紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

不世出のプリマドンナ、マリア・カラスの代表作~プッチーニ「トスカ」

2008-03-31 14:19:57 | クラシック室内楽・器楽・オペラ・古楽
20世紀最高の…不世出のソプラノ歌手、「マリア・カラス」の若い頃の代表作であり、またイタリア・オペラを振らせれば、屈指の存在である「ヴィクトール・デ・サバータ」にとっても最高傑作との誉れが高いのが、今日紹介するアルバムです。

原作は、パリ演劇界にその人有りと言われた重鎮、「サルデュー」が書いた、悲劇の戯曲で、それを「ジャコモ・プッチーニ」が、満を持して19世紀の終わりにオペラ化したのです。

このオペラがレコーディングされてから、55年もの時が経過しておりますが、未だ嘗て、この演奏・録音を凌駕したアルバム(実演も?)は出てきておりません。

今日は、イタリア・オペラの最高峰を是非、ご賞味下さい。

アルバムタイトル…プッチーニ歌劇「トスカ」サバータ指揮/ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団 カラス、ディ・ステファノ、ゴッビ 他

パーソネル…マリア・カラス(ソプラノ)「フローリア・トスカ」役
      ジュゼッペ・ディ・ステファノ(テノール)「マリア・カヴァラドッシ」
      ティト・ゴッビ(バリトン)「スカルピア」
      フランコ・カラブラーゼ(バス)「チェーザレ・アンジェロッティ」
      メルキオーレ・ルイゼ(バリトン)「堂守」役
      アンジェロ・メルクリアーリ(テノール)「スポレッタ」
      ダリオ・ガゼルリ(バス)「シャルローネ及び牢番」
      アルヴァーロ・コルドヴァ(ボーイ・ソプラノ)「羊飼い」

      ヴィクトール・デ・サバータ(指揮)
      ミラノ・スカラ座管弦楽団及び合唱団
      ヴィットーレ・ヴェネツィアーニ(合唱指揮) 

曲目

DISC1

第1幕…1.ああ!やっとの思いで!、2.いつも洗ってばかりだ、3.なんということ!あの人の絵姿じゃ、4.絵の具をくれ、妙なる調和、5.誰だ、そこにいるのは!、6.マリオ!マリオ!マリオ!/ここだよ!、7.さあ、聞いて頂戴な、8.さあ、仕事をさせてくれ、9.ああ、あの眼が/君の黒く、燃える瞳に、10.やきもち屋さん!、11.トスカは気のいい女だ、12.この上もなく嬉しい知らせじゃ、閣下!、13.教会でこのような馬鹿騒ぎとは!、14.トスカだな?儂を見つけなかったろうな、15.それに私はほんとの悲しい気持ちで…、16.警官を3人と馬車を一台…急いで

DISC2

第2幕…1.トスカは素晴らしい鷹だ!、2.儂としては、狂暴な征服の方が、3.おお、君、狩猟はどうだったね?、4.まずまずだ!、5.アンジェロッティは、どこにいるんだね?、6.さあ、私達だけで、親友のようにお話を、7.シャルローネ、カヴァリエーレは、何といわれた?、8.さあ、トスカ、言いなさい、9.フローリア!/あなた…、10.あの人をお助けください!/儂が?…それは、むしろあなただ、11.若しも、役目に対して誓った忠節を…儂は、以前からプリマドンナのあなた、12.あなたは、どれ程儂を憎んでいるのか!、13.私は歌に生き、愛に生き…“歌に生き、愛に生き”、14.さあ、御覧になって、私は手を合わせて、15.儂は約束を果たしたぞ…、16.トスカ、とうとう儂のものとなったぞ!、17.今は許してやるわ!

第3幕…1.ああ、私の限りないため息よ、2.管弦楽、3.マリオ・カヴァラドッシですね?、4.星は輝き…“星も光ぬ”、4.フローリア・トスカと…、5.おお、柔らかく、けがれ知らぬ、快い手!、6.さあ、時刻は迫ってます、7.私にとっての心がかりはただ君のこと、8.あの人達は来ないわね、9.待つということは、なんて長いことでしょう!、10.マリオ、さあ早く!

原盤…EMI  発売…東芝EMI
CD番号…TOCE-59401~2

演奏について…まず、特筆すべきは、「デ・サバータ」の指揮であろう。
ベリズモ・オペラにジャスト・マッチの、濃密で劇的な表現力は、他に比肩する者がいないだろう。
ミラノ・スカラ座管弦楽団も、「デ・サバータ」の棒に、一糸乱れぬ適応を見せて、きら星のスター歌手軍団のアシストを完璧に果たす。
とても濃い音色で、極彩色のこのオペラを美しくカラフルに彩り、管楽器のブリリアントな響きと、弦楽器のロマンティックな味付けが素晴らしい。
取分け、第2幕での劇的な演奏は、他では一寸経験出来ないぐらいに良いですね。
しかし、極彩色の表現・演奏だけでなく、繊細で微音での表現が多いパートでの演奏もすごいです。
また、合唱団の出来も良く、同様に第2幕では幻想的な世界へと誘います。

さて、歌手の出来ですが、「マリア・カラス」については、後述するとして、バリトンの「ティト・ゴッピ」は、相当名唱だと思う。
輝かしくも迫力十分の歌いっぷりに、イタリア・オペラの醍醐味を味わえる。
悪者、「スカルビア」の身の毛も弥立つ恐ろしさを、完璧な歌唱と、魂で歌い上げる様は、正に適役と言えよう。
第2幕終幕での、「トスカ:カラス」との掛け合い(愛憎劇?)は、必聴物です。

また、「ディ・ステファノ」のテノールも、このオペラの数多ある録音、ディスクの中でも間違いなく最高峰でしょう。
声の良さは勿論のこと、「カヴァラドッシ」と言う、ナイーヴな役の性格を見事に歌っており、この男の弱さや優しい感情を描き切っています。
彼の歌の代表的なパートですが、これも代表的なアリア、第3幕、4曲「星は輝き…星も光ぬ」について書くと…死を覚悟した「カヴァラドッシ」が、「トスカ」に対する思いの全てを伝える歌だが、男の憂いが伝わる名唱です。

さて、いよいよ「マリア・カラス」についてですが、このオペラで最も有名なアリア、第2幕、13番「私は歌に生き、愛に生き…」から、申しましょう。
ここでの「カラス」は、まだまだ歌声も若々しいし、声の張りも十分です。
しかしながら、感情移入と表現は(若いとは言え)非常に豊かで、愛の切なさ、苦しさを神に願って…見事に歌い切っています。
また、「トスカ」の第2幕は、このオペラ劇中で、歌手にとっての一番の魅せ所であり、特に「トスカ」を我が物にしようとして、最終的に「スカルビア」が「トスカ」の手にかけられるパートは、聴き所でしょう。
ここでの「カラス」の憂い、失意、悲しさを纏った、歌唱も素晴らしいです。
そして、「ディ・ステファノ」との愛の絶唱、第3幕の「トスカ」「カヴァラロッシ」との掛け合い、繊細な二人の心情を伝える最重要パートですが、「カラス」の正に真骨頂で、驚異の歌声から、妖艶さと清らかさの両面を見て取れます。

最後に…指揮、歌手、オーケストラ、合唱の全てが、正しくパーフェクトな演奏のオペラ(アルバム)は中々無いのですが、この盤は、そう言った意味では、正に稀有な存在のアルバムです。
唯一の難点は、録音が古い(MONAURAL)事だけでしょう。
クラシックを主に聴く方々にとっては、ここだけが残念ですね。

★ジャズが好きで、クラシックも聴く人は、(ジャズは、名盤に音源が古いMONO録音が多いので)そんなに、不満は感じないと思います。
いずれにせよ、昨今のクラシック・ブームで、(クラシック)を聴く様になった初心者の方にもお薦めしたい1枚です。

ヴァーブ・スターズの競演…スタン・ゲッツ・アンド・J.J.ジョンソン・アット・ジ・オペラ・ハウス

2008-03-31 12:09:03 | ジャズ・コンボ
ヴァーブ・レーベル所属のスーパー・スター達が競演したライブアルバムが今日紹介するこのアルバムです。

演奏者、演奏曲とも魅惑的で、正にヴァーブ・ジャズ芸術の最高峰の一つでしょう。
今宵は彼らのパフォーマンスに酔い知れて下さい。

それと、もう一言…実はこのアルバム、CD化に際して、2種類のコンサートのライブ録音を収録していて、聴き比べやミュージシャンのアプローチの違いを味わえる、お得なアルバムになっています。

アルバムタイトル…スタン・ゲッツ・アンド・J.J.ジョンソン・アット・ジ・オペラ・ハウス

パーソネル…J.J.ジョンソン(tb)
      スタン・ゲッツ(ts)
      オスカー・ピーターソン(p)
      ハーブ・エリス(g)
      レイ・ブラウン(b)
      コニー・ケイ(ds)

曲目…1.ビリーズ・バウンス、2.マイ・ファニー・ヴァンレンタイン、3.クレイジー・リズム、4.ブルース・イン・ザ・クロゼット、5.ビリーズ・バウンス、6.マイ・ファニー・ヴァレンタイン、7.クレイジー・リズム、8.イエスタデイズ、9.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド、10.ブルース・イン・ザ・クロゼット

1957年9月29日①~④ シカゴ、オペラ・ハウスにてSTEREO録音 
1957年10月7日⑤~⑩ LA、シュライン・オーディトリアムにてMONAURAL録音

原盤…Verve 発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-1823

演奏について…まず、本題の通り、「シカゴ・オペラ・ハウス」でステレオ録音された、①~④曲までお話しましょう。

1曲目…「ビリーズ・バウンス」…ヴァーブ・レーベルの偉大なるミュージシャンの先輩、「チャーリー・パーカー」作のブルースですが、「オスカー・ピーターソン」の流麗な序奏にのって、「J.J.ジョンソン」「ゲッツ」のユニゾン演奏がなされ…そして「スタン・ゲッツ」のアドリブ・ソロへと展開する。
「ゲッツ」は軽やかで、イマジネーション豊かな、いかにも白人テナー奏者らしい、蝶が舞う様なアドリブを演ってくれます。
受ける「J.J.」も、かなりウォーム系のトーンで、寛ぎ感溢れるエモーショナルなアドリブで、「ゲッツ」に合わせてきます。
フロント2管以外のメンバーも、オールスターズですが、ここでは二人に花を持てせる認識なのか、バック演奏に従事します。
終盤の「ゲッツ」と「J.J.」の対話的な絡みが、この演奏での一番のベスト・パフォーマンスですね。

2曲目「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」…この曲での序奏から、「J.J.」のテーマ吹き…アドリブへと展開する流れと、エモーションたっぷりのソロ演奏は、秀逸の出来です。
「ゲッツ」もそれに合わせて、情感たっぷりのアドリブで、更に曲に魅惑の衣を付けていきます。
この曲にもエンディングで、二人の絡みがあるんですが、1曲目以上の素晴らしさで、最高ですよ。
いつまでも聴いていたい気にさせられる、ハーモニーの妙です。
ここでも何気に、バックに徹する4人が、実は素晴らしい演奏をしています。
特に「コニー・ケイ」と「レイ・ブラウン」のリズム二人の分厚いサポートの、隠れた迫力は…goodです!!

3曲目「クレイジー・リズム」…曲名通り、リズム・セクションをフューチャーした曲ですが、ここでも4人(二人)ともソロ等は取らないで、曲をがんがん演るのは、フロント二人なんです。
しかし、バックでブロック・コーをメインにガンガン弾く「ピーターソン」と分厚いサウンドでドライヴィングする「ブラウン」。
そして、皆を鼓舞し、敲き捲くる「ケイ」の3人のパフォーマンスに痺れます。

4曲目「ブルース・イン・ザ・クロゼット」…コンサートも終盤になったのか?「J.J.」、「ゲッツ」とも、かなり力の入った熱演になっている。
「ピーターソン」も何気にコードを離れて、サイド・メンながらも魅惑のフレーズを所々で紡ぎ出して、流石の演奏を見せてくれます。
「ケイ」のパスパスと言った感のドラミングが、曲を明るく楽しくさせています。
そうだ!このリズム・セクションは、ドライヴィングと進行をしながらも、自ら(リズムで)歌っているので、軽やかでスピーディなんでしょうね。
この曲でもフィニッシュは、ステレオ録音で左右に分かれて、左が「ゲッツ」と右が「J.J.」で、それぞれが魅力あるアドリブ・フレーズを奏であって、見事なハーモニーで終了します。

さて、モノーラル録音の方ですが、5曲目「ビリーズ・バウンス」…日付から言うと、この演奏の方が後録音と言う事もあり、先行の「ゲッツ」のアドリブが、1曲目とは違って、かなり熱い、ファイトした演奏になています。
バックの演奏も追従してか?「ピーターソン」の演奏も、伴奏なのに最初からビンビンに飛ばしていてフレーズ弾き捲くるし、「ケイ」のドラミングもライトでは無く、ズンズンと迫って来ます。
「J.J.」のソロは、明朗快活で、元気な印象ですね。
彼も廻りに触発されて、最初からトップ・ギアに入れて発進しています。

6曲目「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」…この曲も序奏の入り方からして、テーマを崩し気味にして…前曲よりも遊び心が、かなり加味された感じがします。
「ゲッツ」のアドリブは、かなりエモーショナルで、とても流麗な演奏で、結構力が入っていて、彼にしてはファイトした演奏でしょう。
「J.J.」は、彼らしく朴訥に仕上げていますが、それでもトーンは明るめで、周りの元気に合わせています。
「ブラウン」の重厚さと歌心の両面を兼ね備えたベースが裏の聴き所ですし、「ピーターソン」の華麗な?伴奏も良いですよ。
お洒落で、ジャジーでとても楽しめる演奏です。

7曲目「クレイジー・リズム」…速いテンポにのって「ゲッツ」「J.J.」とも高速調でアドリブ吹き、ノリノリの演奏です。
この演奏でも「ケイ」&「ブラウン」のリズム・セクションと「ピーターソン」を加えた3人は、超攻撃的?なサポート演奏で、フロント二人を喰っていて、笑えますよ。
まぁ、本当は各人にソロを取って欲しいメンツなんで、攻撃的な?バック演奏ぐらいは当たり前ですよね?
全体の仕上げとしても、とてもカラフルな1曲です。

さて、「オペラ・ハウス」では演奏のなかった、8曲目の、名曲「イエスタデイズ」ですが、極めて短い演奏ですけど、「J.J.」の魅惑のアドリブ演奏がとにかく行けてます。
ところで、この演奏は99%「ゲッツ」レス(抜き)なのが面白い。
残りの1%ですが、最後の1小節で、1音出してます。(大爆笑)

9曲目、この名バラード「イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド」も、「オペラ・ハウス」では演奏されていませんでした。
8曲目とは反対に、アドリブ・ソロは「ゲッツ」のみで、ここでは100%「J.J.」レスの演奏です。
しかし、「ゲッツ」のバラッド演奏…やはり良いですぅ。
大人の哀愁バラッドに、涙チョチョ切れ物ですぜ。
バックの3人は言うこと無しな上、「エリス」のさりげないサポート、ギター演奏も通好みでしょう。

ラスト「ブルース・イン・ザ・クロゼット」…「オペラ・ハウス」の演奏よりもかなり演奏時間が短いが、内容を濃くしてか?もっと早めのテンポで、グングンと押し進められて、かなり激しい演奏になっています。
特に「ゲッツ」のぶいぶい吹きが印象的ですし、ノリに乗っている「ケイ」と「ブラウン」のベース&ドラムスが、まるで機関車の様に重厚に走っています。
ラストに相応しいあげあげの1曲です。

是非、2つのライブ演奏が入ったこのお得盤を聴いてみて下さい。

我思う故に我有り…ジョン・コルトレーン~マイ・フェイヴァリット・シングス

2008-03-27 21:52:39 | ジョン・コルトレーン
今日は何となく気分が良い。
そこで、このブログの代名詞的な存在…いや、私のジャズ好き人生の指標とも言って良い「ジョン・コルトレーン」の超絶的な代表作で有る、本作品を今回は取上げてみたいと思います。
余りにも有名な作品で少々気が咎めるのも事実では有りますが、このブログ開設以来、今迄取上げていなかったのがむしろ不思議です。

フリーの「コルトレーン」ではなく、モード・ジャズで、シーツ・オブ・サウンドの初期完成形として、万人に受け入れて頂ける作品だと思いますので、是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…マイ・フェイヴァリット・シングス

パーソネル…リーダー;ジョン・コルトレーン(ss、ts)
      マッコイ・タイナー(p)
      スティーヴ・デイヴィス(b)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.マイ・フェイヴァリット・シングス、2.エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ、3.サマー・タイム、4.バット・ノット・フォー・ミー

1960年10月21日①、24日②、26日③④

原盤…ATLANTIC 1361 発売…ワーナー・パイオニア
CD番号…30XD-1000

演奏について…オープニング&タイトル曲「マイ・フェイヴァリット・シングス」…もはや説明不要の超絶的な名演奏です。
「コルトレーン」がソプラノ・サックスを駆使して、隼が天空を滑空&飛翔するように、シーツ・オブ・サウンドと言う超絶的なテクニックを用いて、アドリブのシャワーを音に換えて振り注ぐのです。
その後の「マッコイ・タイナー」のモード・ピアニズムの極限演奏が羽ばたく様に、ロマンティシズムと幻想的な空間の間に、送り込ませるんです。
とても心地良く、しかしインテリジェンスも感じ得る…ワルツのリズムに乗って、我等をどこに誘うのか?
「スティーヴ・デイヴィス」のベース演奏は、淡々とリズムを刻み、「エルヴィン・ジョーンズ」は、さりげなくも奥底に燃えるパッションで、「コルトレーン」、「マッコイ」を鼓舞し続けます。
終盤は正しく「コルトレーン」の独自世界へと、ソプラノ・サックスが連れて行きます。
「マッコイ」のブロック・コードに支えられながら、「コルトレーン」は短距離走の走者が、その足でマラソンを走る様な、有り得ないぐらいの異次元に走ってトリップするんです。勿論、無理を100も承知でね。
でも、42.195kmは、全力疾走出来ないけれども、20kmぐらいは、本当に全力疾走しているんじゃないかと思うぐらいに、エナジー全開の驚愕の演奏が遂行されています。す、すごいの一言です。

2曲目「エヴリタイム・ウイ・セイ・グッドバイ」…このバラッド演奏もすごいの一言です。
「コルトレーン」の一番すごい所は、モードからフリー演奏へと、つまりシャウト&ブロウの神とも言うべきトーンを、長時間連発できるアヴァンギャルドな演奏家で有りながら、バラッドに対しても神とも言える程魅惑的な演奏を数多く遺しているところでしょう。
ここでの哲学的に思索された、抑制のバラッド演奏に感心すること間違いなしで、大人のバラッド伴奏に従事する「マッコイ」と、渋く繊細にブラシを決める「エルヴィン」のさりげない優しさに、温かいぬくもりを感じるでしょう。

3曲目「サマー・タイム」…こいつもすごいぜ!!
一聴すると、原曲が分からない程のデフォルメされたテーマ演奏ですが、この曲のメロディ&テーマを、ただのアドリブ素材だと単純に理解すれば、至極分かり易いシンプルな演奏です。
アドリブの調理具合と方法が、とにかく素晴らしくて、「コルトレーン」のインテリジェンスに圧倒されるでしょう。
ラテン・リズムを入れたりする、遊び心をチョイ見せする「マッコイ」のピアノ・ソロの出来も良いですし、このアルバム中、唯一ソロを取る「デイヴィス」の歌わせるベース・ソロ演奏にも痺れさせられるでしょう。
終盤には、「マッコイ」の重厚感覚溢れるピアノ伴奏を従えて、「エルヴィン」が激しいドラム・ソロを演ってくれます。
このピアノとドラム、そしてビンビンにハードなベースの対話、「コルトレーン」レスのピアノ・トリオ演奏部分が、最高潮で聴き物なんです。
勿論、ラストの1小節だけ、「サマー・タイム」のメロディ・フレーズを「コルトレーン」が吹いてくれるところも良いんですけどねぇ。
最高にかっこよくて、気持ち良い演奏です。

4曲目「バット・ノット・フォー・ミー」…このラスト曲の出来も秀逸です。
序盤~終盤の「コルトレーン」の超絶技巧のソロ演奏には口をあんぐりさせられるほどですし、逆に中盤の「マッコイ」「デイヴィス」「エルヴィン」の寛ぎのピアノ・トリオ演奏部分の大人の渋いやり取りも、裏聴き所となっています。

いずれにせよ、全4曲全てが、ジャズ・レコーディング史上、最高評価の聴き物であり、ベスト演奏と言って良い出来栄えです。
冒頭で言った様に、正直、説明不要の名演揃いですので、是非、皆様、このスーパー名演&名盤をご堪能下さい。

私のストライク・ゾーンじゃないが…ジーン・クルーパ~プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメンツ

2008-03-25 22:37:23 | ジャズ・ビッグバンド・その他
正直言うと、何でもかんでも聴くと言っている私ですが、ビッグ・バンド・ジャズは、ジャズの中でも、最も苦手のカテゴリーで、(人生の中で…大袈裟か?)余り聴いた事がないし、第一聴きたいとも思わないのが本音です。
しかし、たまには(怖いもの見たさで)チョイスして見ようかな?なーんて思って、今日はこんなアルバムを行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ジーン・クルーパ~プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメンツ

パーソネル…リーダー;ジーン・クルーパ(ds)
      アーニー・ロイヤル(tp)
      カイ・ウィンディング(tb)
      フィル・ウッズ(as)
      ハンク・ジョーンズ(p)
      ジェリー・マリガン(arr、cond)
      他

曲目…1.バード・ハウス、2.マーギー、3.マリガン・シチュー、4.ビギン・ザ・ビギン、5.シュガー、6.ザ・ウェイ・オブ・オール・フレッシュ、7.ディスク・ジョッキー・ジャンプ、8.バーズ・オブ・ア・フェザー、9.サムタイムズ・アイム・ハッピー、10.ハウ・ハイ・ザ・ムーン、11.イフ・ユー・ワー・ジ・オンリー・ガール、12.ヤードバード組曲

1958年10月20日~22日 NYにて録音

原盤…verve 発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-2142

演奏について…1曲目「バード・ハウス」…「クルーパ」の正確無比のドラミングが当然の如く、皆を引っ張り、特筆すべきソロを取るのが「フィル・ウッズ」です。
魅惑的なアドリブ・フレーズで曲を彩ります。
その後の「ロイヤル」と「ウィンディング」のアドリブも行けてます。

2曲目「マージー」…いかにもビッグ・バンド・ジャズとも言うべき、寛ぎと余裕の編曲&演奏で、ダンサブルに進行する。
ここでも「ウッズ」のソロが秀逸で、このバンドのホーン・セクションの核は、間違いなく、彼であろう。

3曲目「マリガン・シチュー」…この曲も2曲目同様、ジス・イズ・ザ・ビッグバンド・ジャズと言って良い演奏&曲です。
トロンボーン「ウィンディング」と「ウッズ」のソロがウォームな感じでgoodです。

4曲目「ビギン・ザ・ビギン」…古き良きアメリカ…黄金の時代の記憶を蘇らせる様なゴージャスで、寛ぎのサウンドに酔いしれたい。
「クルーパ」は、さりげなくも裏番長として、目配せ気配せで皆を鼓舞する。
ここでも「ウッズ」はとても元気なアルト・サックスでぶいぶい言わします。

5曲目「シュガー」…「ウッズ」はもとより、トロンボーン「ジミー・クリーブランド」と、トランペット「ドク・セヴェリンセン」のソロが堪能できるトラック。
ビッグ・バンドを柱に、ソロ・アーティストがカラフルに修飾します。

6曲目「ザ・ウェイ・オブ~」…この曲のソロの聴き物は、テナー・サックス「アル・コーン」とのクレジット表記が有ります。
このビッグ・バンド…一体どんなスター・プレイヤーが参加しているんじゃ?
参加者全員の名簿がみたいもんじゃ!!

7曲目「ディスク・ジョッキー・ジャンプ」…一言で言って、この疾走系のサウンドは良いですね。
「クルーパ」がシャンシャンとリズムを刻み、「ウッズ」がガンガン吹き、「クリーブランド」が控えめに仕上げる。
「クルーパ」のスーパー・ドラミングも勿論聴き物ですが、トランペットの「アーニー・ロイヤル」のブリリアントなソロ演奏が最高潮で、ベスト・バウトです。

9曲目「サムタイムズ・アイム・ハッピー」…とても面白いアレンジメントで、「マリガン」の編曲者としての才能が垣間見れる。
ホーンのアンサンブルをハイセンスに配置して、「ウッズ」のブロウ・ソロをメイン・パーソンにして、クリエイティヴなサウンドを抽出しています。
「マリガン」…good jobですねぇ。

10曲目「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」…この曲の編曲は、あえて大人し目…控え目に仕上げているのが味噌です。
ビッグ・バンドだからって、フルパワーで演らないのが、「マリガン」のセンスだろう。
各人のソロも抑制された美学があり、音色を減らして無限の空間を表現している。
そう…絵画なら水墨画の境地…渋いねぇ!

11曲目「イフ・ユー・ワー~」…このバラード演奏は最高だね!
このアルバムの白眉でしょう。
トランペットのミュート・プレイが郷愁を誘い、さりげないビッグバンド演奏が、更に幻想的な世界へと誘(いざな)う。
「ウッズ」のアルトの音色も艶やかで、男の色香と哀愁を見せる。
いつまでも聴いていたい1曲&演奏ですね。

12曲目「ヤードバード組曲」…バード(チャーリー・パーカー)の代名詞とも言うべき曲ですが、ここでは「ウッズ」のソロが、勿論聴き物。
本家にどこまで近づけたかなぁ?
「パーカー」程、イマジネイティヴでは無いが、ビッグバンドをバックに健闘していると思う。
シャンシャンとドラミングする「クルーパ」のリーダー振りに、喜びを感じます。

たまにはビッグ・バンド・ジャズ…こう言うの聴くのも良いんじゃない?

若かりし巨匠がスタンダードをブロウする…ソニー・ロリンズ~ワークタイム

2008-03-23 23:07:32 | ジャズ・テナー・サックス
かの、「ソニー・ロリンズ」が売り出し始めた頃に、豪快なブロウでスタンダードを題材にアドリブを演りまくった痛快なアルバムがこれなんです。
バックのメンバーも最高で、ワンホーン・カルテットの魅力に溢れた名盤ですね。

アルバムタイトル…ワークタイム

パーソネル…リーダー;ソニー・ロリンズ(ts)
      レイ・ブライアント(p)
      ジョージ・モロウ(b)
      マックス・ローチ(ds)

曲目…1.ショウほど素敵な商売はない、2.パラドックス、3.レインチェック、4.ゼアー・アー・サッチ・シングス、5.イッツ・オールライト・ウィズ・ミー

1955年12月2日 NYにて録音

原盤…prestige LP-7020  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDJ-1607

演奏について…オープニング曲「ショウほど素敵な商売はない」ですが、「マックス・ローチ」のタイム感覚抜群のドラミングに導かれて、「ロリンズ」が豪快にブロウする痛快な1曲です。
この演奏で特筆すべきなのは、「ローチ」以上のドライヴィング力で、「ロリンズ」さえも引っ張っていくベースの「モロウ」のハードな仕事振りに耳を奪われますね。
勿論、触発された「ロリンズ」も負けじと豪快に吹いて返してますけどね…。
「ブライアント」は、曲調に合わせて、かなり早弾きしていますが、彼にはもっと叙情的に弾いて欲しいと言う願望が有るので、個人的にはチョイマイナスかな?
ラストでは、「ローチ」がスーパー・ドラミングを演ってくれて、オープニングに相応しく、掴みはOKの好演となっています。

2曲目「パラドックス」…ラテン調のリズムで、軽快に進行する「ロリンズ」オリジナル曲です。
テーマ・メロディは分かり易く単純に作っており、「ロリンズ」は、真骨頂のアドリブ満載で、ぶいぶいと演ってくれます。
それを受けての「レイ・ブライアント」のピアノ・アドリブですが、1曲目とは違って、シングル・トーンでロマンティックに仕上げてくれて…そうです。
こうでなくちゃ「ブライアント」は駄目ですよね?
後半に入ると、またまた「ローチ」がテクニック満載に、「ロリンズ」とのデュオ的な掛け合いも見事で、ビーバップから発展した初期のハード・バップの最良の演奏がされていて…goodです。

3曲目「レインチェック」…「ビリー・ストレイホーン」作曲の古典的な名曲なのですが、「ロリンズ」は、ここでもフル・トーンで、豪放にテナーを吹き捲ります。
豪放と言っても流石は「ロリンズ」、歌心は全く失わず、聴き良いアドリブですし、例に漏れず?「ローチ」が、スゴテクのドラム・ソロを雨霰の様に、時に激しく、時に繊細に敲き捲くります。
「ブライアント」のソロも、短い物の魅惑的ですねぇ。
ところで、「ローチ」のドラムが、「雨切符」の「雨」の役目なんでしょうか?
私は、そう思うのですが???果たして真相は????

4曲目「ゼア・アー・サッチ・シングス」…この「フランク・シナトラ」の十八番曲の一つの曲を演ってくれる「ロリンズ」の演奏は、まじで最高ですよ~!!
やはり、歌心が必要不可欠なバラッド曲を吹かせたら、「ロリンズ」の右に出る人はいないでしょう?
バックの3人はとても控えめに、「ロリンズ」の演奏を際立たせるサポートをしていますが、逆にそれが魅力アップになっています。
何と言っても名人3人がバックに徹しているので、「レイ・ブライアント」のバラード・プレイは言うまでも無く秀逸ですし、ソロ・パートのシングル・トーンでの演奏も行けてます。
勿論「ローチ」のブラッシュ・ワークは当然の如く名人芸ですし、「モロウ」の的確なベース・プレイ&ソロも言うこと無しです。
ラストでの「ロリンズ」のアドリブ・ソロも感涙物です。
このアルバム中、ベスト・プレイはこの1曲でしょう。

ラスト・ナンバー「イッツ・オールライト・ウィズ・ミー」…前曲がベスト1と言っておきながら、私的にはこの曲が大好きなので、実は甲乙付け難いんです。
魅惑的なテーマ・メロディを活かしつつ、「ロリンズ」が展開するアドリブ演奏に思わず体がリズムを刻むんです。
とにかく、この曲&演奏での「ローチ」&「モロウ」のリズムの推進力は半端じゃないですね。
「ブライアント」のソロも勿論素晴らしいし、終盤、お決まりの「ロリンズ」と「ローチ」の掛け合いバトルも拍手喝さいしたいですよねぇ。
余りにもお決まり過ぎるけど、やっぱり「水戸黄門」や「渡鬼」マニアはいるんだから、ワンパターンだって、こちとらは、もはや待ってましたですよ!
ドラマなら見て安心だけど、レコード(CD)だったら、聴いて安心な1曲です。

全5曲、「ロリンズ」と名人バック3人の、素晴らしいパフォーマンスが堪能できる1枚ですね。
ズバリ、万人にお薦めです。

エラ・フィッツジェラルド~ジ・アーヴィング・バーリン・ソングブック・vol.1

2008-03-22 10:22:51 | ジャズ・ヴォーカル
みなさん、お早うございます。
今日は、「エラ・フィッツジェラルド」の定評あるソングブック・シリーズから、「アーヴィング・バーリン」のソングブックを取上げましょう。

「エラ」の歌については、今さら詳細は不要でしょう。

今日はこれぞアメリカ、これぞジャズ・ヴォーカルの醍醐味を味わって下さい。

アルバムタイトル…ジ・アーヴィング・バーリン・ソングブック・vol.1

パーソネル…エラ・フィッツジェラルド(vo)
      ポール・ウェストン(arr、cond)
      ハリー・エディソン(tp)
      他

曲目…1.レッツ・フェイス・ザ・ミュージック・アンド・ダンス、2.ユー・アー・ラフィング・アット・ミー、3.レット・ユア・セルフ・ゴー、4.ユー・キャン・ハヴ・ヒム、5.ロシアの子守唄、6.プッティン・オン・ザ・リッツ、7.ゲット・ジー・ビハインド・ミー・サタン、8.アレクサンダーズ・ラグタイム・バンド、9.トップ・ハット・タイ・アンド・テイルズ、10.ハウ・アバウト・ミー、11.チーク・トゥ・チーク、12.アイ・ユースト・トゥ・ビー・カラー・ブラインド、13.レイジー、14.愛は海よりも、15.オール・バイ・マイセルフ、16.リメンバー

1958年3月13、14日、17日~19日 LA、ラジオ・レコーダーズ録音

原盤…Verve 発売…ポリドール
CD番号…POCJ-2145

曲(歌)について…1曲目「レッツ・フェイス~」…オープニングから「エラ」の世界に一気に突入。
歌の上手さは、説明不要、バックのブラス&オケを従えて、50年代の良きアメリカを演出する。
「エラ」のマイナー・ポップ・チューンの歌い上げは、いつ聴いても良いですね。

2曲目「ユー・アー・ラフィング~」…「エラ」が、ここではバラードをしっとりと歌い上げて、ストリングスのオケとの相性もバッチリです。
終盤のトロンボーンのソロも歌心に溢れていて…ワンポイントになってます。

3曲目「レット・ユア・セルフ・ゴー」…この曲は軽快なスウィンギー・ナンバーですけど、「エラ」の歌はもとよりトランペット「ハリー・エディソン」との掛け合いも聴き所の一つです。

4曲目「ユー・キャン・ハヴ・ヒム」…ピアノ・トリオ・プラス・ホーンがバックで、ミディアム・テンポで、情感たっぷりに「エラ」が歌い上げてくれます。

5曲目「ロシアの子守唄」…短曲なんですが、このアルバムで「エラ」の歌の中で白眉の一つです。
ヴァイオリン&ピアノの少ない編成を最大限に活かして、「エラ」がハミングを用いながら、エモーショナルに決めます。

6曲目「プッティン・オン・ザ・リッツ」…この曲は1曲目に近い、ビッグ・バンドをバックに「エラ」が気持ち良く伸びやかに歌う、ゴージャスな1曲です。

7曲目「ゲット・ジー・ビハインド~」…「エラ」がキュートに、女心を純真に歌い込めて…夢見心地のサウンドと歌に仕上がっています。

8曲目「アレクサンダーズ・ラグ・タイム・バンド」…「エラ」がファニー&遊び心十分に…時にはわざと投げやりに歌う楽しいナンバーで、「バーリン」が初期に書いたヒット曲です。

9曲目「トップ・ハット・ホワイト~」…「フレッド・アステア」十八番の曲ですが、「エラ」も負けじと、とてもスウィンギーに、軽快に歌います。
「エラ」は不思議とアメリカン・ミュージカル風な曲にもマッチするんですね。

10曲目「ハウ・アバウト・ミー」…「バーリン」の作品の中で、あまり有名ではないとの事ですが、ピアノ伴奏をメインに、「エラ」が、しっとりと歌うバラードには、思わず耳を奪われるgood jobです。
個人的には、「ロシアの子守唄」と匹敵する名唱にあげたいです。

11曲目「チーク・トゥ・チーク」…言わずと知れた「バーリン」の代表作の一つですが、「エラ」は軽快に、そしてパワフルに、名曲を見事にさばいています。
ヴィブラートや歌の節回し、表現力のどれをとってもパーフェクトな歌い方で、流石のパフォーマンスですね。
アルバム中、アップ・テンポ系の曲では、ベストな1曲だと思います。

12曲目「アイ・ユースト・トゥ~」…ライトな感覚のバラード・チューンで、「エラ」もしっとり感を失くさずに…しかし、割と軽めに歌い上げてくれて…センスが良いですね。
「エディソン」のトランペット伴奏も行けてます。

13曲目「レイジー」…この曲も軽めのバラッドで、12曲目と同様のコンセプトで「エラ」がハイ・センスに仕上げてくれます。

14曲目「愛は海よりも」…この曲も名曲ですね。
いや、それにも増して、「エラ」の歌が良いんですぅ。
まじにしっとりと聴かす大人の女性のバラードに、胸を揺さぶられます。
中盤のテナー・サックスの色香ぷんぷんの名演も、見事に「エラ」の歌に彩を副えてくれて…最高のパフォーマンスの1曲です。
気持ち良い~!!

15曲目「オール・バイ・マイセルフ」…元来暗い歌詞の内容の歌らしいのですが、「エラ」はさっぱりとライトに歌います。
確かにポジティブな「エラ」には、泣きの歌は似合いませんね。

ラスト「リメンバー」…ラストを〆るのに相応しいお休み?調の歌に仕上げています。
オルゴールを使った「ウェストン」の編曲センスもキラリと光り、終盤ではビッグ・バンドにチェンジして、ゴージャスに変えて行って…フィナーレになるんです。

最後に…このアルバムは、「エラ・フィッツジェラルド」と言う歌手の、ポジティブな魅力が満載の楽しいアルバムです。
是非、聴いてみて下さい。

清々しい!ヘルベルト・ブロムシュテット指揮/ドレスデン・シュターツカペレ~ブルックナー交響曲第7番

2008-03-18 22:09:25 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
ここで展開される音楽を一言で言うなら、バカラ製のショット・グラスの様な…重厚で、崇高で、透明感が鋭利…と言ったらようだろうか?

大河の様にゆったり流れる雄大さよりも、とても清々しく透き通る、清流の様なイメージの演奏がされているのです。

ブルックナーの朴訥さに加えて、人間の手が入った、つまり人工美の美しさが加えられた名演…そう、世界遺産で言えば、自然に調和した…白鳥城…ノイシュバシュタイン城の様な演奏なんですよ。

煌びやかでは無いが…とても優美、優雅で…心を清らかにしてくれます。

アルバムタイトル…「ブルックナー交響曲第7番ホ長調」

ヘルベルト・ブロムシュテット指揮

ドレスデン・シュターツカペレ

第1楽章…アレグロ・モデラート(21:07)

第2楽章…アダージョ;非常に荘厳に、かつ非常にゆっくりと(24:32)

第3楽章…スケルツォ;非常に速くートリオ;やや遅く(9:39)

第4楽章…フィナーレ;快速に、しかし速すぎずに(12:25)

1980年6月30日~7月3日 東ドイツ、ドレスデン、ルカ教会にて録音

原盤…DENON 発売…日本コロムビア
CD番号…33C37-7960

演奏について…前説で殆ど述べてしまっているが、とにかく透明度が抜群に高い演奏なんです。
管楽器も弦楽器も、とにかく透き通っていて…しかし、決してガラス細工の様に繊細で壊れ易い訳ではない。
バカラのショット・グラスと比喩したが、透明で有りながらもガッチリとした重厚さを持っている。
「ブルックナー」の演奏と言えば、厳格、或いは朴訥のどちらかの範疇に属する演奏が多いと思う。
或いは、ものすごく自然体で、マッシブな音の洪水、楽器群に見も心も自然に任せて委ねる演奏、が多いのも事実です。

しかし、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・シュターツカペレ」は、それらの演奏のどれとも違うんです。

自然体に身を任せる部分が有るんですが、その自然は穏やかな春ではなく、かと言って厳格な真冬ではない。
良く晴れた冬の暖かい日中…或いは、無風で暖かさをほんのり感ずる様な晩秋が相応しいだろうと思う。
甘すぎず、厳しすぎず…この背景はとても中庸である。

オーケストラについて言えば、この当時の「シュターツカペレ・ドレスデン」は、東欧諸国のオケの中では、最も洗練されていた楽団と言っても良いでしょう。
いかにも無骨な…いや、野暮ったい楽団ではないので有るが、しかし、西側のオケ程、洗練されてもいない。
つまり、シカゴ・シンフォニーの様なヴィルトオーゾ集団でも無ければ、ウィーン・フィルの様な優雅さがある訳ではない。
しかし、無骨な国の中のさりげない洗練…実はこれがこの名演奏の味噌(秘薬)だと激しく思う。

この自然の秘薬によって、正しく「ブルックナー」と言う作曲家を表現するのに…他の指揮者、楽団との決定的な違いを導き出しているんです。

特に第1楽章~第2楽章の出来は抜群だと思います。
透明感を全面に押し出した指揮&演奏で、得も言えぬ美空間を演出しているのです。

逆に、第3楽章では、かなりマッシブでパワフルな演奏をするんですが、この楽章、この演奏表現は、「ブロムシュテット」&「ドレスデン・SK」の持ち味を少し殺してしまった感が有るんですが…。
彼等には激しい、厳しい(厳し過ぎる)表現は似合わない。
もう少し抑制した演奏の方が良かったかも?

第4楽章の表現もまずまずでしょう。
荘厳さと透明感が程好く混じって、精緻さが有っても、細々しさは入っていない。
管楽器の透き通った響きが…とにかく美しいんですよ。

この演奏…最後まで聴いていると、とにかく心が洗われる気がします。
そう、クールではなく、クリヤーなんです。どこまでもクリヤーなんです!!!

攻撃的名演…ショスタコーヴィチ交響曲第12番~ロジェストヴェンスキー/ソビエト国立文化省交響楽団

2008-03-17 22:27:00 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
何か今日は、超攻撃的なオーケストラ曲が聴きたくなりまして、この盤を取り上げちゃいました。

20世紀ソビエトの生んだ大作曲家、「ショスタコーヴィッチ」の交響曲第12番ニ短調「1917年」作品112で、演奏は「ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー」指揮、ソビエト国立文化省交響楽団…謂わばお国物っていうやつですね。

とにかく、劇的な表現の演奏で、ロシア革命臭さがぷんぷんの、えぐい演奏ですけど、迫力十分で音の洪水が眼前に迫って来ますよ。

アルバムタイトル…ショスタコーヴィッチ作曲 交響曲第12番ニ短調「1917年」作品112

ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー(指揮)
ソビエト国立文化省交響楽団

第1楽章…「革命のペトログラード」モデラート~アレグロ(13:48)

第2楽章…「ラズリフ」アレグロ~アダージョ(12:39)

第3楽章…「オーロラ」リステッソ・テンポ~アレグロ(4:32)

第4楽章…「人類の夜明け」リステッソ・テンポ(10:34)

1983年録音

原盤…メロディア  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VDC-544

演奏について…まず、「ロジェストヴェンスキー」の手兵として機能している「ソビエト国立文化省交響楽団」について、簡単に説明しておかなければならないだろう。
このオーケストラは、西側で活躍していた祖国のスター「ロジェストヴェンスキー」を呼び戻すために作られた、ヴィルトオーゾ集団なのである。
だから、演奏技術は高水準で、「ロジェヴェン」の意図する通りに演奏機能を果たすのである。

この交響曲自身の持つ、ロシア臭…オーケストラで表現すれば、燻し銀色…いや、鉛色の管楽器の音色が必要となってくるのだが、それについて言えば、申し分の無い音色と技術がある。

それにも増して特筆すべきは、音色こそ(敢えて)鉛色だが、オーケストラの演奏は、非常に精緻であり、何より素晴らしいのは、ロシア臭を漂わせながら、都会的に洗練された部分、つまりやぼではない品位、資質を、このオケが持っている事である。

その理由としては、やはり「ロジェストヴェンスキー」が齎している力が大きい事は否めない。
西側で多くの事を吸収し、咀嚼して来た「ロジェヴェン」による棒だからこそ、オーケストラが従順に反応できるのだと思う。

とにかく劇的で、演奏の起伏が激しい…大地をも揺るがすど迫力サウンドの演奏ですが、ピアニシモ系の部分では、非常に精緻極まりない、微細な表現もなされているんです。

楽章による色分けはこう言ったイメージですね。

ほの暗く不安感たっぷりで、ディープで厳格な、いかにもロシアっぽい第1楽章。

内面から滲み出て来る、抑圧のいらだたしさが、少しずつ顔を出す第2楽章。

行進曲風の展開に趣を感じ得る第3楽章。

最終コーダの盛り上がりが最高潮の、劇的な解釈で幕を閉じる第4楽章。

最後に…戦争嫌いな方には不向き?…確かにそうかもしれない。
しかし、平和ボケしている日本人には、たまにはこう言った緊張感がびんびんの曲を聴くのも良いかもね?
政治家の皆様が、銭金に目が眩んで、真の社会(国家)について、鑑みない日本人へのペーソスがいっぱい詰まっていて、良いと思うなぁ…僕はね!!

フレディ・ハバードのブルーノート7作目…ブルー・スピリッツ

2008-03-15 23:47:38 | ジャズ・トランペット
こんばんわ。
花粉症の超きついえりっく$Φです。
いやー、昨年までは花粉症が耐えられなくなると、すぐにステロイド注射を射ちに行っておりましたが、体に悪いので、今年は、うがいと目洗いと、鼻うがい、マスクでどこまで頑張れるか?トライしているのですが…超辛い、地獄の毎日を送っています。

もはや、ひどい風邪の症状そのままでして、咽喉はメチャ痛い、声は出ない、鼻水は出っ放し、痰には血が混じるし、膿も出て、おまけに頭痛、吐き気まで出る始末です。
高熱以外の風邪に似た症状出まくりで、人間崩壊の危機に面しています。(泣き笑い)

そんな訳で、今日も気分だけでも爽快にしたいので、ブルー・ノート行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ブルー・スピリッツ

パーソネル…リーダー;フレディ・ハバード(tp)
      バーナード・マッキニー(euph)
      ジェームス・スポールディングス(fl、as)
      ジョー・ヘンダーソン(ts)
      ハンク・モブレー(ts)★
      ハロルド・メイバーン(p)
      マッコイ・タイナー(p)★
      ラリー・リドレー(b)
      ボブ・クランショウ(b)★
      クリフォード・ジャーヴィス(ds)
      ピート・ラロカ(ds)★
      ビッグ・ブラック(conga)

曲目…1.ソウル・サージ、2.ブルー・スピリッツ★、3.アウター・フォーシズ★、4.クンガ・ブラック、5.ジョド★

1965年2月19日、26日★録音

原盤…BLUE NOTE 84196  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6657

演奏について…パーソネル表記でお分かりかと存じますが、主立って2種のコンボから演奏がなされています。
テナー・サックスが「モブレー」、ピアニストに「マッコイ」、ベース&ドラムスが「クランショウ」「ラロカ」とかなりスター奏者になっている、2曲目、3曲目、5曲目と、それに対してテナー・サックスが「ヘンダーソン」、ピアノが「メイバーン」以外は、かなり渋いメンバーで構成されている、1曲目、4曲目と言う具合です。
どちらのコンボが良いかって?それは…聴いてのお楽しみ……。。

1曲目「ソウル・サージ」…かなりファンキーっぽい感じのブルース曲で、4管4リズムの分厚いサウンドで曲が展開される。
「ブラック」のコンガに触発されて、曲が始まるが、例に漏れず、序奏はユニゾンでなされ、その後「ハバード」が張りの有るトーンで、気持ち良くアドリブ・ソロを吹く。
バックの「メイバーン」のブロック・コードも青黒さを演出するのに、とても効果的で、やるーって感じです。
「ハバード」の後を受けての「スポールディングス」のメロディックなアルトも勿論、行けますが、更にその後の「ヘンダーソン」のソロ…かなりアグレッシブで、ぶいぶい言わせて、強烈なパッセージを残します。
「メイバーン」のピアノ・ソロは、都会的なブルーズ演奏にバッチリとマッチするし、ベーシスト「リドレー」が、一心不乱にベース音を刻むのが、後半の裏聴き所でしょうか?
いずれにせよ、都会的でカッコイイ、BNらしいブルーズ演奏です。
goodな1曲です。

もう1曲、このメンツで演っている4曲目「クンガ・ブラック」に行きましょう。
少し複雑なラテン調のリズムで、コンガの「ブラック」を完全フューチャーした1曲で、「ハバード」の煌びやかなソロは当然の如く、カッコイイですが、フルートを演る「スポールディング」の攻撃的な演奏も中々です。
でも、この中でも特に、ラテン・メロディ曲となると、「メイバーン」のピアノが抜群に輝きを増す。
ホーン・セクションと違って、アグレッシブではないが、すっきり爽快のファンキー節で、ノリノリになります。
最後にはベース「リドレー」のアドリブ一発も有って…本当に楽しい1曲です。

2曲目「ブルー・スピリッツ」…表題曲でもあるワルツ曲だが、やっぱり1番の名演かもしれない。
序奏の「スポールディング」のフルート演奏からして、超魅惑的で、受ける「ハバード」のアーバナイズされたアドリブも、クールでカッコイイ!!
しかし、この演奏で光っているのは、やはり豪華なリズム・セクションである。
「マッコイ」は、序盤はブロック・コードで伴奏をしているだけだが、この当時(全盛期)の彼らしく、ハイ・センスの塊の様な、強烈なパルスをびんびんに発しているモード・ピアノの極地演奏をしてくれる。
「ラロカ」のシンバルメインの、華麗なドラミングも素晴らしいし、最後までキープ力を落とさずセンスを保ってくれる。
中盤以降は、もう一度(2度)「スポールディング」がスマートなソロを演って、「モブレー」が渋くテナーで対抗する。
これらの新人類?に混じって「モブレー」一人が、時代遅れだが、そんな事はどうでも良い。
あくまで「モブレー」は「モブレー」らしくだ!
最後の最後まで「スポールディング」のフルート演奏の切れと、インテリジェンスが最高潮で、この曲では完全に主役の座を「ハバード」から奪っちまったようです。
「ハバード」の出来だって悪くは無いんですが、「スポールディング」が出来すぎなんでしょうね。
モード・ジャズ好きの方には、この演奏つぼにはまります。

3曲目「アウター・フォーシズ」…各自のソロが活かされた編曲で、トラディショナルな演奏が心地よい。
「ハバード」は思い切りよく、好フレーズ連発のソロを取り、「モブレー」はマイペースなんですが、アルトを演る「スポールディング」が、ハードでフリーキーなブロウを展開して、ここでも光っています。
リズム・セクションは、2曲目同様で、モード・ジャズの典型的な演奏を終始行っています。
知的な「マッコイ」と、インテリックに煽る「ラロカ」、ベースで有りながら、歌って皆をエキサイティングにさせる「クランショウ」…と、このリズム・セクションは、まじですごいねぇ。
この連中に煽られたら、フロントは燃えない訳が無いですね。

5曲目「ジョド」…「クランショウ」のハードなベース・プレイと「ラロカ」の強固なタイム・アシストに引っ張られて、「ハバード」がストレイトに、アドリブを演ります。
この曲では、ほぼ全員にソロ・パートが廻って来て、アルバムのエンディングに相応しい締めを抽出しています。
華麗に全員で、ゴール・テープを切りますよ!

評価とすると、やっぱりリズム・セクションにスター軍団を揃えた曲の方が判定勝ちでしょう。
個人的にはコンガの「ブラック」が入ったオクテットも捨て難いんですが、アルバム、ベスト1の曲は、やっぱりタイトル曲の「ブルー・スピリッツ」ですね。

昨日の続きですよ。ウィントン・ケリー~ケリー・グレイト

2008-03-12 23:00:36 | ジャズ・ピアノ・コンボ
さーて、昨日の続くを行きましょう。
この盤は、This is hard bapと言って良いぐらいに、傑出した名盤です。

このスーパー・メンバーによる、ハード・バップの宴を紹介しましょう。

演奏について…1曲目「リンクルズ」…「ケリー」のマイナー・ブルーズのチューンに導かれて、「モーガン」がミュートで、実しやかなアドリブ・ソロを決める。
「チェンバース」と「フィリー・ジョー」によって司られるリズム・セクションも完璧なアシストを見せる。
「ケリー」は、しばしブロック・コードで伴奏に従事するが、その伴奏にもファンキー&バップの精神が脈々と流れている。
「ショーター」のテナー・サックス演奏は、「マイルス・バンド」時代には考えられない程、バッピッシュで、うねるフレーズを用いるパートも有るが、基本的には(遠慮がちに?)バップ精神に即して、フレーズを選びながら吹いている感じがする。
しかし、こう言う、初々しい「ショーター」にも、別顔の魅力と新たな発見が有って、大いに有りの演奏です。
「ケリー」のソロは、全く言うこと無しで、ファンキーバリバリ、バップ万歳の代表的な演奏がなされる。
1曲目から、名盤に偽り無しの名演です。

2曲目「ママ・G」…いかにもファンキー&バッピーなイメージのユニゾン演奏から、こいつらの世界にトリップだ!
「モーガン」は、のっけからオープン・トランペットでバリバリ吹き、「フィリー・ジョー」も軽快に皆を煽りつつ、知らぬ間にドライヴィングしている。
ここでの「ショーター」は、かなり彼の個性をひけらかして、モード吹きが顔を出していて、いよいよ若者が主張を始めたと見える。
やっぱり若者はこうでなくちゃ!
「ケリー」のファンキー節は好調で、バタ臭さと、ハイセンスが程好くブレンドされた演奏がgoodです。
フィニッシュは「フィリー・ジョー」のハード・ドラミングと「モーガン」のフルパワー演奏で〆になるんです。
皆、good jobですよ!!

3曲目「ジューン・ナイト」…序奏から「モーガン」の演奏が、かなりモード調で、「マイルス」めいていて、一言で驚き!です。
ミュートで、渋~く、センシティブに魅惑のフレーズを吹いてくれます。
「モーガン」っぽく無いけど、これはこれで有りですねぇ。
「ショーター」は各フレーズを長めに取る所と、「コルトレーン」的に、シーツ・オブ・サウンドの様に、細かなフレーズを速射砲の如く吹く所の両面で攻めてきて、3曲目にして本性を完全に表しやがったかって感じです。
「ケリー」は、若者二人のアグレッシブさを見て、逆に遊んでいます。
いかにもバップ調で、シングル・トーンはどこまでも軽やかに…さりげなく魅力あるフレーズをチョコッと弾いてくれるんですね。
この辺は、精神的な余裕とベテランがなせる業でしょう。

4曲目「ホワット・ノウ」…この曲は良いですよ~!!
特にブルー・ノート好きな諸氏には、お薦めの1曲です。
マイナーで、ファンキーで、ブルージーで、どことなくエロティックで…もはやブルー・ノートその物なんではないでしょうか?
「モーガン」のファンキー全開のソロと、「ショーター」の「マクリーン」的なトーンで吹くフレーズ(アルトとテナーの違いこそあれど…)も、バッチリマッチしているんですよね。
「ケリー」もここでは、マイナー・フレーズを連発して、ファンキーさとブルージーさをより出してきます。
「チェンバース」は、ソロでボーイングを繰り出して、もはや、いや、紛れも無くブルー・ノートそのものの演奏でしょう。
考えて見たら、この5人(クインテット)って、ブルー・ノートとプレスティッジのスター・プレイヤーの共演なんですよね。
悪い訳が無いですよね。
もう一つ、当たり前ですけど、「モーガン」以外は全員、全盛期の「マイルス・コンボ」の出身なんですよね。
これまた、またまた、悪い訳が無い!!

5曲目「シドニー」…短曲ですが、「モーガン」と「ショーター」が、静寂のラスト・ナンバーを決めて、こう言う(アルバムの)エンディングも確かに有りだと思わせるハイ・センスに脱帽です。
敢えて、ファンキー&バップを封印して、静寂のバラッドで〆るのは、このメンツ…やはり只者ではないねぇ。
「ケリー」のソロでの悲しげなマイナー・フレーズも光っています。
流石、名盤…どこを切っても美味しいです。
お後が宜しいようで………。。。

ハードバップを代表する名盤…ケリー・グレイト~ウィントン・ケリー

2008-03-11 22:20:23 | ジャズ・ピアノ・コンボ
私事で恐縮ですが、今日おじが亡くなりました。
65歳でした。
又、一週間前には、いとこが亡くなり、享年44歳と言う若さでした。
合掌。。。

人の命は儚いもので、私自身もいつ死ぬのか?なんて分からないし、それが遠くない事かもしれません。
ですので、皆様も今日を、今を、一瞬を大切に生きて頂きたいと存じます。
勿論、私自身への戒めも込めて、私自身も、一瞬一瞬を大切に生きて行きたいと改めて感じ得ました。

さて、今日は、Vee Jayレーベルから嘗て出ていた、ハードバップ期の究極の名盤の1枚である、本作品を紹介しましょう。

アルバムタイトル…ケリー・グレイト

パーソネル…リーダー;ウィントン・ケリー(p)
      リー・モーガン(tp)
      ウェイン・ショーター(ts)
      ポール・チェンバース(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.リンクルズ、2.ママ・G、3.ジューン・ナイト、4.ホワット・ノウ、5.シドニー

1959年録音

原盤…Vee Jay  発売…㈱ファン・ハウス
CD番号…FHCY-2004

演奏について…すいませんが、詳細は又、後日になります。
宜しくお願い致します。

最強のインプロヴァイザーによる、夢の共演…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

2008-03-10 11:40:49 | ジャズ・テナー・サックス
今日の2枚目は、グレートな2人のスーパー・スターの夢の共演、そしてバックのメンバーもスター揃いで…正しくドリーム・マッチの王道とも言うべき、企画のアルバムです。

アルバム・タイトル…スタン・ゲッツ&ビル・エヴァンス

パ-ソネル…リーダー;スタン・ゲッツ(ts)
      ビル・エヴァンス(p)
      ロン・カーター(b)1,2,3,7,8,11曲目
      リチャード・デイヴィス(b)4,5,6,9,10曲目
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.ナイト・アンド・デイ、2.バッド・ビューティフル、3.ファンカレロ、4.マイ・ハート・ストゥッド・スティル、5.メリンダ、6.グランド・ファザーズ・ワルツ、7.カーペットバガーのテーマ(未発表曲)、8.WNEWテーマ・ソング(未発表曲)、9.マイ・ハート・ストゥッド・スティル(別テイク)、10.グランド・ファーザーズ・ワルツ(別テイク)、11.ナイト・アンド・デイ(別テイク)

1964年5月5日、6日 ニューヨークにて録音、7~11曲はMonaural録音

原盤…Verve  発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-1829

演奏について…1曲目「ナイト・アンド・デイ」…「コール・ポーター」のスタンダード曲だが、一音目から「ゲッツ」が魅惑的な音色で、テナーを決めて、「エルヴィン」が、ポリリズムを活かしたドラミングで高揚させて、「ビル・エヴァンス」は知性の塊の様な、ソフィストケイトされたアドリブを演る。
この3人のインプロヴィゼーションが堪らない魅力で、ヘヴィー級ボクサーのバトル・ロイヤルの如く「競演」に、ガッツリはまるんです。
演奏終盤で、「ゲッツ」と「エヴァンス」の知的さに対抗して、「エルヴィン」が吼え捲って、ガンガン叩き、「カーター」もハードなベース・プレイでかっこつけて演るソロの所なんて、最高じゃん!
オープニング曲からすごすぎです。

2曲目「バッド・ビューティフル」…「エヴァンス」と「ゲッツ」が、リリカルで且つインテリジェンスに富んだ、都会の大人のバラード演奏を決めます。
「エルヴィン」のブラッシュ・ワークも高水準で、二人のロマンティックな世界を優しくサポートしてくれます。
それにしても、この曲での「エヴァンス」バラッド・アドリブ演奏…良いですね。
「エヴァンス」的なエッセンスを余す所無く伝えて、しかし決して他のスーパー・ミュージシャンの個性を消すような下種な演奏にはしない。
真に叙情的な一曲です。

3曲目「ファンカレロ」…「ビル・エヴァンス」の代表的な作品の一つですが、流石に「エヴァンス」のアドリブは堂の入った素晴らしい出来栄えです。
知性溢れるブロック・トーンと、センシティブなシングルトーンの交錯した「エヴァンス」流が最高潮に輝いています。
「エヴァンス」に触発されたのか?「ゲッツ」のブローイングも抜群で、熱くなり過ぎないギリギリにシャウトが、ヴェリー・グッド・ジョブです!!
「カーター」のズンズン突き進むベースと「エルヴィン」のすさまじいドラミングが二人の天才を更に煌かさせます。
でも、でも…何と言う贅沢なワン・ホーン・カルテットでしょうね。
白人テナーの最高峰と、ジャズ・ピアニストの最高峰に、「マイルス・バンド」のベーシスト、「コルトレーン・バンド」のドラムス…まじでまじで夢の競演です。

4曲目「マイ・ハート・ストゥッド・スティル」…この曲からベーシストが「リチャード・デイヴィス」に変わるが、この人も硬派ベーシストなので、演奏は何ら変わらず高水準を保つ。
いや、むしろハードな演奏と言う面では「デイヴィス」は「カーター」を凌駕しているので、むしろ緊張感はアップしている。
「ゲッツ」は余裕の吹きっぷりで、「エヴァンス」は、熟考された?かの様な、シングル・トーンでのソロ・プレイが魅力的です。
終盤、二者によるバトル演奏が、蒼く燃えていて、ピーンと緊張が走っています。
そして、「エルヴィン」が煽ってくると…静かなはずの「ゲッツ」が、熱く燃えてきて、火傷しそうなブローイング・セッションで〆られるんです。
青白く燃えているのが、紅蓮に燃え上がる変化が堪りませんねぇ。

5曲目「メリンダ」…とても抑えていてクールな音色ですが、知性をたっぷり音に込めて「ゲッツ」が会心の一発を演ります。
「エヴァンス」のピアノは冴え捲り、「エルヴィン」と「デイヴィス」のリズム・セクションも相当インテリ度が高くなっています。
とてもハイセンスな叙情的なバラッド演奏に、酔わされる…いや、酔わないで、KO負けを喰らうでしょう。
冬の富士山の様に、外見はとても美しいが、実際に登山は出来ない厳しさの様な、芯が頑固な戒律が有る演奏です。

6曲目「グランド・ファーザーズ・ワルツ」…のっけから、とても美しいメロディアスなフレーズを、ワルツお得意?の「エヴァンス」が、シンプルに…且つセンシティブに情景を描き切る。
「ゲッツ」も、肩肘張らない余裕と暖色系の優しい音色で、夢の様な心温まる良い気持ちにさせる演奏をする。
「エルヴィン」も優しく、「デイヴィス」もさりげなく…4人が好々爺にでもなったのであろうか?
怒る事なんか、もはや有り得ない、優しい優しいおじいちゃんの心情が表現されています。

7曲目「カーペットバガーのテーマ」…この曲からは、本来LPで出た時には収録されていなかった、追加トラックと別テイクとなる。
この曲は変拍子で、「ゲッツ」が別の例のコンボ…「ポール・デズモンド」がテナーに持ち替えた様なウォーム&クールな演奏がgoodです。

8曲目「WNEWテーマソング」…このWNEWとは、アメリカのFM曲の事だそうで、相も変わらず「ゲッツ」は余裕吹き、「エヴァンス」は知的に…のフォームは崩さない。
この二人…やはり音楽的頑固者(マエストロ)ですよ。(笑)

9曲目「マイ・ハート~」(別テイク)…オリジナルよりも、かなり急速調で、「ゲッツ」が、かなりぶいぶい言わせる。
単演奏なら、こっちの方が面白いけど、アルバムの統一性を考慮して、オリジナル・テイクが採用されたんでしょう。
「エヴァンス」も彼にしては、遊び心が感じられるアドリブ・フレーズと、タッチが有るし、「デイヴィス」のドライヴ力抜群の力演も聴き所です。
勿論、こう言う展開になると、「エルヴィン」もガツンガツンに演っちゃってくれますよ。
今までのストレス?を発散させるように?敲き捲ります。
このコンボにしては、結構燃えているし、ファイトしていて…とにかく楽しい演奏ですよ。
ボツにする必要は無かったよね?

10曲目「グランド・ファーザーズ~」(別テイク)…この演奏も良い!
センスや崩しから言えば、オリジナルよりもこっちの方が上?だと思いますが…。
「ゲッツ」が、かなりよれた様なイメージで、トータル・バランスからして、編成側が、崩し過ぎと判断したんでしょうか?
十分にレコーディングに値する演奏です。

11曲目「ナイト・アンド・デイ」(別テイク)…この演奏も遊び心が加味された印象が強くなっています。
「エルヴィン」のラテンっぽい太鼓も良い感じだし、「ゲッツ」もダンディズムから、一寸遊び人風な感じで…遠山の金さん?ってイメージでしょうか?
「エヴァンス」のピアノは、それでもやはり…クール・ビューティで冴えています。
今さら言うのもおこがましいですが、この人はまじですごい。
「エヴァンス」流には永遠に不滅で、刃こぼれはしません。
 

デヴィッド・サンボーン~クローサー…続き

2008-03-10 10:33:37 | ジャズ・アルト・サックス
いやー、皆様、大変ご無沙汰しております。
実は、我が家に子犬(トイ・プードル)が来まして、また、仕事の煩雑さもあって全くブログが書けませんでした。
更に昨日は、日曜日出勤も重なって…トホホ!
どうも、すみません。

今日は、先日の続きから書き始めたいと思います。

6曲目「バラード・オブ・ザ~」…「サンボーン」が、とても朗々と伸びやかにバラード・チューンを吹き上げて…歌心に満ち溢れた演奏です。
「ゴールディングス」のキー・ボードがスーパー・アシストを提供し、「マクブライド」の太いベース音が、二人を支える。
いつまでも聴いていたくなるような、とても優しい調べです。
軟派じゃない、癒し系サウンドです。
これは必聴でしょうね。

7曲目「アナザー・タイム・アナザー・プレイス」…霧に包まれたニューヨークをイメージして、「サンボーン」が書いたオリジナル曲との事ですが…はたして…正にその通りでして、「サンボーン」は、男っぽいハード・ボイルドな演奏を展開して、アドリブもかっこいいですね。
「スティーブ・ガッド」の切れ味抜群のドラムスが、更に乾いた大都会のイメージを誇張して…ニヒルなサウンドに仕上がっています。
それから、「ゴールディングス」のエレピが、実は一番霧を表していると思います。
非常に良いアシスト演奏となっていて、とても心地良いサウンドです。
都会の中にあるオアシス的な1曲でしょうか?

8曲目「ケープタウン・ブリンジ」…アフリカン・ピアニスト、「ダラー・ブランド」作ですが、「サンボーン」はライトに吹いて、カリプソ調のダンサブル・ナンバーに仕上げている。
「ガッド」のドラミングが秀逸物で、全員をさりげなくノリノリにさせている。

9曲目「ポインシアナ」…「アーマッド・ジャマル」作品ですが、「ウォーター・メロンマン」を彷彿させる序奏から気に入った。
ラテン調の変則的なリズムをバックに「サンボーン」が、渋めに決めてくれる。
余り派手なブロウはしないが、逆にクールで、かっこいい!
ダンディズムが煌く演奏です。
バックのパーカッション群のノリも良いです。
名前の通り、森の楽園を飛び廻る蝶の様に、軽やかで煌びやかです。

10曲目「ユー・マスト・ビリーブ~」…こいつも良いですよぉー。
私、フェイヴァリットの「ミシェル・ルグラン」作曲の、ビターなバラッドで、「ラッセル・マローン」のギターと、「サンボーン」のアルト・サックスが、語り合う様に曲を修飾して行きます。
「マクブライド」のベース、「ガッド」のシンバルは、どこまでも控えめで…いじらしい程控えめで、二人をじっと見守っています。
「サンボーン」は渋く、少しばかり辛口のトーンで、ここでもダンディズムが極まれりと言った感じです。
痺れますねぇ!!

11曲目「ソフィア」…アルバムのラストを飾るチューンです。
「サンボーン」自作の、哀愁のバラッド作品で、ここでも「サンボーン」の抑制したバラッド演奏が、悲しく美しい情景を描き切っています。
別れる時に背中で泣く、男の哀愁なんでしょうか?
サイド・メン達のさりげないサポートが、取分け「マイニエリ」のヴァイブが、哀愁感をセピア色に染め上げています。
泣けます…かっこいいです。

とにかく、アルバム全曲が良いと言っても過言では有りませんよ。
大お薦めの1枚です。

孤高のアルト・サックスで冴えるベテランの味…デヴィッド・サンボーン~クローサー

2008-03-03 22:16:24 | ジャズ・アルト・サックス
しばらくです。
週末、公私共々チト忙しくて、ブログ書けませんでした。
どうもすみません。

さて、今日はもはやベテランの域に達したアルト・サキソフォニストの「デヴィッド・サンボーン」が、2004年に録音した、比較的最新のアルバムを紹介しましょう。
スタンダード曲と「サンボーン」のオリジナルが程よく配置された選曲も好ましいし、何より激しいブロウとは、対極にある様な、余裕有るイージー・リスニング的大人吹きで、吹き通すスタイルが、逆に個性を発していて…聴き応え十分なアルバムに仕上がっています。

アルバムタイトル…クローサー

パーソネル…リーダー;デヴィッド・サンボーン(as)
      ラリー・ゴールディングス(key)
      ギル・ゴールドスタイン(key on 8)
      マイク・マイニエリ(vib)
      ラッセル・マローン(g)
      クリスチャン・マクブライド(b)
      スティーヴ・ガッド(ds)
      他
      ゲスト・ヴォーカル;リズ・ライト(on 3)

曲目…1.ティン・ティン・デオ、2.セニョール・ブルース、3.ドント・レット・ミー・ビー・ロンリー・トゥナイト、4.スマイル、5.エンチャントメント、6.バラード・オブ・ザ・サッド・ヤング・メン、7.アナザー・タイム・アナザー・プレイス、8.ケープタウン・フリンジ、9.ポインシアナ、10.ユー・マスト・ビリーヴ・イン・スプリング、11.ソフィア

2004年ニューヨークにて録音

原盤…Verve  発売…ユニバーサル・ミュージック
CD番号…UCCV-1065

演奏について…1曲目「ティン・ティン・デオ」…オープニングから、「サンボーン」が絶好調で、テーマを吹く叙情性も、アドリブでのラテンチックで刺激的な展開も、完璧に行けてます。
序奏での「マクブライド」のブ厚いベース・サウンドと、パーカッションの切れ味鋭いノリもバチッシで、取分けテーマが展開した後、ヴァイブの「マイニエリ」とのリズム・セクションとのコンビネーションは、もう一つの聴き所です。
ラテンなんだけど…「サンボーン」がジャズは絶対に忘れてはいない。
流石の1曲です。

2曲目…「ホレス・シルヴァー」の代表作「セニョール・ブルース」ですが、本家よりも大分遅めのスピードで、「サンボーン」が土臭くない、都会的なブルーズを渋く、且つアーシーに決めて吹く。
ここでもラテン調の曲らしく、パーカッション群と「マクブライド」のベースが、男っぽい骨太のサウンドで、曲の屋台骨を支える。
「マイニエリ」のヴァイブが縦横無尽に跳ね回り、「サンボーン」のいぶし銀色のアルトが絡みつく。
切れ味抜群のドラミングをする「ガッド」の演奏もいかします。

3曲目「ドント・レット・ミー~」は、サプライズ・ゲスト?「リズ・ライト」が参加する女性ヴォーカル入りのトラック。
「サンボーン」は、フュージョン風の寛ぎと、余裕をビンビンに見せ付ける、情感たっぷりのアルトを吹いて、「リズ」が馬鹿上手の歌を熱唱する。
彼女の声色もアルト(女声低音)で、「サンボーン」のアルトと音域的にピタリとマッチする。
ある種、インストとヴォイスのデュエット的な演奏&歌で…大人のデートを彷彿させるゴージャスな時空間が…とにかく心地良いです。

4曲目「スマイル」…「チャーリー・チャップリン」の名画「モダン・タイムス」で、(チャップリン自身にて)歌われた曲を「サンボーン」が、感情を最大限に移入して、歌い(吹き)上げるバラード演奏。
とにかく、「サンボーン」のバラードは心に沁み込む。

5曲目「エンチャントメント」…この曲も「H.シルヴァー」の作品で、「サンボーン」は肩肘張らない余裕のアドリブをバッチリこなす。
「マクブライド」のとにかく重低音のベース演奏と、「ラッセル・マローン」のブルージーなギター演奏が、「サンボーン」の演奏の脇をガッチリ固めてくれて…ラテン調、ジャジー&ブルージーの極上サウンドに仕上がっている。
軟派に見えて、ものすごい硬派な音楽だ!

続きは又明日以降で…