定年後の伊豆高原 バラと酒と音楽と

伊豆高原に終の棲家を建築し永住。カミサン、愛猫ジローとの伊豆での老後は如何に。薔薇・酒・音楽・日々の徒然。

喧嘩の理由

2010年04月22日 | 定年後の徒然日記
若い侵入者がやってくるのよ、三日も空けずに。デッキの窓からじっと幸せの部屋の覗きこみやがって。ジローの後釜を狙っているのさ。ジローの老いを見破ってるんだ、あいつ。

優しい主人、ニャァ~と泣けばご飯がやってくる、ニャナニャナ~と泣けば鰹節のフリカケをかけてくれる。ニャハァ~と泣けばヨシヨシと抱いてくれ、ニャン~~と泣けば暖かい布団に入れてくれ、ゴロゴロすれば「可愛いやつめ」と頬ずりしてくれる。もう十年以上も続いているのよ、この関係が。な、幸せだろ。

だけど、あいつはホームレス。鰹節がかかったニャン飯など夢のまた夢、寒い夜なぞこたえるだろうな。
で、俺の幸せな生活を窓越しにじっと見てやがったんだ、あいつ。判るけどさ、けど、この幸せの城は俺だけの城だ。ま、たまにはニャン飯分けてやってもいいけどさ。
だがな、気に入らないのは、俺の老いを嗅ぎ取って、もしかして幸せの城に潜り込めるかもしれないと考えてんだ、あいつ。老いて足腰もすっかり弱ってヨタヨタしてるジローを追い出して、ちゃっかり後釜に座ろうって魂胆なんだ、あいつ。

許せ~ん!

そればかりじゃないんだ。じつはな…恥ずかしながら最近出来たのよ。ん?何がって?ナニに決まってるだろ。そ、図星だわな。最近、近所の家に潜り込んだ猫なんだけどさ。ま、たいして器量良しでもないんだけど性格がいい娘でさぁ。俺にまとわりついて離れんのよ。ふっふ…。誤解すんなって。それだけの関係よ。手も握った訳じゃなし、プラトニックってか、老いらくの恋ってか、茶飲み相手ってとこかなぁ。

それがだよ、野郎、こともあろうにチョッカイ出しやがるのよ、あの娘に。若さを売り物にしやがって。

この際だから何でも話しちゃうけど、じつは俺…やっぱ止めとこ。
ん?いいから話してスッキリしろってか?心の重荷を投げ捨てろってか?
じつはさぁ…おれ…無いのよ…。
何がって…

タマが無いのよ

ん?もっとおっきな声で言えってか?

TAMAがねえんだよ!

何でナニが無いのかってか?
この家の住猫になった時に、主人に連れて行かれてさ。そ、病院に。で、麻酔かなんかで眠らされてさ、目が覚めたら無いのよ…ナニが。
そう…去勢されちゃったんよ。ナニをとったか管を縛ったか、判んないんだけどさ、どっちにしても、あれからずっと青春が無かったんよ。つまり、13にもなって(人間なら80歳だぞ)まだ…童貞ってこと。な、いくらなんでも、あんまりだろ。最近、眠りこけている主人の寝顔見ると殺意を感じるのよ。こんなアタシに誰がした、憎いって…。

でさ、役に立たない老いぼれジローをコケにしやがって、彼女にちょっかいは出すわ、家に上がり込もうとするは、な、許せんだろ、あの不良猫。

だから、血だらけになっても、お多福顔にされても、野郎が来ると敵わないと判っていても
ぶちのめしたる!

って喧嘩を売るしかないのよ。
判るか?この悲しみが…若さにはかなわねえわさ。俺の居場所がどんどん小さくなるような気がしてさ。老いるってのはなァ、悲しいもんだろうが。
な、もう一杯飲むか?

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