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「ビジランテ」(2017年 日本映画)

2017年12月20日 | 映画の感想・批評
 地方都市を舞台に、男3兄弟の少年期から大人になり、それぞれが波乱万丈な人生を送る、そして、一部の人は悲しい結末を迎えるシュールな物語である。
 冒頭、小学生中学年から中学生くらいの幼い3兄弟が、父親から相当な叱咤を受けて、長男が弟達を置いて、家を飛び出していくシーンから始まる。その後、一挙に時間が進み、大人になった次男は市議会議員に、三男はデリヘルの雇われ店長をしている。その中、父親が亡くなり、葬式が済んだ直後、土地の相続に関係して、行方不明だった長男がヤクザの端くれとなって出戻り、そこに、次男と三男も巻き込まれていくという展開で物語が進んでいくのである。
 最初は、今年5月公開の「追憶」の設定に似ている印象を持ったが、本作の方が、一般的に社会の暗部と云われている世界で生きている人間が多く、バイオレンス要素も多く、「アウトレイジ」以上の暴力の世界を描いているように感じた。
 ただ、そういったバイオレンスの中にも、「人の優しさ」が垣間見られるのが、三男の行動である。その行動に救われたように思う。デリヘルの女の子に慕われ、自分が追い込まれている状況でも、自分の信念を曲げず、女の子(弱い立場の人という解釈で)を、最後まで守ろうとする。本当に優しい人って、こういう人を云うのだろうかと思った。その分、自分を追い込み過ぎて悲しい結果を招いてしまうようにも思うが・・・。外見では、次男が優しい人のように見えるが、自分や家族の地位を優先する腹黒い人間であった。人は見た目では分からないものである。
 入江悠監督の前作「22年目の告白-私は殺人犯です-」を見逃しており、本作品が監督の初鑑賞となった。オリジナリティー溢れる脚本と迫力のある映像に期待して、前作を観てみようと思った。
(kenya)

監督・脚本:入江悠
撮影:大塚亮
出演:大森南朋、鈴木浩介、桐谷健太、篠田麻里子、嶋田久作、間宮夕貴、吉村界人、般若、坂田聡、岡村いずみ、浅田結梨、八神さおり、宇田あんり、市山京香、たかお鷹、日野陽仁、菅田俊他