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TDK、従業員1万1000人削減と生産拠点再編を発表 収益力改善、なお途上

2011-11-01 | 電子部品業界



 TDKは31日、今後2年間で全従業員の13%に当たる1万1000人を国内外で削減し、生産拠点を再編すると発表した。

 直接の引き金は円高とパソコンや薄型テレビなどデジタル機器の市況悪化、そしてタイの洪水による収益悪化の三重苦。ただ、背景には上釜健宏社長が進めてきた生産効率の改善があり、今回はそれで生じた余剰人員の削減という側面がある。

 上釜改革は仕上げの段階を乗り切れるのか。


●体質改善で収益戻す

 「体質を改善し、いち早く収益を戻したい」。

 上釜社長は31日の2011年7-9月期決算記者会見の席上、沈痛な面持ちで語った。06年に48歳という若さで就任して以来、08年に2000億円を投じて、スマートフォンや産業機器に強い独電子部品大手のエプコスを買収。

 その一方で、09年3月期にはリーマン・ショックを契機に国内外で2万6000人を削減するなど、改革を断行してきた。

 しかし、今回の三重苦は深刻。タイでは主力のハードディスク駆動装置(HDD)磁気ヘッド関連の2工場が水没し、2工場が安全確保のため操業停止に追い込まれている。タイの洪水の影響額は小さくない。

 11年10月-12年3月期に、売上高で230億円、営業利益で100億円、それぞれ減少を見込む。

 しかし、三重苦がなくてもTDKは一段の改革を迫られていた。エプコスを買収した直後から、1人あたりの売上高がガタ落ちになった。そして、利益の半分以上をもたらすHDDの磁気ヘッドも業界再編の影響でビジネス縮小のリスクにさらされている。

 昨年5月、中国・広東省の製造拠点。上釜社長は中国での人件費の高騰を見通し、電子部品工場の生産効率を2倍に引き上げることを命じた。

 TDK本体のナンバー3に中国出身のレイモンド・リョング氏を指名し、中国事業を全面的に任せて改革を加速する。磁気ヘッドの精鋭生産部隊も投入し、来年の3月まで中国に18ある電子部品工場の全てで2倍以上の生産効率改善を達成する見通し。

 今回の人員削減の裏にはこうした生産効率の改善があり、上釜社長の想定のシナリオに入っているとみることもできる。


●一段の統廃合避けられず

 また、TDK本体に比べて生産効率が低いとされるエプコスの拠点再編も課題となる。

 最後の砦は、TDKの祖業地であり、県内に17の中小規模の工場が点在する秋田地区。28日には秋田県にある積層インダクターと呼ぶコイルの2工場を1つに統合することを発表したが、一段の統廃合は避けては通れない。

 上釜社長は連結営業利益率を10%以上に引き上げ、村田製作所などのライバルと肩を並べることを目標に改革を進めてきた。しかし、11年4-9月期の連結営業利益率は前年同期比5.1ポイント下落し、3.3%と遠のく。

 それでも31日の会見の席上、「13年3月期に10%を目指す」と自信を見せた。三重苦をどう乗り越えるか。上釜社長の真価が問われる正念場だ。





【記事引用】 「日経産業新聞/2011年11月1日(火)/20面」


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