正月休みに、ユヴァル・ノア・ハラリ『サピエンス全史』(河出書房新社、2016年)を読了しました。
人類の起源から未来にまで及ぶ歴史を概観した、スケールの大きい本です。上下巻で、上巻では、ホモ・サピエンスの誕生から、認知革命、農業革命を経て帝国の誕生までを扱います。
この中で、特に印象的だったのは、「認知革命」についての記述でした。
人類のさまざまな特徴の根本に「言語」があるというのは、これまでの研究にも共通しています。
私は、言語がなければ、抽象的思考はできない。道具というものは、その目的を考え、計画に基づいて作るものだから、言語がなければできない。だから、人類が道具を作るようになったときには、言語をもっていたはずだ、そして言語を可能にしたのが、巨大化した大脳だ、と考えていました。
そのように考えると、言語の誕生はアウストラロピテクスにまで遡ります。
しかし、本書の著者は、言語の誕生もしくは言語の質的な進化を、たった7万年前の出来事と主張し、この質的な進化を「認知革命」と名付けています。
その傍証として、20万年前にアフリカで誕生したホモ・サピエンスの作る石器が、10万年以上に渡り何の進化も示していないこと。7万年前以降、人類の道具は飛躍的な向上を遂げるとともに、アフリカ以外の大陸に進出し、そこで出会った旧型のサピエンスとの抗争に勝利し、絶滅に追い込み、地球の津々浦々に進出して、大型動物を次々に滅ぼしていったこと、芸術と呼んでもさしつかえないような作品を残すようになったこと、などを挙げています。
「認知革命」が、言語学的にはどのような進化だったのか、本書には書かれていません。おそらく脳の内部構造に何かの変化が起こり、認知能力(学習、記憶、意思疎通の能力)が飛躍的に高まったのだろうという推測を述べるに留まります。
人間の言語の特徴として「二重分節」があります。限られた音素・音節を組み合わせて、単語を作ることにより、無限に多様な表現を可能にする構造です。
推測の域を出ませんが、初期のホモ・サピエンスも、また別種の人類であるネアンデルタール人も、二重分節をもつ言語を持っていたが、後期ホモ・サピエンスに至って、この二重分節が質的に複雑化、精緻化し、思考力が劇的に高まったのかもしれません。
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