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西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鏡獅子―54

2009-06-20 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―6


そして、”飛騨踊り”を、やはり「枕獅子」から引用。
ただし、大幅にカット。

『早乙女がござれば
 苗代水や五月雨
 初の人にも馴染むはお茶よ
 ほんにさ』

(意訳)
「早乙女がお出ましになれば
 五月雨が降り、苗代に水がいっぱい
 初めての客も振らないのが、散茶女郎の身上さ
 本当だよ」

 
ちなみに「枕獅子」はこうだ。

『早乙女がござれば
 苗代水や皐月雨
 初の人にも馴染むはお茶よ
 誰が邪魔して薄茶となる
 なるならば こちゃ
 こちゃこちゃ知らぬ
 ほんにさ』

「鏡獅子」の主人公は、御殿勤めの小姓弥生だから、
遊女の恋の鞘当ては、この際不要ということだろう。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―53

2009-06-18 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―5


”川崎音頭”が終わると、やはり、「枕獅子」から
そのまま引用(詳しくは5月20日参照のこと)。


『春は花見に 心移りて山里の
 谷の川音雨とのみ 聞こえて松の風
 実に過って 半日の客たりしも
 今身の上に白雲の
 其の折過ぎて 花も散り 
 青葉茂るや 夏木立
 飛騨の踊りは 面白や』


(意訳)
「春は花見よね
 心浮き浮き山の里
 (ここからは「石橋」の世界に飛ぶ)
 昔この山で女に出会い、
 ほんの半日ばかり楽しんで、
 家に帰ると 7代も先の時代になっていた
 という話があったが さもありなん
 春は過ぎ、花は散り
 青葉の茂る 夏が来た
 飛騨の踊りは 面白い」
 
 
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 tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―52

2009-06-17 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―4

ちなみに「枕獅子」川崎音頭はこうだ。

『人の心の 花の露
 濡れにぞ濡れし鬢水の
 はたち鬘の水くさき
 道理流れの身じゃものと
 人に謳われ 結い立ての
 櫛の歯にまで かけられし
 平本結いの結髷も
 痒い所へ簪の
 届かぬ人につながれて
 帽子おさえの針の先
 つくづくどうか こうがいの
 ひぞりも鶴のはしたなく
 梯子あげやの 別れ坂』

何ともポイントを押さえた言い回しではないか。
原曲の歌詞を踏襲しつつ、状況に即してちょっとだけ歌詞を換える。
著作権などなかった、日本だからできたことで、
客は「フムフム」と感心していればよい。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―51

2009-06-16 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―3


ここでは髪結いの道具づくしの替歌で、
御殿務めの身を嘆く。

『人の心の 花の露
 濡れにぞ濡れし 鬢水の
 はたち鬘の片意地も
 道理御殿の勤めじゃと
 人に謳われ 結いたての
 櫛の歯にまで かけられし
 平本結いの 高髷も
 痒い所へ 平打ちの
 届かぬ人に つながれて
 人目の関の別れ坂』

 意訳)
「人の心のはかなさよ
 涙で濡らす 黒髪の
 はたち娘の片意地も
 なるほど御殿務めじゃと
 人から囃され 言い立てられ
 ああだこうだと めんどうくさい
 好きな男とも自由に逢えない
 ああ、じれったい
 人目うるさい大奥暮らし」


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―50

2009-06-15 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―2


舞台中央に出てきた弥生は、
「何か踊れ」と、所望される。

ここは「枕獅子」から歌詞を引用。

『されば 結ぶのその神や
 天の浮橋 渡り初め
 女神男神の二柱
  
 恋の寝笹の伊勢海士小舟
 川崎音頭 口々に』

(意訳)
「さて、縁結びの神様は
 天の浮橋を渡り、地上に降りた
 女神と男神
 
 伊勢の海士は恋をする
 みんな川崎音頭を知ってるよ」


川崎音頭とは、伊勢音頭のことで、
伊勢神宮の門前町、山田の川崎町で享保5年頃(1720年)に発生した。
それが、古市の遊郭にも広がり、伊勢一帯の遊女の間に流行した。
全国から伊勢参りに来る客がそれを覚えて帰るものだから、
伊勢音頭は全国に伝播した。
当然、替歌が横行し、どれが正調か分からないほど
枝葉を広げたが、どれも川崎音頭である事にかわりはない。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚