えられ、叱咤激励を受けながら、やり通す事が出来た事、心から感謝しております。

ブログ内容につきましては、ジャズ有り、クラシック有り、ラテン有り、他にも諸々有りで、雑食音楽の塊りの様な、統一感の無いサイトで…まじで恥ずかしくてかたじけないです。(大爆笑)

※でも、これが私の紹介したかったスタイルですので、来年度もこの形で続けてやって行きたいと思っています。

尚、「ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.2」の解説につきましては年明けになるかと思います。
楽しみにしていた方…すみません。(涙)
来年の解説をお楽しみに…。。


来年も皆様にとりまして、幸多い一年となります事を心からお祈り致します。
一年間本当にありがとうございました。

ついに登場!ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.1&vol.2

2007-12-30 01:14:39 | ジャズ・アルト・サックス
先日から、私のブログ記事の内容につきまして、少しばかり変化がございました。
かなり…と言うか、個人的には、実は多くの方にお奨めしたくは無かった、所謂「フリー・ジャズ」の世界に大きく足を踏み出しまして、聴き易いアルバムをメインに紹介していたブログ記事の内容から、逸脱しまして、かなりマニアックに…そしてアヴァンギャルドな世界に入って来てしまいました。
勿論、ずぅっ~とこの世界に留まるつもりは有りませんが、一ヶ月前とはかなり異なる音楽世界、アルバムの紹介も今後は多くなる事と思います。
閲覧されておられる方々で、私が紹介する(した)メロディアスな音楽が好きな方々には、少しの間、ご迷惑をかけるかも知れませんがお許し下さい。

さて、その様な状況下で、今日は先日このブログを良く閲覧されている方が、ご自身のブログで紹介されていた、「オーネット・コールマン」の最高傑作であろう、「ゴールデン・サークル」での2枚組みアルバムを紹介させて頂きます。
実は、「コールマン」につきましては、先日のアルバムから2連荘になるかと思いますが、彼にはクラシックの素養があり、フリーと言っても、決して五月蝿い演奏、聴き辛い音楽では有りません。
静寂とカオスが微妙に同調した、過激で有りつつも、かなり高尚な音楽とも言えるんです。

ですから、今夜は「コールマン」の過激で且つとても美しい世界にトリップして頂ければ、幸いです。

アルバムタイトル…ゴールデン・サークルのオーネット・コールマンvol.1&vol.2

パーソネル…リーダー;オーネット・コールマン(as、vl、tp)
      デヴィッド・アイゼンソン(b)
      チャールス・モフェット(ds)

曲目
   vol.1…1.フェイシズ・アンド・プレイシズ、2.ヨーロピアン・エコーズ、3.ディー・ディー、4.ドーン

   vol.2…1.スノーフレイクス・アンド・サンシャイン、2.モーニング・ソング、3.ザ・リドル、4.アンティーク

1965年12月3、4日 録音

原盤…BLUE NOTE 84224、84225  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4224、TOCJ-4225

演奏について…まずは、vol.1から行きましょう。
1曲目「フェイシズ・アンド・プレイシズ」…アナウンサーによって、「コールマン・トリオ」が紹介されて、その後「コールマン」はスタートから、「コールマン」節全開で、全力疾走を始める。
前回の「ジャズ来るべき…」での「ヘイデン」、「ヒギンス」の最強バック、リズム・セクションは、「素晴らしい」の一言で片付けられるぐらい、まじで「素晴らしい」のだが、このアルバムを司る、ユーロ系ミュージシャンの、ベース「アイゼンソン」と、ドラムス「モフェット」の二人のリズム陣も、かなりの高水準のテクニシャンであり、勿論、テクだけでなく、スピリットも「コールマン」の意図を理解して、見事なサポート演奏をなしている。
とにかく、圧倒的なドライヴィング力で、「コールマン」の疾走に併走して、逆に「コールマン」でさえ煽り返しているんです。
この一曲目…「コールマン」がぶいぶい言わせて、二人が走り捲る…例えて言うなら、「コールマン」が元F1ドライバーのチャンピオン、皇帝「シューマッハ」だとするならば、彼等二人が「フェラーリ」と言う事になるでしょう。
「コールマン」の高速コーナリングのドライビングに忠実に手足となって、疾走するF1マシーンのそれなのです。

2曲目「ヨーロピアン・エコーズ」…バッハのフーガ的な、音階をグラデュエーションで展開して行く、古典的な手法ですが、「コールマン」が演ると、古新しいから不思議ですね。
非常にメロディアスで、とても心地良い演奏です。
その後、ベースとドラムスのデュオ演奏で、タイトでアナーキーな無音階のバトルがなされ、しばらくして「コールマン」がまた、グラデュエーション演奏で復活してフィニッシュします。
フリーと言いながら、良く考えられた演奏ですね。

3曲目「ディー・ディー」…この曲は「ロリンズ」のカリプソ?それとも「ナベサダ」のブラジリアン・ミュージック?って思うぐらい、テーマ曲、序奏が、ラテン・フレイヴァーの強いメロディで、陽気な演奏なんです。
でも…リズム自体は全くラテンでは演っていない。
リズムはとても乾いた、8ビートでシンプルに…タイトに…静けさを保って、しかし激しく…これが基本線ですね。
「コールマン」は、とにかく自由に…でも歌謡的で、メロディックなんですよ。
この演り方自体が「フリー」と言う考えなんでしょうね。
演奏内容は、本当にフリーには思えない。
とてもメロディックで、美しいんですよ。
私的には、フリー・ジャズが毛嫌いな方でも、この曲・演奏は、守備範囲内で、アイムOK!って言える演奏だと思います。
是非、聴いて欲しい1曲です。

それから4曲目「ドーン」…この曲も親しめる1曲です。
「アイゼンソン」のドシーンとして、まるで地響きの様なベースに、「モフェット」は、シンバル・メインの静かなサポートによって、「コールマン」が、フリー系のララバイ(子守唄)を歌う様に、サックスを奏でる。
中間では「アイゼンソン」が弓弾きで、彩を副えて、決して聴き易いメロディでは無いんですが、まぁ、妖怪が出てきそうな、おどろおどろしさも有るんですが、非常に静寂の間を意識した、音作り…演奏がされています。
この怖くて、でも美しい、ちょっと物悲しいアドリブ・メロディに、聴いていると思わずはまっちゃう。
「コールマン」って、とても罪深いお人だわ!
でも許しちゃう。

vol.2…これは、さすがに明日にしましょうか?    

先日の続き…ジャズ来るべきもの~オーネット・コールマン

2007-12-29 23:48:38 | ジャズ・アルト・サックス
昨日の続きです。

「オーネット・コールマン」の「ジャズ来るべきもの」から、4曲目「フォーカス・オン・サニティ」から再解説していきましょう。

いきなり妖しげなユニゾンが有ったかと思うと、沈黙に程近いベースのピアニシモが数十秒続く。
この意図は、「コールマン」の指示なのか?それとも天才「ヘイデン」が自発的に演っているのか?
しかし非常に効果が有ると思う。
この後の「コールマン」のシャウト、ブロウを際立たせるのに、必要充分な効果を上げているんです。
この後、「チェリー」が、知的で魅惑的なフレーズを多発し、曲を分析的に抉り取ってくる。
それから「ヒギンズ」のドラム・ソロである。
ガツンとくるパワフルなソロでは無いが、タイトで筋肉質の見栄え良いソロです。

5曲目「コンジニアリティ」…この曲も「ヘイデン」の野太いベースに駆られて、「コールマン」がかなりラテンチックでメロディアスなアドリブフレーズを吹く。
途中なんかは、「チャイコフスキー」のピアノ・コンチェルトもどきのフレーズだったり、物が終わった時ラッパで奏でる曲、「パッパララーのパッパ」???
言葉で書くと分かり辛いなぁのフレーズまで吹いちゃって…この、おっさんユーモア有りすぎ…って思っちゃいますよ。
続く「チェリー」のソロは生真面目そのもの…この辺の余裕は、やはり「コールマン」の勝ちでしょうね。

6曲目「クロノロジー」では、「チェリー」がブリリアントだが、相変わらず分析的な学者肌のアドリブソロを吹いてくれる。
「チェリー」は、フリー系を代表するトランペッター(コルネット)奏者だけれども、決してメチャクチャな吹き方をせず、音階の和声を超えつつも、とても思索された、好ましいフレーズや音調を奏でる男なんです。
「チェリー」と比較すると、同じくフリー系のアーティストの中では、かなり学者的な「コールマン」でさえ、相当フリーキーな演奏に聴こえるから不思議です。
「チェリー」…何とも一筋縄では行かない、アーティストですね。

7曲目はボーナス・トラックの「モンク・アンド・ザ・ナン」ですが、ここでは「コールマン」が、「ヘイデン」と「ヒギンズ」の重厚なバックでサポートを受けて、自由奔放にフレーズを放つ。
「チェリー」も相変わらず、煌くフレーズのソロを放ち、この曲がオリジナル・アルバムから省かれたのが、信じられないくらいに良い演奏になっています。

ラストもCD用のボーナス・トラックなんですが…この演奏は驚愕です。
もしかしたら、このアルバム随一の名演奏かも…。。。
何故なら、この曲…バラードなんですよ!!
でも、そこいらに有る、甘ったるいだけのバラードでは無い…。
音階はやはり、フリーと言う事もあって、モード以上に自由に設定されて演奏していますし、でも「コールマン」と「チェリー」二人のユニゾンや掛け合いは、ちゃんと調整がなされているんです。
このトラックは素晴らしいです。


長いご無沙汰で…どうもすみません。

2007-12-26 13:02:10 | 独り言
いやー、ブログ更新できずに本当に申し訳有りません。
実は、先週は土日が出勤日で、月曜の祝日が代休だったので、何枚かまとめて視聴し、ブログ・アップを考えていたのですが、ウィルスだか風邪だか、はたまた食中りか、未だに原因不明なのですが、とにかくひどい下痢(トイレに合計で60回以上)になりまして、月曜日は家で寝たきり…昨日は病院で点滴と…泣き面に蜂状態で、ブログが全く書けませんでした。
今日は何とか会社に来ておりますが、正直今晩ブログ・アップするのは難しそうです。
体調が回復次第、またアップして行く所存ですので、もう少しお待ち下さい。

コールマン衝撃のデビュー作…オーネット・コールマン~ジャズ来るべきもの

2007-12-20 23:15:36 | ジャズ・アルト・サックス
今日もフリー・ジャズ系のアルバム行っちゃいましょう。
アルト・サックス奏者で、フリー・ジャズの旗手の一人であった「オーネット・コールマン」の、アトランティック・レコードのデビュー作品がこれなんです。
「コールマン」のフリー・ジャズは、結構聴き易いので、フリーはちょっと…と言う方にも、比較的すんなり入って行けると思います。
但し、編成はピアノ・レスのツー・ホーン・カルテットと言う珍しい形態なので、その辺が、かなり個性的だと思います。

アルバムタイトル…ジャズ来るべきもの(+2)

パーソネル…リーダー;オーネット・コールマン(as)
      ドン・チェリー(cornet)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.淋しい女、2.インヴェンチュアリー、3.ピース、4.フォーカス・オン・サニティ、5.コンジニアリティー、6.クロノロジー、7.※モンク・アンド・ザ・ナン、8.※ジャスト・フォー・ユー
※…CD only bonus tracks

1959年5月22日 ハリウッドにて録音

原盤…ATLANTIC 1317  発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…30XD-1032

演奏について…名曲のオープニング・ナンバー「淋しい女」…「チャーリー・ヘイデン」の野太いベースに引っ張られて、「コールマン」と「チェリー」のコードを敢えてハズシ気味に?吹くユニゾン・テーマから、興味を惹かれる。
ハズシ調子なのだが、「ヘイデン」の重厚なベースと、「ヒギンズ」のこれまたクールで的確なドラミングによって、曲が締って見える。
「コールマン」と「チェリー」の掛け合いは、ハズシ加減が絶妙で、フリーと言いながら、かなり計算された(編曲)演奏に思える。
「コールマン」は、ヴァイオリンを嗜んだり、(アルバムも有るので、いや弾くと言う方が正確だな)して、クラシックの素養を持っているので、かなり和声を重んじるアーティストなんです。
一曲目の曲の崩しの妙を味わって下さい。

2曲目「イヴェンチュアリー」…この曲の「コールマン」は相当ぶっ飛んでいます。
アルト・サックスの嘶き具合が、まるで「ドルフィー」が吹いているかと錯覚を起しそうです。
続く「チェリー」も、この時代のアーティストとしては、かなりやばいぐらいに行っちゃってます。
「ブラウニー」「モーガン」もっと言って「マイルス」の吹くペットとは、かなり違います。
ペットが過激な楽器に変身しています。
二人にインプロビゼーションを堪能して下さい。

3曲目「ピース」…1曲目「淋しい女」と同じように、崩し調子のユニゾンから始まりますが、バックの「ヘイデン」が深海を彷彿させる、重々しいボウイングを演ってくれるんで、この辺りが激スパイスになって、辛ムーチョの演奏になります。
しかし、「コールマン」のアドリブはとてもメロディアスで、聴き易いですし、ピアノレスの編成に、「ロリンズ」の演奏みたいに、ガッツリとマッチする演奏になっています。
「チェリー」のソロも、とても知的で、メロディアスで、一聴するとフリー・ジャズには思えません。
二人のアドリブ演奏がとても魅惑的なトラックで、一言で言えば、so goodな演奏です。
「淋しい女」と双璧の演奏でしょうか?

4曲目以降は、明日書きますね。



7年前、FMから流れた曲を聴いて衝撃を受けた…エゴ・ラッピン~色彩のブルース

2007-12-17 22:55:44 | ジャズ・ヴォーカル
7年前にFM横浜だったかな?から流れていた、日本語で歌われている、超本格的なジャズ・ヴォーカルに耳を奪われたのが、今更ながら余りにもベタなのですが、「エゴ・ラッピン」の、この曲(アルバム)だったのです。

私は、車で営業に出る事が多いのですが、いつも気に入った曲や、おっ!と思ったアーティストは即座にメモを取って、控える様にしているんです。
特にラテン系のアーティストや曲、それから、もっと広義でのワールド・ミュージックなどは、余り調べる為の文献も無く、分らない場合が多いので、要チェックは絶対にしないと駄目なんですよ。
「エゴ・ラッピン」…聞き慣れない名だな?と思いつつも、この素晴らしい曲を購入するために、即座にメモを取りました。

まぁ余談はさておき、「エゴ・ラッピン」のこのアルバム…まじにお薦めします。
「色彩のブルース」以外にも佳曲が多く、本格的なジャズ・ヴォーカルとして、十二分に楽しめる事、間違いなしです。

アルバムタイトル…色彩のブルース

アーティスト…EGOーWRAPPIN’

曲目…1.nervous break down、2.gigolo feat. mama! milk、3.色彩のブルース、4.flowers、5.タバコ

2000年録音

原盤…Mirror ball  
CD番号…RDR-1030

歌について…最大の聴き所は、当然、大ヒット曲「色彩のブルース」で、決定!!
正に日本人による、日本人の為の、日本ジャズ(ヴォーカル)でしょう。
序奏の演歌風の入りも最高ですし、ヴォーカルの日本語での歌も、very goodです。
ブラッシュが冴えるドラムス、とてもブルージーな色調のエレキ・ギター…妖しく吹かれるサックス…昭和40年代の歌謡曲と、ジャズが融合された、超名曲でしょう。
昨今の私が紹介する所謂「フリー・ジャズ」には抵抗の有る方、または疲れた方、こう言う歌謡曲・ジャズ…日本人の琴線に直撃して来て、改めて感性が磨かれますね。
この曲だけでも最高ですね!!

5曲目「タバコ」…ボサ・ノヴァ・リズムに乗って、とてもアンニュイな雰囲気の歌が、妖艶さを醸し出して、正に大人の女性が歌う好トラックになっています。
泣きのギター、幻想的なフルートと楽器演奏も良い味をだしてくれて、取分けこの曲の核になっているのは、当然ノリノリのパーカッションとブラッシュをメインに演奏しているドラムスです。
終盤のフルート演奏は、「ハービー・マン」がいるみたいな感じで…行けてる。
贔屓と取られるかもしれませんが、これだけジャジーな雰囲気を持った、ラテン調ヴォーカルは、中々無いですね。
かなりお気に入りの一曲です。

オープニング曲「ナーヴァス・ブレーク・ダウン」…重厚なベースに導かれて、指パッチンと語りから曲が始まる。
その後のエレキ・ギターとピアノが奏でるサウンドが、昭和30年代の「若大将シリーズ」のサントラ風で、古カッコイイ!
場末のクラブでのジャズ演奏なんだけど、かなり実力が有って、近い将来表舞台に出て行くのでは?と期待を持たせる…なんて感じの曲調と演奏です。
とても、ダークでディープなイメージで、良いですねぇ。

2曲目「ジゴロ」…ギターのチューニングをしている所から曲が始まる。
ギターとアコーデオンのアンニュイな伴奏が、とにかく趣味の良さを見せる。
ヴォーカルもそれに劣らず、もっとアンニュイで抑えた情感を表現していて…ドラムもスティックだけでリズムを取っているのが、とにかくお洒落です。
しかし、良くこれだけ昭和の30年代~40年代風の歌謡曲と、ジャズを融合出来たなぁって心から思う。
歌詞には「ジャンゴ・ラインハルト」が出てくるし…日本のジプシー?歌手って位置付けのつもりで歌っているのかなぁ。
全編で、アコーディオンが良い味を出し捲りで、泣けます。

4曲目「フラワーズ」…このアルバムで一番ロック調の曲で、カッティング・ギター演奏を前に押し出して、ヴォーカルも英語で歌い、リズムも8ビートで、グングン疾走して、ガツンガツン、チャキチャキのベースとドラムス、そしてタンバリンが、サイケデリックな風情を出して…この曲だけは、昭和の歌謡ジャズでは有りません。
ラップ風の語りも入って、「エゴ・ラッピン」が、現代のバンドである事を見せているようです。
最後のハードなサックス伴奏も、カッコイイんですよ。

ショート・アルバムながら、「エゴ・ラッピン」の精神と実力を堪能できるアルバムです。

ライヴ・イン・ニュー・ヨーク~マイルス・デイヴィス&ジョン・コルトレーン

2007-12-16 23:59:15 | マイルス・デイヴィス
今日もまたまた、全盛期?の「マイルス」&「コルトレーン」の史上に名だたる名コンボのライブアルバムを紹介しましょう。
ブラック・ライオンからの名盤コレクションで、この盤も音質は悪いですが、ジャズ・バンドとしては最高峰のメンバーでの録音で有り、演奏曲も名曲ばかりなので、楽しんで頂ける事と思います。

アルバムタイトル…ライヴ・イン・ニュー・ヨーク

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ウィントン・ケリー(p)※6曲目のみ参加
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ジミー・コブ(ds)※6曲目のみ参加

曲目…1.バイ・バイ・ブラックバード、2.フォア、3.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド、4.ウォーキン、5.マイルストーンズ、6.ソー・ホワット

1958年 1959年 NYにて録音

原盤…Bandstand  発売…徳間ジャパン
CD番号…TKCB-30458

演奏について…オープニング曲「バイ・バイ~」…ノッケからテーマでは無く、「マイルス」が、アドリブ演奏からの序奏をミュート・プレイで吹き始める。
いきなりの「マイルス・ワールド」へトリップすると、「コルトレーン」が受けて、シーツ・オブ・サウンドの原型的な、未だ一寸垢抜けしきれていない演奏だが、とても一所懸命に吹く事が好感が持てる。
その後の「エヴァンス」のソロは、未だ、彼の天衣無縫の天才的な煌きは影を潜めて入る物の、好フレーズを演じている。
オープニングとして、かなり良いトラックだと思う。

2曲目「フォア」…「マイルス」のオープン・トランペット演奏からスタートするが、気持ち良く朗々と鳴らすトランペットの音が…「マイルス」っぽく無いね。
何か「マイルス」にしては、明る過ぎる感じがしないでもない。
受ける「コルトレーン」は、前曲と同様、フレーズを選んでる節が有るが、かなり速射砲的な吹き方が身に付いて来た感じがします。
最後のユニゾン演奏は、かっこいいです。

3曲目「イット・ネヴァー~」…このアルバム全曲中、「マイルス」の演奏からすれば、断然のベスト1でしょう。
因みに、「コルトレーン」はこの演奏には参加していない。
名作の、プレスティッジ・マラソン・セッション4部作での、リリカルなスーパー名演には若干及ばないかもしれないが、ライヴ演奏と言う事と、ピアニストが「エヴァンス」と言うプラス点が有るので、甲乙付け難いくらいの名演奏だと思います。
やはり「マイルス」のミュートでのバラード・プレイは、前人未踏の境地ですね。

4曲目「ウォーキン」…「マイルス」がオープン・トランペットで、しかし知的な志でテーマを吹く。
「コルトレーン」は、大分リラックスして来たのか、かなりフリーキーに、シャウト系のテナー演奏をかまして来る。
かなり、後の大物感を予感させる演奏です。
「エヴァンス」も、大分慣れて来たのか、絶好調になって来て、素晴らしいアドリブ・フレーズを連発して、才能を見せ始めます。
それから、「チェンバース」が十八番のボウイングで、ギコギコ演ってくれます。
「チェンバース」のほのぼのトーンを聴くと、いつでも癒されますね。
本当に良い人だなぁ。

5曲目「マイルストーンズ」…多分このコンサートで、コンボの中では一番力を入れた演奏だろう。
何故なら、演奏時間が9分半と、他と比べてかなり長い事や、序奏を「マイルス」「コルトレーン」の2トップのユニゾンから演って、その後「マイルス」がフル・トーンでバリバリと思い切りアドリブを演ってくれるからです。
「コルトレーン」も、それ以上にブイブイ行って、特に音のシャワーを頻繁に出してくれて、この後のスーパー・スターへと駆け上がっていく事を充分に予測させてくれる、ヴェリー・ハードなプレイをしてくれます。
このアルバム演奏の中で、こと「コルトレーン」の演奏に限って言えば、断トツでこの演奏が一番良い出来です。
「エヴァンス」もこのトラックの出来はずば抜けて良いです。
華麗に、知的に鍵盤を、左右の手指が疾走し、テクニックと、クールなエモーションが同居して、「エヴァンス」の独自世界を見せ付けるんです。
「エヴァンス」の演奏…まじに超カッコイイですよ。
最後に、海賊版的なアルバムなので、「フィリー・ジョー」の超絶ドラミングが、かなりオフ・マイクで、しっかり録られていないのが、残念!斬りっ!!!

ラストの1曲「ソー・ホワット」…例に洩れず、「チェンバース」のベース進行から、曲が始まり、「マイルス」がクールなソロをバッチリ決めてくれます。
しかし、何回聴いても、違う演奏を聴いても、「マイルス」の「ソー・ホワット」はインテリジェンスでカッコイイですね。
「コルトレーン」の演奏も、力は5曲目の方が入っている感じがするが、テクニック、精神の高さからすると、(マイルストーンズ)から比較して、約1年後の演奏なだけに、こちらの方が優れているかも知れませんね。
「ケリー」は、「エヴァンス」には及ばないのは先刻承知の助ですが、ファンキーで、且つ哀愁を散りばめたプレイで、この曲をキッチリ飾り付けてくれます。
「マイルス」が再登場してからは、彼の独壇場ですね。
本当にクール・ビューティ(な演奏)とは、彼の事を言うのだろうね。
それから、ドラムがしっかり録れていないと、「フィリー・ジョー」の時に言いましたが、「チェンバース」のベース音はしっかり収録されていて、この演奏が重厚感溢れる名演になった重要な要因になっている事を、上げておきましょう。

優しきツイン・テナーが炸裂する…ブック・クックス~ブッカー・アーヴィン

2007-12-15 17:00:20 | ジャズ・テナー・サックス
今日紹介の2枚目は、テキサス・テナーのタフなヤツ「ブッカー・アーヴィン」がリーダーで、サプライズ・ゲストとして「ズート・シムズ」を向い入れた、贅沢なツイン・テナー・アルバムです。
この二人をサポートする、バックのメンツも良いジャズ・メンが揃っていて、聴き応え充分な出来栄えです。

アルバムタイトル…ブック・クックス

パーソネル…リーダー;ブッカー・アーヴィン(ts)
      ズート・シムズ(ts)
      トミー・タレンタイン(tp)
      トミー・フラナガン(p)
      ジョージ・タッカー(b)
      ダニー・リッチモンド(ds)

曲目…1.ザ・ブルー・ブック、2.ギット・イット、3.リトル・ジェーン、4.ブック・クックス、5.ラルゴ、6.プア・バタフライ

1960年6月 NYにて録音

原盤…BETHLEHEM  発売…日本コロムビア
CD番号…COCY-75726

演奏について…まずタイトル曲「ブック・クックス」ですが、私の表題通り、「アーヴィン」と「シムズ」のツイン・テナーが、心地良く炸裂する好トラックです。
炸裂と言っても「アーヴィン」は同時代のカリスマ・テナー「コルトレーン」の呪縛?から唯一逃れた?独自のスタイルを築いたミュージシャンなだけに、純粋に音楽を楽しんで吹く事に専念した、二人のテナー・チェイシング・トラックとなっています。
とにかく、中盤から終盤にかけての、絡み合いと好フレーズの吹き合いは、最高レベルのバトルで、この演奏に惹き込まれる事は間違い有りません。
ベーシスト「タッカー」とドラムス「リッチモンド」のドライヴィング力も万全ですし、特に「タッカー」の力感抜群のガッツリ・ベースが最高潮です。
逆に「トミ・フラ」は、伴奏に専念して、ホーン3人のアタックを優しく見守っている感じです。
前半部の「タレンタイン」のスイング感有るトランペットも良い味を出してます。
バトル系ジャズを堪能したい方には、まじにお薦めの一曲です。
このバトルで面白いのが、「テキサス・テナー」と白人の「ウェスト・コースト・テナー」なのに、音色、フレーズとも別物では無く、どことなく統制がとれていて、決して水と油の演奏では無い事です。
裏を返せば、非常にマッチングしていると言えます。

後に「アーヴィン」が、又、再演奏する機会が増える、自作オープニング曲の「ザ・ブルー・ブック」…正統的な4ビートのチョイ・ファンキー節のテイストが入った、ブルース・チューンです。
序奏からベーシスト「タッカー」の野太い重低音のベース・ラインが、この曲の礎を作り、そこに「フラナガン」のピアノが枝葉と彩を添えていく。
更にその上から真打のツイン・テナーがメインの紅葉?を着けていく。
すごくシンプルな演り方だけど…これがジャズの王道なんですよ。
余計な事は要らないんだよ。
太く重いベースとドラムスの音域に、ピアノのダイナミズムが加わり、その上にハイトーンの管楽器が乗っかる。
所謂、ピラミッド・バランスの聴き易い音で、オーディエンスは極上の一時を満喫出来るんです。
「タッカー」…変人らしいが、ベース職人としては、一流だぜ!!

5曲目「ラルゴ」…このバラッドもすごーく行けてます~っ!
とても抑制された、バラッド演奏なのだが…しっかりと一本太い芯は通っている。
ロマンティックな「フラナガン」のピアノ伴奏が、またまたこの曲に、スーパー・アシスト…サッカーで言うなら、キラー・パスをピンポイントで通しやがるんです。
相変わらず「タッカー」の重厚感抜群のベースにも興味が湧くし、あまり目立たないけど、「リッチモンド」のブラッシュ・ワークもとても渋くて、ス・テ・キ…。
甘くなり過ぎないけど、とても美しいバラード・チューンです。

唯一のスタンダード曲が6曲目の〆を飾る「プア・バタフライ」なんだけど、この「アーヴィン」の演奏も、寛ぎと余裕が有って、良いねぇ。
「ぶいぶいハードに吹く事だけが、ジャズじゃないよ。」と暗に示しているみたいです。
しかし、私は一体性が無い人間ですね。(大笑)
「コルトレーン」が死ぬほど?好きなのに、それを否定?している「アーヴィン」の演奏も推薦して…。
でも良い物は、やっぱり良いんですよ。

2曲目「ギット・イット」…「アーヴィン」が比較的ハードに吹く、楽しいナンバー。
皆が遊び心を持って、ソロを執って、各々のアドリブ・センスを競い合います。
ここでは、渋く決めていた「リッチモンド」が、ようやく限定解除?と相成って、華麗なソロを演ってくれます。

3曲目「リトル・ジェーン」…どちらかと言うと、ブルー・ノート・レーベルではなかろうか?と思う様な、3管のユニゾンからテーマを吹いて、展開して行くトラックで、「アーヴィン」「タレンタイン」と続いて、それぞれ素晴らしいアドリブを奏でてくれて、その後の「シムズ」が、それ以上の貫禄のソロを決めてくれます。
とにかく、ここでの「シムズ」の演奏…カッコイイ!!
更に続く「フラナガン」のソロも、とても魅惑的で、惹かれます。

全曲楽しめる、好アルバムですよ。

考えるな!感じろ!!モノホンのフリー・ジャズ…ユニット・ストラクチャーズ~セシル・テイラー

2007-12-15 09:42:10 | ジャズ・ピアノ・コンボ
皆様、お早うございます。

このブログ立ち上げから、来月で1年になると言う事から、今日から、いよいよフリー・ジャズの中枢世界へ、…つまり本丸に、大気圏突入と行きましょうか。

その第一段として、革新的・前衛的なジャズ・ピアニスト、「セシル・テイラー」の真髄とも言うべき、歴史的な傑作、「ユニット・ストラクチャーズ」を紹介させて頂きます。

フリー・ジャズ…それも7人編成(セプテット)でのコンボ…聴いた事の無い皆様の想像では、五月蝿い音楽なのか?と考えると思いますが、(曲のよりけりも有りますが)実はそんなに五月蝿く有りません。
いや、むしろピアニストの「テイラー」が作曲しているだけに、「美しさ」さえも感じられます。
私の今迄皆様にお薦めしていた、所謂メロディアスなジャズとは全く異なりますが、楽器の一つ一つの魅力…アコースティックなサウンドの心地良さと、音の美しさは充分に感じられて、決して聴き苦しい音楽では有りません。
メロディではなく、めくるめくアコースティック楽器の「万華鏡サウンド」を堪能して頂ければ良いと思います。
正しく、考えるな!感じろ!!で聴いて下さい。

アルバムタイトル…ユニット・ストラクチャーズ

パーソネル…リーダー;セシル・テイラー(p)
      エディ・ゲイルJr.(tp)
      ケン・マッキンタイヤ(as、oboe、b-cl)
      ジミー・ライオンズ(as)
      ヘンリー・グライムス(b)
      アラン・シルヴァ(b)
      アンドリュー・シリル(ds)

曲目…1.ステップス、2.エンター・イヴニング、3.ユニット・ストラクチャー~アズ・オブ・ア・ナウ・~セクション、4.テイルズ

1966年5月19日

原盤…BLUE NOTE BST 84237  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4237

演奏について…まず、大まかなカテゴリー分けをさせて頂くと、「動の奇数曲」、「静の偶数曲」として考えれば、分り易いだろう。
つまり、1曲目「ステップス」と、3曲目「ユニット・ストラクチャー~」の2曲が、ホーン(リード)奏者を前面に押出した、アグレッシブな曲&演奏だと位置づけるとすると、2曲目「エンター・イヴニング」と、4曲目「テイルズ」は、リーダー;ピアニスト、「セシル・テイラー」のピアノをメインに据えた、クラシックの現代曲風の、比較的静かな曲&演奏と言えるでしょう。

勿論、このアルバム随一の聴き物は、アルバム・テーマ曲であり、一番長大な作品、「ユニット・ストラクチャ-ズ~」に他なりませんが、私的には皆様には、比較的聴き易い、偶数曲から聴く事をお薦め致します。

まず、2曲目「エンター・イヴニング」…ホーン奏者の不安げなメロディと、「テイラー」の不協和音的なピアノと、ベース「シルヴァ」の悲しげなボウイングによって序奏が始まる。
ここでのリード奏者の肝は、オーボエを吹く「マッキンタイヤ」と、ミュートで抑止した美学を貫く「ゲイルJr.」でしょう。
特に「ゲイルJr.」は不安な子羊か子馬が鳴くように…夕暮れの寂しさと怖さを表現しているかの様で…素晴らしいですね。
「テイラー」は低音域を中心に、ブロック・コードで不安感を表現しています。
終盤で「ライオンズ」が不安を和らげてくれる様な…これは子馬の親?の囁きかな?、優しく包み込んでくれます。
そして「テイラー」のピアノが激しくなって来て…すっかり夜になったのでしょうか?馬たちは眠りにつくのかなぁ。
まぁ、馬(羊)の事など、どこにも書いては有りませんので、これは私がこの曲を聴いて「感じた」脳裏に浮かんだ情景に過ぎませんので…悪しからず。。。

3曲目いよいよメイン・ディッシュの「ユニット・ストラクチャーズ~」ですが…序奏はとても静かな入りで始まります。
「ライオンズ」のアルト・サックスと「マッキンタイヤ」のバス・クラがとても美しい序奏を奏でてくれるのですが…この後、「ゲイルJr.」のトランペットが登場してから、演奏に激しさが加わってくる。
この曲を、いや、アルバム全体を分厚いサウンドで包み込み、それでいて美しさを保持しているのは、偏にツイン・ベース奏者を置いた「テイラー」の読みの素晴らしさではないでしょうか?
この曲でも「グライムス」と「シルヴァ」の二人が…一人はボウイングで弦楽器の美しいサウンドをキープしてくれて、これが聴き易さの要因に繋がっているようです。
また、曲のフレッシュさをエヴァー・グリーン的に保てるのは、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏に加えて、見事な空間演出で、コンボのメンバーをアシストする「シリル」のドラム演奏に他なりません。
「シリル」…過激で有りながら、皆を煽りながら、少し離れて客観的に自己を見つめられる己を持っています。
中盤から終盤にかけて曲は益々アグレッシブに展開していきますが、「マッキンタイヤ」のバス・クラのアクセント的な使い方と、「ライオンズ」とのアルト・サックスとの絡み合いも良い仕事になっています。
そして、「テイラー」は終始、過激にピアノをかき鳴らし、打ち付ける様に、まるで打楽器そのもののピアノを弾きます。
原始に帰った様な、ポリリズム、バーバリズムの原点回帰のピアノ演奏です。
やはり…流石「テイラー」…バンド・リーダーとして皆を緊張感バシバシに縛りつけ、妥協を許さず、乾坤一擲にピアノを打ち続けて…狂った「ラフマニノフ」か「スクリャビン」が憑依して、一心不乱に(ピアノ)を弾いている様です。

4曲目「テイルズ」…この曲はホーン・レスで、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏を、ドラムの「シリル」が、ブラシ演奏をメインにして、静かに美しく飾り付けてくれます。
この曲は完璧にクラシックの現代曲、そのものと言って良いでしょう。
それぐらい、アコースティックなピアノと言う楽器の音色を、純粋に味わう演奏であり、ベースとドラムとの「ネオ・ピアノ・トリオ」とも言える、美しいモダン・サウンドです。
しかも、とてもビューティフルなピアノ演奏で、不協和音を駆使しているのに、リリシズムさえ感じるんです。
こう言う演奏って普遍なんだろうなぁ。

オープニング・ナンバー「ステップス」…最初からリード奏者がやる気満々で、それ以上に燃えているのが、ドラムの「シリル」だろう。
「お前等全員束になってかかって来い」と言わんばかりに、ドラミングが冴え渡ります。
そして、大将もそれを受けて、「テイラー」が叩き込む様な鍵盤連打で、皆を更に煽ると、「ライオンズ」?がアルト・サックスで、「エリック・ドルフィー」の様に嘶き、シャウトをします。
ドラム、ピアノ、アルト・サックスが織り成す、コスミック・ワールドの様に、混然一体となった音の塊りが膨れ上がって…暴発しそうだ。
取分け終盤の「シリル」と「テイラー」のガチンコ・バトルは最高に聴き所で、ベーシスト二人だけが、ひっそりとサポーターに廻って、彼等を保護しますが、二人には廻りは見えて無く、素晴らしい殴り合い?が続くんです。
いやー、すごい。素晴らしい。これがフリー・ジャズだ。フリー・ジャズなんだぁ
このアルバムの中で、一番フレッシュでパワフルな曲&演奏はこれでしょう。
但し、初心者は一番最後に聴くべきだと思います。
そうした方が、曲が分り易いと思います。
でも…最初に感じろ!って言ったのは私ですね。(失礼)
最初から過激に感じるのも良さそうです。  

あの有名アレンジャーが…イフ・ユー・ゴー~ペギー・リー&クインシー・ジョーンズ

2007-12-14 23:48:08 | ジャズ・ヴォーカル
いまや、ブラック・ミュージック界のドンとも言うべき「クインシー・ジョーンズ」が、若かりし頃アレンジャーとして携わった、「ペギー・リー」のラブ・ソング集が、このアルバムなんです。

アルバムタイトル…イフ・ユー・ゴー

パーソネル…ペギー・リー(vo)
      クインシー・ジョーンズ(arr、cond)
      ※クインシー・ジョーンズ・オーケストラ・メンバー
      ヴィクター・フェルドマン(p、vib)
      デニス・バドミール(g)
      マックス・ベネット(b)
      スタン・リーヴィー(ds)
      チノ・ポゾ(cga、bgo)

曲目…1.時の過ぎるまま、2.イフ・ユー・ゴー、3.オー・ラヴ・ハスト・ゾウ・フォーセイクン・ミー、4.セイ・イット・イズント・ソー、5.アイ・ウィッシュ・アイ・ディドント・ラヴ・ユー・ソー、6.メイビー・イッツ・ビコーズ、7.アイム・ゴナ・ラーフ・ユー・アウト・オブ・マイ・ライフ、8.アイ・ゲット・アロング・ウィズアウト・ユー・ヴェリー・ウェル、9.ジプシー・ハート、10.ホエン・アイ・ワズ・ア・チャイルド、11.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ、12.スマイル

1961年4月LAにて録音

原盤…Capitol  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-5393

演奏について…まず、ナンバー1のお気に入りは、9曲目「ジプシー・ハート」で決定です。
「バドミール」の哀愁タップリのギターに導かれて、「ペギー」も仄かな色気と甘さを同居させた、憂いのヴォーカルを聴かせる。
「クインシー・ジョーンズ」のアレンジメントも、映画音楽のラヴ・ロマンスの様に、切なくとても甘い…特に編曲では、フルートの使用が、センス有って、決めのトランペットも技有り…いや、一本だな。
こいつは紛れも無く「クインシー」の勝利だと痛感させられる。

オープニング曲「時の過ぎるまま」…一曲目とは思えない程、アンニュイでねっとり系のヴォーカルで、「ペギー・リー」が迫って?来ます。
や、やばい…妻がいるのに…やばいよ~(何のこっちゃ?)…まぁ、これは冗談だが、ジャケット通りの白人美人の吐息混じりのヴォーカルは…つ、罪だ~。

タイトル曲2曲目「イフ・ユー・ゴー」…「リーヴァー」が敲くラテン調ドラムに載せて「ペギー」が伸びやかに、そしてここでもチョイ色香を纏った声色で、貴殿に迫ります。
青いパーティ・ドレスの裾がチョット捲れて、足首がチラ見えして、エ・エロイ!
魔性のラテン・ヴォーカル…これもやばいだろ!!

4曲目「セイ・イット~」…このスロー・テンポのハーフ・バラード?…これも良いなぁ。
ここでも「バドミール」がMVP級の、哀愁メロディ…アドリブを演ってくれて、「ペギー」を好アシストしてくれるんです。

11曲目名曲の「ヒヤズ・ザット~」…「ペギー」のヴォーカルの魅力だけで、逝きそうです。
この虚ろな感じ…でも絶対に目は死んでいない。青黒く光っている。。
女って怖いですね。
こう言う風に囁いて…男は…囁かれて…只の馬鹿だ!!大馬鹿だ!!!

6曲目「メイビー・イッツ~」…この曲もラテン・リズムなんだけど…「ペギー」は、元来ラテン曲を歌うのには、定評が有るだけに…流石の一言。
ボンゴ、コンガを上手く捌く「ポゾ」のテクニックの出来が抜群です。

7曲目「アイム・ゴナ~」…ここでも吐息混じりの「ペギー」のヴォーカルが冴え渡ります。
こう言うスロー・テンポの曲は、「ペギー」が歌えば、それ自体が武器になるよね。
優しい弦楽器が…「ペギー」のヴォーカルと共に貴殿を包み込みます。

8曲目「アイ・ゲット~」…これは明るい調子のラテン・リズムで、「ペギー」も楽しげに、しかし妖しい色香をオーラ的に出しながら歌います。
「バドミール」のラテンチックなギターと「ポゾ」の跳ねる様なコンガが、盛り上げてくれますよ。

10曲目「ホエン・アイ~」…とてもリラックスした「ペギー」のヴォーカルに、周りの空気の様にストリングスが纏わり付いて…纏わってても邪魔はしていない。
本当に空気の様に…ごく自然に…彼女の影の様に…本当にごく自然に…。。。

12曲目「スマイル」…この曲もラテン・リズム+バドミールのフラメンコ風のギター+ホーンを含んだオケと完璧な編曲で、最後に「クインシー」が締め括る。
こいつの才能はやはり…すごい!

3曲目「オー・ラヴ~」…ここに来て、やっと、まともな?(普通の)ジャズ・ヴォーカル・トラックが登場したね。
でも、でも…これは当たり前過ぎて、逆につまらないなぁ。
やっぱり、女は愛嬌が一番…、いや色気が一番なんだろう。

5曲目「アイ・ウィッシュ~」…甘いストリングスの調べに乗って、「ペギー」がうっすら色気で、囁きヴォーカルを歌ってくれます。
でも、一寸、ここでの声色が、おばさん臭いかな?

モーガンのファンキーなアルバム…ザ・クッカー~リー・モーガン

2007-12-12 23:17:46 | ジャズ・トランペット
ブルー・ノートの誇る、天才トランペッター、「リー・モーガン」が素晴らしいメンバーによって組まれたコンボで、天賦の才を余す所無く見せ付ける、痛快なアルバムです。

特に「肝」になっている、キー・パーソンは、バリトン・サックスを駆る「ペッパー・アダムス」だと信じて疑いません。
「ボビー・ティモンズ」、「ポール・チェンバース」、そしてドラムス「フィリー・ジョー」のリズム・セクション3人の実力・実績は言わずもがなで、衆目が一致する所なので、敢えて語る必要性は無いでしょう。

「モーガン」の煌くアドリブ・フレーズと、「アダムス」の渋く、硬派な重低音のバリトン・サックスに今宵は酔いましょう。

アルバムタイトル…ザ・クッカー

パーソネル…リーダー;リー・モーガン(tp)
      ペッパー・アダムス(bーsax)
      ボビー・ティモンズ(p)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.チュニジアの夜、2.ヘヴィー・ディッパー、3.ジャスト・ワン・オブ・ゾーズ・ソングス、4.ラヴァー・マン、5.ニュー・マ

1957年9月29日

原盤…BLUE NOTE 1578  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1578

演奏について…ぴか一演奏は、やはりオープニング曲「チュニジアの夜」で決まりです。
「フィリー・ジョー」が奏でる毒々しいラテン・リズムから、期待値100%で胸が膨らみ、その後のメロディを奏でる「アダムス」の重厚なバリトン・サックスと、ブリラントな音質で、声高らかに吹く「モーガン」のアドリブ・ソロにいきなりのノック・ダウンを取られます。
「モーガン」のハイ・スピードで次々繰り出される運指とテクニックの素晴らしさは筆舌に値しますが、それ以上に、このエキゾチック・サウンドにハマリ役なのが、「アダムス」のカデンツァ…究極的なアドリブです。
この演奏の素晴らしさの魅力を倍増させているのが、紛れも無く「バリトン・サックス」と言う楽器です。
この音色は、まじに「チュニジアの夜」にベスト・マッチではないでしょうか?
この二人の抜群の出来のソロを受けて、ファンキー・ピアニストの「ティモンズ」も軽やかなアドリブで疾走をします。
ヘヴィな管楽器の攻撃を、ピアノで軽く受け流し…その後のスーパー・テクニシャン「フィリー・ジョー」のチョイ・ソロも短いが聴き物です。
最後はお似合いのカップル、「モーガン」と「アダムス」が〆を決めて、フィニッシュなのですが…ヤッホー!!とにかく最初から最高の演奏です。。。

2曲目「ヘヴィー・ディッパー~」…序奏の2管のユニゾンと掛け合いから、興味をそそられる、ファンキー・チューンです。
渋く決める「チェンバース」のドライヴィング・ベースに「モーガン」が引っ張られて、抜群のソロを吹けば、「アダムス」もイマジネーション豊かに、しかし原曲のメロディを活かしたアドリブで応えてくれます。
「ティモンズ」は、ここでもライトなタッチで、管楽器を邪魔しません。
あくまでもサイド・メン的な伴奏から発展させたソロで受けます。
「チェンバース」「フィリー・ジョー」のアドリブは、お決まりでは有りますが、とにかく上手いです。
こう言うライトなナンバーを演っても「モーガン」は合うよね。

3曲目「ジャスト・ワン~」…「コール・ポーター」の曲ですが、この曲もいかにもブルー・ノートらしい演奏解釈で、早めの4ビートで疾走していくイメージです。
「アダムス」が、かなりシャウト気味の演奏で、3曲目にも入り、高揚して来た感じもします。
「モーガン」も速射砲の如く、高速のアドリブ・フレーズを湯水の如く吹いて、実力を見せ付けます。
こう言う、疾走ナンバーになると、流石の「アダムス」も「モーガン」にはお手上げ状態でしょうか?
とにかく「モーガン」の超絶技巧に圧倒されます。
「ティモンズ」も高速の指使いで、疾風のソロを受けて立ちます。
終盤には、「フィリー・ジョー」も高速ドラミングで、バトルに参加してくれて…複数の天才が正しくガチンコ・バトルで演り合うベスト演奏です。
「チュニジアの夜」と双璧か?もしかすると、この演奏の勝ちかも???

4曲目「ラヴァー・マン」…「モーガン」の天賦の才が煌く、もう一つの顔…それがこう言うバラッド演奏です。
「マイルス」が知的で抑制された、ミュート・トランペットの美学的な、神の精神的バラッドだとすれば、「モーガン」は真に正統的な、トランペットと言う楽器の美音を余す所無く伝える、「貴公子」の歌声と言ったら過言でしょうか?
いずれにせよ、胸にビビッと来る演奏には違い有りません。
「アダムス」のバラード演奏も結構行けますし、何より「フィリー・ジョー」のブラッシュ・ワークが、見事に彼等をサポートしてくれます。

ラスト曲「ニュー・マ」…「モーガン」のオリジナルで、いかにも…のマイナー調ブルーズ。
まず「ティモンズ」が、日本の演歌の様に、泣き節を入れながらソロ演奏をして、ブルースの真髄を表現したくれます。
それから「チェンバース」…こう言った地味?目のベース・ラインの見事さと、ソロ演奏での生真面目さ…似合っていて大好きです。
「アダムス」も抑制気味だが、渋くブルース・フレーズを決めてくれて、ラストの舞を見せ付けてくれます。
今回のアルバムの最高殊勲選手ですね。
「フィリー・ジョー」の見せ場も勿論有りますよ。
そして最後は、「モーガン」がバッチリとブリリアントにソロをやり遂げて、最高のフィニッシュを見せてくれて…カッコ良く決めてくれます。

全5曲とも駄演が無く、50年代後期のブルーノートの最高に行けてる時代をしっかり捉えた、好アルバムですね。

オルガン・トリオとのワンホーンです…ジョーズ~エディ・ロック・ジョウ・デイビス&シャーリー・スコット

2007-12-11 22:17:21 | ジャズ・テナー・サックス
とてもライトなブルース・フィーリングに満ち溢れた、「エディ・ロックジョウ・デイビス」のオルガン・トリオをバックに従えた、ワンホーン・アルバムを紹介しましょう。
曲目もスタンダードばかりで、聴き易い事受けあいです。

アルバムタイトル…ジョーズ

パーソネル…リーダー;エディ・ロックジョウ・デイビス(ts)
      リーダー;シャーリー・スコット(org)
      ジョージ・デュヴィヴィエ(b)
      アーサー・エッジヒル(ds)

曲目…1.アイ・レット・ア・ソング・ゴー・アウト・オブ・マイ・ハート、2.
アイル・ネヴァー・ビー・ザ・セイム、3.夢から醒めて、4.オールド・デヴィル・ムーン、5.トゥー・クロース・フォー・コンフォート、6.ボディ・アンド・ソウル、7.バット・ノット・フォー・ミー、8.タンジェリン

1958年9月12日録音

原盤…prestige 7154  発売…ビクターエンタテインメント
CD番号…VICJ-2180

演奏について…オープニング「アイ・レット~」…非常に馴染み易い、4ビートのリズムで、「ロックジョウ」が割と抑え目ながら、良いフレーズのアドリブを演ってくれて、「スコット」他、サイドのメンバーも手堅くまとめて、ブルース・ジャズの真髄(ちょっと大袈裟?)が見れますよ。
「スコット」は、とても軽やかで、ブルース臭さをあまり感じさせませんが、それが持ち味の一つでしょう。

2曲目「アイル・ネヴァー~」…この演奏は良いね!
「ロックジョウ」…ブルース・バラッド行けるねぇ。
男臭いが、ハード過ぎはしないで、女性が安心出来る「男臭さ」…つまり危険な香りでは無く、「釣り馬鹿」の「浜ちゃん」的なお人好しさが有るんです。
「スコット」がこの曲では、少し音質を、にごり系にして、ブルース・バラッドの重さを表現してくれます。
私的に、この演奏がこのアルバムでのベスト・トラックでは無いかと思います。

3曲目「夢から醒めて」…この曲では何と言っても中盤以降の「スコット」のごきげんなノリでのアドリブ演奏がぴか一で聴き物ですね。
しかし、それ以上に光るのが、実は「エッジヒル」のプレイでしょうか?
ブラッシュ・ワークとシンバルを活かしたドラミングなんですが、軽く敲いているにも拘らず、とてもドライヴィング力が有って、皆を引っ張ってくれます。
序盤の「ロックジョウ」のアドリブも好演です。

4曲目「オールド・デヴィル・ムーン」…非常に変則的な入りで、ラテン・リズムに乗せて、皆が演ってくれるのだが、とにかくとても面白い。
この曲にオルガンって楽器が正直合うのかなぁって思いますが、何か不思議系のサウンドで、合っているんだが、無いんだか?良く分からんけど、何でも有りならOKですよ。
個人的には「エッジヒル」の出来が素晴らしいと思うが、「スコット」の馬鹿ノリと、ガッツリ真面目に弾き続けるベースの「デュヴィヴィエ」も良い味を出しているね。

5曲目「トゥー・クロース~」安心して聴いていられる、ノリ良い4ビート・リズムに乗って「ロックジョウ」が、ぶいぶい言わせてくれますよ。
「スコット」も相変わらず、絶好調!
この人のオルガンって良く言えば、跳ねて踊る感じ…悪く言えばとてもライトで、軽いサウンドなんだよね。
特に「ジミー・スミス」なんかに比べると、音(音量・音質)が半分以下じゃないかと思うくらいです。
ライトに気兼ねなく聴きたい人には、goodなサウンドでしょう。

6曲目「ボディ・アンド・ソウル」…こいつはヘヴィな演奏に限る…って思っていたら、この重くない演奏も有りなんだよね。
かと言って「ロックジョウ」は、充分に重厚さも加味された、音質と音量で吹いてくれるんですけど。
但し、先ほど同様「スコット」の演奏が、かなりライトなんで、少し物足りないかも知れないなぁ。
でも「ロックジョウ」は全曲中、一番汗を額からたらしながら、熱演しているのは、間違い無いです。
ここでの「ロックジョウ」の演奏には痺れます。

7曲目「バット・ノット~」…この曲も有名曲なので、皆様が普通に?想像した演奏からすると、ちと違う感じがするかも…。。。
でも「ロックジョウ」は、この曲ぐらいまで来ると、テナー・マンとしての本性が全面的に出て来て、かなりシャウトをしてくれて…良い感じですよ。
「スコット」は、軽やかながら、アドリブ・メロディとイマジネーションの出来は、相当行けてます。
「デュヴィヴィエ」のバツーンと重々しいベースが、「スコット」の軽さを良くフォローした感じがします。

ラスト「タンジェリン」…こう言う、ライトな感じの曲は、このコンボにガッツリはまる気がします。
「ロックジョウ」と「スコット」の掛け合い、丁々発止が一番の聴き所でしょう。
やっぱり、この二人はお互いに触発されて、溌剌とした演奏をしてくれる仲間なんでしょうね。

全体的に少しライトな感じは否めませんが、ブルージー過ぎない、オルガン入りジャズ、(コンボ)を楽しむのには、お薦めの一枚です。

マイルス・イン・ベルリンと同様のコンセプト…フォア・アンド・モア~マイルス・デイヴィス

2007-12-09 23:17:32 | マイルス・デイヴィス
エネルギッシュで且つアコースティック・サウンド演奏した(された)「マイルス」が好きな諸氏には堪らない魅力のアルバムを紹介しましょう。

先日紹介したアルバム、「マイルス・イン・ベルリン」と略同時期に録音されており、(実際は、この録音の方が半年ほど前ですね)コンセプト的にも近いライブ・アルバムなのですが、テナー・サックスが「ジョージ・コールマン」で演奏されています。
しかし、ハードで見るからに硬派な「マイルス」の演奏にも魅力が一杯ですので、どうぞご賞味あれ!

アルバムタイトル…フォア・アンド・モア

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョージ・コールマン(ts)
      ハービー・ハンコック(p)
      ロン・カーター(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

1964年2月12日録音

原盤…米コロムビア 発売…CBS SONY
CD番号…CSCS-5145

演奏について…オープニング曲は、やはりと言うべきか、「ソー・ホワット」からスタートする。
「カーター」のベースに導かれて、全員戦闘体勢に入る。
「マイルス」も最初からエンジン全開で、オープン・トランペットで、ぶいぶい言わせる。
しかし、最もエキサイティングなのは、「トニー・ウィリアムス」である。
タイム感覚抜群で、ドラ・テクも完璧な事に加えて、このクインテットを充分過ぎるほどの強力な推進力で煽り捲る。
「ハンコック」はいつも通り、ややクールな目線で伴奏をし、アドリブ・ソロの場面でも、クール・ビューティな演奏をして、カッコイイんですよ。
テナーの「コールマン」は、とにかく真面目に一心不乱に吹く事に専念していて、好感が持てます。
スタートから、モード・ジャズのカッコ良さを全面的に押出した名演奏です。

2曲目「ウォーキン」も「マイルス」の代名詞的な曲で、「マイルス」が声高らかにテーマを吹いて序奏がなされて、ヨーイドンとなる。
この曲でも1曲目同様、リズム・セクションの「ウィリアムス」と「カーター」の推進力が半端じゃない。
その中でも「ウィリアムス」は稀代のテクニシャン、若き天才らしく、皆を推進していながらも、ドラムのおかずの使い方、変拍子の使用等のセンスも抜群で、特にアドリブ・ソロに入ると、空間の魔術師の様に時を止めたり、動かしたりと…完全に時間を司っています。
その後で「コールマン」が気合の入ったアドリブを演ってくれます。
「ハンコック」は、この曲では華麗なアドリブを見せて、クール・ビューティが少し血を通わせた様な演奏になります。
終盤にもう一度テーマ演奏に戻ると、全員の掛け合いでフィニッシュとなって、場内は感動です。

3曲目「ジョシュア・ゴーゴー」…この曲も「マイルス」のハードな音量、音質の演奏からスタートして、1小節目から全員に緊張感が伝わる。
この曲でも「カーター」、「ウィリアムス」の二人は、1、2曲目と変わらず、エンジン・フル・パワーで疾走するスポーツ・カーの様です。
「コールマン」も持てる力を出し切る様にテナーに魂を込めた演奏が見て取れますし、演奏自体もとても好調です。
しかし、この曲は良く出来ていて、8ビートのジャズでありながら、緩小節の部分も有って、個人のアドリブ・メロディの美しさを見せられるパートが多く存在しているので、その辺も聴き所の一つでしょう。
とにかく一言で言えば、「カッコイイ演奏」と言うことにつきる演奏です。

4曲目「フォア」…マーチ調のリズムに、「ハンコック」の知的なピアノと、「マイルス」のフルトーン・トランペットが絡み付く様な序奏からKOされそうです。
「コールマン」は、この曲では幾分思索気味のアドリブを吹いています。
「コールマン」は、演奏技術もしっかりしているし、音色も魅力的なテナー奏者ですが、何せ彼以外の全メンバーが天才アーティストで囲まれているので、考えて見れば、「コールマン」がとても可哀そうです。
しかし、このアルバム全曲での「コールマン」のプレイは好演してるのは事実です。

5曲目「天国への七つの階段」…例に漏れず、最強リズム・セクションの3人に導かれて、「マイルス」「コールマン」のユニゾンでのテーマ演奏から曲が始まる。
「マイルス」、「コールマン」とも、それぞれ魅力あるアドリブを演ってくれますが、ここでも最も聴衆を沸かすのは「ウィリアムス」のドラム・ソロの場面です。
あまりの素晴らしさに、皆、口をあんぐり状態で聴いているんでしょう。
終盤での「ハンコック」の流麗なアドリブも良いですね。

ラスト・ナンバーの「ゼア・イズ~」…ここで、「マイルス」が伝家の宝刀「ミュート・プレイ」を演ってくれます。
やっぱり、「マイルス」はミュートが良いよね。
とにかく、クールでインテリジェンスで、超カッコイイんです。
フル・トーンだと、どうしても「クリフォード・ブラウン」とか、「リー・モーガン」なんかの方が上手の様な気がします。
しかし、「マイルス」は、ミュート・プレイは唯一例外の「チェット・ベイカー」を除けば、絶対的な存在のアーティストですよね。
その「チェット」との比較にしても、音質、音色、そしてプレイ・スタイルとも全く異なっていて、ガチンコで真っ向から比較すべく対象では無いですしね。
この曲では「コールマン」は割かし伸び伸びと、リラックスして吹いています。
コンサートも最終コーナーのバック・ストレートに入ったので、緊張感から解放されたのかな?
「ハンコック」…終始変わらず、固めのタッチで、知的に冷静に曲を調理してくれて…完璧な料理を客に提供してくれます。
最後も「マイルス」の緊張感たっぷりなミュートで曲が締め括られて、アナウンスに全員が紹介されて、真にカッコヨスのライブが終わります。
ブラボー!!!

最後に…「モード」のこの時代、「コルトレーン」は精神の極みの演奏を成し遂げ、「ドルフィー」は命を削って演奏を続けた。
そして「マイルス」は、とにかくクールでカッコ良さの代名詞的演奏で、ジャズのダンディズムを追求した感じがします。
私からすれば、「モード・マイルス」で完成形と言えるほどカッコヨスなので、70年代のブラック・ファンク的な「電気マイルス」は、…必ずしも必要ではなかったと思います。。。

録音状態は最悪?しかし演奏は最高峰…ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン

2007-12-08 15:38:09 | ジャズ・ギター
今日の3枚目は、あの伝説のライブ・アルバム行っちゃいましょう。

先だっては、この類のアルバムとして「ジャズ・アット・マッセイ・ホール」を紹介しましたが、今日のアルバムは、それよりも更に10年以上も古い録音で…音質は正直相当「悪い」んです。しかし、演奏は最高!

天才ジャズ・ギタリスト「チャーリー・クリスチャン」の全盛期のスーパー・プレイが収められているだけでなく、若き日の「ディジー・ガレスピー」や「ケニー・クラーク」、そしてこれまた若い頃の「セロニアス・モンク」等、後のスーパー・スター達の演奏参加も見逃せ無い希少なアルバムです。

アルバムタイトル…ミントンハウスのチャーリー・クリスチャン

パーソネル…チャーリー・クリスチャン(g)
      ディジー・ガレスピー(tp)
      セロニアス・モンク(p)
      ケニー・クラーク(ds)
      ドン・バイアス(ts)
      ジョー・ガイ(tp)

曲目…1.スイング・トゥ・バップ、2.ストンピン・アット・ザ・サヴォイ、3.アップ・オン・テディズ・ヒル、4.ダウン・オン・テディズ・ヒル、5.ガイズ・ガット・トゥ・ゴー、6.リップス・フリップス、7.スターダスト、8.ケルアック、9.スターダスト

1941年録音

発売…センチュリー・レコード
CD番号…CECC-00376

演奏について…オープニング・ナンバー「スイング・トゥ~」では、録音の関係からか曲の途中からレコーディングされているが、「クリスチャン」が、縦横無尽に行け行けでアドリブを弾き捲る。
今となっては超絶技巧では無いのだが、この時代にエレキ・ギターをぶいぶい言わせた事が、ジャズの歴史そのもので有り、「クリスチャン」のすごい所です。
音質は悪いが、「クラーク」も、バス・ドラを利かせながら、かなり皆を煽っており、その後の中間部でトランッペットのソロをかますのは「ガレスピー」?であろうか。
「ガレスピー」は、「クリスチャン」のギターに触発されたのか、輝かしい音色でハイトーンで吹き切ります。
そして「モンク」が登場!
この頃は「モンク」節ばりばりでは無く、結構まとも?に弾いてますよ。
しかも、乗り、スインング感覚とも悪くない。
「モンク」…良い仕事をしております。
最後はもう一度「クリスチャン」のカデンツァ的なギター・アドリブが聴衆を席捲する。
とにかく「クリスチャン」の演奏、スピリットともすごいとしか言いようが有りません。

2曲目「ストンピン~」…序盤では、ブリリアントな「ガレスピー」の絶好調ソロから始まり、「クリスチャン」は伴奏に専念している。
その後、「モンク」が、まともにメロディ展開をさせたアドリブをかますが、ここでも「クリスチャン」は、伴奏状態。
それから、やっとイマジネーション豊かな、素晴らしいソロ演奏に入ります。
とにかく迫力満点の分厚いトーンのギター音量(演奏)で、聴いている者のハートを熱くさせる。
演奏は、もう一回熟考された「ガレスピー」のソロに戻り、「クリスチャン」も応戦して終わります。

3曲目「アップ・オン~」…この硬派の「クリスチャン」の演奏に興奮したのか?聴衆?或いはメンバーの気分がハイになって、全員ノリノリ状態になります。
「クリスチャン」は、それでも自分のスタイルは変えずに、ぶいぶい弾き続けます。
しかし、「クリスチャン」の演奏は本当にパワフルで、ドライヴィング力の強いギター演奏ですね。
その後は「バイアス」が、負けじとテナーで応え、「ガレスピー」もペットで応えます。
やや早めの4ビートでグングン突き進む、ジャズ・トレイン(機関車)演奏列車に乗っているみたいです。

4曲目「ダウン・オン~」…序奏から「クリスチャン」がグングンとアドリブを決めて、廻りは興奮の坩堝と化している。
「クリスチャン」のカリスマ性、演奏オーラの強烈さは半端じゃないね。
「ガレスピー」は、おどけや遊びが出せない程、偉大なギタリストのソロを受けて一所懸命に吹いてくれます。

5曲目「ガイズ・ガット~」では、曲の紹介から録音されていて、ライブの臨場感が改めて伝わります。
「クリスチャン」は、ここでシングルを活かして、ブルージーな感覚で弾いてくれます。
サイド・メンバーは皆、伴奏的な演奏で盛り上げてくれます。

6曲目「リップス・フィリップス」では、「バイアス」がノッケから飛ばして好フレーズを連発してアドバンテージを取ります。
それを受けて「ガレスピー」?いや「ジョー・ガイ」かな?も思い切りの良いフレーズを吹きます。
しかし、すぐに真打登場!
「クリスチャン」が皆の遥か上を行く、アドリブ・・フレーズを続々と繰り出してイマジネーションの豊かさと、ギター・テクの素晴らしさを見せ付けます。
「クラーク」も良いサポート演奏をしてくれますが、いずれにせよ「クリスチャン」のアドリブ演奏が図抜けてすごいのは一目瞭然です。

7曲目名曲「スターダスト」は、「バイアス」が色気たっぷりにテナーを響かせ、バラッドなら我に有利と、気合充分に吹きます。
続く「ガレスピー」も幾分抑え目のトーンで、勢いよりも抑制の美学…渋さで曲のメロディ・ラインの美しさを目立たせます。
そうすると、もう一度「バイアス」が序奏よりももっとダンディズム溢れるソロを吹き、「ガレスピー」も同様に応えます。
終盤でのこの二人の(二重奏的な)掛け合い、コラボ演奏は、お見事の一言です。
「クリスチャン」は二人に花を持たせて、終始伴奏に務めます。

8曲目「ケルアック」…「モンク」が乗りの良いブロック・コードをメインにスタートさせると、「ガレスピー」もすぐさま、この曲に乗って来て、好フレーズで巻き返します。
そうすると、もう一度「モンク」が軽やかにアドリブを決め返します。
先ほどはテナーとペットの掛け合いでしたが、この曲ではピアノとペットのコラボ掛け合いで構成されていて、興味深いですね。
この曲でも「クリスチャン」は伴奏参加だけです。
しかし、完成された「モンク」の演奏の下手ウマは、やはり思索的に作ったプレイだと言うのが、これでハッキリしましたね。
何と言ってもここでは、華麗に軽やかに、そして流麗にピアノ演奏を決め捲っているんですから。

9曲目「スターダスト」は、7曲目の別テイクです。
この演奏では「モンク」の華麗なピアノ演奏で、テーマ、序奏が告げられます。
ここでの「モンク」のアドリブ演奏…すごく魅力的です。
更に「モンク」をフォローする様に、「ガレスピー」も魅惑的なフレーズでアドリブ演奏をしてくれて、心に残る美演でアルバムが終わります。

何度も言いますが、とにかく音質は悪く聴き辛いですが、天才「クリスチャン」のアドリブ、スーパー・カデンツァは最高の上、若い頃の「ガレスピー」、「モンク」等の初々しいソロも必聴物なので、是非とも聴いて欲しいアルバムの一つです。

心を浄化したい方に送ります…サンジェルマン・デ・プレ~ジョン・ルイス・ソロ・アット・チャーチ

2007-12-08 13:28:00 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日の2枚目ですが、「ジョン・ルイス」のソロ・アルバムを紹介しましょう。

「ジョン・ルイス」…ジャズ界ではMJQのリーダーにして、クラシックとしても「JS・バッハ」に造詣が深い、稀有なアーティスト。

このアルバムは「ルイス」が最も自己の概念を出し易い、ソロ・ピアノ演奏を教会にて録音した物であり、静かに聴いて?心を浄化させるには、丁度良いのではないでしょうか?

作品的には「ルイス」が傾倒している「JS・バッハ」風の曲から、良く知られたスタンダード曲ばかりで、そう言う面からも、とても聴き易いアルバムに仕上がっています。

アルバムタイトル…サンジェルマン・デ・プレ~ジョン・ルイス・ソロ・アット・チャーチ

アーティスト…ジョン・ルイス(p)

1990年9月 NY、アセンション教会にて録音

曲目…1.サンジェルマン・デ・プレ、2.オープニング・ビット、3.ダウン・トゥ・スペーズ、4.モーニング・イン・パリ、5.ミラノ、6.アフタヌーン・イン・パリ、7.ドント・ブレイム・ミー、8.ジェミナイ、9.ラウンド・ミッドナイト、10.ミッドナイト・イン・パリ

原盤…Polygram  発売…日本フォノグラム
CD番号…PHCE-5025

演奏について…1曲目「サンジェルマン~」…メロディが賛美歌の「もみの木」に似たフレーズの「ルイス」オリジナル曲ですが、展開部から非常にスウィング感溢れるジャジーな雰囲気の曲に変わって…この曲調の変化に趣が有ります。
いかにも「ルイス」らしい、バッハ風とブルース風の融合バランスが絶妙です。

2曲目「オープニング・ビッド」…これも「ルイス」オリジナル曲だが、「JS・バッハ」への畏敬の念が如実に感じ取れる名曲。
どこからどう聴いても、「JS・バッハ」の曲にしか聴こえない…ぐらい酷似している名旋律です。
しかし、只の「似非バッハ」では無くて、中間からジャジーな曲に変わって…※ジャズ・バッハ演奏に様変わりして…流石「ルイス」と思わせる説得力が有ります。
いずれにせよ、個人的には、アルバム中大のお気に入りの1曲です。

3曲目「ダウン・トゥ~」も「JS・バッハ」へ讃歌し、傾倒した1曲。
「インベンションとシンフォニア」調で、とてもクラシカルな曲に仕上がっています。
この曲もジャズ・バッハその物と言える、ジャズとクラシック(バッハ)の完全融合態ですね。

4曲目「モーニング・イン・パリ」…「ルイス」の曲では無いが、作曲者「デュハメル」が「シューマン」を彷彿させる曲だと言ったとか?
とにかく、非常に哀愁が有って、しかしセンチンタリズムにびっしりと染まってはいない、この寸止め?センスは素晴らしいです。
「ルイス」のピアニストとしての優れた部分を最高に発揮できる曲では無いでしょうか?
パリの朝は爽やかで清々しく、一寸ライトなお洒落感覚さが充分に表現されています。
「ルイス」も名旋律に乗って、気持ち良く弾き切ります。

5曲目「ミラノ」…原曲名は「ファッツ・ナヴァロ」から取った「ナヴァライズ」ですが、「ルイス」はとても鎮静的で知的な解釈の演奏で、この曲のナイーヴな面を前面に押し出して来ます。
本当にロマンティックで、心がとろけそうになります。
しかし、そこは曲がりなりにも?ジャズ・ピアニストであり、所々でラグ・タイム風やブルース・フィーリングが見え隠れする、テンポの変速や、フレーズを入れて遊び心を見せてくれます。

6曲目「アフタヌーン・イン~」は、「ルイス」作曲の、もはや古典的なスタンダードですが、この演奏は思い切りラグ・タイム調にアレンジ&デフォルメしていて、ピアノ演奏(編曲)の楽しさを見せ付けます。

7曲目「ドント・ブレイム~」では、「ルイス」がピアノ演奏に対する、多彩なヴァリエーションを駆使して曲を飾り付ける。

8曲目「ジェミナイ」…「ルイス」オリジナル作曲の、ブルース・チューンですが、流石に「ルイス」が弾くブルースだけに、土臭くは無くて、どこか都会的な風情が有る。

9曲目「ラウンド・ミッドナイト」…「ルイス」の先輩であり、ライバル?でもある「セロニアス・モンク」の超代表作だが、「ルイス」はこの曲がお気に入りらしく、度々取り上げて演奏をしている。
ここでは、寛いだ雰囲気で「モンク」の闇の世界をサラリと受け流す?
いや、原曲に敬意を表して、あえて辛辣には弾かなかったと見るべきだろう。
「モンク」としても、こう言うアッサリ系の「ラウンド・アバウト~」が有っても良いと感じるはずです。

ラスト「ミッドナイト・イン・パリ」…この曲も名曲ですね。
クラシカルさとジャジーな頃合の良い融合感が堪らない魅力です。
「ルイス」が両方のジャンルに精通していて、且つ両ジャンルとも優劣が付けられない程、愛しているのが再認識できます。
曲の緩急の付け方、装飾音譜の付け方、緩小節での情感の豊かさなど、最高です。

「ルイス」&「バッハ」&「ジャズ」万歳、万々歳!!