シネマ見どころ

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「ヘイトフル・エイト」(2015年アメリカ映画)

2016年03月11日 | 映画の感想・批評
 見渡す限りのワイオミングの雪原。ひとりの黒人が立ち竦んでいると、そこへ駅馬車が通りかかる。馬車にはお尋ね者の女を町まで連行するところだという賞金稼ぎの男が乗っており、黒人を乗せてやる。今にも猛吹雪が襲おうという悪天候の中、目的地へ急ぐ駅馬車の前に、保安官に任命されたばかりだという若い男が現れて拾われ、御者と4人の男女が避難場所の一軒家に到着するのである。
 馬車を引く先頭の2頭の馬(白と黒)が雪の中を疾走するところをクローズアップで捉える冒頭のスタイリッシュなカメラワークが何ともタランティーノらしい。そのあとは、どちらかというとアクションを抜きにした舞台劇のような進行で一軒家の中の人間模様をクセ者役者たちのやりとりで見せるのだ。ただし、終盤は血しぶきが飛ぶバイオレンスのオンパレードだからタランティーノ・ファンはご安心を。
 北軍の元軍人で今は賞金稼ぎを生業としている黒人にサミュエル・L・ジャクソン、かれと旧知の賞金稼ぎにカート・ラッセル、その手錠につながれて吊るし首を待つ女にジェニファ・ジェイソン・リー。荒野の一軒家の先客たちも個性派ぞろいで、南軍の元将軍にブルース・ダーン、絞首刑の執行人として町へ赴く途中だという男にティム・ロス、得体の知れないカウボーイにマイケル・マドセン。かれらに保安官、一軒家の世話人、御者を合わせた男女が雪嵐の通り過ぎるまで一つ屋根の下で過ごすことになるのだが、いがみあっている最中に殺人事件が起きる。
 ところで、最初のタイトルで出演者のトリを飾る、今をときめく人気スターが待てど暮らせど一向に姿を現さない。おかしいなと思っていると、これがこの映画のドンデン返しの仕掛けだったりして、タランティーノはまったく油断ができないのである。
 というわけで、お楽しみ満載のマカロニウェスタン風味の大ぼら話をとくと玩味いただきたい。むろん、エンニオ・モリコーネのテーマ曲(アカデミー賞受賞)もいい。(健)

原題:The Hateful Eight
監督:クエンティン・タランティーノ
脚本:クエンティン・タランティーノ
撮影:ロバート・リチャードソン
出演:サミュエル・L・ジャクソン、カート・ラッセル、ジェニファー・ジェイソン・リー、ティム・ロス、マイケル・マドセン、ブルース・ダーン、チャニング・テイタム