■2021年9月30日(木) 旅の4日目
これまでずっとホテルの立体駐車場にすんなり駐められた。
経験上、夕方5時過ぎてしまうと大抵は外部の駐車場を案内されるのに、
これは珍しいことだ。
平日であることやコロナ禍による旅行控えのせいなのだろう。
明日(10月1日)、緊急事態宣言がすべての地域で全面解除されるという。
梅雨明け宣言後のように気分が晴れ晴れとし開放感に浸る人も多いだろう。
観光地をはじめ街では人出が増加するにちがいない。
もっとも私みたいに宣言があろうとなかろうと勝手に宣言解除して行動するおバカも世間には
たくさんいるんだろうな。
さて、そもそもだが、
今回の旅は福島・会津地方の温泉地を回ってみようかなと当初は考えていた。
それはあの本(「へんな名湯」) にある温泉、珍湯へ行ってみたいなぁとおもったからだ。
ところが、どうも今ひとつ気合いが入らない。
中途半端な距離感がするのだ。
行くぜ!!という心理ドライブが働かないし、今ひとつテンションが上がらない。
グズグズしていたそんなあるとき、
いっそのこと蔦温泉、酸ヶ湯温泉の青森まですっ飛ばしていってみたらいいんじゃないか、
復興道路を利用すれば南三陸町や大槌町の様子もみてこれるし、
しかも復興道路のほとんどが無料区間だよ・・
という魅惑のささやきが聞こえたのだ。
これで導火線に火が点き、ボルテージが一気に上がった。
■蔦温泉(青森県十和田市)
8時20分、八戸駅前のホテルを出発。
カーナビに蔦温泉をセット。天気は晴れ(このあと崩れる)。
田園地帯から山間部の道に入る。少しずつ標高があがっていく。
10時15分 蔦温泉旅館に到着。
2年前に奧さんと訪ねて以来だ。
そのときは臨時キャンプ場にテントを張り、青森ねぶたをみた翌日、蔦温泉に足を運んだ。
温泉に入る前にまず蔦沼へむかう。
燃えるような紅葉が湖面に映る撮影スポットとして超有名なのだが
残念ながら紅葉にはまだ早かった。
ブナの原生林を周遊するコースがある。
ちいさな沼が点在し素敵なブナ散策ができるのだが今回は時間がないのでパス。
巨樹たちに挨拶し、旅館へ向かう。
現在の蔦温泉旅館の玄関
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■蔦温泉・泉響の湯
この時間に入れるのは「泉響の湯」(入湯料800円)。
もうひとつある「久安の湯」は女性専用となっている。
泉響の湯は脱衣場から階段をおりていく半地下の構造となっている。
源泉の真上に湯船があるのでぷくり、ぷくりと足下から源泉とともに泡が上ってくる。
フレッシュな源泉そのものを体感できる気持ちのいい湯だ。
温泉の様子は蔦温泉旅館のホームページに詳しい。
仮に全国の温泉の中からひとつだけ選んでください、といわれたら
私はちゅうちょなく蔦温泉をあげる。
ブナの原生林にたたずむ旅館の風情、気持ちの良い温泉、ロケーション、どれをとっても
申し分ない。
蔦温泉には20年前の2001年5月、温泉好きの仲間と泊まっている。
当時の写真をみると、昔のまんま今も全然かわらないなぁ、と改めて思った。
この木造建築を維持するには人知れぬ苦労があることだろう。
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2001年の蔦温泉旅前
20年前の記念写真
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■酸ヶ湯(すかゆ)温泉 (青森県青森市)
蔦温泉を12時10分出発。酸ヶ湯温泉は蔦温泉から15キロの距離だ。
ここからは広大なブナの二次林の中を行く。
峠を越えた辺りから雨が強くなってきた。
ときおり紅(黄)葉した木々が現れては山岳道路の単調さを慰めてくれる。
ブナの二次林が延々と続く 樹齢は90年前後
12時50分 酸ヶ湯温泉着
毎年冬になると積雪4メートルを越えたとかTVで放送される酸ヶ湯温泉。
今回の旅の最北端だ。ここまで935キロ走ってきた。
玄関先の自動販売機で入浴料1000円(記念タオル付き)を払う。
脱衣場から階段をおりていくと広々した浴場空間がひろがる。
湯滝の音がひびく。
湯船は大きいし、なんたって湯治場としての貫禄が備わっている。
大浴場のヒバ千人風呂に客は5人ほど。
白濁した硫黄泉なのだが癖は強くない。手に付いた温泉をちょっと舐めてみたら酸っぱい。
歯を傷めそうなので直ぐにうがいをした。
■大鰐温泉・大湯会館 (青森県大鰐町)
酸ヶ湯には2時間弱滞在し、2時過ぎに出発。
国道394号で黒石に出る。弘前まで15キロの表示。えっ、そんな近くにいるんだと驚く。
国道7号を走っていると大鰐温泉郷の案内板をみかけた。
好奇心が頭をもたげ寄り道することにした。行きがけの駄賃というやつだ。
こういうローカルな温泉にはたいてい共同浴場があるものだ。
町中をキョロキョロして走ってると、案の定、大湯会館という共同浴場をみつけた。
自動販売機で入浴券(200円)を買って中に入る。
中は町民の人たちでけっこう賑わっている。
お湯は無色透明で癖がない。42~43度でやや熱い。湯上がりは実にさっぱりしている。
雨、依然として止まない。
■大湯温泉 (秋田県鹿角市)
今日はどうしても寄りたい温泉がある。
秋田県鹿角市の大湯温泉郷にあるアパートに湧く温泉である。
「へんな名湯」に紹介されてた湯だ。
大鰐温泉の共同湯を出たのが午後4時30分。
時間を稼ぐため碇ヶ関ICから東北自動車道に入る。辺りはもう暗い。
暗いし雨だし、高速運転としては最悪だ。
十和田ICでおり、国道103号を十和田湖・休屋方面へ走らせる。
夜の大湯温泉郷に入り、旅館やホテルがポツポツとみえてきた。
そしてカーナビが案内した場所はアパートらしき建物の前。
暗くてよく見えないが、どうやらお目当ての白山荘アパートのようだ。
傘をさして薄暗いアパートの前に立つ。
すみませ~ん
と管理人室に向かって何度も声をかける。
しかし誰も出てこない。反応なし。
蛍光灯は点いてるしTVの音もするのに人の気配がない。
出かけてるのかもしれない。
管理人室の隣をみるとふたつ部屋がある。
通路突き当たりの部屋の小窓からは灯りが漏れてるし台所辺りで生活音もしている。
仕方が無い、料金入れに200円を払い、下駄箱に靴をしまって階段を下り湯に向かう。
3メートル四方の湯船だ。実にシンプル。
一本の青いホースから温泉が注ぎ込まれている。
湯船にそろりと足を突っ込んでみるとなかなか底に届かない。
腰の辺りまで浸かる深い浴槽だ。
しかし熱い湯が気持ちいい。これは癖になる温泉だ。
湯船の深さからすると、あがるとき、お年寄りはちょっと難儀するだろうとおもう。
温泉付きマンションというのはよく聞くけど温泉付きアパートはないのではないか。
さっぱりして階段を上がっていくとちょうど男性客とすれ違った。
やはり地元ファンがいるんだ。
管理人室は相変わらずもぬけの殻。
外は雨が降り続いてる。
アパート白山荘の玄関
誰もいない管理人室
ここに料金をいれてくださいということらしい 200円をいれる
左にみえる階段を降りていく 手前は下駄箱だ
いちおう男女別になっている
実にシンプルである いい湯だった
■盛岡駅前のホテルへ
国道103号線を戻る。
せっかくの大湯温泉郷を走っているのに暗くて町の様子がよく分からない。
いつか昼間にたずねてみたいものだ。
午後6時15分、十和田ICから東北自動車道に入る。
8時05分、盛岡ICを降り、8時20分に盛岡駅前の東横イン到着。
今日は蔦温泉、酸ヶ湯温泉という老舗の名湯に入れたし、大鰐温泉の共同浴場へも寄り道し、
さらにアパート温泉にも入ることができた。大満足の270キロ走行だった。
夕食はちと奮発し、駅前の「ぴょんぴょん舎」で焼き肉&生ビールで乾杯。
午後8時を過ぎてはいたが酒も食事もできる盛岡の街だった。