犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

柳錫春裁判のその後

2024-07-18 22:43:11 | 慰安婦問題

写真:取材陣の質問に答える柳錫春氏


 2019年9月に、勤務していた延世大学での講義で「元慰安婦は売春の一種」と言ったために、検察によって刑事告訴されていた柳錫春(リュ・ソクチュン)前延世大学教授について、以前、何回か本ブログで取り上げたことがあります。

柳錫春の発展社会学講義~『反日種族主義』
柳錫春裁判、続報

 刑事告訴については、今年の1月24日、ソウル西部地裁で判決が下されました。

 元慰安婦に対する名誉棄損は無罪、挺対協(正義連の前身)に対する名誉棄損は有罪という内容です。

 韓国の新聞報道(日本語版)はこちらで読めます。

元大学教授の「慰安婦は売春」発言は無罪 韓国地裁(聯合ニュース、2024年1月24日)

 この判決を不服として、検察、被告双方が控訴し、現在控訴審が行われているそうです。

 裁判所の見解は、

「被告の発言は被害者個々人に向けた発言とは見なし難く、朝鮮人の日本軍『慰安婦』全体に対する一般的な抽象的表現である」、

「検察側が提出した証拠だけでは、当該発言を事実の摘示による名誉毀損とは見なし難い」、

「憲法が大学における学問の自由と教授の自由を保護していることに鑑みれば、教授に対する制限は必要最小限にとどめるべきである」


というもの。

 一方、「韓国挺身隊問題対策協議会(挺対協)が、強制動員されたと証言するよう元慰安婦らを教育した」とする柳錫春の発言については、同団体への名誉毀損に当たると判断し、罰金200万ウォン(約22万円)を言い渡したとのこと。

 これとは別に、柳錫春前教授は、授業中に女子学生に向かって言った発言がセクハラだとして、大学当局から停職1か月の懲戒処分を受けましたが、その処分が不当だとして取消を求める裁判を起こし、5月に大法院判決が下されました。

 以下は、それを伝える記事です。

聯合ニュース、2024年5月12日付

「慰安婦講義中、学生に対しセクハラをした柳錫春の懲戒は妥当」…大法院(最高裁)で確定

「慰安婦は売春の一種」と言い、女子学生に「知りたければ、やってみたら?」


 2019年、日本軍「慰安婦」の問題を講義するなかで、学生にセクハラ発言をした柳錫春・前自由韓国党革新委員長を停職にした大学の処分が妥当だと、大法院(最高裁)が結論を下した。

 12日、法曹界によると、大法院3部(主審ノ・ジョンヒ大法官)は、柳氏が「教員訴請審査委員会決定取消」を求めた訴訟で、原審(控訴審)の原告敗訴判決を、9日確定した。

 延世大社会学科教授だった柳氏は、2019年9月19日、学部の授業の中で、「(慰安婦に関連し)直接的な加害者は日本ではない」、「(慰安婦は)売春の一種だ」と発言した。

 ある女子学生が、「慰安婦被害者たちが自発的に行(い)ったというのか」と質問すると、柳氏は「現在も売春に従事するプロセスは、自意(自分の意志)が半分、他意(他人の意志)が半分だ」と説明し、「知りたければ、一度やってみたら?」と発言して、セクハラ論議が起きた。

延世大は、柳氏の発言が言葉によるセクハラに当たると見て、2020年7月、停職1か月の懲戒処分を下した。柳氏は、懲戒を不服として訴訟を起こしていた。

 一審は「(該当の発言は)女性がどのようにして売春に従事することになるかを直接経験してみろ、という趣旨であり、性的屈辱感や嫌悪感を感じさせうるセクハラに当たる」と判断した。

「学生に、売春ではなく調査・研究をしてみろ、という意味だった」という柳氏側の抗弁は認めなかった。柳氏が、該当の発言の前後に、慰安婦女性が売春行為従事者だという説明をしただけで、研究行為に関しての言及はない、という理由からだ。

 柳氏は控訴審で、「懲戒手続きに誤りがある」という主張もしていたが、それも却下された。控訴審でも懲戒が妥当だとし、柳氏はこれを不服として上告したが、大法院は審理不続行棄却とし、原審判決をそのまま確定した。

 柳氏は、問題となった発言が報道された後も、「間違ったことはしてない」という立場を固持していた。

 柳氏は現在、自身のYouTubeチャンネルを紹介する写真にも、「知りたければ(購読、いいね)、一度やってみたら?」と書いている。

 柳氏は「慰安婦は売春の一種」という発言で刑事告発もされたが、一審で無罪判断が出ており、検察がそれを不服として控訴審裁判中だ。


 朴裕河・世宗大名誉教授の「帝国の慰安婦」裁判の大法院判決(無罪)の判例があるので、柳氏の場合も「元慰安婦に対する名誉棄損」は、控訴審・上告審でも無罪になるものと思われます。

 一審で有罪とされた「挺対協に対する名誉棄損」が今後どうなるか、注目されます。

 元慰安婦の証言を子細に見れば、最初は「就職詐欺だ」と言っていたのに、後のほうの証言では一律に「強制動員された」に変わっていますから、挺対協が元慰安婦らにそうした発言をするよう働きかけたのだろうと推測できますが、証拠を出すのは難しいかもしれませんね。

 セクハラ発言のほうは、柳氏の弁明はちょっと苦しいのではないかと思います。

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