後姿Ⅱ・・・10分の使い方

子供の通学路の中の短い農道
管理人、彼女のこれから踏む足跡が全て分かる。
後ろからランドセルを追い続けて早3年。
小さな農道を通り、十字路の角を曲がる所まで
普通に歩けば3分の道のり。

まず彼女は隣の家の花壇と農道を分ける石の上を歩く。

水溜りが出来る場所があり
雨の日、雨上がりの日は
必ずその中を歩く。

突然しゃがみこみ
虫か、季節の草花を触る。

登校班との合流地点まで
3分の道のりを
5分~10分を掛ける。

後ろから母の激が飛ぶまで
安心しながら
ゆっくり楽しむ

しゃがみこんだ彼女が何を見ているか
遠くからは見えないのだけれど

きっと蟻の行列との遭遇だ。
蝉の抜け殻だ。
仏の座の蜜を採っている。
なんとなく分かる。

小さく地面にしゃがみこみ
団子のようになった彼女は可愛い。
ランドセルしか見えない。

時に彼女は
ふっと呼ばれたように
空を見上げる
鳥だ!
そのまま空を見続ける
雲だ!

そんな時、管理人も忘れてしまう。
登校の時間が迫っている事を

私は彼女を見送りながら
短い農道を彼女の目と一緒に歩いている。

本人も学校のことを忘れたのではないかと思っていると
いきなり走り出して行く
腕時計を確認してほっとする。
3分の道のりに予め10分の時間をちゃんととってある。

遊びたいのは
管理人の方かもしれない

水溜りを見つけたら
迷わず飛び込み水しぶきを楽しむことはもう出来ない。
必ず水溜りを横目で見ながら遠回り

歳相応のそれなりの革靴を履いている。
染みになっては困るのだ。

急がしと思うと
下を向いて歩く事はない。
あえて上を向く事もない。

書いてみて
たった10分でよい事を知った。
そうだ
それでいいのに
なんと勿体つけていたことか!
子供は偉い!
たった10分の有意義な時間の使い方を知っていました。

大人は何にそんなに急かされているのでしょう
忙しぶってるだけなのかも知れません。

一日の内の10分は
忙しい大人にも当然持てる時間です。
団子のように小さく丸くなって
たまには、蟻の行列でも観察してみましょうか?(^^)v
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )