クラージュせたがや ~Courage Setagaya~

元はベルマーレ応援サイト「STweb」の別館で2005年7月開始も、2010年12月の韓国赴任を機に半ば休業中。

今のJ1リーグに2ステージ制は必要か、導入するならどうあってほしいか

2013-06-11 02:39:54 | サッカー(その他)
6/11・12のJリーグ実行委員会で、
早ければ来季からの2ステージ制移行が本格的に議題にあがるという。
先月唐突に議題にあがった2ステージ制復活の可能性。
なぜそういう事態になるのだろうか。

まず、Jリーグ公式サイトによると、Jリーグの理念は、
「日本サッカーの水準向上及びサッカーの普及促進」
「豊かなスポーツ文化の振興及び国民の心身の健全な発達への寄与」
「国際社会における交流及び親善への貢献」とある。

日本サッカーの水準向上のためには、ホーム&アウェイ 2回戦制で公平な条件で争うリーグ戦がベスト。
J1では2005年から2回戦・1ステージ制になった。
それ以降、J1からアジア王者が2年連続で出たし、南アW杯では代表がベスト16に入り、海外進出選手も大きく増えた。
2回戦制のリーグ戦がベストという考えは育成年代にも行き届き、今や高校年代の都道府県リーグでも2回戦制が基本だ。

しかし、トップリーグは普及・促進の為にも大きな役割を果たさなければならない。
普及・促進の為に大事なことの1つはより多くの観客に見てもらうこと。
近年 実際の入場者数はどう推移しているだろうか。J1リーグの1試合平均入場者数は以下の通りだ。
(右は2008年を100とした場合)

2008年:19,202名(100.0)※1994年に次いで歴代2位
2009年:18,985名( 98.9)
2010年:18,428名( 96.0)
2011年:15,797名( 82.3)
2012年:17,566名( 91.4)
2013年:16,434名( 85.6) ※5/29現在
(参考 2002年:16,368名)

W杯を自国で開催してベスト16に入った2002年以降、ガンバ大阪がACLを制覇した2008年までほぼ右肩上がりで入場者数は増えたが、
2008年以降はほぼ右肩下がりで入場者数が減っている。(2011年は東日本大震災の影響も大きかったと考えられるが)
2010年に南アW杯でベスト16に入っても増えなかった。

また、今年はJリーグ20周年。
しかし、5月11日の浦和レッズ対鹿島アントラーズは20周年記念試合と銘打たれながらも地上波生中継はなし。
さらに、来る6月16日の「東日本大震災復興支援スペシャルマッチ」も地上波生中継はなし。
Jリーグ20周年の中の大事な試合がTVの世界ではこのような扱いを受けているのも現状だ。



色々理由はあるだろう。
その理由の1つは代表選手の構成にあるだろう。
2008年、2010年、2012年のそれぞれ6月に行われたW杯予選、W杯本選の出場選手はこうだ。

(1)2008年6月2日 W杯3次予選(3-0バーレーン)
14人中J1所属(*)が10人、J2所属(△)が1人
先発 GK楢崎正剛* DF駒野友一*、中澤佑二*、田中マルクス闘莉王*、長友佑都* 
MF長谷部誠、遠藤保仁*、中村俊輔、松井大輔 FW玉田圭司*、大久保嘉人*
途中出場 香川真司△、巻誠一郎*、今野泰幸*

(2)2010年6月14日 W杯グループステージ(1-0カメルーン)
14人中J1所属(*と○)が11人、うち4人(○)がW杯後の夏に海外移籍
先発 GK川島永嗣○ DF駒野友一*、中澤佑二*、田中マルクス闘莉王*、長友佑都○ 
MF阿部勇樹○、遠藤保仁*、長谷部誠 FW松井大輔、本田圭佑、大久保嘉人*
途中出場 岡崎慎司*、矢野貴章○、稲本潤一*

(3)2012年6月3日 W杯最終予選(3-0オマーン)
14人中J1所属(*と○)が5人、うち2人(○)が夏に海外移籍
先発 GK川島永嗣 DF内田篤人、吉田麻也、今野泰幸*、長友佑都
MF長谷部誠、遠藤保仁*、岡崎慎司、本田圭佑、香川真司 FW前田遼一*
途中出場 酒井宏樹○、清武弘嗣○、細貝萌

日本代表はW杯でベスト16入りしたり、親善試合でアルゼンチンやフランスを破るなどレベルアップしているように見えるが、
その日本代表に出場するJ1の選手がここ数年で急激に少なくなっている。
以前よりも日本人選手の実力が高く認められるようになり、毎年のように有望選手が海外へ移籍しやすくなった。
しかも日本のシーズンの終わりの冬だけでなく、シーズン中の夏でも海外移籍が相次いでいる。

また、J1リーグのクラブの対外競争力が落ちていることも理由にあげられるだろう。
2007年に浦和レッズ、2008年にガンバ大阪がそれぞれACLで優勝し、
クラブワールドカップで3位に入った後、ACLの決勝戦に出たJ1クラブはない。


そして、観客動員力のあるチームの観客動員が落ちていることも理由にあげられるだろう。
2008年~2012年の間、J1リーグで入場者数トップ2の浦和レッズとアルビレックス新潟の
各年度の1試合平均入場者数、チーム順位は以下の通りだ。
1試合平均入場者数の後ろの( )内は2008年を100とした場合の値。

(1)浦和レッズ
2008年 47,609(100.0) 7位
2009年 44,210( 92.9) 6位
2010年  39,941( 83.9) 10位 
2011年  33,910( 71.2) 15位
2012年  36,634( 76.9) 3位

(2)アルビレックス新潟
2008年   34,490(100.0) 13位
2009年  33,446 ( 97.0) 8位
2010年   30,542( 88.6)  9位
2011年  26,049( 75.5)  14位
2012年   25,018 ( 72.5) 15位 

両チームに共通しているのは、
入場者数が大きく減少したこと、順位が落ちていること、そして主力選手が流出していること。
ただ、両チームに大きな違いがある。経営規模だ。
2011年度の営業収益では浦和レッズはJ1リーグ1位の54億円弱。
一方、アルビレックス新潟はJ1平均(29億円強)にも大きく劣る22億円強。

浦和は過去にJ1リーグ優勝、ACL優勝などを成し遂げた。2012年には上位に戻ってきた。
一方、新潟はいまだにビッグタイトルがない。カップ戦の決勝戦すら経験がない。
それでも、2009年のJ1リーグでは前半戦終了時点で3位にまで登り詰めたこともある。
この時、主力の外国人選手を国内で引き抜かれたことが後半戦の失速の大きな原因になった。
さらにその翌年も前半戦終了時点で5位だったにもかかわらず、
夏に代表選手を海外へ引き抜かれたことが後半戦の失速の大きな原因になった。

主力選手を引き抜かれた後に素早く補うだけの体力やノウハウがクラブにあるかどうか。
当時の新潟はやや極端かもしれないが、今や代表クラスの選手を抱えるクラブ共通の問題ともいえる。
2012年のセレッソ大阪は五輪の後に五輪代表選手2人を引き抜かれ、残留争いに巻き込まれている。


今のJ1では、年間を通して優勝を争えるクラブは大企業を親会社に持つクラブに限られている。
年間を通して主力選手を維持することすら、簡単ではなくなっている。
しかし、季節限定ならば、優勝を争うクラブの数は増えるのではないか。
選手との関係でも、海外流出間近の選手と共に優勝してから夏にその選手を海外へ送り出そうというモティベーションがあってもいいし、
逆に、全盛期を過ぎた海外の有名選手でも、夏に移籍してきて秋に優勝して有終の美を飾ろうというモティベーションがあってもいいだろう。
昔話だが、ストイコビッチもドゥンガもJリーグへ移籍してきたのは夏。今も欧州のシーズンの区切りは夏である。

個人的には、2ステージ制は「ステージらしさ」がしっかりと出るのであれば、悪くないと思っている。
自分が応援するベルマーレも、2ステージ制の恩恵を受けて「湘南の暴れん坊」として世の中に印象付けられた。
1994年シーズンは1stステージは11位、年間では5位だが、2ndステージが2位で快進撃できたことが大きかった。
2ステージ制で、短期決戦の中で新しい魅力が世に放たれる可能性は、ピッチ内だけでなくピッチ外でも大きいかもしれない。
経営的にも、ステージごとに(年間よりも安い対価で)冠スポンサーをつけられる可能性は高まるし、
各クラブも、年間は厳しくても半期ごとならユニフォームスポンサーをつけやすい、ということもあろう。
もちろん、1回戦制のリーグ戦では公平性が保たれにくいが、それを上回る魅力が得られる可能性もあるのではないだろうか。

1stステージの王者が春の王者、2ndステージ王者が秋の王者。
個人的にはチャンピオンシップ(ステージ王者が年間王者をかけて戦う)をわざわざする必要はないと思います。
年間の順位はACL進出チームや残留/降格チームを決めるのに必要ですが、それは2ステージ合計で決めればよいと思います。

しかし、「ステージらしさ」を出すことは、簡単ではない。
サッカー界では4年に1度、6月から7月にW杯が開催され、この間とその前 合わせて2か月前後はJ1リーグを中断しなければならない。
W杯の後に移籍で選手が動く可能性があることを考えても、やはり春のステージはW杯の前に終えなくてはならないだろう。
(ベルマーレは98年に1stステージの終盤で代表選手を海外へ引き抜かれ、彼を歓送する一方で1stステージ終盤を5連敗で終えた経験もある)
W杯イヤーに限らず、6月は例年国際Aマッチが多く行われる。
ステージらしさを出して盛り上げるには、1ステージの中の中断期間よりも2ステージのインターバルが短いということはあってはならないだろう。

その一方で日本は雪国を多く抱える。開幕はせいぜい3月。
そこからの2か月半で、ACLと並行しながらできるリーグ戦の試合数は今の1回戦分(17試合)よりも間違いなく減るだろう。
せいぜい13試合だろうか。13試合1回戦制とするとチーム数は14。
今よりもチーム数を減らしてでもステージ制をよいと思うかどうか。
これは、ステージ制移行で恩恵を受けやすくなるチームにとって、降格のリスクがより高くなることも意味する。

現時点では2ステージ制導入に賛成のクラブ(代表)が多いときくが、どれだけ考えて2ステージ制がいいと思っているのかあまり見えない。
もし、J1のチーム数を今のままにしてステージ制移行を考えているとすれば、それはあまりにも短絡的すぎやしないだろうか。
本当にステージ制の醍醐味を考えているのか、不安である。




2ステージ制への賛否だけが議題になっている感じがあるけど、
2ステージ制以前にもっと色々な策が必要である。

大会でいうとリーグカップ(ナビスコカップ)はJ1だけで10年以上行っているが、既にマンネリ化していないだろうか。
むしろ、J2発足当時のようにJ2を入れてはどうか。
グループリーグを導入して年間の試合数を確保したいのなら、J2の上位だけでも入れることはできないだろうか。

開催曜日も再検討の余地がある。
現在のJ1=土曜開催、J2=日曜開催で、夏場(原則ナイトゲーム)にJ2の観客動員を大きく減らしているという。
主な開催曜日はJ1、J2それぞれ土曜、日曜でもいいかもしれないが、
お互いに他の曜日での試合をもっと増やしてもいいのではないだろうか。
特に、J1・J2それぞれ毎週1,2試合ずつ金曜夜の試合があってもいいのではないだろうか。
世の中の勤め人の方が全て土日が休みとは限らないし、
土日が休みでも、土日を家族サービスにとられるお父さんも多くいる。
その方々がリーグ戦に来るチャンスがあってもいいだろう。
平日最後の会社帰りに一緒に(ビール飲みながら)サッカーを、という話がもっとあってもいいだろうと思う。
ファンの裾野を広げることで、グッズ拡販の可能性も大きくできるのではないだろうか。

そして、メディア露出は特に再検討が必要。
例えば、Jリーグの試合ダイジェストをネットで(合法的に)見ることはそう簡単ではない。
ベルマーレでは試合数日後に公式サイトに見ることができるが、それでは新鮮度が落ちる。
せめて試合が終わった後の24時からヤフーやJ'sGoalなどで見ることはできないだろうか。
今やネット時代、TVのスポーツニュースで確認してください、という時代ではないと思う。
実際、海外で暮らす自分にとっては、Jリーグの動画情報の乏しさに、本当にもどかしく感じている。
また、各種公式サイト 特にJ'sGoalも、いわばビギナー観戦者にもっとやさしい内容構成にしたほうがよいのかもしれない。

もちろん、各クラブのさらなる営業努力が不可欠なのもいうまでもない。



今のJリーグの苦境をみると、全てのシステムが今のままでいいとはさすがに思えなくなっている。
仮に日本代表がW杯に優勝したとしても、そのメンバーが日本にいなければ、その効果は相当限られそうである。
今のままではジリ貧である。Jリーグがより魅力的になり、より多くの入場者数や認知度を得て、
より多くのスポンサー収入やグッズ収入を得て、さらに魅力的になるためには、何かを変えなければならない。
何を変えなければならないか、サッカー界はもう一度よく考えたい。


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