【歴史的名盤CD選集】
~録音史上永遠の金字塔 アルトゥール・シュナーベルのベートーヴェン:中・後期ピアノソナタ集~
ベートーヴェン:ピアノソナタ第28番/第29番/第30番/第31番/第32番
ピアノ:アルトゥール・シュナーベル
CD:ANDROMEDA ANR 2542~43(2枚組)
アルトゥル・シュナーベル(1882年-1951年)は、オーストリア出身の大ピアニスト。ウィーン音楽院で学ぶが、後にベルリンに移住する。1927年にはベートーヴェンのピアノソナタの全曲演奏を開催し、“ベートーヴェン弾き”としての名声を確立する。また、1932年から1937年にかけて、世界で初めてのベートーヴェンのピアノソナタ全集とピアノ協奏曲全集を録音したことでも知られる。ナチの台頭により、1933年からはユダヤ系であるためスイスに移住し、さらに1938年からはアメリカに本拠を移して、1944年にはアメリカの市民権を取得した。このCD2枚組のアルバムには、ベートーヴェンのピアノソナタの中・後期の傑作の5曲が収められている。今聴くと、音質は古めかしいが、ゆるぎないしっかりとした音質で収録されているため、鑑賞にはさして支障とはならない。驚くべきは、疾風怒濤のごとく、鍵盤に向かうシュナーベルの力強いピアノタッチだ。男性的ピアノ演奏の極致と言ったらいいのであろうか。極力恣意な解釈を避け、客観的にベートーヴェンの世界を深く掘り下げる。これによって、ピアノソナタに託したベートーヴェンの精神世界が、リスナーの前に赤裸々に解き明かされる。シュナーベルのベートーヴェンのピアノソナタ、特にこの中・後期の傑作の5曲は、録音史上永遠の金字塔と言える。(蔵 志津久)