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★ 私のクラシック音楽館 (MCM) ★ 蔵 志津久

クラシック音楽研究者 蔵 志津久によるCD/DVDの名曲・名盤の紹介および最新コンサート情報/新刊書のブログ

◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-03-03 10:48:19 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名演CD選集】

 

~現在でも不滅の光を放つアルフレッド・コルトーのショパンの演奏~

ショパン:24の前奏曲 op.28  (録音:1933年7月5日&1944年6月20日、ロンドン)
      前奏曲 op.45      (録音:1949年6月4日、ロンドン)
      子守唄 op.57      (同上)
            即興曲第1番 op.29  (録音:1933年7月5日、ロンドン)
      即興曲第2番 op.36  (同上)
      即興曲第3番 op.51  (同上)
      即興曲第4番 op.66  (同上)
            舟歌 op.60        (同上)

ピアノ:アルフレッド・コルトー

CD:EMI CDH 7610502

 アルフレッド・コルトー(1877年―1962年)は、スイス出身のピアノの巨匠。特にショパン弾きとして一世を風靡した。ショパンの最後の弟子のドゥコンブとディエメに師事し、パリ音楽院を1等賞を得て卒業。しかし、最初からショパンのスペシャリストだったかというと必ずしもそうでもないのである。若い頃は、ワーグナーに傾倒していたらしい。1998年~1901年にはバイロイトで副指揮者を務めたというから驚き。1902年に「神々の黄昏」をパリ初演したほか、「トリスタンとイゾルデ」「パルジファル」などを指揮したという。一方、ピアニストとしては、1905年ヴァイオリンのティボー、チェロのカザルスとともに「カザルス・トリオ」を結成して活躍。また、演奏家としての顔のほか、音楽教育者としての顔を持っている。1919年に、エコール・ノルマル音楽院をパリに設立し、初代院長に就任している。正に八面六臂の活躍だったようだ。そんな、コルトーが全盛時代に録音したのがこのCDである。確かに音自体は古めかしいが、その輪郭はしっかりと捉えられており、音楽鑑賞には支障はない貴重な録音だ。力強いピアノタッチはワーグナーに傾倒していた頃の片鱗が聴き取れる一方、ピアノの詩人として抒情味溢れるその演奏内容は、特に24の前奏曲などは、現在でもその代表的録音として不滅の光を放っている。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-02-28 08:28:18 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~飛行機事故で亡くなった夭折の天才指揮者グィド・カンテルリを偲ぶアルバム~

<DISK1>

モーツァルト:「音楽の冗談」 
        交響曲第29番 
ベートーヴェン:交響曲第7番 

<DISK2>

シューベルト:交響曲第8番「未完成」 
フランク:交響曲ニ短調 

指揮:グィド・カンテルリ

管弦楽団:フィルハーモニア管弦楽団
       NBC交響楽団(フランク)

CD:EMI CLASSICS  CZS 5 68217 2 

 指揮者のグィド・カンテルリ(1920年―1956年)は、イタリアのノヴァラ出身。23歳で地元ノヴァラの歌劇場の芸術監督に就任する。第二次世界大戦後、イタリア各地のオーケストラを指揮して本格的な演奏活動を開始する。1948年にトスカニーニに認められ、これが世界的に注目されるきっかけとなった。既にスカラ座の音楽監督に就任することが決定していたが、 その8日後の1956年11月24日、ニューヨーク・フィルに客演するためアメリカに旅立つ途中、パリ郊外のオルリー空港を離陸直後に飛行機事故のため36歳で夭折。グィド・カンテルリの名前は、日本では徐々に忘れ去られつつあるようであるが、現在、井上道義が優勝したことでも知られる「グィド・カンテルリ国際指揮者コンクール」にその名を遺している。グィド・カンテルリは、如何にも典型的なイタリア人指揮者らしく、明るく、伸び伸びとした構成力、そして豊かなリズム感覚を前面に押し出した指揮ぶりが特徴だ。トスカニーニは「カンテルリは自分の指揮に似ている」と語っていたという。もしグィド・カンテルリが飛行機事故に遭遇していなかったら、カラヤンやバーンスタインに比肩しうる指揮者になっていただろうことは、このベートーヴェン:交響曲第7番とシューベルト:交響曲第8番「未完成」の録音を聴けば自ずと明らかだ。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-02-21 08:48:50 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~ドイツの名指揮者 フランツ・コンヴィチュニーが遺した貴重な“ベートーヴェン:交響曲全集/序曲集”~

<DISK1>

交響曲第1番/第2番

序曲:プロメテウスの創造物

<DISK2>

交響曲第3番「英雄」

序曲:レオノーレ第1番/第2番

<DISK3>

交響曲第4番/第5番「運命」

<DISK4>

交響曲第6番「田園」

序曲:レオノーレ第3番/フィデリオ/コリオラン

<DISK5>

交響曲第7番/第8番

<DISK6>

交響曲第9番 ソプラノ:インゲボルク・ヴェングロル
          アルト:ウルズラ・ツォレンコップフ
          テノール:ハンス=ヨアヒム・ロッチュ
          バス:テオ・アダム

          合唱:ライプツィヒ放送合唱団

指揮:フランツ・コンヴィチュニー

管弦楽:ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

CD:BERLIN Classics ETERNA 0020 005

 この6枚組のCDはドイツの名指揮者フランツ・コンヴィチュニー(1901年―1962年)が遺した「ベートーヴェン:交響曲全集/序曲集」である。コンヴィチュニーの指揮は、決して奇を衒わず、あくまで正攻法を貫き通す。このことが、とりわけベートーヴェンの交響曲を指揮する場合に大きな意味合いをもたらす。ベートーヴェンの交響曲は、これまで数多くの指揮者の録音が遺されている。言ってみれば、指揮者の数だけ解釈が存在することになり、もともとベートーヴェンが作曲した交響曲の本来の姿はどうなんだ、という素朴な疑問が湧きおこる。こんな時、コンヴィチュニーの存在意義があるのだ。コンヴィチュニーは、多くの指揮者の独自の解釈によって覆い隠されてしまったベートーヴェンがつくった交響曲の言わば原石のようなものを我々リスナーの元へと届けてくれる貴重な指揮者なのだ。自己を「無」にしたような指揮法が、逆にベートーヴェンの交響曲の本来の力強さを引き出す。実に堂々としたベートーヴェン像を描き切って見事だ。ベートーヴェンの不屈の闘志は、コンヴィチュニーの指揮によって、その真実の姿が鮮やかに蘇る。この「ベートーヴェン:交響曲全集/序曲集」を今改めて聴き直してみて、コンヴィチュニーこそは今再評価されてよい指揮者の最右翼にいることを私は実感する。(蔵 志津久) 

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-02-20 10:14:27 | 歴史的名盤CD選集


【歴史的名盤CD選集】



~ドイツの名ピアニストのワルター・ギーゼキングが弾くモーツァルト:ピアノ音楽全集(全63曲)~

モーツァルト:ピアノ音楽全集(全63曲)<K1~K616>

<Disc 1> 

1 メヌエットとトリオ ト長調 K1 
2 メヌエット ヘ長調 K2
3 アレグロ 変ロ長調 K3
4 メヌエット ヘ長調 K4
5 メヌエット ヘ長調 K5
6 グラーフのオランダ語歌曲「われら勝てり」による8つの変奏曲 ト長調 K24
7 オランダ歌曲「ウィレム・ファン・ナッサウ」による7つの変奏曲 ニ長調 K25
8 アレグレットの主題による6つの変奏曲 ヘ長調 K54 
9 メヌエット ニ長調 K94
10 サリエリの歌劇「ベネチアの定期市」のアリア「わがいとしのアドーネ」による6つの変奏曲 ト長調 K180 
11 フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲 ハ長調 K179 
12 ピアノ・ソナタ第1番 ハ長調 K279
13 ピアノ・ソナタ第2番ヘ長調 K280  
14 ピアノ・ソナタ第3番変ロ長調 K281
 
<Disc 2> 

1 ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K282  
2 ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K283 
3 ソナタ楽章(アレグロ) ト短調 K312
4 ピアノ・ソナタ第6番 ニ長調(デュルニッツ・ソナタ) K284 
5 ピアノ・ソナタ第7番 ハ長調 K309
 
<Disc 3> 

1 ピアノ・ソナタ第9番 ニ長調 K311 
2 ピアノ・ソナタ第8番 イ短調 K310
3 ボーマルシェの喜劇「セビリヤの理髪師」のロマンス「私はランドール」による12の変奏曲 変ホ長調 K354
4 カプリッチョ ハ長調 K395
5 フランスの歌「ああお母さん聞いて」による12の変奏曲(きらきら星変奏曲) ハ長調 K330
6 ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K330
 
<Disc 4> 

1 ピアノ・ソナタ第11番 イ長調(トルコ行進曲) K331
2 ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K332
3 フランスの歌「美しいフランソワーズ」による12の変奏曲 変ホ長調 K353
4 ドゼードの喜歌劇「ジュリー」の「リゾンは眠った」による9つの変奏曲 ハ長調 K264
5 ピアノ・ソナタ第13番 変ロ長調 K333
 
<Disc 5> 

1 8つのメヌエットとトリオ K315a
2 グレトリーの歌劇「サムニウム人の結婚」の行進曲の主題による8つの変奏曲 ヘ長調 K352
3 ソナタ楽章(アレグロ) 変ロ長調 K400
4 幻想曲とフーガ ハ長調 K394
5 フーガ ト短調 K401
6 幻想曲 ハ短調 K396
7 幻想曲 ニ短調 K397
8 ヘンデルの手法による組曲 ハ長調 K399
9 パイジェルロの歌劇「哲学者気取り」の「主に幸いあれ」による6つの変奏曲 ヘ長調 K398
 
<Disc 6> 

1 小葬送行進曲 ハ短調 K453a
2 サルティの歌劇「とんびに油揚」のミニヨンのアリア「小羊のように」による8つの変奏曲 イ長調 K460
3 グルックの歌劇「メッカの巡礼」の「われらが愚かな民の思うには」による10の変奏曲 ト長調 K455
4 幻想曲 ハ短調 K475
5 ピアノ・ソナタ第14番 ハ短調 K457
6 ロンド ニ長調 K485
 ソナタ楽章とメヌエット 変ロ長調 K追加136
7アレグロ
8メヌエット(アレグレット)
9アレグレットの主題による12の変奏曲 変ロ長調 K500
 
<Disc 7> 

1 6つのドイツ舞曲 K509
2 ロンド イ短調 K511
3 ピアノ・ソナタ第18番 ヘ長調 K533
4 ロンド ヘ長調 K494
5 アダージョ ロ短調 K540
6 ピアノ・ソナタ第15番 ハ長調 K545
7 ピアノ・ソナタ第19番 ヘ長調 K追加135&K追加138a

<Disc 8> 

1 ピアノ・ソナタ第16番 変ロ長調 K570
2 デュポールのメヌエットによる9つの変奏曲 ニ長調 K573
3 小さなジーグ ト長調 K574
4 ピアノ・ソナタ第17番 ニ長調 K576
5 アンダンティーノ 変ホ長調 K236
6 メヌエット ニ長調 K355
7 アダージョ(グラスハーモニカのための) ハ長調 K356
8 「女はたいしたものだ」による8つの変奏曲 ヘ長調 K613
9 アンダンテ(自動オルガンのための) ヘ長調 K616

 ピアノ:ワルター・ギーゼキング

CD:東芝EMI CC25‐3765~72(CD8枚組)

 ドイツの名ピアニストであったワルター・ギーゼキング(1895年―1956年)が遺したCD8枚組からなる、「ギーゼキング:モーツァルト/ピアノ音楽全集(全63曲)」は、今日に至るまで、その存在意義は少しも失われていない。これは、ギーゼキングが1956年、モーツァルトの200年祭を記念して録音したものであり、確かに音質自体は、最新の録音技術と比らべると、硬質で重々しいには違いないのだが、音の輪郭はしっかりと捉えられており、充分とは言えないが鑑賞に耐えられるレベルには達している。特に挙げておきたいことは、一人のピアニストが短期間で録音したことによって、一貫した流れの中でモーツァルトのピアノ音楽全63曲の全体像を掌握できることであり、このことは何事にも代えがたい素晴らしいことなのだ。当時“新即物主義”の旗手と言われたギーゼキングは、この録音でも楽譜に忠実に演奏していることが聴き取れる。そして、このことが、モーツァルトの実像を白日の下に映し出す、他に代えがたい貴重な録音ともなっている。ところが、楽譜に忠実にといってもギーゼキングの場合は、杓子定規の硬い演奏スタイルとはまったく異なる。音質自体が実に輝かしい響きを持っているし、確信に満ちたピアノタッチによって、モーツァルト独特の世界を陰影豊かに表現しているのである。(蔵 志津久) 

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-02-17 10:46:16 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~不世出の女流ヴァイオリニスト ジネット・ヌヴーの芸術~

 

ジネット・ヌヴーの芸術

<DISK1>

クライスラー:グラーヴエ ハ短調
スーク:ウン・ポコ・トリステ(4つの小品 作品17 第3曲)
    アパショナータ(4つの小品 作品17 第2曲)
ショパン(ロディオノフ編):夜想曲第20番 嬰ハ短調 遺作
グルック:メロディー(歌劇:オルフェオとエウリディーチェより)
パラティス(ドゥシキン編):シチリア舞曲
タルティーニ(クライスラー編):コレルリの主題による変奏曲
R・シュトラウス:ヴァイオリン・ソナタ 変ホ長調 作品18
ラヴェル:ツィガーヌ
ショパン(ロディオノフ編):夜想曲第20番 嬰ハ短調 遺作

<DISK2>

ラヴェル:ハバネラ形式の小品
スカルラテスク:バガテル
ファリャ(クライスラー編):スペイン舞曲(歌劇:はかなき人生より)
ディニーク(ハイフェッツ編):ホラ・スタッカート
スーク:クワジ・バラータ(4つの小品 作品17 第1曲)
    アパショナータ(4つの小品 作品17 第2曲)
    ウン・ポコ・トリステ(4つの小品 作品17 第3曲)
    ブルレスク(4つの小品 作品17 第4曲)
ドヴュッシー:ヴァイオリン・ソナタ ト短調
ショーソン:詩曲 作品25

<DISK3>

ブラームス:ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
シベリウス:ヴァイオリン協奏曲 ニ短調 作品47

 

ヴァイオリン:ジネット・ヌヴー
 
ピアノ:ブルーノ・ザイドラー=ヴィィンクラー
    クスターフ・ベック
    シャン・ヌヴー
指揮:イサイ・ドフロヴェーン(ショーソン/ブラームス)
   ワルター・ジュスキント(シベリウス)
管弦楽:フィルハーモニア管弦楽団

CD:東芝EMI TOCE-7392~94

  「不世出の・・・」という言葉があるが、天才的女流ヴァイオリニストのジネット・ヌヴー(1919年―1949年)にこそそれは相応しい。この3枚組のCDアルバムには、ジネット・ヌヴーがスタジオ録音したすべてが収められている。ジネット・ヌヴーのヴァイオリン演奏はで最初に驚かされるのは、異様とも言えるその凄まじい集中力である。これはもう人間技というより神の領域に近いとしか思えない程の集中力なのである。演奏は、全体に力強いが、よく聴くとそれらは多彩で微妙なニュアンスが含まれている。その当時、ヴァイオリンの世界最高権威と認められていたカール・フレッシュ教授は、ジネット・ヌヴーの演奏を聴き終わるなり、「あなたは天からの贈り物をさずかって生まれてきた人だ。私はそれに手をふれて、あれこれしたくない。私にしてあげられるのは、いくらかの、純粋にテクニック上のアドバイスぐらいだ」と言ったという。これを裏付けるように、1935年「ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリン演奏コンクール」で当時15歳のジネット・ヌヴーは、26歳のダヴィッド・オイストラフを破り、堂々の第1位に輝いた。誰もが将来クライスラーやティボーと並ぶ大家になるだろうと考えていた時、30歳を目前にしたジネット・ヌヴーは、アメリカ演奏旅行へと向かう航空機事故で突然この世を去ってしまう。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-02-14 07:41:27 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~曲の本質をずばりと突くヨーゼフ・シゲティのモーツァルト:ヴァイオリンソナタ集~

モーツァルト:ヴァイオリンソナタ K.301/K.303/K.305/K.302/K.296
                                          K.304/K.306/K.376/K.377
                                          K.378/K.379/K.380
                                          K.454/K.481/K.526

ヴァイオリン:ヨーゼフ・シゲティ

ピアノ:ミェチスワフ・ホルショフスキー
    ジョージ・セル(K.454/K.481)

CD:ヴァンガード OVC 8036~9(4枚組)

 この4枚組のCDには、ヨゼフ・シゲティが弾くモーツァルトのヴァイオリンソナタ18曲が収められれている。シゲティのヴァイオリン演奏は、あくまで力強く、曖昧さを極力排し、リズム感たっぷりにその曲の本質をずばりと突く。ヴァイオリン特有の美音をシゲティのヴァイオリンに求めることはできそうもないが、その分、作曲家がその曲に託した生命力を引き出す力は、どのヴァイオリニストをも上回るのだ。最初のうちは、かすれるようなシゲティ特有のヴァイオリンの音色に少々戸惑っているリスナーも、何曲も聴き進めていくうちに、シゲティのヴァイオリンの包容力の大きさに飲み込まれ、最後には「何という美しいヴァイオリン曲なのだろう」という印象を抱くようになってしまう。そんなシゲティのヴァイオリン演奏に、モーツァルトのヴァイオリンソナタは正に打って付けの曲だ。これらの曲は、モーツァルトがあたかも日々の出来事を日記に書きとめたような私的な性格を持った曲達だ。そのため、シゲティのように曲に常に真摯に向き合い、決して大上段に振りかざさない演奏内容は、リスナーの心の内深く響くのである。それに加え、ポーランド出身のミェチスワフ・ホルショフスキー(1892年―1993年)のピアノ演奏は、モーツァルト特有の美しい音楽の世界をを描き切っており、シゲティとの相性も抜群だ。(蔵 志津久) 

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-01-31 09:32:42 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~グレン・グールド、グリーグ、シベリウス、ビゼー、スクリャービン、プロコフィエフを弾く~

 

グリーグ:ピアノソナタ ホ短調 
シベリウス:ソナチネ第1番/ソナチネ第2番/ソナチネ第3番
       キュッリッキ(ピアノのための3つの抒情小品)
ビゼー:夜想曲第1番
     半音階的変奏曲
スクリャービン:ピアノソナタ第3番
プロコフィエフ:ピアノソナタ第7番

録音:グリーグ=1971年3月13日~14日
    シベリウス=ソナチネ第1番/第3番、1976年12月18日~19日
              ソナチネ第2番/キュッリッキ、1977年3月28日~29日
    ビゼー:1972年12月13日、1971年5月2日~3日
    スクリャービン:1968年1月29日~30日、1968年2月6日
    プロコフィエフ:1967年1月14日~15日、7月25日 

ピアノ:グレン・グールド

CD:CBS/SONY 60DC 822~3

 このCDに収められた曲は、いずれも非ドイツ・オーストリア系のピアノ曲の名作である。如何にもグレン・グールドが好みそうな選曲に思わず唸る。これらのピアノ曲をグールドは深い愛情を注いで演奏していることが、何よりこの録音の価値を高めている。グールドの研ぎ澄まされた感覚が一曲一曲に息づいており、それらの曲は新しい生命力を吹きかけられて、たった今作曲されたような新鮮な印象で蘇るのだ。これらの演奏すべてが鬼才グレン・グールドの隠れた名録音と言っても決して過言ではない。グールドは、力強い打鍵で曲の本質を探り当て、新鮮な感覚でメロディーを歌い、躍動感あふれるリズムに乗って格調高く演奏する。グレン・グールド(1932年―1982年)は、カナダ・トロント出身。母はノルウェーの作曲家グリーグの親族に当たるという。トロントの王立音楽院で学び、1945年にオルガン奏者としてデビューを果たす。録音のデビュー盤はバッハの「ゴルトベルク変奏曲」で、これが大ヒットし一躍その名が世界に知れ渡る。その後、演奏会からの引退を宣言した後、1964年3月のリサイタルを最後にコンサート活動からは一切手を引いてしまう。グールドは、生涯ショパンやリストは演奏しなかったが、バッハ、リヒャルト・シュトラウス、シベリウス、シェーンベルクなどの曲を好んで弾いた。(蔵 志津久) 

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2017-01-17 12:39:32 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~他に比類のないほどの高みに達したディーター・ツェヒリンのシューベルト:ピアノソナタ全集~

シューベルト:ピアノソナタ全集<第1番~第21番>(CD7枚組)

ピアノ:ディーター・ツェヒリン

録音:1972年、1974年

CD:徳間ジャパン(ドイツシャルプラッテンレコード) 32TC‐166~172

 シューベルトは、生涯に21曲のピアノソナタを書いたとされている。これらの中には未完成の作品や断片的の作品もあり、1つの曲とされる作品ももとは2つの作品ではなかったかといったことも言われるものもある。そのため21曲という曲数に拘る必要はないようだ。これらのピアノソナタは、中期から後期にかけて充実度が急速に高まり、最後の4曲、第18番~第21番は、ベートーヴェンの後期3大ピアノソナタにも匹敵するような傑作となっている。このシューベルト:ピアノソナタ全集のCDでピアノを演奏しているのは、旧東ドイツで高い評価と尊敬を集めた大家ディーター・ツェヒリン(1926年―2012年)。ライプツィヒおよびワイマルの音楽院で学び、1949年リスト賞を受賞。ドイツ民主共和国国家賞、ローベルト・シューマン賞などの受賞歴を持つ。ディーター・ツェヒリンは、決してスター性を持った華やかな性格のピアニストではなかったが、このCDでは、シューベルトのピアノソナタの持つ詩的な美しさを存分に引き出すことに成功している。楽譜に忠実ではあるが、決して硬くはなく、繊細で瑞々しいピアノタッチが強く印象に残る。シューベルトのピアノソナタ1曲、1曲では、他にも優れた録音はあろうが、ピアノソナタ全集としては、他に比類のないほどの高みに達したアルバムと言える。音質も良好。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2016-12-27 09:10:39 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~ピアノの巨匠 スビャトスラフ・リヒテルによるベートヴェン作品のライヴ録音盤(CD4枚組)~

①ベートーヴェン:ピアノソナタ第19番/第20番/第22番/第23番

  ピアノ:スビャトスラフ・リヒテル

  録音:1992年11月、アムステルダム、コンセルトヘボウ(ライヴ録音)

②ベートーヴェン:ピアノソナタ第30番/第31番/第32番

  ピアノ:スビャトスラフ・リヒテル
  
  録音:1991年10月、ドイツ、ルートヴィヒスブルク(ライブ録音)

③ベートーヴェン:ピアノソナタ第18番/ロンドop.51-1/ロンドop.51-2/ピアノソナタ第28番

  ピアノ:スビャトスラフ・リヒテル

  録音:1992年10月(ピアノソナタ第18番)、オランダ(ライヴ録音)
      1986年6月(ロンドop.51-1、2/ピアノソナタ第28番)、オランダ(ライヴ録音)

④ベートーヴェン:ピアノ三重奏曲第7番「大公」

    ピアノ:スビャトスラフ・リヒテル

    演奏:ボロディン弦楽四重奏団員

 ベートーヴェン:五重奏曲 op.16~ピアノ、オーボエ、クラリネット、ホルン、バスーンのための~

    ピアノ:スビャトスラフ・リヒテル

    演奏:モラゲス木管五重奏団員

    録音:ロシア(ライヴ録音)

CD:フィリップス 438 486‐2<①、②>/483 624‐2<③、④>

 この全部で4枚のライヴ録音のCDには、「RICHTER -THE AUTHORISED RECORDINGS- BEETHOVENⅠ/Ⅱ」という統一タイトルが付けられている。スビャトスラフ・リヒテル(1915年―1997年)が公認したベートーヴェンの作品の演奏会の録音という意味であろう。要するにライヴ録音によって、リヒテルが実際のコンサートでベートーヴェンをどのように演奏したかが手に取るように聴き取ることができる。音質もすこぶる良く、リヒテルの演奏をすぐ傍で聴いているような錯覚に陥るほどだ。若い頃のリヒテルのスタジオ録音を聴くと、その力感に圧倒される思いがするが、このCDの録音時期は1986年~1992年とリヒテル晩年の時のものだけに、若い時の鋼鉄のような強靭さは鳴りを潜め、その代り繊細で安定した演奏を聴くことができる。ベートーヴェンのピアノソナタは、何かひとり遠い過去を振り返って演奏しているような、深い情感に満ち溢れてたものになっている。一方、ボロディン弦楽四重奏団員およびモラゲス木管五重奏団員との共演によるベートーヴェンの室内楽の2曲の演奏は、リヒテルと名手たちとの闊達なやり取りが生き生きと録音され、聴き応えがある。不世出の大ピアニスト リヒテルの生の演奏会の模様がこのような鮮明な録音によって残されていることは、限りなく嬉しいことだ。(蔵 志津久)

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◇クラシック音楽◇歴史的名盤CD選集

2016-12-20 08:15:24 | 歴史的名盤CD選集

 

【歴史的名盤CD選集】

 

~クララ・ハスキルとヒンデミットの共演のライヴ録音盤~

モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番
ヒンデミット:4つの気質~ピアノと弦楽オーケストラのための主題と変奏~

ピアノ:クララ・ハスキル

指揮:パウル・ヒンデミット

管弦楽:フランス国立管弦楽団

録音:1957年9月22日、スイス、モントルー(ライヴ録音)

CD:MUSIC&ARTS

 このCDは、1957年9月22日にスイスのモントルーで行われた演奏会のライヴ録音盤である。興味深いのは、名ピアニストのクララ・ハスキルの演奏会での生の演奏が聴けることと、作曲家のヒンデミットが指揮をしていることである。今から59年前の録音で、しかもライヴ録音だということなので、音質は期待できないと思いきや、鑑賞に支障がないほどの音質が保てており、クララ・ハスキルのピアノのタッチも明瞭に捉えられている。スタジオ録音と同じく、クララ・ハスキルのピアノ演奏は、独特の典雅さに満ち溢れたもので、その澄んだピアノの音はモーツァルトのピアノ協奏曲の演奏には最も相応しい。クララ・ハスキル(1895年―1960年)は、ルーマニア出身のピアニスト。15歳でパリ音楽院を最優秀賞で卒業し、ヨーロッパ各地で演奏活動に入る。生涯病身であったため、正当な評価が与えられたのは第二次世界大戦後の1950年以降のことであった。レパートリーは、古典派と初期ロマン派が中心であるが、最も秀でたモーツァルト弾きとしての名声を得た。スイスでは1963年より「クララ・ハスキル国際ピアノ・コンクール」が開かれている。パウル・ヒンデミット (1895年―1963年)は、ドイツ出身の作曲家で生涯に600曲以上を作曲。1934年の“ヒンデミット事件”でも知られる。
(蔵 志津久)

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