シネマ見どころ

映画のおもしろさを広くみなさんに知って頂き、少しでも多くの方々に映画館へ足を運んで頂こうという趣旨で立ち上げました。

「翔んで埼玉~琵琶湖より愛をこめて~」(2023年 日本映画)

2024年01月03日 | 映画の感想・批評

 
 魔夜峰央の同名漫画の映画化で、予想もしない(?)大ヒットを記録した前作の続編。自虐的な埼玉県ディスの連発が地元で受け、大きなうねりとなって全国的なヒットへと繋がっていったのだが、日本アカデミー賞では最優秀監督賞をはじめ、12部門で賞を獲得。続編を期待する声が高まり、ついに伝説の第Ⅱ章が完成した。
 今回の主な舞台は関西。東京都民から迫害を受けていた埼玉県人は、麻実麗率いる埼玉解放戦線の活躍によって自由と平和を手に入れたが、更なる平和を求めて「日本埼玉化計画」を推し進める中で、越谷に海を作ることを計画。白浜の美しい砂を求めて和歌山へとやってくる。そこで麗は滋賀解放戦線の桔梗魁と運命的な出会いを果たすことになるのだが・・・。
 関西にもひどい地域格差や通行手形が存在し、大阪には粉もので日本全国を大阪植民地化しようという計画もあり、我が滋賀県民は奈良、和歌山と共にディスられの頂点にさらされていた。普段は琵琶湖以外これといって注目されていない滋賀県なのだが、今回の映画化ではその存在を全国に知ってもらう絶好の機会ということで、三日月知事も全面協力。埼玉県知事と共にTV出演をしたり、独自のチラシを作ったりしてPRに余念がない。前作の大ヒットに気を良くしたのか、制作費も相当羽振りがよかったはずで、CGのレベルは上がり、登場人物やエキストラの数、美術品へのこだわりなど、前作より数段スケールアップした内容となっている。
 また今回のGACTO、二階堂ふみ、加藤諒らの埼玉勢に加え、彼らと共に戦うキーパーソン滋賀解放戦線の桔梗魁役に、宝塚歌劇のオスカルを思い起こさせる杏。関西のドン大阪府知事に片岡愛之助、神戸市長に藤原紀香、京都市長に川崎麻世と、実際の出身地の代表としてこの上ないキャスティングは大成功。関西色いっぱいの自然な笑いに頬は緩みっぱなしだ。
 うれしかったのは滋賀県出身の俳優たちが頑張っていたこと。TVドラマ「たとえあなたを忘れても」の主演で注目された我が長浜市出身の堀田真由は滋賀解放戦線の近江美湖役で登場。眉を滋賀ナンバーの車同様ゲジゲジ眉にするところなんか、滋賀出身であることを誇っているようで、その吹っ切れた表情には更なる飛躍を予感させた。お笑い芸人でありながら画家、ミュージシャンとしても活躍中の野性爆弾のくっきー!も、俳優としての可能性を一段と高めたような気がした。他にも滋賀のジャンヌ・ダルク役として高橋メアリージュン、滋賀解放戦線員役としてダイアンの津田篤宏と、滋賀を愛するメンバーが続々登場。前作でも盛り上がった出身地対決のシーンでは、やっぱり出たか!と思える関西出身の有名人の顔写真が次々と掲げられ、思わず出身県の人物を応援している自分に郷土愛を感じてしまうのも確かだ。
 ご当地スーパー平和堂のカードやテーマソング、とびだしとび太の看板、うみのこ学習船等、滋賀県人ならわかるネタ、パロディ、オマージュなど実際にあるものがたくさん散りばめられていて、それを見つけ出すのもなかなか楽しい。ただ琵琶湖でのロケが少なかったのか、島の位置などで違う湖に見えてしまったり、とび太の看板がゴミと化すシーンでは、少し興ざめしてしまった。これも滋賀と美しい琵琶湖をこよなく愛するからこそ出てくる感情からなのだろうか。
 伝説の舞台は関西に移ったとはいえ、映画の題名は「翔んで埼玉」。現代パートの舞台は引き続き埼玉だし、大宮と浦和のライバル関係や、薄い横の繋がりを解決するJR線の紹介と、埼玉愛も引き続き健在。とはいえこの作品、ディスられても耐えられる力がある地域だからこそ成り立つというもので、第3弾の可能性は果たして・・・?!
(HIRO)

監督:武内英樹
原作:魔夜峰央
脚本:徳永友一
撮影:谷川創平
出演:GACTO、二階堂ふみ、杏、片岡愛之助、藤原紀香、川崎麻世、堀田真由、くっきー(野性爆弾)、加藤諒、天童よしみ、和久井映見、アキラ100% 瀬戸康史、高橋メアリージュン、津田篤宏(ダイアン)、モモコ(ハイヒール)、山村紅葉