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半導体市況、下期以降の見通しに慎重論 スマートフォン市場伸び鈍化でより保守的に

2011-08-22 | 半導体業界



 半導体市況の下期以降の見通しに慎重論が出ている。背景にあるのは、台湾の大手半導体受託製造(ファウンドリー)のTSMCの業績の落ち込みと設備投資の引き下げだ。

 これまでのパソコン販売の不振に加え、スマートフオン市場も想定より伸びないのではとの悲観論も飛び交う。装置メーカーも下期以降は保守的な見方が目立ち始めた。


●鈍化否めず

 「モバイル機器市場は燦々と太陽が輝いていたが、雲が見えてきた」。DRAM世界3位のエルピ-ダメモリの坂本幸雄社長は決算説明会でこう述べた。

 「台風に近い大雨」(坂本社長)というパソコン市場の落ち込みが激しい中、成長を支えてきたモバイル市場も鈍化は否めないというわけだ。

 「7月から潮目が大きく変わった」。半導体製造装置世界2位の東京エレクトロンの常石哲男副会長の表情はさえない。4-6月期の決算公表時点では同社として異例の通期見通しの下方修正を発表。

 「正直、見極められないところが多い」と含みを特たしたが、売上高を7300億円から6400億円に営業利益を1000億円から500億円に引き下げた。

 装置大手の日立ハイテクノロジーズは中間期の予想を上方修正したが、通期の業積予想は据え置いた。「(5月時点よりも)下期は慎重に見なくてはいけない」(西田守安執行役常務)との姿勢を示す。

 装置各社が慎重に転じた背景にあるのが台湾勢の動き。半導体受託製造の首位のTSMC、2位のUMCはいずれも4-6月期が前年同期比で減益。7-9月期は4-6月期よりも落ちこむ見通し。

 民生向けの需要が急速にしぼむとの見方が一部では出ている。加えて、TSMCはこれまで、毎年、投資を上積みしてきたが11年の設傭投資額を78億ドルから74億ドルに引き下げを表明。急成長路線にかげりが見え始めた。


●明るい話題も

 ただ、装置メーカーの慎重論にアナリストを中心に首をひねる動きもある。

 米インテルは投資額を従来の98億-106億ドルから101億-109億ドルに上積み。韓国・サムスン電子も液晶への投資は減らす方針だが、半導体は増額する意向を示す。決して業界全体が鈍化したわけではない。

 「インテル、サムスンの動向から考えれば、装置各社の見方は保守的すぎる」との意見は少なくない。

 実際、明るい話題もある。秋以降は、起動が速い薄型軽量のパソコン市場が新規に立ち上がるほか、タブレットパソコンの新商品も控える。

 欧州の半導体メーカー首脳は「スマートフォンへの期待が高すぎたが、秋商戦で、スマートフォン一本足の現状から脱する可能性はある。在庫調整が一巡して年内には回復する」と指摘。

 半導体業界にブレーキがかかりつつあるが、急失速するか、一過性かの見極めにはもう少し時間が必要だ。





【記事引用】 「日刊工業新聞/2011年8月22日(月)/11面」


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