紫のオルフェ~何でもかんでも気になる音楽、名曲アルバム独り言

ジャズ、ラテン、クラシックを中心として、名曲、アルバム演奏者を紹介します。&私の独り言を…

ビル・エヴァンス二世?、ニュー・ランド~エンリコ・ピエラヌンツィ・トリオ

2007-06-03 22:54:19 | ジャズ・ピアノ・ソロ~トリオ
ビル・エヴァンス亡き後、もっとも彼の音色、演奏様式、形態、に近い、「二世」とも言うべきミュージシャンが、イタリア出身の「エンリコ・ピエラヌンツィ」である。
ことに、このアルバムではベーシストに「マーク・ジョンソン」を迎えて、80年代最強の、ジャズ・ピアノ・トリオ、ユニットが完成を見て、彼等の代表作としてSJ誌の名盤募集CLUBにも選ばれた逸品である。

アルバムタイトル…「ニュー・ランド」

パーソネル…リーダー;エンリコ・ピエラヌンツィ(p)
      マーク・ジョンソン(b)
      ジョーイ・バロン(ds)

曲目…1.イフ・ゼア・イズ・サムワン・ラヴリアー・ザン・ユー、2.アイ・フォール・イン・ラヴ・トゥー・イージリー、3.ザ・ムード・イズ・グッド、4.ニュー・ランズ、5.ア・チャイルド・イズ・ボーン、6.オール・ザ・シングス・ユー・アー、7.アイ・ラヴ・ユー

1984年2月17日

演奏について…巷で最も評価されているトラックは、タイトルナンバーでもある4曲目「ニュー・ランズ」で、とにかく、エヴァンスゆかりのベーシスト「ジョンソン」の骨太で、且つ疾走するが如く高速の指使いのベース演奏が、トリオ全体をドライヴして行く。
これに追従して「バロン」のスネアショットとシンバルワークも非常に良い反応を示し、この二人のリズムに乗せて、「ピエラヌンツィ」のやや固めのタッチでモーダルな、そしてメロディアスなアドリブも大変素晴らしい出来栄えである。

個人的には2曲目「アイ~」が、非常にリリカルで官能美に溢れたピアノのアドリブ演奏がなされていて、とてもお気に入りです。
「ピエラ」のソロだけで言ったら、アルバム中ぴか一の出来です。
「ジョンソン」の対話をするような、渋めのベースライン演奏もこの曲に、印象深いアクセントになっていて、特出物です。

サド・ジョーンズ作曲の5曲目「ア・チャイルド~」は原曲自体はとても甘いメロディなのだが、ここでの「ピエラヌンツィ」は、やはりエヴァンス直系らしく、メロディアスでセンシティヴなのだが、決して甘すぎない、言わば上質の「ブランデー・ケーキ」の様な都会的な演奏がなされている。

3曲目のオリジナル曲「ザ・ムード~」も5曲目同様、原曲はとてもメロディアスと思うが、極端な甘さは排除し、特にベースを全面的に押出した、「ジョンソン・リスペクト的」な佳演である。

冒頭の「イフ~」は、オープニングから、「仮想エヴァンス」と言って良い程、「ピエラヌンツィ」の乾いた音色と、メロディアスだがやや辛口の演奏にすぐさま「エヴァンスワールド」に引き込まれて、とても心地よい。
リズムの二人も1曲目から余力を多少残しながらも、アクセル&スロットル全開で「ピエラ」をケアーしている。

6曲目は、「ジョンソン」のベースに触発されて、「ピエラヌンツィ」がアドリブを演奏し始めるが、解説書からの登用になりますが、演奏形式の専門用語で言うと「演繹」と言って、主題を後から提示する方法との事。
いずれにしろ、非常にアーバンな演奏で、このトリオのハイセンスな部分を全面的に見せつけられる演奏です。