ラットは今日も、きみのために。

マウスも研究者も頑張っています。
医学研究関連記事の新聞紙面から切り抜き
再生医療、薬理学、生理学、神経科学、創薬

細胞内時計にスイッチとアクセル、たんぱく質2種を発見=京都大学

2007年08月07日 | 蛋白質
 細胞内で2時間周期で増減し、脊椎(せきつい)などの体の節を形成するのに不可欠な「時計たんぱく質」のスイッチとアクセルの役目を果たしている二つのたんぱく質を、京都大ウイルス研究所の影山龍一郎所長(分子生物学)らが突き止めた。時計たんぱく質と連動して2時間周期で働いており、正確な時を刻むための仕掛けとみられる。6日付の米科学誌「デベロップメンタル・セル」に掲載された。

 影山所長らは、これまでマウスの細胞で「Hes7」という時計たんぱく質が2時間周期で増減し、脊椎など体節を作り出すのに不可欠であることを突き止めている。

 今回、時計たんぱく質・Hes7の増減に、「Fgf」と「Notch」という二つのたんぱく質がかかわっていることが新たにわかった。Fgfから信号が出ると、次第にNotchが働き出し、Hes7が増え始める。いずれも2時間周期で増減を繰り返した。二つのたんぱく質の働きを抑える薬を加えるとHes7の増減が見られず、体節ができなくなることも確認された。

[読売新聞(大阪) / 2007年8月7日]
http://osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20070807ke06.htm


「プリオン病」治療に道、抑制物質を発見=岐阜大学

2007年07月03日 | 蛋白質
 脳神経が破壊されるウシのBSE(牛海綿状脳症)や人間が感染するクロイツフェルト・ヤコブ病などの「プリオン病」の進行を抑制する物質を、岐阜大学人獣感染防御研究センターの桑田一夫教授らの研究グループが突き止めた。

 動物実験で、この物質が脳内に蓄積する異常プリオンを激減させることを確認、治療法につながる成果として注目されそう。研究成果は、米国科学アカデミー紀要(電子版)に掲載される。

 プリオン病は、脳内にもともと存在する正常プリオンが変化して、異常プリオンとなり、これが蓄積して発症する。

 プリオンは、約230~253個のアミノ酸で構成されるが、桑田教授らは、異常プリオンでは、159番目のアミノ酸(アスパラギン)と196番目のアミノ酸(グルタミン酸)との間の距離が、正常プリオンの約3倍に広がっていることに着目した。

 コンピューター上で、32万種類の化合物の中から、距離の広がりを食い止める可能性を持つ44種類の化合物を抽出。その中から、アスパラギンとグルタミン酸との距離が広がらないよう、つなぎ止める働きのある鎖状の化合物「GN8」を作り出した。

 実験では、異常プリオンを持続的に発現するマウスの培養神経細胞に、この「GN8」を投与したところ、異常プリオンを半分に減らすことができた。また、プリオン病を発症させたマウスに、GN8を投与したところ、食塩水だけを投与した場合と比べて、生存期間が長くなった。

 研究グループは、異常プリオンをより効果的に減らすことができるようにGN8を改良し、治験などを行いたいとしている。

 GN8 岐阜大の頭文字「G」と共同研究者である長崎大の頭文字「N」をとってつけた化合物の名称で、自然界には存在しない物質。炭素、窒素、水素、酸素からなる有機化合物で、岐阜大学が独自の論理的創薬方法で作り上げた。

[読売新聞 / 2007年07月03日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070703i503.htm

「プリオン病」治療に道、岐阜大チームが抑制物質を発見(読売新聞) - goo ニュース

体内カルシウム:濃度制御のたんぱく質解明=京都大学

2007年06月15日 | 蛋白質
 ほ乳類の体内のカルシウム濃度の維持、調節を担う根本的な機能を「αクロトー」というたんぱく質が持っていることを、京都大の鍋島陽一教授(分子生物学)らの研究チームが明らかにした。カルシウム濃度は、ビタミンDやPTHといったホルモンによって調節されるメカニズムは分かっていたが、今回、ホルモンを使わない調節機構を明らかにし、更に個々の調節メカニズムを統合的に制御するシステムを解明した。鍋島教授は「ビタミンDやPTHの発見以来、60~70年を経てカルシウム調節の統一的原理が解明された」としている。15日、米科学誌「サイエンス」で発表される。

 カルシウムはほ乳類の体に必須の分子で、極端に不足すると心臓や神経の活動が停止するため、体内の濃度は厳密にコントロールされている。

 鍋島教授らは97年、カルシウム代謝異常によって、さまざまな病的老化症状を起こす遺伝子としてαクロトーを発見。その機能を調べていた。

 αクロトーは、腎臓と脳、首にあるカルシウム調整に深くかかわる臓器3カ所にほぼ限定して発現することを発見。細胞内の「ナトリウム(Na)ポンプ」という分子と結合、複合体を作っていることを突き止めた。

 この複合体は、腎臓と脳では、細胞内のカルシウムを適時排出し、血液と脳を浮かべる脳脊髄(せきずい)液などで濃度を調整していた。また、血液中のカルシウム濃度を上げるホルモンPTHの分泌を促す機能も持ち、αクロトー単体でも腸でのカルシウム吸収量調節などの働きがあるビタミンDの活性化の調節をするなど、あらゆるカルシウム調整機能の“司令塔”の役目を担っていることも分かった。【奥野敦史】

[毎日新聞 / 2007年06月15日]
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/archive/news/2007/06/20070615ddm003040009000c.html

遺伝情報運ぶたんぱく質、「歩く」仕組みを解明=早稲田大学

2007年05月25日 | 蛋白質
 細胞内での「荷物の運び屋」と呼ばれる、ごく小さなたんぱく質が、まるで二本足で歩いているかのように動く仕組みを、早稲田大理工学術院の木下一彦教授(生物物理学)らのチームが解明した。

 分子レベルの微細な機械(ナノマシン)の開発にもつながる成果で、25日発行の米科学誌「サイエンス」に掲載される。

 このたんぱく質は「ミオシン5」で、大きさは1万分の1ミリ程度。細胞内で、遺伝情報を担っているリボ核酸(RNA)などを運ぶ役割をしている。逆V字の形に開いた2本の足のようなパーツを持っており、その足を使って、まるでレールの上を進むように、細胞内の線維上を一定方向に移動していく。

 木下教授らは、その足に目印となる大きなたんぱく質を結合させた上で、顕微鏡を使ってビデオ撮影し、その動きを詳しく調べた。

 その結果、ミオシン5はまず、両足が分岐する「股(こ)関節」部分を前に押し出すことで、線維にくっついている「後ろ足」を線維から離していた。次に、線維から離れて自由に動くようになった「後ろ足」に、水分子が衝突して、「後ろ足」が回転。その結果、「後ろ足」は前方の線維に着地していた。これを交互に繰り返すことにより、約2分間で2000分の1ミリの距離を「歩行」していた。

[読売新聞 / 2007年05月25日]
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20070525ik01.htm

早稲田大学 プレスリリース
『分子モーター、ミオシン5の歩く様子を直接観察』
http://www.waseda.jp/jp/pr07/070525_p.html

筋委縮性側索硬化症(ALS)の症状進行を遅らせる動物実験に成功=UCSD

2006年12月16日 | 蛋白質
全身の運動機能がまひする難病「筋委縮性側索硬化症(ALS)」の症状進行を遅らせる動物実験に、米カリフォルニア大サンディエゴ校(UCSD)のドン・クリーブランド教授らが成功した。

 研究チームは、SOD1という酵素が異常だと、これが脊髄(せきずい)にあるミクログリアという免疫細胞を傷つけ、ALSの症状の進行につながることを解明。この酵素の鋳型となる核酸(伝達RNA)とぴったり結合して、鋳型をふさいでしまう構造の核酸(アンチセンス)を合成した。

 これを、ALSの症状を模したラットの脳内に、生後65日で注入した。このラットは通常、生後95日でALSを発症し、同平均122日で死亡するが、アンチセンスを注入したものは、発症後の進行が遅く、同132日まで生き延びた。

 中枢神経への薬剤注入はポンプを体内に埋め込む方法が鎮痛用に実用化されており、
研究チームは「1年以内に臨床試験を始めたい」と話している。

【ワシントン=増満浩志】
[2006年12月16日/読売新聞]

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20060728i313.htm