紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ネオ・トラディショナルって言うのかな?矢野沙織 BEST~ジャズ回帰~

2007-09-09 11:50:26 | ジャズ・アルト・サックス
みなさん、お早うございます。
今日は、ベスト盤で恐縮ですが、(上原ひろみに続いて)又も、日本の元気娘ミュージシャンから、「矢野沙織」を取り上げたいと思います。

私は決して男尊女卑ではないのですが、どうしてもアーティストと言うと、男性ミュージシャンの方が、女性ミュージシャンよりも優れている方が多い様な気がしまして、…実際は女流でアーティストをなさっている方の絶対数が少ないので、有能な方も(絶対数が)少ないだけかもしれないのですが…。
そんな考えもあったのか、「矢野」の今迄出してきたアルバムを買った事がありませんでした。

しかし、2ヶ月前に彼女のベスト盤が出ると聞いて、一度聴いてみたいと思い、発売してすぐに購入に至ったわけなんです。

果たして(聴いた)結果は?
※大感激!とまではいかなかった物の、他のアルバムも聴いてみたいと思わせるレベルには充分有りました。

ただ、やはりルックス、ビジュアル、ファッション・センス、そして若き乙女と言うことで、特をしている所もある様な気も少しばかりは有ります。
ただし、「チャーリー・パーカー」への畏怖と敬愛を持っているジャズスピリットは、尊敬に値しますし「ビ・バップ」を得意の演奏としている所も「買い」と言って良いと思います。
また、オリジナル曲はどれもメロディアスで、もしかすると将来はコンポーザーの方が更に有名になるのでは?っと思いますね。

アルバムタイトル…矢野沙織 BEST~ジャズ回帰~

パーソネル…リーダー;矢野沙織(as)
      ランディ・ブレッカー(tp)
      スライド・ハンプトン(tb)
      エリック・アレキサンダー(ts)
      ハロルド・メイバーン(p)
      レイ・ドラモンド(b)
      ピーター・ベムスタイン(g)
      ジョー・ファムスワース(ds)
                     他 多数

曲目…1.Donna Lee、2.砂とスカート、3.Crazy He Calls Me、4.Rizlla、5.In A Sentimental Mood、6.Manteca、7.I&I、8.Greenism、9.My Ideal、10.How To Make A Pearl、11.Lover Man、12.Tico Tico、13.Open Mind

2007年3月30日 他

原盤…SAVOY 発売…コロムビアミュージックエンタテインメント
CD番号…COZY-263~264

演奏について…夜書きますので、お楽しみに…
さて、オープニング曲で、「矢野」のミュージシャンの原点、「C・パーカー」作曲の「ドナ・リー」良いねぇ。
流石のビバップ大得意少女?だけに、堂の入った音量とセンス有るフレーズをかまして、良い演奏をしている。
バックでは、オルガンの「ドネ」が優れた演奏で、「矢野」を好アシストしています。

2曲目「矢野」作曲の「砂とスカート」…おいらはとてもこの曲&演奏が気に入ったよ。
何回でも聴きたいねぇ。(実際繰り返し聴いているけどね…)
これが前説で言った「矢野」のコンポーザーとしての才能が有ると言った証拠の1曲で、超ハイセンスのボサノヴァリズムで、セクステットのノリも最高潮。
何と言ったって、ピアノはボサノヴァ名人「ハロルド・メイバーン」だ。
後半のアドリブなんか最高潮ですね。
「矢野」ちゃん、このメンバーにも恵まれているよね。
「ベムステイン」のギターも良いし、ベース「リーヴス」、ドラム「ファムスワース」もそれぞれ持ち味を出してる。
勿論、真打、「矢野」のサックスもgoodです。
「矢野」は、「パーカー」に多大な影響を受けたサックス吹きと言うが、彼女はこの曲の様に、ビバップにあまり捉われないで、自由に吹いた方が良いんじゃないかと思う。

3曲目スタンダード「クレイジー~」も素晴らしい演奏です。
ここでも1曲目同様、「矢野」以上にすごいアドリブを奏でて、バリバリに乗っているのが、オルガン「ドネ」と、ギターの「ベムステイン」ですね。
まぁ、色眼鏡的な見方を少しだけさせて頂くと、「可愛い子ちゃん」を目の前にして、「おじさん」達が実力をガッツリ見せちゃったってな感じなんだろうか?
しかし、「矢野」の適度に甘い音色で奏でるバラッドは悪くは無い。
彼女の数多ある才能の一つでしょう。

4曲目「リジラ」…これも「矢野」のオリジナル曲だが、ここで「矢野」は「パーカー」そっくりな音&フレーズでアドリブを演る。
当たり前だが、音量はパワー不足なものの、アドリブセンスは悪くない。
ここでも「メイバーン」おじさんが、可憐なまごの前で、頑張っちゃってます。
テナーバトルをイメージさせる、「矢野」と絡む「アレクサンダー」の出来栄えも良いです。

5曲目「エリントン」ナンバーの「イン・ア~」だが、この曲にはどうしても例の超名演(超名盤)が有るので、その演奏が耳に残っていて、ゴメンナサイって言う感じです。
しかし、この「コルトレーン&エリントン」の神の演奏をひとまず置いておけば、「矢野」の演奏も好演と言えるでしょう。
この邦人、ワンホーンカルテットのセンスは良いと思う。
各人が「矢野」の魅力を出すために、バックサポートに徹していて、しかしピアノの「今泉」はお洒落なフレーズが多いし、ベース「カミムラ」も渋いボウイングなんかも演ってくれます。
そして、ブラッシュ・ワークで終始通す「オサカ」も流石の貫禄。

6曲目「マンテカ」…比較的大人数のコンボ演奏で、ユニゾン演奏が主になるが、私は結構この編曲は好きですね。
5曲目の様に「今泉」のピアノは素敵だし、「ムーディ」のフルート、「ブレッカー」のトランペットなども、この曲を素敵に彩っている。
さて、肝心の「矢野」のアルトだが、こう言った一人で吹き続けずに、チョイ・アドリブで演奏するシチュエーションってのは、非常に彼女に合っている気がしますし、上手ですね。
一言で言うと、遊び心と寛ぎに溢れたハイセンス・ナンバーです。

7曲目「I&I」は、某CMで使用されている、耳慣れた佳曲ですが、流石に「矢野」は吹き慣れていて、好フレーズを連発して、バックメンバーもハイテンポでグングン突き進む。
正に「パーカー」を彷彿させる、エキサイティングな演奏です。

9曲目「マイ・アイディアル」…この曲は当然の事ながら、「K・ドーハム」の名演があるのだが、ペットでは無く、アルトで演るのも悪くない、いや合うなぁ。
ここで「矢野」は甘すぎないが、情感を込めて非常にバランスの良いアルトアドリブを吹き通す。
何度も言ってすみませんが、やはり「パーカー」を意識しすぎないで、今後は「矢野」独自の世界を、もっともっと追求していくと良いのでは?と再認識します。

ラテン掛かった急速調の10曲目「ハウ・トゥ~」も「矢野」のオリジナル曲で、ここでは「矢野」の「パーカー」調のアルトは良いねぇ。
オリジナルの場合、他に比べる物も無いので、かつての耳馴染みの名演が頭に無いので、「矢野」が「似非パーカー」を吹いても、彼女の個性として気になることもなく、真の実力として評価して良いと思う。

11曲目「ラヴァー・マン」も「パーカー」直系(縁)の曲だが、「矢野」は充分に、自分の曲として、こなしていて好感が持てる。
しかし、この曲でも「メイバーン」の名伴奏が、よりいっそう「矢野」のアルトを極立たせている。
勿論、とてもロマンティックなアドリブ、ソロも聴き物で、私から見ると、実は「メイバーン」が主役を喰っちゃてる気がする。

12曲目「ティコ・ティコ」は、ラテンの名曲だが、この曲は「矢野」に合うと思う。
と。言うのも「パーカー」はラテンを非常に得意にしていて、大好きだった。
ラテンは、先輩「ナベサダ」も十八番だが、アルトにパワー演奏を必要としていないので、ヤング「ペッパー」も、リリカル&ナイーヴな演奏で、得意にしていた。
「矢野」も演奏で言えば、ビバップをやりつつ、こう言うライトな演奏を突き詰めたら、もっと良い物が作れそうに思う。
それから、またまた「ドネ」がぶっ飛びオルガンを弾くのもgood。
それ以上に、終盤の「ファムスワース」のドラム・ソロは、この曲最大の聴き所です。

終曲「オープン・マインド」は、テレビ朝日のニュース・ステーションの曲でおなじみです。
皆さん、是非センス抜群の演奏に聴き入りましょう。

「矢野沙織」…今後も大きな期待が持てるアーティストなのは、間違い無いですが、「パーカー」他には、多かれ少なかれ、「人種差別」としての問題を悲しいかな演奏にも抱え込んでいたと私は思います。
また、その不遇から麻薬や酒に溺れた日々を過ごしてしまったのでしょう。
※「ミンガス」も「マイルス」も「コルトレーン」も多分そうだと思います。
ですから、彼等のアドリブフレーズの素晴らしさには、切なさ、情感を含めて、彼等が一生懸命生きてきた証として、血と汗と涙が眼で見えずとも、どっぷりと沁みついています。
彼等の演奏(音)(フレーズ)から、オーラをびんびんに発しています。
その時代背景を持たずに、生きる苦労とはおよそ縁遠かった彼女には、彼等の演奏を継承するのは、度台無理が有ると思います。
ですから、「矢野沙織」には、もっと現代に生きているレディースアルティストとして、ビバップの追求みたいな物は不必要ではないかと個人的には思います。
彼女には彼女らしい、個性を磨いて欲しいと願っています。