紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

センス抜群のコンボ演奏…ジョージ・シアリング・アンド・ザ・モンゴメリー・ブラザーズ

2008-05-11 12:36:58 | ジャズ・ピアノ・コンボ
盲目の天才、白人ピアニスト「ジョージ・シアリング」と、南部出身のブルージィ且つダイナミズム抜群の天才、黒人ギタリスト「ウエス・モンゴメリー」&「モゴメリー・ブラザーズ」がコンボを組んだ、センス抜群のアルバムが、今日紹介する2枚目です。

アルバムタイトル…ジョージ・シアリング・アンド・ザ・モンゴメリー・ブラザーズ

パーソネル…リーダー;ジョージ・シアリング(p)
      リーダー;ウエス・モンゴメリー(g)
      バディ・モンゴメリー(vib)
      モンク・モンゴメリー(b)
      ウォルター・パーキンス(ds)
      アーマンド・ペラザ(congas)
      リカルド・チメリス(timbales、bongos)

曲目…1.ラヴ・ウォークト・イン(take11)、2.ラヴ・フォー・セール、3.ノー・ハード・フィーリングス、4.エンチャーンテッド、5.ストレンジャー・イン・パラダイス、6.亡き王女のためのパヴァーヌ、7.ダブル・ディール、8.アンド・ゼン・アイ・ロウト、9.ダーン・ザット・ドリーム(take8)、10.ルイズ・アン、11.マンボ・イン・チャイムズ(take11)、※12.ラヴ・ウォークト・イン(take1)、※13.ダーン・ザット・ドリーム(take1)、※14.マンボ・イン・チャイムズ(take1)

※3曲はCDボーナス・トラック

1961年10月9日、10日 L.Aにて録音

原盤…RIVERSIDE JAZZLAND JLP-55
発売…ビクター・エンターテインメント㈱
CD番号…VICJ-60018

演奏について…1曲目「ラヴ・ウォークト・イン(take11)」…「ウエス・モンゴメリー」がお得意のオクターブ奏法をヨーイ・ドンから繰り出し、次いで弟「バディ・モンゴメリー」が、短いがセンシティブなソロを演る。
「シアリング」は伴奏に専念し、「モンゴメリー・ブラザーズ」を優しく見守る。

2曲目「ラヴ・フォー・セール」…「コール・ポーター」作曲の有名なスタンダード・ナンバーだが、まるでMJQが演奏しているが如く、寛ぎとハイ・センスで纏められていて、好感が持てます。
そうですねぇ…MJQ+「ウエス・モンゴメリー」的なサウンドと言えば良いでしょうか?
序奏と中間のアドリブは「シアリング」が演ってくれるんですが、抜群のセンスとインテリジェンスを感じるソロで、流石としか言いようが有りません。

3曲目「ノー・ハード・フィーリングス」…「バディ」と「シアリング」の掛け合い的に序奏がなされ、「バディ」の跳ねるヴァイブと、「シアリング」の小粋なシングル・トーンが、極めてお洒落です。
「ウエス」は一人だけブルージィに仕上げて、スパイス役を買って出ます。
もう一人の「モンゴメリー兄弟」の「モンク・モンゴメリー」の分厚いサウンドのベース演奏も出来映え良くて、裏聴き所になってます。
全員が精緻且つエネルギッシュなコンボ演奏をしていて、ベスト・トラックと言っても過言では有りません。

4曲目「エンチャーンテッド」…「シアリング」作の室内楽的なスロー・ナンバーで、ここでは「シアリング」と「バディ」のゆったりしたユニゾン演奏が、寛ぎとチョッピリの気だるさを演出していて、いとおかしです。
この曲を夏の海辺、それも夕暮れ時に聴けば、思わず転寝(昼寝)をしちゃう癒し音楽ですね。

5曲目「ストレンジャー・イン・パラダイス」…この曲は(から)ラテン曲となって、「ペラザ」「チメリス」のWパーカッション(コンガ・ボンゴ)が加わって、演奏がとても華やかになります。
しかし「モンク・モンゴメリー」の分厚いベース・サウンドと、このパーカッション群がベスト・マッチを見せて、ラテン・ミュージックで有りながら、硬派に仕上がっていて、聴かせる音楽にしているのは◎でしょうねぇ。
後半部分は「ウエス」の腕の見せ所…真骨頂で、オクターブ奏法とブルーズ・スピリットが程好く炸裂します。

6曲目「亡き王女のためのパヴァーヌ」…ラテン・リズムばりばりで「ラヴェル」の名曲を演る辺りは…流石「シアリング」と言うべきか?
「ラヴェル」の印象派的な淡いサウンドとは対極にあって、極彩色の艶やかなサウンド(演奏)になっています。
「ペラザ」と「チメリス」が燃えていて、楽しいこと請け合いです。

7曲目「ダブル・ディール」…「ウエス」作の佳曲で、「ヴァイブ」と「ピアノ」のユニゾン演奏に「ウエス」が、サイドからジャジィに修飾して行き、これぞコンボ演奏の規範と言いたいぐらいのハイ・パフォーマンスがgoodです。
この後「ウエス」が更にマッシブなアドリブで決めてくれるし、「バディ」は弾み度120%のハイなソロを演って…ごきげんだぜぃ!
この曲も最上位クラスの演奏です。

8曲目「アンド・ゼン・アイ・ロウト」…「シアリング」作のマイナー・チューンで、短いが「ウエス」の立派なアドリブ・ソロと、自身「シアリング」のシングル・トーンでのアドリブが上品で、行けてますよ~!
この曲まえに改めて気付いたんだけど、ドラムの「パーキンス」が地味ながら、堅実にフロント3人をアシストしていて、拍手を送りたいですね。

9曲目「ダーン・ザット・ドリーム(take8)」…この曲(演奏)も前半は「バディ」の演奏を全面に押し出して、アクティブに仕上げて行きます。
中盤「シアリング」のソロに入ると、格調を上げる様にお洒落に決めます。
その後は「ウエス」が〆ますが、どことなく御大「シアリング」に遠慮している様なのですが、フレーズを聴くと…やっぱり「ウエス」を主張していますね!

10曲目「ルイズ・アン」…「バディ」作のロマンティックなバラード・ナンバーで、一寸甘すぎと評価する人もいるらしいのですが、やっぱりこのメンツなら、これぐらい濃い、ど真ん中直球勝負の1曲が有って当然だと、私は思います。
まじで、甘~いです。
まるで、純愛物の映画音楽そのものです。
でも…でも…僕は好きだな…こういうの!!!

11曲目「マンボ・チャイムズ~」の(take11)で、パーカッションの「ペラザ」と「チメリス」がかなりエキサイトして、明るく楽しいラテン・ミュージックがなされていますが、個人的には、やや明るすぎな感じで、LP初出時、不採用となった14曲目の方が好みなんですが…。

12曲目「ラヴ・ウォークト・イン(take1)」…採用トラックと比較して、一発目の録音なので、「バディ」が一寸緊張気味で、前半に音が若干ぶれているかもしれませんねぇ。
後半はのびのび演っているので、好演しています。
「ウエス」の出来は悪く有りませんで、最初からオクターブ奏法びんびんに来てます、来てます。
そして「シアリング」…余裕のソロです。
結構良い演奏ですよ。

13曲目「ダーン・ザット・ドリーム」(take1)…採用トラックと比べて特に悪い所はない気がします。
かなり良い演奏で、この曲&演奏辺りは、音楽プロデューサー、「シアリング」「ウエス」等で話し合って、好みの問題で決めた感じがします。
全員が渾然一体となった、素晴らしい緻密なグループ・コンボとして機能しています。

14曲目「マンボ・イン~」(take1)…こいつは良いねぇ。
特に「ウエス」の出来とアドリブ・ソロの気合…一番良いかも。
だけど、「ウエス」が良すぎて、「シアリング」のお気に召さなかったのかなぁ?なんて下衆のかんぐりをしたくなる演奏ですね。
私としては「ウエス」の演奏を全面に押し出して頂けると嬉しいんですが…御大…怖いからなぁ…でも、このCD化で収録してくれて、おかげで聴けて、ラッキーですね。

知的なボサ・ノヴァ…デイヴ・ブルーベック…ボサ・ノヴァ U.S.A

2008-04-17 22:43:18 | ジャズ・ピアノ・コンボ
私の住んでいる神奈川県は、今日の夕方くらいから、生憎の雨模様となりまして、とてもじめじめした嫌な天候です。
そこで、今日はジャズとラテンの融合…それも飛び切りのハイ・センスな奴で行きたい…じめじめ陽気を吹き飛ばしたいなぁ…と思ってこのアルバムをセレクトしました。

アルバムタイトル…ボサ・ノヴァ U.S.A

パーソネル…リーダー;デイヴ・ブルーベック(p)
      ポール・デズモンド(as)
      ジーン・ライト(b)
      ジョー・モレロ(ds)

曲目…1.ボサ・ノヴァ U.S.A、2.冷たい風、3.トロリー・ソング、4.6月によせて、5.テンダー・ハート、6.ブラザー・フレンド、7.明日なき恋、8.カンティガ・ノヴァ・スウィング、9.ラメント、10.ディス・キャント・ビィ・ラヴ

1962年1月3日 ②⑤⑥⑧⑨、7月2日 ③⑩、7月12日 ④⑦、10月25日 ① NYにて録音

原盤…米コロムビア  発売…SONYレコード
CD番号…SRCS-9364

演奏について…まず、タイトル曲の1曲目「ボサ・ノヴァ~」…「ブルーベック」の軽やかで魅惑的なブロック・コードと「モレロ」の軽快なドラミングに導かれて、二人以上に羽が生えた様に軽い音色で、「デズモンド」が流麗にアルト・サックスを吹く。
何気ない曲に何気ない演奏だが、このライトさ…他では味わえない感覚だ!

2曲目「冷たい風」…この曲も素晴らしく良い曲で、ボサ・ノヴァ・リズムに乗って「デズモンド」がクール&ライトに吹き切る。
受ける「ブルーベック」のシングル・トーンも切なさと軽さの間で揺れる微妙な感覚がとても品が有って…ボサ・ノヴァの良さ、佳曲が再認識出来ます。

3曲目「トロリー・ソング」…古くからの「ブルーベック・カルテット」の作品で、彼らの十八番の一つ。
とてもハイ・テンポで、あくまで軽快に「デズモンド」「ブルーベック」「ライト」「モレロ」の4人が渾然一体になって疾走する。

4曲目「6月によせて」…「ハワード・ブルーベック」…そう、「デイヴ」のお兄さんが書いた美曲で、「デズモンド」のクール?いやウォーム?かな??&ビューティのアルト・サックスが堪能出来て、「ブルーベック」の審美的なピアノ・ソロも聴き物のファイン・チューンです。
ジャズとは言い難いが、ポップスほど軟弱では有りません。
個人的にはとてもお気に入りな1曲です。

5曲目「テンダー・ハート」は「テオ・マセロ」作で、リズムは勿論、ボサ・ノヴァなんだけど、「デズモンド」のサックスのアドリブが行けてるし、「ブルーベック」の抑えたピアノ・ソロも味わい深い。
バリバリに吹かず、弾かず、抑制の美学が有りますねぇ。
やっぱり、「ブルーベック・カルテット」…とっても白人っぽい演奏です。
でも、でも…たまにはこう言うのも良いよ。
激しいだけがジャズでは有りませんねぇ。

6曲目「ブラザー・フレンド」…いかにも「ブルーベック」的かと言えば、そうは思わない。
どちらかと言うと…そうだ!「MJQ」の感じだな。
「ミルト」のヴァイブの代わりに「デズモンド」が入った感じで…とても室内楽的で、曲の少し外した和音や、クラシックの現代曲風のニュアンスに、優れたセンスをバチバチ受けます。

7曲目「明日なき恋」…この曲も良いねぇ!
さっきの曲、「MJQ」的と言ったが、もう一つ似ているのが有ったよ~。
そうですねぇ、「ジャック・ルーシェ」とか「オイゲン・キケロ」みたいに、「ジャズ・バッハ」を演るアーティストの表現に類似しているんですね。
古風な部分と、ハイテクな部分が美しく融合されていて、正しくそれこそ古くて新しい代表的な作曲家「バッハ」そのものみたい。
勿論、この曲は「バッハ」では無く、「ブルーベック」のオリジナルですけど、「バッハ」風に聴こえるんです。
それだけ素晴らしいマイナー・チューンに仕上がっていて…フィナーレの「ショパン」っぽい所もまた良いんです。
クラシック好きな人は、この曲&演奏…間違いなく気に入るでしょうね。

8曲目「カンティガ・ノヴァ~」…このアルバム唯一のボサ・ノヴァ曲では無く、サンバ曲で…「モレロ」の激しいドラミングと「ライト」の牽引力溢れるベース演奏がぐいぐいと推進して行く。
「ブルーベック」もこの曲では、ピアノを打楽器?として用いて、敲き捲ってくれます。

9曲目「ラメント」…曲名通り、悲しみのマイナー・バラード・チューンで、のっけから「ブルーベック」のソロ演奏がとても美しいいんですが、中途からボサ・ノヴァの軽快なリズムへとチェンジして、それに合わせて「デズモンド」がシンプルなラインのメロディをサックスで口ずさむ。
「ブルーベック」も「デズモンド」同様にシンプルに合わせてくれて、goodです。

ラスト曲「ディス・キャント~」…原曲は「リチャード・ロジャーズ」作のスタンダードですが、ここでの演奏では、ラテン・リズムにチェンジして、それもかなり激しい感覚で、かなりデフォルメしたイメージになります。
しかし、「デズモンド」の跳ねたアルト演奏と「ブルーベック」の遊び心を入れたアドリブ演奏の両方とも冴えていて…気持ち良いです。
それ以上に聴き物は…「モレロ」のドラム・ソロで、一瞬「フィリー・ジョー」?って思うぐらい、スゴテクとライトなノリで、突っ込んだ演奏をしてくれます。
彼の貢献も有ってか?ラストの2曲は、「ブルーベック・カルテット」の演奏としては、かなりファイトしていて、やっぱり最後は、メンバー全員で盛り上げてフィニッシュしたいんでしょう。

じめじめ天気を、ハイセンス・アルバムを聴いて、皆でぶっ飛ばしましょうや!!

昨日の続きですよ。ウィントン・ケリー~ケリー・グレイト

2008-03-12 23:00:36 | ジャズ・ピアノ・コンボ
さーて、昨日の続くを行きましょう。
この盤は、This is hard bapと言って良いぐらいに、傑出した名盤です。

このスーパー・メンバーによる、ハード・バップの宴を紹介しましょう。

演奏について…1曲目「リンクルズ」…「ケリー」のマイナー・ブルーズのチューンに導かれて、「モーガン」がミュートで、実しやかなアドリブ・ソロを決める。
「チェンバース」と「フィリー・ジョー」によって司られるリズム・セクションも完璧なアシストを見せる。
「ケリー」は、しばしブロック・コードで伴奏に従事するが、その伴奏にもファンキー&バップの精神が脈々と流れている。
「ショーター」のテナー・サックス演奏は、「マイルス・バンド」時代には考えられない程、バッピッシュで、うねるフレーズを用いるパートも有るが、基本的には(遠慮がちに?)バップ精神に即して、フレーズを選びながら吹いている感じがする。
しかし、こう言う、初々しい「ショーター」にも、別顔の魅力と新たな発見が有って、大いに有りの演奏です。
「ケリー」のソロは、全く言うこと無しで、ファンキーバリバリ、バップ万歳の代表的な演奏がなされる。
1曲目から、名盤に偽り無しの名演です。

2曲目「ママ・G」…いかにもファンキー&バッピーなイメージのユニゾン演奏から、こいつらの世界にトリップだ!
「モーガン」は、のっけからオープン・トランペットでバリバリ吹き、「フィリー・ジョー」も軽快に皆を煽りつつ、知らぬ間にドライヴィングしている。
ここでの「ショーター」は、かなり彼の個性をひけらかして、モード吹きが顔を出していて、いよいよ若者が主張を始めたと見える。
やっぱり若者はこうでなくちゃ!
「ケリー」のファンキー節は好調で、バタ臭さと、ハイセンスが程好くブレンドされた演奏がgoodです。
フィニッシュは「フィリー・ジョー」のハード・ドラミングと「モーガン」のフルパワー演奏で〆になるんです。
皆、good jobですよ!!

3曲目「ジューン・ナイト」…序奏から「モーガン」の演奏が、かなりモード調で、「マイルス」めいていて、一言で驚き!です。
ミュートで、渋~く、センシティブに魅惑のフレーズを吹いてくれます。
「モーガン」っぽく無いけど、これはこれで有りですねぇ。
「ショーター」は各フレーズを長めに取る所と、「コルトレーン」的に、シーツ・オブ・サウンドの様に、細かなフレーズを速射砲の如く吹く所の両面で攻めてきて、3曲目にして本性を完全に表しやがったかって感じです。
「ケリー」は、若者二人のアグレッシブさを見て、逆に遊んでいます。
いかにもバップ調で、シングル・トーンはどこまでも軽やかに…さりげなく魅力あるフレーズをチョコッと弾いてくれるんですね。
この辺は、精神的な余裕とベテランがなせる業でしょう。

4曲目「ホワット・ノウ」…この曲は良いですよ~!!
特にブルー・ノート好きな諸氏には、お薦めの1曲です。
マイナーで、ファンキーで、ブルージーで、どことなくエロティックで…もはやブルー・ノートその物なんではないでしょうか?
「モーガン」のファンキー全開のソロと、「ショーター」の「マクリーン」的なトーンで吹くフレーズ(アルトとテナーの違いこそあれど…)も、バッチリマッチしているんですよね。
「ケリー」もここでは、マイナー・フレーズを連発して、ファンキーさとブルージーさをより出してきます。
「チェンバース」は、ソロでボーイングを繰り出して、もはや、いや、紛れも無くブルー・ノートそのものの演奏でしょう。
考えて見たら、この5人(クインテット)って、ブルー・ノートとプレスティッジのスター・プレイヤーの共演なんですよね。
悪い訳が無いですよね。
もう一つ、当たり前ですけど、「モーガン」以外は全員、全盛期の「マイルス・コンボ」の出身なんですよね。
これまた、またまた、悪い訳が無い!!

5曲目「シドニー」…短曲ですが、「モーガン」と「ショーター」が、静寂のラスト・ナンバーを決めて、こう言う(アルバムの)エンディングも確かに有りだと思わせるハイ・センスに脱帽です。
敢えて、ファンキー&バップを封印して、静寂のバラッドで〆るのは、このメンツ…やはり只者ではないねぇ。
「ケリー」のソロでの悲しげなマイナー・フレーズも光っています。
流石、名盤…どこを切っても美味しいです。
お後が宜しいようで………。。。

ハードバップを代表する名盤…ケリー・グレイト~ウィントン・ケリー

2008-03-11 22:20:23 | ジャズ・ピアノ・コンボ
私事で恐縮ですが、今日おじが亡くなりました。
65歳でした。
又、一週間前には、いとこが亡くなり、享年44歳と言う若さでした。
合掌。。。

人の命は儚いもので、私自身もいつ死ぬのか?なんて分からないし、それが遠くない事かもしれません。
ですので、皆様も今日を、今を、一瞬を大切に生きて頂きたいと存じます。
勿論、私自身への戒めも込めて、私自身も、一瞬一瞬を大切に生きて行きたいと改めて感じ得ました。

さて、今日は、Vee Jayレーベルから嘗て出ていた、ハードバップ期の究極の名盤の1枚である、本作品を紹介しましょう。

アルバムタイトル…ケリー・グレイト

パーソネル…リーダー;ウィントン・ケリー(p)
      リー・モーガン(tp)
      ウェイン・ショーター(ts)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.リンクルズ、2.ママ・G、3.ジューン・ナイト、4.ホワット・ノウ、5.シドニー

1959年録音

原盤…Vee Jay  発売…㈱ファン・ハウス
CD番号…FHCY-2004

演奏について…すいませんが、詳細は又、後日になります。
宜しくお願い致します。

ジャケットも演奏もミステリー…ミステリオーソ~セロニアス・モンク

2008-02-03 22:10:03 | ジャズ・ピアノ・コンボ
このジャケットの絵…すご~く興味を惹きますよね。
実は、前衛的な画家、「キリコ」が描いた「預言者」と言うタイトルの抽象画なんです。
この不可思議で、アヴァンギャルドな絵と変わらないぐらい、ここでの「モンク」カルテットの演奏も、不可思議な魅力に満ち溢れている、「ファイヴ・スポット」でのライヴ演奏です。

そしてリーダー、「セロニアス・モンク」の手足として音楽を理解し、豪快にブロウして、演奏をグイグイと推進して行くのが、テナー・サックスの「ジョニー・グリフィン」なんです。

今宵は「モンク」の不思議ワールドへ行ってみましょう。

アルバムタイトル…ミステリオーソ

パーソネル…リーダー;セロニアス・モンク(p)
      ジョニー・グリフィン(ts)
      アーマッド・アブダル・マリク(b)
      ロイ・ヘインズ(ds)

曲目…1.ナッティ、2.ブルース・ファイヴ・スポット、3.レッツ・クール・ワン、4.イン・ウォークト・バド、5.ジャスト・ア・ジゴロ、6.ミステリオーソ、7.ラウンド・ミッドナイト※、8.エヴィデンス※

1958年8月7日…1~6曲目、8曲目、1958年7月9日…7曲目 NYCファイヴ・スポットにてライヴ録音

原盤…RIVERSIDE RLP-12-279  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23587

演奏について…4曲目「イン・ウォークト・バド」…名前通り、「バド・パウエル」に敬意を表した曲だと思うが、演奏自体は「バド」的な訳では勿論無く、「モンク」の描く世界を強烈に表現していて、又、各人が魅せるソロ・パートも用意されていて、11分超えと言う曲の長さに恥じない、そして飽きさせない、聴き応え充分な1曲になっている。
テーマ・メロディからして、超「モンク」的で、不協和音的でありながら、微笑ましくもあり、なじみ易い感覚もある。
このテーマの後、「グリフィン」が、とてもメロディアス且つ豪快なアドリブを演じて、自らも鼓舞しながら、曲をだんだんエキサイティグに押し上げて行く。
それから、尚一層、演奏陣を煽るのが、ドラムスの「ヘインズ」なんです。
「ヘインズ」は、まじめに人を乗せるのが上手く、演奏陣をファイトさせるのが、得意なミュージシャンだけに、ここでも素晴らしい心を高揚させるドラミングがgoodです。
およそこの曲の演奏が始まってから6分以上、「モンク」は静観していて演奏に参加していないのだが、満を持して参加すると…「モンク」節全開で、とにかく知的に…アドリブ・ソロを決め捲ります。
終盤では、「アブダル・マリク」のカッコイイ、ベース・ソロ演奏を演ってくれて痺れちゃいますし、「ヘインズ」のドラム・ソロも、流石の一言で、全員のソロが堪能できる、アルバム・ピカ1の演奏&曲ですよ。

6曲目、タイトル曲の「ミステリオーソ」…序奏から、ず~っと、約8分間に渡り、「グリフィン」が、ヴォリューム感タップリで、テナーを良く歌わせ、そしてかなりエモーショナルなアドリブ演奏を、長時間に渡り決める所からして、すごいなと思わせる。
「グリフィン」のすごい所は、「コルトレーン」や「ドルフィー」等の様に、バーサクやぶっ飛び、或いは、絶叫無しで、メロディアスなアドリブを長く続けられる事である。
「リトル・ジャイアント」は、パワフルさだけではなく、とても良く歌わせる事ができるテナー奏者なのである。
後半は、もう、完全に「モンク」ワールドの中枢に居る演奏である。
「モンク」のテーマ・メロディにユニゾンで合わせる「グリフィン」とのデュエットは、不可思議でいながらも、もはや美しささえ感じる程です。

2曲目「ブルース・ファイヴ・スポット」…このライヴ会場をテーマに、いかにも即興でも名曲を作りあげる、天才「モンク」の真骨頂。
テーマはすごくシンプルながら、「グリフィン」、「モンク」、「アブダル・マリク」、「ヘインズ」と続くソロ演奏は、それぞれ自己主張が有るのは当然なんですが、全員の演奏自体に、素晴らしい切れとコクが有って(高級なビールか?)まじめに酔わされそうになります。
テーマ…コード・チェンジ…アドリブ・ソロ…テーマに戻ると言う、シンプル・イズ・ベストなチューンです。

3曲目「レッツ・クール・ワン」…ユニゾンでテーマが告げられた後、この曲では、いきなり「グリフィン」が限定解除で、激しく、パワフルにテナー・サックスを吹き通す。
ここでの「グリフィン」の演奏には、シャウトやハイ・ノートも多少使用してはいますが、やはり基本的にテナーを歌わせ、アドリブ演奏の美しさをたっぷりと抽出し、気合も目一杯ぶち込んでいる、極上の演奏です。
受ける「モンク」は、シングル・トーンを多用し、高音域を有効に使い、とてもハイ・センスな演奏をしてくれて…「グリフィン」の熱演に花を副えます。
いかにも「モンク」的なんですが、とても美しい演奏です。

オープニング曲「ナッティ」…最初のテーマを聴くだけで、もう「モンク」の世界へようこそってな感じで、不思議空間へ旅立ちます。
「モンク」と「グリフィン」のやりとりが、ライヴ演奏&録音と思えない程、ピッタリ、マッチしてます。

7曲目「ラウンド・ミッドナイト」と8曲目「エヴィデンス」は、CD化に際して追加されたトラックなんですが…やはり「モンク」最大のヒット曲にして、モダン・ジャズ史上屈指の名曲である「ラウンド・ミッドナイト」を取り上げましょう。
「グリフィン」が割と渋めに、低音を用いたテーマ・メロディを吹いて曲が始まり、それを受けての「モンク」の演奏なんですが…とてもまともな感じで、「モンク」臭さが薄いんですねぇ。
でも、私は嫌いじゃないです。
こう言うアッサリした「モンク」も良いんじゃないの?
薄いと言っても「モンク」節は、チョイ見せはしてるし、「グリフィン」を立たせたサポート演奏に終始しているのも、賢者「モンク」の意図が有ったんでしょう。
「ラウンド・ミッドナイト」を「モンク」抜きで演っている、多くの演奏(録音)に近い感じなんです。

CBSから発売された唯一のアルバム…キース・ジャレット~エクスペクテーションズ

2008-01-27 22:10:24 | ジャズ・ピアノ・コンボ
「キース・ジャレット」…このスーパー・アーティストが、最高のパフォーマンスを発揮するのは、やはり「ソロ・ピアノ」であり、次いで「ピアノ・トリオ」で有ると言うのは異論の無い事でしょう。

しかし、今回はその2種類ではなく、サイケな70年代をいかにも象徴していて、アヴァンギャルドなタイプのミュージシャンが多く参加している、かなり異質のアルバムなんですが、この演奏が結構良いんですよ。
参加しているミュージシャンたちも、一癖も二癖も有る、兵揃いで、聴く前から興味が湧き湧きって感じです。

「ケルン・コンサート」や、「ソロ・コンサート」、或いは「スタンダーズ」とはがらりと違う、チョイ悪な「キース」の演奏をお楽しみ下さい。

アルバムタイトル…エクスペクテーションズ

パーソネル…リーダー;キース・ジャレット(p、ss)
      チャーリー・ヘイデン(b)
      ポール・モチアン(ds)
      デューイ・レッドマン(ts)
      サム・ブラウン(g)
      アイアート・モレイラ(perc)
      ストリングス&ブラス・セッション

曲目…1.ヴィジョン、2.コモン・ママ、3.ザ・マジシャン・イン・ユー、4.ルーシロン、5.エクスペクテイションズ、6.テイク・ミー・バック、7.ザ・サーキュラー・レター、8.ノーマッズ、9.サンダンス、10.ブリング・バック・ザ・タイム・ホエン、11.ゼア・イズ・ア・ロード

1972年 NYにて録音

原盤…CBS 発売…ソニー・ミュージック・ジャパン
CD番号…SICP-756

演奏について…序奏の「ヴィジョン」…ストリングスの優しい調べにのって、「キース」が美しいフレーズを弾いて…準備OKとなります。

2曲目「コモン・ママ」…ラテン・ロック調のリズムに、ホーン・セクションが加わると言う、かなり大編成のバックを従えて、「キース・ジャレット」が、自由奔放に、自らのスタイルで音を紡ぎ、鍵盤に「キース」調、「キース」魂を叩き付けるトラック。
序奏の後、「キース」は、ソプラノ・サックスを使用して絶叫し、合わせて「デューイ・レッドマン」のテナーもそこに絡んでくる。
この辺は、珍しい演奏ですよね。
その後「チャーリー・ヘイデン」が、ぶっとい音でアドリブ・ベース演奏をするんですが、流石です…見事にKOされます。
それから、「キース」はもう一度ピアノに戻り、「モレイラ」の刻むパーカッション、「レッドマン」のテナーと共に、音の異空間を作り上げて完成させます。

3曲目「ザ・マジシャン・イン・ユー」…この曲もラテン・フレヴァーな曲ですが、「サム・ブラウン」のギターと、「キース」のピアノ、そしてまたまた「モレイラ」のパーカッション(コンガ、ボンゴ)が、とてもメロディアスで素敵な曲に仕上げています。
まぁ、時代的にフュージョン全盛期に、ジャスト・ミートな曲と言えば、分かり易いかな?

4曲目「ルーシロン」…序奏はホーン群が、怪しい和音で初めて、その後「ヘイデン」が、ハードにびんびんに刻むベースと、「モチアン」がフリーに敲くドラムが、第一の聴き物です。
そして、続いて「キース」もフリーにソロを取ってから、「レッドマン」が激しいトーン&フレーズで絶叫します。
しかし、ただ絶叫するだけじゃなくて、時々メロディを吹いてくれる所に…可愛げが有るんですよ。

5曲目、表題曲の「エクスペクテーションズ」…一聴して、「キース」が奏でる、とても魅惑的なメロディに…心惹かれます。
それを受けて「ヘイデン」も、メロディアスなソロを取り、「ヘイデン」の演奏をストリングスが取り囲んで…更にロマンティックにします。
終盤に入ると…「キース」と「ヘイデン」、それから「モチアン」のブラッシュ・ワークで、とても美しいピアノ・トリオ演奏がなされて…うぅーん大満足です。

6曲目「テイク・ミー・バック」…親しみ易いメロディと、正統的なブルーズ調4ビートの「キース」作曲の曲で、演奏で耳を惹くのは、「レッドマン」が、ブルージー&フリーキーに仕上げるテナーが良い味を出しています。
「キース」は、序盤では、あえてか?ブロック・コード演奏を主にして、伴奏に専念しています。
終盤、華麗に決める部分(ソロ)も、勿論有るんですけどね。
他では、ギター「ブラウン」のテク抜群のソロも、バッチリ聴かせてくれて…相当行けてますよ。
最後まで、メンバーのノリは抜群で、とてもポップで聴き易い1曲です。

7曲目「ザ・サーキュラー・レター」…一寸、音を外した、ホーン群&ギターのユニゾン演奏&メロディが、不思議な気持ちにさせられるナンバーです。
しかし、覚え易いリフレインのこのテーマ・メロディを軸に、演奏している中で、「ヘイデン」&「モチアン」のリズム陣二人は、アグレシッブでぶっ飛んだ演奏をしていて…この対比が、実に面白いですね。
一言で言えば、曲調は単純明快で、リズムは難解でフリーキーなんですよ。

8曲目「ノーマッズ」…およそ18分弱の演奏時間を要する、このアルバム随一の大作です。
序盤のソロは、ギターの「ブラウン」が引っ張る感じで、押し進めて行き、「キース」も諸所で、音を重ねて行きます。
その後、重厚で崇高なオルガン演奏が入り…
☆オルガンは誰が弾いているんだろう?結構気になるけど、資料が無いので分りません。
その後、リズム陣「ヘイデン」「モチアン」「モレイラ」は、至ってクールに、乾いた音色で、リズムを刻み続けて、それに合わせる様に「キース」もドライな感覚で、クール・ビューティなアドリブを次々に作って行きます。
ピアノの鍵盤、全部を使用した様な、流れる様なメロディ・ラインで、音を紡ぐ「キース」は、彼の真骨頂の演奏をしてくれます。
「キース」が休んでいる間も、リズム・セクションの3人は、一切の妥協をせず、不気味なほど淡々と分厚いリズムを刻む演奏は、まじで玄人好みです。
とにかく3人の演奏が、カッコイイんです。
終盤になって「ブラウン」が、ハードなギター・ソロを抽入して来て、更に曲をヒート・アップさせてくれます。
「ブラウン」って、こんなにハードなプレイヤーだったかな?と思う程、ギターがシャウトしていて…「キース」とのデュオ・バトルは、かなり迫力が有りますね。
フィニッシュになると、ホーン群も復活して来て、二人のラスト・バトルに花を副えます。
聴き応え充分な1曲です。

9曲目「サンダンス」…ロック調の8ビートリズムに合わせて、「キース」とホーン群、「ブラウン」が楽しげに、演奏を開始します。
「レッドマン」も的を射たフレーズで、演奏を色付けてくれます。
後半のアドリブ・パートで「ブラウン」と「レッドマン」が、激しいソロを展開してくれて…ぴりりと効いたスパイスの役目を果たします。

10曲目「ブリング・バック~」…ブルースorラグタイム?…いずれにせよ「キース」が、鼻歌交じりにソロ演奏を始めて、そこに「レッドマン」も聴き易いアドリブ・フレーズを重ねてきます。
「ヘイデン」「モチアン」は、ここでもアバンギャルド系の乾いた感覚のリズムを一心不乱に刻み続けます。
この二人…本物の職人で、何て頑固者なんだよ~!でも、そこが良いんです。
その後、曲もハードな展開に変わってきて、「キース」は、テーマの後には、またまた鼻歌を歌いながら、「キース」節全開で、アドリブ・パートを弾き続けます。
終盤で、「レッドマン」が、フリーキーなトーンで、思い切り暴れ捲るアドリブを演ります。
前半から打って変わって、ハード・ボイルドな名演に仕上がりました。

ラストの「ゼア・イズ・ア・ロード」…序奏は、前曲までのハードな演奏とは一転して、とてもロマンティックな「キース」のソロ演奏が心を和ませます。
ここで聴けるのは、正しく「ケルン・コンサート」や「ソロ・コンサート」で聴ける、癒し系「キース」です。
その後、「ブラウン」のギター演奏が加わりますが、この演奏も、とてもメロディックで…歌心をメインにしていて…とても歌謡的な1曲ですね。
ラストでは、ストリングスも入って…安らかな眠りに就くようなエンディングです。
この曲は、とにかく美しく、安らげます。

個性剥き出しのピアノ…ホレス・パーラン~オン・ザ・スパー・オブ・ザ・モーメント

2008-01-24 23:13:15 | ジャズ・ピアノ・コンボ
生来から、小児麻痺の影響もあり、不自由な右手で奏でるサウンドが、強烈な個性を放つ、ブルー・ノートお抱えのピアニストが、「ホレス・パーラン」です。

今日、紹介のこのアルバムは、この「パーラン」の録音の中でも、屈指の渋い作品で、よほどのジャズ・マニアか、ブルー・ノート好きの方しか、多分耳にした事がないのでは?と危惧していますが、参加のアーティストも、ファンキーでブルージーな、いかにもブルー・ノート臭さがぷんぷんのアーティストばかりで…結構聴いていて、楽しいアルバムなので、お薦めしたいです。

アルバム・タイトル…オン・ザ・スパー・オブ・ザ・モーメント

パーソネル…リーダー;ホレス・パーラン(p)
      トミー・タレンタイン(tp)
      スタンリー・タレンタイン(ts)
      ジョージ・タッカー(b)
      アル・ヘアウッド(ds)

曲目…1.オン・ザ・スパー・オブ・ザ・モーメント、2.スクー・チー、3.アンド・ザット・アイ・アム・ソー・イン・ラヴ、4.アルズ・チューン、5.レイ・C、6.ピラミッド

1961年3月18日 録音

原盤…BLUE NOTE ST-84074  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6651

演奏について…表題曲でオープニングの「オン・ザ・スパー~」…ブルーズ調のリズムから「トミー・タレンタイン」が、スタッカート風に吹き始めて、それから流麗なソロへと繋げて行く。
受ける「ホレス・パーラン」…ブルースを自分流にアレンジして…崩しと一音外した和音?で、独特の世界観を表現する。
それから、「スタンリー・タレンタイン」は、かなり豪快にブロウして、またベースの「タッカー」が、重厚なソロを演って、曲はどんどん盛り上がって行く。
中間部では、「ヘアウッド」も、チョイ・ソロなんか敲いてくれて…ファンキー、ブルース、そしてハード・バップと、色々なエッセンスのジャズ演奏・スタイルが楽しめます。

2曲目「スクー・チー」…2管でユニゾンとハーモニーを絡めた、ハード・バップの正統的なテーマ進行から、「スタンリー」が思い切りブロウして、威勢を駆る。
その後の「トミー・タレンタイン」も、とても輝かしいフル・トーンで華麗なアドリブを吹いて続く。
そして「パーラン」は遊び心を満載した、面白おかしいフレーズを使用して、とてもいとおかしなソロで興味を引かせるんです。
最後はもう一度、「スタンレー」が、ハードなプレイで纏め上げてくれます。
飽きさせないgoodな1曲ですね!

3曲目「アンド・ザット~」…このアルバム唯一の寛ぎ系ナンバー。
元は「ハロルド・ウーズリー」作曲のバラード曲だとか…。
最初のソロを取る「スタンリー」、すぐ後に続く「トミー」とも、明るめのフル・トーンで、原曲のメロディに即した、アドリブで演ります。
「パーラン」は、とてもリズムカルな演奏で、可愛らしく曲を彩ってくれます。
それから、もう一つこの演奏で聴いて欲しいのは、二人のリズム・メンの演奏で、軽快にシンバルでサポートする「ヘアウッド」と、実直に職人的にベースで皆をドライヴする「タッカー」の演奏です。

4曲目「アルズ・チューン」…いかにもブルー・ノート…って感じの、マイナー・ブルーズで、「トミー・タレンタイン」が、ファンキーで且つアラビック(アラビア風の)なメロディ・アドリブを演奏する。
その後を受けて、「スタンリー・タレンタイン」は、更にファンキーさを際立たせた、アドリブ演奏で展開させる。
「パーラン」のチョイ、メロディを崩した、アドリブ・フレーズが、個性的であり、また、聴く耳に不思議な印象を残す。
「モンク」の様に、下手うまに知的に崩すにでは無く、自然に演られた、言わば天然の崩しなんです。
終盤では「タッカー」のガッツリ行く、ベース・ソロも聴き所で、最後はブルー・ノートお得意の、ファンキーなユニゾン演奏で〆になります。

5曲目「レイ・C」…この曲も来た来た来た~って感じだね。
まんま、ブルー・ノート色の服を着てやって来た、一寸下品なモデルの様です。
「スタンリー」から「トミー」へと続く、アドリブ・ソロも、理想的なマイナー・メロディを活かしたアドリブ展開で…ブルー・ノート好きには、堪んねぇ~!!
「パーラン」のアドリブも良いですよ~!
聴いているだけで、体がリズムを刻み、頭が前後して演奏に惹き込まれるんだよ。
ここでも「タッカー」が、渋いベース・ソロを演ってくれるし、「ヘアウッド」の単純明快なシンバル・ワークが、カッコイイんです。
この曲もエンディング演奏は、お決まりで…ユニゾンで2管が演ってくれて…一安心ですね。

6曲目「ピラミッド」では、「ヘアウッド」が繰り出すラテン・リズムに乗って、「スタンリー」が、軽快に気持ち良くアドリブを吹き、「トミー」もブリリアントな音色で、流麗なフレーズを一発決めます。
「パーラン」は、もう「パーラン」節オンリーで通し貫きます。
ここが最高に「パーラン」の良い所だ!
ワン・パターンなんか言うやつはクソ食らえで、全く無視だよ~!!
個性は、貫き通さなきゃダメなんだ!!

考えるな!感じろ!!モノホンのフリー・ジャズ…ユニット・ストラクチャーズ~セシル・テイラー

2007-12-15 09:42:10 | ジャズ・ピアノ・コンボ
皆様、お早うございます。

このブログ立ち上げから、来月で1年になると言う事から、今日から、いよいよフリー・ジャズの中枢世界へ、…つまり本丸に、大気圏突入と行きましょうか。

その第一段として、革新的・前衛的なジャズ・ピアニスト、「セシル・テイラー」の真髄とも言うべき、歴史的な傑作、「ユニット・ストラクチャーズ」を紹介させて頂きます。

フリー・ジャズ…それも7人編成(セプテット)でのコンボ…聴いた事の無い皆様の想像では、五月蝿い音楽なのか?と考えると思いますが、(曲のよりけりも有りますが)実はそんなに五月蝿く有りません。
いや、むしろピアニストの「テイラー」が作曲しているだけに、「美しさ」さえも感じられます。
私の今迄皆様にお薦めしていた、所謂メロディアスなジャズとは全く異なりますが、楽器の一つ一つの魅力…アコースティックなサウンドの心地良さと、音の美しさは充分に感じられて、決して聴き苦しい音楽では有りません。
メロディではなく、めくるめくアコースティック楽器の「万華鏡サウンド」を堪能して頂ければ良いと思います。
正しく、考えるな!感じろ!!で聴いて下さい。

アルバムタイトル…ユニット・ストラクチャーズ

パーソネル…リーダー;セシル・テイラー(p)
      エディ・ゲイルJr.(tp)
      ケン・マッキンタイヤ(as、oboe、b-cl)
      ジミー・ライオンズ(as)
      ヘンリー・グライムス(b)
      アラン・シルヴァ(b)
      アンドリュー・シリル(ds)

曲目…1.ステップス、2.エンター・イヴニング、3.ユニット・ストラクチャー~アズ・オブ・ア・ナウ・~セクション、4.テイルズ

1966年5月19日

原盤…BLUE NOTE BST 84237  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4237

演奏について…まず、大まかなカテゴリー分けをさせて頂くと、「動の奇数曲」、「静の偶数曲」として考えれば、分り易いだろう。
つまり、1曲目「ステップス」と、3曲目「ユニット・ストラクチャー~」の2曲が、ホーン(リード)奏者を前面に押出した、アグレッシブな曲&演奏だと位置づけるとすると、2曲目「エンター・イヴニング」と、4曲目「テイルズ」は、リーダー;ピアニスト、「セシル・テイラー」のピアノをメインに据えた、クラシックの現代曲風の、比較的静かな曲&演奏と言えるでしょう。

勿論、このアルバム随一の聴き物は、アルバム・テーマ曲であり、一番長大な作品、「ユニット・ストラクチャ-ズ~」に他なりませんが、私的には皆様には、比較的聴き易い、偶数曲から聴く事をお薦め致します。

まず、2曲目「エンター・イヴニング」…ホーン奏者の不安げなメロディと、「テイラー」の不協和音的なピアノと、ベース「シルヴァ」の悲しげなボウイングによって序奏が始まる。
ここでのリード奏者の肝は、オーボエを吹く「マッキンタイヤ」と、ミュートで抑止した美学を貫く「ゲイルJr.」でしょう。
特に「ゲイルJr.」は不安な子羊か子馬が鳴くように…夕暮れの寂しさと怖さを表現しているかの様で…素晴らしいですね。
「テイラー」は低音域を中心に、ブロック・コードで不安感を表現しています。
終盤で「ライオンズ」が不安を和らげてくれる様な…これは子馬の親?の囁きかな?、優しく包み込んでくれます。
そして「テイラー」のピアノが激しくなって来て…すっかり夜になったのでしょうか?馬たちは眠りにつくのかなぁ。
まぁ、馬(羊)の事など、どこにも書いては有りませんので、これは私がこの曲を聴いて「感じた」脳裏に浮かんだ情景に過ぎませんので…悪しからず。。。

3曲目いよいよメイン・ディッシュの「ユニット・ストラクチャーズ~」ですが…序奏はとても静かな入りで始まります。
「ライオンズ」のアルト・サックスと「マッキンタイヤ」のバス・クラがとても美しい序奏を奏でてくれるのですが…この後、「ゲイルJr.」のトランペットが登場してから、演奏に激しさが加わってくる。
この曲を、いや、アルバム全体を分厚いサウンドで包み込み、それでいて美しさを保持しているのは、偏にツイン・ベース奏者を置いた「テイラー」の読みの素晴らしさではないでしょうか?
この曲でも「グライムス」と「シルヴァ」の二人が…一人はボウイングで弦楽器の美しいサウンドをキープしてくれて、これが聴き易さの要因に繋がっているようです。
また、曲のフレッシュさをエヴァー・グリーン的に保てるのは、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏に加えて、見事な空間演出で、コンボのメンバーをアシストする「シリル」のドラム演奏に他なりません。
「シリル」…過激で有りながら、皆を煽りながら、少し離れて客観的に自己を見つめられる己を持っています。
中盤から終盤にかけて曲は益々アグレッシブに展開していきますが、「マッキンタイヤ」のバス・クラのアクセント的な使い方と、「ライオンズ」とのアルト・サックスとの絡み合いも良い仕事になっています。
そして、「テイラー」は終始、過激にピアノをかき鳴らし、打ち付ける様に、まるで打楽器そのもののピアノを弾きます。
原始に帰った様な、ポリリズム、バーバリズムの原点回帰のピアノ演奏です。
やはり…流石「テイラー」…バンド・リーダーとして皆を緊張感バシバシに縛りつけ、妥協を許さず、乾坤一擲にピアノを打ち続けて…狂った「ラフマニノフ」か「スクリャビン」が憑依して、一心不乱に(ピアノ)を弾いている様です。

4曲目「テイルズ」…この曲はホーン・レスで、「テイラー」の前衛的なピアノ演奏を、ドラムの「シリル」が、ブラシ演奏をメインにして、静かに美しく飾り付けてくれます。
この曲は完璧にクラシックの現代曲、そのものと言って良いでしょう。
それぐらい、アコースティックなピアノと言う楽器の音色を、純粋に味わう演奏であり、ベースとドラムとの「ネオ・ピアノ・トリオ」とも言える、美しいモダン・サウンドです。
しかも、とてもビューティフルなピアノ演奏で、不協和音を駆使しているのに、リリシズムさえ感じるんです。
こう言う演奏って普遍なんだろうなぁ。

オープニング・ナンバー「ステップス」…最初からリード奏者がやる気満々で、それ以上に燃えているのが、ドラムの「シリル」だろう。
「お前等全員束になってかかって来い」と言わんばかりに、ドラミングが冴え渡ります。
そして、大将もそれを受けて、「テイラー」が叩き込む様な鍵盤連打で、皆を更に煽ると、「ライオンズ」?がアルト・サックスで、「エリック・ドルフィー」の様に嘶き、シャウトをします。
ドラム、ピアノ、アルト・サックスが織り成す、コスミック・ワールドの様に、混然一体となった音の塊りが膨れ上がって…暴発しそうだ。
取分け終盤の「シリル」と「テイラー」のガチンコ・バトルは最高に聴き所で、ベーシスト二人だけが、ひっそりとサポーターに廻って、彼等を保護しますが、二人には廻りは見えて無く、素晴らしい殴り合い?が続くんです。
いやー、すごい。素晴らしい。これがフリー・ジャズだ。フリー・ジャズなんだぁ
このアルバムの中で、一番フレッシュでパワフルな曲&演奏はこれでしょう。
但し、初心者は一番最後に聴くべきだと思います。
そうした方が、曲が分り易いと思います。
でも…最初に感じろ!って言ったのは私ですね。(失礼)
最初から過激に感じるのも良さそうです。  

いかにもブルー・ノートらしい1枚…イースタリー・ウィンズ~ジャック・ウィルソン

2007-12-02 00:25:24 | ジャズ・ピアノ・コンボ
異彩を放つ、ブルーノートのピアニスト、「ジャック・ウィルソン」がリーダー名義の渋いアルバムを紹介しましょう。

内容的にはいかにもブルー・ノートらしい、ファンキーさ全開の1枚です。
「ウィルソン」以外の参加メンバーもすごいですよ。
ブルーノート・オール・スターズに近いんじゃないの?

アルバムタイトル…イースタリー・ウィンズ

パーソネル…リーダー;ジャック・ウィルソン(p)
      ジャッキー・マクリーン(as)
      ガーネット・ブラウン(tb)
      リー・モーガン(tp)
      ボブ・クランショウ(b)
      ビリー・ヒギンズ(ds)

曲目…1.ドゥ・イット、2.オン・チルドレン、3.ア・タイム・フォー・ラヴ、4.イースタリー・ウィンズ、5.ニルヴァンナ、6.フランクス・チューン

1967年9月22日録音」

原盤…BLUE NOTE BST-84270 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4270

演奏について…オープニング曲「ドゥ・イット」…ラテン調の変拍子で、「サイドワインダー」?それとも??と考えている内に、そうだ!「ウォーター・メロンマン」にクリソツと言うことが分かった。
ノリノリの「ヒギンス」のドラムと「クランショウ」のベース、そしてリーダー「ジャック・ウィルソン」のブロック・コードに合わせて、「マクリーン」「モーガン」「ブラウン」の順番で、ファキーなメロディ、アドリブをガッツリかましてくれます。
後半は「ウィルソン」のファンキー・ピアノにホーン・メンバーがユニゾンで呼応する形態を取っていて、盛り上がります。

2曲目「オン・チルドレン」…Dマイナーの曲で、とてもアーバナイズされたハイ・センスな1曲。
「ブラウン」の行けてるソロから始まり、「マクリーン」が割と上品に襷を受けて、アドリブを奏でる。
その後の「モーガン」も、この都会的な曲に合わせてか、日頃の「悪がき」とは随分かけ離れた、「好青年」が吹いているかのようなソロをとります。
その後の「ウィルソン」のアドリブ・ソロは、完璧にバッチリ決まっていますよ。
いかにもブルーノートらしい、佳曲です。

3曲目「ア・タイム~」…1、2曲目とは、ガラリと曲調を劇的に変えて、ロマンティックでメランコリックな「ウィルソン」のピアノがテーマ・メロディを奏でてからスタートする。
「ウィルソン」…なんてリリカルでナイーヴなピアニストでしょう?
このバラード…美しい。余りにも美しすぎる。。
しかし、こう言う1曲をアルバムに入れると言うだけで、「ウィルソン」のセンスの高さが良く分かる。
まじめに、「レイ・ブライアント」とか、「ケニー・ドリュー」の様な女性的で繊細な演奏に涙が出そうです。
「ウィルソン」…本当にありがとう。

4曲目「イースタリー~」…タイトル曲ですが、グルーヴ感の有るメジャー・コードで、「ヒギンズ」と「クランショウ」が強烈にドライヴィングして、皆をリードして行きます。
「モーガン」は、やや大人しめのソロですが、「ブラウン」がトローンボーンらしからぬ、攻撃的なアドリブを吹いて、彼の存在感をアピールします。
この後の「ウィルソン」のソロは前曲とは打って変って、強めのタッチでガンガン行きます。
ラストはまたまた決まり物のホーン群のユニゾンで、セクステットがゴール・インです。

5曲目「ニルヴァンナ」…この曲も不思議な(一寸けだるい、そして幻想的な)スロー・テンポのナンバーで、個性が有りますね。
ユニゾンでテーマが吹かれた後、各楽器奏者がより糸の様に絡み合い、各々の好きに吹くのですが、それから「ウィルソン」が、クラシックの「リスト」の様に、技巧高く、メロディは優しく、自分の持ち味を十二分に出して、素晴らしい曲に仕上げています。
ラストでは「マクリーン」が情感溢れるアルトを演ってくれて…サービス満点だ
ね。
それから、「ヒギンズ」が大人しいながらも、おかずを一杯付けて敲いてくれるのも、サービスですよ。

ラスト曲「フランクス・チューン」…ラストも3管を生かしたユニゾン演奏から、各人が少しずつソロをとって、フィナーレに相応しい1曲になっています。
特に「マクリーン」のソロは流石の一言で、「ブラウン」も思い切り良く、気持ち良く吹いてくれます。
「ブラウン」…この人も実は、かなりのテクニシャンなんですね。
今日じっくり聴いて見て、改めて感じ得ました。
「モーガン」は、相変わらずブリリアントな音色のトーンですが、アドリブ自体はこの曲でも地味目に吹いています。
今回は出来が悪いと言うよりは、遠慮しているって言う感じがするんですけど…。
「ウィルソン」をリスペクトして、萎縮しているのかな?

いずれにしても全曲、曲も良いですし、渋いながらも「ウィルソン」と言うピアニストの多くの才能を見れる、好アルバムです。

BGMにかけても良いソウル・ジャズ…ラムゼイ・ルイス~ウェイド・イン・ザ・ウォーター

2007-11-14 21:41:25 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ファンキーでロック色の強い…或いはソウルフルな…ジャズ・ピアニスト…それが「ラムゼイ・ルイス」なんです。
このアルバムでは、「バート・バカラック」の曲等を取り上げて、ソウルフルで有り、且つハイ・センスが感じて取れる出来上がりになっています。
サイド・メンに「モーリス・ホワイト」が、ドラマーで参加していたりして、歴史的な価値も有りですよ。

勿論、BGM的な聴き方でもノー・プロブレムの楽しいアルバムに仕上がってます。

アルバムタイトル…ウェイド・イン・ザ・ウォーター

パーソネル…リーダー;ラムゼイ・ルイス(p)
      クリーブランド・イートン(b)
      モーリス・ホワイト(ds)
      リチャード・エヴァンス(arr)&オーケストラ

曲目…1.ウェイド・イン・ザ・ウォーター、2.エイント・ザット・ペキュアリー、3.タバコ・ロード、4.マネー・イン・ザ・ポケット、5.マイケルへのメッセージ、6.アップ・タイト、7.ホールド・イット・ライト・ゼア、8.デイ・トリッパー、9.ミ・コンパシオン、10.ハート・ソー・バッド

1966年6月シカゴにて録音

原盤…MCAレコード  発売…ビクター・エンターテインメント
CD番号…MVCJ-19122

演奏について…タイトル曲のオープニング・ナンバー「ウェイド~」…序奏から非常にソウルフルで、サイケな60年代後半~70年代前半を連想させる、極彩色のケバいサウンドが、最高に行けてる。
ノリノリの「ラムゼイ」のピアノにホーン・セクションが絡みつき、手拍子と掛け声に「モーリス・ホワイト」のドラムが、派手派手に煽るんです。
「ラムゼイ」のブロック・コードは、本当にハイで体も弾みますぜ。

2曲目「エイント~」…これも「ラムゼイ」のブロック・コードが跳ねて、手拍子とホーンがゴージャスに宴を演出する、ダンサブルなナンバーです。

3曲目「タバコ・ロード」…これは面白い。とてもソウルフルで、いや…どちらかと言うと、まじにファンキー節全開で、ここではベースの「イートン」が非常に重厚でガッツリとした、ピラミッド・バランスのベースを終始奏でていて、これが最高に聴き所。
やはりジャズは、ベース良ければ全て良しだね。
この1曲だけでも、このアルバムが軽薄短小のコマーシャリズムなアルバムでは無い事を証明できますぜ。

4曲目「マネー・イン~」…「ジョー・ザビヌル」のオリジナル曲だけあって、このメンバーの奏でるサウンドには、ドンピシャはまりますねぇ。
ファンキー・モア・ファンキーに、とにかく行け行けで「ラムゼイ」がピアノを乱舞させる。

5曲目「マイケルへのメッセージ」は「ディオンヌ・ワーウィック」のヒット曲で、このアルバムは、ジャズとブラック(コンテンポラリー)ミュージックが見事に融合されたコラボ・パフォーマンスですね。

6曲目「アップ・タイト」は「スティービー・ワンダー」のヒット曲。
「ラムゼイ」は、とにかくポップ・チューンを見事にソウル・ジャズへと昇華させている。
「エヴァンス」のホーン・アレンジもこのノリの礎として、しっかりと機能して「ラムゼイ」を好アシストをします。

7曲目「ホールド・イット」…「エヴァンス」のオリジナル曲だが、何故か一番この曲がソング・ミュージック的な雰囲気がして、この辺りが面白いとこです。

8曲目「デイ・トリッパー」…言わずと知れた「ザ・ビートルズ」の名曲。
この曲のアレンジでは、「ビートルズ」の匂いがあまりせずに、見事に?「ラムゼイ」のグループの音楽に料理しています。
「ラムゼイ」のピアノ・アドリブが相変わらず冴えてますよ。

9曲目「ミ・コンパシオン」…「エドワーズ」作曲のとても魅力的な旋律の佳曲。
編曲的にはコンガが効果的で、ラテン・テイストが満喫できます。
とにかく「ラムゼイ」のアドリブ・フレーズがセンチメンタリズムの極みの様なフレーズが多発で、涙がチョチョ切れそうですね。
個人的にはアルバム中で一番お気に入りの一曲です。

10曲目「ハート・ソー~」…この曲も魅惑的な曲で、「ラムゼイ」がとても素敵なアドリブ・フレーズを演じてくれます。
ラスト・ナンバーに相応しい煌びやかなサウンドが心地良いんですよ。
80年代で言うと、「シャカタク」のサウンドに似ていて…いや「シャカタク」が後発なんだから真似したんだよね?
いずれにせよメロディアスで良い曲だね。
中間で吹かれるソプラノ・サックスも良い味を出しているんだよね。

とにかく、楽しめる(ポップス)曲が目白押し。
本格的なジャズ・ファンからは敬遠されがちかも?と思いますが、食わず嫌いは駄目ですよ。(笑顔)

最高のノリ、最高にファンキーな1枚…ザ・ケープ・ヴァーデン・ブルース~ホレス・シルヴァー

2007-10-29 23:51:24 | ジャズ・ピアノ・コンボ
今宵はお疲れの諸氏に飛切りファンキーで、元気が出るアルバムを紹介しましょう。
タイトル曲から、「ホレス節」全開で突っ走る、ノリノリのファンキー・チューンに元気溌剌しちゃって下さい。

アルバムタイトル…ザ・ケープ・ヴァーデン・ブルース

パーソネル…リーダー;ホレス・シルヴァー(p)
      J.J.ジョンソン(tb)
      ジョー・ヘンダーソン(ts)
      ウディ・ショウ(tp)
      ボブ・クランショウ(b)
      ロジャー・ハンフリーズ(ds)

曲目…1.ザ・ケープ・ヴァーデン・ブルース、2.ジ・アフリカン・クィーン、3.プリティ・アイズ、4.ナットヴィル、5.ボニータ、6.モー・ジョー

1965年10月1日、22日録音

原盤…BLUE NOTE 84220  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6619

演奏について…タイトル曲「ザ・ケープ~」では、のっけからエンジン全開で、「ホレス」が、カッ飛びゾーンのリミッター振り切りで、ガンガン行きます。
とにかくラテン・リズムが最高。
「クランショウ」と「ハンフリーズ」が皆を完璧にドライヴィングして行きます。
「ホレス」はラテン・タッチのブロック・コードと魅惑的なシングルトーンを上手く絡めて、聴いていて一気に「ホレス」の世界にタイム・トリップしますよ。
とにかく、メロディはマイナー・チューンでメロディアスながら、演奏を聴くだけで、元気が出てくるスタミナ・ミュージックです。
中間では「ヘンダーソン」が、エキゾチックに吹き切って……「ヘンダーソン」はラテン・ナンバーの演奏…まじに上手いね。
見事に壷を得てます。
私は大好きで、とにかく一押しの一曲で、アルバム・ベスト・ワンですよ。

2曲目「ジ・アフリカン~」は、オープニング曲は良くも悪くもコマーシャリズムに染まった一曲なのですが、(私はあえてその俗的な所にも魅力を感じている軽薄短小人間なんです。)この曲は、この時代に即したモード・ナンバーでセンス抜群です。
「ヘンダーソン」「ショウ」も自分のカラーを十二分に発揮しています。
特に「ヘンダーソン」のアドリブ・ソロは立派で、メロディアスな部分と、アヴァンギャルド&アグレッシヴな部分のバランスが見事で、とても魅惑溢れるソロですね。
「ショウ」は明るめの音色の「マイルス」に変身した様な、モード演奏の極地ですね。
しかし、それ以上に聴き物は、アフリカン・ポリリズムで、演奏空間を見事に演出する「ハンフリーズ」のドラムス演奏が、第一のお薦めポジションです。
「ホレス」はサイドメン的に、モード演奏をアシストしているのが良いのですが、中間時のソロが、とても思索的で、チラリとファンキーイズムもちらつかせますが、「ホレス」らしからぬ哲学的なピアノも別の魅力が発見できます。

3曲目「プリティ・アイズ」…ワルツ・リズムのモード・ナンバーです。
渋くリズムを決めるベースの「クランショウ」と、シンバルで皆を煽る「ハンフリーズ」がピシッと芯を決めると、「ヘンダーソン」「ショウ」が次々と、ハイ・センスなアドリブ・フレーズを連発して、聴いているこちらも、高揚して来ます。
その後で「ホレス」が、珍しくモード調で弾き続けてくれるのですが、所々にファンキー・テイストが散りばめられていて、思わず納得ですね。
最後は、2管で吹かれるユニゾン・テーマは、やはりブルーノートの十八番です。

4曲目「ナットヴィル」…ジス・イズ・ホレシーズ・ワールドです。
「JJ」が加わって3管になった物の、ラテン・リズムがガンガン響き、ファンキーで、皆、箱乗り状態で行っちゃってます。
「JJ」ってこんなに、陽気なトロンボーンを吹いたかなぁ?
「ショウ」は完璧に飛翔を始めて、宇宙へと飛んで行ってる。
「ヘンダーソン」…適度に遊びを持たせて、趣深いアドリブ・ソロですね。
渾然一体となった、「シルヴァー・セクステット」を「ハンフリーズ」がとにかくラテン・リズムで煽り捲る。
「ホレス」のピアノはもう、言うこと無しですね。
この演奏で、全員のノリは最高潮になりますよ。

5曲目「ボニータ」…この変速リズム…良いねぇ。
私の好きな世界です。
この演奏はベース「クランショウ」が単調ながら、渋く野太い音を構築する所が基礎になっている。
ホーンは3管でのユニゾンがメインだが、「ホレス」はシングルトーンで、プチ・ファンキーなアドリブをかまして、それがまたセンチメンタルなアドリブで、心を打つんです。
後半のブロックトーンもgoodな良い仕事をしています。
「ハンフリーズ」の実直なドラムも、やっぱり乙ですね。

ラストの「モー・ジョー」は、3管全員がユニゾンで、都会的なショウマン的な演奏をする。
この曲は「ヘンダーソン」の曲なんですね。
まず、「JJ」が走る。
ベテランらしからぬ、とても若々しいソロですね。
次いで「ヘンダーソン」が、渋めに決めながら続き、すぐさまカデンツァに入ります。
そして3走目に「ショウ」が走ります。
とても流麗なソロで、この曲のアーバナイズされた、カッコイイ部分を丸見せしてくれます。
「ホレス」はファンキー節全開で、このアルバムの〆に向かって、びんびんに突き進む。
「クランショウ」のソロ・ベースもカッコイイですよ。

木住野佳子~フェアリー・テール

2007-10-17 22:21:38 | ジャズ・ピアノ・コンボ
今日は、またまた邦人女流ジャズ・ピアニストの才媛を紹介しましょう。
演奏しているアーティストは、「木住野佳子」…パワフルな「大西順子」やアクティヴな「上原ひろみ」等と異なって、いかにも女性ピアニストらしい、繊細で柔らかいピアノを弾きます。
このアルバムは、そんな彼女のデヴュー盤で、オーソドックスなピアノ・トリオ演奏や、今年突然の訃報が有ってショックを受けた人が多いと思われる「マイケル・ブレッカー」参加の演奏曲等、聴き所が満載です。
では、詳細を…。

アルバムタイトル…フェアリー・テール

パーソネル…リーダー;木住野佳子(p)
      エディ・ゴメス(b)
      ルイス・ナッシュ(ds)
      マーク・ジョンソン(b)
      ピーター・アスキン(ds)
      マイケル・ブレッカー(ts)

曲目…1.ビューティフル・ラヴ、2.フェアリー・テール、3.ジ・アイランド、4.いつか王子様が、5.ファンカレロ、6.星影のステラ、7.オンリー・トラスト・ユア・ハート、8.誓い、9.ラフィット’82、10.ゴーン、11.ウィズ・ア・リトル・ソング

1995年4月17、19、20日 NYにて録音

原盤…MCAビクター  発売…ビクター・エンタテインメント
CD番号…MVCR-30001

演奏について…私が大好きな演奏は、3曲目「ジ・アイランド」。
非常にロマンティック&センチメンタルな、女性美が満ち溢れた好演が、胸を討ちます。
バックはスローのラテン・リズムを終始キープして、それを背景に「木住野」がライトなボサ・ノヴァ的なお洒落なタッチで、次々に美しいフレーズのアドリブを作り出す。
いつまでも、本当にいつまでも聴いていたい、心地良いメロディです。
このアルバムの中で、ベスト1の名演ですね。

7曲目「オンリー・トラスト~」は、正に「木住野」の真骨頂。
とてもロマンティックで、叙情性にあふれた穏やかなアドリブ・ソロから、急速調に変調すると、粒立ちの良いピアノ・トーンで、華麗に鍵盤を走らせる。
バックのベース「ジョンソン」は、実直に弾き続け、ドラムス「アースキン」は、お洒落なタイム感覚で、チョコッと自己主張をするのがミソかなぁ。

オープニング「ビューティフル・ラヴ」…1曲目から「木住野」が駆ける!
チョット「ビル・エヴァンス」が入った感じの、クール・ビューティさが良いね。
「ゴメス」の推進力と、「ナッシュ」のきめ細やかなドラムが、「木住野」をより一層際立たせる。
その後の「ゴメス」のテクニック抜群のソロ・インプロビゼーションと、「ナッシュ」と繰り広げる、音の会話がものすごい。
二人は「木住野」親衛隊と化して、アルバムの1曲目を成功へと導く。
うーぅーん「木住野」はバックメンバーに恵まれているね。

2曲目「フェアリー・テイル」…アルバム・タイトル曲と言う事もあり、流石のサプライズ・ゲスト、「マイケル・ブレッカー」が参上して、音を合わせてくれるのだが、「ブレッカー」は完全にサイド・メン演奏に従事している。
「木住野」は雄大で、ゴージャスな雰囲気のソロを弾いて、「ブレッカー」のアシストも手伝って、大河の流れの様に落ち着いた、そしてデンと構えたピアノが大物の予感がします。

8曲目「誓い」も「木住野ワールド」全開で、ゆったりとした音空間を作って、繊細さと美しさが溢れ出るアドリブ・メロディを紡いで行く。
「木住野」の世界は住み心地(聴き心地)が良いのです。

5曲目の「ファンカレロ」は、彼女のこのアルバム中では、かなりハードで硬派な演奏ですね。
ピアノのタッチも粒立ちをかなり立たせた、言うなれば「尖った音」でプレイしているんです。
「ゴメス」も野太いベースをガッツりと弾いて、「ナッシュ」はとてもセンシティブで、クリアーなドラミングで、彼女をサポートします。

6曲目「星影のステラ」…ゲスト、「マイケル・ブレッカー」が、非常に男の色気を纏わせた音色のテナーの序奏から始めると、「木住野」も雄大なイメージのピアノで対抗する。
その後「ブレッカー」が限定解除して、バリバリと吹き始めるのだが、又、曲が緩小節にチェンジして、「ブレッカー」、「木住野」とも、落ち着きと余裕の有る、大人の演奏で曲を纏める。

4曲目「いつか王子~」では、「木住野」がローマン調のブロック・コードで、「ゴメス」のベースをしっかり、いや、やんわりアシストするのが良いんです。
「ゴメス」が、骨太ながら温かみのあるアドリブベースを気持ち良く弾いてくれます。

10曲目「ゴーン」…美しく哀愁調のテーマ・メロディからして、耳を傾けなくてはいけないね。
この曲のリズムはワルツなんだなぁ。
とても静寂な、静かな冬の湖の水面を眺めている時の雰囲気に感じが似ている。
静寂のバラッド演奏が、貴方の心に青白く燃え続けるでしょう。
最後に「ブレッカー」が一吹きしにやって来る。
そうだ、この水面に一羽の白鳥が舞い降りて、美麗な翼を拡げて求愛しているのでしょうか?

11曲目「ウィズ・ア・リトル~」も、10曲目に近い落ち着いた曲調のピアノ、バラードです。
その違いは…「ブレッカー」がいない事…だけじゃない。
この演奏はピアノ・ソロなんです。
クラシック畑出身の「木住野」にとっては、ソロ・ピアノ(アドリブ)はお手の物。
「ジョージ・ウィンストン」の様にとても美しいソロピアノ演奏で幕が閉じます。

衝撃!上原ひろみのデビュー盤…アナザー・マインド

2007-09-24 22:01:18 | ジャズ・ピアノ・コンボ
前回は「上原ひろみ」のセカンド・アルバム「ブレイン」を紹介しましたが、今日は彼女のデビューアルバムを紹介しましょう。
とにかく、オープニングの1曲目「XYZ」から、一聴しただけでぶっ飛びます。

アルバムタイトル…アナザー・マインド

パーソネル…上原ひろみ(p、key)
      ミッチ・コーン(b)
      デイヴ・ディセンゾ(ds)
      アンソニー・ジャクソン(b)
      ジム・アドグレン(as)
      デイヴ・フュズィンスキー(g)

      アーマッド・ジャマル、リチャード・エヴァンス(プロデュース)

曲目…1.XYZ、2.ダブル・パーソナリティ、3.サマー・レイン、4.ジョイ、5.010101(バイナリー・システム)、6.トゥルース・アンド・ライズ、7.ダンサンド・ノ・パライーゾ、8.アナザー・マインド、9.トムとジェリー(ボーナス・トラック)

2002年9月16日~18日 NYC アヴァター・スタジオにて録音

原盤…TERARC 発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCT-1077

演奏について…まず、冒頭の「XYZ」から、非常にパワフルでパーカッシブな、正しく「打楽器」としてのピアノの音楽性能を最大限に引き出した、超絶名演にKOを喰らいそうだ。
デビュー盤のノッケからこれかよ!すげぇ。まじすげぇ。
ドラム、ベースもガチンコまじ弾きで、うら若き女性アーティストなどと言う冠は全く不必要で、圧倒的なパフォーマンスを見せ付ける。

2曲目「ダブル・パーソナリティ」…不思議なイメージの序奏から、ギターの「フュズィンスキー」とベースの「ジャクソン」、そしてサックスの「アドグレン」が、とても都会的なサウンドでハイテンポにグングンと突き進む。
「上原」は割りとクールな目線で、客観的に彼等のサウンドをアシストする。
中途からは、ドラムの「ディセンゾ」が、緩急自在のシンバル・ワークで、リズム空間を占領し、他のミュージシャンを傘下に治める。
すると、曲は急展開を見せて、「上原」がラフマニノフの曲の様な、技巧高らかなピアノ・アドリブ・ソロをがんがんと弾き天に君臨する。
最後はその「上原」のピアノをメインに全員でフィニッシュ。
天晴れ!「上原ひろみ」。すごい才能のアーティストの誕生(登場)です。

3曲目「サマー・レイン」…「上原」のオリジナル曲だが、一聴して、とてもメロディアスで良い曲だ。
特にサックス「アドグレン」の吹くメロディラインはかなりの名調子で、「上原」のコンポーザーとしての技量、才能を感じずにはいられない。
中間奏でのグランド・ピアノの大きさが分かる様な、「上原」のスケール大きいアドリブ・ソロも抜群です。

4曲目「ジョイ」では、ラグタイム調の、お洒落で遊び心と寛ぎが感じられるピアノ演奏に、ハードでは無く、別のソフトな「上原」を見つけれる。
しかし、途中からは、ブルージーな雰囲気を持ちつつ、またまた叩きつける様なハードなピアノの指捌きが、とにかくすごい。
マッチョでハードなリズムサイドメン達が、多分顔色を変えて演奏しているんだろうと思わずにはいられません。
若いのにとても懐が深く、引き出しも多いアーティストですね。

5曲目「010101」では、「上原」は摩訶不思議なメロディ・ラインをキーボードで弾く。
この感じ…ジャズでは無くて、他のジャンルで聴いた事がある感じがする…。
はて、何だったかなぁ? 
そうだ、「イエス」とか、「EL&P」の、プレグレのシンセサイザーの雰囲気なんだ。
そして、もう一つ面白いのは、左手ではアコースティック・ピアノの低音域を、重厚感溢れるようにガツンと弾いて、右手ではシンセでそのメロディを弾いている。
そんな弾き方だったら、窮屈な演奏になりそうだが、彼女は元気がばりばり沸いて来る様な、躍動感が満ち満ちた演奏なんですよ。
とても不思議な異空間のピアノ・トリオ演奏です。

6曲目「トゥルース・アンド・ライズ」は、正統的なアコースティックピアノ・トリオ演奏で、ここでも非常にメロディアスなラインを、まるで「キース・ジャレット」の様に弾いてくれます。
この演奏では、迫力が有ると言うよりは、高音域を活かした(右手中心の)とても流麗なピアノソロを味わえるんですよ。
こいつ…ピアノ曲なら、何でも弾けるんだなぁ。
ロマンティストの私は、この曲は好きですね。

7曲目「ダンサンド~」…高速で「上原」が疾走する序奏からしてすごい!
しかし、これだけの早弾きでも、しっかりとメロディを弾いているので、とても心地良い。
バックの二人も「上原」にしっかりと追従して、高速調の曲だがバラバラにならずに、ピアノ・トリオとして機能している。
中間ではドラム「ディセンゾ」が抜群のテクでアドリブを聴かせてくれます。

8曲目「アナザー・マインド」も低音域を充分に活かした左手主導型の曲で、とても重厚な曲に仕上がっている。
どことなく深海を泳ぐシーラカンスをイメージさせる。
こう言った、劇的な曲も難なくこなして演奏できる、「上原」のピアノ演奏技術の高さに舌を巻くぜ。

ボーナス・トラックの「トムとジェリー」もラグタイムっぽくて、とても遊び心が活かされた演奏。
一聴では、あのアニメの名曲「トムとジェリー」って分からないくらい飛んでます。
コロコロ転がすメロディの時は、往年の大ジャズ・ピアニスト「アート・テイタム」が、一瞬脳裏に浮かびます。
グリコじゃないけどおまけも楽しめます。

ジャズ、クラシックの枠を越えたピアニスト…ディープ・ブルー~松居慶子

2007-09-19 23:49:00 | ジャズ・ピアノ・コンボ
松居慶子…全米スムース・ジャズ賞を受賞した、ジャンルボーダーレスのピアニストであり、彼女の中でも評価が高いアルバムが、通算13枚目の、このアルバムです。
些少ですが、ジャンルはジャズ・ピアノにしましたが、私的には「イージー・リスニング」の方が良いのでは?と思います。

アルバムタイトル…ディープ・ブルー

パーソネル…松居慶子(p)  他

曲目…1.ディープ・ブルー、2.ウォーター・フォー・ザ・トライブ、3.アクロス・ザ・サン、4.トゥリーズ、5.メディテラニアン・アイズ、6.ローズ・イン・モロッコ、7.ムーン・フラワー、8.クレセント・ナイト・ドリームス、9.トゥ・ジ・インディアン・シー、10.ミスティック・ダンス、11.ミッドナイト・ストーン、12.ディープ・ブルー(pソロ)

2001年録音

PLANET JOY RECORDS 
CD番号…PJCD1002

演奏について…アルバムタイトル曲「ディープ・ブルー」は、とてもセンチメンタルなメロディの佳曲で、「松居」は「間」を上手く使い、グランドピアノを弾く。
バックのリズムは「打ち込み」のシンセがメインだが、とても絵画的な編曲で、映画音楽を連想させる。

2曲目「ウォーター~」も、リリカルな美音で、「松居」がテーマを弾いて、このメロディ…胸が張り裂けそうなくらい、深く美しい曲です。
中途からは、バックのベースが重厚にサウンドを形作ると、「松居」は華麗に、そしてどっしりと大地に根を生やした様に、グランドピアノの低音域を活かしたアドリブが、goodです。
カッ、カッと切れ味良く、決め手くれるパーカションの伴奏もとても効果抜群です。

3曲目「アクロス~」は、かつて流行ったフュージョン、「シャカタク」を彷彿させる、ラテンリズムにメランコリックなメロディを、華美にピアノの音符を飾りつけるサウンド・センスに脱帽する。
バックはエレクトリックベースとドラムスで、カチッとリズムを切れよく刻む。

ここまでの3曲、とても女性らしいジャズ世界を構築していて、私は大いに気に入っております。
ただ女性的に繊細なだけでなく、しっかりとスウィングしているのも買いでしょう。

4曲目「トゥリーズ」…癒し系環境音楽の様な、編曲・構成の曲に、心地よくピアノのソロがシンクロする夢想音楽世界で、あたかも蝶が舞うが如くの演奏です。
貴方も是非、「癒されて」下さい。

5曲目「メディテレニアン~」は、ギター・デュオ「デ・パペペ」が弾く軽やかでさわやかな音世界を、「松居」はピアノで演じていて、好感が持てる。
中途からは、リズムセクションが陽気に囃し立て、「松居」もそれを受けて、一層軽やかに鍵盤を跳ねる様に弾くのです。

6曲目「ローズ~」…異国情緒たっぷりの(モロッコ)の街中のバックセッションの合間を、ベールで顔を隠した東洋女性「松居」が、闊歩しているかの様な演奏。
中間からは、華麗にそして鍵盤上を縦横無尽に指先が舞う「松居」のアドリブの独壇場と化す。

7曲目「ムーン・フラワー」では「松居」の優しさを知り、8曲目「クレセント~」では、「松居」のハイ・ソサエティを堪能する。

そして9曲目「トゥ・ジ~」では、「松居」の慈愛に全てを委ねる事になる。
「尺八」と「シンセ」の異次元空間に、ダイナミズムを利かした「松居」のアドリブ・ソロと、メロディラインの美しさが眩しい演奏です。
ネオ・ジャポネスク・ジャズ(フュージョン)の誕生を見ることになる。

10曲目「ミスティック~」…いつまでも聴いていたい、とても美しいメロディ。
この甘さ、切なさ、美しさ、そして悲しみは、一体どこへ行こうとしているのか?
しかし、終盤にこの答がやって来る。
「松居」の奏でるメロディは、女々しくはなく、とても芯の強い愛だ。
ロシアの大地に咲く、一輪のバラの様だ。

11曲目「ミッドナイト・ストーン」のピアノソロ…狂おしい愛に飢えた男が、街を徘徊し、己の愚かさに、怒り、揮えて、凶器を手に持ってしまう…。
その後には、惨劇が起こり、男は自虐し呆然と立ち尽くす…。
眼を閉じると、愛ゆえに悲しい結末を迎えてしまう、モノクローム映画が眼前に浮かぶ。
美しさと悲しさが同居した、美演奏です。

12曲目…タイトル曲のソロなので、この演奏も間違い無い!!

「松居慶子」…ピアノで映画を作る、アーティストです。

今日は一寸、「ナオさん」」のポエムの世界が入っちゃいました。
「ナオさん」の様にはとても書けませんが、たまにはこう言うのも良いかもしれませんね。
でも、「ナオさん」の大変さ…身に沁みて、苦労が偲ばれます。
いつも本当にお疲れ様です。

ブルーノートの新スタイルピアニスト、アンドリュー・ヒル…ジャッジメント

2007-09-18 23:59:03 | ジャズ・ピアノ・コンボ
ブルーノート出身で、空間をすごく上手く使うピアニストが、今日紹介の「アンドリュー・ヒル」です。

そして、このアルバムに参加したメンバーも、彼の作り出す世界にジャストフィットする、ヴァイブの「ボビー・ハッチャーソン」と、スーパー硬派のベーシスト「リチャード・デイヴィス」、そして、これまた「デイヴィス」の相棒の兄貴キャラ「エルヴィン・ジョーンズ」と言う申し分ないメンツです。

メンバー構成を聞いただけで、もう演奏が分かりそうな感じで、よだれ物です。

アルバムタイトル…ジャッジメント

パーソネル…リーダー;アンドリュー・ヒル(p)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.シエト・オチョ、2.フレア・フロップ、3.ヨカダ・ヨカダ、4.アルフレッド、5.ジャッジメント、6.リコンリエーション

1964年1月8日

原盤…BLUE NOTE 84159 発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-4159

演奏について…まず、全曲「ヒル」のオリジナル曲であり、革新的なヴァイブ奏者「ハッチャーソン」が加わった事によって、「ヒル」の空間的な「間」とセンスを活かした演奏が、より一層輝きを増すのである。
リズムの二人は、これ以上に無いバリバリ硬派であり、硬派と言っても不良学○じゃないし、ましてヤ○ザでもチン○ラでも無い。
もっと怖い右○団体のボスか、逆にロ○アK○Bぐらいの過激さを持つ、超大物二人である。
この二人にガッチリ基礎を支えられて、「ヒル」と「ハッチャーソン」は、自由気ままに大空を舞うのである。

さて、お薦め曲だが、全曲変拍子のリズムが多く、個性的な曲ばかりなのだが、その中で逆に毛色が変わっているのは、変拍子では無くてオーソドックスなリズムで、沈静化されたリリシズムがとても品が良く、趣を感じさせる4曲目「アルフレッド」が抜群に良い出来だ。
その名の通り、名プロデューサー「アルフレッド・ライオン」に捧げられた曲であり、「ヒル」が単なる物珍しいピアニストでは無く、恐るべき才能を持っている(コンポーザー)だと言う事を思い知らされる。
この中の主役は、ピッチカートベースで分厚く引き続ける「デイヴィス」と、間を活かす「ヒル」の二人だ。
「ハッチャーソン」も、所々で伴奏をつけて、名演に色を添える。

5曲目、表題曲の「ジャッジメント」も抜群に良い演奏だ。
この曲では、何と言っても中途でソロをとる「エルヴィン」がカッコイイ。
「ハッチャーソン」も、優れたアドリブをびんびんに敲き、「デイヴィス」は完全にわが道を突き進むが如く、骨太ベースをガッツリ弾き通す。
ここでは「ヒル」は伴奏に終始する程、3人が熱く燃えている。

寛ぎ調の6曲目「リコンシリエーション」…序奏は変則拍子の「モダン・ジャズ・カルテット」的に始まるが、すぐにこの新主流派の世界にトリップをする。
ここでもベースの「デイヴィス」がすごい!!凄すぎる。
「エルヴィン」は、ブラッシュ・ワークだが、やはり硬派だ。
「ヒル」は素晴らしく出来が良く、半音をとても上手く使って曲を印象派的に描ききる。
彼の個性が良い方に全面的に出た演奏だ。
「ハッチャーソン」は、エンディングで一発参加して、聴かせる。

1曲目「シエト・オチョ」…その名の通り7/8拍子なのだが、「ヒル」が雨だれの様に煌めいたソロを取り、「ハッチャーソン」もそれに合わせて、ハイセンスのアドリブをかます。
「デイヴィス」「エルヴィン」の二人は、ハードにリズムをキープして、彼等をアシストする。
しかし「エルヴィン」のドラムソロ、パワフルで超絶技巧で、流石の一言。
やはりこのリズム二人は、化物だぜぃ。