紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

私のストライク・ゾーンじゃないが…ジーン・クルーパ~プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメンツ

2008-03-25 22:37:23 | ジャズ・ビッグバンド・その他
正直言うと、何でもかんでも聴くと言っている私ですが、ビッグ・バンド・ジャズは、ジャズの中でも、最も苦手のカテゴリーで、(人生の中で…大袈裟か?)余り聴いた事がないし、第一聴きたいとも思わないのが本音です。
しかし、たまには(怖いもの見たさで)チョイスして見ようかな?なーんて思って、今日はこんなアルバムを行っちゃいましょう。

アルバムタイトル…ジーン・クルーパ~プレイズ・ジェリー・マリガン・アレンジメンツ

パーソネル…リーダー;ジーン・クルーパ(ds)
      アーニー・ロイヤル(tp)
      カイ・ウィンディング(tb)
      フィル・ウッズ(as)
      ハンク・ジョーンズ(p)
      ジェリー・マリガン(arr、cond)
      他

曲目…1.バード・ハウス、2.マーギー、3.マリガン・シチュー、4.ビギン・ザ・ビギン、5.シュガー、6.ザ・ウェイ・オブ・オール・フレッシュ、7.ディスク・ジョッキー・ジャンプ、8.バーズ・オブ・ア・フェザー、9.サムタイムズ・アイム・ハッピー、10.ハウ・ハイ・ザ・ムーン、11.イフ・ユー・ワー・ジ・オンリー・ガール、12.ヤードバード組曲

1958年10月20日~22日 NYにて録音

原盤…verve 発売…ポリドール㈱
CD番号…POCJ-2142

演奏について…1曲目「バード・ハウス」…「クルーパ」の正確無比のドラミングが当然の如く、皆を引っ張り、特筆すべきソロを取るのが「フィル・ウッズ」です。
魅惑的なアドリブ・フレーズで曲を彩ります。
その後の「ロイヤル」と「ウィンディング」のアドリブも行けてます。

2曲目「マージー」…いかにもビッグ・バンド・ジャズとも言うべき、寛ぎと余裕の編曲&演奏で、ダンサブルに進行する。
ここでも「ウッズ」のソロが秀逸で、このバンドのホーン・セクションの核は、間違いなく、彼であろう。

3曲目「マリガン・シチュー」…この曲も2曲目同様、ジス・イズ・ザ・ビッグバンド・ジャズと言って良い演奏&曲です。
トロンボーン「ウィンディング」と「ウッズ」のソロがウォームな感じでgoodです。

4曲目「ビギン・ザ・ビギン」…古き良きアメリカ…黄金の時代の記憶を蘇らせる様なゴージャスで、寛ぎのサウンドに酔いしれたい。
「クルーパ」は、さりげなくも裏番長として、目配せ気配せで皆を鼓舞する。
ここでも「ウッズ」はとても元気なアルト・サックスでぶいぶい言わします。

5曲目「シュガー」…「ウッズ」はもとより、トロンボーン「ジミー・クリーブランド」と、トランペット「ドク・セヴェリンセン」のソロが堪能できるトラック。
ビッグ・バンドを柱に、ソロ・アーティストがカラフルに修飾します。

6曲目「ザ・ウェイ・オブ~」…この曲のソロの聴き物は、テナー・サックス「アル・コーン」とのクレジット表記が有ります。
このビッグ・バンド…一体どんなスター・プレイヤーが参加しているんじゃ?
参加者全員の名簿がみたいもんじゃ!!

7曲目「ディスク・ジョッキー・ジャンプ」…一言で言って、この疾走系のサウンドは良いですね。
「クルーパ」がシャンシャンとリズムを刻み、「ウッズ」がガンガン吹き、「クリーブランド」が控えめに仕上げる。
「クルーパ」のスーパー・ドラミングも勿論聴き物ですが、トランペットの「アーニー・ロイヤル」のブリリアントなソロ演奏が最高潮で、ベスト・バウトです。

9曲目「サムタイムズ・アイム・ハッピー」…とても面白いアレンジメントで、「マリガン」の編曲者としての才能が垣間見れる。
ホーンのアンサンブルをハイセンスに配置して、「ウッズ」のブロウ・ソロをメイン・パーソンにして、クリエイティヴなサウンドを抽出しています。
「マリガン」…good jobですねぇ。

10曲目「ハウ・ハイ・ザ・ムーン」…この曲の編曲は、あえて大人し目…控え目に仕上げているのが味噌です。
ビッグ・バンドだからって、フルパワーで演らないのが、「マリガン」のセンスだろう。
各人のソロも抑制された美学があり、音色を減らして無限の空間を表現している。
そう…絵画なら水墨画の境地…渋いねぇ!

11曲目「イフ・ユー・ワー~」…このバラード演奏は最高だね!
このアルバムの白眉でしょう。
トランペットのミュート・プレイが郷愁を誘い、さりげないビッグバンド演奏が、更に幻想的な世界へと誘(いざな)う。
「ウッズ」のアルトの音色も艶やかで、男の色香と哀愁を見せる。
いつまでも聴いていたい1曲&演奏ですね。

12曲目「ヤードバード組曲」…バード(チャーリー・パーカー)の代名詞とも言うべき曲ですが、ここでは「ウッズ」のソロが、勿論聴き物。
本家にどこまで近づけたかなぁ?
「パーカー」程、イマジネイティヴでは無いが、ビッグバンドをバックに健闘していると思う。
シャンシャンとドラミングする「クルーパ」のリーダー振りに、喜びを感じます。

たまにはビッグ・バンド・ジャズ…こう言うの聴くのも良いんじゃない?

アコーディオン+ヴァイブが作る極上のBGM…アート・ヴァン・ダム・クインテット~マティーニ・タイム

2008-02-18 22:08:03 | ジャズ・ビッグバンド・その他
非常に個性的な楽器編成で、極上のBGMとなっているサウンドを形成する「アート・ヴァン・ダム」。

ここで聴ける音楽は、アコーディオンと言う楽器でジャズを演じた中でも、上位に入る名演だろうと思う。

クールでお洒落で…しかし一本芯は通っている、ダンディズムがキラリと光るアルバムなんです。

アルバムタイトル…アート・ヴァン・ダム・クインテット

パーソネル…リーダー;アート・ヴァン・ダム(アコーディオン)
      チャーリー・カルザレッタ(ヴィブラフォン)
      フレッド・ランドキスト(ギター)
      ルイス・スカリンダー(ベース)
      マックス・マリアッシュ(ドラムス)

曲目…1.アディオス、2.ブルー・ルー、3.チーク・トゥ・チーク、4.レット・ユアセルフ・ダウン、5.マイ・カインダ・ラヴ、6.アイ・ヒア・ミュージック、7.イフ・アイ・クッド・ビー・ウィズ・ユー、8.アイ・ディドント・ノウ・ホワット・タイム・イット・ワズ、9.サリー・ウィズ・フリンジ・オン・トップ、10.テンダリー、11.イッツ・イージー・トゥ・リメンバー、12.マダム・ヴァン・ダム

原盤…米CBS?  発売…ソニー・ミュージック・エンターテインメント
CD番号…SRCS-7156

演奏について…オープニング曲「アディオス」…鈴の音の序奏から、ラテン・リズムで始まって、と~ってもお洒落に曲が展開されて行きます。
「ヴァン・ダム」のアコーディオンと、「カルザレッタ」のヴァイブの絡みが、程好くソフトさとフリーな表現がブレンドされて…心地良いサウンドに仕上がってますねぇ。

2曲目「ブルー・ルー」…この曲では「カルザレッタ」が、かなりテクニックを見せ付けるアドリブ演奏が聴き所でしょう。
それを受けて「ヴァン・ダム」もナイスなアドリブをかまして、他にもドラムスの「マリアッシュ」の一発ソロや、ギターの「ランドキスト」の聴かせ所もあって、行けてる演奏です。

3曲目「チーク・トゥ・チーク」…曲名にピッタリの、ライトなダンス・ナンバーで、正しくアコーディオンとヴァイブが織り成す、ソフトな音楽空間に身を寄せたくなるカンフォタブル・ミュージックです。

4曲目「レット・ユアセルフ~」…かなり高速に疾走する、かなりハードなナンバー…と言っても、このメンバーで、この編成ですので、熱を帯びたモダン・ジャズ・カルテットの演奏に近い感じだと言えば分り易いでしょう。
「ヴァン・ダム」がかなりファイトしてますよ~。

5曲目「マイ・カインダ・ラヴ」…では、いきなりギターの「ランドキスト」が触発し、「ヴァン・ダム」も(対抗して)熱くアドリブで受けるんです。
「カルザレッタ」は、サイドメンに徹して、二人を見守ります。

6曲目「アイ・ヒア・ミュージック」…オール・ユニゾン調の寛ぎサウンドで序盤は推移するが、中盤から「ヴァン・ダム」と「ランドキスト」、そして「カルザレッタ」の3人共アドリブを演ってくれて…「スカリンダー」と「マリアッシュ」の煽りもgoodで…気持ち良い~!!

8曲目「アイ・ディドント~」…スロー・テンポで、パリ・シャンゼリゼ風に「ヴァン・ダム」が流麗に流す演奏をすれば…「カルザレッタ」はブルージーに曲を彩り、「ランドキスト」はジャジーに硬派の演奏をする。
ベース「スカリンダー」の重厚な演奏も良いし、アルバム収録中、最もジャズを感じ得る名演でしょう。

9曲目「サリー・ウィズ~」…「ヴァン・ダム」はお洒落サウンドの演奏に終始するけど、「カルザレッタ」のヴァイブと「ランドキスト」のギターが、キッチリとジャズを演ってくれます。
実は、この二人は、羊の皮を被った狼?なんですね。

10曲目「テンダリー」…この編成からして、この曲が合わないはずは有りませんねぇ。
まどろみを感じる景色に、気だるい甘さが漂うみたいな、ほのかな香水に誘われて…行けてる男と女がそっと指を絡める…黄金の50年代のアメリカ映画の様な演奏なんです。
「ヴァン・ダム」と「カルザレッタ」の優雅なアドリブがとにかく気持ち良いんですよ~!!
ベスト・チューンだと思います。

11曲目「イッツ・イージー~」…寛ぎのフロント・ライン3人が交互に主張して、でも…どこまでも洒落っ気は失わず曲を演り通すのが、心憎いです。

ラスト曲「マダム・ヴァン・ダム」…ダンディズムを通した伊達男たちだが、細君は怖いのか?最後におべっかを使った曲を持って来た。(大爆笑)
だが、曲&演奏は悪くは有りません…お茶を濁してはおりません。
スカッと晴れやかに決めてくれます。

極上のBGM風のジャズをどうぞ………!!!!

ノリノリ最高!…ジミー・スミス~ジ・インクレディブル・ジミー・スミス.vol3

2008-02-16 23:22:06 | ジャズ・ビッグバンド・その他
演奏曲にスタンダード・ナンバーがずらり…。
オルガン・ジャズの神様、「ジミー・スミス」がブルー・ノート初期に録音した、ノリノリのアルバムがこれなんです。
ファンキー&ブルージーな一夜をお過ごし下さい。

アルバムタイトル…ジ・インクレディブル・ジミー・スミス.vol3

パーソネル…リーダー;ジミー・スミス(org)
      ソーネル・シュワルツ(g)
      ドナルド・ベイリー(ds)

曲目…1.ジュードー・マンボ、2.ウィロー・ウィープ・フォー・ミー、3.恋人よわれに帰れ、4.ウェル・ユー・ニードント、5.フィドリン・ザ・マイナーズ、6.枯葉、7.アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント

1956年6月17日、18日録音

原盤…BLUE NOTE 1525  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6537

演奏について…序奏のアプローチが、一風変わった入り方で、印象的な6曲目「枯葉」…最初のアドリブ演奏のメインは、「シュワルツ」で、かなりブルージーで、じっくり聴かせるタッチで、枯葉のメロディの、わび・さびを表現する。
「ジミー・スミス」は、一音、一音のフレーズを長めに取って、サイドで伴奏的な演奏ながら、曲を劇的に染めて行く。
この二人のデュオ&バトル演奏を、上品に飾るのが、ブラシをメインに静かにサポートする「ベイリー」です。
動の「シュワルツ」&「スミス」と静の「ベイリー」の対比が真に素晴らしい1曲です。

オープニング曲「ジュードー・マンボ」…一発目から、全開バリバリのノリノリ・ナンバーで、これぞ「ジミー・スミス」の世界、BNのオルガン・ジャズの真骨頂って所です。
「ソーネル・シュワルツ」のテク抜群のギター・アドリブと、それ以上にバカ・テクでぶっ飛ぶ「ジミー・スミス」の天空を舞う様なオルガン演奏に感動する。
さりげなく二人を煽る「ドナルド・ベイリー」のドラミングもgoodで、終盤では、彼のラテンチックな一発ソロも聴けます。
1956年と言う年代を考慮すると、時代の最先端を行ってる演奏解釈に驚くばかりですねぇ。

2曲目「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」…こう言ったスロー・ブルーズの曲は、ドンピシャ、ジャズ・オルガンって言う楽器にはまるよね?
「スミス」の感情移入も至極当然だし、「シュワルツ」のジャジーな演奏も当然ストライク・ゾーンのど真中で、この二人が演るんだから、好演にならないはずが無い。
とにかく、ピアノ演奏を超える様な高速で運指して、ガッツリとアドリブを演る「スミス」の超絶演奏がまじにスゴス。
硬派のオルガン・ジャズを聴こうぜぃ!!

3曲目「恋人よわれに帰れ」…序奏の入り方が、最初「A列車で行こう」っぽいのが微笑ましくて、笑える。
演奏も正しくその通りで、かなり高速のリズムで、(列車が)疾走するように「スミス」と「シュワルツ」が、駆け巡る。
特に「スミス」の出来は秀逸で、正に「オルガンの神様」と言う冠に偽りが無い。
勿論、「シュワルツ」のアドリブも抜群に良い出来です。
オルガン・トリオとして、最高にパフォーマンスが凝縮された演奏でしょう。

4曲目「ウェル・ユー・ニードント」…「セロニアス・モンク」作曲の名曲だが、ここでの演奏には「モンク」臭さは殆ど無い。
きっちり「スミス」トリオとして、曲を調理しており、あくまでも素材としての「モンク」曲であり、曲の進行、アドリブ展開は…完全に「ジミー・スミス」流になっている。
終盤、「ベイリー」がおかずを沢山付けて、アドリブを演る所が、とてもお洒落~って思いますね。
分り易く、一言で言うなら、とても面白い演奏でしょう。

5曲目「フィドリン・ザ・マイナーズ」…「スミス」のオリジナル曲で、ややハイ・テンポで、自らのオルガン演奏を立たせた曲で進行して行く。
中間部から「シュワルツ」もいきり立ってきて、「スミス」とバトルを演り合う。
3人編成(トリオ)演奏には思えないぐらいに熱い演奏です。

ラスト「アイ・カヴァー・ザ・ウォーター・フロント」では、前6曲がかなり熱演だった事もあり、敢えてラスト・ナンバーは、寛ぎをメインに、…つまりクール・ダウンを主たる目的にセレクトした感がする曲目&演奏になっている。
「スミス」のタッチもとても軽やかで、「シュワルツ」もコードだけで、リズムを刻み、サイドメンに終始している。
この辺りの〆方も、「スミス」のセンスがなせる業なんでしょう。

新主流派ボビー・ハッチャーソンのデビュー・アルバム~ダイアローグ

2008-01-25 21:08:46 | ジャズ・ビッグバンド・その他
またまた、ブルー・ノートのアルバムを紹介しちゃいましょう。

ヴァイブ奏者、「ボビー・ハッチャーソン」が、奇才「アンドリュー・ヒル」他
のメンバーにサポートされて、録ったのがこのデビュー・アルバムなんです。

演奏、曲ともハイ・センスで、そこにブルー・ノート特有のテイストも加味され…長い鑑賞に耐え得る出来栄えです。

アルバムタイトル…ダイアローグ

パーソネル…リーダー;ボビー・ハッチャーソン(vib、marimba)
      フレディ・ハバード(tp)
      サム・リヴァース(fl、ss、ts、b-cl)
      アンドリュー・ヒル(p)
      リチャード・デイヴィス(b)
      ジョー・チェンバース(ds)

曲目…1.カッタ、2.アイドル・ホワイル、3.レ・ノワール・マルシェン、4.ダイアローグ、5.ゲットー・ライツ

1965年4月3日 録音

原盤…BLUE NOTE ST-84198  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6632

演奏について…アルバム・タイトル曲の4曲目「ダイアローグ」…異空間に飛び廻る「ハッチャーソン」のヴァイブや、「ハバード」のトランペット、そして「リヴァース」のソプラノ・サックスが、名作「エリック・ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」の演奏を想像させる。
「ハッチャーソン」は、和音や音階等については、殆ど無視同然で、あくまでも自由奔放に、音の自己表現をする。
「デイヴィス」の野太く、ハードなベースと、「ジョー・チェンバース」の時空を超えた様な不思議なタイム感覚が、彼等の自由世界を後押ししている。
但し、ピアノの「アンドリュー・ヒル」だけは、とても流麗で、また、雨だれの様なきれいな響きのピアノ演奏を終始演っていて、異質だが、これが美しいアクセントとなっている。
曲の後半では、弓弾きで更にいかつい低音を演る「デイヴィス」がgood jobです。
フリー好きな方にお薦めしたい名演です。

オープニング曲「カッタ」…「ジョー・チェンバース」のスティックのリードから、「アンドリュー・ヒル」と「チェンバース」の乗りの良いラテン・ビートで曲が幕を開ける。
「ハバード」の輝かしいトランペットのメロディ演奏に続いて登場するのが、この曲の主役、「サム・リヴァース」である。
かなりアグレッシブなアドリブ演奏で、ぶいぶいと演って、テナー・サックスで吼え捲り、漢の戦い方を見せる。
受ける「ハバード」のアドリブはとても流麗で、健康的です。
この辺りの演奏の違いが面白いですね。
それから、「ハッチャーソン」が、縦横無尽にヴァイブを敲くんですが、この曲では、そんなに突拍子も無いって程じゃない。
かなりメロディアスで、「ヒル」のラテン・ピアノとピッタリマッチするんです。
ラテン大好きな私には、いきなりのお気に入り演奏が幸せですぅ。

5曲目「ゲットー・ライツ」…アンニュイでサディスティックな雰囲気を纏った、変則のブルース曲で、「ハバード」のひねった様な音色で、捻じ曲げたメロディを吹くアドリブが、とても印象的です。
「リヴァース」がこの曲で、ソプラノ・サックスを使用して、演奏はまんま「コルトレーン」をパクッたと思うぐらいに酷似していて、面白いです。
やっぱり、この時代の「トレーン」の影響力は半端じゃないですね。
☆今でも影響力は半端じゃないでしょうけれど…。
「ハッチャーソン」は、前曲の異次元演奏から、地上に戻って来て、かなり正統的なブルーズを演ってくれます。
何か若返った「ミルト・ジャクソン」みたいです。

2曲目「アイドル・ホワイル」…「リヴァース」のフルートと「ハバード」のトランペットが二重奏で、ロマンティックにメロディを序奏で演じる。
その後の「ハバード」のバラード調のソロは、とても品が高く、高貴な音色でテーマを展開して行く。
バックでは、「チェンバース」が、ブラッシュで上品にリズムを描き続ける。
「ハッチャーソン」は、アルバム中でも、最も幻想的で魅惑的なフレーズのアドリブ・ソロを演ってくれて…気持ちが良いですねぇ。
「デイヴィス」も終盤に、深くて静かな音色のベース・ソロを決めてくれて…演奏にアクセントを付けます。
ユニゾンでの、最後の終わり方もアンニュイな感じでgoodです。

3曲目「レ・ノワール・マルシェン」…変調のマーチ風リズムの序奏に、「アンドリュー・ヒル」のおどろおどろしいピアノが時々、顔を出しながら進行して行く。
「ハッチャーソン」は、思う存分フリーに敲き、「チェンバース」も速くしたり、止めたり、急いだり、間を置いたり…と自由にシンバル&ドラムの時間を操り、使用します。
「ハバード」のソロ、「リヴァース」のフルートは、全く各自自由にアドリブを演って、極彩色のサウンドに仕上げて来ます。
但し、極彩色と言っても、ヴァイブの「ハッチャーソン」が居るので、かなり幻想的なイメージで仕上がり、絵画で言えば、「シャガール」のパステル・カラーの方がより近いかもしれません。
いずれにせよ、フリー要素の強い、若若しいサウンドと演奏です。

オルガンの神様が送るバラード・アルバム…ジミー・スミス~プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

2007-12-02 21:36:07 | ジャズ・ビッグバンド・その他
普段はいかにもグルーヴ感覚抜群で、ブラック・ミュージックを演る、オルガン・ジャズの旗手「ジミー・スミス」が、バラード中心に選曲して、演奏したのがこの異色アルバムです。
オルガン・トリオでのバラード演奏…渋い、かっこ良い、趣深い。。

アルバムタイトル…プレイズ・プリティ・ジャスト・フォー・ユー

パーソネル…リーダー;ジミー・スミス(org)
      エディ・マクファーデン(g)
      ドナルド・ベイリー(ds)

曲目…1.ニアネス・オブ・ユー、2.ジターバグ・ワルツ、3.イースト・オブ・ザ・サン、4.ニューヨークの秋、5.ペントハウス・セレナーデ、6.君を想いて、7.言い出しかねて、8.オールド・デヴィル・ムーン

1957年5月8日

原盤…BLUE NOTE 1563  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-1563

演奏について…オープニング曲「ニアネス・オブ・ユー」…寛ぎと揺らぎに満ち溢れたスロー・バラッドから始まる。
「ベイリー」のブラッシュワークと「マクファーデン」のジャズ伴奏も、極めて控えめに、「スミス」のソロを飾り立てる。
中間で「マクファーデン」がアドリブを入れるが、これも慈愛に満ちた癒し系で、心がとても温まります。
「スミス」の演奏は終始ほのぼのとしたトーンでどこまでも優しく、とにかく優しく…このまま眠りにつきそうです。

2曲目「ザ・ジターバグ・ワルツ」…余りにも「エリック・ドルフィー」の名演が有名な曲ですが、この演奏は勿論、「ドルフィー」とは対極に有ります。
3拍子のリズムに乗って、「スミス」が緩やかにスウィングして、「ベイリー」は優しくリズムを刻む…。
まるで極上のBGMの様な天国的なワルツ演奏に、つい居眠りして、そして素晴らしい夢を見れそうです。

3曲目「イースト・オブ~」…1、2曲目で揺らぎ演奏に終始していたトリオがジョギング程度だが、ミドル・テンポの4ビートで走り始める。
「スミス」もいつもの自分をチラリと出して、ファンキーさとブルージーな感覚でグルーヴするソロを取ってくれます。
中間でのアドリブ・パートでのノリも良く、所々でブイブイ言わしているんです。
「マクファーデン」のアドリブ、伴奏もかなりブルージーな雰囲気を出していて、良い仕事ですよね。
ところで、「マクファーデン」の音色と演奏ですが、この音、そしてこの感覚は、やはりブルーノートのアーティストらしく、良く聴くと「ケニー・バレル」に似ていますね!やはり………。
「ベイリー」のおかず満載のバック演奏もお洒落です。

4曲目「ニューヨークの秋」…3曲目で走り始めた「スミス・トリオ」ですが、ここでまた渾身のスローバラッド演奏に戻ります。
「スミス」は一音一音を長めに取って、変わり行くニューヨークの景色…色づき始めた紅葉と、もの悲しさを纏ってきた町並みを表現しているかの様です。
「スミス」の入魂のバラードは、本当に聴き応え有ります。
「マクファーデン」のソロは原曲の美しいメロディを活かして、あえて奇を衒わず原曲に忠実なんですが、そこが好感が持てる所です。
終盤で「ベイリー」が効果的なバスドラ一発入れてくれる所なんかは、センス有りますね。

5曲目「ペントハウス・セレナーデ」…3曲目の様に、ミドル・テンポで陽気に寛ぐナンバーです。
4曲目でエネルギーを出し切った?トリオがクール・ダウンとして用いた曲のようで、ライトな感覚で、心がウキウキします。
「マクファーデン」のソロもものすごく晴れやかな感情で、(良い意味で)気楽な演奏がされています。
こう言う小品的な感じの曲&演奏もアルバム中、必要不可欠だと思います。
ハード・プレイばかりじゃ聴く方も疲れちゃいますからね。

6曲目「君を想いて」…「マクファーデン」のメロディ・ライン演奏から序奏が始まり、哀愁感覚バッチリの素晴らしいソロを見せてくれます。
「マクファーデン」と言うギタリストも、まじめに侮れませんね。
「スミス」がセレクトしたメンバーなだけに、伴奏者としても優秀ですし、ソロを取らせても、破綻の少ない、且つ出しゃばらないアーティストで、脇役(サイド・メン)にはもってこいの人だと思います。

7曲目「アイ・キャント~」…「スミス」の情感タップリの序奏で始まり、もはや正常な気持ちではいられないほど、哀愁的な、そして魅惑的なメロディ・ライン痺れさせられて、その後の「スミス」のアドリブの素晴らしさにも、手伝って心がノックアウト状態になっています。
しかし、ただ癒しサウンドで攻めるだけでなく、この曲では、所々で攻撃的なアドリブをチョイチョイと小出しして、それが又妙技で憎いんだよね。
人の琴線をドンピシャ攻撃するんですよ。
こいつはまじで、只のオルガン小僧じゃないね。
壷をくすぐる術と場所、時間を的確に知っていて、完全犯罪者だな!(笑)
「マクファーデン」も前曲に近い感じで、原曲に忠実で「スミス」のアドリブを後押しします。
このアルバム随一のベスト・トラック演奏でしょう。

ラストを飾る「オールド・デヴィル・ムーン」…最後は一寸陽気に、ラテン調の曲で〆るんですが、「スミス」はブロック的な両手を使ったトーンで伴奏的に弾き、逆に「マクファーデン」が気力を振り絞った?アドリブ・ソロを演ってくれて、良い仕事をしてくれます。
最後は「マクファーデン」に花を持たせたんでしょうね。
「ベイリー」もノリノリでグルーヴ感の有るドラムスで、ファイナル曲を盛り上げます。
このライトで明るい雰囲気でのフィニッシュも好感が持てるね。
最後まで幻想的で終わると、逆にやばい気がするんで、こいつで決まり!です。

この色香漂うジャケット…新主流派の傑作アルバム…ボビー・ハッチャーソン~ハプニングス

2007-11-08 23:21:09 | ジャズ・ビッグバンド・その他
ショッキング・ピンクの色地にモデル風美女の魅惑的なアルバム・ジャケット。

演奏は?と言えば、これもジャケットに負けぬ新主流派の王道的な名演奏。
収録曲には、名曲「処女航海」も有ります。

そして、参加ミュージシャンも、当時のブルーノートの革新的な若手メンバー揃いの上、アルバムリーダー「ボビー・ハッチャーソン」のヴァイブと、「ハービー・ハンコック」のピアノが高次元で、交錯し飛翔する…。

60年代中期を代表する1枚でしょう。

アルバムタイトル…ハプニングス

パーソネル…リーダー;ボビー・ハッチャーソン(vib、marimba、trk、等)
      ハービー・ハンコック(p)
      ボブ・クランショウ(b)
      ジョー・チェンバース(ds、vib、trk)


曲目…1.アクエリア・ムーン、2.ブーケ、3.ロジョ、4.処女航海、5.ヘッド・スタート、6.ホエン・ユー・アー・ニア、7.ジ・オーメン

原盤…BLUE NOTE ST-84231  発売…EMIミュージック・ジャパン

CD番号…TOCJ-7030

演奏について…最も有名なのは、ピアニストとして参加の「ハービー」が作曲した名曲「処女航海」の4曲目であろう。
ここではドラム「チェンバース」が幾分派手目にタイム・キープするのだが、「ハッチャーソン」のソロは、原曲の美しさを活かした、とてもスタンダードな解釈&演奏で、作曲者「ハンコック」に敬意を表した形になっています。
「ハンコック」も自分は一歩引いた形で曲に向かっており、(かなり客観的に曲を分析して演奏している様で)思索的な一曲に仕上げています。

このアルバムで一番の聴き物は、「エリック・ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」から、諸に影響を受けている様に聴こえるラスト曲「ジ・オーメン」だと思う。
決して聴き易い曲では無いが、ドラムス「チェンバース」がアヴァンギャルドな序奏を始めると、続く「ハンコック」が、もっと過激に曲を展開させる。
その後は「ハッチャーソン」が、360度に向けて、ヴァイブによって、異彩の空気をばんばん放出する。
効果的に使用される、トライアングルも良く考えられて使っています。
とにかく「ハッチャーソン」と「チェンバース」のデュオ的な演奏の緊張感は半端では無く、「ハンコック」のピアノも思わず躊躇うのでは?と思うぐらい、行っちゃってるんですよ。
正に異次元空間にタイム・トリップする1曲です。

オープニング曲「アクエリア・ムーン」…硬派で良いですよ。
スタートから「ハッチャーソン」が飛翔の如く、ヴァイブを敲き捲るのですが、バックのベース「クランショウ」が、渋く且つハードにベースラインを刻み続けて、「ハッチャーソン」を強烈にドライヴィング&アシストする。
皆を煽るドラムス「チェンバース」のタイム・キーピングも良い味を出してますよ。
そして、中間からは「ハンコック」が、煌びやかでセンス抜群のアドリブ・ソロをガンガン弾き捲ります。
「ハッチャーソン」と「ハンコック」のバトル合戦がまじに聴き所です。
フィナーレは静かに終えた様に見せといて…もう一回サプライズが…。
うぅーん、カッコイイ!!

2曲目「ブーケ」…序奏は「ハンコック」&「ハッチャーソン」の、静寂のバラッド演奏から始まる。
この不思議で、幻想的な余韻の感じる演奏は、やはりヴァイブと言う楽器の持つ魔力なのか?
このピアノとヴァイブが奏でる異空間…他では真似できないでしょうね。
特に「ハッチャーソン」のアドリブが、とてもハイ・センスで聴かせ上手だと思います。
「ハンコック」は、美音でリフレインを効果的に使用して、曲の幻想さをより輝かせていて、好感が持てますね。
アルバム中、個人的には一番好きな演奏でしょうか?

3曲目「ロジョ」…ラテン・リズムをバック・ボーンにして陽気に「ハッチャーソン」と「ハンコック」がやってくれます。
この二人のアドリブの魅力もたっぷりなんですが、それ以上に冴えているのが、ラテン・リズムを抽出しているドラムス「チェンバース」です。
ハイハット、シンバルワーク、バス・ドラと適材適所に効果的な一発を入れて、曲の核をしっかり作っています。
終盤の「クランショウ」のアドリブ・ソロ…こいつもカッコイイんです。
ラテン大好きな私はお気に入りの一曲になっていますよ。

5曲目「ヘッド・スタート」…都会的な雰囲気抜群の高速4ビート曲です。
こう言ったリズムの曲だと、ベーシストの独壇場になりますね。
とにかく「クランショウ」のびんびんベースが聴いていて、痛快ですよ。

6曲目「ホエン・ユー~」…短曲ですが、とにかく良い曲です。
何が良いかって?
それは、メロディが「貴方と夜と音楽と」を彷彿させるメロディアスな曲で、「ハッチャーソン」の幻想的なヴァイブと「ハンコック」の抑制したピアノのリリシズムが見事に融合されていて、胸が締め付けられます。
もう一寸演奏して欲しい…もう一寸聴きたい…佳曲です。

オルガンのトレーン、ラリー・ヤングのデビュー盤…イントゥ・サムシン

2007-11-01 22:34:43 | ジャズ・ビッグバンド・その他
ここの所、仕事が忙しくてブログ更新…厳しいです。
大体、帰宅すると、12時過ぎてしまっていて、お疲れちゃん状態です。
そんな訳で、今月も毎日の更新は難しいですが、お付き合いお願いしまぁす。

さて、今日は以前一度紹介したことがある、オルガンの「コルトレーン」こと、「ラリー・ヤング」のブルーノート、デビュー盤です。
昨今のクラブ・シーンでは、アシッド・ジャズ流行と言う事もあって、大分認知されてきている模様です。

バリバリ弾くオルガンに「トレーン」の面影を見る事ができるか?

アルバムタイトル…イントゥ・サムシン

パーソネル…リーダー;ラリー・ヤング(org)
      サム・リヴァース(ts)
      グラント・グリーン(g)
      エルヴィン・ジョーンズ(ds)

曲目…1.タイロン、2.プラザ・デ・トロス、3.パリス・アイズ、4.バック・アップ、5.リサ

1964年11月12日 録音

原盤…BLUE NOTE 84187  発売…東芝EMI
CD番号…TOCJ-6543

演奏について…1曲目「タイロン」では、オルガンのトレーン「ヤング」もぶいぶい言わせるが、それ以上にギターの「グリーン」が、思い切り暴れ捲り、これでもか?と弾き捲る。
中間からテナーを吹く「リヴァース」も攻めの一手で押し捲り、この演奏は最高潮にヒート・アップ。
「エルヴィン」のドラムは、皆を煽りつつも、自身は冷静な部分を失わない。
流石「コルトレーン」学校の校長だぜぇ。

2曲目「プラザ・デ・トロス」…このアルバム、一番の名曲として評価されているラテン調のノリノリ・ナンバー。
「エルヴィン」がシンバル・ワーク中心にラテン・リズムで煽ると、ここでもまず「グリーン」が疾走する。
次々にアドリブ・メロディを繰り出し、それを「ヤング」が伴奏でサポートする。
次いで「リヴァース」が、またまたやってくれます。
思い切りフリーに、しかし絶叫までは行かないで、メロディアスなフリー系のジャズを演ってくれるんです。
「ヤング」のソロは、それ程ぶっ飛んではいませんで、曲の引き締めに一役買って
います。

3曲目「パリス~」…この曲から、寛ぎ系のナンバーに移行する。
まず、「リヴァース」が礼節ある?ソロを取って、メロディアスな曲の方向性を決める。
続く「グリーン」は、今までの2曲と違って、温か味あるトーンで、柔らかく弾いて、曲を更にウォームにして行き、「リヴァース」とシンクロさせる。
「ヤング」も温かめの音色で進行して、この曲のキャンバスの色は、変えないで同一色で纏めて行く。
但し、一人だけ硬派に締った演奏で、ワンポイントをピシッと〆るのが「エルヴィン」のドラムです。

4曲目「バック・アップ」…「ヤング」が「ジミー・スミス」的に、コミカルなハード・ボイルド調のオルガン演奏で幕をこじ開ける。
分かり易く言うと、映画「ピンク・パンサーのテーマ」の様な感じなんだよね。
しかし、中間からは好アドリブを連発して、だんだん乗ってきます。
「グリーン」は、ここでは思索しながら、ややお上品目に弾きながら合わせます。
色々と考えながら、演奏のアプローチを決めているようですね。
そして「リヴァース」が仕上げに入ります。
手堅いテナーと、アバンギャルドなテナーを混在させていて、中々魅力がある演奏になってます。
最後は、異なる楽器同士でのユニゾン演奏が決め!ってな所です。

ラストの「リサ」…一聴して良い曲ですよ。
とてもロマンティックなメロディで「ヤング」が、まずテーマを弾きます。
バックの「エルヴィン」は、ブラッシュ・ワークがメチャメチャ、ハイセンスなんです。
「グリーン」のソロも、バランスが優れていて聴き応え充分です。
このハード野郎達には不釣合いな?ポップ・バラード・チューンなんだけど、バッチリ決まっているし、聴く側もガッツリとハマッちゃいます。
ラストは「リヴァース」抜きの「ヤング・トリオ」の演奏だけど、本当に〆に相応しい好演で、正に決まり物です。

オルガンの「トレーン」でも、決してハードに攻め続ける事では無く、控えめだったり、ポップスだったりして、聴き易いアルバムです。

摩訶不思議なポップ・ジャズ…デイヴ・パイク・セット~ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

2007-10-13 23:49:37 | ジャズ・ビッグバンド・その他
今日、紹介するのは、ジャズ?フュージョン?ワールド・ミュージック?一体これは…何なのだろう?
演奏しているリーダーは、以前「ビル・エヴァンス」がサイドメンとして参加した事がある、ゴージャースなアルバム、「パイク・スピーク」で紹介した事がある、革新的なヴァイブ奏者「デイヴ・パイク」です。

まぁ、楽器編成の妙等で摩訶不思議音楽になっているだけで、実際にはかなり正統的なジャジーな曲(演奏)も有ります。
演奏している、ミュージシャンは、「パイク」の他は、ドイツ人二人とオーストリア人が一人のカルテットで、やはりユーロ・ジャズの香りは漂ってます。

アルバムタイトル…ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ

パーソネル…リーダー;デイヴ・パイク(vib、tambourine)
      フォルカー・クルーゲル(g、sitar)
      ハンス・レッテンバッハー(b)
      ペーター・バウマイスター(ds)

曲目…1.アイム・オン・マイ・ウェイ、2.リガーズ・フロム・フレディ・ホロヴィッツ、3.サムホワット・サムホエア・サムハウ、4.ノイジー・サイレンス=ジェントル・ノイズ、5.マザー・ピープル、6.マタール、7.ヴィアン=デ、8.チーミング・アップ、9.ウォーキン・ダウン・ザ・ハイウェイ・イン・ア・レッド・ロウ・エッグ

1969年1月21日 ヴィリンゲン/黒い森 MPS-トンスタジオにて録音

原盤…MPS 発売…ポリグラム
CD番号…POCJ-2540

演奏について…まんまポップ・ミュージックにノリでスタート・ダッシュに使用したオープニングの「アイム・オン~」
ポップ・グループがそのまま歌詞をつければ歌える程、メロディアスで親しみ易い曲(メロディ)が印象的なトラックです。
「パイク」もうなり声は上げてはいるが、敲き捲る感じではなく、とても楽しみながら、演奏をしている様です。
バックの3人は、この時代らしい(60年代後期~70年代前半)の、とてもサイケデリックな雰囲気を活かした演奏です。

2曲目「リガーズ・フロム~」は、「ホロヴィッツ」の名が記されているので、一瞬は名ピアニストの?と思うが、「パイク」が飼っているサルの名前との事。
ここでの主役は、誰が何と言おうとシタールを弾く「クルーゲル」で、ラテン調のリズムに乗って、シタールを美しく紡いで行く。
それに合わせて、いや、より一層飛翔するのが、リーダー「パイク」で、この異国情緒溢れる編成に、バーサクしたのか、素晴らしいノリでヴァイブの音&アドリブをこれでもか?と飛び回らせる。
中途から「クルーゲル」はアコースティック・ギターに持ち替えて、フラメンコさながら、運指の運びも絶好調で、サウンドのパワーは頂点に達する。
このアルバム随一の聴き物トラックでしょう。

3曲目「サムホワット~」は、ギター「クルーゲル」をメインにした、かなり正統的でジャジーなバラッド曲。
この曲で、このアルバムはジャズ・アルバムだと言う事を認識出来ます。
それにしても「クルーゲル」の癒しのギター…良いねぇ。
そのギターに張り付く様に音を合わせて、伴奏する「レッテンバッハー」のベースも効果覿面です。
この曲での4人(カルテット)のまとまりは、正しく「デイヴ・パイク・セット」と言う冠に相応しい、統制された佳演です。

4曲目タイトル曲の「ノイジー・サイレンス~」…良いねぇ。
スタートの序奏は、ハードボイルド感たっぷりのテーマで、一聴してぞくぞく感の期待が高まります。
すぐさまアドリブをかます「クルーゲル」がソロを終わらん内に、ジャズ・ロック調に変調して、演奏が疾走をし始める。
その名の通り、静かな曲調から、騒ぐ様にノリノリのメロディへの転調、変速のこの部分が一つの聴き所です。
「パイク」はヴァイブをうなり声を上げながら、特に急楽章で、これみよがしに敲き捲るが、それをサポートするベース「レッテンバッハー」が、渋くガチッとした演奏をするので、演奏がバッチリ決まっています。
「レッテンバッハー」は、中途では中々すごテクのベース・ソロを決めたりして、常時この曲の演奏の大黒柱になっている。
曲の起承転結もシッカリとなされており、2曲目と双璧のベスト・トラックです。

6曲目「マタール」…「クルーゲル」のシタールを全面に押出した、ディス・イズ・インディアと言いたいぐらいに、カレー臭(加齢じゃないよ!)がぷんぷんとする、エキゾチックな1曲。
正直、私は嫌いじゃないが、この曲をジャズと見て(聴いて)くれる人の方が遥かに少ないだろうな。
リズムは中途から、8ビートのロック・リズムになって、この曲がインディアン・ポップスへと変貌を遂げる。

7曲目「ヴィアン=デ」…静けさと気だるさが魅力の、スロー・チューンで、「パイク」「クルーゲル」「レッテンバッハー」の3人の紡ぐ、優しいアドリブ合戦がとても心地良い演奏です。
「バウマイスター」は、自らの存在が無いくらいに、地味にシンバル・ワーク一色で伴奏(演奏)しているのが、渋カッコイイです。

8曲目「チーミング・アップ」…急速調の曲で、ここでは各人が自分達のテクニックを思う存分見せびらかす。
先日、紹介した「ドルフィー」の「アウト・トゥ・ランチ」的な音のマトリックスを感じさせる演奏です。
このアルバムの中では、異色の前衛ジャズを演奏しています。
やはり「パイク」…一筋縄では絶対に行かないミュージシャンです。

ラスト9曲目「ウォーキン・ダウン~」も8曲目に近いコンセプトですが、最後の〆と言う事もあって、「パイク」が思い切りバウトしていて、「クルーゲル」のギターは「エレクトリック・マイルス」を連想させる、アバンギャルドな演奏です。
この終盤のエンディング2曲は、このコンボの硬派な部分を見せつけますね。

ジャズ界の超異色アルバム…フィリー・ジョー・ジョーンズ~ブルース・フォー・ドラキュラ

2007-10-06 09:32:25 | ジャズ・ビッグバンド・その他
私の大好きな、スーパー・ドラマー、「フィリー・ジョー・ジョーンズ」がリーダーとなり、ドラキュラ俳優、「ルゴシ」の声色を「フィリー・ジョー」が真似て、口上(語り)を入れたのが、タイトルになった1曲目「ブルース・フォー・ドラキュラ」である。

まぁ、表題曲以外は、珍曲・珍演ではなく、いかにもリバー・サイド・レーベルらしい、ハード・バップ・セッションがなされた好演が多いので、只の異色アルバムには留まってはいない。
参加メンバーも良いメンツが揃った、セクステットですよ。

アルバムタイトル…ブルース・フォー・ドラキュラ

パーソネル…リーダー;フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
      ナット・アダレイ(cor)
      ジュリアン・ブリースター(tb)
      ジョニー・グリフィン(ts)
      トミー・フラナガン(p)
      ジミー・ギャリソン(b)

曲目…1.ブルース・フォー・ドラキュラ、2.トリック・ストリート、3.フィエスタ、4.チューン・アップ、5.オウ!

1958年9月17日 NY録音

原盤…RIVERSIDE RLP12-282  発売…ビクター音楽産業
CD番号…VICJ-23772

演奏について…表題曲である実験的な珍作、「ブルース~」は、やはりと言うべきか、とても面白く、且つかなりの名演である。
聴き所の一つは、「フィリー・ジョー」の語り部パートが、演奏の大半を占めていて、その語りも真に板についていて、ドラキュラを怖く&ユーモアに表現している事と、勿論、彼自身の真骨頂、超絶ドラムも堪能させてもらえる事である。
その後続く、各人のソロパート「ブリースター」のトロンボーン、「グリフィン」のテナー、「ナット・アダレイ」のコルネット、そして「フラナガン」のピアノと全て短めながら、好フレーズが多く、この辺が第二の聴き所でしょう。

2曲目「トリック・ストリート」は、一寸、メロディが「ウィスパー・ノット」を連想させる小品佳曲で、寛ぎのハード・バップを聴くのには丁度良いかな?って感じです。
特に「グリフィン」の骨太なアドリブも良いですね。

3曲目「フィエスタ」…私的には、この曲がアルバム中、ぴか1のお薦め曲でしょうか。
冒頭のラテンチックな「フィリー・ジョー」のドラミングに導かれて、相変わらず「グリフィン」が、ぶいぶいと豪快にアドリブソロをかます。
次いで「ナット・アダレイ」が、コルネットながら、とても煌びやかなソロを軽快に吹き切る。
その後の「ブリースター」のソロが、また良いんですよ。
何が良いって言うと、音色が良いんです。
「カーティス・フラー」や「JJ・ジョンソン」のウォーム系とは異なり、かなり明るい音色の「トロンボーン」が、個性を醸し出しています。
〆は何と言っても「フィリー・ジョー」が、すごテク出し捲りの、超絶ドラム・ソロで決めてくれます。
一言で言うなら、正しくハード・バップの規範的な演奏ですね。

4曲目「チューン・アップ」は、「マイルス」作品なので、ここでの主役はやっぱり「ナット・アダレイ」です。
かなり、高速な曲なんだけど、テクニック抜群で運指して、スタート・ダッシュに成功すると、受ける「グリフィン」のソロもそれ以上の聴き物です。
とても、パワフルでエキサイティングな演奏をしています。
「ブリースター」は、トロンボーンだとこのリズム速度は、好演はしていますが、正直かなり苦しい感じです。
「真打」「フィリー」は、ここでも剛打連発!
アルバム・リーダーとしての責務を果たしますよ。

終曲「オウ!」では、今迄完全に影役に徹していた「ギャリソン」が、バックでありながらも、チョコッとベース・ラインで自己主張をしてくれます。
もう一人の脇役・職人ピアニスト「フラナガン」も、この曲ではソロを弾く場面が有り、「トミフラ」らしい、繊細な好フレーズのシングルトーンを繰り出して、曲の品がグーンとアップするんだなぁ。
「ブリースター」はキレのあるフレーズで曲を推進し、「グリフィン」は雄大なソロを取り、「ナット」の出来も素晴らしい。
ここでも最後は「バンマス」「フィリー・ジョー」が、華麗なドラミングで曲を纏め上げます。
相変わらず「時」と「空間」を完全に掌中にした、マジシャン(イリュージョン)の様な素晴らしいドラムに完全に魅入られますよ。

タイトルは異色盤と思いますが、2曲目以降は真面目にハードバップの名演・名盤と言って良いでしょう。

エディ・コスタ・ウィズ・ビル・エヴァンス~ガイズ・アンド・ドールズ

2007-05-24 23:40:25 | ジャズ・ビッグバンド・その他
エディ・コスタ(vib)が奏でる、人気ミュージカル作品集にサプライズカスタマーとして、ビル・エヴァンスが加わったアルバムを紹介しましょう。

アルバムタイトル…ガイズ・アンド・ドールズ・ライク・ヴァイブス

パーソネル…リーダー;エディ・コスタ(vib)
      ビル・エヴァンス(p)
      ウェンデル・マーシャル(b)
      ポール・モチアン(ds)

曲目…1.ガイズ・アンド・ドールズ、2.アデレイド、3.イフ・アイ・ワー・ア・ベル、4.ラック・ビー・ア・レイディ、5.アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ、6.アイル・ノウ

1958年1月15、16、17日録音

演奏について…まず最も魅力的な演奏としては、2曲目のバラード「アデレイド」がビル・エヴァンスのリリカルで知的なピアノの魅力が全面に散りばめられた名演で、コスタのヴァイブもビルの名演をさりげなく、そして美しくアシストしていて加えて、マーシャルの渋いベースプレイも決まり物なのでお薦めしたい。
それから、曲中最も有名な3曲目「イフ~」の演奏は、マイルスの超絶的美の名演を予測すると、チョット面食らう。
とても元気の良い活力ナンバーで、ここでの主役は間違いなくコスタです。
4曲目「ラック~」はこのアルバム中、唯一のラテンリズムナンバーで、エヴァンスがややくずした曲調のブロックコードを駆使して、絡むコスタの跳ねるようなヴァイブも良いが、この曲のベストプレイヤーは、このラテンで皆の演奏を飛翔させた、モチアンのシンバルプレイに真髄を見たり。

有名曲が満載のミュージカルでは無いが、カルテットの洒落たバトルが心地良く、とても気分が良くなるアルバムです。

寺井尚子~「ジャズ・ワルツ」

2007-03-25 23:40:46 | ジャズ・ビッグバンド・その他
今日は飛切りイージー・リスニング的な「ジャズ・アルバム」を紹介しましょう。

アルバム名は「ジャズ・ワルツ」

日本人のジャズ・ヴァイオリニストの寺井尚子のアルバムです。
ジャズ・ヴァイオリンと言うと、世界的にも中々認知されている人ってやはり少ないですよね。
かつては、「ステファン・グラッペリ」ぐらいしかいなかった様な気がします。
その中で、寺井は日本で最も有名なジャズ・ヴァイオリストでしょう。
まぁ、ヴァイオリンを演っている人は、当然クラシックの素養のある人です。
この寺井尚子も勿論、しかりです。
彼女は体は小柄で女性ですが、中々パワフルな音を奏でるアーチストです。
それでは詳細についてご説明しましょう。

パーソネル…リーダー;寺井尚子(vln)
      北島直樹(p、org)
      細野義彦(g)
      ジャンボ小野(b)
      中澤剛(ds)

曲目…1.ジャズ・ワルツ、2.アパッショナータ~情熱、3.ダニー・ボーイ、4.ラグな気分で、5.魅惑のワルツ、6.貴婦人のタンゴ、7.風に舞う、8.砂の記憶、9.ヒット・アンド・アウェイ、10.アイ・ミー・マイン、11.チルドレン

演奏(曲)について…このアルバムでの僅差のベスト1は、寺井自身のオリジナル作曲の8曲目「砂の記憶」か。
これぞヴァイオリンといった、もの悲しいトーンの演奏とマイナーな曲調が心に沁みる。
それから、これと双璧なのがピアニスト北島作曲の6曲目「貴婦人のタンゴ」。
ヴァイオリンで演じる、哀愁のタンゴが悪かろうはずは無い。
次いで魅力的なのは、急速調の演奏の9曲目「ヒット~」は、いかにもギターの細野の作曲らしく、このアルバム随一のジャズギターを前面に押し出した演奏であり、10曲目のジョージ・ハリソンの曲もとてもブルージーでジャズらしい演奏である。
北島のオルガン演奏も秀逸で隠れた?ベストトラックかも。
アルバムタイトルの冒頭を飾る「ジャズ・ワルツ」も、20世紀を代表するロシア出身のショスタコービッチ作曲のクラシック曲ですが、かなりジャズしていて魅力があります。

思い切り「イージー・リスニング的」と文頭で言いましたが、よくよく聴くと、本格的にジャズしてます。
お薦めの一枚ですよ。

「ヘヴィ・サウンズ」エルヴィン・ジョーンズ&リチャード・デイヴィス

2007-02-18 23:54:24 | ジャズ・ビッグバンド・その他
このハードなアルバムジャケットを見てくれ!

タイトル名…「ヘヴィ・サウンズ」の通り、重厚なジャズをこの二人を中心に展開してくれる。

双頭のリーダーアルバムだが、やはり「エルヴィン・ジョーンズ」がリーダーだろう。私の神「コルトレーン・カルテット」から独立した「エルヴィン」が重々しいドラムをぶっ敲いています。
勿論、ベースの「リチャード・デイビス」の硬派な弾きっぷりも秀逸。
テナー・サックス「フランク・フォスター」とピアノの「ビリー・グリーン」は本来花形楽器なのだが、ここではリーダー二人の師の影を踏まずといったチョイ謙虚な演奏をしている。

曲目…1.ラウンシー・リタ、2.シャイニー・ストッキングス、3.M.E、4.サマー・タイム、5.ギター・ブルース、6.ヒアズ・ザット・レイニー・デイ
1968年録音

いかすのは、まず1曲目のR&Bのラウンシー・リタが最高だ。
それと双璧が4曲目のサマー・タイムで、ここでエルヴィンとデイヴィスが11分のデュオを繰り広げて、それもデイビスは弓弾きで、Wリーダーの面目躍如です。
ギター・ブルースは何とエルヴィンのアコースティックギタープレイを聴くことができる。
ヒアズ・ザット~はフォスターのワンホーンバラードが聴き物です。

とにかくハードなのだが、飽きない(飽きさせない)アルバムです。
是非、聴いて下さいな。