ルネサステクノロジは、先端半導体製造を受託製造(ファウンドリ)大手の台湾TSMCに委託する。
回路線幅を45nmまで微細化した先端半導体にかかる数千億円もの投資負担を軽減するのが狙い。日系半導体メーカーの多くは今まで、付加価値の高い先端半導体では設計開発から製造まで一貫して手掛けてきた。
ルネサスが先端半導体を製造委託することで、生産設備に重点を置かず資産圧縮(アセットライト)して半導体事業を運営する流れが強まりそう。
●45nm大半を製造委託
ルネサスでは、回路線幅45nmの先端半導体を携帯電話用システムLSI「SH-モバイル」に適応する考え。
09年度の量産開始に向けて、北伊丹事業所(兵庫県伊丹市)にラインを敷設し、試作品を製造している。これと並行して、那珂事業所(茨城県ひたちなか市)第2工場に45nm品の生産ライン敷設を準備している。
徐々に生産量を増やす予定だが、本格量産に際しては、大半をTSMCに製造委託して増産対応する。
ルネサスは、パナソニックと先端半導体の共同開発を推進しており、現在では同32nmまで微細化した次世代半導体を共同で手掛けている。
先端半導体は同じチップ寸法ならば、1世代前のものと比べて2倍のトランジスタを集積可能。省電力化にもつながることから、チップの付加価値が高くなる。
●アセットライトの流れ加速
日本の半導体各社は、先端半導体分野では設計開発から製造までを一貫して手掛ける垂直統合型(IDM)を踏襲して競争力の源泉としてきた。
ファウンドリーに委託するのは、自社の生産能力を超えた1世代前の半導体に限っていた。
だが、先端半導体を製造する露光装置は1基40億円以上するなど、生産ライン設置には数千億円が必要になる。投資負担が大きく、次年度以降の償却負担も重くなる。
現在、量産ベースで最も微細化した回路線幅40nm世代の先端半導体では、東芝やNECエレクトロニクス、富士通マイクロエレクトロニクスなどが自社で投資を実施。
一方、ソニーはいち早くアセットライトを打ち出して方針転換した。半導体専業のルネサスが先端半導体を製造委託することにより、半導体業界でアセットライトの流れが加速する。
【記事引用】 「日刊工業新聞/2008年1月15日(木)/1面」