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西園寺由利の長唄って何だ!

長唄を知識として楽しんでもらいたい。
軽いエッセイを綴ります。

鏡獅子―59

2009-06-26 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―11


以上で上の巻「小姓」は終わる。

踊りを所望された弥生は、最後に祭壇に飾ってあった
獅子頭を手に取って踊る。
するとどこからともなく、2匹の蝶が飛んで来て、
獅子頭に戯れる。
やがて不思議が起こり、
獅子頭が勝手に動き出す。

弥生が獅子頭に引っ張られるように、
2匹の蝶を追って、花道に引っ込むと、
舞台正面の雛段(演奏者の座っている山台)
が真ん中から割れ、2匹の胡蝶の精が二畳台に乗って現れる。
先ほどの蝶の精、という演出だ。
胡蝶の精は色々なおどりを披露する。
その間に、弥生が後ジテの獅子の精に変身するという、段取り。

ちなみに下の巻は「胡蝶」という。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―58

2009-06-25 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―10


次は後ジテに入るための導入部として、「石橋」の世界に戻る。
これは「相生獅子」にも、「夫妻獅子」にも「枕獅子」にも使った手法。
「鏡獅子」もこれをそのまま踏襲。

『牡丹に戯れ 獅子の曲
 げに 石橋の有様は』
 其の面わずかにして
 苔滑らかに谷深き
 下は泥梨も白浪の
 音は嵐に響き合い』
 笙歌の花降り 簫笛琴箜篌
 夕日の雲に 聞こえゆべき
 目前の奇特 あらたなり』


ちなみに、原曲となった「石橋」の歌詞はこうだ。

『其の面 僅かにして
 尺よりは狭う
 渡せる長さ 三丈あまり
 苔は滑りて 足もたまらず
 谷のそくばく深きこと
 数千丈とも覚えたり
 遥かに峯を見上ぐれば
 雲より落つる荒滝に
 霧 朦朧として
 下は泥梨も白浪の
 音は嵐に響きあいて
 虚空を渡るが如くなり』

(意訳)
「牡丹に遊ぶ獅子、
 その石橋の有様はといえば、
 橋の幅は細く、表面には苔がびっしり
 下は地獄に続くかもしれないほどの深い谷
 滝の音は、山間に響き渡り、
 天空からは妙なる歌が流れ、花が降る
 簫 笛 琴 箜篌の音楽が
 きらきらと輝く夕日の雲間に響く
 今、まさに菩薩がお出ましになる時だ」


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―57

2009-06-24 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―9

次も「枕獅子」からそのまま引用。

『咲き乱れたる
 風に香のある 花の波
 来つれて 連れて
 顔は紅白 薄紅さいて
 見するは見するは
 丁度二十日草』

(意訳)
「牡丹の花が咲き乱れ、
 風に揺られて、いい薫り
 蝶が舞いくる紅白の牡丹
 ほら、ごらんになって、ちょうど20才の花盛り」
 

「枕獅子」はこうだ。

『咲き揃う
 風に香のある 花の波
 来つれて 連れて
 顔は紅白 薄紅さいて
 口説けど 口説けど
 丁度二十日草
 君は情けなや おおそれ
 それじゃ誠に花車
 くるりや くるりや
 くるりくるり
 くるりくるり
 くるりくるり 
 くるりくるり』

「枕獅子」で、「ほんにあなたは、つれないお人」
などと、遊女が男を口説いているような部分は
すっぱりとカットし、品よくまとめている。


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―56

2009-06-23 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―8

次も「枕獅子」からそのまま引用。
ただし、”散りくるは”の繰り返しは、多少の違いあり。
括弧内は「枕獅子」。

『時しも今は牡丹の花の
 咲くや乱れて 
 散るは散るは 散りくるは
 散りくるは 散り来るは
 ちりちり ちりちり
 散りかかるようで
 おもしろうて(おいとしゅうて)寝られぬ
 花見てあかそ(戻ろ) 花見てあかそ(戻ろ) 
 花には憂さをも 打ち忘れ』


(意訳)
「ちょうど今は牡丹の盛り
 はらはらと散り重なる花びらの
 可憐なこと
 思わず見とれて、寝るのも忘れそう
 ずっと見てよ ずっと見てよ
 花を見てると、つらさも忘れる」


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tea breaku・海中百景
photo by 和尚


鏡獅子―55

2009-06-22 | 曲目 (c)yuri saionji
春興鏡獅子―7

そして次も「枕獅子」からそのまま引用。
ただし、遊女色の濃い所はカット。


『恨み託つもな 実からしんぞ
 気に当たろうとは 
 夢々知らなんだ
 見るたびたびや
 聞くたびに
 憎てらしい程 可愛さの
 朧月夜やほととぎす』

「枕獅子」では
『憎てらし程 可愛いさの』
の後に、
『起請誓紙は 疑い晴らし 
 おおよい事のよい事の』
ときて、『朧月夜…』
となる。

(意訳)
「つい、ぐちをこぼしただけなのに
 あんなに怒るなんて、
 まったくびっくり
 あいつの顔を見るにつけ、
 声を聞くにつけ
 腹が立つのに、可愛てならぬ
 月はおぼろで、夏はきぬ」
 

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tea breaku・海中百景
photo by 和尚