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「ブレードランナー2049」(2017年 アメリカ映画)

2017年12月06日 | 映画の感想・批評
 
 35年前に2019年のロサンゼルスを描き、その独特の未来像や世界観が評価され、SF映画の金字塔ともいえる作品となった「ブレードランナー」。2019年といえば、あと2年後に迫る。さすがに空飛ぶ車(スピナー)はまだ出現していないが、EV車が増加し、自動運転が可能な車も出てきた。予想を上回る進歩を遂げたのがコンピューターの世界で、今では後進国でもスマートフォンが普及し、子どもたちが巧みに操る。ネオンはLEDへと進化し、人間そっくりのレプリカントとまではいかないが、ロボットたちの進化も著しい。今一度前作が描いた世界と現実とを比べてみると、その進歩とともに生きてきた者にとっては、非常に感慨深いものがある。
 さて、新作の「ブレードランナー」は、さらに30年後、2049年の世界を描いている。この映画がファンにとって嬉しいのは、前作のラストで新型の女性レプリカントに恋をして逃亡を図ったブレードランナー・デッカード捜査官の後日譚が含まれていること。35年の時を経て同じ役を堂々と演じることができるなんて、ハリソン・フォードって、やっぱりすごい!彼が出てきたとたん、自然とぐいぐいスクリーンに引き込まれていく自分に気づく。待ってました!!
 新たなるブレードランナーとして登場した新型レプリカントの捜査官“K”。なんと30年後には新しいレプリカントが旧型レプリカントを追跡し、処理をしているのだ。しかも記憶もインプットされていて、感情も人間に近いものがある。それゆえ自らのアイデンティティを知りたくなったり、夢や希望を持ちたくなることも…。この“K”を演じているのが「ラ・ラ・ランド」でブレイクしたライアン・ゴズリング。前作では、降りしきる酸性雨の中で、4年という限られた命が終わる時を悟り「もっと生きたい!」と嘆きつつ静かに目を閉じたルドガー・ハウワーも強烈な印象を残したが、今作のラストでも降り出した雪の中で、自らの運命を嘆く“K”の姿に心打たれる。レプリカント故の悲哀に満ちた名シーンとなった。
 本作の生みの親リドリー・スコットの世界観を受け継ぎ、さらに進化させたのはカナダ出身のドゥニ・ヴィルヌーヴ監督。今後の活躍がますます期待される。30年後、2049年の世界も自分の目で確かめてみたくなった。・・・無理か?!
(HIRO)

監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴ
脚本:ハンプトン・ファンチャー、マイケル・グリーン
撮影:ロジャー・ディーキンス
出演:ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、アナ・デ・アルマス、シルビア・フークス、ジャレッド・レト、ロビン・ライト