紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

史上最強セクステットのライブ盤…ジャズ・アット・ザ・プラザ・vol1~マイルス・デイヴィス

2007-07-31 23:46:13 | ジョン・コルトレーン
まず最初に、このアルバム、当然リーダーは「マイルス・デイヴィス」ですが、「コルトレーン」がこのコンボのレギュラーメンバー時の録音のため、カテゴリーは「コルトレーン」にさせて頂きますので、予めご了承下さい。
それでは、解説致します。

さて、演奏者のラインナップを見ると…生唾ゴクリの最強メンバーです。
演奏はこのメンツなら、スタジオレコーディング以上に何かが期待できる、ライブ録音です。
演奏曲も「マイルス・コンボ」十八番の4曲で、期待感120%です。

パーソネル…リーダー;マイルス・デイヴィス(tp)
      ジョン・コルトレーン(ts)
      ジュリアン・キャノンボール・アダレイ(as)
      ビル・エヴァンス(p)
      ポール・チェンバース(b)
      ジミー・コブ(ds)

曲目…1.ジャズ・アット・ザ・プラザ、2.マイ・ファニー・ヴァレンタイン、3.イフ・アイ・ワー・ア・ベル、4.オレオ

1958年9月9日 NYプラザ・ホテルにてライブ録音

演奏について…1曲目「ジャズ・アット~」何やら聴きなれない曲名だが、曲が始まると…実は誰でも知っているジャズの名曲「ストレート・ノー・チェイサー」である。
「マイルス」の「フィンガーカウント」に導かれて、のっけから激しい演奏がスタートする。
この熱狂の演奏では、「キャノンボール」と「コルトレーン」のバトルソロが群を抜いてすごい。

2曲目「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」は、冒頭の「エヴァンス」の、非常にモーダルでクールなアドリブソロから、一気に演奏に引き込まれるのだが、しかしこれはまだ序の口で、この後の真打「マイルス」の、神がかり的ミュート・プレイにまじ痺れさせられます。
いつもながら、静寂に中に燃え上がる「青白き蝋燭の炎」のように、静かだがシッカリと燃えたトランペットの音色は、誰にも真似が出来ない「マイルス」独自の異次元空間です。

3曲目「イフ・アイ~」では、「シーツ・オブ・サウンド」が8割方完成している「コルトレーン」が、アドリブでぶいぶい言わす。
次いで「エヴァンス」も、知的なモード演奏でアタックをかける。
脇役では「チェンバース」が随所で、すごテクのラインを刻む所が、裏聴き所。

4曲目「オレオ」では、ややオフマイク的な録音がチョイ残念だが、「マイルス」が、いつもよりはスピーディでアグレッシブな演奏をする。
次いでソロをとる「コルトレーン」もすごいが、しかし、この曲では満を持して登場してきた「キャノンボール」が、激しく燃えるアルトを吹き捲る。
ザックザクのリズムを終始刻む「コブ」と「チェンバース」の職人芸も必聴物。
「エヴァンス」もいつもよりはハードなアドリブを弾いていて、この曲が一番燃える演奏曲になった。

バグス・ミーツ・ウェス~ミルト・ジャクソン&ウェス・モンゴメリー

2007-07-30 21:55:15 | ジャズ・ギター
今日は大物同士で、異色の楽器の組み合わせ名盤、「ミルト・ジャクソン」と「ウェス・モンゴメリー」の競演(コラボ)アルバムを紹介しましょう。
一言で言うと「ブルース魂」が漲った演奏であり、そこに二人のジャム・セッションの余裕も感じられる、風格も有る良い演奏です。

アルバムタイトル…バグス・ミーツ・ウェス
   
パーソネル…リーダー;ミルト・ジャクソン(vib)
      ウェス・モンゴメリー(g)
      ウィントン・ケリー(p)
      サム・ジョーンズ(b)
      フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)

曲目…1.S・K・J、2.スティブル・メイツ、3.星へのきざはし、4.ブルー・ローズ、5.サム・サック、6.ジングルズ、7.デライラ

1961年12月18、19日 NY録音

演奏について…大物二人の競演と前置いたが、このメンツを見れば一目瞭然で分かる様に、実はオールスタークインテットである。
演奏技術、スピリッツとも聴かずして分かるメンバーばかりが演っているので、どんな演奏がなされているか大凡の検討は、誰にでもつくのではないでしょうか?
全編を通じて「ブルース魂」の伝承者の二人がフロントラインを形成しているので、どの曲にもその精神を持った演奏の血が脈々と流れています。

そんな中で個人的に好きなのは、「ブラウニー」の名演で名高いファイナル曲の「デライラ」です。
「デライラ」は、実はこのアルバムの中で一番「ブルース魂」に拘らない演奏だと思いますが、それでも「ミルト」のヴァイブには「ブルース」が自然と宿っているのは流石です。
この人は、根っからブルース男なんですね。
その後の「オクターブ奏法」で好フレーズをかます「ウェス」と、小粋なフレーズで煽る「ケリー」の絡みは聴き物です。
「ミルト」も「ウェス」も縦横無人に、アルバムピカ1の自らのカデンツァに没頭し、素晴らしい演奏をしています。

次いで6曲目「ジングルズ」…すごいグルーヴ感がある、スピーディでパワフルな演奏だ。
序奏の「ミルト」のハードなソロから猛ダッシュを見せて、続く「ウェス」は自作という事もあって、パワフルなギターをぶいぶい言わす。
中途で「ケリー」の華麗なピアノソロが入って、曲全体を素晴らしいタイムキーピングとドラムテクで「フィリー・ジョー」が支配する。
最後の〆はまた「ミルト」だ。
素晴らしいマイスター達の名人芸に大拍手!!

2曲目「スティブルメイツ」では、この曲が十八番の一つと言える「フィリー・ジョー」の超絶技巧ドラミングが、非常に見事な演奏をしてアドヴァンテージをとる。
その「フィリー・ジョー」に触発されて、「ジョーンズ」も硬派のベースをカチっと刻み、「ミルト」は終始ヴァイブをたたき捲る。
「ケリー」もかなり攻めのアドリブを演じて、「ウェス」が入ってからは3つ巴(4つ卍の方が正確でしょうか?)の絡み合いがすさまじい熱演となった。

3曲目の名曲「星へのきざはし」…短い演奏だが、素晴らしい「ブルーズバラッド」が演奏される。
主役は勿論、「ミルト」と「ウェス」だが、この二人をサポートするバック3人のさりげない演奏が実は美味しいスパイスとして効いている。

オープニング「S・K・J」では、ブルースの真髄が垣間見れる演奏がなされる。
「ミルト」「ウェス」「ケリー」3人とも、正統的な4ビートに乗って楽器でブルースを歌い上げている。

5曲目「サム・サック」…「サム・ジョーンズ」の名が冠された通り、ここでの「ジョーンズ」のフィンガーテクは痺れますぜ。
盟友「フィリー・ジョー」の敲くタイコも抜群で、主役の3人をリズマーの二人が完全に喰ってますぜ。

とても高尚な軟派ジャズだ!…パリジャン・ブルー~ミシェル・ルグラン・トリオ

2007-07-30 00:19:24 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
今日は表題にある通り、「軟派に属するジャズ」と評価する人もいるとは思いますが、一聴したその中に技術的にも、精神的にも高尚なジャズを実は演奏しているのが、このアルバムです。

アルバムタイトル…パリジャン・ブルー

パーソネル…リーダー;ミシェル・ルグラン(p)
      マルク・ミッシェル・ル・ベヴィヨン(b)
      アンドレ・チェッカレッリ(ds)

曲目…1.これからの人生、2.おもいでの夏、3.ユー・マスト・ビリーブ・イン・スプリング、4.ワンス・アポン・ア・サマータイム、5.ゴールデン・サン、6.アスク・ユア・セルフ・ホワイ、7.ブライアンズ・ソング、8.ヒズ・アイズ・ハー・アイズ、9.アイ・ウォズ・ボーン・イン・ラブ・ウィズ・ユー、10.シェルブールの雨傘、11.アフター・ザ・レイン、12.パリジャン・ブルー、13.アイル・セイ・グッバイ

演奏について…超名演はずばり「ルグラン」自身の代表的な映画音楽、10曲目「シェルブールの雨傘」である。
ここには、「ルグラン」と言う人物の、ジャズピアノエッセンス、演奏テクニック、編曲センスの全てが凝縮された「究極の1曲」に仕上がっている。
美しい原曲のメロディを充分に堪能できる序盤から、メロディを活かしつつ、リズムだけを大胆に崩して、アドリブの妙を聴衆に知らしめる。
「ベヴィヨン」のハードドライヴィングベースと「チェッカレッリ」のブラシ中心のタイムキーピングも言うこと無し。
とにかく、やや早めの4ビートジャズから、終盤には、ワルツ→ボサノヴァ→8ビート→ラテン→不協和音→タンゴ→サーカス→爆発・(ジ・エンド)と言う風に目まぐるしくテンポを変えて、アドリブの遊び心が充分な演奏だ!!

13曲目「アイル・セイ~」は、静寂のバラッド演奏。
非常に短い曲だが、非常に哀愁を感ずる美旋律に、「ルグラン」のスーパーテクニック、ピアノアドリブソロが演奏される。

冒頭の「ルグラン」の代表作、「これからの人生」では、序盤は「ルグラン」の流麗で小技が効いた哀愁一杯のピアノソロが続く。
とても女性的な繊細なピアノソロに思わず唾を飲み込む。
それから、終盤に入ってからはハイセンスなピアノトリオ演奏へと転ずる。

2曲目「おもいでの夏」も「ルグラン」がアカデミー賞を受賞した超名曲だが、冒頭曲以上に、テクニックを用いた美しいピアノアドリブソロが秀逸。
バック二人のあえて音量を抑えた、ベースとドラムスにも高尚なセンスを感じる。

3曲目「ユー・マスト~」では、「ルグラン」は非常に知的で熟考されたソロを弾く。
そう、まるで「ビル・エヴァンス」の様なプレイ振りが非常に素敵である。
サイドでは、ベースの「ベヴィヨン」が、序盤と終盤に超絶的なベースソロを奏でて、曲を盛り上げる。

11曲目「アフター~」は、決して著名な曲ではないが、ここでのバラッド演奏は、とても渋くて美しい。

4曲目「ワンス・アポン~」も「ルグラン」作曲の名作で、「ルグラン」のピアノの素晴らしさもさることながら、ここではドラムスの「チェッカレッリ」のバッキングがgood。

7曲目「ブライアンズ・ソング」は、ハイテンポの明るめの曲調で、とてもきらびやかな「ルグラン」のソロが際立っている。
ベース「ベヴィヨン」も骨太なサウンドでアシストし、ドラムス「チェッカレッリ」は、華やかなシンバルワークが、曲のスパイスとして効いている。

8曲目「ヒズ・アイズ~」では、ラフマニノフの曲の様に非常にテクニックを駆使し、装飾音符の多い、そして重厚なピアノアドリブがしばらく続き、曲の中盤からは、テンポが上がってピアノトリオ演奏で締めくくられる。

9曲目「アイ・ウォズ~」は、ショパン的な印象を持たせるピアノアドリブで、一寸憂いを帯びた曲調と、逆に音を演奏していないセンス良い「間」が、モノクローム映画の挿入歌的な効果を上げている。

12曲目「パリジャン~」は、ピアノトリオのブルース演奏。
録音が良いアルバムなので、3人の絡みの具合が良く分かる演奏です。

トゥルー・バラード~アーチー・シェップ・カルテット

2007-07-29 00:00:30 | ジャズ・テナー・サックス
「コルトレーン」の後継者の一人であった「アーチー・シェップ」が、ベテランになり、満を持して吹き込んだのが、このアルバムの前作「ブルー・バラード」であり、このアルバムはそのシリーズのセカンドアルバムとして同じメンバーで録音された物なのだが、二番煎じでは無くかなりの名演ですので、今日はこれを紹介したいと思います。

アルバムタイトル…トゥルー・バラード

パーソネル…リーダー;アーチー・シェップ(ts)
      ジョン・ヒックス(p)
      ジョージ・ムラーツ(b)
      アイドリス・ムハマッド(ds)

曲目…1.ザ・スリル・イズ・ゴーン、2.いそしぎ、3.エヴリシング・マスト・チェンジ、4.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ、5.ラ・ロジータ、6.ネイチャー・ボーイ、7.イエスタデイズ、8.コートにすみれを

1996年12月7日 NYクリントン・スタジオにて録音

私個人的に大好きな2曲目「いそしぎ」ですが、うぅーんとても良い演奏です。
とにかく演奏の聴かせ所のバランスがとても良い演奏ですねぇ。
シェップはマイナーバラード調のこの曲をセンチメンタリズムに染めずに、前半は控えめに押さえたトーンで、そして後半はハードボイルドに決めた演奏で吹いているところは「ギザカッコヨス」です。
「ヒックス」と「ムラーツ」のバッキングも完璧で、彼等のソロパートも決め捲りで、文句無しの1曲でしょう。

4曲目「ヒアズ・ザット~」は、非常にスローなテンポを採用して、「シェップ」はじっくり聴かす様に吹くのだが、音色はあえて甘くせず、はっきり言うと「塩辛い音色のトーン」で渋く吹き切る。
正しく背中で語る男の哀愁バラード、セピアカラーの映画のワンシーンのようだ。
ここでも「ヒックス」のシングルトーン、的確なピンポイントな伴奏でサポートする「ムラーツ」、そしてシンバルワークが上品な「ムハマッド」、皆カッコイイ!

オープニング曲「ザ・スリル~」も4曲目の様に「塩辛トーン」系の音色で吹くが、アドリブで随所に「いななき」を入れている所は、「シェップ」らしい決意表明と見た。
「ムハマッド」と「ヒックス」、そして「ムラーツ」の、空間を活かしたタイム・キーピングも見事と言う他は無い。

5曲目「ラ・ロジータ」…この曲も大好きだ!!
原曲の哀愁のメロディ…いつまでも聴いていたい。
「シェップ」が、カデンツァに入ってからは、正統的な4ビートでとてもブルージーに吹き上げる。
ピアノ・トリオの3人も、中途から「レッド・ガーランド」トリオの様に、ブルース魂を表に出した演奏で、「シェップ」をサポートし盛り上げる。

6曲目「ネイチャー・ボーイ」では、ラテン調のメロディで、アルバム構成にアクセントをつけている。
ここでは特に「ヒックス」のピアノソロが秀逸。
このラテン調にジャストマッチの見事なソロで、とてもロマンティックな名演に仕上げている。

3曲目「エブリシング~」では、「泣き」の「シェップ」の演奏が胸を討つ。
「シェップ」は「泣き」だが、「ムハマッド」と「ムラーツ」はハードな「漢」っぷりな演奏をする。
そして「ヒックス」は控えめでいじらしい「女」だ。
交錯した人間模様を彷彿させる、活劇的な演奏だ!!!

7曲目「イエスタデイズ」では、このアルバムで一番「シェップ」がハードにソロ吹いている曲で、バックの3人も積極的にアドリブをかます。
ことにベース職人「ムラーツ」のドライヴィングは抜群に冴えている。

8曲目「コートにすみれを」…あまりにも「コルトレーン」の名演が有名だが、弟子である?「シェップ」は「師匠・先生」とは異なったアプローチで勝負する。
曲初は、「ヒックス」のピアノソロで先導され、「シェップ」はそのメロディに伴奏の様に色付けをして行く。
しかし途中から、アルバムのラストナンバーに相応しく、メンバー全員の気持ちも高揚して、「シェップ」もうねりのあるフレーズを吹きトランス状態に入って行く。
ここら辺りでは、「師匠・先生」の面影が演奏にチラついて来るのが、かえってお洒落な所か。
終盤では「ムラーツ」も気合を込めたソロを演じ、「ムハマッド」のブラッシング・ワーク演奏も良い。

魅惑のラテンヴォーカル…「dos」~ミリアム・エルナンデス

2007-07-27 23:39:37 | ラテン・ヴォーカル
今から16~7年前のアルバムであるが、チリ出身の女性シンガー、「ミリアム・エルナンデス」が出した、セカンドアルバムが、今日紹介させて頂く「dos」である。

アルバムタイトル…dos

シンガー…ミリアム・エルナンデス

曲目…1.危険な愛、2.私のもの、3.そうじゃないの、4.知っていたわ、5.あなたのすべて、6.彼に似ているの、7.傷、8.ずっと同じ人生、9.おばかさん、10.もう絶対にあなたを愛さない

演奏曲(歌)について…まず、超トップヘヴィだが、1曲目「危険な愛」はラテンミュージック随一と言えるぐらいの、名旋律のラブバラードである。
大袈裟だが、この1曲だけで、このアルバムは絶対に「買い」である。
胸を締め付けられそうな哀愁の曲調に、「エルナンデス」の声質、歌い回しもベストマッチしていて、マジに苦しい恋愛の歌に乙女心が張り裂けそうです。

7曲目「傷」は、1曲目に次いで心の琴線に触れる名曲で、スペイン後で傷=(エリダ)と言う、曲中のリフレインの歌詞で覚えてしまえるほど、耳に残る旋律が良い曲です。
しかし、「エルナンデス」、本当に良い声です。
色気、かわいさ、吐息、ブレスの全てが魅力的な天性の「声」の持ち主です。
そして、歌もまずまず上手いので、何回聴いていて飽きません。

9曲目「おばかさん」…これもすごく良いんですよ~。
1曲目、7曲目と並べて御三家を形成したい名旋律で、彼女が一番切なさを込めた歌い方をしていて、情感を込め捲ります。
前説の吐息やブレスの表現が最も活かされた曲でしょう。

3曲目「そうじゃないの」は、70年代いや、80年代のJ-POPに良く似た曲調の佳曲で、分かり易く言うと、当時の「ニュー・ミュージック」です。
似た感じの曲調としては、「工藤静香」が歌っていそうなイメージの曲です。
いずれにせよ、非常に日本人に親しみ易いメロディがgoodです。

4曲目「知っていたわ」は、語りにウェイトを置いたバラード曲ですが、サビの熱唱は更に良いです。
こんな風に彼女に耳元で歌われたら昇天する輩はかなり多いはず。

5曲目「あなたのすべて」は、90年代に流行ったJ-POP調のバラードで、1曲目等の辛く苦しい歌詞よりは、幾分前向きな歌詞の内容で、その分メジャーな曲に仕上がっています。
誰に似ているか、しいて言えば「宇多田ヒカル」が書くラブバラードが似た感じでしょうか。

2曲目「私のもの」は「エルナンデス」の歌唱力の良さを上手く引き出した曲で、語りのパートと、フォルテ(フォルテシモ)で絶唱するパートの対比が素晴らしいバラードです。

6曲目「彼に似ているの」も、まんま80年代J-POP調で、アーティストで言うと、「竹内まりや」とか「今井美樹」っぽい感じの、ちょっと悲しい、でもちょっと前向きに生きて行こう的な感じの曲です。

8曲目「ずっと同じ人生」、は「女性版チェッカーズ」つまり昭和歌謡の様な曲調が楽しいです。

バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル~ドナルド・バード

2007-07-26 23:47:38 | ジャズ・トランペット
伝説のレーベル、「トランジション」に吹き込んだ「ドナルド・バード」のワン・ホーン傑作アルバムを紹介しましょう。
是非、ハードバップの名演を聴いて下さい。

アルバムタイトル…バード・ブロウズ・オン・ビーコン・ヒル

パーソネル…リーダー;ドナルド・バード(tp)
      レイ・サンティシ(p)
      ダグ・ワトキンス(b)
      ジム・ジターノ(ds)

曲目…1.リトル・ロック・ゲッタウェイ、2.ポルカ・ドッツ・アンド・ムーンビームス、3.ピープル・ウィル・セイ・ウィア・イン・ラヴ、4.イフ・アイ・ラヴ・アゲイン、5.ホワッツ・ニュー、6.星影のステラ

演奏について…2曲目「ポルカ・ドッツ~」のバラードは稀な名演。
「モーガン」の「アイ・リメンバー・クリフォード」を思い起こさせる様な、ブリリアントで叙情性溢れる音色で、「バード」が、美しいソロを吹き切っています。
中途での「サンティシ」のピアノソロも、好アシストをしていて、アルバム1の聴き物に仕上げています。

5曲目「ホワッツ・ニュー」は「バード」抜きのピアノトリオ演奏ですが、2曲目に並ぶ高水準の演奏です。
ここでは、主役はビッグネイムの「ワトキンス」で、太い音だが渋さを併せ持ち、
ベースでしっかりとメロディ&アドリブを弾いて「サンティシ」の礼節を弁えたピアノソロと、見事な融合を見せています。

オープニング曲「リトル~」とエンディング曲「星影のステラ」は、どちらも「バード」がオープントランペットの魅力を充分に見せる演奏です。
ミドルテンポに乗って、リズムセクションの二人「ワトキンス」「ジターノ」は、タイムキープに終始して、「サンティシ」はブロックコードをメインにして、「バード」の後押しを3人が徹底している。
リーダーを立てるカルテットの結束の勝利と言ったところかなぁ。

3曲目「ピープル~」は「バード」抜きのピアノトリオ演奏で、イントロのラテンチックな序奏からすると、まんま「ガーランド・トリオ」のコピーの様な演奏振りだが、本家に劣らず中々素晴らしい演奏です。
「サンティシ」と言うピアニスト、正直このアルバム以外であまり聴いた事がないのですが、かなりの実力者のようですね。

4曲目「イフ・アイ~」は、「バード」がミュートプレイでハードバップを演っていますが、静かなミュートではなくて、「ガレスピー」のミュートプレイに似た明るい感じです。
あくまでも推測ですが、この曲はオープントランペットでは、アイドル「クリフォード・ブラウン」が名演奏を遺していますので、「バード」は同じ土俵では勝負したく無かったのかもしれません。
しかし、燻し銀のミュートでは無く、新品銅色の様な派手ではないが、明るさも持っているミュート音での演奏も良いですね。

イ・ムジチ合奏団のヴィヴァルディ四季中の「四季」アーヨ盤

2007-07-25 23:39:00 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日も何か恥ずかしい様な、クラシック入門名盤のベスト10に入りそうなアルバム紹介で恐縮ですが、「イ・ムジチ合奏団」の演奏しているヴィヴァルディの「四季」の中で、一番の名演では?と思うのが、「フェリックス・アーヨ」の2度目の録音(1959年盤)のこのアルバムです。

アルバムタイトル…ヴィヴァルディ協奏曲集「四季」作品8
 
演奏者…イ・ムジチ合奏団 
    フェリックス・アーヨ(vl)

曲順…1.協奏曲第1番ホ長調 RV269「春」
   ①アレグロ、②ラルゴ、③アレグロ
   2.協奏曲第2番ト短調 RV315「夏」
   ④アレグロノンモルト、⑤アダージョ、⑥プレスト
   3.協奏曲第3番ヘ長調 RV293「秋」
   ⑦アレグロ、⑧アダージョモルト、⑨アレグロ
   4.協奏曲第4番ヘ短調 RV297「冬」
   ⑩アレグロノンモルト、⑪ラルゴ、⑫アレグロ

1959年4月29日~5月6日 ウィーンにて録音

演奏について…イ・ムジチ合奏団は、過去5回?四季を録音しているらしいのだが、私が持っているアルバムは、この「アーヨ盤」2度目の録音と、「ミケルッチ盤」、「カルミレッリ盤」の3枚だけであるが、全体像を一言で言うと、この盤での演奏が一番ゆったりとしたスローテンポで、じっくり聴かす演奏になっている。

この盤と比べると、「ミケルッチ盤」「カルミレッリ盤」共々、スピーディで軽やかな演奏であり、(新録音の度に演奏時間が短くなっているよう)聴き易いと言えばそうとも言えるが、やはりこれだけの技量の、世界的な合奏団が弾くのであれば、ヴィルトオーゾで重厚感溢れる、この盤の様な演奏の方が、イ・ムジチの品格を上げるのではないかと思う。
更にこの盤の特徴としては、曲調の対比の描き方が顕著で、演奏も最も叙情的である事が挙げられる。
つまり「四季」と言う表題を描き、演奏する事に一番近づいた演奏だとも言えるだろう。

各パートの詳細で言うと、最もこの盤で良いのは、緩楽章、つまり「アダージョ」のパートである。
「夏」の2曲目⑤や、「秋」の2曲目⑧がそのパートである。
取分け「秋」の⑧のピアニシモの演奏表現は素晴らしい出来映えです。

それから「春」に次ぐ有名曲「冬」の第1曲⑩は、このアルバム随一と言えるほど、知情意のバランスが完璧な演奏で評価◎です。
⑪⑫の演奏も抜群に良いので、「四季」4曲の中では、とにかく「冬」がベストの演奏でしょう。

次いでは上記のアダージョが素晴らしい、「秋」、次点が「夏」でしょうか。

最も有名な「春」は、ゆったりリズムで叙情的に仕上げている事が逆に仇になっているのが、チト残念です。
何故なら「春」はやはり軽やかな方が、より「春」らしいので、この楽章に限っては、個人的には「ミケルッチ盤」に軍配を上げたいですね。

しかし、それは非常に個人的な感想ですし、また、録音も1959年だが、それ程悪くはないので、万人にお薦めできる「ヴィヴァルディ」の「四季」の好アルバムです。

伝説の女性シンガー、ジャニス・ジョップリン~グレイテスト・ヒッツ

2007-07-24 23:33:26 | ロック
わずか3年の活動期間だったが、ロック女性ヴォーカル史上に燦然と輝く一等星、それが今日紹介する「ジャニス・ジョップリン」です。
おりしもジャズがフリー時代の全盛期、そして「コルトレーン」亡き後「電気マイルス」がまたジャズシーンを牽引していた、そんな時代に彼女は太く短く生きました。
そんな彼女のベスト盤的名盤を是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…グレイテスト・ヒッツ

アーティスト…ジャニス・ジョップリン(vo)

曲目…1.心のかけら、2.サマータイム、3.トライ、4.クライ・ベイビー、5.ミー・アンド・ボビー・マギー、6.ダウン・オン・ミー(ライヴ)、7.愛は生きているうちに、8.バイ・バイ・ベイビー、9.ジャニスの祈り、10.ポールとチェーン(ライヴ)、11.メイビー、12.ベンツが欲しい
※11、12は、ボーナス・トラック

演奏(歌)について…まずこのブログを閲覧している方の多くはジャズ好きかと思いますが、是非2曲目「サマー・タイム」の絶唱を聴いて下さい。
原曲を大胆に崩し、哀愁漂うエレキギターの調べに乗って、「ジャニス」のハスキーヴォイスが縦横無尽に旋律を駆け巡ります。
歌の上手さ(技巧、テクニック)は言うに及ばず「すごい!」の一言ですが、この歌の真骨頂は、ずばりスピリットに有ります。
彼女は多量のヘロイン使用による突然死(事故死)で亡くなっているのですが、ここで聴くことができる歌は、正しく命を削った絶唱であり、彼女の一曲の歌に賭ける思いが、ストレートにそしてズシリと重く伝わって来ます。
まるで、近い将来、自分に訪れる「不幸」を暗示している、言わば「白鳥の歌」になっているのです。

それから、彼女の代表曲の一つ、9曲目「ジャニスの祈り」は、彼女のロックシンガーとしての実力、それから、「あややの午後の紅茶」で耳にした事のある曲なので、皆さんもとても理解し易く、体でリズムを刻む事間違いないでしょう。
サイケデリックな時代の、とてもストレートなヴォーカル、シャウトを堪能して下さい。

全米ナンバー1を獲得したメガヒット曲5曲目の「ミー・アンド~」ですが、彼女のもう一つの魅力、幼き頃から身に付いたフォークソング魂、つまり「本格的ブルース・シンガー」としてエネルギーが集約された、面目躍如の1曲です。
曲調も然ることながら、リズムへの乗り、程好いシャウト、チョット翳りのある部分と、あっけらかんとした南部気質の両面が、上手くミックスされた歌唱です。

1曲目の「心のかけら」は、圧倒的な、ど迫力ヴォーカルに、ど肝を抜かれること請け合い。
ここで歌われる歌は、一聴すると白人女性シンガーには聴こえないぐらいのパワフルさと、絶叫シャウトに、誰しもKO負けを食らう。

他の曲も短かった彼女のレコーディングにおいては、どれも聞き逃してはいけない物ばかりです。
今宵は、激しいヴォーカルで燃えましょう&泣きましょう。

ソウル・ミュージックも良いんでないの!スティービー・ワンダー~ジャングル・フィーバー

2007-07-23 23:37:04 | ポップス・ソウル
今日はブラック・コンテンポラリー、ソウル・ミュージックを聴きましょう。

「スティービー・ワンダー」と言えば、10代から天才の名を欲しいままとして、モータウンサウンドに「インナービジョンズ」や「キー・オブ・ライフ」など、60年代後半から、70年代に架けて、数々の名盤を輩出して、80年代にも歴史的傑作「イン・スクエア・サークル」を世に出し、世界中から多くのディスク賞を受賞しています。
ところが、今日紹介するアルバムは、映画のサウンド・トラックとして、出したと言う事もあるが、彼のアルバムの中では、正直過小評価されている。
サウンド作りで言うと、「打ち込み」が多い事や、映画自体もあまりヒットしなかった事も要因であろうが、改めて聴いてみると…それ程悪くない。
いや、率直に言って、かなり良いアルバムだ。
ですから、今日はこの盤で行きましょう。

アルバムタイトル…ジャングル・フィーバー

スティービー・ワンダー

曲目…1.ファン・デイ、2.クイーン・イン・ザ・ブラック、3.ジーズ・スリー・ワーズ、4.イーチ・アザーズ・スロート、5.心の傷跡、6.ガッタ・ハヴ・ユー、7.君の愛を信じて、8.ジャングル・フィーヴァー、9.アイ・ゴー・セイリング、10.ケミカル・ラヴ、11.キャンドルに灯をともし…

演奏について…お薦め曲のナンバー1は、非常に渋いバラードだが、7曲目「君の愛を信じて」は、アコースティックな編曲に、「スティービー」の哀愁を帯びたロマンティックな曲調と、バックを彩るオーケストラの弦楽器群もとても良い効果をあげていて、感動的な1曲となっている。

同じくスローバラードの3曲目「ジーズ・スリー・ワーズ」、エレクトリックピアノだが、非常にリリカルで優しい歌い方の「スティービー」の美声、最高だ!!
こんなメロディを書ける男、心優しきコンポーザー&シンガー、やはり「スティービー」は唯一無二のミュージシャンですね。

2曲目「クイーン・イン~」は、正しく「ジス・イズ・ザ・スティービー・ワンダー」たる1曲で、彼の真骨頂が満載の名曲。
曲調や曲構成が、かつての「アズ」を思い起こさせる渾身の一曲です。

9曲目「アイ・ゴー・セイリング」は、名作「イン・スクエア・サークル」に収められた名曲「オーヴァー・ジョイド」を彷彿させるとても美しい曲で、ブラック・コンテンポラリーのバラードとはこう言う物と代弁している様です。

11曲目「キャンドルに…」は、歌詞的には結婚式に使用したら良いのか?それとも二人の愛を再確認するために結婚記念日に聴いたら良いのか?不可思議な気持ちにさせられるが、いずれにせよ、とてもメロディアスな佳曲には相違ない。

このアルバムで最初にシングルカットされたのは、6曲目の「ガッタ・ハヴ・ユー」で、打ち込みとギター・カッティングを中心にした曲調だが、「スティービー」の高音域を活かしたヴォーカルのおかげで、良い曲に出来上がっている。

オープニング曲「ファン・デイ」やタイトル曲「ジャングル・フィーバー」は、とてもポップで楽しい曲。
打ち込みが主だが、バックのコーラス、掛け声の効果が絶大で、両曲共とてもダンサブルな曲に仕上げた。

ジャズ狂信者に入信するかい?ザ・ワールド・オブ・セシル・テイラー

2007-07-23 00:05:59 | ジャズ・ピアノ・コンボ
大分前になりますが、「チャールス・ロイド」リーダーアルバム、「フォレスト・フラワー」で、ジャズ狂への扉を開けましたが、その後踏み出してはいませんでした。
そこで、今日は扉から3歩中へ入ってみたい方に、このアルバムを紹介しましょう。

アルバムタイトル…ザ・ワールド・オブ・セシル・テイラー

パーソネル…リーダー;セシル・テイラー(p)
      ブエル・ネイドリンガー(b)
      デニス・チャールス(ds)
      アーチー・シェップ(ts)

曲目…1.エアー、2.ジス・ニアリー・ウォズ・マイン、3.ポート・オブ・コール、4.E.B、5.レイジー・アフタヌーン

1960年11月19日録音

演奏について…セシル・テイラーと言う人は、フリージャズ系ピアニストの最高峰ですが、ピアノを「一打楽器」として性能の全てを発揮させる様な演奏をします。
ですから、フリージャズと言っても、実はそんなに騒がしく、狂乱演奏には聞こえません。
クラシックの新ウィーン学派、「ウェーベルン」や「シェーンベルグ」の曲を聴く方にとっては、案外なじみ易いのでは?と思います。

特にピアノトリオで演じられる2曲目「ジス・ニアリー~」は、非常に良い曲で、パーカッシブな「テイラー」のピアノ演奏が曲のそこここに見られますが、ベース「ネイドリンガー」と、ドラムス「チャールス」は、非常にベーシックな4ビートのリズムを刻み、そのリズムの中を「テイラー」が自由だが、かなりメロディアスなアドリブを弾いて、ピアノトリオの醍醐味が味わえる名演です。

逆に4曲目「E.B」は、フリー系の演奏としては、このアルバムの白眉だろう。
「ネイドリンガー」の超高速ベースライン演奏と、シンバルワークをメインとしつつ、時々空間的自由なソロをかます「チャールス」のドラムにサポートされた「テイラー」が、縦横無尽にピアノを弾き捲る。
時には低音域をメインに重厚さを出し、時には高音できらびやかで軽やかに蝶が舞うが如く演奏する。
テンポも超高速調から、静寂を思わせる低速まで、正に自由自在だ。

ラスト曲の「レイジーアフタヌーン」は、このアルバムで、スタンダードジャズ好きには、最もお薦めの1曲。
「シェップ」の演奏はミドルテンポのフリー係ったバラード的な演奏で、崩したブロックコードの「テイラー」は、まるで進化した「モンク」の様です。
リズムの二人は、オープニングから変わらず、礼節を重んじたシンプルな演奏で縁の下の力持ちに徹していて好ましい。
後半の「テイラー」のアドリブソロは圧巻、変則だがどことなくメロディアスで、やはり天才のなせる技であろうか。

3曲目「ポート・オブ・コール」も、やや高速調のテンポだが、リズムの二人は、非常に常識的なタイムキーピングに徹し、時折のソロも決してぶっ飛んではいない。
「テイラー」はここでも、ピアノをメロディ楽器ではなく、メロディを出せる「打楽器」として使用して、独自の境地を展開する。

1曲目「エアー」は、「シェップ」の初録音と言うこともあり、フリーと言っても演奏&アドリブに初々しさが残っており、そう言う意味では、「コルトレーン」や「ドルフィー」の後期アルバムの方が、よりフリー演奏に近いかもしれない。
「テイラー」の演奏は、一聴してアグレッシブだが、決してメチャクチャに弾いてはいない。
少し冒険したジャズカルテットぐらいの軽いつもりで聴いてOKです。

ジャンル違えど…昨日のピアノとは対極の演奏。レイ・ブライアント~アローン・アット・モントルー

2007-07-21 23:57:36 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
このアルバムは、ジャズ・ピアニストの中でも、特にブルージーで、且つロマンティックな演奏を得意にしている、「レイ・ブライアント」が、スイス、ジュネーブで行ったソロピアノ演奏を収めたライブ盤です。

クラシックでありながら、非常にエキサイティングでパワフルな演奏だった昨日の「リヒテル」とは対極に位置する様な演奏で、寛ぎと平穏、慈愛に満ち溢れていて、少しアクセントとして、ブルース・フィーリングを纏わせた美しい(ジャズ)ソロピアノ演奏です。

アルバムタイトル…アローン・アット・モントルー

         レイ・ブライアント(p)

曲目…1.ガッタ・トラヴェル・オン、2.a.ブルース#3、b.柳よ泣いておくれ、3.クバノ・チャント、4.ロッキン・チェア、5.アフター・アワーズ、6.スロー・フレイト、7.グリーンスリーヴス、8.リトル・スージー、9.別れのときまで、10.ブルース#2、11.“愛の夢”ブギー

1972年 スイス モントルー・ジャズ・フェスティバルにてライブ録音

演奏について…オープニング曲「ガッタ~」で、ブギウギ調のリズムでライトなブルースから、演奏を始めるところなんざぁ、「ブライアント」憎いね~この男。
聴衆もこの1曲で、「ブライアント・ワールド」へ即座にトリップさせられる。

2曲目「ブルース#3と柳よ~」のメドレーだが、このスローブルースは全然土臭くなく、非常に寛ぎが感じられる。
「ブライアント」も高音域を上手く使い、あっさりと軽くアドリブを仕上げている。

3曲目「クバノ・チャント」は「ブライアント」のオリジナル曲と言うこともあり、このアルバムの中では、比較的パワフルに、低音域にウェイトを置いた演奏ですが、アドリブフレーズ自体は遊び心もあり、重いイメージにはしていない。

この後、本人のナレーションも録音されていて、真面目な曲紹介をしている。
そして「ロッキン・チェア」は、非常に肩の力の抜けた、寛ぎの極地的演奏で、聴衆はマジに癒されていますぜ。

「アフター・アワーズ」は、またまたライトなブルースだが、この演奏では左手の使い方、リズムの取り方が抜群に上手い!

6曲目「スロー・フレイト」も左手のリズムがブルースフィーリングを醸し出し、右手は自由にお洒落なフレーズを右往左往する。
この曲辺りが、このライブにおける「ブライアント」の精神力がピークに達しているかも。

「グリーン・スリーヴズ」は、クラシックの名曲だが、ここでの演奏はとても静かで、静寂のメロディ(矛盾?みたいだな)を演奏している。
とても美しい演奏です。

「リトル・スージー」では、余裕と寛容さを全面に打ち出した演奏で、アドリブにも、かなり遊び心が出てきて、良い感じです。

この後3曲はアンコール曲だが、「別れのときまで」は哀愁のメロディに「ブライアント」のリリカルな解釈、アドリブソロが加わった、超名演でしょう。
軟弱で乙女心一杯の私は、この演奏(曲)が、このライブ中ベスト1だと思う。

チャイコフスキー・ピアノ協奏曲 第1番変ロ短調 リヒテル(ピアノ) カラヤン/ウィーン交響楽団

2007-07-20 23:39:49 | クラシック交響曲・管弦楽曲・協奏曲
今日紹介のこの盤は、クラシックのピアノ協奏曲の中でも、人気・知名度ともおそらく1番ではなかろうか?と言う名曲であり、それを演奏しているレコードの中で最も評価を受けているアルバムです。

言わば、名曲の名演盤として、揺ぎ無い地位を確保しているアルバムなのです。

アルバムタイトル…チャイコフスキー・ピアノ協奏曲 第1番変ロ短調
 
パーソネル…スヴァトスラフ・リヒテル(ピアノ) 
      ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)
      ウィーン交響楽団

演奏について…第1楽章の、冒頭の有名なピアノソロ演奏から、ものすごいパワフルな和音で「リヒテル」が弾く。
言わばこの演奏に対しての一種の「決意表明」がなされると、受ける「カラヤン」&「ウィーン響」も、それ以上に、非常にアグレッシヴなパワー演奏で応える。
「リヒテル」のパワー系演奏は、何ら珍しくは無いが、「カラヤン」がこの様にいきり立って、ソリストの真っ向勝負を受けることは極めて稀なので、そう言う意味では、とても貴重な演奏が収められているのは確かです。

第2楽章では、緩やかさと寛大さに満ち溢れた、とてもゆったりした悠久の時が流れるかの様な緩楽章が演奏される。
「リヒテル」はロマンティックだが、ロシアの土着性気質も充分感じる事が出来る、非常に「チャイコフスキーらしい」御国演奏をする。
「カラヤン」はいつもの洗練されたオーケストレーションと言うより、後期ロマン派としてのチャイコフスキーと捉えて、雄大なシンフォニック演奏で「リヒテル」をアシストする。

第3楽章で、「リヒテル」が、再度パワフル・ピアノに戻ると、「カラヤン」も又、パワフル・オーケストレーションで返す。
分かり易く言うと、クラシックのピアノ協奏曲と言う「闘技場」を使用した、サンボ代表の「リヒテル」とキック・ボクシング代表の「カラヤン」が、K1の舞台でガチンコで戦う様な演奏です。

どちらが勝ったかって?

延長戦ドロー、引き分けが結果相応と思うが、もしも優劣を点けるとすれば、ガチンコ勝負に慣れている「リヒテル」が1ポイント・リードを奪って「判定勝ち」と言ったところでしょう。

追伸…オリジナルレコードには、収録されていなかった、ラフマニノフの前奏曲がこのアルバムには5曲入っているのも、「リヒテル」有利の判定に一役買いそうです。

尚、余談ですが、このピアノ・コンチェルトの同曲異演の超名盤としては、①ホロヴィッツ&トスカニーニ盤、②アルゲリッチ&コンドラシン(ライブ)盤の二つを挙げておきます。
この盤と合わせて三つ聴き比べると、チャイコフスキーのピアノ協奏曲1番のすごさが改めて分かります。
しかし、どの演奏もガチンコバトル系なので、一寸疲れるかもしれません。


キューバン・ミュージックをピアノ・トリオで…キエレメ・ムーチョ~スティーブ・キューン・トリオ

2007-07-19 23:48:10 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
スティーブ・キューン・トリオが送る、楽しくてハイ・センスなキューバン・ミュージックを題材とした、ピアノ・トリオ・アルバムが、今日紹介の盤です。

録音も、ヴィーナスレコードのハイパー・マグナム・サウンドにて、ピアノ、ベース、シンバル等の音が粒立ち良く立っている、高品質サウンドです。

アルバムタイトル…「キエレメ・ムーチョ」

パーソネル…リーダー;スティーブ・キューン(p)
      デヴィッド・フィンク(b)
      アル・フォスター(ds)

曲目…1.そよ風と私、2.ベサメ・ムーチョ、3.いつも私の心に、4.デュエルメ、5.キエレメ・ムーチョ、6.君なしでは

2000年2月20日

演奏について…まず、馬鹿の一つ覚えですが、2曲目「ベサメ・ムーチョ」は、とても良い演奏ですねぇ。
いかにも21世紀の「ベサメ~」と言って良いような、かなり高速調のテンポで、「キューン」のアドリブメロディがとてもハイ・センスで、キューバン・ミュージックを素材としながらも、ジャズ・ピアノ・トリオの最良部を見せ付けられる演奏です。
「キューン」は、曲の中途では、「ティコ・ティコ」や「ハバネラ」のフレーズをアドリブ演奏で挿入している弾いている所などは、微笑ましい限りです。
それを受ける超絶ドラマー「フォスター」のスティックさばきも華麗で、「キューン」との絡みも絶妙です。

これと甲乙点け難い双璧の演奏は、6曲目「君なしでは」で、この演奏の序盤の主役は、ズバリ、ベースの「フィンク」です。
ここでの「ベースアドリブソロ」は、とにかくすごいの一言!!
この曲でのトリオ演奏解釈を端的に説明すれば、「キース・ジャレット・(スタンダーズ)トリオ」の名演にソックリですね。
後半の「フォスター」のドラムソロも、抜群のドライヴィング推進力で、3人の演奏世界に引きずり込まれる。
哀愁のピアノアドリブソロも傑出していて、演奏の起承転結も完璧で、個人的にはベスト・チューンに挙げたい名演。

3曲目「いつも私の心に」は、ミドルテンポのラテン調バラードで、とにかく「キューン」の紡ぐメロディがロマンティックで、「フィンク」もメロディアスなベースソロを刻み、「フォスター」はシンバル演奏に終始して、二人をサポートしています。

タイトル曲、5曲目「キエレメ・ムーチョ」は、「寛ぎ」第一の演奏。
「キューン」はシングルトーンを中心に、原曲のメロディを尊重しながら、優しきアドリブソロを展開する。
「フォスター」は、空間を活かしたラテンメロディのリズムを刻み(敲き)続ける。
「フィンク」は上品に、ベースラインを引き続ける。
3人は、単純の様でいて、とても奥深い名演奏に仕上げた。

1曲目「そよ風と私は」ワルツラテンリズムに乗って、3人のコラボレーションが見事な調和を見せる。
スタートから心を鷲掴みする、オープニング曲に相応しい秀演。

4曲目「デュエルメ」は、「フォスター」の超絶技巧ドラムスのすごテクに、KOされる事必至!!
「キューン」「フィンク」もぶいぶい言わしながら、曲を弾いて颯爽と駆け抜けるスポーツ・カーの様な快演です。

ライブ・パフォーマンス…アローン・トゥゲザー~ジム・ホール&ロン・カーター・デュオ

2007-07-18 23:36:02 | ジャズ・ギター
聴衆がおそらくお酒を飲みながら寛ぎのジャズ・ライブを堪能する…。
このアルバムは、こう言うシチュエーションで録られた、ニューヨークの「プレイ・ボーイ・クラブ」でのライブ録音である。
演奏しているのは、稀代の名手二人…白人ギタリスト、「ジム・ホール」とベースの巨人「ロン・カーター」である。
一聴して頂ければ、このデュオアルバムの良さはすぐに分かります。

では詳細を説明します。

アルバムタイトル…「ジム・ホール…ロン・カーター・デュオ」

パーソネル…ジム・ホール(g)
      ロン・カーター(b)

曲目…1.セント・トーマス、2.アローン・トゥゲザー、3.レシート・プリーズ、4.四月の思い出、5.朝日の如くさわやかに、6.フーズ・ブルース、7.プレリュード・トゥ・ア・キッス、8.枯葉

1972年8月4日、プレイボーイ・クラブ(NY)でのライブ録音

演奏について…ソニー・ロリンズの名曲「セント・トーマス」から、このアルバムはスタートするが、陽気な曲調に導かれた二人の溌剌としたデュオが聴き物で、グラスの音が所々で聞こえる、聴衆への掴みはOKです。

表題曲、「アローン~」では、渋さの極めの様な演奏で、ハンフリー・ボガードのハード・ボイルド映画の様に、正に男の哀愁が漂う演奏がなされている。

「カーター」のオリジナル曲「レシート・プリーズ」では、二人の輪唱の様なアドリブでの絡みが素晴らしく、取分け作曲者「カーター」は寛容さが溢れ出た名演をしている。

4月の思い出では、「カーター」が太くカッチリとしたベースラインでリズムを固めて、「ホール」は魅惑的で、イマジネイティヴなアドリブを弾いて応戦するが、取分け曲後半の「カーター」のベースソロは、カッコイイの一言で済ませられる程の名演と言えるでしょう。

5曲目「朝日の~」は、ややミドルアップテンポで曲が進み、二人の絡みもいよいよ加熱して来て、特に「カーター」は学者らしからぬ?演奏ファイトを見せ始めるが、「ホール」は知的さと遊び心を兼ね備えた演奏で、エキサイトはせずに、冷静に対処するのが、いとおかし。

6曲目「フーズ・ブルース」は「ホール」のオリジナル曲で、スローテンポのジャズ調ブルース曲。
「ホール」はとてもブルージーでジャジーなソロを弾くのだが、「カーター」がここでは、逆に受け流し気味に、しかしアクセントを作った伴奏とソロをかます。
アルバム収録曲中、最もジャズテイストの濃い名演奏です。

「プレリュード~」は色香漂う、とてもチャーミングな演奏で、クラブに来ている同伴の女性は、ほんのりと酔いがまわり、「ホール」の優しき調べによって益々酔わされて行く。
「カーター」のベース音も優しく体を支えて、悦楽の境地に達するようです。
エンディングのユニゾンで、心が昇天してしまいそう。

終曲「枯葉」は二人の掛け合いが見事で、特に中盤からは、奏でる一音一音がまるで「対話」のように演奏され、ジャズ・デュオの醍醐味を満喫できる。
弦楽器同士ならではの優しさが込められた音色のバトル演奏が、とても心地よい。
個人的に大好きな曲と言うのも有るが、アルバム中ベスト1の演奏だと思います。

かつての幻の名作、アット・ザ・クロス・ロード~ソニー・クリス

2007-07-17 23:45:29 | ジャズ・アルト・サックス
この盤はパーカー直系の、アルティスト、「ソニー・クリス」の初期の傑作として、かつて幻の名盤だった物です。
演奏曲、演奏者とも、いかにもハードバップと言うべきラインナップで、皆さんに感動を与えてくれる事と思います。

アルバムタイトル…アット・ザ・クロス・ロード

パーソネル…リーダー;ソニー・クリス(as)
      オラ・ハンセン(tb)
      ウィントン・ケリー(p)
      ボブ・クランショウ(b)
      ウォルター・パーキンス(ds)

曲目…1.スウィート・ロレイン、2.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ、3.アイ・ガット・イット・バッド、4.シルヴィア、5.朝日の如くさわやかに、6.バッツ・ディライト、7.インディアナ

1959年3月録音

演奏について…まず、ハードバップの模範的な演奏(曲)として、4曲目「シルヴィア」が、一番のお薦め曲です。
序奏の2管ユニゾンのテーマ終了からすぐさま「クリス」の燃えるようなアルトが、歌心充分でパワフルなアドリブを奏でる。
受ける「ハンセン」は、あえてガチンコ真っ向勝負では無く、フレーズがまるで「カーティス・フラー」の様に、琴線を触れる様なメロディアスなフレーズを吹いている。
その後の「ケリー」と「クランショウ」のバッピシュなピアノと、実直なベースの掛け合いも非常に聴き物です。
最後にもう一度ユニゾンに移行して、正しくハードバップの極めでフィニッシュする。
あぁー、「ハードバップ」万歳!!!「ソニー・クリス」万々歳!

2曲目「ユー・ドント~」は「ハンセン」の美しく素晴らしいバラードソロからスタートして、一聴しただけでこのコンボの世界へトリップさせられる。
追従する「クリス」も好フレーズを連発してこのバラード演奏に応戦する。
二人に引っ張られて、バックの3人は静かに、しかしバッピッシュな演奏で、後方支援していて好アシストしています。
誰が何と言っても、この曲に限っては、主役は絶対に「ハンセン」です。

5曲目「朝日の如く~」では、揺らぎのユニゾンが終わってから、「クリス」が烈火のアドリブフレーズでバリバリ吹いて皆を煽る。
「ケリー」は余裕のアドリブソロで(受け流す様に?)応える。
その後の「ハンセン」がすごテクでぶいぶいとトロンボーンを吹き切るのが、感涙物。
うぅーん、本当に素晴らしい演奏だ。

冒頭「スィート~」は、品良く「ケリー」のイントロから始まるスローブルースで、「クリス」がのっけからパワー全開で気持ちよく吹き切る。
「ケリー」のソロは、余裕の有るカデンツァで、遊び心や寛ぎ感も持った演奏です。この曲はワンホーンで終始する。

「クリス」のオリジナル、6曲目「バッツ~」は、高速調の曲で、リズムの二人「クランショウ」と「パーキンス」が高速タイムキーピングに徹した中、「クリス」「ケリー」「ハンセン」もセンス良いアドリブを演じる。
中途でチラ見せする、「クランショウ」のソロと「パーキンス」のソロも、中々良い出来です。

3曲目「アイ・ガット~」は「クリス」がかなり控えめだが、芯の通ったアルトでバラードを吹く。
「ケリー」も「クリス」の提示を崩さない様に、あえて控えめなソロで受ける。
この曲もワンホーン演奏で、短い曲だが素晴らしい好演です。