紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

我が友人に捧ぐ…エリック・ドルフィー~アザー・アスペクツ

2008-06-02 21:11:24 | エリック・ドルフィー
こんばんわ。
痛風とお友達の(笑)「えりっく$Φ」です。
さて、今日のアルバムは友人に捧げると言っても、痛風では有りません。
良くブログに遊びにいらして下さる友人に捧げたくてセレクトしました。
何故ならば、その友人が今「エリック・ドルフィー」と言うアーティストに心酔されていらっしゃるとの事で、(「ドルフィー」の渋くて無名のアルバム)を紹介したいと考えた訳です。

では…詳細に行きましょう。

アルバムタイトル…アザー・アスペクツ

パーソネル…1.ジム・クロウ~エリック・ドルフィー(b-cl、as、fl)Unknown(vo、p、b、perc)2.インナー・フライト♯1~エリック・ドルフィー(fl)、3.ドルフィー’N~エリック・ドルフィー(as)、ロン・カーター(b)、4.インナー・フライト♯2~エリック・ドルフィー(fl)、5.インプロビゼーション・タクラス~エリック・ドルフィー(fl)、ジナ・ラリ(tablas)、ロジャー・メイソン(tamboura)

曲目…1.ジム・クロウ、2.インナー・フライト♯1、3.ドルフィー’N、4.インナー・フライト♯2、5.インプロビゼーション・タクラス

原盤…BLUE NOTE  発売…輸入盤
CD番号…CDP-7-480412-2

演奏について…1曲目「ジム・クロウ」…「ドルフィー」のバス・クラリネットの一撃から曲が始まると、まるでお経の様なアルト音程で女性の歌唱が始まる。
その後に、無音部分の多いピアノ伴奏が…(まるでゆっくり弾いている「ドビュッシー」だな???)曲の鎹(かすがい)に収まる。
「ドルフィー」はソロでインプロヴァイズの境地的なアグレッシブな演奏を演る。
中間部からの展開は、「バルトーク」の鋭利な表現に良く似ている。
高尚な現代音楽がなされていて…その後、おどろおどろしい「ドルフィー」演奏が発展して行く。
しかし…良く聴くと非常にメロディアスなんですよ。
ブラッシュで進行するドラムス…(名前は分らない)…と、実直でハードなベース音(これも名前不明)そして、正統的なジャズ・ピアノ(ついでにこいつも名無し)のトリオが、叫び嘶く「ドルフィー」のバス・クラリネットの一所懸命吹きを、しっかりとガッツリとアシストします。
それと同時に女性は摩訶不思議なスキャットで…異空間へと聴衆をトリップさせて…「ドルフィー」との掛け合いは、正しく幻想的な異次元そのもの。
そしてエンディングは、とてもこの世の音楽とは思えない、ヴォーカルとピアノ、パーカッションに「ドルフィー」が加わり、ミックスされて…混沌としたカオスが構築されるんです。
最後の一吹きは、全てを浄化した、美しいフルート演奏で、「ドルフィー」自らが締めくくります。
恐ろしくも美しい1曲です。

2曲目「インナー・フライト♯1」…「ドルフィー」の美しくて、神々しいフルート・ソロから曲が始まります。
いや、この曲はソロ演奏なのです。
その天上の音楽で、終始曲を吹き上げるので、知らず知らずの内に「ドルフィー」の天国的な美園に誘われます。
気付いたら、もう廻りはお花畑と、紋白蝶が舞っているんです。

3曲目「ドルフィー’N」…とてもハードで重厚なベース演奏の「ロン・カーター」と、アルト・サックスでシャウトする「エリック・ドルフィー」が繰り広げるバトル・デュオ演奏が、とにかく素晴らしいんです。
「ドルフィー」のアドリブは過激で有りながら、とてもメロディアスで…この辺が彼が単なるフリー系ジャズ・アーティストと一線を画する所以でしょう。
過激でメロディック…言うなれば、五月蝿いのと心地良いのとの境目で曲を作り、演じているんです。
超絶的なアドリブ・コンポーザーでなければ出来ない、このギリギリ・ラインの攻防が、より一層の緊張感と麻薬的な快感を持たせるんでしょうね!!
「カーター」も自身のベスト演奏では?と思える程、ここでの演奏は鬼人と化しています。
学者「ロン・カーター」ではなく、ジャズ界の閻魔様に憑依されている様ですね。

4曲目「インナー・フライト♯2」…まるでクラシックのフルーティストが、無伴奏フルート組曲を演じているのでは?と錯覚を起こさせる程、テクニック、即興性ともに優れた曲&演奏です。
どこまでも心を抉り、そして清々しくさせる天界からの光の様な曲ですね。

5曲目「インプロビゼーション・タクラス」…ここに聴かれる音楽は正しく中東の祈り…いやインド音楽のようです。
「ドルフィー」のフルート演奏は、あえて自身を出さずに、しっかりとヴォーカルの祈り歌を伴奏に終始してサポートに徹します。
しかし、流石「ドルフィー」…終始伴奏で、覚え易そうな単純なメロディをリフレインして、奏でているだけの様に見えて、実は聴けば聴くほど、「ドルフィー」の領域に引き込まれて行ってしまいます。
まるで、蟻地獄に入ってしまう虫か、蜘蛛の糸に囚われてしまった虫の如く…。
しかし、捕まえられるのは、例えて虫の様ですが、なされている音楽は、天国そのものです。
この演奏&曲を純粋にジャズか?と問われれば…ちと違う。。とこ答えるべきでしょうが、不世出の音楽家「エリック・ドルフィー」は、そんな事は全く気にしません。
演られている曲が、クラシカル現代曲でも、宗教音楽であろうと、そんなジャンル、カテゴリー分けは、彼にとって極小さな事なのです。
最後まで聴いていると…本当に心が洗われるんです。
「ドルフィー」の演奏する曲(&演奏)は…もはや普遍であると言っても過言では有りません。
このアルバム自体は、ジャズ史上では傑作として認知されてはいませんが、「ドルフィー」にとっては、そんな評価等どうでも良い事だったと思います。

彼の生前語った有名な言葉に…音楽は一瞬で消えて行ってしまう…と言うのが有りますが、(一瞬で)消え入るからこそ、彼は一音一音を大事にして、一所懸命に吹いたと信じています。
だから、逆に「ドルフィー」の演奏&レコーディングは永遠に不滅なんだと思います。
今宵はマニアックな…でも良く聴くと普遍的なこのアルバムを皆様に…そして何より我が友人に捧げます。      

「ジョージ・ラッセル」フィーチャリング「エリック・ドルフィー」~エズセティックス

2008-05-04 11:23:41 | エリック・ドルフィー
私のブログに遊びに来られている方達が、マイ・ブーム(アワー・ブーム)で最近「エリック・ドルフィー」を聴く機会が多いらしいんですよ。
そこで、今日は「ドルフィー」作品の中でも異色アルバムを紹介しましょう。

まず、アルバム・リーダー:名義人ですが、「ジョージ・ラッセル」が主役なんですが、実際は「エリック・ドルフィー」をフューチャーしているので、「ドルフィー」が(演奏)リーダーと言っても良いと思います。
勿論、演奏の主導権は、バッチリ「ドルフィー」が握っています。
但し、「ラッセル」のアレンジが有るので、自由気ままに?「ドルフィー」が音楽的な飛翔をしている訳では有りません。
ちょこっとビッグ・バンド風なテイストが有って、その枠の中で「ドルフィー」が演るべき事を、思い切り演っているんです。
「ドルフィー」のとってアレンジと言う鎖が、邪魔なのか?それともそれも踏まえた上で、果敢に挑戦しているのか?は聴いてからのお楽しみ…です。

奇才「ジョージ・ラッセル」アレンジの元、絶好調「エリック・ドルフィー」のバス・クラリネットとアルト・サックスの叫びを聴いて下さい。


アルバムタイトル…エズセティックス

パーソネル…エリック・ドルフィー(b-cl、as)
      リーダー;ジョージ・ラッセル(p、arr)
      デイヴ・ベイカー(tb)
      ドン・エリス(tp)
      スティーヴ・スワロー(b)
      ジョージ・ハント(ds)

曲目…1.エズセティックス、2.ナーディス、3.リディオット、4.ソウツ、5.オネスティ、6.ラウンド・ミッドナイト

1961年5月8日 NYにて録音

原盤…RIVERSIDE 9375  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23798

演奏について…最も興味を惹く演奏…ラスト収録の6曲目、かなり俗的だが、「セロニアス・モンク」の書いた永遠のジャズ名曲「ラウンド・ミッドナイト」…これすこぶる良いです。
序奏のアレンジメントは、何か邦楽の様で…ちょっとおどろおどろしくて、一発で興味津々になりますね。
この入り方、非常に個性的で有りながら、「ドルフィー」のアルト・サックスは最初に有名なテーマを吹きます。
「ラッセル」はとても知的にさりげなくピアノでサポートし、「スワロー」の重量級ベースと「ハント」のブラッシュ・ワークも大地に根を生やして、しっかりサポート。
残る二人のホーン奏者「エリス」と「ベイカー」は、間奏でチョイ・サポを演るのみで、「ドルフィー」に全面的にソロを託します。
※実はこれが最高のアシスト・パスになっているんだぁ!
最後はエースに託して、自分たちはチョロチョロ邪魔しない…これが点をとる最高の秘訣?
しかし「エリス」も「ベイカー」のgoodなミュージシャンだけど、やはり、それでも「ドルフィー」とは格が全く違うですよ。
それから「ドルフィー」のアドリブが始まると、スタンダード曲と「ラッセル」のアレンジメントの枠内で、しっかりと縦横無尽に駆け回って、見事なインプロヴァイザーを見せ付けてくれて、流石「ドルフィー」の一言です。
調整や編曲の枠なんて、何の足枷にもなっていませんし、フリー系でいながらも、とても聴き易くて、おまけにスピリットも出し捲くって、このアルバムの価値と地位を何倍も押し上げてくれます。

オープニング曲&表題曲の「エズセティックス」…「ジョージ・ラッセル」オリジナル曲でも、最も有名な曲で、ここでも当然十八番です。
とても乾いた都会的なテーマと疾走するテンポに合わせて各人がソロを演ります。
まず、ソロを執るのがトロンボーンの「デイヴ・ベイカー」で、早いリズムに負けない、すごテクでエキサイティングなアドリブを演ります。
続いてトランペットの「ドン・エリス」…やや抑制した音色で、このセクステットのグループ・サウンド?として調整の一翼を担う。
敢えて抑える…控え目に…男の美学です。
その後の「ドルフィー」のバス・クラリネット…相変わらず、すげぇなぁ!
それから「ドルフィー」が演奏している時、「ラッセル」「スワロー」「ハント」のリズム・セクション3人が、必要以上にファイトするのは?どうして?
やはり、相当「ドルフィー」に触発されてるみたい。
特に「ハント」はおかずビンビンに奥儀を繰り出して、熱演してくれます。
圧倒される1曲です。

2曲目「ナーディス」…ご存知「マイルス」が書いた名曲ですが、この曲でも「ラッセル」の奇才ぶりが堪能できます。
「マイルス」以上に抑えて、知的で乾いた雰囲気で曲を進行させます。
ミュートで「マイルス」風?に「ドン・エリス」が、都会的に仕上げて行き、「ベイカー」もとても抑制した表現で繋ぎます。
それから「ドルフィー」のソロですが、バス・クラでテーマを吹くだけ?で、余り過激には演りません。
思えば、「ドルフィー」も昔は楽団に在籍していたので、こう言う事もできるんですよね。
編曲の妙が生きた作品ですね。

3曲目「リディオット」…「ラッセル」が「モンク」的なコードを多用して仕上げたバップ曲で、知的な「ラッセル」が素敵ですね。
それから「スワロー」のパワフル・ベース…裏聴き所ナンバー1の名演ですね。
これだけ太くて、重戦車の様なベース演奏…ちょっとやそっとでは聴けません。
終盤の「スワロー」のアドリブ・ソロ演奏もgoodです。
この曲は「ラッセル」が全面的に主導権を握って、そして「スワロー」を表に出して、ホーン3人は短い小節でソロを演ったり、ユニゾンで間奏を演るのみです。
最後も「ラッセル」が知的なソロ演奏で〆ます。

4曲目「ソウツ」…序盤はホーン3人が、ユニゾン&ハーモニーで異色のテーマ演奏をする。
まるでニュー・ヨークの街を歩く、探偵が調査をしているかの様で、そうですね、「ピンク・パンサー」の「クルーゾー警部」が、3枚目でなく、完全な2枚目で聴き込みをしている感じです。???
例えが良く解んねぇや!
中盤からは、曲のテンポを色々変えて、3人のホーン奏者が掛け合いを演って行き、「ラッセル」の編曲の冴えと、都会的なジャズ演奏が、微妙な空間(谷間)で交じり合う。

5曲目「オネスティ」…「デイヴ・ベイカー」オリジナルのブルースで、短いながらも「ドルフィー」のバス・クラのソロ演奏は聴き所です。
アヴァンギャルドさとブルージィさのブレンド加減が良い味を出してます。
勿論、馬の嘶きも演ってくれます。
「エリス」もミュートとオープンの両方で、トランペット・ソロを執り、このブレンドに更にスパイスを効かせます。
作曲者「ベイカー」のソロは、かなりオーソドックスなアドリブで、ブルース魂を見せ付ける。
過激なブレンドに、とてもベーシックな(食材)を合わせて、皆を上手く中和させてくれるんです。
「スワロー」も渋くソロを決めて、ラストはユニゾンで楽しく、上げ上げでエンディングです。

「ドルフィー」は、フリーだけでなく、アレンジの元で、ユニゾンやハーモニー演奏もOKな、引き出しの多い、偉大なミュージシャンってことですね。

長文解説を一瞬で消失!Ah下手こいた…エリック・ドルフィー~アウト・トゥ・ランチ

2007-10-08 23:44:35 | エリック・ドルフィー
「エリック・ドルフィー」のアウト・トゥ・ランチ…今迄、私が解説&紹介して来た、メロディアスなテーマのジャズ・アルバムとは一線を画しています。
一言で言うと、とても難解なアルバムなんですが、実は先ほど迄、この難解な作品の超大作の解説文を書いていたのですが、記事投稿の転送時にミスをして、(Ah-下手こいた)長文が全部パーになったよ!(怒)(大激怒)

少しでも分かり易く言うと、ジャズ版「2001年宇宙の旅」って言う感じです。

映画監督の大巨匠、「スタンリー・キューブリック」の最高傑作であり、難解映画の最高峰が「2001年~」ですが、この「ドルフィー」のアルバムもジャズ界の「2001年~」と言っても良いかもしれません。

但し、それでは一般の(主に初心者的な)ジャズ・ファンの方の(購入)指標になりませんので、少しでも分かり易い説明は無いものか?と思案した所、原盤(LP)の裏解説にヒントが若干載っていましたので、それを少し拝借させて頂き、私の稚拙な解説をプラスして行きたいと思います。

アルバムタイトル…アウト・トゥ・ランチ

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(as、fl、b-cl)
      フレディ・ハバード(tp)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      トニー・ウィリアムス(ds)

曲目…1.ハット・アンド・ベアード、2.サムシング・スイート・サムシング、3.ガゼロニ、4.アウト・トゥ・ランチ、5.ストレート・アップ・アンド・ダウン

1964年2月25日録音

原盤…BLUE NOTE 84163  発売…東芝EMI
CD番号…CP32-5211

演奏について…LP原盤のA.B.スペルマン氏の解説を参考にしますと、タイトル曲「アウト・トゥ・ランチ」は、酔っ払いが千鳥足であっちへふらふら、こっちへよろよろと、歩く様をテーマにして表現しているらしい。
特にリズム・セクションには、テンポの指示等も皆無にして、各人自由に演って良いとの「ドルフィー」の提案に、取分け「トニー・ウィリアムス」は、自由に羽が生えた様に好き勝手にドラムを敲き捲っているとの事だが。

しかし、私の解釈で言えば、このアルバム自身の最大の肝は、ずばり「ボビー・ハッチャーソン」に有ると言いたい。
「ハバード」は、この曲でもかなりフリーにブロウしているが、やはりメロディアスなフレーをそこここで、吹いているのが分かる演奏です。
「デイヴィス」は骨太で硬派なベーシストらしく、自由であっても決して適当には演っていない。
しっかりと廻りに協調した目配りされたベース・ラインを刻んでいる。
「ウィリアムス」の演奏も良く聴くと、実はそれ程ぶっ飛んではいない。
やはりリズム・セクションを司っているミュージシャンは、自己犠牲できる人がやれるミュージック・パートだと思うので、他人に合わせる性格が出ております。

その中で、この異空間を幻想的に見事に演出しているのが、空間を飛び廻る「ハッチャーソン」のヴァイブであり、又、自由にバスクラリネットで、思い切りアドリブを吹き捲る、リーダーの「ドルフィー」なのです。
千鳥足の酔っ払いが行き着く先は…寝入ってしまって夢の世界…多分それが宇宙旅行なのだろう。

1曲目「ハット・アンド~」…は「ドルフィー」が敬愛する「モンク」の作品をイメージしながら書いた曲との事です。
最初の13小節はテーマに副って楽譜に忠実に演奏し、その後は自由気ままに演るらしいのですが…。
リズムを変調させてはいるが、「トニー」「デイヴィス」共に、バックらしいリズムは確実に刻んでいる。
「トニー」は超絶テクで、時たま遊び心で「おかず」を沢山出してくるが、「デイヴィス」は真面目でガンコ者そのものの演奏です。
ボウイングもちゃんと4ビートで、他のメンバーをドライヴしてますからね。
「ハバード」は、こうして聴くと、やはり生粋のメロディストですね。
半音を吹いていながらも、適当じゃないもんね。
その中で、バスクラ「ドルフィー」とヴァイブ「ハッチャーソン」は、思う存分フリーキーに演奏していて痛快です。

2曲目「サムシング・スイート~」は、頭の数小節だけ、「ドルフィー」と「デイヴィス」が掛け合いをしてテーマを示した後は、このリリカルなテーマを活かして全員が演奏しているとの事。
「デイヴィス」が渋くリズムを刻んで、「ドルフィー」はここではナイーブなテーマを活かしたバスクラで応戦する。
「ハバード」…すごく優しいトランペットの音色で、この幻想的な世界を見事に色付けしてくれます。
静寂を表現した「デイヴィス」のボウイング演奏…これは最高ですね。
このアルバム随一の水墨画的な「わびさび」空間が正に粋な演奏だね。
アルバムの中で一押しのトラックであり、一番聴き易い曲だと思います。

3曲目「ガゼロニ」…これは解説が載っていない。
しかし、「ガゼロニ」(ガッゼローニ)は、クラシック界随一のフルート奏者の名前であり、もしかすると「ドルフィー」がここでは、この「ガゼロニ」をリスペクトして曲名を付けたか?どうか…定かじゃないが、とにかくフルートを演奏しているのは事実だ。
「トニー」「デイヴィス」のリズム・セクションの間を「ハッチャーソン」のヴァイブが、縦横無尽に行き来する。
この3人の演奏的な対話は何なのか?
そして又、「ドルフィー」のフルートが、幻想的な宇宙空間を彷徨い歩くんです。

5曲目「ストレート~」も、タイトル曲と同コンセプトの演奏です。
この曲の詳細な解説はLPにも出ていませんが、決して聴き難い演奏では無く、いや良く聴くと聴き易いかもしれません。
「トニー」は繊細なシンバル・ワークと、効果的なバス・ドラを駆使して皆を引っ張って行きます。
「デイヴィス」は、とても真面目な演奏で、実直にベース・ラインを刻み続ける、
正に職人の鑑の様な演奏ですよ。
ここでも「ハバード」はブリリアントで、且つメロディアスなフレーズを吹いてくれますが、「ドルフィー」は逆にぶっ飛びアドリブをかまします。
「ハッチャーソン」…時々思い出した様にヴァイブを敲き、幻想世界へと連れて行きやがるんです。

一言で言うと、このアルバムはメロディを聴くアルバムでは無いんですよ。
私が言った2曲目の「わびさび」、」「水墨画」を見て頭の中で色々と想像して下さい。
見ている内に、身も心もその水墨画の世界へトリップしそうになるでしょう?
多分このアルバムはそう言うコンセプトで出来ているんです。
只、表現している媒体が、絵画では無く「音楽」(音)なんですよ。

2001年宇宙の旅は、宇宙に有るのでは無く、実は音の世界に有るんです。
折しも「2001年~」が、世界に出たのは1968年だったかな?
「ドルフィー」は、それよりも前にこう言うテーゼの曲を演っていたんだよね。
改めて彼の才能の素晴らしさに感銘を受けると同時に、夭逝が悔やまれます。

PS…このアルバムの難解さから、実は10年以上も(このアルバム)を聴いていなかったんですが、今日良く聴いてみて、完全とは言わないまでも、「ドルフィー」がやろうとしていた事が少しばかり分かってきました。
私も成長したのかな?
このアルバムを聴く機会を与えてくれた、加持さん、garjyuさんに、改めて感謝します。

ドルフィー不滅の傑作…エリック・ドルフィー・メモリアル・アルバム

2007-09-02 23:55:42 | エリック・ドルフィー
このアルバムは、「ドルフィー」を中心として、革新的なジャズを追求していく事になる、若手のミュージシャンが多数参加して、企画された演奏(アルバム)です。

勿論、「ドルフィー」の代表作の一つだが、このアルバムのライナーノートから「ドルフィー」の超大雑把なディスコグラフィーを書けば…「At the five spot」→「In Europe」→「本セッション」→「Out to lunch」→「Last date」との事である。

「ドルフィー」の油が乗り切った絶頂期の演奏を是非聴いて下さい。

アルバムタイトル…エリック・ドルフィー・メモリアル・アルバム

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(fl、b-cl、as)
      ウディ・ショウ(tp)
      クリフォード・ジョーダン(ss)
      プリンス・ラシャ(fl)
      ヒューイ・シモンズ(as)
      ボビー・ハッチャーソン(vib)
      リチャード・デイヴィス(b)
      エディ・カーン(b)
      J.C・モーゼス(ds)

曲目…1.ジターバグ・ワルツ、2.ミュージック・マタドール、3.アローン・トゥゲザー、4.ラヴ・ミー

1963年5月、6月 録音

原盤…フレッド・マイルス・レーベル 「conversation」FM308
→ヴィー・ジェイへ移行  発売…ファン・ハウス
CD番号…FHCY-1018

演奏について…1曲目「ドルフィー」の十八番、「ジターバグ・ワルツ」では、「ドルフィー」の飛翔するフルート演奏が堪能できる。
どこまでも飛んでいき、どれよりも美しい音色に心を洗われる。
「ハッチャーソン」の革新的ヴァイブも、曲にスパイスを効かせているし、もう一人の主役は、ガッツリとリズムを刻み、全員を推進していくベースの「カーン」である。
安定感のあるベースで、低音域をガッツリ支えて、ユニゾン演奏を司る中音域がその上に乗り、「ドルフィー」はその遥か上空を自由に飛ぶのである。

2曲目「ミュージック・マタドール」…曲名からして、ラテンの匂いがぷんぷんにただよう。
ここで「ドルフィー」はバスクラで、馬の嘶きを全開にするが、ただ叫ぶだけでなく、メロディアスなカデンツァも随所に吹いて、天賦の才能を見せ付ける。
ここでの副主役も実はベーシストで、「デイヴィス」が物すごい超絶技巧を見せる。
ヴァイオリンのピッチカートの様な、かなりの高音域で、ベースで爪弾いて、強烈に皆をドライヴィングして行く。
ドラムもこれに追従して、しっかりと「ドルフィー」をサポートする。
リズムはラテンで、曲調も明るめだが、演奏陣はシッカリと緊張感を持った演奏に終始しており、やはり「ドルフィー」がリーダーだと締るねぇ。

3曲目「アローン・トゥゲザー」…間違い無く、このアルバムの白眉の名演だろう。
序奏から最後までの十数分に渡って、バスクラを吹き続ける「ドルフィー」と、ベースの「デイヴィス」の二人が、すごいデュオ演奏、インプロビゼーション合戦を延々と演じて、聴き手は究極の緊張感を強いられる。
5~6分すぎて、初めて「ドルフィー」が、この名曲のメロディーを吹くまで、曲名を知らなければ、全く分からない程のアドリブだ。
しかし、「デイヴィス」は、「コルトレーン」楽団に在籍していた事もあって、やはりすごい名手だなぁ。
「コルトレーン」後期の、「トレーン」と「ギャリソン」のデュオを、彷彿させる素晴らしい演奏です。

エンディング「ラヴ・ミー」は、「ドルフィー」のアルト・サックス・ソロで演奏される曲です。
短い曲だが、「ドルフィー」のアドリブは、即興フレーズがシャワーの如く溢れ出して、聴き惚れてしまう。

全編で33分程の短いアルバムですが、とにかく最高ですよ。
絶対に聴いて下さいね。

ドルフィーの伝説的ライブ、エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ・vol.2

2007-06-30 23:19:27 | エリック・ドルフィー
今日は、エリック・ドルフィーの伝説的なヨーロッパ・ツアーのライブ録音より、vol.2をチョイスします。
以前紹介した、これまた伝説の、ファイヴ・スポットのライブ録音から、わずか6週間後からスタートしたこのツアーの演奏は、ファイヴ・スポットよりもかなりフリー・ジャズに傾倒した演奏になっており、その辺りが非常に興味をそそります。

では、詳細を…

アルバムタイトル…「エリック・ドルフィー・イン・ヨーロッパ・vol.2」

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(fl、as)
      ベント・アクセン(p)
      エリック・モーズホルム(b)
      ヨルン・エルニフ(ds)

曲目…1.ドント・ブレイム・フォー・ミー(テイク1)、2.今宵の君は、3.ミス・アン、4.ローラ、5.ドント・ブレイム・フォー・ミー(テイク2)

1961年9月6日、8日、コペンハーゲンにてライヴ録音

演奏について…まず唯一(CD化に際して追加トラックとなる5曲目のテイク2もそうだが)のフルート演奏となった、冒頭の「ドント~」の序奏から、いきなりドルフィーの世界にタイム・トリップさせられる。
「ドルフィー」は、非常にクリアーで美しいフレーズを奏でてから、すぐさま一気に飛翔して、フルートと言う楽器の持てるキャパシティを全て使い切った演奏がなされる。
バックの3人は演奏途中まではサポーターに徹するが、「ドルフィー」に触発されて、まただんだんドルフィー・ワールドに慣れて来てからは、ピアノの「アクセン」はモーダルでセンシティヴなシングルトーンを奏で、ベースの「モーズホルム」もソロを演じて、この緊張感に満ちたバラードは完成する。

2曲目のスタンダード曲「今宵の君は」は、かなりの急速調で演じられるが、この曲での「ドルフィー」のカデンツァは、超絶技巧で本当に驚愕物です。
まじに、アルトサックスで吹かれる「シーツ・オブ・サウンド」その物ではと思えて、音色に特徴があるので「ドルフィー」の演奏だと分かるが、吹かれたアドリブソロ・フレーズは、まるで「コルトレーン」が乗り移ったかの様な演奏です。
このライヴ録音(vol.2)でのベスト演奏でしょう。

自作曲「ミス・アン」は、「ドルフィー」以下のバックメンバーのソロも緊張感が取れて、かなり余裕が感じられる演奏になっている。

4曲目「ローラ」も、アルトサックスで演じられる超絶技巧のミドルテンポ・バラードですが、このアルバム中で一番ロマンティックな演奏です。
特に後半に入って「アクセン」が「ウィントン・ケリー」ばりの美麗なアドリブを奏でると、「ドルフィー」が触発されて、とてもメロディアスなアドリブで、更にその上を行くソロを奏でてフィナーレとなります。

今日も飛切りgoodな1枚です。エリック・ドルフィー~ファー・クライ

2007-06-25 18:44:32 | エリック・ドルフィー
皆様、最近沢山のコメトを頂きありがとうございます。
今日は、日ごろの感謝の気持ちを込めて、飛切りの1枚を紹介します。

アルバムタイトル…「ファー・クライ」
      副題…「ファー・クライ・ウィズ・ブッカー・リトル」

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(as、bcl、fl)
      ブッカー・リトル(ts)
      ジャッキー・バイヤード(p)
      ロン・カーター(b)
      ロイ・ヘインズ(ds)

曲目…1.ミセス・パーカー・オブ・KC、2.オード・トゥ・チャーリー・パーカー、3.ファー・クライ、4.ミス・アン、5.レフト・アローン、6.テンダリー、7.イッツ・マジック、8.シリーン

1960年12月21日 NYC録音

演奏(曲)について…いつものセリフですが、まずメンバーの良さにどなたも納得でしょう。
彼等の演奏は一部メンバーが違いますが、以前「アット・ザ・ファイブ・スポット・VOL1」で紹介した事があるので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。
ファイブ・スポットのライブ盤では、ピアノが「マル・ウォルドロン」だったのですが、今回のピアニスト「ジャッキーバイヤード」もマルと演奏がかなり似ていますので、このコンボにぴったりマッチをしています。

さて、演奏曲ですが、5曲目にサプライズな名曲が名を連ねていますね。
そう、「レフト・アローン」ですが、ここでの「ドルフィー」のフルート・プレイ1曲だけでもこのアルバムを聴く価値が充分にあろうと言う物ですが、それ以外の曲も名演奏ばかりで、本当に素晴らしいアルバムです。
では、詳細について少し解説しましょう。

まず、1曲目「ミセス・パーカー~」ですが、オープニングに相応しい構成がされていて、この1曲目で聴き手を引き込みます。
この曲はピアニストの「バイヤード」が「C・パーカー」への敬愛を込めて作曲したとの事で、(2曲目も同じコンセプトです)「リトル」のブリリアントなトランペットソロに対して、「ドルフィー」はバス・クラでいななき、他のプレイヤーも皆ソロを取っています。
「ジャッキー」はまるで「マル」が弾いているかのようなブロック・コード&若干はずし気味のシングル・トーンで、哀愁を感じさせ、「カーター」はボウイングを披露し、「ヘインズ」は華麗で重厚なドラムワークで魅了します。

2曲目「オード~」は一転、「ドルフィー」が今度はフルートで、いつもの如く研ぎ澄まされたソロを演じ、「リトル」は年齢に似合わず、ここでは抑制した渋いバラードプレイをします。
バック3人も非常に抑えた表現で、このグループは、前衛的なただの過激軍団ではない事を、技術の確かさも加わって、聴衆に知らしめています。

表題曲の3曲目、同じく「ドルフィー」作曲の名曲4曲目とも、フロントの2管二人の良さが際だつ演奏。
ここでは又もや、「リトル」が非常にブリリアントなトーンで吹ききり、リーダー「ドルフィー」に全く引けをとらない「天賦の才」を見せつける。

さて、お待ちかねの5曲目「レフトアローン」ですが、「ドルフィー」は非常に高貴で、原曲を過激には崩さないストレートな演奏をしている。
勿論、カデンツァに入ると、どこまでも飛翔する鳥のような、天空をさえずる音程・音色は見事としか言いようが無い。
ここでは「リトル」は休んでおり、バックの3人も非常に抑制した演奏で、「ドルフィー」の高貴さをバック・アップしている。
ドラムのヘインズは、殆どシンバルワークとハイハットに終始するのだが、空間の使い方が素晴らしく、この名演の影のMVPです。

6曲目「テンダリー」がまたまた筆舌し難い名演です。
ここで「ドルフィー」は優雅なスタンダードナンバーを、無伴奏で「アルト・サックス」で、素晴らしいアドリブソロを吹ききる。
ドルフィーの素晴らしさは、全く「コルトレーン」と同じで、過激で超絶技巧のアドリブを駆使できるテクニックだけでなく、下世話で甘くない、「誠にピュアで高貴なバラード」を吹く叙情性を持っているのが、私が「惚れる」アーティストたる理由です。

7曲目「イッツ~」もワン・ホーンのバラード演奏だが、ここでは「ドルフィー」は「バス・クラ」を使っているので、前曲よりは演奏に洒落や遊び心が見える。

8曲目「シリーン」はいかにも「ドルフィー」のオリジナルらしい曲で、ここでも「バス・クラ」を使用して前衛的なプレイをするが、「リトル」はがメロディアスで「健康的」なソロで対抗する。
「バイヤード」と「カーター」は非常に抑えたバックアップをするが、「ヘインズ」は、彼の境地らしい変則的なドラミングを奏でて、曲にスパイスを効かせているのが、隠し味と言えます。

とにかく、素晴らしいアルバムです。

伝説のイリノイ・コンサート~エリック・ドルフィー&ハービー・ハンコック

2007-04-10 23:39:48 | エリック・ドルフィー
今日紹介のアルバムは、ドルフィーの死後、約35年経ってから、ようやく陽の目を見た未発表音源からレコード(CD)化されたものである。
演奏を聴いてみると、このアルバムが何故ドルフィーの生前(もしくは死後間も無く)レコード化されなかったのか?全く謎である。
と言うのも、ドルフィーの演奏は抜群に素晴らしいし、ドルフィーとガチンコで真っ向勝負している、ハービーも半端では無い名演をしている。
まぁ、この(演奏)時代としては、かなり前衛的な演奏であるし、ドルフィーの演奏の素晴らしさが認知されたのは死後かなり経ってからなので、仕方無いかもしれないが…

では、アルバムの詳細について

アルバムタイトル…「伝説のイリノイ・コンサート」

パーソネル…リーダー;エリック・ドルフィー(fl、b-cl、as)
      ハービー・ハンコック(p)
      エディ・カーン(b)
      JC・モーゼス(ds)
      他

曲目…1.朝日のようにさわやかに、2.サムシング・スイート、サムシング・テンダー、3.ゴッド・ブレス・ザ・チャイルド、4.サウス・ストリート・イグジット、5.アイアン・マン、6.レッド・プラネット、7.G.W.

1963年3月10日 イリノイ大学にてライブ録音

演奏について…まずお薦めは、20分を超える大作として演奏されている、オープニング曲の「朝日~」である。
率直に言って、通常の美しい「朝日~」の演奏ではない。
つまり、メロディックで聴き易いと言う事は全くなく、ドルフィーの渾身の「馬のいななき」、つまり「バス・クラリネット」のカデンツァを聴くべき演奏がなされている。
それから、ドルフィーのライフワークである、3曲目の「ゴッド~」は無伴奏クラリネット演奏で、ドルフィーの真の実力を満喫できる。
それ以外も、フルート演奏が美しい4曲目の「サウス~」は聴きもので、特にハービーのピアノ、アドリブは秀逸の演奏である。
この日唯一のアルト・サックス演奏「アイアン・マン」や、学生のブラス・バンド及びビッグ・バンドと共演した後半2曲も良い演奏です。

今迄紹介してきた数々のアルバムと違って、決して聴き易くはないですが、ぜひトライして下さい。
新たなジャズの魅力を発見できると思います。


真打登場!

2007-02-02 22:42:10 | エリック・ドルフィー
いよいよ、真打登場!
さて、今日は私のペン・ネームである、「エリック・ドルフィー」の最高傑作「エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポットvol.1」を紹介します。

演奏者紹介
エリック・ドルフィー(alto sax)
ブッカー・リトル(trumpet)
マル・ウォルドロン(piano)
リチャード・デイビス(bass)
エド・ブラックウェル(drums) 
1961年7月16日録音 NYファイブスポットでのライブ演奏にて

曲目…1.ファイアー・ワルツ、2.ビー・バンプ、3.ザ・プロフェット

とにかく1曲目の名曲「ファイアー・ワルツ」で、その名の通り火の出るようなドルフィーのバス・クラリネットを聴いて下さい。
夭逝の天才、リトルのトランペットとの息の合ったインタープレイも抜群です。
それを支えるリズム陣のサポートも超強力、哀愁のピアニスト「マル」と、とにかく硬派のベーシスト「R・デイビス」そして手堅くバックに徹する渋い「ブラックウェル」
もしもこのアルバムが気に入ったら、同じ日のセッション全てを是非聴いて下さい。
それらは、以下3枚のアルバムです。
1.「エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイブ・スポットvol.2」
2.「メモリアル・アルバム」
3.「ヒア&ゼア」
今宵はドルフィーのアルバムに酔って下さい。