犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

副反応

2021-09-17 23:12:55 | 日々の暮らし(2021.2~)
 ソウルの自宅です。

 そばに韓国人の女性がいます。よく知っている飲み友だちですが、なぜ私の家にいるのかわかりません。彼女がくつろいでいるらしいのも妙です。

 そのとき玄関が開く音がして、人がどやどやと入ってきた気配がします。

 最初に部屋に顔を出したのは、会社の女性社員でした。青ざめた顔で、無言のまま私の顔を見つめます。彼女は2000年頃に私が採用し、今は部長職にあります。

 そのあとから、10人ぐらいの年配の韓国人男性たちが、靴をはいたまま上がり込んできます。

 彼らはなぜか私の前を素通りし、そのまま玄関と反対側のバルコニーに出ます。ここは3階で、2階の屋上がわが家のバルコニーになっており、ここでときどきバーベキューをしたりするのです。

 私も彼らを追って、バルコニーに出ました。私一人と10人ぐらいのハラボジが対峙して、まるで団体交渉のようです。

「いったいどういうことですか?」

 韓国語で説明を求めると、いちばん前にいた老人が、おもむろに名刺を差し出します。肩書にハングルで「民族…」という文字が見えました。

(ぼくが書いたブログ記事に抗議しに来たんだ!

 私はそう確信しました。

 そのとき、また玄関のほうで人の気配がします。こんど入ってきたのは、やはり会社の韓国人女性社員で、若手の経理担当です。

 彼女は勝手を知ったように上がり込み、座卓に前に正座します。

(そうだ、今日は習い事の日だった)

 韓国で、妻はいろいろな習い事をしています。今日は、ハングルの書芸(習字)のようです。なぜ経理担当者が?

(でも、妻は今、日本にいるはずだが…。いや、空港からこちらに向かっているところかもしれない。とにかく、連絡しなくちゃ)

 スマホを取り出しますが、ロック解除の番号を間違えます。何度入力し直してもダメです。

(おかしいなあ…)

 今度はパソコンに向かいます。2台のパソコンが並んでいて、一つは大きなモニターがつながっています。

 こちらも思い通りに起動しません。突然、見慣れない格闘ゲームが立ち上がったりします。気持ちはどんどん焦ってきます。

(なぜだー!)


「お父さん?」

 四女の声で目が覚めたとき、私はぐっしょり汗をかいていました。

「あ、なに?」

「いや、なんでもない」


 寝室のドアの向こうで娘が答えます。

 スマホを見ると、朝8時を回っていました。

 あらためて昨晩のことを振り返りました。

 おととい、私は2回目のワクチン接種を受けました。昨日は、注射した腕が多少痛むぐらいで、特に副反応はありませんでした。

(でも、2日目に出る人もいるらしいから、まだ安心はできないな)

 夜9時にロシア語のレッスンが終わって、遅めの夕食をすませ、11時前には、早々と床につきました。

 しかし、夜中に目が覚めて、なかなか寝付けない。しかたなく、読みかけの本を開いたりして、再び眠りに落ちたのが明け方の5時。そのあとに、あの夢を見たのですね。

 一階のリビングに降りていくと、

「どうしたの? こんな遅くまで」

「いや、なんでもないよ」


 どうも、妻と娘たち(今、家に2人の娘が同居しています)は、ぼくが、コロナの副反応で高熱を出して苦しんでいるんじゃないか、ひょっとして心臓麻痺でも起こしていやしないか、と心配してくれていたのでした。

 幸い、高熱は出ませんでしたが、あの後味の悪い夢が副反応の一症状だったのかもしれません。
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