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 4月から障害者への配慮を大学に義務づける法律が施行される。受験時の配慮は進んでいるが、入学後の対応は遅れがちだ。特に8年前の20倍以上に急増した発達障害の大学生についての体制づくりが課題になっている。

 

■「相談場所を増やして」 大学生・院生、8年前の20倍

 都内の男子大学生は、愕然(がくぜん)とした。2時間前、友人と分担してゼミの課題を始めたが、担当分が何も進んでいない。インターネットで有名人のブログを読んでいた。

 広汎(こうはん)性発達障害があり、「優先順位をつけることや空気を読むのが苦手。グループワークで迷走しないかいつも気がかり」と話す。

 発達障害は、広汎性発達障害注意欠陥・多動性障害学習障害などの総称で、知的障害を伴うこともある。大学では、

・教室移動や履修登録ができない

・ノートがとれない

・提出物を忘れる

・友人ができない

・物事の処理が遅い

などの形で表れ、それを苦に通わなくなる学生も。日本学生支援機構の調査(2014年度)では、発達障害がある大学生・院生で卒業したのは7割未満、就職したのはその約3割だ。

 同機構によると、発達障害の診断書を持つ大学生・院生は14年度に2282人。学生全体の0・1%未満だが、8年前(108人)の21倍だ。文部科学省は12年の推計で公立小中学生の6・5%に発達障害の可能性があるとしており、「把握できているのは一部にすぎない」(大学関係者)という。

 05年の発達障害者支援法施行や小中高校での特別支援教育の開始などで障害が広く知られ、受験時の配慮も進んだ。入試の多様化も進学を後押しした。一方、大学での少人数授業や共同作業などは、発達障害の学生の多くが不得意。だが、大学の対応は必ずしも十分ではない。