国際研究開発組織の発足は、半導体企業の研究開発負担を減らすと同時に、国内エレクトロニクス産業の最大の強みである材料各社の商機拡大を支援する狙いがある。
EUV技術を使った半導体製造のボトルネックがフォトマスクや感光材。
感光性樹脂ではJSRや東京応化工業、信越化学工業が世界シェアの7割を持つ。フォトマスクでは大日本印刷、凸版印刷など日本勢が約5割を握る。
●開発費倒れも
露光装置に比べ研究開発が遅れているのは、最先端技術を使って生産できる国内半導体メーカーが減り、次世代市場への参入に及び腰になっているため。
材料企業が製品開発しても市場が育たなければ、開発費倒れに終わる可能性がある。
材料各社を振り向かせるため、東芝と経産省は将来の大口顧客となる可能性があるインテル、サムスン、TSMCと交渉して参加を取り付けた。
海外半導体にとっては、優れた技術の日本の材料各社と組んで製造技術開発を加速できる。
ただ、海外大手は部材や装置の内製化を進めている。材料各社にとっては顧客開拓につながる一方で、海外の素材産業の技術向上に一役買ってしまうリスクも抱える。
欧州の半導体研究機関のIMEC(ベルギー)、米国のSEMATEC(米テキサス州)など国際研究組織の開発プログラムに協力している材料企業も少なくない。
日本主導の連合が成果を出すためには、開発する製造技術の世界標準化を主導するなど、材料各社が本腰を入れて協力できる体制が求められる。
【記事引用】 「日本経済新聞/2011年6月10日(金)/9面」