ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

がん:ビタミンC、マウス大量投与で増殖半分に=米国立衛生研究所(NIH)

2008年08月06日 | 食品・栄養

 ビタミンCをマウスに大量投与することで、がん細胞の増殖を半分に抑えることができたとの実験結果を、米国立衛生研究所(NIH)の研究チームが米科学アカデミー紀要(電子版)に発表した。

 チームによると、約30年前にビタミンCががんに有効だと注目されたが、その後の実験で否定された。今回は、効果が否定された経口投与ではなく、体内に直接注入。「副作用もなく、人間への適用も可能だ」としている。

 実験ではまず、43種類のがん細胞と5種類の通常細胞に、ビタミンC(アスコルビン酸)の溶液を加えると、通常細胞に変化はなかったが、がん細胞のうち33種類では細胞の半分以上が死滅した。

 次に、腹腔(ふくくう)内にそれぞれ子宮がん、膵臓(すいぞう)がん、脳腫瘍(しゅよう)の細胞を植え付けたマウスに、体重1キロ当たり4グラムという大量のアスコルビン酸を毎日投与すると12~30日後に、投与しなかった場合に比べてがんの重さが41~53%に抑えられた。副作用もみられなかった。

 アスコルビン酸から発生した過酸化水素ががん細胞に作用したとみられるという。(ワシントン共同)

[毎日新聞 2008年08月06日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080806k0000e040070000c.html


ビタミンC療法は、いつもたくさんのニュースが報じられています。
この記事では、いつもの抗酸化作用ではなく、強い酸化作用を持つ過酸化水素が主役とか。
通常の細胞は過酸化水素を中和する機能を持っているのに対して、がん細胞はその機能がないために破壊されるようです。
それにしても体重1kg当たり4gを毎日って‥ずいぶん大量投与ですね。
ちゃんと立証され、多くのがん患者に朗報がもたらされることを期待したいと思います。

海馬の神経細胞、カフェインで増強 研究チーム発表=北海道大学

2008年08月05日 | 心のしくみ
 記憶や学習に重要な役割を果たす脳の「海馬」の神経細胞が、心筋の細胞が収縮するのと同じ仕組みで記憶を形成し、その働きがコーヒーなどに含まれるカフェインによって増強されることを、北海道大などの研究チームが明らかにした。研究チームは「認知症や記憶障害の薬の開発につながる可能性がある」と話す。5日、米科学アカデミー紀要電子版に掲載された。

 北大の神谷温之教授(神経生物学)らは、マウスの海馬の切片にカフェインを加えた。その結果、細胞内のカルシウムの濃度が高まり、30~60分間、神経回路の信号伝達が良くなった。

 カルシウム濃度が高まったのは、「2型リアノジン受容体」と呼ばれるたんぱく質の働きが高まったためとみられる。このたんぱく質は心筋細胞に多く存在し、細胞内の「小胞体」という小器官に蓄えられたカルシウムイオンを放出させ、心筋を収縮させる。研究チームは、心筋収縮と同様の仕組みで、海馬での記憶形成が増強されたとみている。

 カフェインには、筋肉を収縮させる働きがあることが知られている。神谷教授は「実験で使ったカフェインは高濃度なので、コーヒーを飲むくらいでは記憶への影響はない。だが、カフェインや同様の働きを持つ物質から、認知症などの薬を開発することができるかもしれない」と話す。【山田大輔】

[毎日新聞 2008年08月05日]
http://mainichi.jp/select/science/news/20080805k0000e040035000c.html

タミフル:高濃度投与、ドーパミン異常増加 「ヒトの10代に相当」ラットで実験=自治医科大学

2008年08月03日 | 薬理
 インフルエンザ治療薬「タミフル」(一般名リン酸オセルタミビル)を高濃度に投与されたラットは、神経伝達物質「ドーパミン」が異常に増加することを、加藤敏・自治医科大教授(精神医学)らが突き止めた。研究チームの吉野達規客員研究員は「ヒトの異常行動との関係は不明だが、タミフルが脳の機能にどんな影響を及ぼすのか精査したい」としている。

 研究チームは、体重200~250グラムのラット(生後約2カ月、ヒトの10代に相当)を3群に分け、それぞれに2種の異なる濃度のタミフル水溶液と、水だけを投与。脳内ドーパミンの量を直接測定できる手法を使い、検出可能な4時間後まで測定した。

 タミフルを投与したラットは、1時間後から脳内ドーパミンの量が増加。4時間後には体重1キロ当たり25ミリグラム(ヒトの幼小児1回投与量の12・5倍に相当)のタミフルを投与したラットでは、水だけを投与したラットに比べドーパミンの量は約1・5倍に増えていた。100ミリグラム(同50倍)を投与したラットでは約2・2倍になった。さらに、投与後10分以内に腹を上にした状態が数分間観察された。

 一方、別の神経伝達物質「セロトニン」の量は、タミフルを投与してもほとんど変化しなかった。

 ドーパミンが過剰に分泌されると幻覚などを起こすとされる。タミフルを飲んだ10代が飛び降りなどの異常行動を起こし、厚生労働省作業部会が、タミフルと異常行動の関連を検討している。ラット実験ではタミフルや、その代謝物が感情や行動に影響するデータは得られなかったと報告されている。

 オランダの医学誌「ニューロサイエンスレターズ」に掲載された。【大場あい】

[毎日新聞 2008年08月03日]

http://mainichi.jp/select/science/archive/news/2008/08/03/20080803ddm016040053000c.html